(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176479
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】永久磁石及び回転電機
(51)【国際特許分類】
H01F 1/053 20060101AFI20231206BHJP
H01F 1/08 20060101ALI20231206BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20231206BHJP
C22C 33/02 20060101ALI20231206BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H01F1/053 160
H01F1/08 160
B22F1/00 Y
C22C33/02 J
C22C33/02 K
C22C38/00 303D
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088778
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 将也
(72)【発明者】
【氏名】桜田 新哉
【テーマコード(参考)】
4K018
5E040
【Fターム(参考)】
4K018AA11
4K018AA27
4K018AC01
4K018AD06
4K018BA05
4K018BA18
4K018CA02
4K018EA01
4K018EA11
4K018EA21
4K018EA51
4K018FA08
4K018KA46
5E040AA03
5E040BD01
5E040CA01
5E040NN01
(57)【要約】
【課題】永久磁石の保持力及び残留磁化を高める。
【解決手段】永久磁石は、組成式1:R
xNb
yB
tM
100-x-y-t(Rは希土類元素からなる群より選ばれる少なくともの一つの元素であり、MはFe及びCoからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であり、xは4.0<x≦11.0原子%を満足する数であり、yは0≦y≦6.5原子%を満足する数であり、tは0≦t<12.0原子%を満足する数である)により表され、TbCu
7型結晶相を有する主相を具備する。永久磁石の密度は、7.00g/cm
3以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式1:RxNbyBtM100-x-y-t
(Rは希土類元素からなる群より選ばれる少なくともの一つの元素であり、MはFe及びCoからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であり、xは4.0<x≦11.0原子%を満足する数であり、yは0≦y≦6.5原子%を満足する数であり、tは0≦t<12.0原子%を満足する数である)
により表され、
TbCu7型結晶相を有する主相を具備する永久磁石であって、
前記永久磁石の密度は、7.00g/cm3以上である、永久磁石。
【請求項2】
R元素の50原子%以上がSmである、請求項1に記載の永久磁石。
【請求項3】
R元素の1原子%以上50原子%以下がYである、請求項1に記載の永久磁石。
【請求項4】
Nb元素の50原子%以下がZr、Hf、及びTaからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素により置換されている、請求項1に記載の永久磁石。
【請求項5】
M元素の50原子%以上がFeである、請求項1に記載の永久磁石。
【請求項6】
M元素の20原子%以下がNi、Cu、V、Cr、Mn、Al、Si、Ga、Ta、W、Ti、及びMoからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素により置換されている、請求項1に記載の永久磁石。
【請求項7】
α-Fe相、α-(Fe,Co)相、R2Fe14B相、及びR2(Fe,Co)14B相からなる群から選ばれる少なくとも一つの相の割合が10体積%以下である、請求項1に記載の永久磁石。
【請求項8】
前記永久磁石の充填率が85.0%以上99.9%以下である、請求項1に記載の永久磁石。
【請求項9】
窒素、炭素、水素、及びリンからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む、請求項1に記載の永久磁石。
【請求項10】
組成式3:RxNbyBtM100-x-y-t
(Rは希土類元素からなる群より選ばれる少なくともの一つの元素であり、MはFe及びCoからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であり、xは4.0<x≦11.0原子%を満足する数であり、yは0<y≦6.5原子%を満足する数であり、tは0≦t<12.0原子%を満足する数である)
により表され、
ThMn12型結晶相を有する主相を具備する永久磁石であって、
前記永久磁石の密度は、7.00g/cm3以上である、永久磁石。
【請求項11】
R元素の50原子%以上がSmである、請求項10に記載の永久磁石。
【請求項12】
R元素の1原子%以上50原子%以下がYである、請求項10に記載の永久磁石。
【請求項13】
Nb元素の50原子%以下がZr、Hf、Ta、及びTiからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素により置換されている、請求項10に記載の永久磁石。
【請求項14】
M元素の50原子%以上がFeである、請求項10に記載の永久磁石。
【請求項15】
M元素の20原子%以下がNi、Cu、V、Cr、Mn、Al、Si、Ga、Ta、W、Ti、及びMoからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素により置換されている、請求項10に記載の永久磁石。
【請求項16】
α-Fe相、α-(Fe,Co)相、R2Fe14B相、及びR2(Fe,Co)14B相からなる群から選ばれる少なくとも一つの相の割合が10体積%以下である、請求項10に記載の永久磁石。
【請求項17】
前記永久磁石の充填率が85.0%以上99.9%以下である、請求項10に記載の永久磁石。
【請求項18】
窒素、炭素、水素、及びリンからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む、請求項10に記載の永久磁石。
【請求項19】
ステータと、
ロータと、を具備し、
前記ステータ又は前記ロータは、請求項1ないし請求項18のいずれか一項に記載の永久磁石を具備する、回転電機。
【請求項20】
前記ロータは、シャフトを介してタービンに接続されている、請求項19に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、永久磁石及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石は、例えばモータ、発電機等の回転電機、スピーカ、計測機器等の電気機器、自動車、鉄道車両等の車両を含む広範な分野の製品に用いられている。近年、上記製品の小型化や高効率化が要求されており、高磁化及び高保磁力を有する高性能な永久磁石が求められている。
【0003】
高性能な永久磁石の例としては、例えばSm-Co系磁石やNd-Fe-B系磁石等の希土類磁石が挙げられる。これらの磁石では、FeやCoが飽和磁化の増大に寄与している。また、これらの磁石にはNdやSm等の希土類元素が含まれており、結晶場中における希土類元素の4f電子の挙動に由来して大きな磁気異方性をもたらす。これにより、大きな保磁力を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4320701号公報
【特許文献2】特開2004-263232号公報
【特許文献3】特開平9-74006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、永久磁石の保磁力及び残留磁化を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の永久磁石は、組成式1:RxNbyBtM100-x-y-t(Rは希土類元素からなる群より選ばれる少なくともの一つの元素であり、MはFe及びCoからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であり、xは4.0<x≦11.0原子%を満足する数であり、yは0≦y≦6.5原子%を満足する数であり、tは0≦t<12.0原子%を満足する数である)により表され、TbCu7型結晶相を有する主相を具備する。永久磁石の密度は、7.00g/cm3以上である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面は模式的なものであり、例えば厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
実施形態の永久磁石は、希土類元素と、M元素(MはFe及びCoからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素)と、ニオブ(Nb)元素と、ホウ素(B)元素とを含有する。上記永久磁石は、高濃度のM元素を含む結晶相を主相とする金属組織を具備する。主相中のM元素濃度を高めることにより飽和磁化を向上させることができる。主相は、磁石材料中の各結晶相及び非晶質相のうち、最も体積占有率が高い相である。上記磁石材料は副相を含んでいてもよい。副相は例えば主相の結晶粒間に存在する粒界相や微細結晶相、不純物相等である。高濃度のM元素を含む結晶相としては、例えばTbCu7型結晶相が挙げられる。
【0010】
希土類元素及びM元素に加え、Nb元素とB元素とを添加することにより非晶質の形成能を高め、保磁力を高めることができる。上記永久磁石の用途の一つにモータがある。近年、モータの小型化や高速化の需要が増加しており、それに伴い磁石の耐熱性向上に対する要求が高まっている。耐熱性向上のためには保磁力の向上が必要である。
【0011】
大きな磁気異方性を有する永久磁石において、保磁力を発現させるための有効な方法の一つに永久磁石中の結晶粒を微細化する方法がある。よって、主相は、微結晶を有することが好ましい。微結晶は、例えば液体急冷法を用いて作製した非晶質の薄帯を用いて永久磁石を作製し、その後に適切な熱処理を施して結晶粒の析出と成長を行うことにより形成される。
【0012】
磁気異方性が高い主相を微細化することにより、個々の結晶粒が単磁区状態となりやすくなり、逆磁区発生と磁壁伝播を抑制して高い保磁力を発現する。結晶粒径が微細すぎる場合も粗大すぎる場合も保磁力が低くなるため、主相の平均結晶粒径は、0.1nm以上100nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、0.5nm以上80nm以下であり、さらに好ましくは1nm以上60nm以下であり、さらに好ましくは3nm以上50nm以下である。また、主相の粒径分布を狭くすることにより角型比を向上させることができる。
【0013】
粒界相として非磁性又は弱磁性の粒界相を形成してもよい。これにより結晶粒間の磁気的な結合が切断され、逆磁区の発生や磁壁の伝播を抑制する効果が高まり、保磁力を向上させることができる。粒界相を形成して結晶粒間の磁気的な結合を切断する場合には、結晶粒径が粗大であっても、逆磁区発生と磁壁伝播を抑制して高い保磁力を発現できる。
【0014】
保磁力を高めるためには希土類元素、M元素、Nb元素、B元素の各添加量を制御する必要がある。実施形態の永久磁石は、例えば組成式1:RxNbyBtM100-x-y-tにより表される。なお、永久磁石は、不可避不純物を含んでいてもよい。
【0015】
R元素は希土類元素であり、永久磁石に大きな磁気異方性をもたらし、高い保磁力を付与することができる元素である。R元素は具体的には、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pr)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であり、特に、Smを用いることが好ましい。例えば、R元素としてSmを含む複数の元素を用いる場合、Sm濃度をR元素として適用可能な元素全体の50原子%以上とすることにより、永久磁石の性能、例えば保磁力を高めることができる。
【0016】
R元素の添加量xは、例えば4.0<x≦11.0原子%を満足する数であることが好ましい。xが少なすぎる場合も多すぎる場合も異相が析出して保磁力が低下する。R元素の添加量xは、4.5≦x≦9.0原子%を満足する数、さらには、5.0≦x≦8.0原子%を満足する数、さらには6.0≦x≦7.5原子%を満足する数であることがより好ましい。
【0017】
Nb元素は、高濃度のM元素を含む結晶相の安定化に有効な元素である。また、非晶質化の促進に有効な元素である。Nb元素の添加量yが多すぎる場合、飽和磁化の低下を招く。Nb元素の添加量yを適切に制御することで、永久磁石の性能、例えば保磁力を高めることができる。Nb元素の添加量yは、0≦y≦6.5原子%を満足する数、さらには、0.5≦y≦5.0原子%を満足する数、さらには、1.0≦y≦4.0原子%を満足する数、さらには、1.5≦y≦3.5原子%を満足する数であることが好ましい。
【0018】
Nb元素の50原子%以下は、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素に置換されてもよい。Zr元素、Ta元素、及びHf元素は、結晶相の安定化や非晶質化に有効な元素である。Nb元素の50原子%以下は、Zr、Hf、Ta、及びTiからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素に置換されてもよい。
【0019】
M元素は、Fe及びCoからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であり、永久磁石の高い飽和磁化を担う元素である。FeとCoではFeのほうがより磁化が高いことからM元素の50原子%以上がFeであることが好ましい。M元素にCoを入れることにより永久磁石のキュリー温度が上昇し、高温領域での飽和磁化の低下を抑制することができる。また、Coを少量入れることによりFe単独の場合よりも飽和磁化を高めることができる。一方、Co比率を高めると異方性磁界の低下を招く。さらに、Co比率が高すぎると飽和磁化の低下も招く。このため、FeとCoの比率を適切に制御することにより、高い飽和磁化、高い異方性磁界、高いキュリー温度を同時に実現することができる。組成式1のMを(Fe1-vCov)と表記すると、好ましいvの値は0.01≦v<0.7であり、より好ましくは0.01≦v<0.5であり、さらに好ましくは0.01≦v≦0.3である。M元素の20原子%以下は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、ガリウム(Ga)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びモリブデン(Mo)からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素に置換されてもよい。上記元素は、例えば主相を構成する結晶粒の成長に寄与する。
【0020】
B元素は、非晶質化の促進に有効な元素である。B元素の添加量tを適切に制御することにより、単ロール急冷法等の工業生産性が高い手法で非晶質な薄帯を得ることができる。B元素の添加量tは、例えば0≦t<12.0原子%を満足する数であることが好ましい。B元素が多すぎる場合にはR2Fe14B相等の異相が形成されやすくなり、保磁力が低下する。また、B元素が多すぎる場合には飽和磁化の低下も招く。B元素を実質的に含まなくても非晶質化は可能であるが、単ロール法を用いる場合には、ロール周速を速めて冷却速度を高める必要があり、工業生産性が低下する。B元素の添加量tは1.0≦t≦11.0原子%を満足する数であることがより好ましく、さらに好ましくは2.0≦t≦10.8原子%を満足する数であり、さらに好ましくは5.0≦t≦10.5原子%を満足する数である。
【0021】
R元素の一部はY元素により置換されてもよい。このとき、永久磁石は、例えば組成式2:(R1-uYu)xNbyBtM100-x-y-tにより表される。なお、永久磁石は、不可避不純物を含んでいてもよい。R元素、Nb元素、B元素、M元素の説明については、上記説明を適宜援用することができる。R元素の1原子%以上50原子%以下は、Yであってもよい。
【0022】
Y元素は、高濃度のM元素を含む結晶相、例えばThMn12型結晶相やTbCu7型結晶相の安定化に有効な元素である。高濃度のM元素を含む結晶相はM元素濃度を高めるほど飽和磁化が高くなり、磁石特性を高めることができるが、M元素濃度が高くなると結晶構造が不安定になり、主相の分解や、α-Fe相又はα-(Fe,Co)相の析出により保磁力が低下する。これに対し、R元素の一部をY元素で置換することにより、高濃度のM元素を含む結晶相の安定性を高めることができ、よりM元素濃度を高めることができる。これにより、高い保磁力と高い磁化を両立することができる。Y元素の添加量uは0.01≦u≦0.5を満足する数であることが好ましい。uが少なすぎる場合には安定化の効果が少なく、uが大すぎる場合には磁気異方性が低下し、保磁力が低下する。uは0.02≦u≦0.4を満足する数であることがより好ましく、さらに好ましくは0.05≦u≦0.3である。
【0023】
実施形態の永久磁石は、高濃度のM元素を含む結晶相として、例えばThMn12型結晶相を主相として有していてもよい。このとき、永久磁石は、例えば組成式3:RxNbyBtM100-x-y-tにより表され、xは4.0<x≦11.0原子%を満足する数であり、yは0<y≦6.5原子%を満足する数であり、tは0≦t<12.0原子%を満足する数である。なお、永久磁石は、不可避不純物を含んでいてもよい。R元素、Nb元素、B元素、M元素の説明については、上記説明を適宜援用することができる。
【0024】
実施形態の永久磁石は、さらにA元素を含んでいてもよい。A元素は窒素(N)、炭素(C)、水素(H)、及びリン(P)からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素である。A元素は結晶格子内に侵入し、例えば結晶格子を拡大させること及び電子構造を変化させることの少なくとも一つを生じさせる機能を有する。これにより、キュリー温度、磁気異方性、飽和磁化を変化させることができる。A元素は、不可避不純物を除き必ずしも添加されなくてもよい。
【0025】
実施形態の永久磁石は、密度が7.0g/cm3以上である。永久磁石では密度を高めることで、残留磁化を高めることができる。また、耐食性や機械強度を高めることもできる。密度は7.2g/cm3以上であることがより好ましく、さらに好ましくは、7.5g/cm3以上である。密度の上限は、特に限定されないが、例えば7.9g/cm3以下である。
【0026】
実施形態の永久磁石は、焼結体であることが好ましい。ボンド磁石では、密度を高めるために大きな成型圧力が必要となり、工業的に困難である。また、磁石材料の充填率を高めるために、バインダーを低減させると、永久磁石の強度が低下する。
【0027】
実施形態の永久磁石は、例えばTbCu7型結晶相のような高濃度のM元素を含む結晶相を主相として備えながら、高い密度を有している。これにより、高い保磁力と高い残留磁化を両立することができる。
【0028】
実施形態の永久磁石は、α-Fe相又はα-(Fe,Co)相やR2Fe14B相又はR2(Fe,Co)14B相の割合が少ない。これらの群から選ばれる少なくとも一つの相の割合は、10体積%以下である。これにより、保磁力を高めることができる。より好ましくは5体積%以下であり、さらに好ましくは1体積%以下である。
【0029】
実施形態の永久磁石は、充填率が85.0%以上99.9%以下である。充填率を高めることで、残留磁化を高めることができる。また、耐食性や機械強度を高めることもできる。充填率は90.0%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは、95.0%以上である。
【0030】
実施形態の永久磁石の固有保磁力は、300kA/m以上2500kA/m以下である。耐熱性を高めるために、より好ましくは500kA/m以上2500kA/m以下であり、さらに好ましくは600kA/m以上2500kA/m以下であり、さらに好ましくは650kA/m以上2500kA/m以下である。
【0031】
実施形態の永久磁石の残留磁化は、0.8T以上1.6T以下である。残留磁化が高いほどモータの小型化等に効果的である。残留磁化は、好ましくは0.85T以上1.6T以下であり、さらに好ましくは0.9T以上1.6T以下である。
【0032】
永久磁石の組成は、例えば高周波誘導結合プラズマ-発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectroscopy:ICP-AES)、走査電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(Scanning Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:SEM-EDX)、透過電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:TEM-EDX)、走査型透過電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(Scanning Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:STEM-EDX)等により測定される。
【0033】
金属組織の各相の体積比率は、例えば電子顕微鏡や光学顕微鏡による観察とX線回折分析等とを併用して総合的に判断されるが、永久磁石の断面を撮影したSEM像の面積分析法により求めることができる。永久磁石の断面としては、試料の最大面積を有する表面の実質的に中央部の断面が用いられる。SEMでは、例えば倍率500倍で100μm×200μm以上300μm×500μm以下の領域を観察する。観察は互いに重なり合わない10箇所以上の箇所で行い各像において算出した面積率の最大値と最小値を除いた値の平均値を求め、この値をもって各相の体積比率とする。異相の総量は、SEM像の面積Stotalと、異相の面積の総和SFe,Coを用いて、SFe,Co/Stotal×100により表される。
【0034】
主相の平均粒径は次のように求められる。永久磁石の断面においてSTEM-EDXを用いて特定した主相結晶粒に対し、任意の粒を選択し、選択した粒に対し、両端が別の相に接する最も長い直線Aを引く。次に、この直線Aの中点において、直線Aに垂直であり、かつ両端が別の相に接する直線Bを引く。この直線Aと直線Bの長さの平均を相の径Dとする。上記手順で1個以上の任意の相のDを求める。一つのサンプルに対して5視野で上記Dを算出し、各Dの平均を相の径(D)と定義する。永久磁石の断面としては、試料の最大面積を有する表面の実質的に中央部の断面が用いられる。
【0035】
永久磁石の密度は、成型体の寸法及び重量から求められる。より寸法精度を高めるために、永久磁石に研削加工等を施してから測定してもよい。あるいは、アルキメデス法を用いて密度を求めてもよい。
【0036】
永久磁石の充填率は、例えば永久磁石の断面を撮影したSEM像の面積分析法により求めることができる。永久磁石の断面としては、試料の最大面積を有する表面の実質的に中央部の断面が用いられる。SEMでは、例えば倍率500倍で100μm×200μm以上300μm×500μm以下の領域を観察する。観察は互いに重なり合わない10箇所以上の箇所で行い各像において算出した面積率の最大値と最小値を除いた値の平均値を求め、この値をもって各相の体積比率とする。充填率は、SEM像の面積Stotalと、磁石材料の面積の総和Smagを用いて、Smag/Stotal×100により表される。
【0037】
永久磁石の保磁力や磁化等の磁石特性は、例えば直流磁束計(BHトレーサー)や振動試料型磁力計(Vibrating Sample Magetometer:VSM)を用いて算出される。
【0038】
次に、実施形態の永久磁石の製造方法例について説明する。まず、永久磁石に必要な所定の元素を含む合金を製造する。例えば、アーク溶解法、高周波溶解法、金型鋳造法、メカニカルアロイング法、メカニカルグラインディング法、ガスアトマイズ法、還元拡散法等を用いて合金を製造することができる。
【0039】
上記合金を溶解して急冷する。これにより、合金を非晶質化する。溶解された合金は、例えば液体急冷法(メルトスパン法)を用い冷却される。液体急冷法では、合金溶湯を高速回転するロールに射出する。ロールは単ロール型でも双ロール型でもよく、材質は主に銅や銅ベリリウムなどの銅合金等が使用される。射出する溶湯の量や、回転するロールの周速を制御することにより溶湯の冷却速度を制御することができる。合金の非晶質化の程度は組成と冷却速度により制御できる。また、上記の合金作製時にガスアトマイズ法等を用いることにより既に非晶質合金が得られている場合は改めて急冷工程を実施しなくてもよい。
【0040】
上記非晶質化した合金又は合金薄帯に対して粉砕を施す。粉砕方法は様々に選択できるが、例えばカッターミルやローラーミル、ジェットミル、ボールミルなどの粉砕機を用いて粉砕できる。あるいは乳鉢で粉砕してもよい。磁石材料の平均長さは、1μm以上1000μm(1mm)以下が好ましい。粒径が細かすぎると酸化により永久磁石の飽和磁化低下を招く。粒径が粗すぎると、圧縮成型時に空孔の残存率が多くなり、永久磁石の飽和磁化低下を招く。好ましくは5μm以上500μm以下であり、より好ましくは10μm以上150μm以下である。磁石材料は、例えば篩い分けによって、平均長さを制御できる。カッターミルやローラーミル等の各種粉砕装置の粉砕時間やスクリーン径等の粉砕条件を調整することにより平均長さを制御してもよい。平均長さは、例えばSEM像から50個以上の粉末の長辺方向の長さを求め、その平均値により定義できる。
【0041】
上記粉末を金型に充填した後に、ホットプレスを用いて加圧焼結を施し焼結体を作製する。印加する圧力は0.5ton/cm2以上20ton/cm2以下が好ましい。印加圧力が低いと緻密化が不十分となり、印加圧力が高すぎると工業的に製造が困難になる。より好ましくは1.0ton/cm2以上15ton/cm2以下であり、さらに好ましくは5.0ton/cm2以上13ton/cm2以下である。
【0042】
上記粉末を金型に充填した後に、磁場を印加してもよい。これにより、粉末の配向性を向上させることができる。
【0043】
加圧焼結の温度は、例えば500℃以上1000℃以下である。温度が低すぎると緻密化の効果が小さく、温度が高すぎると主相が分解し、α-Fe相又はα-(Fe,Co)相やR2Fe14B相又はR2(Fe,Co)14B相の割合が増加する。より好ましくは600℃以上800℃以下であり、さらに好ましくは650℃以上750℃以下である。
【0044】
加圧焼結の保持時間は、例えば1分以上10時間以下である。保持時間が短すぎると緻密化の効果が小さく、保持時間が長すぎると主相の分解や結晶粒径の粗大化が促進され、保磁力が低下する。より好ましくは10分以上5時間以下であり、さらに好ましくは15分以上1時間以下である。
【0045】
ホットプレスの代わりに熱間等方圧加圧法(HIP)や放電プラズマ焼結法(SPS)を用いることもできる。印加圧力、加熱温度及び保持時間はそれぞれの手法に合わせて最適な条件を用いることができる。
【0046】
上記加圧焼結にて作製した焼結体に対して熱処理を施してもよい。これにより、主相の結晶化を促進し、微結晶を有する主相を備える金属組織を形成することができる。例えば、アルゴン(Ar)中や真空中等の不活性雰囲気下で500℃以上1000℃以下の温度で5分以上300時間以下加熱する。
【0047】
温度が低すぎる場合には結晶化や均一化が不十分となり保磁力が低下する。また、温度が高すぎる場合には主相の分解等により異相が生成され、保磁力や角型性が低下する。加熱温度は例えば520℃以上800℃以下がより好ましく、さらに好ましくは540℃以上700℃以下であり、さらに好ましくは550℃以上650℃以下である。加熱時間が短すぎる場合には結晶化や均一化が不十分となり保磁力が低下する。
【0048】
主相の結晶相が例えばThMn12型結晶相の場合、加熱温度は例えば600℃以上1000℃以下がより好ましく、さらに好ましくは700℃以上1000℃以下である。
【0049】
加熱時間が長すぎる場合には主相の分解等により異相が生成され、保磁力や角型性が低下する。好ましい加熱時間は15分以上150時間以下であり、さらに好ましくは30分以上120時間以下であり、さらに好ましくは1時間以上120時間以下であり、さらに好ましくは2時間以上100時間以下であり、さらに好ましくは3時間以上80時間以下である。
【0050】
加熱後には炉冷又は水中急冷、ガス急冷、オイル中急冷等の方法により結晶化した焼結体を冷却する。上記加圧焼結にて、十分に結晶化している場合には、熱処理を施さなくてもよい。
【0051】
上記焼結体に熱間加工を施してもよい。熱間加工を行うことにより、結晶粒のc軸を配向させることができる。熱間加工は、例えば加工率に合わせて上記焼結体よりも寸法の大きな金型に焼結体を設置し、加圧加熱処理を施すことで実施できる。例えば、印加する圧力は0.5ton/cm2以上20ton/cm2以下であり、加圧焼結の温度は、500℃以上1000℃以下であり、加圧焼結の保持時間は、1分以上10時間以下である。
【0052】
上記焼結体にA元素を侵入させてもよい。A元素を侵入させる工程は、上記加圧焼結前の合金粉末に対して実施することが好ましい。A元素が窒素の場合、約0.1気圧以上100気圧以下の窒素ガスやアンモニアガス等の雰囲気中で、200℃以上700℃以下の温度で合金を1時間以上100時間以下加熱することにより、合金を窒化させ、N元素を合金に侵入させることができる。A元素が炭素の場合、約0.1気圧以上100気圧以下のアセチレン(C2H2)、メタン(CH4)、プロパン(C3H8)、又は一酸化炭素(CO)ガスもしくはメタノール(CH3OH)の加熱分解ガスの雰囲気中で、300℃以上900℃以下の温度範囲で合金を1時間以上100時間以下加熱することにより、合金を炭化させ、C元素を合金に侵入させることができる。A元素が水素の場合、約0.1気圧以上100気圧以下の水素ガスやアンモニアガス等の雰囲気中で、200℃以上700℃以下の温度範囲で合金を1時間以上100時間以下加熱することにより、合金を水素化させ、H元素を合金に侵入させることができる。A元素がリンの場合、合金をリン化させ、P元素を合金に侵入させることができる。
【0053】
上記工程により永久磁石が製造される。
【0054】
(第2の実施形態)
第1の実施形態の永久磁石は、各種モータや発電機に使用することができる。また、可変磁束モータや可変磁束発電機の固定磁石や可変磁石として使用することも可能である。第1の実施形態の永久磁石を用いることによって、各種のモータや発電機が構成される。第1の実施形態の永久磁石を可変磁束モータに適用する場合、可変磁束モータの構成やドライブシステムには、例えば特開2008-29148号公報や特開2008-43172号公報に開示されている技術を適用することができる。
【0055】
次に、上記永久磁石を具備するモータと発電機について、図面を参照して説明する。
図1は永久磁石モータを示す図である。
図1に示す永久磁石モータ11では、ステータ(固定子)12内にロータ(回転子)13が配置されている。ロータ13の鉄心14中には、第1の実施形態の永久磁石である永久磁石15が配置されている。第1の実施形態の永久磁石を用いることにより、各永久磁石の特性等に基づいて、永久磁石モータ11の高効率化、小型化、低コスト化等を図ることができる。また、上記永久磁石は同期リラクタンスモータのフラックスバリア部分に挿入することもできる。これにより、同期リラクタンスモータの力率を高めることができる。
【0056】
図2は可変磁束モータを示す図である。
図2に示す可変磁束モータ21において、ステータ(固定子)22内にはロータ(回転子)23が配置されている。ロータ23の鉄心24中には、第1の実施形態の永久磁石が固定磁石25及び可変磁石26として配置されている。可変磁石26の磁束密度(磁束量)は可変することが可能とされている。可変磁石26はその磁化方向がQ軸方向と直交するため、Q軸電流の影響を受けず、D軸電流により磁化することができる。ロータ23には磁化巻線(図示せず)が設けられている。この磁化巻線に磁化回路から電流を流すことによって、その磁界が直接に可変磁石26に作用する構造となっている。
【0057】
第1の実施形態の永久磁石によれば、固定磁石25に好適な保磁力を得ることができる。第1の実施形態の永久磁石を可変磁石26に適用する場合には、製造条件を変更することによって、例えば保磁力を100kA/m以上500kA/m以下の範囲に制御すればよい。なお、
図2に示す可変磁束モータ21においては、固定磁石25及び可変磁石26のいずれにも第1の実施形態の永久磁石を用いることができるが、いずれか一方の磁石に第1の実施形態の永久磁石を用いてもよい。可変磁束モータ21は、大きなトルクを小さい装置サイズで出力可能であるため、モータの高出力・小型化が求められるハイブリッド車や電気自動車等のモータに好適である。
【0058】
図3は発電機を示している。
図3に示す発電機31は、上記永久磁石を用いたステータ(固定子)32を備えている。ステータ(固定子)32の内側に配置されたロータ(回転子)33は、発電機31の一端に設けられたタービン34とシャフト35を介して接続されている。タービン34は、例えば外部から供給される流体により回転する。なお、流体により回転するタービン34に代えて、自動車の回生エネルギー等の動的な回転を伝達することによって、シャフト35を回転させることも可能である。ステータ32とロータ33には、各種公知の構成を採用することができる。
【0059】
シャフト35はロータ33に対してタービン34とは反対側に配置された整流子(図示せず)と接触しており、ロータ33の回転により発生した起電力が発電機31の出力として相分離母線及び主変圧器(図示せず)を介して、系統電圧に昇圧されて送電される。発電機31は、通常の発電機及び可変磁束発電機のいずれであってもよい。なお、ロータ33にはタービン34からの静電気や発電に伴う軸電流による帯電が発生する。このため、発電機31はロータ33の帯電を放電させるためのブラシ36を備えている。
【0060】
以上のように、上記永久磁石を発電機に適用することにより、高効率化、小型化、低コスト化等の効果が得られる。
【0061】
上記回転電機は、例えば、鉄道交通に利用される鉄道車両(車両の一例)に搭載されてよい。
図4は、回転電機101を具備する鉄道車両100の一例を示す図である。回転電機101としては、上記
図1、2のモータ、
図3の発電機等を用いることができる。回転電機101として上記回転電機が搭載された場合、回転電機101は、例えば、架線から供給される電力や、鉄道車両100に搭載された二次電池から供給される電力を利用することによって駆動力を出力する電動機(モータ)として利用されてもよいし、運動エネルギーを電力に変換して、鉄道車両100内の各種負荷に電力を供給する発電機(ジェネレータ)として利用されてもよい。実施形態の回転電機のような高効率な回転電機を利用することにより、省エネルギーで鉄道車両を走行させることができる。
【0062】
上記回転電機は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の自動車(車両の他の例)に搭載されてもよい。
図5は、回転電機201を具備する自動車200の一例を示す図である。回転電機201としては、上記
図1、2のモータ、
図3の発電機等を用いることができる。回転電機201として上記回転電機が搭載された場合、回転電機201は、自動車200の駆動力を出力する電動機、又は自動車200の走行時の運動エネルギーを電力に変換する発電機として利用してもよい。また、上記回転電機は、例えば産業機器(産業用モータ)、空調機器(エアコンディショナ・給湯器コンプレッサモータ)、風力発電機、又はエレベータ(巻上機)に搭載されてもよい。
【実施例0063】
(実施例1-10)
原料を適量秤量し、アーク溶解法を用いて合金を作製した。次に、合金を溶解し、得られた溶湯を単ロール法により急冷し、急冷合金薄帯を作製した。上記合金薄帯を粉砕し、平均長さが100μm以上200μm以下の合金粉末を作製した。合金粉末を金型に充填した後に、Ar雰囲気下においてホットプレスにより加圧焼結を施した。印加圧力は10ton/cm2で、700℃の温度で30分間加熱し、炉冷した。加圧焼結後の焼結体にAr雰囲気下において600℃の温度で10時間保持する熱処理を施し、焼結磁石を作製した。磁石材料の組成はICP-AESを用いて評価した。焼結磁石の構成相はXRDを用いて評価した。焼結体密度は加工後の寸法と重量から算出し、充填率及び異相量は断面SEM像から算出した。また、BHトレーサーを用いて永久磁石の磁石特性を評価した。磁石材料の組成、主相の結晶相、密度、充填率、異相量、保磁力、及び残留磁化の評価結果を表1に示す。
【0064】
(実施例11-13)
原料を適量秤量し、高周波溶解法を用いて合金を作製した。次に、合金を溶解し、得られた溶湯を単ロール法により急冷し、急冷合金薄帯を作製した。上記合金薄帯を粉砕し、平均長さが100μm以上200μm以下の合金粉末を作製した。合金粉末を金型に充填した後に、Ar雰囲気下においてホットプレスにより加圧焼結を施した。印加圧力は10ton/cm2で、650℃の温度で1時間加熱し、炉冷した。加圧焼結後の焼結体にAr雰囲気下において600℃の温度で20時間保持する熱処理を施し、焼結磁石を作製した。磁石材料の組成はICP-AESを用いて評価した。焼結磁石の構成相はXRDを用いて評価した。焼結体密度は加工後の寸法と重量から算出し、充填率及び異相量は断面SEM像から算出した。また、BHトレーサーを用いて永久磁石の磁石特性を評価した。磁石材料の組成、主相の結晶相、密度、充填率、異相量、保磁力、及び残留磁化の評価結果を表1に示す。
【0065】
(実施例14)
原料を適量秤量し、高周波溶解法を用いて合金を作製した。次に、合金を溶解し、得られた溶湯を単ロール法により急冷し、急冷合金薄帯を作製した。上記合金薄帯を粉砕し、平均長さが100μm以上200μm以下の合金粉末を作製した。合金粉末を金型に充填した後に、Ar雰囲気下においてホットプレスにより加圧焼結を施した。印加圧力は15ton/cm2で、600℃の温度で5時間加熱し、炉冷した。加圧焼結後の焼結体にAr雰囲気下において610℃の温度で10時間保持する熱処理を施し、焼結磁石を作製した。磁石材料の組成はICP-AESを用いて評価した。焼結磁石の構成相はXRDを用いて評価した。焼結体密度は加工後の寸法と重量から算出し、充填率及び異相量は断面SEM像から算出した。また、BHトレーサーを用いて永久磁石の磁石特性を評価した。磁石材料の組成、主相の結晶相、密度、充填率、異相量、保磁力、及び残留磁化の評価結果を表1に示す。
【0066】
(実施例15)
原料を適量秤量し、高周波溶解法を用いて合金を作製した。次に、合金を溶解し、得られた溶湯を単ロール法により急冷し、急冷合金薄帯を作製した。上記合金薄帯を粉砕し、平均長さが200μm以上300μm以下の合金粉末を作製した。合金粉末を金型に充填した後に、Ar雰囲気下においてホットプレスにより加圧焼結を施した。印加圧力は8ton/cm2で、750℃の温度で15分間加熱し、炉冷した。加圧焼結後の焼結体にAr雰囲気下において620℃の温度で10時間保持する熱処理を施し、焼結磁石を作製した。磁石材料の組成はICP-AESを用いて評価した。焼結磁石の構成相はXRDを用いて評価した。焼結体密度は加工後の寸法と重量から算出し、充填率及び異相量は断面SEM像から算出した。また、BHトレーサーを用いて永久磁石の磁石特性を評価した。磁石材料の組成、主相の結晶相、密度、充填率、異相量、保磁力、及び残留磁化の評価結果を表1に示す。
【0067】
(実施例16)
原料を適量秤量し、高周波溶解法を用いて合金を作製した。次に、合金を溶解し、得られた溶湯を単ロール法により急冷し、急冷合金薄帯を作製した。上記合金薄帯を粉砕し、平均長さが200μm以上300μm以下の合金粉末を作製した。合金粉末を金型に充填した後に、Ar雰囲気下においてホットプレスにより加圧焼結を施した。印加圧力は7ton/cm2で、800℃の温度で5分間加熱し、炉冷した。加圧焼結後の焼結体にAr雰囲気下において640℃の温度で10時間保持する熱処理を施し、焼結磁石を作製した。磁石材料の組成はICP-AESを用いて評価した。焼結磁石の構成相はXRDを用いて評価した。焼結体密度は加工後の寸法と重量から算出し、充填率及び異相量は断面SEM像から算出した。また、BHトレーサーを用いて永久磁石の磁石特性を評価した。磁石材料の組成、主相の結晶相、密度、充填率、異相量、保磁力、及び残留磁化の評価結果を表1に示す。
【0068】
(実施例17-19)
原料を適量秤量し、高周波溶解法を用いて合金を作製した。次に、合金を溶解し、得られた溶湯を単ロール法により急冷し、急冷合金薄帯を作製した。上記合金薄帯を粉砕し、平均長さが200μm以上300μm以下の合金粉末を作製した。合金粉末を金型に充填した後に、Ar雰囲気下においてホットプレスにより加圧焼結を施した。印加圧力は10ton/cm2で、650℃の温度で10時間加熱して炉冷し、焼結磁石を作製した。磁石材料の組成はICP-AESを用いて評価した。焼結磁石の構成相はXRDを用いて評価した。焼結体密度は加工後の寸法と重量から算出し、充填率及び異相量は断面SEM像から算出した。また、BHトレーサーを用いて永久磁石の磁石特性を評価した。磁石材料の組成、主相の結晶相、密度、充填率、異相量、保磁力、及び残留磁化の評価結果を表1に示す。
【0069】
(実施例20、21)
原料を適量秤量し、高周波溶解法を用いて合金を作製した。次に、合金を溶解し、得られた溶湯を単ロール法により急冷し、急冷合金薄帯を作製した。上記合金薄帯を粉砕し、平均長さが200μm以上300μm以下の合金粉末を作製した。合金粉末を金型に充填した後に、Ar雰囲気下においてホットプレスにより加圧焼結を施した。印加圧力は8ton/cm2で、750℃の温度で15分間加熱し、炉冷した。加圧焼結後の焼結体にAr雰囲気下において950℃の温度で10時間保持する熱処理を施し、焼結磁石を作製した。磁石材料の組成はICP-AESを用いて評価した。焼結磁石の構成相はXRDを用いて評価した。焼結体密度は加工後の寸法と重量から算出し、充填率及び異相量は断面SEM像から算出した。また、BHトレーサーを用いて永久磁石の磁石特性を評価した。磁石材料の組成、主相の結晶相、密度、充填率、異相量、保磁力、及び残留磁化の評価結果を表1に示す。
【0070】
(比較例1)
原料を適量秤量し、アーク溶解法を用いて合金を作製した。次に、合金を溶解し、得られた溶湯を単ロール法により急冷し、急冷合金薄帯を作製した。上記合金薄帯を粉砕し、平均長さが100μm以上200μm以下の合金粉末を作製した。合金粉末を金型に充填した後に、Ar雰囲気下においてホットプレスにより加圧焼結を施した。印加圧力は12ton/cm2で、450℃の温度で5時間加熱し、炉冷した。加圧焼結後の焼結体にAr雰囲気下において600℃の温度で10時間保持する熱処理を施し、焼結磁石を作製した。磁石材料の組成はICP-AESを用いて評価した。焼結磁石の構成相はXRDを用いて評価した。焼結体密度は加工後の寸法と重量から算出し、充填率及び異相量は断面SEM像から算出した。また、BHトレーサーを用いて永久磁石の磁石特性を評価した。磁石材料の組成、主相の結晶相、密度、充填率、異相量、保磁力、及び残留磁化の評価結果を表1に示す。
【0071】
(比較例2)
原料を適量秤量し、アーク溶解法を用いて合金を作製した。次に、合金を溶解し、得られた溶湯を単ロール法により急冷し、急冷合金薄帯を作製した。上記合金薄帯を粉砕し、平均長さが100μm以上200μm以下の合金粉末を作製した。合金粉末を金型に充填した後に、Ar雰囲気下においてホットプレスにより加圧焼結を施した。印加圧力は8ton/cm2で、1100℃の温度で5分間加熱し、炉冷した。加圧焼結後の焼結体にAr雰囲気下において600℃の温度で10時間保持する熱処理を施し、焼結磁石を作製した。磁石材料の組成はICP-AESを用いて評価した。焼結磁石の構成相はXRDを用いて評価した。焼結体密度は加工後の寸法と重量から算出し、充填率及び異相量は断面SEM像から算出した。また、BHトレーサーを用いて永久磁石の磁石特性を評価した。磁石材料の組成、主相の結晶相、密度、充填率、異相量、保磁力、及び残留磁化の評価結果を表1に示す。
【0072】
(比較例3)
原料を適量秤量し、アーク溶解法を用いて合金を作製した。次に、合金を溶解し、得られた溶湯を単ロール法により急冷し、急冷合金薄帯を作製した。上記合金薄帯を粉砕し、平均長さが100μm以上200μm以下の合金粉末を作製した。合金粉末を金型に充填した後に、10ton/cm2の圧力で圧縮成形した後に、Ar雰囲気下大気圧において焼結を施した。焼結は700℃の温度で1時間加熱し、炉冷した。焼結後の焼結体にAr雰囲気下において600℃の温度で10時間保持する熱処理を施し、焼結磁石を作製した。磁石材料の組成はICP-AESを用いて評価した。焼結磁石の構成相はXRDを用いて評価した。焼結体密度は加工後の寸法と重量から算出し、充填率及び異相量は断面SEM像から算出した。また、BHトレーサーを用いて永久磁石の磁石特性を評価した。磁石材料の組成、主相の結晶相、密度、充填率、異相量、保磁力、及び残留磁化の評価結果を表1に示す。
【0073】
(比較例4)
原料を適量秤量し、アーク溶解法を用いて合金を作製した。次に、合金を溶解し、得られた溶湯を単ロール法により急冷し、急冷合金薄帯を作製した。上記合金薄帯を粉砕し、平均長さが100μm以上200μm以下の合金粉末を作製した。合金粉末を金型に充填した後に、10ton/cm2の圧力で圧縮成形した後に、Ar雰囲気下大気圧において焼結を施した。焼結は1200℃の温度で1時間加熱し、炉冷した。焼結後の焼結体にAr雰囲気下において600℃の温度で10時間保持する熱処理を施し、焼結磁石を作製した。磁石材料の組成はICP-AESを用いて評価した。焼結磁石の構成相はXRDを用いて評価した。焼結体密度は加工後の寸法と重量から算出し、充填率及び異相量は断面SEM像から算出した。また、BHトレーサーを用いて永久磁石の磁石特性を評価した。磁石材料の組成、主相の結晶相、密度、充填率、異相量、保磁力、及び残留磁化の評価結果を表1に示す。
【0074】
【0075】
表1に示すように、実施例1-19の永久磁石は、TbCu7型結晶相を有する主相を備え、密度は、7.0g/cm3以上である。また、実施例20、21の永久磁石は、Th2Mn12型結晶相を有する主相を備え、密度は、7.0g/cm3以上である。これにより実施例1-21の永久磁石は高い保磁力を有しながら、残留磁化も高い。一方、比較例1-4の永久磁石は、TbCu7型結晶相を有する主相を備えていないか、密度が低く、実施例と比較し、明らかに保磁力あるいは残留磁化が低い。
【0076】
なお、上記実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
11…永久磁石モータ、13…ロータ、14…鉄心、15…永久磁石、21…可変磁束モータ、23…ロータ、24…鉄心、25…固定磁石、26…可変磁石、31…発電機、32…ステータ、33…ロータ、34…タービン、35…シャフト、36…ブラシ、100…鉄道車両、101…回転電機、200…自動車、201…回転電機。