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特開2023-176469情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176469
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20231206BHJP
【FI】
G05D1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088763
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】峯本 俊文
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 博
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD15
5H301KK03
5H301KK08
(57)【要約】
【課題】高い搬送スループットを得ることが可能となる。
【解決手段】情報処理装置は、自律移動可能な複数のロボットに対して求められた経路計画であって始点から終点まで移動するために経由する位置及び領域の少なくとも一方に予定時刻が定められた経路計画に従って、前記ロボットの各々に移動指示を出力する経路指示部と、前記ロボットの各々について、前記経路計画と、当該ロボットの移動実績であって位置及び領域の少なくとも一方の到着時刻が記録された移動実績とに基づいて、当該ロボットについて計画された位置及び領域の少なくとも一方に対する前記経路計画と前記移動実績との差異を監視する監視部と、前記差異が再計画の条件に当てはまる場合に、前記経路計画を再計画する経路計画部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律移動可能な複数のロボットに対して求められた経路計画であって始点から終点まで移動するために経由する位置及び領域の少なくとも一方に予定時刻が定められた経路計画に従って、前記ロボットの各々に移動指示を出力する経路指示部と、
前記ロボットの各々について、前記経路計画と、当該ロボットの移動実績であって位置及び領域の少なくとも一方の到着時刻が記録された移動実績とに基づいて、当該ロボットについて計画された位置及び領域の少なくとも一方に対する前記経路計画と前記移動実績との差異を監視する監視部と、
前記差異が再計画の条件に当てはまる場合に、前記経路計画を再計画する経路計画部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記監視部は、前記差異として、予定時刻と到着時刻との時刻の差異又は進入順序の差異を監視する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記ロボットの各々から位置情報を収集する収集部を更に含み、
前記監視部は、
前記位置に対する前記差異として、前記経路計画の経由点の計画位置に到達した時点において、前記経由点の予定時刻と、前記ロボットの各々の前記位置情報から求まる前記移動実績の前記経由点への到着時刻との時刻の差異を監視し、
前記領域に対する前記差異として、前記経路計画において計画された経由領域への進入順序と、前記ロボットの各々の前記移動実績から記録された実際の進入順序との進入順序の差異を監視し、
前記経路計画部は、
前記再計画の条件として前記時刻の差異を用いる場合には、時刻の差が閾値以上である場合に、前記経路計画を再計画し、
前記再計画の条件として前記進入順序の差異を用いる場合には、進入順序が異なる場合に、前記経路計画を再計画する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記位置に対する前記差異には、前記経由点ごとに重みを設定し、重みに応じた時間差の閾値を定める請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記領域に対する前記差異には、前記経由領域に対する進入順序が異なる場合の許容数を定め、前記実際の進入順序が異なる数が許容数以上の場合に進入順序が異なると判定する請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記経路計画部は、
前記差異の影響が生じる前記ロボットを抽出し、抽出した前記ロボットについて前記経路計画に係る経路を再計画する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータが、
自律移動可能な複数のロボットに対して求められた経路計画であって始点から終点まで移動するために経由する位置及び領域の少なくとも一方に予定時刻が定められた経路計画に従って、前記ロボットの各々に移動指示を出力し、
前記ロボットの各々について、前記経路計画と、当該ロボットの移動実績であって位置及び領域の少なくとも一方の到着時刻が記録された移動実績とに基づいて、当該ロボットについて計画された位置及び領域の少なくとも一方に対する前記経路計画と前記移動実績との差異を監視し、
前記差異が再計画の条件に当てはまる場合に、前記経路計画を再計画する、
情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
自律移動可能な複数のロボットに対して求められた経路計画であって始点から終点まで移動するために経由する位置及び領域の少なくとも一方に予定時刻が定められた経路計画に従って、前記ロボットの各々に移動指示を出力し、
前記ロボットの各々について、前記経路計画と、当該ロボットの移動実績であって位置及び領域の少なくとも一方の到着時刻が記録された移動実績とに基づいて、当該ロボットについて計画された位置及び領域の少なくとも一方に対する前記経路計画と前記移動実績との差異を監視し、
前記差異が再計画の条件に当てはまる場合に、前記経路計画を再計画する、
処理を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発開示は、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送管理のための技術が提案されている。例えば特許文献1には、種々のコストをかけずに、サイズや重量が異なる種々の搬送対象物を搬送するための搬送システムに関する技術が開示されている。この技術の搬送システムでは、複数の搬送装置(ロボット)のうち少なくとも一台は、移動計画情報と搬送装置状態情報とに基づいて、複数の搬送装置が実行するべき機能の割当を行って機能割当情報を生成する機能割当部を有するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-048689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
もっとも従来技術では、複数のロボットの経路が互いに重なり合い渋滞等が発生する問題があった。そのため、搬送管理では、可能な限り効率的な経路に従って複数のロボットを目的地へ自律走行させることが課題となる。
【0005】
本開示の技術は、上記の点に鑑みてなされたものであり、従来技術と比較して、自律移動可能なロボットの移動実績に応じて経路計画を管理し、高い搬送スループットを得ることが可能な情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示に係る情報処理装置は、自律移動可能な複数のロボットに対して求められた経路計画であって始点から終点まで移動するために経由する位置及び領域の少なくとも一方に予定時刻が定められた経路計画に従って、前記ロボットの各々に移動指示を出力する経路指示部と、前記ロボットの各々について、前記経路計画と、当該ロボットの移動実績であって位置及び領域の少なくとも一方の到着時刻が記録された移動実績とに基づいて、当該ロボットについて計画された位置及び領域の少なくとも一方に対する前記経路計画と前記移動実績との差異を監視する監視部と、前記差異が再計画の条件に当てはまる場合に、前記経路計画を再計画する経路計画部と、を備える。これにより、高い搬送スループットを得ることが可能となる。
【0007】
前記監視部は、前記差異として、予定時刻と到着時刻との時刻の差異又は進入順序の差異を監視するようにしてもよい。これにより、時刻又は進入順序の実績に応じて、高い搬送スループットを得ることが可能となる。
【0008】
前記ロボットの各々から位置情報を収集する収集部を更に含み、前記監視部は、前記位置に対する前記差異として、前記経路計画の経由点の計画位置に到達した時点において、前記経由点の予定時刻と、前記ロボットの各々の前記位置情報から求まる前記移動実績の前記経由点への到着時刻との時刻の差異を監視し、前記領域に対する前記差異として、前記経路計画において計画された経由領域への進入順序と、前記ロボットの各々の前記移動実績から記録された実際の進入順序との進入順序の差異を監視し、前記経路計画部は、前記再計画の条件として前記時刻の差異を用いる場合には、時刻の差が閾値以上である場合に、前記経路計画を再計画し、前記再計画の条件として前記進入順序の差異を用いる場合には、進入順序が異なる場合に、前記経路計画を再計画するようにしてもよい。これにより、経由点に対する到着時刻又は経由領域に対する進入順序に応じて、高い搬送スループットを得ることが可能となる。
【0009】
位置に対する差異には、経由点ごとに重みを設定し、重みに応じた時間差の閾値を定めるようにしてもよい。これにより、搬送効率への影響を経由点ごとに考慮して、高い搬送スループットを得ることが可能となる。
【0010】
領域に対する前記差異には、経由領域に対する進入順序が異なる場合の許容数を定め、実際の進入順序が異なる数が許容数以上の場合に進入順序が異なると判定するようにしてもよい。これにより、搬送効率への影響を経由領域ごとに考慮して、高い搬送スループットを得ることが可能となる。
【0011】
前記経路計画部は、前記差異の影響が生じる前記ロボットを抽出し、抽出した前記ロボットについて前記経路計画に係る経路を再計画するようにしてもよい。これにより、計算量を削減しつつ、高い搬送スループットを得ることが可能となる。
【0012】
上記目的を達成するために、本開示に係る情報処理方法は、コンピュータが、自律移動可能な複数のロボットに対して求められた経路計画であって始点から終点まで移動するために経由する位置及び領域の少なくとも一方に予定時刻が定められた経路計画に従って、前記ロボットの各々に移動指示を出力し、前記ロボットの各々について、前記経路計画と、当該ロボットの移動実績であって位置及び領域の少なくとも一方の到着時刻が記録された移動実績とに基づいて、当該ロボットについて計画された位置及び領域の少なくとも一方に対する前記経路計画と前記移動実績との差異を監視し、前記差異が再計画の条件に当てはまる場合に、前記経路計画を再計画する。
【0013】
上記目的を達成するために、本開示に係る情報処理プログラムは、コンピュータに、自律移動可能な複数のロボットに対して求められた経路計画であって始点から終点まで移動するために経由する位置及び領域の少なくとも一方に予定時刻が定められた経路計画に従って、前記ロボットの各々に移動指示を出力し、前記ロボットの各々について、前記経路計画と、当該ロボットの移動実績であって位置及び領域の少なくとも一方の到着時刻が記録された移動実績とに基づいて、当該ロボットについて計画された位置及び領域の少なくとも一方に対する前記経路計画と前記移動実績との差異を監視し、前記差異が再計画の条件に当てはまる場合に、前記経路計画を再計画する、処理を実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、高い搬送スループットを得ることが可能となる情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】情報処理装置の機能構成の例を示すブロック図である。
図3】ロボットの経路計画の作成のバリエーションを説明する図である。
図4】経路計画を経由点で表す場合の一例を示す図である。
図5】経路計画のデータ及びロボットの移動軌跡のデータの一例である。
図6】経路計画を経由領域で表す場合の一例を示す図である。
図7】経路計画のデータ及びロボットの移動軌跡のデータの一例である。
図8】第1実施形態の情報処理装置による情報処理の流れを示すフローチャートである。
図9】経路計画を位置に対する到着時刻で表現する場合の情報処理装置による各ロボットに対する監視処理の流れを示すフローチャートである。
図10】経路計画を経由領域に対する進入順序で表現する場合の情報処理装置による各ロボットに対する監視処理の流れを示すフローチャートである。
図11】再計画のイメージ図である。
図12】第2実施形態の情報処理装置による情報処理の流れを示すフローチャートである。
図13】差異の影響を受けるロボットの抽出の一例を示す図である。
図14】経路上の差異の影響の一例を示す図である。
図15】計画と実績のズレの実例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示すように、情報処理装置10は、メモリ11、CPU(Central Processing Unit)12、ビデオアダプタ13、シリアルポートインターフェイス14、ハードディスクドライブインターフェイス15、及びハードディスクドライブ16を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0018】
メモリ11は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる記憶領域である。ROMは、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAMは、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。
【0019】
CPU12は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU12は、メモリ11のROMまたはハードディスクドライブ16からプログラムを読み出し、メモリ11のRAMを作業領域としてプログラムを実行する。CPU12は、メモリ11のROMまたはハードディスクドライブ16に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。本実施形態では、メモリ11のROMまたはハードディスクドライブ16には所定のデータ構造を生成して出力する情報処理プログラムが格納されている。
【0020】
ビデオアダプタ13は、ディスプレイ20と接続される。ビデオアダプタ13は、ディスプレイ20に表示する各種の情報をディスプレイ20へ出力する。ディスプレイ20は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の種々の情報表示装置である。
【0021】
シリアルポートインターフェイス14は、マウス30及びキーボード40と接続される。シリアルポートインターフェイス14は、ユーザがマウス30及びキーボード40を操作して入力した内容をCPU12に出力する。
【0022】
ハードディスクドライブ16は、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。ハードディスクドライブ16は、ハードディスクドライブインターフェイス15を通じてデータ及びプログラムの読み書きが行われる。
【0023】
上記の情報処理プログラムを実行する際に、情報処理装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。次に情報処理装置10が実現する機能構成について説明する。
【0024】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態について説明する。図2は、本実施形態に係る情報処理装置10を含むシステムの構成の一例を示す図である。図2に示すように、上位システム2と、情報処理装置10と、制御対象とする複数のロボットR(以下、符号省略)とがネットワークNを介して接続されている。本実施形態の情報処理装置10によれば、自律移動可能なロボットの移動実績に応じて経路計画を管理し、高い搬送スループットを得ることが可能となる。なお、本実施形態において制御対象とするロボットは、自律移動可能なAMR(Autonomous Mobile Robot)である。情報処理装置10は、上位システム2から指令を受け付け、上位システム2を介して、他のシステムとのデータのやり取りを制御する。なお、経路計画とは、ロボットが始点から終点(目的地)まで移動するために経由する位置である経由点(又は経由領域)を計画し、経由点(経由領域)ごとに予定時刻が定められたものである。経路計画では、予定時刻(又は予定時刻まで)に当該位置に到着することが計画される。また、移動実績とは、経由点(又は経由領域)に到着した到着時刻を記録したものである。なお、経由点は座標上の一点であり、経由領域は座標上の各点を結んで囲った、面積を持った範囲である。
【0025】
図2に示すように、情報処理装置10は、機能構成として、通信部101と、経路計画部102と、経路指示部103と、収集部104と、監視部105と、マップ情報記憶部111を有する。各機能構成は、CPU12がメモリ11のROMまたはハードディスクドライブ16に記憶された情報処理プログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0026】
通信部101は、上位システム2及びロボットと通信し、各種データの送受信を行う。以下、ロボットとのデータの送受信は通信部101を介する想定とするため、都度、通信部101を介する旨の説明は省略する。
【0027】
マップ情報記憶部111には、ロボットの通行可能な領域と通行不可能な領域とが区別されたマップ、及びロボットの大きさに関する設定情報等、経路計画に必要な情報が格納される。マップは、例えばロボットが通行不可能な障害物を座標系列で表現したマップ、通行可能な領域と通行不可能な領域とをビットで表現したマップ、Lidar(Light Detection And Ranging、光による検知と測距)で取得された点群情報からなるマップ、等がある。設定情報には、例えばモバイルロボットの形状が円形であれば当該モバイルロボットの半径の情報、ロボットの形状が円形でなければ当該ロボットの外接円の半径の情報が含まれる。
【0028】
経路計画部102は、マップ情報記憶部111に格納された情報に基づいて、複数のロボットの各々に対する経路計画を生成する。また、経路計画部102は、後述する経路計画と移動実績との差異が再計画の条件に当てはまる場合に、経路計画を再計画する。再計画の場合の詳細については後述する。
【0029】
経路計画の生成は任意の手法を用いることができ、例えば、本出願人の参考文献1に記載のロボットが同時に存在できる台数の情報を格納した所定のデータ構造を生成する手法により経路計画を生成できる。
[参考文献1]
【0030】
参考文献1を参照して経路計画の生成方法の一例を説明する。図3は、ロボットの経路計画の作成のバリエーションを説明する図である。図3の左側の列は、ロボットが通るべきルート上の大まかな領域のみを指示し、その中での動き方はロボットの自律走行による制御に任せる実装形態である。ロボット同士の干渉回避はロボットの自律制御に任せられることになる。図3の右側の列は、サーバ側がより詳細な空間座標である経由点からなるウェイポイント点列によってロボットへ軌道を指示する形態である。この場合、ロボット同士の干渉回避をサーバ側が指示することが可能になる。ロボットの自律制御は、人などの非制御物体との干渉を回避する目的で利用されることになる。図3の上段の行は、ロボットのキネマティクス又はダイナミクスを考慮して経路計画を策定する例である。例えば直進ではロボットは速く走行し、曲がる際にはロボットは遅く走行するという特性を考えて最適化を行うものである。なお、図3の下段の行は、ロボットのキネマティクス又はダイナミクスを考慮せずに経路計画を策定する例である。この場合では、ロボットがゆっくり動作する場合を想定し、経路の所要時間は経路等に比例するものとして扱う。
【0031】
図3の左上の例の場合、情報処理装置10は、抽出されたロードマップに対して、ロボットのダイナミクスを考慮した拘束条件の上でMAPF(Multi-Agent Path Finding、マルチエージェント経路探索)問題を定式化して解く。図3の左下の例の場合、情報処理装置10は、抽出されたロードマップに対して、ロボットの動きを等速直線運動としてMAPF問題を定式化して解く。なお、図3の左下の例において、n1~n5はオープンスペースとして、e1~e7はエッジとして、それぞれ抽出された領域を表している。図3の右上の例の場合、情報処理装置10は、グリッド点に対してロボットのダイナミクスを考慮した拘束条件を定義し、その上でMAPF問題とモーションプラニング問題を同時に解く。以上が、経路計画の生成に係る手法の一例である。
【0032】
経路指示部103は、経路計画部102で生成された経路計画に応じた移動指示を複数のロボットの各々に出力する。
【0033】
収集部104は、ロボットの各々から現在位置を示す位置情報を収集する。収集部104による位置情報の収集は、監視部105のロボットの各々の監視処理の中で、ロボットから現在位置を取得する処理として行われる。
【0034】
監視部105は、ロボットの各々について、経路計画と、位置情報から求まる当該ロボットの移動実績とに基づいて、経路計画と移動実績との差異を監視する。差異は、当該ロボットについて計画された位置及び領域の少なくとも一方に対する差異である。
【0035】
監視処理は、(1)経路計画を経由点の位置に対する到着時刻で表現する場合、(2)経路計画を領域(経由領域)に対する進入順序で表現する場合のそれぞれに分けて説明する。(1)は計画された位置に対する差異、(2)は計画された領域に対する差異を監視する。なお、これらの計画経路の表現は一例であり、経路計画は、位置に対する到達順序、領域に対する到着時刻で表現することも可能である。
【0036】
(1)経路計画を経由点の位置に対する到着時刻で表現する場合、経路指示部103は経路計画に従った経由点(最終目標のゴール地点を含む)を順次ロボットに指示する。経路計画の経由点には到達予定の予定時刻が対応付けられている。
【0037】
監視部105は、ロボットごとに、到着判定において、計画された経由点の計画位置と、収集した位置情報の現在位置の距離がx[m]以下(単位は一例)であれば経由点に到達したと判定する。また、監視部105は、到着時に予定時刻と現在時刻との差がt[s]以上(単位は一例)であれば、遅延発生と判定する。経路計画部102は、遅延発生の場合に、経路計画を再計画する。遅延発生が、差異が再計画の条件に当てはまる場合の一例である。
【0038】
図4は、経路計画を経由点で表す場合の一例を示す図である。図4は、p1~p4の各経由点があり、ロボット(r1、r2)が移動していることを示している。図5は、経路計画のデータ及びロボットの移動軌跡のデータの一例である。経路計画は、ロボットの経由点、予定時刻、経由点の計画位置を含む。移動軌跡は、ロボットが移動した位置、及び位置に対する到着時刻を含む。
【0039】
(2)経路計画を領域(経由領域)に対する進入順序で表現する場合、経路指示部103は経路計画に従った経由領域及びゴール地点をロボットに指示する。経路計画の経由領域にはロボットの進入順序が対応付けられている。これにより、経由領域を経由すること以外は、ロボットの自律走行で移動する。
【0040】
監視部105は、ロボットごとに収集した位置情報から経路領域に位置する場合に経由領域に到達したと判定し、到達した時刻を記録することで、当該経由領域の進入順序を記録する。監視部105は、ロボットごとに、到着判定において、計画された経由領域の進入順序と、記録された進入順序とを比較し、違いがあれば進入順序が異なると判定する。進入順序が異なれば何れかのロボットに遅延(又は予定よりも速い移動)が生じていることになる。経路計画部102は、進入順序が異なる場合に、経路計画を再計画する。進入順序が異なる場合が、差異が再計画の条件に当てはまる場合の一例である。
【0041】
図6は、経路計画を経由領域で表す場合の一例を示す図である。図6は、a1~a4の各経由領域があり、ロボット(r1、r2)が移動していることを示している。図7は、経路計画のデータ及びロボットの移動軌跡のデータの一例である。経路計画は、ロボットの経由領域、進入順序、領域(ポリゴン)を含む。領域(ポリゴン)は経由領域を、横軸xと縦軸yの(x、y)の4点の座標を数値で示したものである。領域(ポリゴン)の括弧内の座標は経由領域の[左下,左上,右上,右下]に対応する。移動軌跡は、あるロボットが移動した位置、及び位置に対する到着時刻を含む。監視部105は、ロボットの各々の移動軌跡から、経路領域についての進入順序を記録する。
【0042】
次に、情報処理装置10の作用について説明する。図8は、第1実施形態の情報処理装置10による情報処理の流れを示すフローチャートである。CPU12がメモリ11のROMまたはハードディスクドライブ16に記憶された情報処理プログラムを読み出して、メモリ11のRAMに展開して実行することにより、情報処理が行なわれる。
【0043】
なお、作用については、(1)経路計画を経由点の位置に対する到着時刻で表現する場合、(2)経路計画を経由領域に対する進入順序で表現する場合、でそれぞれ説明する。図9は、経路計画を位置に対する到着時刻で表現する場合の情報処理装置10による各ロボットに対する監視処理の流れを示すフローチャートである。図10は、経路計画を経由領域に対する進入順序で表現する場合の情報処理装置10による各ロボットに対する監視処理の流れを示すフローチャートである。
【0044】
図8を参照して情報処理の流れを説明する。
【0045】
CPU12は、ステップS100において、マップ情報記憶部111に格納された情報に基づいて、複数のロボットの各々に対する経路計画を生成する。
【0046】
CPU12は、ステップS102において、生成された経路計画に応じた移動指示を複数のロボットの各々に出力する。なお、移動指示は、経路計画が位置の場合には最初の経由点を出力して順次、移動指示を出力するとし、経路計画が経由領域の場合には最終目標のゴール地点までに経由する経由領域全てを出力する。なお、移動指示はこれに限定されるものではなく、複数の経由点を出力してもよいし、経由領域を分割して出力もよい。
【0047】
CPU12は、ステップS104において、ロボットの各々の監視処理を実行する。
【0048】
CPU12は、ステップS106において、監視処理に応じて、全てのロボットについて経路計画を再計画する。再計画された経路計画は、各ロボットの移動指示に反映される。再計画された経路計画が経由領域であれば、各ロボットに対する移動指示として出力される。なお、差異の影響を受ける一部のロボットを抽出して経路を再計画する場合については後述する。
【0049】
ステップS104の監視処理について、図9を参照して、(1)の場合の各ロボットに対する監視処理の流れを説明する。
【0050】
CPU12は、ステップS200において、ロボットについて、未到達の経由点があるか否かを判定する。未到達の経由点がある場合にはステップS202へ移行する。未到達の経由点がない場合にはステップS210へ移行し、移動完了として当該ロボットについては処理を終了する。
【0051】
CPU12は、ステップS202において、ロボットから現在位置を取得する。
【0052】
CPU12は、ステップS204において、経由点に到着したか否かを判定する。経由点に到着したと判定した場合にはステップS206へ移行し、経由点に到着していないと判定した場合にはステップS202に戻って処理を繰り返す。判定は、経由点と現在位置との距離が閾値以下である場合に経由点に到着したとし、閾値以下でなければ到着していないとする。
【0053】
CPU12は、ステップS206において、ロボットに次の経由点への移動指示を出力する。
【0054】
CPU12は、ステップS208において、到着時刻に遅延発生があるか否かを判定する。遅延発生があると判定した場合にはステップS106へ移行する。遅延発生がないと判定した場合にはステップS202に戻って処理を繰り返す。判定は、予定時刻と到着時刻との時間差が閾値以上である場合に遅延発生とし、閾値以上でなければ遅延発生していないとする。
【0055】
ステップS104の監視処理について、図10を参照して、(2)の場合の各ロボットに対する監視処理の流れを説明する。
【0056】
CPU12は、ステップS220において、ロボットについて、未到達の経由領域があるか否かを判定する。未到達の経由領域がある場合にはステップS108へ移行する。未到達の経由領域がない場合にはステップS230へ移行し、移動完了として当該ロボットについては処理を終了する。
【0057】
CPU12は、ステップS222において、ロボットから現在位置を取得する。
【0058】
CPU12は、ステップS224において、経由領域に到着したか否かを判定する。経由領域に到着したと判定した場合にはステップS226へ移行し、経由領域に到着していないと判定した場合にはステップS222に戻って処理を繰り返す。
【0059】
CPU12は、ステップS226において、到着した経由領域の進入順序を記録する。進入順序の記録は、経路計画で計画された進入順序と比較可能な形式で記録すればよい。各ロボットについて本処理ルーチンが実行されるため、監視対象の全体のロボットについて進入順序が順次記録される。
【0060】
CPU12は、ステップS228において、到着した経由領域について進入順序が異なるか否かを判定する。進入順序が異なると判定した場合にはステップS106へ移行する。進入順序が異ならない(正しい)と判定した場合にはステップS222に戻って処理を繰り返す。判定は、予定時刻と到着時刻との時間差が閾値以上である場合に遅延発生とし、閾値以上でなければ遅延発生していないとする。
【0061】
図11は、再計画のイメージ図である。図11では、経路計画で計画された経路(計画経路)及び計画された位置(計画位置)に対するロボットの移動実績(移動軌跡、現在位置)を示している。図11左は、r2がa地点でr1の通過を待つ計画であったが、r1が計画位置よりも遅延した現在位置である場合を表している。この場合、経路計画の再計画が行われる。図11右は、r2はr1の通過を待たずに移動する経路計画に再計画されたこと表している。このように自律走行によって経路計画と差異が生じても、差異を検知したタイミングで再度、経路計画を再計画するため、搬送スループットの高い経路計画を実現できる。
【0062】
本実施形態に係る情報処理装置10は、係る構成を有することで、高い搬送スループットを得ることが可能となる。本実施形態に係る情報処理装置10は、移動実績に応じて経路計画の必要な再計画をすることで、従来技術と比較して、高い搬送スループットを得ることが可能となる。
【0063】
[第2実施形態]
次に、差異の影響を受けるロボットを抽出して再計画する場合について、第2実施形態として説明する。情報処理装置10の構成は第1実施形態と同様であるため説明を省略し、異なる処理についてのみ説明する。
【0064】
図12は、第2実施形態の情報処理装置10による情報処理の流れを示すフローチャートである。
【0065】
本実施形態では、図9のフローチャートにおいて、CPU12は、ステップS208において、遅延発生と判定した場合にはステップS300へ移行する。また、本実施形態では、図10のフローチャートにおいて、CPU12は、ステップS228において、進入順序が異なると判定した場合にはステップS300へ移行する。
【0066】
CPU12は、ステップS300において、差異の影響を受けるロボットを抽出する。抽出方法は後述する。
【0067】
CPU12は、ステップS302において、抽出したロボットについて経路計画に係る経路を再計画する。なお、影響がないロボットについては、再計画前の計画経路、ステップS100で生成した経路計画を利用する。
【0068】
図13は、差異の影響を受けるロボットの抽出の一例を示す図である。(1)の経路計画を位置で表す場合、経路計画に同じ経由点を含むロボットが再計画の対象である。丸印が同じ経由点を含む箇所であり、ロボットr1及びr2が同じp2の経由点を含んでいる。(2)の経路計画を経由領域で表す場合、経路計画に同じ経由領域を含んでおり、進入順序に依存関係があるロボットが再計画の対象である。丸印が同じ経由領域を含む箇所であり、進入順序の列を参照することで抽出できる。このように依存関係は進入順序のデータから判別可能である。
【0069】
図14は、経路上の差異の影響の一例を示す図である。図14では、ロボットr1及びr2の経路は依存関係にあるが、ロボットr3は独立している。この場合、ロボットr1の遅延に対してr2が影響するため、ロボットr1及びr2の経路を再計画する。ロボットr3は前回の計画を再利用する。
【0070】
図15は、計画と実績のズレの実例を示す図である。図15に示すように、計画上の位置に対して、計画より速いロボットもあれば、計画より遅いロボットもある。
【0071】
本実施形態に係る情報処理装置10は、係る処理を実行することで、経路計画の計算量を削減しつつ、高い搬送スループットを得ることが可能となる。本実施形態に係る情報処理装置10は、移動実績に応じて差異の影響を受けるロボットについて経路計画の再計画をすることで、従来技術と比較して、経路計画の計算量を削減しつつ、高い搬送スループットを得ることが可能となる。
【0072】
なお、各実施形態について、位置に対する差異には、経由点ごとに重みを設定し、重みに応じた時間差の閾値を定めるようにしてもよい。例えば、経路上の遅延の影響が大きな経由点(曲がり角に含まれる経由点、入り組んだ経路の経由点等)では、時間差の閾値を小さくする。逆に幅が大きな経路では、遅延の影響が小さいとして、時間差の閾値を大きくする。これにより、経由点の搬送効率への影響度合いに応じて経路計画の再計画が適切に行われるようになる。
【0073】
同様に領域に対する差異には、経由領域に対する進入順序が異なる場合の許容数を定め、実際の進入順序が異なる数が許容数以上の場合に進入順序が異なると判定するようにしてもよい。例えば、幅が大きな経路では、順序の影響が小さいとして、許容数を大きくする。逆に狭い経路や入り組んだ経路では許容数を小さくする。これにより、経由領域の搬送効率への影響度合いに応じて経路計画の再計画が適切に行われるようになる。
【0074】
なお、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した情報処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、情報処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0075】
また、上記各実施形態では、情報処理のプログラムがROMまたはストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 情報処理装置
102 経路計画部
103 経路指示部
104 収集部
105 監視部
図1
図2
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図15