(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176449
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/02 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088730
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祥
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昭範
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AD04
(57)【要約】
【課題】トラップ流路内での固形物詰まりを抑制できる便器を提供する。
【解決手段】便鉢部と、便鉢部内に洗浄水を吐き出すことにより便鉢部内に旋回流を形成するための吐水部と、便鉢部の底部に接続されるトラップ流路34と、を備え、トラップ流路は、便鉢部の底部に接続される下り流路40と、下り流路40の下流側端部に接続される上り流路42と、を備え、下り流路40の上面と上り流路42の上面とはトラップ流路の流れ方向に連続する壁部の別々の部位によって形成され、トラップ流路34においてトラップ流路34の最下端34aを通る基準流路断面の縦方向での二等分位置Pc(1/2)から下方を底部領域34bとし、底部領域34bにおける下り流路40及び上り流路42それぞれの体積Va(1/2)、Vb(1/2)を想定したとき、上り流路42の体積Vb(1/2)は、下り流路40の体積Va(1/2)よりも大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部と、
前記便鉢部内に洗浄水を吐き出すことにより前記便鉢部内に旋回流を形成するための吐水部と、
前記便鉢部の底部に接続されるトラップ流路と、を備え、
前記トラップ流路は、前記便鉢部の底部に接続される下り流路と、前記下り流路の下流側端部に接続される上り流路と、を備え、
前記下り流路の上面と前記上り流路の上面とは前記トラップ流路の流れ方向に連続する壁部の別々の部位によって形成され、
前記トラップ流路において前記トラップ流路の最下端を通る基準流路断面の縦方向での二等分位置から下方を底部領域とし、前記底部領域における前記下り流路及び前記上り流路それぞれの体積Va(1/2)、体積Vb(1/2)を想定したとき、
前記体積Vb(1/2)は、前記体積Va(1/2)よりも大きい便器。
【請求項2】
前記トラップ流路において前記トラップ流路の最下端を通る流路断面の上端位置から下方における前記下り流路及び前記上り流路それぞれの体積Va、Vbを想定したとき、
前記体積Vbは、前記体積Vaよりも大きい請求項1に記載の便器。
【請求項3】
前記底部領域において前記トラップ流路の最底部領域の上流端から上流側を下り底部領域といい、前記最底部領域の下流端から下流側を上り底部領域といい、
前記下り底部領域を通る流路断面の下半部の下側断面積Sadのなかで最大となるものを最大下側断面積Sad(max)といい、
前記上り底部領域を通る流路断面の下半部の下側断面積Sbdのなかで最大となるものを最大下側断面積Sbd(max)というとき、
前記最大下側断面積Sbd(max)は、前記最大下側断面積Sad(max)よりも大きい請求項1に記載の便器。
【請求項4】
前記基準流路断面の下半部の断面積を基準下側断面積S0dといい、
前記基準下側断面積S0dから前記下り流路の前記最大下側断面積Sad(max)を減算した減算値を下側断面積変化量ΔSad(=S0d-Sad(max))といい、
前記上り流路の前記最大下側断面積Sbd(max)から前記基準下側断面積S0dを減算した減算値を下側断面積変化量ΔSbd(=Sbd(max)-S0d)というとき、
前記下側断面積変化量ΔSbdは、前記下側断面積変化量ΔSadよりも小さい請求項3に記載の便器。
【請求項5】
前記基準流路断面の下半部の断面積を基準下側断面積S0d、前記基準流路断面の上半部の断面積を基準上側断面積S0uといい、
前記上り底部領域を通る流路断面の上半部の上側断面積Sbuのなかで最大となるものを最大上側断面積Sbu(max)といい、
前記最大下側断面積Sbd(max)と前記基準下側断面積S0dとの差分絶対値を下側断面積変化量ΔSbdといい、
前記最大上側断面積Sbu(max)と前記基準上側断面積S0uとの差分絶対値を上側断面積変化量ΔSbuというとき、
前記下側断面積変化量ΔSbdは、前記上側断面積変化量ΔSbuよりも大きい請求項3に記載の便器。
【請求項6】
前記基準流路断面全体の断面積を基準断面積S0といい、
前記下り底部領域を通る流路断面全体の断面積Saのなかで最大となるものを最大断面積Sa(max)といい、
前記上り底部領域を通る流路断面全体の断面積Sbのなかで最大となるものを最大断面積Sb(max)といい、
前記基準断面積S0から前記最大断面積Sa(max)を減算した減算値を前記下り流路の断面積変化量ΔSa(=S0-Sa(max))といい、
前記最大断面積Sb(max)から前記基準断面積S0を減算した減算値を前記上り流路の断面積変化量ΔSb(=Sb(max)-S0)というとき、
前記断面積変化量ΔSbは、前記断面積変化量ΔSaよりも小さい請求項3に記載の便器。
【請求項7】
前記基準流路断面全体の断面積を基準断面積S0といい、
前記下り底部領域を通る流路断面全体の断面積Saのなかで最小となるものを最小断面積Sa(min)といい、
前記上り底部領域を通る流路断面全体の断面積Sbのなかで最小となるものを最小断面積Sb(min)というとき、
前記トラップ流路は、Sa(min)<Sb(min)<S0の条件を満足する請求項3に記載の便器。
【請求項8】
前記下り流路は、前記下り流路において前記下り底部領域の上流端を通る流路断面から上流側に設けられ、その流路断面に連続する上流側流路部を備え、
前記下り底部領域を通る流路断面全体の断面積Saのなかで最小となるものを最小断面積Sa(min)といい、
前記上流側流路部を通る流路断面全体の断面積Scのなかで最小となるものを最小断面積Sc(min)というとき、
前記最小断面積Sc(min)は、前記最小断面積Sa(min)よりも小さい請求項3に記載の便器。
【請求項9】
前記トラップ流路は、前記便鉢部の底部に開口する入口と、前記入口の前端部において前記便鉢部の底部に連結され前記トラップ流路の下流側に向けて延びる凸曲面状の連結面と、を備え、
前記便鉢部及び前記トラップ流路は、前記便鉢部の底部における後面から前記下り流路の上流端部における後面まで連続する入口後面を備え、
前記入口後面の水平断面の後端位置を前記入口後面のある上下方向範囲で連ねた線において最も前側にある位置を前記入口後面の最前位置というとき、
前記最前位置は、前記連結面の下端よりも上方に位置する請求項8に記載の便器。
【請求項10】
前記上り流路は、前記上り流路において前記上り底部領域の下流端を通る流路断面から下流側に設けられ、その流路断面に連続する下流側流路部を備え、
前記上り底部領域を通る流路断面全体の断面積Sbのなかで最大となるものを最大断面積Sb(max)といい、
前記下流側流路部を通る流路断面全体の断面積Sdのなかで最小となるものを最小断面積Sd(min)というとき、
前記最小断面積Sd(min)は、前記最大断面積Sb(max)よりも小さい請求項3に記載の便器。
【請求項11】
前記トラップ流路は、流路断面において、前記トラップ流路の下面部と横面部を接続する凹曲面状のコーナー部を備え、
前記上り底部領域の上流端を通る流路断面から前記最大下側断面積Sbd(max)となる箇所に向かうに連れて、前記コーナー部の曲率半径が小さくなる請求項3に記載の便器。
【請求項12】
前記トラップ流路は、前記便鉢部の底部に開口する入口と、前記入口の前端部において前記便鉢部の底部に連結され前記トラップ流路の下流側に向けて延びる凸曲面状の連結面と、を備え、
側面視において、前記連結面の下端を通る流路断面の重心位置Gaと、前記上り流路の下流端を通る水平断面での重心位置Gbと、前記基準流路断面の前記二等分位置と前記重心位置Gaを結ぶ直線Laと、前記基準流路断面の前記二等分位置と前記重心位置Gbを結ぶ直線Lbとを想定したとき、前記直線Laと前記直線Lbのなす鋭角での角度θは105°以下である請求項1に記載の便器。
【請求項13】
固形物の排出を促進するジェット水流を前記トラップ流路内に形成するためのジェット吐水孔を備えていない請求項1に記載の便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、便鉢部と、便鉢部の底部に接続されるトラップ流路と、を備える便器を開示している。トラップ流路は、便鉢部の底部に接続される下り流路と、下り流路の下流側端部に接続される上り流路とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トイレットペーパー等の変形可能な固形物がトラップ流路内を流れる場合を考える。この場合、トラップ流路内を流れる水の水圧等により、上り流路の壁面に向けて押し付けられることで固形物に摩擦力が付与され、トラップ流路内で固形物詰まりが発生し易くなる。本願発明者は、このトラップ流路内での固形物詰まりを抑制するための新たなアイデアを見出した。
【0005】
本開示の目的の1つは、トラップ流路内での固形物詰まりを抑制できる便器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の便器は、便鉢部と、前記便鉢部内に洗浄水を吐き出すことにより前記便鉢部内に旋回流を形成するための吐水部と、前記便鉢部の底部に接続されるトラップ流路と、を備え、前記トラップ流路は、前記便鉢部の底部に接続される下り流路と、前記下り流路の下流側端部に接続される上り流路と、を備え、前記下り流路の上面と前記上り流路の上面とは前記トラップ流路の流れ方向に連続する壁部の別々の部位によって形成され、前記トラップ流路の最下端を通る基準流路断面の縦方向での二等分位置から下方にある底部領域における前記下り流路及び前記上り流路それぞれの体積Va(1/2)、Vb(1/2)を想定したとき、前記上り流路の体積Vb(1/2)は、前記下り流路の体積Va(1/2)よりも大きい便器。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】
図3のA-A線で切断した流路断面を示す図である。
【
図6】
図6(A)は、トラップ流路における流路断面の全体の断面積分布を示し、
図6(B)は、その流路断面の上半部及び下半部それぞれの断面積分布を示す。
【
図7】
図7(A)は、
図5の位置Pb1を通る流路断面を示す図であり、
図7(B)は、
図5の位置Pb3を通る流路断面を示す図であり、
図7(C)は、
図7(A)、
図7(B)の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
【0009】
図1、
図2を参照する。以下、各構成要素の位置関係に関して、直交座標系を構成する三方向を用いて説明する。これら三方向は、左右方向X、前後方向Y及び上下方向Zである。これら三方向は、便器10に搭載される便座(不図示)に通常の姿勢で座るユーザの向きと対応する。
【0010】
便器10は、便鉢部12と、便鉢部12内に洗浄水を吐き出すことによって便鉢部12内に旋回流を形成するための吐水部14と、便鉢部12の底部に接続される便器排水路16と、を備える。
【0011】
便鉢部12は、汚物を受けるための汚物受け面18と、便鉢部12の底部を形成する溜水部20と、便鉢部12の上端側部分を形成するリム部22と、を備える。溜水部20は、便鉢部12において下向きに窪む凹部として設けられ、汚物受け面18の下端縁部から下方に窪んでいる。便鉢部12の底部に設けられる溜水部20の底面部には、便器排水路16の入口が開口する。溜水部20には後述する封水38(
図1では省略)の一部が溜水として溜められる。
【0012】
吐水部14は、便鉢部12のリム部22に開口する吐水孔24と、給水源26から供給される洗浄水を吐水孔24に導くための導水路28と、を備える。本実施形態の給水源26は重力給水式タンクであるが、ポンプ給水式タンク、フラッシュバルブ等でもよい。導水路28は、便鉢部12の外周側に設けられ、ここでは便鉢部12の後方に設けられる。
【0013】
便器排水路16は、便鉢部12から排出される汚物を建物に設置される排水管(不図示)に導く排水流路30の一部となる。本実施形態の排水流路30は、便器排水路16の他に、便器排水路16と排水管を接続する排水ソケット32を備える。便器排水路16は、便鉢部12の底部に接続されるトラップ流路34と、トラップ流路34の下流側端部に接続される下降流路36と、を備える。下降流路36は、下流側に向かうに連れて下降している。
【0014】
トラップ流路34は、トラップ流路34内の流れ方向での空気の流れを遮断する封水38を貯留する。ここでの流れ方向とは、トラップ流路34内において上流側から下流側に向かう方向をいう。トラップ流路34は、便鉢部12の底部に接続される下り流路40と、下り流路40の下流側端部に接続される上り流路42と、を備える。下り流路40は、下流側に向かうに連れて下降するとともに後方に延びている。上り流路42は、下流側に向かうに連れて上昇するとともに後方に延びている。
【0015】
下り流路40の上面と上り流路42の上面とはトラップ流路34の流れ方向に連続する壁部の別々の部位によって形成される。下り流路40の上面と上り流路42の上面は、同じ壁部の壁厚方向両側の異なる部位によって形成されないということである。
【0016】
上り流路42の下流側端部の下面には、トラップ流路34内に溜めることのできる封水38の最高水位を定める溢れ縁44が設けられる。便器排水路16内に溢れ縁44を超える水が入り込んだとき、その水が溢れ縁44から下流側に溢れ出ることで、封水38の最高水位が定められる。
【0017】
なお、便器10は、便器洗浄後に導水路28内に残った残水をトラップ流路34に排出するための水抜き水路46を備える。水抜き水路46の下流側端部にはトラップ流路34に開口する水抜き孔46aが設けられる。本実施形態の水抜き孔46aは、下り流路40の上面に開口する。
【0018】
便器10は、便器洗浄中に、固形物の排出を促進するジェット水流をトラップ流路34内に形成するためのジェット吐水孔を備えていない。このジェット吐水孔は、給水源26から供給された洗浄水を吐き出すことにより、トラップ流路34の下流側に向かうジェット水流を形成する。前述した水抜き孔46aは、便器洗浄中に、固形物の排出に影響しない程度の勢いでトラップ流路34内に水を排出し、ジェット吐水孔に該当しない。ジェット吐水孔は、後述する基準流路断面Cs0の上端位置Paよりも下方においてトラップ流路34に開口するものとして捉えてもよい。このように捉えた場合も、水抜き孔46aは、この上端位置Paよりも上方において開口するため、ジェット吐水孔に該当しない。
【0019】
以上の便器10を用いた洗浄方法の概要を説明する。本実施形態の便器10の洗浄方式は、水の落差を用いて、トラップ流路34を通して固形物を押し流すことで固形物を排出する洗い落とし式である。また、本実施形態の便器10の洗浄方式では、ジェット水流を利用することなく洗い落とし式を実現する。所定の洗浄開始条件を満たすと、給水源26から吐水部14に洗浄水が供給されることで便器洗浄が実行される。吐水部14は、便器洗浄中、給水源26から供給される洗浄水を吐き出すことで便鉢部12内を洗浄する洗浄水流を形成する。ここでは洗浄水流として旋回流48が形成される。便鉢部12内の固形物は、洗浄水流によって、便器排水路16を通して排出される。旋回流48は、便器10の溜水部20周りにおいて汚物受け面18を旋回する過程で分流50に分かれつつ、溜水部20内に流下するように形成される。
図1では旋回流48、分流50の流れ方向に矢印を付して示す。
【0020】
図3、
図4を示す。以下、
図4のような流路断面を示す断面図では、トラップ流路34を形成する壁の内周面のみを示し、その壁の他の部分は省略する。トラップ流路34を通る前後方向Yに直交する鉛直断面の下端位置をトラップ流路34のある前後方向範囲で連ねた線Laを想定する。
図3では、線Laの上流端La1と下流端La2とを示す。この線La上にある点でトラップ流路34に接する接平面(ここでは左右方向Yと平行)において、その点を通る法線を想定する。本明細書では、この線La上にある点を通る接平面の法線と左右方向Xとに平行な平面で切断した断面をトラップ流路34の流路断面という。この流路断面内での法線に沿った方向を縦方向Pといい、左右方向Xを横方向Qとい
【0021】
上り流路42と下り流路40の境界部にはトラップ流路34の流れ方向範囲のなかで最下端34aとなる箇所が設けられる。
図4では、トラップ流路34の最下端34aを通る基準流路断面Cs0を示す。基準流路断面Cs0は最下端34aを通り左右方向Yに平行な鉛直断面でもある。この基準流路断面Cs0の縦方向寸法を縦方向Pに二等分する二等分位置Pc(1/2)を想定する。トラップ流路34において二等分位置Pc(1/2)から下方を底部領域34bという。
【0022】
このトラップ流路34の底部領域34bにおける下り流路40の体積Va(1/2)、上り流路42の体積Vb(1/2)を想定する。基準流路断面Cs0の上端位置Pc、上端位置Pcから下方における下り流路40全体の体積Va、上端位置34cから下方における上り流路42全体の体積Vbを想定する。また、基準流路断面Cs0の縦方向Pでの三つの四等分位置のうち、最も上側の四等分位置Pc(3/4)を想定する。この四等分位置Pc(3/4)から下方における下り流路40の体積Va(3/4)、四等分位置Pc(3/4)から下方における上り流路42の体積Vb(3/4)を想定する。ここでの下り流路40の体積は、トラップ流路34の底部領域34bにおいて基準流路断面Cs0から上流側の体積であり、上り流路42の体積は、その基準流路断面Cs0から下流側の体積である。なお、体積の単位は、例えば、mm3である。
【0023】
汚物、トイレットペーパー等の変形可能な固形物60がトラップ流路34内を流れる場合を考える。この場合、固形物60は、トラップ流路34の入口90からトラップ流路34の底部領域34bに突き当たるまで、斜め下向きの方向Daにほぼ直線的に流れる。この後、固形物60は、トラップ流路34の底部領域34bの壁面に接触しつつ流れ方向を変更し、上り流路42内を斜め上向きの方向Dbに流れることで、トラップ流路34を通り抜ける。このとき、固形物60は、トラップ流路34の流路断面よりも大きい場合でも、その流路断面内に収まりつつ広がるように広がり変形をしながらトラップ流路34を通り抜けようとする。また、トラップ流路34の底部領域34bにおいて、トラップ流路34内を流れる水の水圧等により、トラップ流路34の壁面に向けて押し付けられることで固形物60に摩擦力が付与される。
【0024】
本実施形態では、上り流路42の体積Vb(1/2)は、下り流路40の体積Va(1/2)よりも大きくなる。このように、上り流路42の体積Vb(1/2)が下り流路40の体積Va(1/2)に対して広がるほど、固形物60が広がり変形を伴い上り流路42の壁面に接触しつつ流れる過程で、その壁面に対する固形物60の接触範囲を減らし易くなる。よって、体積Vb(1/2)が体積Va(1/2)よりも小さくなるよりも、固形物60が広がり変形を伴い上り流路42の底部領域34bの壁面に接触しつつ流れる過程で、その壁面に対する固形物60の接触範囲を減らし易くなる。ひいては、トラップ流路34の上り流路42の壁面から固形物60に付与される摩擦抵抗を抑制し易くなり、トラップ流路34内での固形物詰まりを抑制できる。
【0025】
特に、便鉢部12内を旋回流48により洗浄する場合、便鉢部12のリム部22に設けた吐水孔から下向きに洗浄水を吐き出す洗浄形式(ボックスリム洗浄等)と比べ、固形物60の排出能力に劣る傾向がある。このような便器10においても、トラップ流路34内での固形物詰まりを抑制できる。また、ジェット吐水孔を備えておらず固形物60の排出能力に劣る便器10においても、トラップ流路34内での固形物詰まりを抑制できる。
【0026】
この効果を得る観点から、好ましくは、上り流路42の体積Vb(3/4)が、下り流路40の体積Vb(3/4)よりも大きくなるとよい。同様の観点から、より好ましくは、上り流路42の体積Vbが、下り流路40の体積Vaよりも大きくなるとよい。
【0027】
本実施形態の便器10の他の特徴を説明する。
図4を参照する。以下、トラップ流路34の流路断面の断面積(mm
2)を検討する。この流路断面において、その流路断面の縦方向Pでの二等分位置Pc(1/2)から上側を上半部62u、二等分位置Pc(1/2)から下側を下半部62dという。この流路断面におけるトラップ流路34の断面積からは、トラップ流路34に開口する他の孔(例えば、前述の水抜き孔46a)の断面積は除外される。この流路断面において上半部62uの断面積を上側断面積、下半部62dの断面積を下側断面積という。トラップ流路34の最下端34aを通る基準流路断面Cs0全体の断面積を基準断面積S0といい、その下半部62dの断面積を基準下側断面積S0dといい、その上半部62uの断面積を基準上側断面積S0uという。
【0028】
図5、
図6を参照する。
図6は、
図5の線La上の各位置P0、Pa1~Pa8、Pb1~Pb7を通る流路断面の断面積を示す。位置P0の流路断面は前述の基準流路断面Cs0である。
図6では、トラップ流路34の流路断面において水抜き孔46aの断面積を除外した断面積を実線で示し、水抜き孔46aを含めた断面積を破線で示す。
【0029】
トラップ流路34の最も底側にある領域を最底部領域34dという。側面視において、トラップ流路34の底部領域34bの前後方向寸法L1を想定する。前述のトラップ流路34のある線La上において、トラップ流路34の最下端34aから前方に前後方向Yに沿って0.3×L1の位置Pa2と、その最下端34aから後方に前後方向Yに沿って0.3×L1の位置Pb2とを想定する。このとき、最底部領域34dは、その位置Pa2と位置Pb2とを通り、左右方向Yと平行な平面49から下方の範囲をいう。この他にも、トラップ流路34のある線La上において、位置Pa2は、トラップ流路34の最下端34aから前方に線Laに沿って30mmの位置とし、位置Pb2は、その最下端34aから後方にLaに沿って30mmの位置としてもよい。トラップ流路34の底部領域34bにおいて、最底部領域34dの上流端の位置Pa2から上流側(前側)を下り底部領域34e、最底部領域34dの下流端の位置Pb2から下流側(後側)を上り底部領域34fという。下り底部領域34eを通る流れ方向範囲の全域は流れ方向に向かって湾曲する下り湾曲流路部を構成する。上り底部領域34fを通る流れ方向範囲の全域は流れ方向に向かって湾曲する上り湾曲流路部を構成する。
【0030】
下り底部領域34eを通る流路断面の下半部62dの断面積を下側断面積Sadという。下り底部領域34eを通る流路断面の下側断面積Sadのなかで最大となるものを最大下側断面積Sad(max)という。上り底部領域34fを通る流路断面の下半部62dの断面積を下側断面積Sbdという。上り底部領域34fを通る流路断面の下側断面積Sbdのなかで最大となるものを最大下側断面積Sbd(max)という。
図6(B)では、最大下側断面積Sad(max)となる箇所、最大下側断面積Sbd(max)となる箇所を示す。
【0031】
上り底部領域34fを通る流路断面の下側断面積Sbdが下り底部領域34eを通る流路断面の下側断面積Sadに対して広がるほど、固形物60が広がり変形を伴い上り底部領域34fを通る流路断面の下壁面に接触しつつ流れる過程で、その壁面に対する固形物60の接触範囲を減らし易くなる。本実施形態では、下側最大断面積Sbd(max)が下側最大断面積Sad(max)よりも大きくなる。よって、下側最大断面積Sbd(max)が下側最大断面積Sad(max)よりも小さくなるよりも、固形物60が広がり変形を伴い上り底部領域34fを通る流路断面の下壁面に接触しつつ流れる過程で、その壁面に対する固形物60の接触範囲を減らし易くなる。ひいては、上り底部領域34fを通る流路断面の下壁面から固形物60に付与される摩擦抵抗を抑制し易くなる。
【0032】
基準下側断面積S0dから下り底部領域34eの最大下側断面積Sad(max)を減算した減算値を下り流路40の下側断面積変化量ΔSad(=S0d-Sad(max))という。上り底部領域34fの最大下側断面積Sbd(max)から基準下側断面積S0dを減算した減算値を上り流路42の下側断面積変化量ΔSbd(=Sbd(max)-S0d)という。
【0033】
最大下側断面積Sad(max)及び最大下側断面積Sbd(max)のそれぞれは、基準下側断面積S0dより小さくなる。下側断面積変化量ΔSbdは、下側断面積変化量ΔSadよりも小さくなる(ΔSbd<ΔSad)。下り流路40内の固形物60は便鉢部12内から流れ込む水の勢いをそのまま受けるので、上り流路42内の固形物60と比べて詰まり難い。言い換えると、上り流路42は下り流路40と比べて固形物60が詰まり易い。ΔSbd<ΔSadとすることで、このような詰まり易い上り流路42にあるSbd(max)をSad(max)より大きくできる。ひいては、Sad(max)となる箇所では流速を速くしつつ、詰まり易いSbd(max)となる箇所では固形物詰まりを抑制できる。
【0034】
上り底部領域34fを通る流路断面の上半部62uの断面積を上側断面積Sbuという。上り底部領域34fを通る流路断面の上側断面積Sbdのなかで最大となるものを最大上側断面積Sbu(max)という。
図6(B)では、最大上側断面積Sbu(max)となる箇所を示す。上り流路42の最大上側断面積Sbu(max)と基準上側断面積S0uとの差分絶対値を上り流路42の上側断面積変化量ΔSbuという。
【0035】
上り流路42の下側断面変化量ΔSbdは、上り流路42の上側断面変化量ΔSbuよりも大きくなる。これにより、下側断面変化量ΔSbdが上側断面変化量ΔSbuよりも小さくなるより、上り流路42の下側最大断面積Sbd(max)を大きくし易くなる。ひいては、固形物60が広がり変形を伴い上り底部領域34fを通る流路断面の下壁面に接触しつつ流れる過程で、その壁面に対する固形物60の接触範囲を減らし易くなる。
【0036】
上り底部領域34fを通る流路断面の下側断面積Sbdのなかで最小となるものを最小下側断面積Sbd(min)という。上り底部領域34fを通る流路断面の上側断面積Sbuのなかで最小となるものを最小上側断面積Sbu(min)という。最小下側断面積Sbd(min)から基準下側断面積S0dを減算した減算値を下側断面積変化量ΔSbd’(=Sbd(min)-S0d)という。最小上側断面積Sbu(min)から基準上側断面積S0uを減算した減算値を上側断面積変化量ΔSbu’(=Sbu(min)-S0u)という。このとき、上側断面積変化量ΔSbu’は、下側断面積変化量ΔSbd’よりも小さくなる。これにより、上側断面積変化量ΔSbu’が下側断面積変化量ΔSbd’よりも大きくなる場合と比べ、上り底部領域34fを通る流路断面における上半部62uでの流れ方向での断面変化を小さくできる。前述のΔSbd>ΔSbuの条件も満たしつつ、このΔSbd’>ΔSbu’とすると好ましい。これにより、上り底部領域34fを通る流路断面において下半部62dでの断面積を広げつつ、上半部62uでの断面変化を小さくすることで、できるだけ流速の低減を抑えることができる。
【0037】
下り底部領域34eを通る流路断面全体の断面積Saを想定する。断面積Saは、下側断面積Sadと上側断面積Sadとの合算値である。下り底部領域34eを通る流路断面の断面積Saのなかで最大となるものを下り流路40の最大断面積Sa(max)という。上り底部領域34fを通る流路断面全体の断面積を断面積Sbという。断面積Sbは、下側断面積Sbdと上側断面積Sbdとの合算値である。上り底部領域34fを通る流路断面の断面積Sbのなかで最大となるものを上り流路42の最大断面積Sb(max)という。
図6(A)では、最大断面積Sa(max)、最大断面積Sb(max)となる箇所を示す。
【0038】
基準断面積S0から下り流路40の最大断面積Sa(max)を減算した減算値を下り流路40の断面積変化量ΔSa(=S0-Sa(max))という。上り流路42の最大断面積Sb(max)から基準断面積S0を減算した減算値を上り流路42の断面積変化量ΔSb(=Sb(max)-S0)という。最大断面積Sa(max)及び最大断面積Sb(max)のそれぞれは、基準断面積S0よりも小さくなる。断面積変化量ΔSbは、断面積変化量ΔSaよりも小さくなる(ΔSb<ΔSa)。ΔSb<ΔSaとすることで、固形物60が詰まり易い上り流路42にあるSb(max)をSa(max)より大きくできる。ひいては、Sa(max)となる箇所では流速を速くしつつ、詰まり易いSb(max)となる箇所では固形物詰まりを抑制できる。
【0039】
下り底部領域34eを通る流路断面全体の断面積Saのなかで最小となるものを下り流路40の最小断面積Sa(min)という。上り底部領域34fを通る流路断面全体の断面積Sbのなかで最小となるものを上り流路42の最小断面積Sb(min)という。
図6(A)では、最小断面積Sa(min)、最小断面積Sb(min)となる箇所を示す。トラップ流路34は、Sa(min)<Sb(min)<S0の条件を満足する。これにより、下り底部領域34eの最小断面積Sa(min)が基準断面積S0よりも大きくなる場合と比べ、下り底部領域34eを通る流路断面を固形物60が通過するときの流速を速くした状態で最底部領域34dを通る流路断面まで固形物60を届かせ易くなる。また、上り底部領域34fの最小断面積Sb(min)が基準断面積S0よりも大きくなる場合と比べ、上り底部領域34eを通る流路断面を固形物60が通過するときの流速を速くできる。ひいては、底部領域34bを通過しようとする固形物60の流れ方向での推進力を高めることができ、固形物詰まりの抑制に寄与する。また、Sa(min)<Sb(min)とすることで、Sa(min)となる箇所では流速を速くしつつ、詰まり易いSb(min)となる箇所では固形物詰まりを抑制できる。
【0040】
下り流路40は、下り流路40において下り底部領域34eの上流端(位置Pa4)を通る流路断面から上流側に設けられ、その流路断面に連続する上流側流路部64を備える。上流側流路部64の上流端(位置Pa7)は、上流側流路部64を通る流路断面がトラップ流路34の入口90を通る水平断面65と点Pfで交差する位置に設けられる。
【0041】
上流側流路部64を通る流路断面の断面積Scを想定する。上流側流路部64を通る流路断面全体の断面積Scのなかで最小となるものを上流側流路部64の最小断面積Sc(min)という。
図6(A)では、最小断面積Sc(min)となる箇所を示す。
【0042】
最小断面積Sc(min)は、最小断面積Sa(min)よりも小さくなる。これにより、最小断面積Sc(min)が最小断面積Sa(min)よりも大きくなるより、上流側流路部64を固形物60が通過するときの流速を速くすることができる。ひいては、下り流路40を通過しようとする固形物60の流れ方向での推進力を高めることができ、固形物詰まりの抑制に寄与する。
【0043】
上り流路42は、上り流路42において上り底部領域34fの下流端(位置Pb4)を通る流路断面から下流側に設けられ、その流路断面に連続する下流側流路部66を備える。下流側流路部66の下流端(位置Pb7)は、下流側流路部66を通る流路断面が最高水位にある封水38の下流側封水面38aと点Pgで交差する位置に設けられる。ここでの下流側封水面38aとは最高水位にある封水38の下流側の水面をいう。下流側流路部66を通る流路断面全体の断面積Sdのなかで最小となるものを最小断面積Sd(min)という。
図6(A)では、最小断面積Sd(min)となる箇所を示す。
【0044】
最小断面積Sd(min)は、上り底部領域34fを通る流路断面の最大断面積Sb(max)よりも小さくなる。これにより、最小断面積Sd(min)が最大断面積Sb(max)よりも大きくなるより、下流側流路部66を固形物60が通過するときの流速を速くすることができる。ひいては、上り流路42を通過しようとする固形物60の流れ方向での推進力を高めることができ、固形物詰まりの抑制に寄与する。
【0045】
図7を参照する。
図7(A)は、上り底部領域34fの上流端(位置Pb2)を通る流路断面を示す。
図7(B)は、上り底部領域34fにおいて最大下側断面積Sbd(max)となる箇所(位置Pb4)の流路断面を示す。
図7(C)は、
図7(A)、
図7(B)の流路断面の中心Caを合致させた状態で、両者の流路断面の一部を示す図である。
【0046】
トラップ流路34は、流路断面において、下方にある下面部70と、横方向Q両側にある一対の横面部72と、トラップ流路34の下面部70と横面部72を接続する凹曲面状のコーナー部74と、を備える。トラップ流路34の流路断面を縦方向Pに二等分する縦二等分線Lb1、横方向Qに二等分する横二等分線Lb2を想定する。縦二等分線Lb1と横二等分線Lb2の交点を流路断面の中心Caといい、その中心Caを円中心とする半径方向を流路断面の径方向という。縦二等分線Lb1と横面部72の交点を流路断面の横面部中央位置Pe1、横二等分線Lb2と下面部70の交点を流路断面の下面部中央位置Pe2という。
【0047】
コーナー部74は、単数の曲率半径を持ち、流路断面の径方向外側に凹となる凹曲面状をなす。コーナー部74は、流路断面の横面部中央位置Pe1から下面部中央位置Pe2に向かう途中で最も曲率半径が小さくなる箇所となる。
図7(C)では、各流路断面のコーナー部74の範囲を示す。
【0048】
上り底部領域34fの上流端を通る流路断面から最大下側断面積Sbd(max)となる箇所に向かうに連れて、コーナー部74の曲率半径が徐々に小さくなる。上り底部領域34fの上流端を通る流路断面(
図7(A)の流路断面)のコーナー部74の曲率半径R1を想定する。また、最大下側断面積Sbd(max)となる箇所の流路断面(
図7(B)の流路断面)のコーナー部74の曲率半径R2を想定する。このとき、後者の曲率半径R2が前者の曲率半径R1よりも小さくなることになる。また、この上り底部領域34fの上流端を通る流路断面から最大下側断面積Sbd(max)となる箇所に向かうに連れて、コーナー部74は徐々に下方にずれるように設けられる。また、この上り底部領域34fの上流端を通る流路断面から最大下側断面積Sbd(max)となる箇所に向かうに連れて、下面部70の曲率半径は徐々に大きくなるように設けられる。これにより、この流れ方向範囲で、流路断面の下面部70全体の位置が下側に広がり難くなる。ひいては、その範囲において、トラップ流路34を形成するトラップ管路の下側にあるスペースを確保し易くなり、そこに排水ソケットを配置し易くなる。
【0049】
なお、同様の観点から、この流れ方向範囲において、流路断面の縦方向寸法の拡大量より横方向寸法の拡大量が大きくなってもよい。これにより、上り流路42の下側断面積Sbdを徐々に大きくする流れ方向範囲で、流路断面の下面部70全体の位置が下側に広がり難くなり、同様の効果を得ることができる。
【0050】
図8を参照する。トラップ流路34は、便鉢部12の底部に開口する入口90と、入口90の前端部90aにおいて便鉢部12の底部に連結されトラップ流路34の下流側に向けて延びる連結面92と、を備える。入口90は、便鉢部12の底部にある溜水部20の底面部20aに開口し、入口90の前端部90aは、溜水部20の底面部20aに連結される。連結面92は、トラップ流路34の入口90の平面視での中心Cb(
図1参照)を通る鉛直線に沿った切断面において、単数の曲率半径を持つ凸曲面状をなす。
【0051】
便鉢部12及びトラップ流路34は、便鉢部12の底部における後面から下り流路40の上流端部における後面まで連続する入口後面94を備える。入口後面94は、例えば、最高水位にある封水38の上流側封水面38cから下方に設けられる。入口後面94の水平断面の後端位置を入口後面94のある上下方向範囲で連ねた線Lcにおいて最も前側にある位置を入口後面94の最前位置94aという。この最前位置94aを決めるにあたり、この入口後面94のある上下方向範囲は、上流側封水面38cから下方の範囲のみを考慮してもよい。本実施形態では、トラップ流路34の入口90の中心Cbを通り前後方向Yに沿って切断した側面断面において、入口後面94の最も前側にある位置が入口後面94の最前位置94aでもある。入口後面94は、側面視において、上方から最前位置94aに向かうに連れて徐々に前方に延びるように設けられ、最前位置94aから下方に向かうに連れて徐々に後方に延びるように設けられる。
【0052】
入口後面94の最前位置94aは、連結面92の下端92aよりも上方に位置している。また、入口後面94の最前位置94aは、連結面92の上端92bよりも下方に位置している。本実施形態において、これらの条件は、トラップ流路34の入口90の中心Cbを通り前後方向Yに沿って切断した側面断面において満たされる。
【0053】
便鉢部12の底部に溜まった固形物60をトラップ流路34内に引き込むとき、固形物60は便鉢部12の後壁面等を形成する入口後面94に接触しつつ下向きに流れようとする。入口後面94の最前位置94aが連結面92の下端92aよりも上方に位置することで、その連結面92の下端92aよりも下方に位置する場合と比べ、入口後面94の最前位置94aに固形物60が引っ掛かり難くなる。ひいては、固形物60をトラップ流路34内にスムーズに引き込み易くなり、トラップ流路34の入口90周りでの固形物詰まりの抑制に寄与する。
【0054】
以下、側面視での条件を説明する。連結面92の下端92aを通る流路断面の重心位置Ga、上り流路42の下流端(溢れ縁44)を通る水平断面での重心位置Gbを想定する。ここでの重心位置とは言及している断面の重心(幾何中心)のある位置をいう。上り流路42の下流端は封水38の下流側封水面38aと重なる位置である。基準流路断面の二等分位置Pc(1/2)と重心位置Gaを結ぶ直線La、二等分位置Pc(1/2)と重心位置Gbを結ぶ直線Lbを想定する。このとき、直線Laと直線Lbのなす鋭角での角度θは、好ましくは、105°以下となる。角度θは、95°以下、90°以下の順で、より好ましい。角度θの下限値は特に限定されないが、例えば、80°以上となる。このような急な角度θの場合、トラップ流路34内で固形物詰まりが発生し易くなる。このような状況のもとでも、前述のように固形物詰まりの発生を抑制できる。なお、角度θは、X°超であってもよい。
【0055】
以上の便器10の変形形態を説明する。
【0056】
便器排水路16は、排水ソケットを用いずに排水管に接続されてもよい。この場合、便器排水路16は下降流路36を備えずともよい。便器10はジェット吐水孔を備えていてもよい。
【0057】
上り流路42の体積Vbは、下り流路40の体積Va以下であってもよい。上り流路42の最大下側断面積Sbd(max)は、下り流路40の最大下側断面積Sad(max)以下であってもよい。上り流路42の下側断面変化量ΔSbdは、下り流路40の下側断面変化量ΔSad以下であってもよい。上り流路42の下側断面変化量ΔSbdは、上り流路42の上側断面変化量ΔSbu以下であってもよい。上り流路42の断面積変化量ΔSbは、下り流路40の断面積変化量ΔSa以下であってもよい。下り流路40の上流側流路部64における最小断面積Sc(min)は、下り流路40の下り底部領域34eにおける最小断面積Sa(min)以上となってもよい。上り流路42の下流側流路部66の最小断面積Sd(min)は、上り底部領域34fの最大断面積Sb(max)以上であってもよい。
【0058】
入口後面94の最前位置94aは連結面92の下端92aの位置よりも下方に位置していてもよい。
【0059】
トラップ流路34のコーナー部74の曲率半径は、上り底部領域34fの下流端を通る流路断面から最大下側断面積Sbd(max)となる箇所に向かうに連れて大きくなってもよいし、変化しなくともよい。
【0060】
以上の実施形態及び変形形態は例示である。これらを抽象化した技術的思想は、実施形態及び変形形態の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施形態及び変形形態の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。実施形態及び変形形態において言及している構造/数値には、製造誤差等を考慮すると同一とみなすことができるものも当然に含まれる。
【0061】
以上の構成要素の任意の組み合わせも有効である。例えば、実施形態に対して他の実施形態の任意の説明事項を組み合わせてもよいし、変形形態に対して実施形態及び他の変形形態の任意の説明事項を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…便器、12…便鉢部、14…吐水部、34…トラップ流路、34a…最下端、34b…底部領域、34c…上端位置、34d…最底部領域、34e…下り底部領域、34f…上り底部領域、38…封水、40…下り流路、42…上り流路、48…旋回流、60…固形物、62d…下半部、62u…上半部、64…上流側流路部、66…下流側流路部、70…下面部、72…横面部、74…コーナー部、90…入口、92…連結面、92a…下端、92b…上端、94…入口後面、94a…最前位置。