(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176484
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】載荷試験装置及び載荷試験方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/08 20060101AFI20231206BHJP
E02D 1/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
E02D1/08
E02D1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088783
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】村田 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩一
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043AA03
2D043AB03
2D043AC03
(57)【要約】
【課題】載荷試験の作業負担の低減を図る。
【解決手段】地盤に埋設された杭Pの杭頭P1の上端部に載置される台座50を備え、台座50の下には、第1のアクチュエータ623の加圧力により台座50を杭頭P1に固定するクランプ装置60が配置され、台座50の上には、クッション材30と、クッション材30に落下させる錘20と、台座50に設けられ、錘20を昇降可能に支持する支持部41と、第2のアクチュエータ43により昇降する昇降体42と、昇降体42上で錘20の保持と解放を行う第3のアクチュエータ443と、が配置され、第1のアクチュエータ623を有するクランプ装置60により杭上に固定される構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に埋設された杭の杭頭の上端部に載置される台座を備え、
前記台座の下には、第1のアクチュエータの加圧力により前記台座を前記杭頭に固定するクランプ装置が配置され、
前記台座の上には、
クッション材と、
前記クッション材に落下させる錘と、
前記台座に設けられ、前記錘を昇降可能に支持する支持部と、
第2のアクチュエータにより昇降する昇降体と、
前記昇降体上で前記錘の保持と解放を行う第3のアクチュエータと、
が配置され、
前記第1のアクチュエータを有するクランプ装置により杭上に固定されることを特徴とする載荷試験装置。
【請求項2】
前記錘は、前記支持部に沿って落下させるガイド機構を備える
請求項1に記載の載荷試験装置。
【請求項3】
前記台座に対して前記クランプ装置を着脱可能とする
請求項1に記載の載荷試験装置。
【請求項4】
前記昇降体は、前記第3のアクチュエータにより前記錘の被把持部を把持する把持装置を備え、当該把持装置の開閉動作によって前記錘の保持と解放とを行う
請求項1に記載の載荷試験装置。
【請求項5】
前記昇降体による前記錘の保持、上昇及び落下の一連の動作を制御する制御装置を備える
請求項1に記載の載荷試験装置。
【請求項6】
請求項1に記載の載荷試験装置を前記杭頭に取り付けて試験を行う載荷試験方法であって、
制御装置により前記昇降体による前記錘の保持、上昇及び落下の一連の動作を制御する載荷試験方法。
【請求項7】
前記制御装置により、設定入力された載荷試験のパラメータに基づく高さから前記錘を落下させる制御を行う
請求項6に記載の載荷試験方法。
【請求項8】
前記制御装置により、
前記昇降体による前記錘の保持、上昇及び落下の一連の動作を複数回実行する制御を行う
請求項7に記載の載荷試験方法。
【請求項9】
前記制御装置により、
高さを変えて前記錘を複数回落下させる制御を行う
請求項8に記載の載荷試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、載荷試験装置及び載荷試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された杭の支持力を求めるために載荷試験装置が利用されている。
載荷試験装置は、杭頭に載置されたクッション材と、クッション材に落下させる錘と、錘の引き上げ装置と、全体を支持する載荷架台とを備えている。
引き上げ装置は、錘を吊下する吊りロッドと、吊りロッドを介して錘を引き上げる吊り上げシリンダと、吊りロッドの把持と解放を行う保持シリンダとを備えている。
吊りロッドは、上下方向に沿って複数の貫通孔が設けられ、これらの貫通孔を適宜選択して連結ピンを挿入して吊り上げシリンダと連結することで、錘の引き上げ高さ(落下させる高さ)を設定することができる。
そして、吊り上げシリンダが錘の引き上げを行い、目的とする高さで保持シリンダが把持状態を解除することで、下方に位置するクッション材に錘を落下させて試験を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の載荷試験装置は、地上に設置された載荷架台が装置全体を支持する構造であるため、地中に杭を埋設した後に、載荷架台の組立てと地盤への固定、錘の取り付け等の装置を設置するための作業負担や設置のためのスペースが大きくなるという問題が生じていた。
【0005】
さらに、上記載荷試験装置は、錘の引き上げ高さを調節するために、手作業によって吊りロッドと吊り上げシリンダとを連結していたため、多大な作業負担が生じるという他の問題も生じていた。
【0006】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、載荷試験の作業負担の低減、試験に要するスペースの縮小化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するための本発明の一つの態様は、
地盤に埋設された杭の杭頭の上端部に載置される台座を備え、
前記台座の下には、第1のアクチュエータの加圧力により前記台座を前記杭頭に固定するクランプ装置が配置され、
前記台座の上には、
クッション材と、
前記クッション材に落下させる錘と、
前記台座に設けられ、前記錘を昇降可能に支持する支持部と、
第2のアクチュエータにより昇降する昇降体と、
前記昇降体上で前記錘の保持と解放を行う第3のアクチュエータと、
が配置され、
前記第1のアクチュエータを有するクランプ装置により杭上に固定される載荷試験装置である。
【0008】
また本発明の他の一つの態様は、
上記載荷試験装置を前記杭頭に取り付けて試験を行う載荷試験方法であって、
制御装置により前記昇降体による前記錘の保持、上昇及び落下の一連の動作を制御する載荷試験方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少ない作業負担で、試験に要するスペースを縮小化して載荷試験を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の載荷試験装置の正面図である。
【
図3】載荷試験装置の台座及びクランプ装置の拡大正面図である。
【
図5】径の小さい試験杭に対して台座を固定する例を示した載荷試験装置の底面図である。
【
図6】さらに径の小さい試験杭に対して台座を固定する例を示した載荷試験装置の底面図である。
【
図7】載荷試験装置のクッション材単体の平面図である。
【
図8】載荷試験装置のクッション材単体の側面図である。
【
図14】載荷試験装置の昇降体と把持装置の一部を切り欠いた正面図である。
【
図16】各種の測定装置の取付位置を示す説明図である。
【
図17】載荷試験装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図18】錘を装備していない載荷試験装置を試験杭の杭頭に設置する作業を右側方から見た説明図である。
【
図19】杭頭に設置された載荷試験装置に錘を取り付ける作業を右側方から見た説明図である。
【
図20】載荷試験装置に取り付けるために吊り上げられた錘の正面図である。
【
図21】制御装置のコントローラが行う載荷試験の動作制御を示すフローチャートである。
【
図22】鋼矢板を試験杭とした場合の載荷試験装置の台座及びクランプ装置の正面図である。
【
図23】鋼矢板を試験杭とした場合の載荷試験装置の台座及びクランプ装置の右側面図である。
【
図24】鋼矢板を試験杭とした場合の載荷試験装置の台座及びクランプ装置の底面図である。
【
図25】
図24よりも前後幅の狭い鋼矢板を試験杭とした場合の載荷試験装置の台座及びクランプ装置の底面図である。
【
図26】
図25よりも前後幅の狭い鋼矢板を試験杭とした場合の載荷試験装置の台座及びクランプ装置の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0012】
[載荷試験装置の概略]
図1は本発明の実施形態である載荷試験装置10の正面図、
図2は側面図である。
以下において、地盤は水平であることを前提とし、鉛直上下方向を単に上下方向といい、水平面上の一方向を前後方向、水平面上で前後方向に直交する方向を左右方向として、載荷試験装置10の各構成を説明する。
【0013】
載荷試験装置10は、試験杭Pの杭頭に対してクッション材を介して落下する錘を衝突させて、その際の荷重等を測定するいわゆる急速載荷試験装置である。
ここでは、試験杭Pとして、断面円形の管状体からなる鋼管杭を例示する。試験杭Pは、杭頭P1を露出した状態で水平な地盤に対して鉛直上下方向に埋設されている。
【0014】
載荷試験装置10は、
図1及び
図2に示すように、試験杭Pの杭頭P1の上端部に載置される台座50と、第1のアクチュエータとしての油圧シリンダ623(
図3参照)の加圧力により台座50を杭頭P1に固定するクランプ装置60と、台座50の上に載置されるクッション材30と、クッション材30に落下させる錘20と、第2のアクチュエータとしての油圧シリンダ43により錘20を上昇させる昇降装置40と、後述する測定装置70及び制御装置90とを備えている。
【0015】
[台座]
図3は台座50及びクランプ装置60の拡大正面図である。
台座50は、
図1~
図3に示すように、下側に位置する第一円筒部51と、当該第一円筒部51の上に設けられた第二円筒部52とを有する。
第一円筒部51は、丈の短い筒状体511と、その下端部と上端部とに固定装備された平面視円形の底板512及び天板513を有する。筒状体511、底板512及び天板513は、同心で一体的に接合されている。
【0016】
底板512は、下面側にクランプ装置60が固定装備される。底板512は、その下面が杭頭P1の上端部全体に当接した状態で、クランプ装置60により杭頭P1に固定される。
底板512には、クランプ装置60を取り付けるための複数の取付孔514が上下に貫通形成されている。これら取付孔514及びクランプ装置60の詳細は後述する。
天板513の上面には、第一円筒部51よりもやや小径な第二円筒部52が固定されている。
【0017】
第二円筒部52は、第一円筒部51と同様に、丈の短い筒状体521と、その下端部と上端部とに固定装備された平面視円形の底板522及び天板523を有する。筒状体521、底板522及び天板523は、第一円筒部51と同心であり、これらは一体的に接合されている。
第二円筒部52は、底板522と天板523の中央部が開口しており、当該第二円筒部52を貫通して第一円筒部51の天板513の上面中央部に昇降装置40のポスト41の下端部が固定されている。
また、第二円筒部52の天板523の上面には、クッション材30(
図3では図示略)が載置されている。
【0018】
台座50は、測定装置70及び制御装置90を除く載荷試験装置10の全体構成(クランプ装置60、クッション材30、錘20、昇降装置40)の重量に基づく荷重が加わる構造である。載荷試験装置10は、クランプ装置60により杭頭P1に固定された状態において、当該台座50を通じて、測定装置70及び制御装置90を除く載荷試験装置10全体の重量に基づく荷重が杭頭P1に加わる構造となっている。つまり、載荷試験装置10は、装置の一部又は全部の重量に基づく荷重が直接的に地盤に加わる支持構造を有さない構成となっている。
【0019】
[クランプ装置]
図4は載荷試験装置10の底面図である。
クランプ装置60は、
図3及び
図4に示すように、固定クランプユニット61及び可動クランプユニット62からなるユニット対を複数備えている。ここでは、ユニット対が二組である場合を例示する。
【0020】
ユニット対を構成する固定クランプユニット61と可動クランプユニット62は、台座50の円形の底板512の下面において、その直径方向の一端部と他端部とに配置される。
具体的には、一方のユニット対は、台座50の円形の底板512の下面における前端部に配置された固定クランプユニット61と後端部に配置された可動クランプユニット62とにより構成されている。
また、もう一方のユニット対は、台座50の円形の底板512の下面における左端部に配置された固定クランプユニット61と右端部に配置された可動クランプユニット62とにより構成されている。
【0021】
なお、ユニット対は、三組以上設けても良い。その場合、各固定クランプユニット61及び各可動クランプユニット62は、周方向に均一の角度間隔で配置することが好ましい。
【0022】
固定クランプユニット61は、圧接板611と、当該圧接板611を固定支持する支持ブラケット612とを有する。
圧接板611は、凹凸やスパイク構造等の摩擦力を高める加工が施された圧接面を有する。
【0023】
支持ブラケット612は、台座50の底板512の下面に固定状態で取り付けられると共に、圧接面が底板512の下面に垂直となるように圧接板611を起立状態で支持する。
また、支持ブラケット612は、固定クランプユニット61が台座50の底板512の下面に対して取り外し可能となるように、例えば、前述した取付孔514に挿通されるボルトなどの締結部材によって底板512に固定されている。
【0024】
可動クランプユニット62は、圧接板621と、当該圧接板621を支持する支持ブラケット622と、圧接板621を進退移動させる油圧シリンダ623とを有する。
圧接板621は、前述した圧接板611と同一構造である。
【0025】
支持ブラケット622は、同じ方向に向けられた二つの油圧シリンダ623を上下に並べて保持し、当該各油圧シリンダ623を介して圧接面が底板512の下面に垂直となるように圧接板621を起立状態で支持する。支持ブラケット622は、支持ブラケット612と同様に、可動クランプユニット62が台座50の底板512の下面に対して取り外し可能となるように、取付孔514に挿通されるボルトなどの締結部材によって底板512の下面に固定されている。
【0026】
二つの油圧シリンダ623は、例えば複動式油圧シリンダであり、シリンダチューブとピストンロッドとを備えている。各油圧シリンダ623は、支持ブラケット622により、水平方向に沿ってピストンロッドが進退動作を行うように支持されている。
二つの油圧シリンダ623のピストンロッドは、いずれも、圧接板621の背面を支持し、圧接板621を圧接面の垂直方向に進退移動させる。
【0027】
試験杭Pが断面円形の管状体からなる鋼管杭である場合には、
図4に示すように、各ユニット対は、固定クランプユニット61の圧接板611の圧接面と可動クランプユニット62の圧接板621の圧接面とが、いずれも直径方向の外側に向けられた状態で底板512の下面に固定される。
従って、クランプ装置60を試験杭Pの内側として杭頭P1に台座50を載置し、各可動クランプユニット62の油圧シリンダ623によって、圧接板621を前進移動させることにより、圧接板611,621の圧接面が試験杭Pの内周面に圧接し、台座50を杭頭P1に固定することができる。
【0028】
なお、固定クランプユニット61及び可動クランプユニット62は、前述したように、台座50の底板512に対して、取り外し可能である。そして、底板512の取付孔514は、固定クランプユニット61及び可動クランプユニット62の取付位置を変更できるように、多数形成されている。
【0029】
図4に示すように、底面視において、固定クランプユニット61と可動クランプユニット62は、縦方向のボルトの間隔と横方向のボルトの間隔とがそれぞれ均一化されている。
なお、固定クランプユニット61及び可動クランプユニット62の「横方向」は底面視で圧接板611,621に沿った方向、「縦方向」とは底面視で各圧接板611,621に直交する方向を示すものとする。
【0030】
底板512の左右方向中央部には、直径方向の全長に渡って、各ユニット61,62の横方向のボルトの間隔と等しい間隔で前後方向に沿った二本の取付孔514の列514Lが形成されている。
また、底板512の前後方向中央部には、直径方向の全長に渡って、各ユニット61,62の横方向のボルトの間隔と等しい間隔で左右方向に沿った二本の取付孔514の列514Wが形成されている。
【0031】
上記底板512の左右方向中央部における二本の取付孔514の列514Lと前後方向中央部における二本の取付孔514の列514Wとにより、各固定クランプユニット61及び各可動クランプユニット62を径の異なる複数の同心円状に配置することができる。
従って、
図5及び
図6に示すように、
図4よりも径の小さい試験杭Pに対して、台座50を固定することが可能となる。
なお、台座50の底板512を外径のより大きなものに変更し、前後左右方向の取付孔514の列をより広範囲に設けることにより、
図4よりも径の大きな試験杭Pにも台座50を固定することができる。
【0032】
また、
図4に示すように、底板512の左端部及び右端部には、各ユニット61,62の横方向のボルトの間隔と等しい間隔で前後方向に沿った二本の取付孔514の列514LL,514LRがそれぞれ形成されているが、これらについては、別途後述する。
【0033】
[クッション材]
クッション材30は、必要に応じた枚数が積層されて使用される。積層枚数は、例えば、載荷試験の条件を決定するために予め設定されるパラメータの一つであるクッション材30のバネ定数に応じて決定してもよい。
なお、
図1及び
図2ではクッション材30が六枚積層されている状態を図示している。
【0034】
図7はクッション材30単体の平面図、
図8は正面図である。
クッション材30は、落下する錘20の打撃力を急速載荷荷重に変換するための緩衝材であり、錘20が緩衝材なしで試験杭Pの杭頭P1に衝突する場合に比べて落下時の載荷時間を伸長する機能を有する。
【0035】
なお、「急速載荷荷重」とは、「急速載荷」で加わる荷重をいう。
さらに、「急速載荷」とは、試験杭Pの波動現象は無視できるが、速度及び加速度に依存する試験杭Pと地盤の抵抗は無視することができない載荷時間で荷重が加わることをいう。急速載荷に相当する載荷時間は、例えば、載荷時の縦波が試験杭Pをその長手方向に沿って往復する時間の概ね5倍以上であって500倍未満の範囲と推定される。
【0036】
急速載荷荷重を得るために、クッション材30は、弾性を有する弾性板31の下側に鉄板32が貼り合わせられた構成となっている。弾性板31は、例えば、ゴム等の樹脂材料から形成される。
【0037】
弾性板31と鉄板32とは、平面視で、いずれも正方形状であって、寸法も一致している。弾性板31と鉄板32の一辺の大きさは、後述する錘20の下部ブラケット24と同程度か幾分小さく、台座50の第二円筒部52の天板523の直径と同程度かそれよりも幾分大きい。
なお、クッション材30の上記平面視形状は、例示であって任意に変更可能である。また、クッション材30の大きさも、錘20の底部よりも大きくしてもよい。
【0038】
弾性板31と鉄板32の中央部には、ポスト41の挿通部として、これらを上下に貫通した挿通孔311,321が形成されている。これらの挿通孔311,321は、前述したポスト41の断面形状と略一致した正方形状であって、ポスト41の断面よりわずかに大きく開口している。そして、各クッション材30は、挿通孔311,321にポスト41を通した状態で、第二円筒部52の天板523上に安定的に積層された状態で載置される。
【0039】
[錘]
図9は錘20の平面図、
図10は正面図、
図11は左側面図である。
錘20は、
図9~
図11に示すように、上下に連結可能な金属ブロックからなる第一錘体21及び第二錘体22と、錘体21,22の上端部に装着される上部ブラケット23と、錘体21,22の下端部に装着される下部ブラケット24とを有する。
【0040】
錘20は、クッション材30の上方において、ポスト41によって昇降可能に支持される。
図9~
図11では、錘20が第一錘体21と第二錘体22を有する場合を図示しているが、錘体の数は、載荷試験の条件を決定するために予め設定されるパラメータの一つである錘の重量に応じて変更可能である。また、錘体の個数だけでなく、厚さの異なる複数種類の錘体が用意され、これらを適宜組み合わせて、錘20の全体重量が調整される。
【0041】
図示例の錘20は、上部ブラケット23及び下部ブラケット24からなる全体重量が10[t]である場合を例示する。なお、この値は一例であって、錘20の重量は限定されない。
上記の通り、第一錘体21と第二錘体22は、分離可能であって、
図12に示すように、第二錘体22を取り外して、第一錘体21の上下に上部ブラケット23及び下部ブラケット24を装着して使用することも可能である。この態様の場合の全体重量は、錘20の全体重量のちょうど1/2(5[t])となるように設定されている。
このため、第二錘体22は、単独で規定重量の1/2(5[t])であり、第一錘体21は、上部ブラケット23及び下部ブラケット24との合計重量が規定重量の1/2(5[t])となるように設定されている。つまり、第一錘体21は、上部ブラケット23及び下部ブラケット24の重量分が第二錘体22よりも軽量であって、上下方向の厚みが幾分薄くなっている。
【0042】
図13は第一錘体21及び第二錘体22の平面図である。なお、第一錘体21と第二錘体22の平面は、形状および寸法が同一であって、構造も一部(後述するネジ穴215等)を除いてほぼ同一なので、平面を共通化して図示している。
【0043】
第一錘体21と第二錘体22は、いずれも、全体が概ね直方体であり、平面視の形状は略矩形となっている。
さらに、第一錘体21及び第二錘体22は、平面視形状が同一であって、いずれも凹状(略U字状)を呈し、ポスト41を挿通させる挿通部211,221が形成されている。
これらの挿通部211,221は、前方に向かって開口した溝状であり、挿通部211,221の内側の左右方向の幅は、ポスト41よりも幾分広く、挿通部211,221の最深部(後端部)は、ポスト41の断面形状に略一致する矩形状である。また、挿通部211,221の開口端(前端)は、ポスト41を導入しやすいように前方に向かって拡開している。
第一錘体21及び第二錘体22は、挿通部211,221を有することにより、載荷試験装置10に取り付ける際に、第一錘体21及び第二錘体22をポスト41の上端まで吊り上げる作業を不要とすることができる。即ち、クッション材30よりも幾分上となる高さまで吊り上げてポスト41に対して後方から挿通部211,221の開口側を前方に向けた状態で、第一錘体21、第二錘体22を前方に移動させることで、挿通部211,221の最深部にポスト41を導入することができ(
図13の二点鎖線)、第一錘体21及び第二錘体22をポスト41の周囲に容易に配置することができる。
【0044】
図13において、符号Gは、第一錘体21及び第二錘体22における重心の位置を示している。挿通部211,221の最深部に位置する状態で、ポスト41の中心と第一錘体21及び第二錘体22の重心Gは、平面視で一致するように設定されている。
【0045】
また、第一錘体21及び第二錘体22は、左右側面の上端部近傍に、第一錘体21、第二錘体22を吊り上げるための貫通孔が形成された被係止部212,222が設けられている。左右の被係止部212,222は、平面視において、重心Gを通過する左右方向に沿った直線上であって、重心Gから等距離となる位置に設けられている。
従って、左右の被係止部212,222のそれぞれにロープを連結して吊り上げると、第一錘体21と第二錘体22は、いずれも、前後の傾きを抑制することができる。
【0046】
また、第一錘体21は、平面視における四隅に上下に貫通したボルト挿通孔213が形成されている。そして、第一錘体21のボルト挿通孔213と一致する配置で、第二錘体22の平面視における四隅には、ネジ穴223が形成されている。これにより、第一錘体21を上下に貫通する四本の連結ボルト214によって、第一錘体21と第二錘体22とが連結されている。
なお、第一錘体21の各ボルト挿通孔213の上端部には、座繰り穴が形成されており、第一錘体21の上面から連結ボルト214の頭部が突出しない構造となっている。
【0047】
また、
図13に示すように、第一錘体21の上面の四隅には、上部ブラケット23を連結するためのネジ穴215が形成されている。
さらに、第一錘体21の下面の四隅には、第二錘体22の非使用時に下部ブラケット24を連結するためのネジ穴216が形成されている。
また、
図10及び
図11に示すように、第二錘体22の下面の四隅には、下部ブラケット24を連結するためのネジ穴226が形成されている。
【0048】
上部ブラケット23は、
図9に示すように、平面視で略正方形状の金属プレートからなり、その一辺の幅は、第一錘体21及び第二錘体22の左右方向の幅と一致している。
上部ブラケット23の四隅には、第一錘体21のネジ穴215と一致する配置でボルト挿通孔231が上下方向に貫通形成されている。上部ブラケット23は、これらボルト挿通孔231に上から挿入される連結ボルト232によって、第一錘体21の上面に固定連結される。
【0049】
また、上部ブラケット23の上面の左端部及び右端部であって前後方向中間部には、上部ブラケット23を吊り上げるための貫通孔が形成された被係止部233が設けられている。
【0050】
さらに、上部ブラケット23の平面視中央部には、ポスト41の挿通部としての挿通孔234が上下方向に貫通形成されている。
挿通孔234は、ポスト41よりも幾分大きく、ポスト41の断面形状に略一致する矩形状である。
挿通孔234は、ポスト41の周囲全体を取り囲み、挿通部211,221のように前方に向かって開口していない。また、下部ブラケット24にも同様の挿通孔244が形成されている。このため、上部ブラケット23及び下部ブラケット24を第一錘体21及び第二錘体22に取り付けることで、ポスト41に対する錘20の前後のズレを抑制することができる。
【0051】
上部ブラケット23の上面における挿通孔234の周囲には、ポスト41に沿って錘20を昇降させるガイド機構25と、錘20に昇降動作を付与する昇降装置40によって把持される二つの被把持部26とが取り付けられている。
【0052】
ガイド機構25は、
図9~
図11に示すように、四つのローラ機構253から構成される。各ローラ機構253は、上部ブラケット23の上面にボルトの締結により固定された支持ブラケット251と、支持ブラケット251により水平方向に沿った軸回りに回転可能に支持されたローラ252とを有する。
ポスト41は、断面正方形状の支柱であり、ポスト41のほぼ全高に渡って延在する前面、後面、左側面、右側面を有する。
各ローラ機構253は、上部ブラケット23の挿通孔234の縁部に配置され、各々のローラ252がポスト41の前面、後面、左側面、右側面のそれぞれに当接して上下方向に転走するように設けられている。
【0053】
なお、ポスト41の前面と右側面にローラ252に当接する二つのローラ機構253は、ポスト41の右前の角部寄りに配置されている。
また、ポスト41の後面と左側面にローラ252に当接する二つのローラ機構253は、ポスト41の左後の角部寄りに配置されている。
【0054】
各ローラ機構253は、ポスト41の上記四面に各々のローラ252が当接し、錘20が昇降装置40によって上昇又は落下する場合に、各ローラ252が上記四面に沿って転走する。
これにより、錘20の円滑な上昇及び落下を担保しつつも、ポスト41に沿って軌道が安定した上昇動作及び落下動作を実現することが可能となる。また、各ローラ252によって、上昇時及び落下時における錘20の傾きを抑制することが可能となる。
さらに、対角に位置する二つの角部の各々を二つずつのローラ252が挟むように配置されているので、ポスト41を中心とする錘20のロール(旋回動作)の発生を抑制することが可能となる。
【0055】
二つの被把持部26は、
図9~
図11に示すように、いずれも、上部ブラケット23の上面にボルトの締結により固定された基端部261と、基端部261から鉛直上方に立設されたプレート262とを有する。基端部261とプレート262は、一体的に形成又は一体的に接合されている。
二つの被把持部26は、平面視で、挿通孔234の前端近傍と後端近傍とに設けられている。各被把持部26は、いずれも、上部ブラケット23の上面において左右方向の丁度中間に設けられている。
【0056】
各被把持部26のプレート262は、側面視で上下方向に長尺な矩形となる平板である。各プレート262は、上端部の左右方向厚さが他の部位よりも厚くなるように、上端部近傍に段部263が形成されている。
錘20は、昇降装置40の把持装置44によって、各被把持部26のプレート262が両面側から把持されて吊り上げられる。錘20は、把持装置44の把持力だけでも十分に把持することが可能だが、プレート262に段部263を設けることで、各プレート262の段部263が引っ掛かりを生じるので、昇降装置40は錘20をより強固に保持することが可能となる。
なお、二つの被把持部26のプレート262は、左面と右面の互いに異なる方に段部263が形成されている。
【0057】
下部ブラケット24は、平面視で略正方形状の金属プレートからなり、その一辺の幅は、第一錘体21及び第二錘体22の左右方向の幅と一致している。
下部ブラケット24の四隅には、
図10及び
図11に示すように、第二錘体22のネジ穴226と一致する配置でボルト挿通孔241が上下方向に貫通形成されている。下部ブラケット24は、これらボルト挿通孔241に下から挿入される連結ボルト242によって、第二錘体22の下面に固定連結される。
なお、ボルト挿通孔241の下端部には、座繰り穴が形成されており、下部ブラケット24の下面から連結ボルト242の頭部が突出しない構造となっている。
【0058】
また、下部ブラケット24の左側面及び右側面であって前後方向中間部には、下部ブラケット24を吊り上げるための貫通孔が形成された被係止部243が設けられている。
【0059】
さらに、下部ブラケット24の平面視中央部には、ポスト41の挿通部としての挿通孔244が上下方向に貫通形成されている。
挿通孔244は、ポスト41よりも幾分大きく、ポスト41の断面形状に略一致する矩形状である。
前述したように、下部ブラケット24は、挿通孔244を有するので、上部ブラケット23と協働して錘20の昇降時のポスト41に対する前後の傾きを抑制することができる。
【0060】
[昇降装置]
図14は昇降装置40の一部の構成を切り欠いた正面図、
図15は昇降装置40の一部の構成の平面図である。
昇降装置40は、
図1、
図2、
図14及び
図15に示すように、錘20を昇降可能に支持する支持部としてのポスト41と、ポスト41に沿って昇降動作を行う昇降体42と、昇降体42の昇降動作の駆動源となる第2のアクチュエータとしての油圧シリンダ43と、昇降体42上で錘20の被把持部26の保持と解放とを行う把持装置44と、昇降体42の高さ検出を行う高さ検出手段としての距離センサ45とを備えている。
【0061】
ポスト41は、台座50から鉛直上方に立設された断面略正方形状の支柱であり、内部は中空となっている。ポスト41の下端部は、台座50の第一円筒部51の天板513の上面の中心位置に、例えば、ボルトによって固定されている。なお、ポスト41は、ボルトに限らず、十分な強度をもって固定可能な他の手段(溶接等)で固定してもよいし、複数の固定可能な手段を併用してもよい。
【0062】
ポスト41の上端部には、ブラケット状の被係止部411が設けられている。この被係止部411は、上方に立設された板状体であって、左右方向に貫通した被係止孔が形成されている。載荷試験装置10は、例えば、クレーンが有するフックによって被係止部411を係止して、載荷試験装置10の全体を吊り上げ、試験杭Pの杭頭P1に容易に設置することができる。
また、載荷試験装置10の設置は、錘20(第一錘体21及び第二錘体22のみでもよい)、クッション材30、昇降体42のいずれか又は全てを外した状態で行ってもよい。
【0063】
油圧シリンダ43は、例えば、複動式油圧シリンダであり、シリンダチューブ431とピストンロッド432とを備えている。油圧シリンダ43は、ピストンロッド432を上にしてシリンダチューブ431及びピストンロッド432を上下方向に沿わせると共に、ピストンロッド432が上下方向に進退動作を行うようにポスト41内に配置されている。
【0064】
油圧シリンダ43のシリンダチューブ431は、その下端部が台座50の第一円筒部51の天板513の上面の中心位置に、例えば、ボルトによって固定されている。なお、シリンダチューブ431は、ボルトに限らず、十分な強度をもって固定可能な他の手段(溶接等)で固定してもよいし、複数の固定可能な手段を併用してもよい。
ピストンロッド432は、管状ロッドの内側により小径の中実又は管状のロッドが挿入された二段式のロッドで構成され、シリンダ長に対してストローク長が十分に長く確保されている。
【0065】
ピストンロッド432の上端部には、左右方向に沿った管状の連結部433が設けられている。
この連結部433は、内側に挿入された連結ピンによって昇降体42と連結されている。
ポスト41の左側面と右側面とには、ポスト41の上端部近傍から油圧シリンダ43による連結部433の下限位置(最収縮状態における位置)より幾分下側に至る長穴状の開口412が形成されている。連結部433の連結ピンは、ポスト41の左右の開口412を通じてポスト41の外部に配置された昇降体42と連結されている。
【0066】
昇降体42は、
図14及び
図15に示すように、ポスト41を挿通可能な本体部421と、本体部421の上端部に設けられた上フランジ422と、本体部421の下端部に設けられた下フランジ423とを有する。
【0067】
本体部421は、ポスト41の断面の寸法よりもわずかに大きな断面略正方形状の筒状体からなり、ポスト41を内側に挿通した状態で、円滑に昇降動作を行うことができる。
本体部421の左右の側面には、油圧シリンダ43の連結部433と連結ピンを介して連結可能な円環状の連結体424が設けられ、油圧シリンダ43から昇降動作が付与される。
【0068】
上フランジ422及び下フランジ423は、いずれも、前後方向に長い矩形の平板であり、角部が丸みを帯びて形成されている。
上フランジ422と下フランジ423は、サイズが等しく、また、本体部421に対して十分な強度を持って連結されている。
【0069】
上フランジ422は、その上面がポスト41の上端部に設けられた距離センサ45による光学的な距離検出の被検出位置となっている。
下フランジ423は、前端部と後端部とに、錘20の上端部に設けられた二つの被把持部26のプレート262をそれぞれ遊挿可能な矩形の開口425が貫通形成されている。
また、下フランジ423の前端部と後端部の上面には、それぞれ把持装置44が設置されている。
【0070】
各把持装置44は、対向配置された二つのクランプユニット441を有する。
各クランプユニット441は、第3のアクチュエータとしての油圧シリンダ443と、油圧シリンダ443を支持する支持ブラケット442とを有する。
【0071】
支持ブラケット442は、下フランジ423の上面に固定され、油圧シリンダ443からの背圧を支えて支持する構造となっている。
油圧シリンダ443は、例えば複動式油圧シリンダであり、可動シリンダ444とピストンロッド445とを備えている。
ピストンロッド445は、支持ブラケット442に固定され、当該ピストンロッド445に対して可動シリンダ444が油圧によって進退動作を行う。
可動シリンダ444の先端部は、凹凸やスパイク構造等の摩擦力を高める加工が施された圧接面となっている。
【0072】
把持装置44の二つのクランプユニット441は、下フランジ423の上面において、開口425を挟んで可動シリンダ444の先端部を互いに対向させて配置されている。
そして、昇降体42の下降動作によって錘20の被把持部26のプレート262が開口425に下方から挿入されて下フランジ423の上方にプレート262が突出すると、各油圧シリンダ443の可動シリンダ444を進出移動させることで、二つの可動シリンダ444の圧接面でプレート262を把持することができる。
このとき、昇降体42が上部ブラケット23に接近した状態(例えば、ガイド機構25のローラ252が下フランジ423の下面に接しない範囲で近接する高さ)において、プレート262に形成された段部263は、可動シリンダ444よりも上方に達するようにプレート262の長さ及び段部263の高さが設定されている。従って、二つの可動シリンダ444でプレート262を把持したときに、段部263に可動シリンダ444の上側で引っ掛かるようにすることができる。錘20は、二つのクランプユニット441の把持力だけでも十分に把持することが可能だが、プレート262に段部263を設けることで錘20をより強固に保持することができる。
【0073】
距離センサ45は、
図2に示すように、ポスト41の上端部から水平方向(例えば、後方)に延出された棒状の支持体451の先端部おいて下方に向けて支持されている。
この距離センサ45は、例えば、検出光を投光し、その反射光を検出して測距するレーザ変位計等の光学的な距離センサである。距離センサ45は、その鉛直下方に位置する昇降体42の上フランジ422の上面を反射面として検出光を投光し、反射光によって昇降体42の上フランジ422までの距離を検出する。
【0074】
[測定装置]
図16は測定装置70を構成するロードセル71、加速度センサ72、変位センサ73、歪みセンサ74の取付位置を示す説明図である。
なお、以下の説明では、ロードセル71、加速度センサ72、変位センサ73及び歪みセンサ74を総括的に「各センサ71~74」と記載する場合がある。
【0075】
ロードセル71は、試験杭Pの杭頭P1に対するクッション材30を介した錘20の衝突による荷重を検出する荷重検出手段である。
ロードセル71は、台座50の第二円筒部52の天板523とクッション材30との間に介在するように配置されている。
【0076】
加速度センサ72は、試験杭Pの杭頭P1における杭長手方向(上下方向)の加速度を主に検出する加速度検出手段である。
加速度センサ72は、鉛直上下方向と水平方向(前後方向及び左右方向)の三軸の加速度を検出することができ、杭頭P1の外周面上に固定装備されている。加速度センサ72の検出加速度を積分することで各方向の速度を取得することができ、二回積分することで各方向の変位量も取得することができる。
【0077】
変位センサ73は、試験杭Pの杭頭P1における杭長手方向(上下方向)の変位を検出する変位検出手段である。
変位センサ73は、例えば、検出光を投光し、その反射光を検出して測距するレーザ変位計等の光学的な距離センサである。
試験杭Pの杭頭P1の外周面には、水平且つ上向きの反射面を有する反射板734が固定装備されている。変位センサ73は、反射板734の上方において反射面に対向して配置され、反射面における鉛直上下方向の変位を通じて杭頭P1の上下方向の変位を検出する。
なお、変位センサ73は、クッション材30を介して錘20が杭頭P1を打撃した際に発生する振動の影響を抑制するために、試験杭Pから離れた位置から支持することが好ましい。但し、そのような遠方から変位センサ73を支持する手段を用意することが困難である場合には、緩衝機構や制振機構を備えた支持台によって変位センサ73を支持してもよい。
また、変位センサ73として、杭頭P1の外周面に付されたマーキング等を撮像する撮像素子を利用することもできる。
【0078】
歪みセンサ74は、試験杭Pの杭頭P1近傍における杭長手方向(上下方向)の歪み量を検出する歪み検出手段である。
歪みセンサ74としては、一例として、歪みゲージを利用することができる。歪みセンサ74は、試験杭Pの杭頭P1の近傍における外周面又は内周面上で、素子を上下方向に向けた状態でその両端部が固定され、両側の固定端の間に生じる歪みを検出することができる。
歪みセンサ74は、杭頭P1の近傍だけでなく、試験杭Pの下端部近傍或いは中間部にも設けて、各所の上下方向の歪みも検出してもよい。
【0079】
[制御装置]
図17は載荷試験装置10の制御構成を示すブロック図である。
図示のように、載荷試験装置10の制御装置90は、クランプ装置60の各可動クランプユニット62の油圧シリンダ623、昇降装置40の油圧シリンダ43、把持装置44の各クランプユニット441の油圧シリンダ443に対する動作制御を行って載荷試験を自律的に実行可能なコントローラ91を有する。
さらに、制御装置90は、コントローラ91に接続された表示装置92、記憶部93、入力装置94、操作装置95、処理装置96を有する。
【0080】
上記コントローラ91は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備え、ROMに記憶されているシステムプログラムなどの各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って載荷試験装置10の各部の動作を制御する。ROMは、半導体などの不揮発メモリーなどにより構成され、システムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや初期設定データ等を記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。特に、ROMには、載荷試験を実行するための制御プログラムが記憶されているものとする。RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
上記コントローラ91は、PC(personal computer)を利用してもよい。
【0081】
各油圧シリンダ623、43、443は、いずれも、図示しない油圧供給源から電気操作弁623a、43a、443aを通じて油圧の供給が行われる。
各電気操作弁623a、43a、443aは、内蔵されたアクチュエータにより弁位置の切り替えを行うことができ、これにより、各油圧シリンダ623、43、443の動作方向の切り替え、推力の保持、推力の解放を制御することができる。
各電気操作弁623a、43a、443aは、駆動回路623b、43b、443bを介してコントローラ91と接続されている。各駆動回路623b、43b、443bは、コントローラ91の動作指令を電気信号に変換し、増幅して各電気操作弁623a、43a、443aに入力する。
コントローラ91は、上記駆動回路623b、43b、443b及び各電気操作弁623a、43a、443aを通じて、各油圧シリンダ623、43、443の動作制御を可能としている。
【0082】
なお、載荷試験装置10は、油圧シリンダ623、443とこれらに接続される電気操作弁623a、443a及び駆動回路623b、443bを複数備えているが、
図17ではいずれも一つのみを図示し、他のものは図示を省略している。
【0083】
また、コントローラ91には、前述した測定装置70を構成する各センサ71~74が、それぞれ、アンプ71a、72a、73a、74a及びA/D変換器71b、72b、73b、74bを介して接続されている。
アンプ71a、72a、73a、74aは、各センサ71~74の各々からの検出信号を増幅し、A/D変換器71b、72b、73b、74bは、それぞれの検出信号のA/D変換を行ってコントローラ91に入力する。
【0084】
また、コントローラ91には、距離センサ45がアンプ45a及びA/D変換器45bを介して接続されている。
アンプ45aは、距離センサ45からの検出信号を増幅し、A/D変換器45bは、検出信号のA/D変換を行ってコントローラ91に入力する。
【0085】
表示装置92は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイなどの表示パネルを有する。
表示装置92は、載荷試験によって取得した検出データや後述する処理装置96が検出データに基づいて作成したグラフ等の加工データ等の表示を行う。
【0086】
記憶部93は、載荷試験によって取得した検出データや後述する処理装置96が検出データに基づいて作成したグラフ等の加工データ等の情報を書き込み及び読み出し可能に記憶するHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの記憶装置である。
【0087】
入力装置94は、例えば、載荷試験を行う技師等のユーザーが、載荷試験に実行の前提となるパラメータの設定入力等を行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード、タッチパッド、マルチファンクションスイッチなどの操作要素を有する。
入力装置94からは、例えば、(1)載荷試験に使用される錘20の重量、(2)クッション材30によるバネ定数、(3)錘20の落下回数、(4)昇降装置40による錘20の吊り上げ高さ(複数回落下を実施する場合には各落下時の吊り上げ高さ)、(5)目標荷重、(6)目標変位等を設定することができる。なお、これらのパラメータは一例であって、上記に限定されない。
【0088】
操作装置95は、例えば、載荷試験を行う技師等のユーザーが、載荷試験をマニュアル操作で実行する際に操作入力等を行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、タッチパッド、操作レバーなどの操作要素を有する。
操作装置95は、ユーザーが手動操作するリモコンの態様であってもよい。その場合、操作装置95は、コントローラ91に対して有線通信を行う構成でも良いし、無線通信を行う構成でも良い。
【0089】
処理装置96は、コントローラ91を通じて各センサ71~74の検出データが入力され、当該検出データに対して所定の加工処理を行う演算装置である。処理装置96は、PC(personal computer)を利用してもよい。また、前述したコントローラ91と処理装置96のそれぞれの機能を共通する一台のPCで実行する構成としてもよい。
また、PCを利用する場合には、前述した表示装置92、記憶部93及び入力装置94の一部又は全部について、PCが備える表示装置、記憶部又は入力装置を利用してもよい。
【0090】
処理装置96は、例えば、各検出データの変化を時間軸で示した検出結果の表示データの生成、二種類の検出データから相互の相関データ(例えば、荷重と変位の相関等)及びその表示データの生成等を行う。また、処理装置96は、加速度の検出データを積分して速度データや変位データ等の加工データを導出する。
さらに、処理装置96は、取得した検出データ、相関データ、加工データに対して、除荷点法等の既知の手法を利用して、試験杭Pにおける静的荷重と変位の相関を示す相関データを導出する処理を行ってもよい。
処理装置96が生成した各種のデータはコントローラ91に入力され、コントローラ91から記憶部93に格納される。また、処理装置96が表示データを生成した場合には、表示装置92において当該表示データに基づく表示が行われる。
【0091】
[載荷試験装置の設置]
図18は錘20(第一錘体21及び第二錘体22)を装備していない載荷試験装置10を試験杭Pの杭頭P1に設置する作業を右側方から見た説明図、
図19は杭頭P1に設置された載荷試験装置10に錘20を取り付ける作業を右側方から見た説明図、
図20は載荷試験装置に10に取り付けるために吊り上げられた錘20の正面図である。
【0092】
図18に示すように、載荷試験装置10は、錘20の第一錘体21及び第二錘体22が取り付けられていない状態で杭頭P1に設置される。
なお、錘20の上部ブラケット23は、昇降体42の把持装置44に把持されており、下部ブラケット24は、挿通孔244にポスト41が挿通された状態でクッション材30の上に載置されている。
載荷試験装置10は、ポスト41の上端部にある被係止部411に対してフックhに連結されたワイヤロープwが通され、図示しないクレーンによって吊り上げられて、試験杭Pの杭頭P1の上方に運ばれる。
そして、クレーンによって載荷試験装置10を下降させて、クランプ装置60の各固定クランプユニット61及び各可動クランプユニット62が全て試験杭Pの内側となるように上方から杭頭P1に挿入し、台座50を杭頭P1に載置する。
その後、例えば、操作装置95を操作して、各可動クランプユニット62の油圧シリンダ623により圧接板621を進出移動させることにより、各可動クランプユニット62の圧接板621の圧接面と各固定クランプユニット61の圧接板611の圧接面とを試験杭Pの内周面に圧接させて載荷試験装置10を杭頭P1に固定する。
【0093】
次いで、
図19に示すように、錘20の第一錘体21及び第二錘体22が吊り上げられる。第一錘体21及び第二錘体22は、連結ボルト214により一体的に連結されており、第一錘体21の左右の側面にある被係止部212にフックhに連結された二本のワイヤロープwが通され、図示しないクレーンによって吊り上げられて、載荷試験装置10のクッション材30の上に配置された下部ブラケット24の上に運ばれる。
【0094】
このとき、第一錘体21及び第二錘体22の挿通部211,221は、前方に向かって開口した溝状であることから、ポスト41の上端部より上方まで吊り上げる必要がなく、第二錘体22の底面がクッション材30の上に配置された下部ブラケット24の上面よりも上となる高さまで吊り上げればよい。
そして、第一錘体21及び第二錘体22の挿通部211,221の開口端を前方に向けた状態で、ポスト41の後方から第一錘体21及び第二錘体22を前方に移動させることにより、挿通部211,221の深部までポスト41を導入することができる。
そして、第一錘体21及び第二錘体22を下してから二本のワイヤロープwを外し、第一錘体21及び第二錘体22の上下に上部ブラケット23と下部ブラケット24とを連結することにより、試験杭Pに対する載荷試験装置10の設置作業が完了する。
【0095】
なお、
図20に示すように、錘20の第一錘体21及び第二錘体22を吊り上げる際の二本のワイヤロープwの上端部は、スペーサsによって、少なくとも第一錘体21の左右方向の幅よりも広く離隔されている。
このスペーサsによって、ポスト41の後方から第一錘体21及び第二錘体22を前方に移動させる際に、上方に退避している上部ブラケット23と左右のワイヤロープwの干渉を避けることが可能となる。
【0096】
[載荷試験装置による載荷試験]
上記載荷試験装置10の載荷試験の流れを説明する。載荷試験は、主に、制御装置90による各部の制御に基づいて自律的に実行される。
図21は制御装置90のコントローラ91が行う載荷試験の動作制御を示すフローチャートである。
【0097】
まず、ユーザーから入力装置94を通じて、(1)載荷試験に使用される錘20の重量、(2)クッション材30によるバネ定数、(3)錘20の落下回数、(4)各落下時の錘20の吊り上げ高さ、(5)目標荷重、(6)目標変位、の各パラメータが入力されると、コントローラ91は、これらのパラメータを記憶部93に記憶する(ステップS1)。
【0098】
載荷試験装置10の動作を開始するにあたって、コントローラ91は、錘20の落下回数のカウントを開始する(ステップS3)。例えば、載荷試験の開始当初であれば、落下回数のカウント値が1に設定される。
そして、コントローラ91は、落下回数のカウント値がステップS1で設定された(3)錘20の落下回数を超えたか否かを判定する(ステップS5)。
そして、落下回数のカウント値がステップS1で設定された(3)錘20の落下回数を超えている場合には(ステップS5:YES)、(1)~(4)のパラメータが適正ではないものとして、(1)~(4)のパラメータの再設定が要求される(ステップS27)。特に、(4)各落下時の錘20の吊り上げ高さのパラメータについて再設定が要求される処理を行ってもよい。そして、パラメータの再設定が行われると、ステップS3に処理が戻される。
一方、落下回数のカウント値がステップS1で設定された(3)錘20の落下回数を超えていない場合には(ステップS5:NO)、載荷試験を継続する。
【0099】
載荷試験の当初には、錘20は、昇降装置40に保持されておらず、クッション材30の上に載置された状態にあるので、コントローラ91は、錘20を保持するために、電気操作弁43aを通じて油圧シリンダ43を制御し、昇降体42の下降移動を開始する(ステップS7)。
さらに、コントローラ91は、距離センサ45によって検出される昇降体42の高さを監視し、昇降体42が錘20の上面近傍となる目標高さとなるまで下降移動させる(ステップS9)。
【0100】
ここで、錘20の上面高さは、(1)錘20の重量と(2)クッション材30のバネ定数の二つのパラメータから取得することができる。
即ち、(1)錘20の重量から使用される錘体の厚さと枚数が決定するので、錘20そのものの高さを求めることができる。さらに、(2)クッション材30のバネ定数から、使用されるクッション材30の枚数が決定するので、クッション材30の上面高さも求めることができる。
従って、これらの合計から台座50の上面から錘20の上面までの高さが求まるので、コントローラ91は、錘20の上面のガイド機構25の高さを考慮して昇降体42の目標高さを決定することができる。
【0101】
なお、錘20は、クッション材30の上に載置され、当該クッション材30は収縮を生じ得るため、クッション材30の上面高さを求める際には、収縮分を考慮した係数を乗じてもよい。
また、記憶部93に、設定された(1)錘20の重量の複数の数値と(2)クッション材30のバネ定数の複数の数値とに応じて昇降体42の適正な目標高さが定められたテーブルデータを用意してもよい。この場合、コントローラ91は、(1)錘20の重量と(2)クッション材30のバネ定数の設定値から、テーブルデータを参照して、昇降体42の適正な目標高さを特定する。
【0102】
距離センサ45によって昇降体42が目標高さに達したことが検出されると、コントローラ91は、昇降体42の下降を停止させる(ステップS11)。この時、錘20の二つの被把持部26のプレート262が昇降体42の各開口425に挿入された状態となる。
従って、コントローラ91は、電気操作弁443aを通じて把持装置44の各油圧シリンダ443を制御し、プレート262の把持を行う(ステップS13)
【0103】
次いで、コントローラ91は、錘20を落下させるための目標とする吊り上げ高さまで吊り上げるために、電気操作弁43aを通じて油圧シリンダ43を制御し、昇降体42を錘20と共に上昇させる(ステップS15)。
このとき、コントローラ91は、距離センサ45によって検出される昇降体42の高さを監視し、昇降体42が目標とする吊り上げ高さに対応する高さとなるまで上昇移動させる(ステップS17)。
【0104】
ここで、錘20の目標とする吊り上げ高さは、(4)各落下時の錘20の吊り上げ高さのパラメータから取得することができる。錘20の落下回数が複数回に設定されており、各回ごとに異なる吊り上げ高さが設定されている場合には、コントローラ91は、ステップS3の処理で設定された現在の落下回数のカウント値から目標とする吊り上げ高さを特定することができる。
【0105】
錘20の吊り上げ高さは、クッション材30の上面から錘20の下部ブラケット24の底面までの距離である。
クッション材30の上面高さは、前述した通り、設定された(2)クッション材30のバネ定数から特定することができる。
錘20のそのものの高さは、前述した通り、設定された(1)錘20の重量から特定することができる。
錘20を把持した状態での錘20の上面から昇降体42の上フランジ422の上面までの高さは、昇降体42及び被把持部26のプレート262の設計値から取得することができる。
従って、コントローラ91は、(1)載荷試験に使用される錘20の重量、(2)クッション材30によるバネ定数、(3)錘20の落下回数、(4)各落下時の錘20の吊り上げ高さから、目標とする錘20の吊り上げ高さとなる場合の昇降体42の上フランジ422の上面の高さ(以下、昇降体42の目標高さという)を取得することができる。
【0106】
距離センサ45によって昇降体42の目標高さに達したことが検出されると、コントローラ91は、昇降体42の上昇を停止させる(ステップS19)。
そして、コントローラ91は、各センサ71~74の検出データの記録を開始すると共に(ステップS21)、電気操作弁443aを通じて把持装置44の各油圧シリンダ443を制御し、プレート262を把持状態から解放して錘20を落下させる(ステップS23)。
これにより、錘20がクッション材30を介して試験杭Pの杭頭P1に落下し、その際の杭頭P1に加わる荷重、杭頭P1の加速度、杭頭P1に生じる変位、杭頭P1に生じる歪みが計測される。
このとき、コントローラ91は、処理装置96に対して、各検出データの表示データの生成、各種の相関データや加工データの導出を実行させてもよい。さらに、コントローラ91は、処理装置96が生成した各種の表示データを表示装置92に表示させてもよい。
【0107】
コントローラ91は、計測によって得られた荷重又は杭頭P1に生じる変位のいずれかが設定パラメータの(5)目標荷重又は(6)目標変位以上となったか否かを判定し(ステップS25)、いずれもパラメータに達していない場合には、ステップS3に処理を戻して再計測を行う。
また、計測によって得られた荷重又は杭頭P1に生じる変位のいずれか一方が設定されパラメータの(5)目標荷重又は(6)目標変位以上となった場合には、錘20の落下回数のカウント値が設定パラメータの(3)錘20の落下回数に満たなくとも載荷試験を終了する。
【0108】
[発明の実施形態の技術的効果]
上記載荷試験装置10は、台座50とクランプ装置60とクッション材30と錘20と昇降装置40とからなる装置全体の重量が台座50に加わり、当該台座50は、杭頭P1の上端部に載置された状態でクランプ装置60の各油圧シリンダ623により固定される構造である。
これにより、載荷試験装置10を杭頭P1に載置し、各油圧シリンダ623を作動させるという非常に少ない工数で載荷試験装置10の設置作業を完了させることができる。つまり、載荷試験装置10は、従来の載荷試験装置のように、地盤に装置を固定する架台等の構造物を構築し設置する作業を不要とし、作業負担を飛躍的に低減し、これに伴い、設置作業を行う作業者の人数や費用も低減することが可能である。
さらに、架台等の構造物を不要とするので、水上や泥地、傾斜地や高天端など杭周辺の地盤条件に関わらず、試験を行うことが可能である。
【0109】
また、載荷試験装置10の、錘20は、当該錘20をポスト41に沿って落下させるガイド機構25を備えているので、錘20とポスト41の摺動を抑制し、安定した軌道で円滑に錘20の落下動作を行うことが可能となる。
特に、ガイド機構25をローラ機構253で構成した場合には、錘20とポスト41の摩擦がより効果的に低減し、安定した軌道でより円滑に錘20の落下動作を行うことが可能となる。
【0110】
また、載荷試験装置10は、台座50に対してクランプ装置60のクランプユニット61,62を着脱可能としているので、クランプユニット61,62の換装が可能となり、サイズや形状が異なる試験杭に対して載荷試験装置10を固定することが可能となる。
また、台座50における各クランプユニット61,62の取付孔514が各所に形成されているので、各クランプユニット61,62の位置調節を行うことができ、これにより、各クランプユニット61,62の交換を伴うことなく、サイズや形状が異なる試験杭に対して載荷試験装置10を固定することが可能となる。
【0111】
さらに、台座50を昇降装置40に対してボルト等の締結部材で連結した場合には、台座50を昇降装置40から取り外すことができるので、台座50そのものを交換することが可能となる。この場合も、サイズや形状が異なる試験杭に対して載荷試験装置10を固定することが可能となる。
さらに、台座50の交換により、サイズが異なるクッション材30や錘20を支持することが可能となり、載荷試験装置10によって試験を行うことが可能な錘20の重量の範囲を拡張することが可能となる。
【0112】
また、クッション材30は、複数枚を積層した状態で使用するので、クッション材30の積層枚数を調整することにより、バネ定数を容易に調整することができる。これにより、載荷試験装置10によって試験を行うことが可能なバネ定数の範囲を拡張することが可能となる。
【0113】
また、錘20の第一錘体21や第二錘体22が、ポスト41の周囲の一部分を分断した形状(前方に開口した形状)となる挿通部211,221を有するので、重量物である第一錘体21や第二錘体22をクッション材30の上に配置する際に、ポスト41の上端部まで吊り上げる必要がなく、ポスト41の側方から第一錘体21や第二錘体22を配置することができ、第一錘体21や第二錘体22の配置作業や交換作業を容易に行うことが可能となる。
【0114】
また、昇降体42は、油圧シリンダ443により錘20の被把持部26のプレート262を把持する把持装置44を備え、当該把持装置44の開閉動作によって錘20の保持と解放とを行う。
把持装置44は、このような把持構造を採るので、錘20を落下させる際の良好な反応性を得ることが可能となる。
【0115】
また、載荷試験装置10は、制御装置90のコントローラ91によって、昇降体42による錘20の保持、上昇及び落下の一連の動作が行われるので、試験中においてユーザーが行う作業を少なくすると共に試験中のユーザーの拘束の程度を低減し、作業負担を飛躍的に低減させることが可能となる。
特に、上記昇降体42による錘20の保持、上昇及び落下の一連の動作が、入力装置94によって設定入力された各種のパラメータに基づいて行われることにより、所望の載荷試験の条件を満たす載荷試験を極めて少ない作業負担で行うことが可能となる。
例えば、制御装置90のコントローラ91により、設定入力された載荷試験のパラメータ((4)各落下時の錘20の吊り上げ高さ)に基づく高さから錘20を落下させる制御が行われる場合には、錘20の吊り上げ高さの調節作業をユーザーが行うことが不要となり、作業負担の軽減と作業時間の短縮による試験の迅速化を図ることが可能となる。
【0116】
さらに、(1)載荷試験に使用される錘20の重量の設定のパラメータを任意に設定した場合に、第一錘体21や第二錘体22もしくはそれ以上の錘体を追加するか否かによって錘20の下端からクッション材30の上端までの距離が変動するため、例えば、(4)各落下時の錘20の吊り上げ高さ等の他のパラメータ等を自動的に制御装置90が修正し、適正な条件で試験を実行する機能を制御装置90に持たせてもよい。このような場合には、ユーザーがパラメータの調整を行うことが不要となり、作業負担のさらなる軽減と作業時間の短縮による試験のさらなる迅速化を図ることが可能となる。
【0117】
また、載荷試験装置10では、制御装置90のコントローラ91によって、昇降体42による錘20の保持、上昇及び落下の一連の動作を複数回実行する制御が行われるので、ユーザーが行う作業の低減により、従来は長時間を要する複数回の載荷試験を迅速化すると共にユーザーの作業負担も効果的に低減することができる。
特に、載荷試験装置10では、制御装置90のコントローラ91によって、複数回の載荷試験ごとに、高さを変えて錘を落下させる制御を行うので、毎回の載荷試験における錘20の吊り上げ高さの調節作業も不要とし、ユーザーの作業負担もより効果的に低減することができる。
【0118】
また、コントローラ91が、(4)各落下時の錘20の吊り上げ高さのパラメータについて、(5)目標荷重又は(6)目標変位が得られないときに、段階的に規定量分だけ高さを高くする処理を自動的に行うように構成することで、(5)目標荷重又は(6)目標変位を得るための試験の自動化を図ることができ、試験条件((1)~(4)のパラメータの一部又は全部)を自動的に取得することが可能となる。
【0119】
[形状、構造の異なる試験杭への適用]
上記実施形態では、断面円形の鋼管杭からなる試験杭Pに載荷試験装置10を固定して載荷試験を行う例を説明したが、鋼管杭に限らず、載荷試験装置10を固定可能なあらゆる形状又は構造の杭を試験杭の対象とすることが可能である。
【0120】
図22~
図26は、断面形状が一方に向かって開放形状となる、いわゆる鋼矢板を試験杭Pyとして載荷試験装置10を設置した例を示している。
図22は鋼矢板を試験杭Pyとした場合の載荷試験装置10の台座50及びクランプ装置60の正面図、
図23は右側面図、
図24は底面図である。
【0121】
鋼矢板からなる試験杭Pyは、断面形状が一方に開口端を向けた略コ字状又はU字状であって、その両端部に継手を有する構造である。鋼矢板からなる試験杭Pyは、継手によって隣り合う試験杭Py同士を連結した状態で地盤に埋設させることが可能である。なお、隣り合う試験杭Py同士を連結する場合、断面形状における開口端を互いに逆側に向けた状態とする。
図22~
図24の例では、連結された三枚の試験杭Pyの杭頭に載荷試験装置10を固定した状態を示している。
【0122】
前述した鋼管杭の場合には、クランプ装置60は、固定クランプユニット61及び可動クランプユニット62からなるユニット対を二組使用する構成としたが、三枚の試験杭Pyの杭頭に載荷試験装置10を固定する場合には、試験杭Pyの枚数に合わせて、ユニット対を三組使用することが好ましい。なお、より多くのユニット対を使用しても良い。
【0123】
前述したように、台座50の底板512の左右方向中央部と左端部と右端部とには、各ユニット61,62の横方向のボルトの間隔と等しい間隔で前後方向に沿った二本一組とする取付孔514の列514L,514LL,514LRが三組形成されている
従って、ユニット対を構成する固定クランプユニット61及び可動クランプユニット62を前後方向に並べて圧接面同士を対向させた状態で、取付孔514の三本の列514L,514LL,514LRに個別に配置することができる。
【0124】
三枚の試験杭Pyは、中央の試験杭Pyとその両側の試験杭Pyとが開口端を前後逆方向に向けた状態で連結されているので、中央の試験杭Pyに対するユニット対のクランプ位置と両側の試験杭Pyの試験杭Pyに対するユニット対のクランプ位置とは、前後方向にズレを生じる。これに対して、各クランプ対は、取付孔514の三本の列514L,514LL,514LRの長手方向(前後方向)に沿って異なる位置に配置することができる。
これにより、
図24に示すように、左右方向に並んだ三枚の試験杭Pyを適正にクランプできるように各クランプ対のクランプユニット61,62を配置することができるので、載荷試験装置10は、鋼矢板からなる試験杭Pyに対しても、杭頭に十分な強度を持って固定することができ、良好な載荷試験を行うことが可能である。
【0125】
また、
図25は
図24よりも前後幅の狭い鋼矢板からなる試験杭Pyに対するクランプユニット61,62の配置を示した底面図、
図26は
図25よりも前後幅の狭い鋼矢板からなる試験杭Pyに対するクランプユニット61,62の配置を示した底面図である。
前述したように、台座50の底板512の左右方向中央部と左端部と右端部とには、取付孔514の列514L,514LL,514LRが三組形成されているので、各クランプユニット61,62の前後方向の位置調節が可能である。このため、前後幅が異なる鋼矢板からなる試験杭Pyも適正にクランプして、載荷試験装置10を各試験杭Pyの杭頭に対して十分な強度を持って固定することができる。
【0126】
なお、断面形状が半円状の鋼矢板を試験杭Pyとする場合も、
図24~
図26に示すクランプユニット61,62の配置に対して前後方向に位置調節を行うことで、載荷試験装置10を各試験杭Pyの杭頭に対して十分な強度を持って固定することが可能である。
また、鋼矢板の試験杭Pyを三枚連結した例を示したが、試験杭Pyはより少ない場合やより多い場合でも、載荷試験装置10を杭頭に対して十分な強度を持って固定することが可能である。その場合、試験杭Pyの枚数に応じて、クランプユニット61,62の配置のさらなる適正化を図ることが可能な形状、寸法又は取付孔514の配置を有する底板512を有する台座50に交換してもよい。
【0127】
[その他]
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、実施形態において、単一の部材により一体的に形成された構成要素は、複数の部材に分割されて互いに連結又は固着された構成要素に置換してもよい。また、複数の部材が連結されて構成された構成要素は、単一の部材により一体的に形成された構成要素に置換してもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0128】
例えば、クッション材30は、挿通孔311に挿通されたポスト41の周囲全体を切れ目なく囲繞する構造を例示したが、これに限定されない。例えば、錘20の第一錘体21や第二錘体22の挿通部211,221のように、クッション材30が挿通孔311から周囲のいずれかの方向に分断された形状としてもよい。その場合、ポスト41の上端部からクッション材30の挿通孔311に挿入する必要がなく、ポスト41の側方からクッション材30を配置することができ、クッション材30の配置作業や交換作業を容易に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0129】
10 載荷試験装置
20 錘
21 第一錘体
22 第二錘体
211,221 挿通部
23 上部ブラケット
24 下部ブラケット
234,244 挿通孔
25 ガイド機構
252 ローラ
253 ローラ機構
26 被把持部
261 基端部
262 プレート
263 段部
30 クッション材
31 弾性板
32 鉄板
311,321 挿通孔
40 昇降装置
41 ポスト(支持部)
42 昇降体
425 開口
43 油圧シリンダ(第2のアクチュエータ)
44 把持装置
441 クランプユニット
443 油圧シリンダ(第3のアクチュエータ)
45 距離センサ
50 台座
514 取付孔
514L,514LL,514LR 列
514W 列
60 クランプ装置
61 固定クランプユニット
62 可動クランプユニット
623 油圧シリンダ(第1のアクチュエータ)
70 測定装置
71 ロードセル
72 加速度センサ
73 変位センサ
74 歪みセンサ
90 制御装置
91 コントローラ
92 表示装置
93 記憶部
94 入力装置
95 操作装置
96 処理装置
P,Py 試験杭
P1 杭頭