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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176458
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ステータ及び回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
H02K3/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088747
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】丸山 哲矢
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA03
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604DA15
5H604DA16
5H604DB01
5H604PB03
(57)【要約】
【課題】コイルからティースへの伝熱性を向上させることを可能としたステータ及び回転電機を提供する。
【解決手段】ステータは、径方向に沿って延在するティース23を有するステータコア20と、ティース23を被覆するボビン30と、ボビン30に巻回されているコイル40と、を備える。ボビン30は、ティース23の軸方向端面を被覆する第1被覆部31と、ティース23の周方向端面25を被覆する第2被覆部32と、を備える。第1被覆部31は、コイル40を形成する導線41をガイドする凹凸状のガイド部33を有している。そして、第2被覆部32は、第2被覆部32の表面における軸方向一端から軸方向他端にわたって平面部37を有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に沿って延在するティース(23)を有するステータコア(20)と、
前記ティースを被覆するボビン(30)と、
前記ボビンに巻回されているコイル(40)と、
を備えたステータ(11)であって、
前記ボビンは、
前記ティースの軸方向端面(24)を被覆する第1被覆部(31)と、
前記ティースの周方向端面(25)を被覆する第2被覆部(32)と、を備え、
前記第1被覆部は、前記コイルを形成する導線(41)をガイドする凹凸状のガイド部(33)を有し、
前記第2被覆部は、前記第2被覆部の表面における軸方向一端から軸方向他端にわたって平面部(37)を有している、
ステータ。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記第1被覆部の周方向の端部に設けられ前記平面部と同一平面上に位置する平面端部(38)を有している、
請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記第2被覆部は、前記ティースの周方向両端面(25,25)にそれぞれ対応して一対設けられ、
前記一対の第2被覆部は、前記平面部をそれぞれ有している、
請求項1に記載のステータ。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記第1被覆部の径方向における前記コイルが設けられる範囲(A)内において部分的に設けられている、
請求項1に記載のステータ。
【請求項5】
前記ガイド部は、径方向における前記範囲の両端のみに設けられている、
請求項4に記載のステータ。
【請求項6】
前記ガイド部における溝ピッチ(D1)は、前記導線の直径(D2)以上である、
請求項1に記載のステータ。
【請求項7】
前記ガイド部は、列替え角度(θ)を有している、
請求項1に記載のステータ。
【請求項8】
前記コイルを覆う樹脂モールド部(50)を備え、
前記第1被覆部は、前記第1被覆部の表面に径方向に沿って延びる溝部(31a)を有し、
前記樹脂モールド部は、前記溝部に入り込んでいる充填部(53)を有し、
前記充填部は、前記コイルと前記第1被覆部との間に介在している、
請求項1に記載のステータ。
【請求項9】
ステータ(11)と、前記ステータに対向するロータ(12)と、を備える回転電機(10)であって、
前記ステータは、
径方向に沿って延在するティース(23)を有するステータコア(20)と、
前記ティースを被覆するボビン(30)と、
前記ボビンに巻回されているコイル(40)と、を備え、
前記ボビンは、
前記ティースの軸方向端面(24)を被覆する第1被覆部(31)と、
前記ティースの周方向端面(25)を被覆する第2被覆部(32)と、を備え、
前記第1被覆部は、前記コイルを形成する導線(41)をガイドする凹凸状のガイド部(33)を有し、
前記第2被覆部は、前記第2被覆部の表面における軸方向一端から軸方向他端にわたって平面部(37)を有している、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ及び回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のステータは、ティースを有するステータコアと、ティースを被覆するボビンと、ボビンに巻回されているコイルと、を備える。ボビンは、ティースの軸方向端面を被覆する第1被覆部と、ティースの周方向端面を被覆する第2被覆部とを有している。また、ボビンの表面には、コイルを形成する導線をガイドする凹凸状のガイド部が形成されている。ガイド部は、第1被覆部と第2被覆部とが交わる角部に設けられている。すなわち、ガイド部は、第1被覆部から第2被覆部にかけて設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-85870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなステータでは、コイルで生じた熱をボビンを介してステータコアのティースに伝えることで、その熱をステータコアから外部に放熱することが可能である。しかしながら、コイルを形成する導線がガイド部の各凹部に収まっている構成では、ガイド部の各凹部の間の凸部においてガイド部の厚さが厚くなる。これにより、コイルからティースへの伝熱がガイド部によって阻害される問題があった。
【0005】
本開示の目的は、コイルからティースへの伝熱性を向上させることを可能としたステータ及び回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するステータは、径方向に沿って延在するティース(23)を有するステータコア(20)と、前記ティースを被覆するボビン(30)と、前記ボビンに巻回されているコイル(40)と、を備えたステータ(11)であって、前記ボビンは、前記ティースの軸方向端面(24)を被覆する第1被覆部(31)と、前記ティースの周方向端面(25)を被覆する第2被覆部(32)と、を備え、前記第1被覆部は、前記コイルを形成する導線(41)をガイドする凹凸状のガイド部(33)を有し、前記第2被覆部は、前記第2被覆部の表面における軸方向一端から軸方向他端にわたって平面部(37)を有している。
【0007】
上記課題を解決する回転電機は、ステータ(11)と、前記ステータに対向するロータ(12)と、を備える回転電機(10)であって、前記ステータは、径方向に沿って延在するティース(23)を有するステータコア(20)と、前記ティースを被覆するボビン(30)と、前記ボビンに巻回されているコイル(40)と、を備え、前記ボビンは、前記ティースの軸方向端面(24)を被覆する第1被覆部(31)と、前記ティースの周方向端面(25)を被覆する第2被覆部(32)と、を備え、前記第1被覆部は、前記コイルを形成する導線(41)をガイドする凹凸状のガイド部(33)を有し、前記第2被覆部は、前記第2被覆部の表面における軸方向一端から軸方向他端にわたって平面部(37)を有している。
【0008】
上記のステータ及び回転電機によれば、ボビンの第2被覆部が上記平面部を有するため、ガイド部を有しない第2被覆部を構成することが可能となる。これにより、ガイド部を有しない第2被覆部においては、コイルからティースへの伝熱がガイド部によって阻害されない。したがって、コイルからティースへの伝熱性を向上させることが可能となる。その結果、コイルで生じた熱の放熱性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における回転電機の模式図である。
図2】同形態のステータにおける分割コア及びボビンの斜視図である。
図3】同形態のステータにおける分割ユニットの平面図である。
図4図3における4-4線断面図である。
図5図4における5-5線断面図である。
図6図4における6-6線断面図である。
図7】変更例のステータにおける分割ユニットの平面図である。
図8】変更例のステータにおける分割ユニットの平面図である。
図9】変更例のステータにおける分割ユニットの平面図である。
図10】変更例のステータにおける分割コア及びボビンの部分斜視図である。
図11】同変更例のステータの模式断面図である。
図12】同変更例のステータの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ステータ及び回転電機の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。
【0011】
図1に示すように、回転電機10は、ステータ11と、ステータ11に対向するロータ12とを備える。ステータ11は、円環状をなしている。ロータ12は、ステータ11の内側に配置される。ロータ12は、回転軸13を有する。ロータ12は、ステータ11に対して径方向に対向している。
【0012】
(ステータ11の構成)
ステータ11は、ステータコア20と、ボビン30と、コイル40とを備える。ステータコア20は、ステータ11の周方向に沿って環状に並ぶ複数の分割コア21を有する。本実施形態のステータコア20は、例えば12個の分割コア21を有する。各分割コア21は、例えば磁性金属材からなる。なお、以下の説明では、ステータ11の周方向、ステータ11の径方向、及びステータ11の軸方向をそれぞれ単に「周方向」、「径方向」及び「軸方向」と言う場合がある。
【0013】
各分割コア21は、バックヨーク22と、バックヨーク22から径方向に沿って延出するティース23とを有している。複数の分割コア21は、それぞれのバックヨーク22が全体で円環状をなすように周方向に沿って配置される。各ティース23は、径方向に沿って延在する。
【0014】
各分割コア21において、ティース23は、例えば、バックヨーク22の内側面から径方向内側に突出している。ティース23の先端部は、ステータ11の軸線L1を向いている。ティース23の基端部は、ティース23における径方向外側の端部である。
【0015】
各分割コア21には、ボビン30が設けられている。コイル40は、各ボビン30に巻回されている。すなわち、ボビン30は、分割コア21とコイル40との間に介在されている。これにより、ボビン30は、分割コア21とコイル40との間を電気的に絶縁する。それぞれ1つの分割コア21、ボビン30及びコイル40は、1つの分割ユニットUを構成している。分割ユニットUは、分割コア21、ボビン30及びコイル40からなる一体部品である。
【0016】
(ボビン30の構成)
図2は、分割コア21と、分割コア21に設けられたボビン30を示している。ボビン30は、合成樹脂等の絶縁体にて構成されている。ボビン30の材料としては、例えばエポキシ系樹脂等を用いることができる。ボビン30は、例えば、分割コア21に対してモールド成形されている。すなわち、分割コア21に対して一体に形成されている。これにより、ボビン30が分割コア21に対して密着した状態とすることが可能となる。
【0017】
なお、本実施形態の構成とは異なる構成として、例えば、分割コア21とは別で作製したボビンを分割コア21に後付けで装着する場合には、分割コア21とボビンとの間に大きな隙間が生じる懸念がある。その点、本実施形態のように、ボビン30を分割コア21に対してモールド成形することで、分割コア21とボビン30との間の隙間を無くす、もしくは当該隙間を極めて小さくすることが可能である。
【0018】
図3及び図4はそれぞれ、分割ユニットUを示している。図4に示すように、ティース23は、軸方向端面24と周方向端面25とを有している。軸方向端面24は、ティース23の軸方向一方側の端部と軸方向他端側の端部とにそれぞれ設けられている。周方向端面25は、ティース23の周方向一方側の端部と周方向他端側の端部とに設けられている。ティース23における径方向と直交する断面形状は、例えば長方形状をなす。各軸方向端面24は、例えば、軸方向に対して垂直な平面状をなす。各周方向端面25は、例えば、軸方向に対して平行な平面状をなす。
【0019】
ボビン30は、ティース23の軸方向端面24を被覆する第1被覆部31と、ティース23の周方向端面25を被覆する第2被覆部32とを有している。第1被覆部31は、ティース23の軸方向両側の軸方向端面24にそれぞれ対応して一対設けられている。第2被覆部32は、ティース23の周方向両側の周方向端面25にそれぞれ対応して一対設けられている。ボビン30におけるティース23を被覆する部位は、第1被覆部31と第2被覆部32とによってティース23を囲む環状をなしている。
【0020】
分割ユニットUにおいて、コイル40は、例えば1本の導線41にて構成されている。コイル40を構成する導線41は、第1被覆部31及び第2被覆部32の外表面上に複数巻回されている。第1被覆部31及び第2被覆部32は、コイル40とティース23との間に介在している。なお、導線41は、例えば絶縁電線である。導線41の横断面形状は、例えば円形状である。また、導線41は、例えばノズル式やフライヤ式等の図示しない巻線機によってボビン30に巻回される。このように、コイル40は、ボビン30に対して直巻きされる。すなわち、コイル40は、別途作製した所謂カセットコイルをボビン30の上からティース23に装着するものではない。このため、ボビン30の第1被覆部31及び第2被覆部32とコイル40との間の隙間を小さく抑えることが可能となる。したがって、周方向に隣り合うティース23の間に形成されるスロット内におけるコイル40の占積率を向上させることが可能となる。
【0021】
図2図4に示すように、第1被覆部31は、コイル40を形成する導線41をガイドする凹凸状のガイド部33を有している。ガイド部33は、導線41の巻回方向に沿って設けられている。第1被覆部31は、例えば、ガイド部33を一対有している。一対のガイド部33は、第1被覆部31の周方向両端部に設けられている。各ガイド部33は、第1被覆部31の周方向の中央側から端部にかけて、第1被覆部31の軸方向の厚さが小さくなるように湾曲している。また、第1被覆部31は、一対のガイド部33の間に中間部34を有している。中間部34は、例えば、軸方向に対して垂直な平面状をなしている。
【0022】
各ガイド部33は、複数の凸部35と、複数の凹部36とを有している。凸部35と凹部36は、径方向において交互に並んでいる。各凸部35及び各凹部36は、導線41の巻回方向に沿って延びている。導線41は、各凹部36に収まるように凹部36に沿って順次巻回される。なお、図3に示すように、ガイド部33は、第1被覆部31の径方向におけるコイル40が設けられる範囲Aの全域に設けられている。
【0023】
図5に示すように、ガイド部33における溝ピッチD1は、導線41の直径D2以上に設定されている。なお、図5及び後述する図6では、説明の便宜のため、コイル40におけるボビン30に接する1段目の導線41のみを図示している。溝ピッチD1は、隣り合う凸部35の頂部の間の長さである。すなわち、溝ピッチD1を導線41の直径D2とすることで、隣り合う凹部36に収まる導線41同士が接触しないように構成することが可能となる。
【0024】
図3及び図4に示すように、一対の第2被覆部32の各々は、第2被覆部32の表面に平面部37を有している。平面部37は、第2被覆部32の表面における軸方向一端から軸方向他端まで設けられている。これにより、図3及び図6に示すように、各第2被覆部32の表面は、軸方向から見て凹凸の無い直線状をなしている。
【0025】
図2及び図4に示すように、各ガイド部33における周方向内側の端部は、中間部34に隣接している。各ガイド部33における周方向外側の端部は、第1被覆部31の周方向端部まで延びている。そして、ガイド部33は、ガイド部33の周方向外側の端部において、平面部37と同一平面上に位置する平面端部38を有している。図4に示すように、各ガイド部33において、平面端部38は、軸方向端面24よりも軸方向外側に位置している。換言すると、平面端部38は、ティース23と周方向に重ならない位置にある。
【0026】
図3に示すように、ティース23は、ティース23の先端部から周方向の両側にそれぞれ突出する突出部26を有している。これにより、ティース23においてロータ12と径方向に対向する先端面を広くすることが可能となる。ボビン30の各第2被覆部32は、突出部26とコイル40との間にまで延びている。
【0027】
(本実施形態の作用)
各コイル40への通電によりステータ11で発生する回転磁界との相互作用によって、ロータ12が回転する。このとき、通電によりコイル40は発熱する。コイル40で生じた熱の一部は、ボビン30を介してティース23を含むステータコア20に伝わる。ステータコア20は、ボビン30等の周囲の部品に比べて熱導電率が高い材料にて形成されている。このため、コイル40の熱がステータコア20から好適に放熱される。
【0028】
ここで、ボビン30の各第2被覆部32は、軸方向一端から軸方向他端にわたって平面部37を有している。すなわち、ボビン30に設けられた凹凸状のガイド部33は、第2被覆部32には設けられておらず、第1被覆部31のみに設けられている。これにより、第2被覆部32は、ガイド部33が形成されることによって部分的に厚くなることがない。したがって、第2被覆部32においては、コイル40からティース23への伝熱がガイド部33によって阻害されることがない。その結果、コイル40の熱をティース23に好適に伝えることが可能となっている。
【0029】
(本実施形態の効果)
(1)ボビン30は、ティース23の軸方向端面24を被覆する第1被覆部31と、ティース23の周方向端面25を被覆する第2被覆部32と、を備える。第1被覆部31は、コイル40を形成する導線41をガイドする凹凸状のガイド部33を有している。そして、第2被覆部32は、第2被覆部32の表面における軸方向一端から軸方向他端にわたって平面部37を有している。この構成によれば、ガイド部33を有しない第2被覆部32を構成することが可能となる。すなわち、第2被覆部32の表面を、軸方向から見て凹凸の無い直線状とすることが可能となる。これにより、ガイド部33を有しない第2被覆部32においては、コイル40からティース23への伝熱がガイド部33によって阻害されない。したがって、コイル40からティース23への伝熱性を向上させることが可能となる。その結果、コイル40で生じた熱の放熱性を向上させることが可能となる。また、各第2被覆部32が平面部37を有することで、ボビン30のモールド成形時の軸方向に沿った型抜きにおけるアンダーカットをなくすことが可能となる。これにより、ボビン30の成形性を向上させることが可能となる。
【0030】
(2)ガイド部33は、前記第1被覆部の周方向の端部に設けられて平面部37と同一平面上に位置する平面端部38を有している。この構成によれば、導線41において第1被覆部31に沿う部位から第2被覆部32に沿う部位にかけての屈曲部分の近傍を、ガイド部33によってガイドすることが可能となる。これにより、導線41の整列性の向上に寄与できる。その結果、周方向に隣り合うティース23の間に形成されるスロット内におけるコイル40の占積率を向上させることが可能となる。また、ガイド部33の平面端部38によって、導線41における前記屈曲部分を好適にガイドすることが可能となる。
【0031】
(3)第2被覆部32は、ティース23の両側の周方向端面25にそれぞれ対応して一対設けられる。そして、一対の第2被覆部32は、平面部37をそれぞれ有している。この構成によれば、一対の第2被覆部32の各々について、ガイド部33を有しない構成とすることができる。したがって、コイル40からティース23への伝熱性をより好適に向上させることが可能となる。
【0032】
(4)ガイド部33における溝ピッチD1は、導線41の直径D2以上である。この構成によれば、コイル40のボビン30に接する1段目において、隣り合う導線41同士の間隔を確保しやすくなる。このため、当該隣り合う導線41同士の干渉を抑制することが可能となる。その結果、コイル40の整列性、ひいてはコイル40の占積率の向上に寄与できる。
【0033】
(5)ボビン30がステータコア20に対してモールド成形されている。この構成によれば、別途作製したボビンをステータコア20に装着する構成と比べて、ステータコア20とボビン30との間の隙間を無くす、もしくは隙間を小さく抑えることが可能となる。これにより、ボビン30からティース23を含むステータコア20に熱が伝わりやすくなる。したがって、コイル40の熱を、ボビン30を介してステータコア20に伝えやすくすることが可能となる。また、ステータコア20とボビン30との間の隙間を無くす、もしくは隙間を小さく抑えることで、周方向に隣り合うティース23の間に形成されるスロットを広く確保することが可能となる。その結果、スロット内におけるコイル40の占積率の向上に寄与できる。
【0034】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0035】
図7に示すように、ガイド部33は、第1被覆部31の径方向におけるコイル40が設けられる範囲A内において部分的に設けられている。詳述すると、図7に示す構成では、ガイド部33は、径方向における範囲Aの両端のみに設けられている。範囲Aの両端に設けられたガイド部33はそれぞれ、凸部35及び凹部36を少なくとも1つずつ有している。各ガイド部33の径方向の間には、ガイド部33のような凹凸の無い中間部39が設けられている。
【0036】
図7に示すような構成によれば、ガイド部33が第1被覆部31の径方向において部分的に設けられる。このため、第1被覆部31の径方向においてガイド部33が無い中間部39を設けることができる。これにより、第1被覆部31において、コイル40からティース23への伝熱がガイド部33によって阻害されない。したがって、コイル40からティース23への伝熱性をより一層向上させることが可能となる。
【0037】
また、ガイド部33が第1被覆部31の径方向において部分的に設けられることで、ボビン30の構造の簡素化が可能となるため、ステータ11の製造性を向上させることが可能となる。その結果、歩留まりの向上に寄与できる。
【0038】
・上記実施形態のボビン30では、一対の第2被覆部32がそれぞれ平面部37を有するが、これに特に限定されるものではなく、例えば図8に示すように、一対の第2被覆部32のうちの一方のみが平面部37を有する構成としてもよい。同図に示すように、平面部37を有する第2被覆部32を第2被覆部32aとし、平面部37を有しない第2被覆部32を第2被覆部32bとする。第2被覆部32bと隣接するガイド部33は、第2被覆部32bの少なくとも軸方向端部まで延びている。すなわち、第2被覆部32bと隣接する当該ガイド部33は、平面端部38を有していない。また、第2被覆部32bは、その少なくとも軸方向端部において、凸部35及び凹部36を含むガイド部33を有している。このような構成によれば、第2被覆部32bまで延びるガイド部33によって、導線41の整列性を向上させることが可能となる。
【0039】
図9に示すように、ガイド部33が列替え角度θを有する構成としてもよい。列替え角度θは、ボビン30を軸方向から見たとき、径方向に対して直交する基準線L2に対する角度である。列替え角度θは、導線41の径に応じた0度よりも大きな角度に設定される。導線41は、列替え角度θを有するガイド部33が設けられた第1被覆部31において、当該ガイド部33に沿って径方向に1列ずれるように巻かれる。このように、第1被覆部31に沿うコイル40の軸方向端部において、導線41の列替えがなされている。これにより、第2被覆部32に沿ったコイル40の部位では導線41の列替えが生じず、当該部位では導線41を軸方向に沿って配置することが可能となる。その結果、周方向に隣り合うティース23の間に形成されるスロット内におけるコイル40の占積率を向上させることが可能となる。
【0040】
図11及び図12に示すように、コイル40を覆う樹脂モールド部50を備えたステータ11の構成としてもよい。樹脂モールド部50は、複数のコイル40をまとめて覆っている。図11に示すように、樹脂モールド部50は、周方向に隣り合うコイル40の間に介在する第1部位51を有している。図12に示すように、樹脂モールド部50は、コイル40の軸方向外側を覆う第2部位52を有している。
【0041】
このような構成のステータ11では、分割コア21、ボビン30及びコイル40を含む分割ユニットUを環状に配置し、各コイル40を例えばバスバ等により電気的に接続する。その後、例えば、各コイル40、各ボビン30及び前記バスバなどをまとめて覆うように、樹脂モールド部50をモールド成形する。
【0042】
樹脂モールド部50は、例えば、ボビン30よりも熱伝導率が大きい樹脂にて形成されている。樹脂モールド部50の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂や不飽和ポリエステル系樹脂にアルミナ粉末等を混合した材料を用いることができる。ボビン30の熱伝導率は、例えば、1.0(W/m・K)に設定される。それに対し、樹脂モールド部50の熱伝導率は、例えば、2.0(W/m・K)以上に設定されることが好ましい。
【0043】
図10図12に示すように、第1被覆部31は、第1被覆部31の表面に径方向に沿って延びる溝部31aを有している。溝部31aは、例えば、第1被覆部31の周方向両端部にそれぞれ設けられたガイド部33の間に設けられている。溝部31aは、例えば、ボビン30の径方向の一端部から他端部まで形成されている。
【0044】
図12に示すように、樹脂モールド部50は、溝部31aに入り込んでいる充填部53を有している。充填部53は、コイル40と第1被覆部31との間に介在している。充填部53は、溝部31aの表面及びコイル40の内周面にそれぞれ密着している。
【0045】
このような構成によれば、コイル40の熱を樹脂モールド部50を介して効率的に外部に放出することが可能となる。放熱経路としては、例えば、コイル40から樹脂モールド部50を介してステータコア20に達する放熱経路や、コイル40から樹脂モールド部50を介して図示しないステータハウジングに達する放熱経路等である。
【0046】
第1被覆部31において、径方向視における各ガイド部33の湾曲形状を形成するために、第1被覆部31の周方向中央部分においてある程度の軸方向厚さが必要である。そこで、第1被覆部31の周方向中央部分に溝部31aを形成し、さらに、ボビン30よりも熱伝導率の大きい充填部53を溝部31aに充填している。これにより、コイル40からティース23への伝熱性を充填部53によって向上させることが可能となる。また、コイル40の第1被覆部31に沿う部位において、コイル40の内周側から樹脂モールド部50への放熱経路が形成することができる。その結果、コイル40の放熱性をより一層向上させることが可能となる。
【0047】
・上記実施形態では、ガイド部33が第1被覆部31の周方向両端部にそれぞれ設けられるが、これに以外に例えば、ガイド部33を第1被覆部31の周方向中央部のみに形成してもよい。
【0048】
・ガイド部33の溝ピッチD1の大きさは上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、溝ピッチD1を導線41の直径D2未満に設定してもよい。
・導線41の横断面形状は、円形状に限らず、多角形状、楕円形状、その他の任意の形状のいずれかの形状であってもよい。
【0049】
・上記実施形態のボビン30は、ステータコア20に対してモールド成形されるが、これに限らず、例えば、別途作製したボビンをステータコア20に装着する構成としてもよい。
【0050】
・上記実施形態の回転電機10は、ロータ12がステータ11の内周側に配置されるインナロータ型の回転電機であるが、これ以外に例えば、ロータがステータの外周側に配置されるアウタロータ型の回転電機に適用してもよい。
【0051】
・今回開示された実施形態及び変更例はすべての点で例示であって、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0052】
(付記)
本発明の特徴を以下の通り示す。
[1]径方向に沿って延在するティース(23)を有するステータコア(20)と、前記ティースを被覆するボビン(30)と、前記ボビンに巻回されているコイル(40)と、を備えたステータ(11)であって、前記ボビンは、前記ティースの軸方向端面(24)を被覆する第1被覆部(31)と、前記ティースの周方向端面(25)を被覆する第2被覆部(32)と、を備え、前記第1被覆部は、前記コイルを形成する導線(41)をガイドする凹凸状のガイド部(33)を有し、前記第2被覆部は、前記第2被覆部の表面における軸方向一端から軸方向他端にわたって平面部(37)を有している、ステータ。
【0053】
[2]前記ガイド部は、前記第1被覆部の周方向の端部に設けられ前記平面部と同一平面上に位置する平面端部(38)を有している、上記[1]に記載のステータ。
[3]前記第2被覆部は、前記ティースの周方向両端面(25,25)にそれぞれ対応して一対設けられ、前記一対の第2被覆部は、前記平面部をそれぞれ有している、上記[1]または[2]に記載のステータ。
【0054】
[4]前記ガイド部は、前記第1被覆部の径方向における前記コイルが設けられる範囲(A)内において部分的に設けられている、上記[1]から[3]のいずれか1つに記載のステータ。
【0055】
[5]前記ガイド部は、径方向における前記範囲の両端のみに設けられている、上記[4]に記載のステータ。
[6]前記ガイド部における溝ピッチ(D1)は、前記導線の直径(D2)以上である、上記[1]から[5]のいずれか1つに記載のステータ。
【0056】
[7]前記ガイド部は、列替え角度(θ)を有している、上記[1]から[6]のいずれか1つに記載のステータ。
[8]前記コイルを覆う樹脂モールド部(50)を備え、前記第1被覆部は、前記第1被覆部の表面に径方向に沿って延びる溝部(31a)を有し、前記樹脂モールド部は、前記溝部に入り込んでいる充填部(53)を有し、前記充填部は、前記コイルと前記第1被覆部との間に介在している、上記[1]から[7]のいずれか1つに記載のステータ。
【0057】
[9]ステータ(11)と、前記ステータに対向するロータ(12)と、を備える回転電機(10)であって、前記ステータは、径方向に沿って延在するティース(23)を有するステータコア(20)と、前記ティースを被覆するボビン(30)と、前記ボビンに巻回されているコイル(40)と、を備え、前記ボビンは、前記ティースの軸方向端面(24)を被覆する第1被覆部(31)と、前記ティースの周方向端面(25)を被覆する第2被覆部(32)と、を備え、前記第1被覆部は、前記コイルを形成する導線(41)をガイドする凹凸状のガイド部(33)を有し、前記第2被覆部は、前記第2被覆部の表面における軸方向一端から軸方向他端にわたって平面部(37)を有している、回転電機。
【符号の説明】
【0058】
10…回転電機、11…ステータ、12…ロータ、20…ステータコア、23…ティース、24…軸方向端面、25…周方向端面、30…ボビン、31…第1被覆部、31a…溝部、32…第2被覆部、33…ガイド部、37…平面部、38…平面端部、40…コイル、41…導線、50…樹脂モールド部、53…充填部、A…範囲、D1…溝ピッチ、D2…直径、θ…列替え角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12