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特開2023-176464ガス供給システム、及びガス供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176464
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ガス供給システム、及びガス供給方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/56 20060101AFI20231206BHJP
   F17C 7/00 20060101ALI20231206BHJP
   H02B 5/02 20060101ALI20231206BHJP
   H02B 13/065 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H01H33/56 C
F17C7/00 A
H02B5/02 A
H01H33/56 H
H02B13/065 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088756
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福波 一男
(72)【発明者】
【氏名】上田 恭二
(72)【発明者】
【氏名】小玉 和弘
【テーマコード(参考)】
3E172
5G017
5G028
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB20
3E172BA10
3E172BB03
3E172BB13
3E172EB02
3E172KA22
5G017DD12
5G028GG03
5G028GG17
5G028GG21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ガス開閉器の内部のガス圧を長期に亘り規定値以上に維持する。
【解決手段】ガス供給システムは、電柱の内部に形成されたガスの貯留空間、貯留空間とガス開閉器とを結ぶガスの供給経路、及び、情報処理装置(監視装置)を含む。ガス供給システムは、ガス開閉器の内部のガス圧が低下した場合に、供給経路に設けた開閉弁を開いて貯留空間からガス開閉器にガスを供給する。電柱は、例えば、電力会社によって管理される電柱であり、ガス開閉器は、例えば、上記の電柱とは異なる、需要家によって管理される他の電柱に設けられている。供給経路の少なくとも一部は、電力会社によって管理される電柱と他の電柱との間に架設される架空地線の内部に存在する隙間により構成される。情報処理装置は、ガス流量センサにより計測されたガスの流量に基づく情報(ガスの提供料金)を管理装置に送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱に設けられているガス開閉器にガスを供給するシステムであって、
電柱の内部に形成されたガスの貯留空間と、
前記貯留空間とガス開閉器とを結ぶガスの供給経路と、
を含み、
前記ガス開閉器の内部のガス圧が規定値未満になった場合に前記貯留空間から前記ガス開閉器にガスを供給する、
ガス供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載のガス供給システムであって、
前記電柱は電力会社によって管理される電柱であり、
前記ガス開閉器は、前記電柱とは異なる、需要家によって管理される他の電柱に設けられている、
ガス供給システム。
【請求項3】
請求項2に記載のガス供給システムであって、
前記供給経路の少なくとも一部は、電力会社によって管理される前記電柱と前記他の電柱との間に架設される架空地線の内部に存在する隙間により構成される、
ガス供給システム。
【請求項4】
請求項2に記載のガス供給システムであって、
プロセッサ、記憶装置、及び電力会社の管理装置と通信可能に接続する通信装置を有する情報処理装置と、
前記貯留空間から前記他のガス開閉器に供給したガスの流量を計測するガス流量センサと、
を更に含み、
前記情報処理装置が、前記ガス流量センサにより計測されたガスの流量に基づく情報を前記管理装置に送信する、
ガス供給システム。
【請求項5】
請求項1に記載のガス供給システムであって、
前記ガスは、SFガス(六フッ化硫黄ガス)である、
ガス供給システム。
【請求項6】
電柱に設けられているガス開閉器にガスを供給する方法であって、
電柱の内部にガスの貯留空間を設け、
前記貯留空間とガス開閉器とを結ぶガスの供給経路を設け、
前記ガス開閉器の内部のガス圧が規定値未満になった場合に前記貯留空間から前記ガス開閉器にガスを供給する、
ガス供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス開閉器の内部にガスを供給するガス供給システム、及びガス供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配電線路に設けられるガス開閉器(Gas insulated Switch)には、内部に収容されている機器の絶縁性や消弧性(電流遮断性)を確保するためにSFガス等のガスが充填されている。ガス開閉器の経年劣化等に伴い、ガス開閉器内のガス圧が低下すると、絶縁性及び消弧性が低下してガス開閉器を安全に運転することができなくなる。そのため、従来より、ガス開閉器の内部のガス圧の監視やガス圧が低下した際の対処に関する様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ガス開閉器のガス漏れを効率よく監視することを目的として構成された遠方監視制御装置について記載されている。遠方監視制御装置は、複数のSFガス開閉器を開閉操作する子局に開閉操作を指令する親局を備える。親局は、自動ガス開閉器のガス圧レベルを検出する圧力スイッチの接点信号により、ガス圧状態の信号を取り込んだ子局に対してガス漏れチェック信号を送信する。子局は、自動ガス開閉器のガス漏れを検知すると親局へガス開閉器内のガス圧を示す信号を返信する。
【0004】
また、特許文献2には、SFガスの漏洩判定を定量的に行うことを目的として構成されたSFガス封入負荷開閉器について記載されている。SFガス封入負荷開閉器は、SFガスを封入したタンク内に設置され酸素ガスに感応して出力を発生する燃料電池に接続され同燃料電池の発生する出力があらかじめ定めたガス洩れ判定設定値を越えたか否かを判定し、開閉器の作用を停止させてガス洩れ警報を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4-9652号公報
【特許文献2】実開平4-105438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、運用中のガス開閉器についてガス圧の低下が検出された際は、作業者が現場に赴き、ガス開閉器へのガスの充填やガス開閉器の交換等の作業を行うが、作業中は事故防止のためにガス開閉器の動作を停止させる必要があり、その間、配電線路の冗長性が低下し、場合によっては需要家への電力供給に影響が生じることもある。
【0007】
上記の特許文献1の遠方監視制御装置では、ガス開閉器のガス漏れが検知されると親局へガス開閉器内のガス圧が通知される。また、特許文献2のSFガス封入負荷開閉器は、ガス洩れ判定設定値を越えたか否かを判定し、開閉器の作用を停止させ、ガス洩れ警報を表示する。しかし、いずれも文献においても、ガス開閉器の動作の停止を回避する仕組みについては開示されていない。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、ガス開閉器の内部のガス圧を長期に亘って規定値以上に維持することが可能な、ガス供給システム、及びガス供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段の一つは、電柱に設けられているガス開閉器にガスを供給するシステムであって、電柱の内部に形成されたガスの貯留空間と、前記貯留空間とガス開閉器とを結ぶガスの供給経路と、を含み、前記ガス開閉器の内部のガス圧が低下した場合に、前記供給経路に設けた開閉弁を開いて前記貯留空間から前記ガス開閉器にガスを供給する。
【0010】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガス開閉器の内部のガス圧を長期に亘って規定値以上に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ガス供給システムが適用される配電設備の一例である。
図2】監視装置の一例である。
図3】第1開閉器ガス供給処理を説明するフローチャートである。
図4】第2開閉器ガス供給処理を説明するフローチャートである。
図5】貯留ガス供給要否監視処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。以下、本発明をその一実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、一実施形態にかかるガス供給システム1が適用される配電設備の一例である。同図に示すように、例示する配電設備は、現場に隣接して設けられた2本の電柱(電力会社柱100、高圧需要家柱200)と、現場に設けられた各種の電力設備(単相3線式の配電線310,320,330(L1線,L2線、中性線)、第1ガス開閉器120、第2ガス開閉器220等)を含む。尚、同図に示す2本の電柱のうち、電力会社柱100は、電力会社によって管理される電柱であり、また、高圧需要家柱200は、高圧需要家によって管理される電柱である。
【0015】
電力会社柱100の上部付近には、当該電柱から水平方向に延出する腕金(以下、「第1腕金110」と称する。)に第1ガス開閉器120が懸下された状態で設けられている。また、高圧需要家柱200の上部付近には、当該電柱から水平方向に延出する腕金(以下、「第2腕金210」と称する。)に第2ガス開閉器220が懸下された状態で設けられている。第1ガス開閉器120及び第2ガス開閉器220は、金属等の素材からなる密閉容器と、密閉容器内に収納される各種の機器(遮断器、断路器、変圧器、避雷器、各種端子等)を含む。また、第1ガス開閉器120及び第2ガス開閉器220の内部には、内部に収納されている機器の絶縁性や消弧性の確保を目的としてガス(例えば、SFガス(六フッ化硫黄ガス)、COガス(炭酸ガス)等)が充填されている。
【0016】
同図に示すように、電力会社柱100の第1ガス開閉器120の上流側の3つの端子は、上流側の3本の配電線310,320,330の夫々から分岐する3つの支線に接続されている。また、第1ガス開閉器120の下流側の3つの端子は、支線を介して下流側の3本の配電線310,320,330に接続されている。また、第1ガス開閉器120の上流側の3本の配電線310,320,330は、第1ガス開閉器120の上流側の3つの端子に接続する手前で上記の各支線と分岐し、第1腕金110を貫通して支持されている。
【0017】
一方、高圧需要家柱200の第2ガス開閉器220の上流側の3つの端子は、上流側(第1ガス開閉器120側)の3本の配電線310,320,330の夫々から分岐する3つの支線に接続されている。また、第2ガス開閉器220の下流側の3つの端子は、高圧需要家に電力を供給するための3本の引き込み線340,350,360に接続されている。また、第2ガス開閉器220の上流側の3本の配電線310,320,330は、第2ガス開閉器220の上流側の3つの端子に接続する手前で上記の各支線と分岐し、第2腕金210を貫通して支持されている
【0018】
電力会社柱100及び高圧需要家柱200の間には、電力会社柱100及び高圧需要家柱200の夫々の頂部付近において支持される架空地線370が架設されている。架空地線370は、導線を樹脂で被覆したものであり、直撃雷や誘導雷からの電力設備の保護等を目的として設けられる。
【0019】
電力会社柱100は、例えば、円筒形状のコンクリート柱や鋼管柱である。電力会社柱100は、略円筒形状を呈し、内部に空間140(貯留空間)を有する。そしてこの空間140には、第1ガス開閉器120又は第2ガス開閉器220に供給(補充)するガスが貯留される。尚、空間140内にガスを安定して貯留するには空間140内を気密に保つ必要があるが、気密性の確保は、例えば、空間140の内面に樹脂等の遮蔽効果を有する素材をコーティングすることにより行う。また、例えば、気密性を有する樹脂製又は金属製の容器(袋状のものでもよい)を空間140に収容し、当該容器内にガスを貯留するようにしてもよい。以下、空間140に貯留されているガスのことを「貯留ガス」とも称する。
【0020】
同図に示すように、電力会社柱100の下方の所定の高さ位置には、第1ガス開閉器120及び第2ガス開閉器220のガス圧の監視、空間140に貯留されている貯留ガスのガス圧の監視、及び空間140からの第1ガス開閉器120及び第2ガス開閉器220への貯留ガスの供給を制御に関する処理を行う情報処理装置(以下、「監視装置500」と称する。)が設けられている。尚、監視装置500の詳細については後述する。
【0021】
空間140と第1ガス開閉器120の内部は、ガスが流通可能な経路(以下、「第1ガス供給経路141」と称する。)によって接続されている。空間140に貯留されているガスは、第1ガス供給経路141を通じて第1ガス開閉器120の内部に供給される。第1ガス供給経路141の態様は必ずしも限定されないが、例えば、配管(パイプ)、各種継手、シール剤、ホース等を用いて構成される。尚、第1ガス開閉器120の近傍において、第1ガス供給経路141は、第1腕金110の内部に設けてもよいし、第1腕金110の外部に設けてもよい。
【0022】
第1ガス供給経路141の所定位置には、空間140から第1ガス開閉器120の内部へのガスの供給を制御する第1開閉弁142が設けられている。第1開閉弁142は、遠隔制御機構を備えるとともに、監視装置500と有線又は無線により通信可能に接続されており、監視装置500から開閉を遠隔制御することができる。
【0023】
空間140と第2ガス開閉器220の内部は、ガスが流通可能な経路(以下、「第2ガス供給経路245」と称する。)によって接続されている。空間140に貯留されているガスは、第2ガス供給経路245を通じて第2ガス開閉器220の内部に供給される。第2ガス供給経路245の態様は必ずしも限定されないが、例えば、配管(パイプ)、各種継手、シール剤、ホース等を用いて構成される。
【0024】
尚、本実施形態では、第2ガス供給経路245として、架空地線370の被覆の内部に存在する隙間380(例えば、直径5mm程度の空間)を利用している。同図に示すように、架空地線370の一端は、電力会社柱100の空間140に接続されている。また、架空地線370の他端は、第2ガス開閉器220の内部に接続されている。このように、第2ガス供給経路245として既存の設備を利用することで、ガス供給システム1の導入負荷を軽減することができる。第2ガス開閉器220の近傍において、第2ガス供給経路245は、第2腕金210の内部に設けてもよいし、第2腕金210の外部に設けてもよい。
【0025】
第2ガス供給経路245の所定位置には、空間140から第2ガス開閉器220の内部へのガスの供給を制御する第2開閉弁246と、空間140から第2ガス開閉器220に供給されたガスの流量(ある時点以降に供給されたガスの積算値)を計測するガス流量計247が設けられている。第2開閉弁246は、遠隔制御機構を備えるとともに、監視装置500と有線又は無線により通信可能に接続されており、監視装置500からその開閉を遠隔制御することができる。また、ガス流量計247は、監視装置500と有線又は無線により通信可能に接続されており、ガス流量の計測値を監視装置500に送信する。
【0026】
第1ガス開閉器120には、第1ガス開閉器120の内部のガス圧を計測するセンサ(以下、「第1圧力センサ121」と称する。)が設けられている。第1圧力センサ121は、無線又は有線により監視装置500と通信し、第1ガス開閉器120のガス圧の計測値を監視装置500に随時(常時、逐時等)送信する。
【0027】
第2ガス開閉器220には、第2ガス開閉器220の内部のガス圧を計測するセンサ(以下、「第2圧力センサ221」と称する。)が設けられている。第2圧力センサ221は、無線又は有線により監視装置500と通信し、第2ガス開閉器220のガス圧の計測値を監視装置500に随時(常時、逐時等)送信する。
【0028】
空間140には、空間140内の貯留ガスのガス圧を計測するセンサ(以下、「第3圧力センサ151」と称する。)が設けられている。第3圧力センサ151は、無線又は有線により監視装置500と通信し、空間140のガス圧の計測値を監視装置500に随時(常時、逐時等)送信する。
【0029】
監視装置500は、プロセッサ、記憶装置、表示装置、及び通信装置を有する情報処理装置(コンピュータ)を含む。尚、監視装置500の機能は、監視装置500が備えるハードウェアにより、もしくは、プロセッサが記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。図1に示すように、監視装置500は、電力会社に設けられている情報処理装置(例えば、中央制御所等の統括管理センターに設けられている情報処理装置。以下、「管理装置30」と称する。)と無線又は有線により通信可能に接続している。
【0030】
監視装置500は、第1圧力センサ121から送られてくる計測値(第1ガス開閉器120の内部のガス圧)を随時(常時、逐時等)監視する。監視装置500は、第1ガス開閉器120の内部のガス圧(以下、「第1ガス圧」と称する。)が第1ガス開閉器120について予め設定された規定値である第1閾値未満になると、第1開閉弁142を開いて、空間140から第1ガス開閉器120の内部へのガスの供給を開始し、その後、第1ガス圧が第1閾値以上になると、第1開閉弁142を閉じて、空間140から第1ガス開閉器120の内部へのガスの供給を停止する。
【0031】
また、監視装置500は、第2圧力センサ221から受信した計測値(第2ガス開閉器220の内部のガス圧)を随時(常時、逐時等)監視する。監視装置500は、第2ガス開閉器220の内部のガス圧(以下、「第2ガス圧」と称する。)が第2ガス開閉器220について予め設定された規定値である第2閾値未満になると、第2開閉弁246を開いて、空間140から第2ガス開閉器220の内部にガスの供給を開始し、その後、第2ガス圧が第2閾値以上になると、第2開閉弁246を閉じて、空間140から第2ガス開閉器220の内部へのガスの供給を停止する。
【0032】
また、監視装置500は、ガス流量計247から送られてくるガス流量の計測値を受信し、受信した計測値に基づきガスの提供料金(供給料金)を計算する。監視装置500は、例えば、空間140から第2ガス開閉器220に前回供給された時点におけるガス流量の計測値(当該時点におけるガス流量の積算値。以下、「開始時計測値」と称する。)を記憶しておき、開始時計測値と今回の供給が完了した時点におけるガス流量の計測値(当該時点におけるガス流量の積算値、以下、「終了時計測値」と称する。)との差(=終了時計測値-開始時計測値)を、今回のガス供給量として提供料金を計算する。尚、提供料金は、例えば、ガス自体の料金、ガス供給装置の利用料金等を含む。提供料金は、第2ガス開閉器220に貯留ガスを提供したことについての高圧需要家に対する請求額となる。監視装置500は、計算した提供料金を管理装置30に送信して電力会社の担当者に通知する。担当者は、上記通知された提供料金を高圧需要家に請求する。
【0033】
また、監視装置500は、第3圧力センサ151から受信した計測値(空間140の貯留ガスのガス圧(以下、「第3ガス圧」と称する。))を監視する。監視装置500は、第3ガス圧が予め設定された規定値である第3閾値未満になると、空間140へのガスの補充が必要であることを示す情報を電力会社の管理装置30に送信し、貯留ガスの補充が必要である旨を電力会社の担当者に通知する。担当者は、上記通知を確認すると、例えば、ガスの供給車両を現場に向かわせ、空間140へのガスの供給(補充)を行う。
【0034】
尚、前述した第1閾値、第2閾値、及び第3閾値のうちの少なくともいずれかを、ガス供給システム1の管理者等のユーザが監視装置500に対して設定するためのユーザインタフェースを設けてもよい。上記のユーザインタフェースは、例えば、監視装置500に設けてもよいし、監視装置500と通信可能に接続された情報処理装置(スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等)が提供するようにしてもよい。
【0035】
図2に監視装置500の一例を示している。同図に示すように、監視装置500の主な構成要素は、電力会社柱100に取り付けられる筐体510に収容されている。例示する筐体510の前面には、表示装置(表示パネル520,530,535,540)、開閉器(バルブ)を備えたガス供給口550等が設けられている。
【0036】
表示パネル520には、第1圧力センサ121から受信した第1ガス開閉器120の内部のガス圧(第1ガス圧)が表示される。また、表示パネル530には、第2圧力センサ221から受信した第2ガス開閉器220の内部のガス圧(第2ガス圧)が表示される。また、表示パネル535には、第3圧力センサ151から受信した、貯留ガスのガス圧(第3ガス圧)が表示される。表示パネル540には、電力会社柱100の空間140から第2ガス開閉器220に供給されたガスの供給量と、当該供給量に応じた提供料金が表示される。
【0037】
ガス供給口550は、電力会社柱100の壁面を貫通する開口130を介して空間140に接続している。空間140へのガスの供給は、例えば、ガスの供給車両に搭載されているガスタンクから延びるガス供給管の端部をガス供給口550に連結して行われる。筐体510は、施錠機能付きの蓋570を有する。例えば、平時は蓋570を閉じて施錠しておくことで、許可されていない者が表示装置やガス供給口550にアクセスするのを防ぐことができる。
【0038】
次に、監視装置500が行う主な処理について説明する。
【0039】
図3は、第1ガス開閉器120への貯留ガスの供給(補充)に関して監視装置500が行う処理(以下、「第1開閉器ガス供給処理S300」と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともに第1開閉器ガス供給処理S300について説明する。
【0040】
監視装置500は、第1圧力センサ121から送られてくる第1ガス圧を受信すると、受信した第1ガス圧を表示パネル520に表示する(S311)。また、監視装置500は、受信した第1ガス圧が第1閾値以上か否かを判定する(S312)。監視装置500が第1ガス圧が第1閾値以上であると判定した場合、即ち、第1ガス開閉器120へのガスの供給(補充)は不要と判定した場合(S312:Yes)、処理はS311に戻る。一方、監視装置500が第1ガス圧が第1閾値未満であると判定した場合、即ち、第1ガス開閉器120へのガスの供給(補充)が必要と判定した場合(S312:No)、処理はS313に進む。
【0041】
S313では、監視装置500は、第1開閉弁142を開いて空間140から第1ガス開閉器120の内部へのガスの供給を開始する。その後、監視装置500は、第1圧力センサ121から送られてくる第1ガス圧が第1閾値以上であるか否かを判定する(S314)。監視装置500が第1ガス圧が第1閾値未満であると判定した場合、即ち、第1ガス開閉器120へのガスの供給(補充)が完了していないと判定した場合(S314:No)、処理はS314に戻る。一方、監視装置500が第1ガス圧が第1閾値以上であると判定した場合、即ち、第1ガス開閉器120へのガスの供給(補充)が完了したと判定した場合(S314:Yes)、処理はS315に進む。
【0042】
S315では、監視装置500は、第1開閉弁142を閉じて空間140から第1ガス開閉器120の内部へのガスの供給を停止する。その後、処理はS311に戻る。
【0043】
このように、第1ガス圧が第1閾値未満になると、監視装置500が第1開閉弁142を開いて空間140から第1ガス開閉器120の内部へガスを供給するので、第1ガス開閉器120の内部のガス圧(第1ガス圧)を自動的に長期に亘って必要な値に維持することができる。
【0044】
図4は、第2ガス開閉器220への貯留ガスの供給(補充)に関して監視装置500が行う処理(以下、「第2開閉器ガス供給処理S400」と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともに第2開閉器ガス供給処理S400について説明する。
【0045】
監視装置500は、第2圧力センサ221から送られてくる第2ガス圧を受信すると、受信した第2ガス圧を表示パネル530に表示する(S411)。また、監視装置500は、受信した第2ガス圧が第2閾値以上であるか否かを判定する(S412)。監視装置500が第2ガス圧が第2閾値以上であると判定した場合、即ち、第2ガス開閉器220へのガスの供給(補充)は不要と判定した場合(S412:Yes)、処理はS411に戻る。一方、監視装置500が第2ガス圧が第2閾値未満であると判定した場合、即ち、第2ガス開閉器220へのガスの供給(補充)が必要と判定した場合(S412:No)、処理はS413に進む。
【0046】
S413では、監視装置500は、第2開閉弁246を開いて空間140から第2ガス開閉器220の内部へのガスの供給を開始する。その後、監視装置500は、第2圧力センサ221から送られてくる第2ガス圧が第2閾値以上であるか否かを判定する(S414)。監視装置500が第2ガス圧が第2閾値未満であると判定した場合、即ち、第2ガス開閉器220へのガスの供給(補充)が完了していないと判定した場合(S414:No)、処理はS414に戻る。一方、監視装置500が第2ガス圧が第2閾値以上であると判定した場合、即ち、第2ガス開閉器220へのガスの供給(補充)が完了したと判定した場合(S414:Yes)、処理はS415に進む。
【0047】
S415では、監視装置500は、第2開閉弁246を閉じて空間140から第2ガス開閉器220の内部へのガスの供給を停止する。その後、処理はS411に戻る。
【0048】
このように、第2ガス圧が第2閾値未満になると、監視装置500が第2開閉弁246を開いて空間140から第2ガス開閉器220の内部へガスを供給するので、第2ガス開閉器220の内部のガス圧(第2ガス圧)を自動的に長期に亘って必要な値に維持することができる。
【0049】
続いて、監視装置500は、ガス流量計から送られてくる計測値を受信し(S416)、受信した計測値に基づき提供料金を計算する(S417)。
【0050】
続いて、監視装置500は、計算した提供料金を表示パネル540に表示する。また、監視装置500は、提供料金を管理装置30に送信する(S418)。
【0051】
図5は、空間140の貯留ガスの監視(空間140へのガスの供給(補充)が必要であるか否かの監視)に関して監視装置500が行う処理(以下、「貯留ガス供給要否監視処理S500」と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともに貯留ガス供給要否監視処理S500について説明する。
【0052】
監視装置500は、第3圧力センサ151から送られてくる第2ガス圧を受信すると、受信した第3ガス圧を表示パネル535に表示する(S511)。また、監視装置500は、受信した第3ガス圧が第3閾値以上であるか否かを判定する(S512)。監視装置500が第3ガス圧が第3閾値以上であると判定した場合、即ち、空間140へのガスの供給(補充)は不要と判定した場合(S512:Yes)、処理はS511に戻る。一方、監視装置500が第3ガス圧が第3閾値未満であると判定した場合、即ち、空間140へのガスの供給(補充)が必要と判定した場合(S512:No)、処理はS513に進む。
【0053】
S513では、監視装置500は、空間140へのガスの補充が必要であることを示す情報を管理装置30に送信する。
【0054】
以上に説明したように、本実施形態のガス供給システム1によれば、電力会社柱100に設けられている第1ガス開閉器120や、高圧需要家柱200に設けられている第2ガス開閉器220の内部に充填されているガスの圧力が低下すると、電力会社柱100の空間140からガスが第1ガス開閉器120や第2ガス開閉器220に供給される。そのため、第1ガス開閉器120や第2ガス開閉器220の内部のガス圧を、絶縁性及び消弧性を確保するために必要な値(規定値)以上に長期に亘って維持することができ、保守間隔の長期化や需要家への電気の安定供給が可能になる。
【0055】
また、本実施形態のガス供給システム1によれば、電柱の内部の空間をガスの貯留庫として有効に活用することができる。
【0056】
また、本実施形態のガス供給システム1によれば、空間140に貯留されているガスの圧力が低下すると、電力会社の担当者に空間140へのガスの補充が必要である旨が電力会社の担当者に通知される。そのため、空間140へのガスの補充を迅速に行うことができ、必要量のガスを空間140に常時準備しておくことができる。
【0057】
また、本実施形態のガス供給システム1によれば、高圧需要家柱200に設けられている第2ガス開閉器220に空間140からガスが供給されると、その提供料金が自動的に電力会社の担当者に通知される。そのため、電力会社は、提供料金の請求に関する業務を効率よく行うことができる。また、電力会社は、例えば、高圧需要家へのガスの供給サービスを新たなビジネスモデルとして展開することができる。
【0058】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0059】
例えば、以上では、2本の電柱(電力会社柱100、高圧需要家柱200)が設けられた現場に本発明を適用する場合を例示したが、本発明は、より多くの本数の電柱が存在する場合にも適用することができる。またその場合、例えば、一つの監視装置500が多数のガス開閉器へのガスの供給を管理するようにすれば、ガス供給システム1を効率よく広域に展開することができる。
【0060】
また、以上では、開閉弁の開閉を監視装置500から制御することにより、電力会社柱100の空間140から第1ガス開閉器120や第2ガス開閉器220へのガスの供給を制御するようにしたが、ガスの供給を制御する仕組みは必ずしも限定されない。例えば、空間140からガス開閉器の方向へのガスの流通のみが可能になるように供給経路に逆止弁を設け、空間140のガス圧とガス開閉器のガス圧の差(差圧)により、空間140から第1ガス開閉器120や第2ガス開閉器220へのガスの供給が自動的に制御されるようにしてもよい。これにより監視装置500や開閉弁の構成を簡素化することができる。
【0061】
また、以上では、電柱に設けられているガス開閉器にガスを供給する場合を例示したが、本発明は、地中線ガス開閉器等の他の種類のガス開閉器にガスを供給する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 ガス供給システム、30 管理装置、100 電力会社柱、110 第1腕金、120 第1ガス開閉器、121 第1圧力センサ、130 開口、140 空間、141 第1ガス供給経路、142 第1開閉弁、151 第3圧力センサ、200 高圧需要家柱、210 第2腕金、220 第2ガス開閉器、221 第2圧力センサ、245 第2ガス供給経路、246 第2開閉弁、247 ガス流量計、380 隙間、550 ガス供給口、240 開閉弁、370 架空地線、500 監視装置、510 筐体、520,530,540 表示パネル、570 蓋
図1
図2
図3
図4
図5