(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176486
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ヒンジキャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/08 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
B65D47/08 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088787
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100186358
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100191145
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 整博
(72)【発明者】
【氏名】小賀坂 優太
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA12
3E084AB01
3E084BA03
3E084CA01
3E084CB02
3E084DA01
3E084DB13
3E084FA02
3E084FC01
3E084GA06
3E084GA08
3E084GB06
3E084HD01
3E084HD03
3E084HD04
3E084KA12
3E084KB01
3E084LA03
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD01
3E084LF06
(57)【要約】
【課題】 内容液を注出する際に、液切れがよく、注出筒の外側に垂れないようできるとともに、注出筒内にも液が残らず、閉蓋時に密封を維持できるヒンジキャップを提供すること。
【解決手段】 容器本体Dの口部1に装着されるキャップ本体Aと、キャップ本体AにヒンジCを介して取り付けられる上蓋Bとを備えるヒンジキャップであって、キャップ本体Aは、容器本体Dから内容液を外部に注出する注出筒7を有し、注出筒7は、内周下部で縮径されたシール面段部20と、シール面段部20より上方から外側に湾曲し、撥液処理した撥液リップ面部21とを有し、上蓋Bは、頂壁30と、頂壁30の裏面から垂設され、注出筒7を密封する密封筒32とを有し、密封筒32は、外周下部に、注出筒7のシール面段部20と密接するシール部35を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に装着されるキャップ本体と、キャップ本体にヒンジを介して取り付けられる上蓋とを備えるヒンジキャップであって、
キャップ本体は、容器本体から内容液を外部に注出する注出筒を有し、
注出筒は、内周下部で縮径されたシール面段部と、シール面段部より上方から外側に湾曲し、撥液処理した撥液リップ面部とを有し、
上蓋は、頂壁と、頂壁の裏面から垂設され、注出筒を密封する密封筒とを有し、
密封筒は、外周下部に、注出筒のシール面段部と密接するシール部を有することを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項2】
密封筒は、閉蓋時に、ヒンジ側の所定の範囲で密封筒の閉蓋を案内する案内リブを有することを特徴とする請求項1に記載のヒンジキャップ。
【請求項3】
案内リブは、密封筒の外周面から縮径された切欠き部を有することを特徴とする請求項2に記載のヒンジキャップ。
【請求項4】
注出筒は、先端部が上向きで終わるように形成されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のヒンジキャップ。
【請求項5】
上蓋は、頂壁下面の密封筒の内側および密封筒の内周面に撥液面を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のヒンジキャップ。
【請求項6】
上蓋は、頂壁下面の密封筒の内側および密封筒の内周面に撥液面を有することを特徴とする請求項4に記載のヒンジキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の口部に装着されるキャップ本体と、ヒンジを介してキャップ本体に連設された上蓋とからなるヒンジキャップに関し、とくに、内容液を注出する際に、液切れがよく、注出後は、注出筒内に内容液が残らないようにしたヒンジキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器本体に装着するヒンジキャップにおいて、使用前は、注出口を閉塞する抜栓式の隔壁を備え、使用時に、隔壁を抜栓して開口した後、容器本体を傾け、キャップ本体の注出口から内容液を注出する際には、通常、注出口の周囲から立設される注出筒によって内容液を注出方向に案内している。
このとき、注出筒の外側に液が垂れたりすることがあり、ヒンジキャップ内が汚れて不衛生になったり見映えが悪いという問題があった。
【0003】
このため、蓋係合部のヒンジと反対側の内周上部に、所定の円弧範囲にわたって、斜め内側方向に突き出した液だれ防止フィンが形成され、注出時に注出筒の注出方向に垂れた内容液が、液だれ防止フィンによって容器本体内へ回収されるようにした抜栓式のヒンジキャップが従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載のヒンジキャップでは、抜栓後、容器本体を傾けて注出筒から内容液を注出する際に、内容液が注出筒の外側に垂れても、液だれ防止フィンによって容器本体内に回収することができるが、結局、液切れが悪いため、内容液が外側に垂れることで、垂れた内容液の粘性によっては、キャップ本体の外側にこびり付くおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、内容液を注出する際に、液切れがよく、注出筒の外側に垂れないようできるとともに、注出筒内にも液が残らず、閉蓋時に密封を維持できるヒンジキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、ヒンジキャップとして、容器本体の口部に装着されるキャップ本体と、キャップ本体にヒンジを介して取り付けられる上蓋とを備えるヒンジキャップであって、キャップ本体は、容器本体から内容液を外部に注出する注出筒を有し、注出筒は、内周下部で縮径されたシール面段部と、シール面段部より上方から外側に湾曲し、撥液処理した撥液リップ面部とを有し、上蓋は、頂壁と、頂壁の裏面から垂設され、注出筒を密封する密封筒とを有し、密封筒は、外周下部に、注出筒のシール面段部と密接するシール部を有することを特徴とする構成を採用する。
【0008】
ヒンジキャップの実施形態として、密封筒は、閉蓋時に、ヒンジ側の所定の範囲で密封筒の閉蓋を案内する案内リブを有することを特徴とする構成を採用し、また、案内リブは、密封筒の外周面から縮径された切欠き部を有することを特徴とする構成を採用し、また、注出筒は、先端部が上向きで終わるように形成されることを特徴とする構成を採用し、また、上蓋は、頂壁下面の密封筒の内側および密封筒の内周面に撥液面を有することを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のヒンジキャップは、上記構成を採用することにより、内容液注出時の液切れがよく、注出後にキャップ本体の注出筒に内容液が残らないので、注出筒内を汚すことがなく、閉蓋時に、確実に密封を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例のヒンジキャップを装着した容器の閉蓋状態を示す側面断面図である。
【
図2】本発明の実施例のヒンジキャップの開蓋状態を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面断面図である。
【
図3】本発明の実施例のヒンジキャップの閉蓋時の状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明のヒンジキャップについて、実施例をあげ、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明において、
図1でみて、上方向を「上」、下方向を「下」、左方向を「注出側」、右方向を「ヒンジ側」とする。
【実施例0012】
図1において、Aは容器本体Dの口部1に装着されるキャップ本体、Bはキャップ本体AにヒンジCを介して取り付けられる上蓋である。
容器本体Dは、上部に口部1を有し、口部1の外周には、キャップ本体Aを装着するために、環状に突出する係合突条2が設けられている。
【0013】
図1および
図2に示すように、キャップ本体Aは、容器本体Dの口部1に装着される装着部5と、装着部5から内方に延設されるリング状の上壁6と、上壁6の内縁から立設される注出筒7と、注出筒7の内周下部に連設される隔壁部8と、を備えている。
【0014】
装着部5は、外周が容器本体Dの口部1の内周に嵌合するとともに内周下端部に上壁6を連設する内筒壁9と、内筒壁9の外周上端部に連設し、下面が口部1上面と当接する基壁10と、基壁10の外周縁に連設し、内周が口部1の外周に嵌合する外筒壁11と、外筒壁11の外周に、間隔を開けて連設されるとともに外周上端の所定の個所にヒンジCが連設される外周壁12と、を備えている。
【0015】
基壁10の上部には、上蓋Bに係合して閉蓋する蓋係合部13が立設され、外筒壁11の内周下端部には、嵌合突条14が設けられている。
外筒壁11と外周壁12との下端部は、注出側(ヒンジCと反対側)の所定の範囲に形成される連結部15と、それ以外の範囲に間隔を開けて複数配設される破断可能な弱化片16とを介して連設されている。
【0016】
蓋係合部13の外周上端には、外方向に突出する蓋係合突部17が設けられている。
装着部5は、打栓することにより容器本体Dの口部1に嵌合し、内筒壁9の外周と基壁10の下面と外筒壁11の内周とにより口部1を挟持するとともに、口部1の係合突条2下部と外筒壁11の嵌合突条14の上部とが係合して、キャップ本体Aが容器本体Dの口部1に装着される。
【0017】
注出筒7は、注出側が高く、ヒンジC側が閉蓋時にヒンジCを支点として上蓋Bの密封筒32の開閉の邪魔にならないように低く形成され、また、上端は全周にわたり、とくに、注出側の先端部7aは、注出時の液切れをよくするために、外方に向かい湾曲するとともに、先端が上向きで終わるように形成されている。
【0018】
注出筒7の内周下部には、隔壁部8上面から所定の高さまで内方に縮径されるシール面段部20が周設され、シール面段部20より上方には、先端(先端部7aも含む)に向けて外側に湾曲し、表面に撥水効果を高める撥液処理が行われた撥液リップ面部21が周設されている。
撥水効果は、表面に微細な凹凸構造を形成することで得られ、形成方法は、とくに限定されない。撥水効果を有する微細な凹凸構造は、射出成形で用いる成形型の表面形状からの転写によって設けてもよいし、撥水性フィルムをインサート材とするインサート成形によって設けてもよいし、コーティングによって設けてもよいし、さらに、蒸着などによって設けてもよい。とくに蒸着による形成方法によれば、注出筒7の撥液リップ面部21の他に、後述する上蓋Bの撥液下面部37および撥液内周面部38に容易に撥水効果を付与することができる。
【0019】
隔壁部8には、破断可能な薄肉弱化部25が設けられ、薄肉弱化部25は、破断されたときに、容器本体D内と連通して注出口が形成される除去部26を画成し、除去部26のヒンジC側には、支柱27を介してプルリング28が連設されている。
【0020】
図1および
図2に示すように、上蓋Bは、頂壁30と、頂壁30の周縁から垂設される側周壁31と、頂壁30下面から垂設され、キャップ本体Aの注出筒7の内周に挿入されて密封する密封筒32と、を備え、側周壁31の外周下端の所定の個所にヒンジCが連設され、反対側の注出側に、摘み部33が形成されている。
側周壁31の内周下端部には、閉蓋時に、キャップ本体Aの蓋係合部13の上面と外周および蓋係合突部17と係合して閉蓋を維持させる閉蓋凹部34が凹設されている。
【0021】
密封筒32は、外周下端に、閉蓋時にキャップ本体Aの注出筒7のシール面段部20に密接するシール部35が全周に形成され、内周側に、
図2(a)に示すように、ヒンジC側の所定の範囲で閉蓋時に密封筒32の移動を案内する案内リブ36が垂設されている。
案内リブ36は、密封筒32の内周面から連なる内側面36aと、密封筒32の外周面から縮径された切欠き部36bと、を備えている。
【0022】
頂壁30下面の密封筒32の内方および密封筒32の内周面と、案内リブ36の内側面36aは、表面に撥水効果を高める撥液処理が行われた撥液下面部37および撥液内周面部38となっている。
【0023】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
本実施例のヒンジキャップは、
図2に示すように、キャップ本体Aと上蓋BとをヒンジCを介して開蓋状態で一体成形した後、ヒンジCを支点としてキャップ本体Aに上蓋Bを閉蓋方向に回転させて被せ、閉蓋する。
【0024】
図3に示すように、上蓋Bの閉蓋時には、まず、密封筒32のヒンジC側の所定の範囲に形成された案内リブ36は、ヒンジCを回転中心として密封筒32が移動を開始すると、キャップ本体Aの注出筒7内周の撥液リップ面部21およびシール面段部20のヒンジC側に当接することなく、シール面段部20の内側に挿入される。
その後、密封筒32の外周下端のシール部35は、注出筒7内周の撥液リップ面部21に当接することなく、シール面段部20内周に摺接し、最後は、上蓋Bの側周壁31の閉蓋凹部34とキャップ本体Aの蓋係合部13の上面と外周および蓋係合突部17とが係合して閉蓋状態を維持するとともに、上蓋Bの密封筒32外周下端のシール部35がキャップ本体Aの注出筒7内周のシール面段部20に密接し、内方を密封する。
【0025】
本実施例のヒンジキャップは、上蓋Bの閉蓋中に、上蓋BがヒンジCの変形により、キャップ本体Aに対する位置がヒンジC側にずれたとしても、密封筒32は、案内リブ36の切欠き部36bがシール面段部20の上端に摺接しながら下方に案内され、ヒンジC側の密封筒32の外周下端部は、注出筒7の撥液リップ面部21に接触するおそれがないため、注出筒7の撥液リップ面部21が傷つき、撥水効果を落とすことがない。
【0026】
このように、注出筒7は、内周下部にシール面段部20を形成したため、密封筒32に案内リブ36を設けなかった場合、密封筒32下端部がシール面段部20に強く摺接し、注出側の密封筒32を径方向外側へ大きく変形させ、注出筒7の撥液リップ面部21に接触するおそれがあったが、案内リブ36は、切欠き部36bによってシール面段部20内に案内された後、密封筒32下端部がシール面段部20と摺接するため、注出側の密封筒32を径方向外側へ大きく変形させることがない。
【0027】
閉蓋状態のヒンジキャップは、容器本体Dの口部1に打栓され、
図1に示すように、装着される。
打栓工程は、キャップ本体Aの内筒壁9と基壁10と外筒壁11との間に形成される環状溝部を容器本体Dの口部1に当てがい、上蓋Bの上から押圧力が加えられると、最初に、外筒壁11の嵌合突条14が、口部1の係合突条2を乗り越えて嵌合し、口部1は、前記環状溝部によって挟持され、ヒンジキャップが装着される。
【0028】
本実施例のヒンジキャップが装着された容器の使用時には、摘み部33に指を掛けて持ち上げ、ヒンジCを支点に上蓋Bを開蓋した後、キャップ本体Aの隔壁部8に画成された除去部26に連設したプルリング28を上方に引っ張り、支柱27を介して除去部26を引き上げ、薄肉弱化部25を破断して隔壁部8から除去部26を切り離して抜栓し、注出口を開口する。
【0029】
容器本体Dに充填されている内容液が、ドレッシングなど使用前に容器本体Dを振って攪拌するものであれば、除去部26を隔壁部8から切り離して注出口を開口した後、一旦上蓋Bを閉めて容器本体Dを振ってから、再び上蓋Bを開き、容器本体Dを傾けて内容液をキャップ本体Aの注出筒7内面で案内して注出する。
本実施例のヒンジキャップは、上蓋Bの頂壁30下面の密封筒32の内方および密封筒32内周面が、撥液下面部37および撥液内周面部38となっているので、上蓋Bを閉めて容器本体Dを振ることにより、内容液が上蓋Bの密封筒32の内方に付着しても、撥水効果が高いため、内容液は、すぐに流下して隔壁部8の注出口から容器本体D内に回収することができ、上蓋Bの密封筒32の内方に内容液が残ってこびり付くことがない。
【0030】
容器本体Dを注出側に傾け、内容液を注出する際に、注出口から出た内容液は、キャップ本体Aの注出筒7のシール面段部20で案内され、撥液リップ面部21で整流されて先端部7aから注出される。
その際、撥液リップ面部21は、撥水効果が高く、内容液をスムーズに注出し、液切れもよい。
【0031】
内容液の注出後、容器本体Dの傾きを正立に戻したときには、注出筒7の内方から内容液の流出が止められ、注出口内に戻されるとともに、注出筒7の上端(先端部7aも含む)にまとわりついた残液が撥水効果の高い撥液リップ面部21を伝い、素早く下に流れるため、シール面段部20の流下に勢いがつき、シール面段部20自体にも液が残らず流下し、注出口内に戻される。
また、注出筒7の先端が全周にわたり、外方に向けて湾曲するとともに、先端が上向きで終わるように形成されているので、内容液が溜まらず、スムーズに流下する。
【0032】
本実施例のヒンジキャップは、内容液の注出後、上蓋Bを閉蓋するときに、キャップ本体Aの注出筒7内方に液が残らず、こびり付くことがないので、閉蓋時に、上蓋Bの密封筒32と注出筒7のシール面段部20との密着性がよい。
上蓋Bの密封筒32のシール部35が撥液リップ面部21と接触しないので、撥液リップ面部21を傷付けず、また、密封筒32が撥液リップ面部21と当接して表面の凹凸形状により隙間ができて密封されないということを防止できる。
【0033】
また、本実施例のヒンジキャップは、容器本体D内の内容液を使用した後に、容器本体Dから分離して分別廃棄することができる。
まず、上蓋Bを開いて上方に引っ張ると、キャップ本体Aの外筒壁11と外周壁12とを連結する弱化片16が破断して、外周壁12のヒンジC側が外筒壁11から引き離され、さらに上蓋Bを引っ張り続けると、破断不能な連結部15に連結された部分からめくれあがるようにして外筒壁11を容器本体Dの口部1から簡単に外すことができる。
本発明のヒンジキャップは、内容液注出時の液切れがよく、注出後にキャップ本体の注出筒に内容液が残らないので、注出筒内を汚すことがなく、閉蓋時に、確実に密封を維持でき、衛生的な使用環境を必要とする容器のヒンジキャップとして広く使用することができ、とくに、食用油や液体調味料などの液状食品を充填する容器のヒンジキャップとして好適である。