(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176470
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/083 20230101AFI20231206BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20231206BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20231206BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20231206BHJP
【FI】
G06Q10/08 300
G05D1/02 P
G16Y20/20
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088764
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】峯本 俊文
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 博
【テーマコード(参考)】
5H301
5L049
【Fターム(参考)】
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD15
5H301KK04
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】搬送性能の低下の特定を効率的に可能とする。
【解決手段】情報処理装置は、自律走行可能な複数のロボットに対して計画された経路計画と、ジョブに対するロボットの稼働の割り当てを示すジョブ稼働状態と、前記ロボットの各々の移動軌跡と、前記ロボットの各々の稼働状態とを含む収集データを収集するデータ収集部と、前記収集データを用いて、ジョブ所要時間、ジョブ稼働率及びロボット稼働率を含む結果系の評価指標値と、前記経路計画に対する各経路に対応した原因系の評価指標値とを算出する分析部と、所定の表示部に、前記結果系の評価指標値を比較可能な表示態様と、前記原因系の評価指標値を比較可能な表示態様とをそれぞれ表示させるように制御する可視化制御部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行可能な複数のロボットに対して計画された経路計画と、ジョブに対するロボットの稼働の割り当てを示すジョブ稼働状態と、前記ロボットの各々の移動軌跡と、前記ロボットの各々の稼働状態とを含む収集データを収集するデータ収集部と、
前記収集データを用いて、ジョブ所要時間、ジョブ稼働率及びロボット稼働率を含む結果系の評価指標値と、前記経路計画に対する各経路に対応した原因系の評価指標値とを算出する分析部と、
所定の表示部に、前記結果系の評価指標値を比較可能な表示態様と、前記原因系の評価指標値を比較可能な表示態様とをそれぞれ表示させるように制御する可視化制御部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記可視化制御部は、ユーザから入力された表示態様の選択に応じて、前記結果系の評価指標値を搬送システム全体又はロボットごとに比較可能に表示させるか、又は前記原因系の評価指標値を前記経路計画の各経路を示して比較可能に表示させる、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記分析部は、前記原因系の評価指標値として、前記経路計画における経路ごとの平均移動速度を算出し、
前記可視化制御部は、前記原因系の表示態様をグラフマップとして、前記経路ごとの前記平均移動速度を比較可能に表示させる、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記可視化制御部は、前記平均移動速度を、前記経路上にヒートマップとして比較可能に表示させる、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記結果系に関して、
前記ジョブ所要時間は、前記ロボットにジョブが割り当てられてからジョブ完了までの時間とし、
前記ジョブ稼働率は、ジョブ投入からジョブ完了までの時間におけるジョブ実行中の時間の割合とし、
前記ロボット稼働率は、前記ロボットの稼働時間に対する前記ロボットのジョブ処理中の時間の総和の割合とし、
前記可視化制御部は、搬送システム全体における前記ロボット稼働率と前記ジョブ稼働率とを比較したグラフ、各ロボットの投入ジョブ数を比較したグラフ、及び各ロボットの前記ロボット稼働率及び前記ジョブ稼働率を比較したグラフにより、搬送システムにおける稼働状態のステータスを可視化する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
コンピュータが、
自律走行可能な複数のロボットに対して計画された経路計画と、ジョブに対するロボットの稼働の割り当てを示すジョブ稼働状態と、前記ロボットの各々の移動軌跡と、前記ロボットの各々の稼働状態とを含む収集データを収集し、
前記収集データを用いて、ジョブ所要時間、ジョブ稼働率及びロボット稼働率を含む結果系の評価指標値と、前記経路計画に対する各経路に対応した原因系の評価指標値とを算出し、
所定の表示部に、前記結果系の評価指標値を比較可能な表示態様と、前記原因系の評価指標値を比較可能な表示態様とをそれぞれ表示させるように制御する、
情報処理方法。
【請求項7】
コンピュータに、
自律走行可能な複数のロボットに対して計画された経路計画と、ジョブに対するロボットの稼働の割り当てを示すジョブ稼働状態と、前記ロボットの各々の移動軌跡と、前記ロボットの各々の稼働状態とを含む収集データを収集し、
前記収集データを用いて、ジョブ所要時間、ジョブ稼働率及びロボット稼働率を含む結果系の評価指標値と、前記経路計画に対する各経路に対応した原因系の評価指標値とを算出し、
所定の表示部に、前記結果系の評価指標値を比較可能な表示態様と、前記原因系の評価指標値を比較可能な表示態様とをそれぞれ表示させるように制御する、
処理を実行させる、情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送管理システムにおける稼働状態を分析するための技術が提案されている。例えば特許文献1には、運搬機械に関する分析を実行できる分析システムに関する技術が開示されている。この技術では、運搬機械の動きを検出する第1検出器から送信された第1信号を用いて、開始情報及び終了情報から特定される作業期間における運搬機械の稼働状態を分類している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、搬送のログデータを収集、収集データから稼働状態を分類しユーザに提示するのみであった。そのため、例えば、搬送性能の低下がどのような原因であったかを特定することは考慮されていなかった。
【0005】
本開示の技術は、上記の点に鑑みてなされたものであり、従来技術と比較して搬送性能の低下の特定を効率的に可能とする情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示に係る情報処理装置は、自律走行可能な複数のロボットに対して計画された経路計画と、ジョブに対するロボットの稼働の割り当てを示すジョブ稼働状態と、前記ロボットの各々の移動軌跡と、前記ロボットの各々の稼働状態とを含む収集データを収集するデータ収集部と、前記収集データを用いて、ジョブ所要時間、ジョブ稼働率及びロボット稼働率を含む結果系の評価指標値と、前記経路計画に対する各経路に対応した原因系の評価指標値とを算出する分析部と、所定の表示部に、前記結果系の評価指標値を比較可能な表示態様と、前記原因系の評価指標値を比較可能な表示態様とをそれぞれ表示させるように制御する可視化制御部と、を備える。これにより、搬送性能の低下の特定を効率的に可能とする。
【0007】
前記可視化制御部は、ユーザから入力された表示態様の選択に応じて、前記結果系の評価指標値を搬送システム全体又はロボットごとに比較可能に表示させるか、又は前記原因系の評価指標値を前記経路計画の各経路を示して比較可能に表示させるようにしてもよい。これにより、入力された表示態様の選択に応じて、搬送性能の低下の特定を効率的に可能とする。
【0008】
前記分析部は、前記原因系の評価指標値として、前記経路計画における経路ごとの平均移動速度を算出し、前記可視化制御部は、前記原因系の表示態様をグラフマップとして、前記経路ごとの前記平均移動速度を比較可能に表示させるようにしてもよい。これにより、グラフマップとして各経路を比較できる。
【0009】
前記可視化制御部は、前記平均移動速度を、前記経路上にヒートマップとして比較可能に表示させるようにしてもよい。これにより各経路をヒートマップとして可視化し、識別性を向上できる。
【0010】
前記結果系に関して、前記ジョブ所要時間は、前記ロボットにジョブが割り当てられてからジョブ完了までの時間とし、前記ジョブ稼働率は、ジョブ投入からジョブ完了までの時間におけるジョブ実行中の時間の割合とし、前記ロボット稼働率は、前記ロボットの稼働時間に対する前記ロボットのジョブ処理中の時間の総和の割合とし、前記可視化制御部は、搬送システム全体における前記ロボット稼働率と前記ジョブ稼働率とを比較したグラフ、各ロボットの投入ジョブ数を比較したグラフ、及び各ロボットの前記ロボット稼働率及び前記ジョブ稼働率を比較したグラフにより、搬送システムにおける稼働状態のステータスを可視化するようにしてもよい。これにより結果系の評価指標値を多角的に分析した結果を表示できる。
【0011】
上記目的を達成するために、本開示に係る情報処理方法は、コンピュータが、自律走行可能な複数のロボットに対して計画された経路計画と、ジョブに対するロボットの稼働の割り当てを示すジョブ稼働状態と、前記ロボットの各々の移動軌跡と、前記ロボットの各々の稼働状態とを含む収集データを収集し、前記収集データを用いて、ジョブ所要時間、ジョブ稼働率及びロボット稼働率を含む結果系の評価指標値と、前記経路計画に対する各経路に対応した原因系の評価指標値とを算出し、所定の表示部に、前記結果系の評価指標値を比較可能な表示態様と、前記原因系の評価指標値を比較可能な表示態様とをそれぞれ表示させるように制御する。
【0012】
上記目的を達成するために、本開示に係るプログラムは、コンピュータに、自律走行可能な複数のロボットに対して計画された経路計画と、ジョブに対するロボットの稼働の割り当てを示すジョブ稼働状態と、前記ロボットの各々の移動軌跡と、前記ロボットの各々の稼働状態とを含む収集データを収集し、前記収集データを用いて、ジョブ所要時間、ジョブ稼働率及びロボット稼働率を含む結果系の評価指標値と、前記経路計画に対する各経路に対応した原因系の評価指標値とを算出し、所定の表示部に、前記結果系の評価指標値を比較可能な表示態様と、前記原因系の評価指標値を比較可能な表示態様とをそれぞれ表示させるように制御する、処理を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、搬送性能の低下の特定を効率的に可能とする情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る情報処理装置を含むシステムの構成の一例を示す図である。
【
図5】ロボットステータス及びジョブステータスの状態遷移を示す図である。
【
図6】結果系の評価指標値及び原因系の評価指標値の一例である。
【
図7】ロボット稼働率とジョブ稼働率とを比較したグラフと対応表である。
【
図8】1日ごとの各ロボットに対する投入ジョブ数を示すグラフである。
【
図9】1日ごとの各ロボットのロボット稼働率及びジョブ稼働率を示すグラフである。
【
図10】ロボットのジョブ投入から完了までを示す帯グラフである。
【
図11】ロボットの経路計画と実績データとを比較した経路シミュレーションである。
【
図13】エッジごとの距離、所要時間平均値、平均移動速度である。
【
図14】経路を示すエッジを平均移動速度によるヒートマップで示した図である。
【
図15】情報処理装置による情報処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0016】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
図1に示すように、情報処理装置10は、メモリ11、CPU(Central Processing Unit)12、ビデオアダプタ13、シリアルポートインターフェイス14、ハードディスクドライブインターフェイス15、及びハードディスクドライブ16を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0017】
メモリ11は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる記憶領域である。ROMは、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAMは、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。
【0018】
CPU12は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU12は、メモリ11のROMまたはハードディスクドライブ16からプログラムを読み出し、メモリ11のRAMを作業領域としてプログラムを実行する。CPU12は、メモリ11のROMまたはハードディスクドライブ16に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。本実施形態では、メモリ11のROMまたはハードディスクドライブ16には所定のデータ構造を生成して出力する情報処理プログラムが格納されている。
【0019】
ビデオアダプタ13は、ディスプレイ20と接続される。ビデオアダプタ13は、ディスプレイ20に表示する各種の情報をディスプレイ20へ出力する。ディスプレイ20は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の種々の情報表示装置である。
【0020】
シリアルポートインターフェイス14は、マウス30及びキーボード40と接続される。シリアルポートインターフェイス14は、ユーザがマウス30及びキーボード40を操作して入力した内容をCPU12に出力する。
【0021】
ハードディスクドライブ16は、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。ハードディスクドライブ16は、ハードディスクドライブインターフェイス15を通じてデータ及びプログラムの読み書きが行われる。
【0022】
上記の情報処理プログラムを実行する際に、情報処理装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。次に情報処理装置10が実現する機能構成について説明する。
【0023】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置10を含むシステムの構成の一例を示す図である。
図2に示すように、上位システム2と、ジョブ管理装置3と、経路計画装置4と、情報処理装置10と、制御対象とする複数のロボットR(以下、符号省略)とがネットワークNを介して接続されている。本実施形態の情報処理装置10によれば、収集データに基づいて結果系の評価指標値と原因系の評価指標値とを可視化することで、搬送性能の低下の特定が効率的に可能となる。なお、本実施形態において制御対象とするロボットは、自律移動可能なAMR(Autonomous Mobile Robot)である。情報処理装置10は、上位システム2から指令を受け付け、上位システム2を介して、他のシステムとのデータのやり取りを制御する。ジョブ管理装置3はジョブ稼働状態を管理する装置、経路計画装置4は経路計画を計画する装置である。経路計画は、ロボットの移動経路を経由点の位置や経由領域で表し、移動経路に対する到着予定時刻又は進入順序を定めた計画である。なお、「結果系の評価指標値」と「原因系の評価指標値」との表現は、評価指標値の種別(ラベリング)を示す意図から「結果系」及び「原因系」と表しているのであり、これらの指標値に因果関係があることを示すものではない。
【0024】
図2に示すように、情報処理装置10は、機能構成として、通信部101と、データ収集部102と、分析部103と、可視化制御部104と、データ記憶部111と、分析結果記憶部112を有する。各機能構成は、CPU12がメモリ11のROMまたはハードディスクドライブ16に記憶された情報処理プログラムを読み出し、実行することにより実現される。本実施形態の情報処理装置10に係る構成によれば、搬送ジョブ(以下、単にジョブと記載する)の結果とジョブ実行過程の搬送経路における走行情報を同時に表示することで、ユーザはシステムにおけるジョブ計画と実績との差異の原因究明を迅速に行うことができる。なお、本実施形態のジョブとは、物を搬送する業務に関する情報であって、搬送物を搭載する位置、搬送目的地、及び時刻情報(搭載及び搬送に関して予定する時刻)を含むものを指す。
【0025】
通信部101は、上位システム2、ジョブ管理装置3、経路計画装置4、及びロボットと通信し、各種データの送受信を行う。以下、ロボットとのデータの送受信は通信部101を介する想定とするため、都度、通信部101を介する旨の説明は省略する。
【0026】
データ収集部102は、複数のロボットに対して計画された経路計画と、ジョブ稼働状態と、ロボットの各々の移動軌跡と、ロボットの各々の稼働状態とを含む収集データを収集する。ジョブ稼働状態とは、各ジョブについて、ジョブに対するロボットの稼働の割り当てを示すステータス(後述するジョブステータス)を指し、ジョブに割り当てられたロボット、及び目的地(ジョブを完了させるための目的地)を含む情報である。ロボットの移動軌跡とは、移動中のロボットを観測した情報であり、各時刻のロボットの位置を軌跡として記録した情報である。また移動軌跡には、移動中のロボットの姿勢及び速度等に関する情報を含めて収集される。ロボットの稼働状態とは、各ロボットについて、当該ロボットに対するジョブの割当・処理を示すステータス(後述するロボットステータス)を指し、当該ロボットに対して割り当てられたジョブの種類、及び当該ロボットの目的地を含む情報である。ジョブ稼働状態はジョブ管理装置3から収集され、経路計画は経路計画装置4から収集され、移動軌跡、及び稼働状態はロボットの各々から収集される。データ収集部102は、収集した収集データをデータ記憶部111に格納する。
【0027】
図3は、収集データの一例である。収集データのデータ項目は、移動軌跡、稼働状態、及びジョブ稼働状態がある。移動軌跡のデータに対する収集項目として、ロボット識別子、時刻、位置(x、y)、姿勢、並進速度、及び回転速度を収集する。稼働状態のデータに対する収集項目として、ロボット識別子、ロボットステータス、目的地、割り当てジョブ、及び時刻を収集する。ジョブ稼働状態のデータに対する収集項目として、ジョブ識別子、ジョブ種別、ジョブステータス、目的地、割り当てロボット、及び時刻を収集する。経路計画のデータに対する収集項目として、経路計画識別子、ロボット識別子、到着予定時刻、及び経由点である位置(x、y)を収集する。
【0028】
図4は、収集項目ごとのデータ詳細の例である。
図4は、移動軌跡、稼働状態、及びジョブ稼働状態のそれぞれの収集項目のデータを保存した場合の例を示している。
【0029】
ここで、収集項目のうちのロボットステータス及びジョブステータスについて説明する。
図5は、ロボットステータス及びジョブステータスの状態遷移を示す図である。ロボットステータスでは、ジョブ割当待ち(Available)の状態からジョブ割り当てがされるとジョブ処理中(InProgress)の状態に遷移し、ジョブが完了するとジョブ処理中の状態からジョブ割当待ちの状態に戻る。ジョブステータスは、ジョブが投入されるとロボット割当待ち(Pending)の状態になる。次にジョブが開始されると、実行中(InProgress)の状態に遷移する。ジョブの実行が完了すると完了(Complete)の状態に遷移する。このように、ジョブステータスは、ジョブに着目して、ジョブに対するロボットの割り当ての状態を示したステータスである。ロボットステータスは、ロボットに着目して、ロボットにおけるジョブの割り当て及び実行の状態を示したステータスである。
【0030】
分析部103は、収集データを用いて、結果系の評価指標値と、原因系の評価指標値とを算出する。算出したそれぞれの結果系の評価指標値と原因系の評価指標値とは分析結果記憶部112に格納する。結果系の評価指標値は、例えば、ジョブ所要時間、ジョブ稼働率及びロボット稼働率である。原因系の評価指標値は、経路計画に対する各経路に対応しており、例えば、経路計画における経路ごとの平均移動速度が算出される。結果系は、システム全体又は各ロボット単位でのマクロな観点の分析であるのに対して、原因系は、経路計画の経路レベルでより詳細に搬送スループットの低下原因を特定するための分析である。
【0031】
図6は、結果系の評価指標値及び原因系の評価指標値の一例である。ジョブ所要時間は、ジョブステータスにおけるジョブ投入から完了までの時間である。ジョブ稼働率は、ジョブが実行中の時間の割合でありジョブステータスにおける「ジョブ実行中の時間の総和/ジョブの所要時間の総和」で表される。なお、「ジョブ実行中」は、ジョブに着目したジョブステータスにおいてジョブが実行されている状態を指す。ロボット稼働率は、ロボット作業時間の割合でありロボットステータスにおける「ジョブ処理中の時間の総和/ロボットの稼働時間」で表される。なお、「ジョブ処理中」は、ロボットに着目したロボットステータスにおいてロボットがジョブを処理している状態を指す。平均移動速度は、ジョブ所要時間の実績データから、経路計画のマップの通路ごとに算出される平均所要時間と通路の距離から算出する。
【0032】
可視化制御部104は、表示部としてのディスプレイ20に、結果系の評価指標値を比較可能な表示態様と、原因系の評価指標値を比較可能な表示態様とをそれぞれ表示させるように制御する。可視化制御部104による表示の制御では、ユーザから表示態様の選択の入力を受け付け、表示態様の選択に応じて、分析結果記憶部112から結果系の評価指標値又は原因系の評価指標値を読み出して、読み出した表示態様を表示させる。また、表示態様はユーザからの入力や設定に応じて切り替えるように制御する。表示部は情報処理装置10に備えられたディスプレイ20に限定されるものではなく、情報処理装置10の外部の端末等でもよい。
【0033】
結果系の評価指標値の表示態様について例示する。
【0034】
図7は、ロボット稼働率とジョブ稼働率とを比較したグラフと対応表である。1.のようにロボット稼働率が高く、ジョブ稼働率が高い場合、搬送余力が少なく適正となる。2.のようにロボット稼働率が高く、ジョブ稼働率が低い場合、搬送能力不足、つまりロボット不足となる。3.のようにロボット稼働率が低く、ジョブ稼働率が高い場合、搬送能力過多、つまりロボット過多となる。4.のようにロボット稼働率が低く、ジョブ稼働率が低い場合、システムに何らかの問題ありとなる。
図7のグラフでは、現場Aは適正、現場Bは搬送能力過多である。このように、可視化制御部104は、搬送システム全体、つまり各現場のロボット稼働率とジョブ稼働率とを比較したグラフにより、搬送システム全体の稼働状態のステータスを可視化する。この場合、比較する対象はロボット稼働率及びジョブ稼働率であり、比較可能な表示態様はグラフである。稼働状態のステータスとは、このように、搬送システムにおけるロボット及びジョブそれぞれの稼働率をグラフにより比較することで、搬送システムの状態を示すものである。よって、個々のジョブに着目したジョブステータス、及び個々のロボットに着目したロボットステータスとは異なる。
【0035】
図8は、1日ごとの各ロボットに対する投入ジョブ数を示すグラフ(折れ線グラフ)である。グラフは横軸に日付、縦軸に投入ジョブ数をとっている。ロボットの日ごとの投入ジョブ数は、収集データの稼働状態の収集項目うちの、割り当てジョブ、及び時刻から識別する。このように、可視化制御部104は、各ロボットの投入ジョブ数を比較したグラフにより、投入ジョブ数を可視化する。この場合、比較する対象は単位期間のロボットごとの投入ジョブ数であり、比較可能な表示態様はグラフである。
【0036】
図9は、1日ごとの各ロボットのロボット稼働率及びジョブ稼働率を示すグラフ(折れ線グラフ)である。グラフは横軸に日付、縦軸にそれぞれの稼働率をとっている。このように、可視化制御部104は、各ロボットのロボット稼働率及びジョブ稼働率を比較したグラフにより、日ごとのロボット稼働率及びジョブ稼働率を可視化する。各ロボットのジョブ稼働率は、収集データのジョブ稼働状態の収集項目のうちの、割り当てロボットから識別する。この場合、比較する対象は単位期間のロボットごとのロボット稼働率及びジョブ稼働率であり、比較可能な表示態様はグラフである。
【0037】
図10は、ロボットのジョブ投入から完了までを示す帯グラフである。帯グラフは、各ロボットについてジョブごとにジョブ所要時間を積み上げていき、ジョブの種類ごとに色分け等により識別可能とする。このように、可視化制御部104は、各ロボットのジョブを比較したグラフにより、ロボットごとのジョブ所要時間を可視化する。この場合、比較する対象はロボットごとのジョブ所要時間であり、比較可能な表示態様は帯グラフである。これにより、どのジョブに時間が掛かったのかが視覚的に把握することができ、搬送スループットを低下させる要因が特定できる。
【0038】
図11は、ロボットの経路計画と実績データとを比較した経路シミュレーションである。これにより経路計画の予定されたロボットの位置と、特定時刻のロボットの位置、姿勢、速度の記録とを比較できるように可視化する。このように、可視化制御部104は、経路シミュレーションにより、ロボットの経路計画の予定と実績を可視化する。この場合、比較する対象は経路計画の予定と実績であり、比較可能な表示態様は経路シミュレーションである。これにより計画通りに移動できなかった地点を視覚的に把握することができ、搬送スループットを低下させる要因が特定できる。以上、結果系の評価指標値の表示態様に例示したように、可視化制御部104は、結果系の評価指標値を搬送システム全体又はロボットごとに比較可能なグラフ又は経路シミュレーションとして表示させる。
【0039】
原因系の評価指標値の表示態様について例示する。
【0040】
図12は、経路をエッジで示した図である。エッジは経路計画の開始地点、各経由点、目標地点をノードとして、各ノードを結んだ経路である。
図12では、e1~e8のエッジが示される。エッジには、開始点の位置と終了点の位置から距離が割り当てられる。
【0041】
図13は、エッジごとの距離、所要時間平均値、平均移動速度である。各ロボットの走行実績(収集データの移動軌跡、稼働状態、及びジョブ稼働状態)から、エッジごとの所要時間平均値を算出し、エッジごとの平均移動速度を算出する。所要時間平均値は、エッジごとに当該エッジに対する各ジョブのジョブ所要時間を算出し、平均を求める。エッジに対する各ジョブのジョブ所要時間は、当該ジョブのジョブ所要時間を各エッジで分割して求まり、例えば、エッジの位置(開始点から)に対して、ジョブ稼働状態の割り当てロボットについての移動軌跡を参照することで求めることができる。
【0042】
図14は、経路を示すエッジを平均移動速度によるヒートマップで示した図である。
図14は、e5の経路の平均移動速度が遅いことがヒート色で表されている場合の例である。このように、可視化制御部104は、経路を示すエッジを平均移動速度によるヒートマップで表すことにより可視化する。この場合、比較する対象は経路ごとの平均移動速度であり、比較可能な表示態様は各経路を表したヒートマップである。なお、ヒートマップは一例であり、経路計画の各経路を示し、経路ごとの平均移動速度を比較可能に表示させる態様はこれに限定されない。例えば、エッジ上に付与した数値やエッジの太さで平均移動速度を表すようなグラフマップであってもよい。このように評価指標値をグラフマップに付与して可視化することで、グラフマップ上の各経路を比較してボトルネックとなる経路を把握できる。
【0043】
なお、原因系の評価指標値を各経路の平均移動速度とするのは一例であり、例えば、各経路について、平均ジョブ数、平均ロボット稼働率、又は平均ジョブ稼働率等とすることもできる。
【0044】
次に、情報処理装置10の作用について説明する。
【0045】
図15は、情報処理装置10による情報処理の流れを示すフローチャートである。CPU12がメモリ11のROMまたはハードディスクドライブ16に記憶された情報処理プログラムを読み出して、メモリ11のRAMに展開して実行することにより、情報処理の処理ルーチンが実行される。
【0046】
CPU12は、ステップS100において、複数のロボットに対して計画された経路計画と、ジョブ稼働状態と、ロボットの各々の移動軌跡と、ロボットの各々の稼働状態とを含む収集データを収集する。
【0047】
CPU12は、ステップS102において、収集データを用いて、結果系の評価指標値と、原因系の評価指標値とを算出する。
【0048】
CPU12は、ステップS104において、ユーザからの表示要求及び表示態様の選択の入力を受け付けたか否かを判定する。入力を受け付けた場合にはステップS106へ移行する。入力を受け付けていない場合には本ステップを繰り返し、入力を受け付けるまで待機する。入力が一定期間なかった場合は処理ルーチンを終了し、ステップS100から処理ルーチンを繰り返す。
【0049】
CPU12は、ステップS106において、表示態様の選択に応じて、分析結果記憶部112から結果系の評価指標値又は原因系の評価指標値を読み出す。
【0050】
CPU12は、ステップS108において、表示部(例えばディスプレイ20)に、選択された結果系の評価指標値又は原因系の評価指標値の表示態様を表示させるように制御する。
【0051】
CPU12は、ステップS110において、一定時間の間にユーザからの表示態様の切り替えの入力を受け付けたか否かを判定する。表示態様の切り替えの入力を受け付けた場合にはステップS106に戻る。表示態様の切り替えの入力を受け付けていなかった場合には処理ルーチンを終了する。これにより、結果系の評価指標値又は原因系の評価指標値の表示態様を入力に応じて切り替えるように制御する。
【0052】
本実施形態に係る情報処理装置10は、係る構成を有することで、搬送性能の低下の特定を効率的に可能とすることができる。本実施形態に係る情報処理装置10は、収集データに基づいて結果系の評価指標値と原因系の評価指標値とを可視化することで、従来技術と比較して、搬送性能の低下の特定を効率的に可能とすることができる。
【0053】
なお、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した情報処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、情報処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0054】
また、上記実施形態では、情報処理のプログラムがROMまたはストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 情報処理装置
102 データ収集部
103 分析部
104 可視化制御部