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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176492
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】振動アクチュエータ及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/12 20060101AFI20231206BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H02K33/12
B06B1/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088795
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下村 重幸
(72)【発明者】
【氏名】木下 洋輔
【テーマコード(参考)】
5D107
5H633
【Fターム(参考)】
5D107AA13
5D107BB08
5D107CC09
5D107DD03
5D107DD12
5D107FF10
5H633BB08
5H633GG02
5H633GG05
5H633GG06
5H633GG09
5H633HH03
5H633HH05
5H633HH16
5H633JA03
5H633JB03
5H633JB04
(57)【要約】
【課題】小型化薄型化が可能な、安定して高出力で振動できる振動アクチュエータ及び電子機器を提供すること。
【解決手段】マグネットと、マグネットの表面及び裏面に固定され中央に開口部を有する一対のヨークとを含む可動積層体と、コイルを有し、一対の弾性支持部を介してコイルの内側で可動積層体を軸方向に往復振動可能な状態で支持する固定体と、筒状部材及び筒状部材に挿入され基端にフランジを有する軸部材を夫々有する一対の接続部と、を有し、一対の接続部は夫々、軸部材の先端が一対のヨークの開口部内でマグネットの前面又は裏面に当接した状態で、軸部材のフランジ及び筒状部材の基端側端面が共に一対の弾性支持部の夫々を挟むことで、可動積層体を、一対の弾性支持部の夫々に接続する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットと、前記マグネットの表面及び裏面に固定され中央に開口部を有する一対のヨークとを含む可動積層体と、
コイルを有し、一対の弾性支持部を介して前記コイルの内側で前記可動積層体を軸方向に往復振動可能な状態で支持する固定体と、
筒状部材及び前記筒状部材に挿入され基端にフランジを有する軸部材を夫々有する一対の接続部と、
を有し、
前記一対の接続部は夫々、
前記軸部材の先端が前記一対のヨークの前記開口部内で前記マグネットの前記表面又は前記裏面に当接した状態で、前記軸部材の前記フランジ及び前記筒状部材の基端側端面が共に前記一対の弾性支持部の夫々を挟むことで、前記可動積層体を、前記一対の弾性支持部の夫々に接続する、
振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記筒状部材の先端側端面は、前記筒状部材に挿入される前記軸部材の先端とともに前記一対のヨークの前記開口部内で前記マグネットの前記表面又は前記裏面に当接する、
請求項1記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記軸部材の外周面には、前記軸部材の先端から基端に亘って延在する溝部が設けられている、
請求項1記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記軸部材は、リベットであり前記筒状部材に圧入されている、
請求項1記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記筒状部材は、前記開口部内に挿入される先端側端面を有する先端部の外径よりも、前記基端側端面を有する基端部の外径の方が大きい、
請求項1記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記弾性支持部は、平板状の渦巻き型のばねを有する、
請求項1記載の振動アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1記載の振動アクチュエータを実装した、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータ及びこれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動機能を有する電子機器は、振動アクチュエータを駆動してユーザに振動を伝達して体感させることにより、着信を通知したり、操作感や臨場感を向上したりすることができる。電子機器は、例えば、携帯型ゲーム端末、据置型ゲーム機のコントローラー(ゲームパッド)、携帯電話やスマートフォンなどの携帯通信端末、タブレットPCなどの携帯情報端末、服や腕などに装着されるウェアラブル端末の携帯できる携帯機器を含む。
【0003】
携帯機器に実装される小型化可能な構造の振動アクチュエータとしては、例えば、特許文献1に示すように、ページャー等に用いられる振動アクチュエータが知られている。
【0004】
この振動アクチュエータは、一対の板状弾性体を相対向するようにして円筒状の枠体の開口縁部でそれぞれ支持させている。板状弾性体のそれぞれは、一端部を固定体に固定し、他端部を可動体或いは可動する側の部位に固定して配設されている。一対の板状弾性体のうちの一方の渦巻形状の板状弾性体は、一端部である外周部分を枠体の底部に配置し、この外周部分から他端部である中央部分が盛り上がるように形成されている。この中央部分には、磁石を取り付けたヨークが固定され、ヨークは枠体内で支持されている。
【0005】
ヨークは磁石とともに磁界発生体を構成し、この磁界発生体の磁界内に、コイルが他方の板状弾性体に取り付けた状態で配置されている。コイルは、銅線の表面に樹脂を焼き付けたエナメル線を用いて円筒状体に構成され、所謂、自己融着線を用いた空芯コイルであり、配置スペースは小さくなっている。このコイルに発振回路を通じて周波数の異なる電流が切替えて付与されることにより一対の板状弾性体は選択的に共振されて振動を発生し、ヨークは枠体内で枠体の中心線方向で振動する。
【0006】
この振動アクチュエータでは、ヨークと枠体の内周壁との距離よりも磁石とコイル及びヨークとコイル間の距離が大きくなるように構成されている。これにより、外部から衝撃を受けた場合、先にヨークが枠体の内周壁(軟弾性体)に衝突して、ヨークや磁石がコイルに接触してコイルを破損させることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3748637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年、振動アクチュエータが搭載される製品の小型化や、その製品における設置スペースの狭小化に伴い、振動アクチュエータ自体の小型化が進められている。
【0009】
しかしながら、上記振動アクチュエータの構成では、ヨークと枠体の内壁との距離と、磁石とコイル及びヨークとコイル間の距離との双方の確保とともに、後者の距離を前者の距離よりも大きくする必要があるため、小型化することが困難であった。
【0010】
また、従来の振動アクチュエータでは、可動体は、振動方向の一方側で渦巻形状の板状弾性体に支持されているので、振動方向に対して傾いて振動する虞もあり、振動方向に沿ってより安定して振動させたいという要望があった。
【0011】
本発明の目的は、小型薄型化が可能であり、安定して高出力で振動できる振動アクチュエータ及び電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の振動アクチュエータの一つの態様は、
マグネットと、前記マグネットの表面及び裏面に固定され中央に開口部を有する一対のヨークとを含む可動積層体と、
コイルを有し、一対の弾性支持部を介して前記コイルの内側で前記可動積層体を軸方向に往復振動可能な状態で支持する固定体と、
筒状部材及び前記筒状部材に挿入され基端にフランジを有する軸部材を夫々有する一対の接続部と、
を有し、
前記一対の接続部は夫々、
前記軸部材の先端が前記一対のヨークの前記開口部内で前記マグネットの前記表面又は前記裏面に当接した状態で、前記軸部材の前記フランジ及び前記筒状部材の基端側端面が共に前記一対の弾性支持部の夫々を挟むことで、前記可動積層体を、前記一対の弾性支持部の夫々に接続する構成を採る。
【0013】
本発明の電子機器の一つの態様は、
上記構成の振動アクチュエータを実装した構成を採る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、小型薄型化が可能であり、安定して高出力で振動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る振動アクチュエータの縦断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る振動アクチュエータにおいてケースを外した駆動ユニットの斜視図である。
図3図2に示す駆動ユニットの平面図である。
図4】弾性支持部が固定された可動体を示す斜視図である。
図5図4の分解斜視図である。
図6】本実施の形態の振動アクチュエータの軸部材の平面側斜視図である。
図7】本実施の形態の振動アクチュエータの軸部材の底面側斜視図である。
図8】軸部材の変形例1を示す斜視図である。
図9】アウターヨークを外したコイル組立体を示す図である。
図10】同振動アクチュエータの磁気回路構成を示す模式的に示す図である。
図11】コイルとマグネットとの相対的な移動状態を示す図である。
図12】コイルとマグネットとの相対的な移動状態を示す図である。
図13】可動体全長の構成要素を示す模式図である。
図14】同振動アクチュエータを実装した電子機器の一例を示す図である。
図15】同振動アクチュエータを実装した電子機器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
<実施の形態1>
[振動アクチュエータの全体構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る振動アクチュエータの縦断面図であり、図2は、本発明の実施の形態に係る振動アクチュエータにおいてケースを外した駆動ユニットの斜視図である。また、図3は、図2に示す駆動ユニットの平面図であり、図4は、弾性支持部が固定された可動体を示す斜視図であり、図5は、図4の分解斜視図である。
【0018】
なお、本実施の形態における「上」側、「下」側は、理解しやすくするために便宜上付与したものであり、振動アクチュエータにおける可動体の振動方向の一方、他方を意味する。すなわち、振動アクチュエータが電子機器(図14及び図15参照)に搭載される際には上下が逆になっても左右になっても構わない。
【0019】
本実施の形態1に係る振動アクチュエータ1は、携帯型ゲーム端末機器(例えば、図14に示すゲームコントローラGC)等の電子機器に振動発生源として実装され、電子機器の振動機能を実現する。この電子機器としては、スマートフォン等の携帯機器(例えば、図15に示す携帯端末M)も含む。振動アクチュエータ1は、携帯型ゲーム端末機器或いは、携帯機器等の各機器に実装され、駆動することにより振動して、ユーザに対して着信を通知したり、操作感や臨場感を与えたりする。
【0020】
本実施の形態の振動アクチュエータ1は、図1及び図2に示すように、中空のケース10内に、可動体20を、ケース10の軸方向(上下方向)を振動方向として、上下端面間で振動可能に収容している。ケース10内部の可動体20が振動することにより、振動アクチュエータ1自体が振動体として機能する。
【0021】
振動アクチュエータ1は、マグネット30、一対のヨーク41、42及び一対の接続部21、23と有する可動体20と、一対のコイル61、62を有する固定体50と、弾性支持部81、82と、を有する。可動体20は、一対の弾性支持部81、82を介して、固定体50に対して往復動自在に支持されている。
【0022】
振動アクチュエータ1においてコイル61、62、マグネット30、第1ヨーク41及び第2ヨーク42は、アウターヨーク58とともに、可動体20を振動させる磁気回路を構成する。振動アクチュエータ1は、電源供給部(例えば、図14及び図15に示す駆動制御部203)からコイル61、62が通電されることで、コイル61、62とマグネット30とが協働して、ケース10内で、可動体20が振動方向に往復移動する。
【0023】
本実施の形態の振動アクチュエータ1では、可動体20は、コイルボビン部52に保持されたコイル61、62の内側で、可動体20との間に配置されるボビン本体部(コイル保護壁部)522により、コイル61、62の軸方向、つまり、振動方向で往復移動する。コイル61、62の軸方向は、可動体20の振動方向であり、マグネット30の着磁方向であり、コイルボビン部52の軸方向でもある。
【0024】
可動体20は、振動していない非振動(非駆動)時において、弾性支持部81、82を介して、振動方向の長さの中心が、コイルボビン部52の振動方向の長さの中心と、可動体20の軸方向と直交する方向で、所定間隔をあけて対向するように配置される。
【0025】
このとき、可動体20は、コイルボビン部52のボビン本体部522に接触しないように、コイル61、62との間で釣り合う位置に位置することが望ましい。本実施の形態では、マグネット30および第1及び第2ヨーク41、42における振動方向の長さの中心が、上下で離間するコイル61、62間の振動方向の長さの中心と、振動方向と直交する方向で対向する位置に配置されることが好ましい。なお、ボビン本体部522と可動体20の間に、磁性流体が介在するようにしてもよい。
【0026】
振動アクチュエータ1は、本実施の形態では、図1及び図2に示すように、ケース本体11及び蓋部12を有するケース10内に、駆動ユニット13を有する。駆動ユニット13は、コイル61、62、コイルボビン部52、可動体20及び弾性支持部81、82を有する。
【0027】
<可動体20>
可動体20は、固定体50の筒状のコイルボビン部52の内側で、上下端部で接続された弾性支持部81、82により、コイルボビン部52の内側面(ボビン本体部522の内周面522a)に沿って、往復移動可能に支持される。言い換えれば、可動体20は、振動アクチュエータ1内において、蓋部12と底部114が対向する方向に往復移動可能に支持されている。可動体20は、図3に示す駆動ユニット13に設けられる。
【0028】
可動体20は、図1図4及び図5に示すように、マグネット30、一対のヨーク41、42及び一対の接続部21、23(筒状部材22、24、軸部材26、28)を有する。本実施の形態では、マグネット30を可動体20の中央に有する。
【0029】
可動体20では、マグネット30を中心に振動方向の両側(図1図5に示す上下方向)に向かってそれぞれ第1及び第2ヨーク41、42が積層され、一対のヨーク(第1及び第2ヨーク42)に接続部21、23が連設されている。なお、マグネット30及び一対のヨーク(第1ヨーク41、第2ヨーク42)は、積層して固定される可動積層体15(図4及び図5参照)を構成する。
【0030】
可動体20では、マグネット30及び第1及び第2ヨーク41、42の外周面20aがボビン本体部522の内周面522aの内側で所定間隔を空けて対向されている。
【0031】
可動体20が振動方向に移動する際には、外周面20aが内周面522aに沿って接触することなく往復移動する。
【0032】
<マグネット30>
マグネット30は、振動方向に着磁される。マグネット30は、本実施の形態では円盤状に形成され、振動方向で離間する表裏面30a、30bがそれぞれ異なる極性を有している。マグネット30の表裏面30a、30bは、コイル61、62の軸の延在方向で離間する2つの着磁面である。
【0033】
マグネット30は、コイル61、62(詳細は後述する)に対して、コイル61、62の径方向内側で間隔を空けて位置するように配置される。ここで、「径方向」とは、コイル61、62の軸に直交する方向であり、振動方向と直交する方向でもある。この径方向における「間隔」は、ボビン本体部522を含むコイル61,62と、マグネット30との間の間隔であり、可動体20の振動方向に互いに接触することなく移動可能な間隔とする。すなわち、本実施の形態では、「間隔」とは、ボビン本体部522とマグネット30との間の所定間隔を意味している。
【0034】
マグネット30は、本実施の形態では、径方向外側で、ボビン本体部522の中心と、対向するように配置されている。なお、マグネット30は、コイル61、62の内側で、コイル61、62の軸の延在方向に2つの着磁面をそれぞれ向けて配置されるものであれば、筒状、板形状等のように円盤状以外の形状であってもよい。また、マグネット30の軸方向の中心が、可動体20の軸方向の中心と一致することが望ましい。
【0035】
マグネット30の表裏面30a、30bには、それぞれ第1及び第2ヨーク41、42が設けられている。
【0036】
<一対のヨーク(第1ヨーク41及び第2ヨーク42)>
第1及び第2ヨーク41、42は、磁性体であり、ヨークとして機能し、マグネット30、コイル61、62ともに磁気回路を構成する。第1及び第2ヨーク41、42は、マグネット30とともに可動体側磁気回路を構成する。第1及び第2ヨーク41、42は、マグネット30の磁束を集中させて、漏らすことなく効率良く流し、マグネット30とコイル61、62間に流れる磁束として効果的に分布させる。
【0037】
また、第1及び第2ヨーク41、42は、磁気回路の一部としての機能の他、可動体20において、可動体20の本体部分としての機能、筒状部材22、24を固定する機能及び、ウェイトとしての機能を有する。加えて、第1及び第2ヨーク41、42は、可動体20において軸部材26、28を直接マグネット30に当接させる機能を有する。
【0038】
第1及び第2ヨーク41、42は、本実施の形態では、マグネット30と同表面形状を有する円環平板状に形成されている。第1及び第2ヨーク41、42は、外周面がマグネットの外周面の中央の面の外周と同じ径の外周となるようにマグネット30に固定され、マグネットの外周面とともに可動体20の外周面20aを構成する。
【0039】
第1及び第2ヨーク41、42は、本実施の形態では同様に形成された同じ部材であり、本実施の形態では、マグネット30を中心に、マグネット30を挟むようにマグネットの上下に対称に設けられている。なお、第1及び第2ヨーク41、42は、マグネット30に吸引されるとともに、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化型接着剤もしくは嫌気性接着剤によりマグネット30に固定される。
【0040】
第1及び第2ヨーク41、42のそれぞれの中央部には、上下の一対の接続部21、23の一部が嵌合する開口部である嵌合口411、421が設けられている。嵌合口411、421内には、一対の接続部21、23の一部として、上下の筒状部材(スリーブ)22、24及び第1及び第2軸部材26、28のピン本体262、282が挿入により配置されている。
【0041】
第1及び第2ヨーク41、42は、嵌合口411、421で、接続部21、23(上下の筒状部材22、24及び軸部材26、28)のそれぞれの軸を可動体20の中心軸(弾性支持部81、82の中心軸)上に位置させて、接続部21、23を支持している。嵌合口411、421は、第1及び第2ヨーク41、42における開口度合いを調整して、接続部21、23との相互の重さを調整して、可動体20自体の重さを調整し、好適な振動出力を設定できる。また、第1及び第2ヨーク41、42に、周方向で所定間隔を空けて孔部を形成して重量調整部とすることにより、可動体20の重量を調整できる。
【0042】
本実施の形態では、第1及び第2ヨーク41、42は、可動体20の非振動時において、コイル61、62の内側(径方向内側)で、コイル61、62の軸方向と直交する方向で、コイル61、62の内周面とそれぞれに対向するように位置している。
【0043】
第1及び第2ヨーク41、42において、マグネット30の上側の第1ヨーク41の上面の高さ位置が、上側のコイル61の高さ方向(上下方向)の中心の位置と対向することが好ましい。加えて、マグネット30の下側の第2ヨーク42の下面の高さ位置が、下側のコイル62の高さ方向(上下方向)の中心の位置と対向することが好ましい。
【0044】
<一対の接続部21、23(筒状部材22、24、軸部材26、28)>
一対の接続部21、23は、可動体20(具体的には、可動積層体15)を弾性支持部81、82に接続する。一対の接続部21、23は、筒状部材22、24と、軸部材26、28とを夫々有する。接続部21は、筒状部材22及び第1軸部材26により弾性支持部81に接続され、接続部23は、筒状部材24及び第2軸部材28により弾性支持部82に接続される。一対の接続部21、23は、例えば銅焼結等の金属により形成されることが好ましい。
【0045】
<筒状部材22、24>
筒状部材22、24は、可動体側磁気回路を含む可動積層体15を弾性支持部81、82に固定する機能を有するとともに、可動体20のウェイトとしての機能を有する。筒状部材22、24は、マグネット30及び第1及び第2ヨーク41、42を挟むように対象に設けられ、可動体20の振動出力を増加させている。
【0046】
筒状部材22、24は、本実施の形態では、可動体20の中心軸に沿って配置される筒状の軸状体であり、第1及び第2ヨーク41、42と、弾性支持部81、82との間に介設される。
【0047】
筒状部材22、24は、貫通する貫通孔226、246を有している。なお、筒状部材22、24は、貫通孔226、246内に軸部材26、28が挿入される。
【0048】
筒状部材22、24は、本実施の形態では、同形状に形成され、筒状部材22、24の先端側端面を有する挿入筒部222、242と、接合筒部(ばね挟持筒部)224、244とを有する。これら挿入筒部222、242と接合筒部224、244とが、それぞれ振動方向(具体的には上下方向)に連設されている。
【0049】
挿入筒部222、242は、筒状部材22、24の先端部を含み、嵌合口411、421に挿入される。挿入筒部222、242は、筒状部材22、24の「先端部」に相当する部位としてもよい。また、接合筒部224、244は、筒状部材22、24の基端部を含む構成であり、接合筒部224、244は、筒状部材22、24の「基端部」に相当する部位としてもよい。
【0050】
挿入筒部222、242は、それぞれ第1及び第2ヨーク41、42に接合する。具体的には、挿入筒部222、242は、他端部側を第1及び第2ヨーク41、42の嵌合口411、421にそれぞれ挿入して内嵌されている。
【0051】
本実施の形態では、筒状部材22、24は、第1及び第2ヨーク41、42に圧入により固定されている。筒状部材22、24は、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化型接着剤や嫌気性接着剤を用いた接着により第1及び第2ヨーク41、42に、固定されてもよく、また、圧入と接着剤とを併用してもよい。
【0052】
接合筒部224、244は、筒状部材22、24において基端側端面を有する基端部を構成し、挿入筒部222、242の外径よりも外径が大きい。これにより、フランジ264、284とで、弾性支持部81、82の内周部802を挟持する際の接触面積、つまり内周部802を挟持する面積を大きくでき、接続部21、23と弾性支持部81、82とを強固に接合できる。
【0053】
上側の接合筒部224は、可動体20の振動方向の一方の端部、つまり、可動体20の上側の端部を構成する。接合筒部224には、弾性支持部81である上側板ばねの内径側の端部(他端部)である内周部802が重ねられて接合されている。接合筒部224は、筒状部材22において、挿入筒部222の基端部(図では上側部分)に、第1及び第2ヨーク41、42と軸方向で離間して対向して設けられている。その基端側端面で、軸部材26とともに内周部802に接合されている。
【0054】
一方、下側の接合筒部244は、可動体20の振動方向の他方の端部、つまり、可動体20の下側の端部を構成する。接合筒部244には、弾性支持部82である下側板ばねの内径側の端部である内周部802が重ねられて接合されている。
接合筒部244は、筒状部材24において、挿入筒部242の基端部(図では下側部分)に、第1及び第2ヨーク41、42と軸方向で離間して対向して設けられている。その基端側端面で、軸部材28とともに内周部802に接合されている。なお、弾性支持部81の詳細な説明については、弾性支持部82とともに後述する。
【0055】
<一対の軸部材(第1軸部材26及び第2軸部材28)>
第1及び第2軸部材26、28は、弾性支持部81、82と可動体20とを、可動体20の振動により外れないように強固に固定する。
【0056】
第1及び第2軸部材26、28は、筒状部材22,24を貫通して可動体20の中央のマグネット30に当接する。第1及び第2軸部材26、28は、弾性支持部81、82から可動体20の中央のマグネット30までの距離を維持しつつ、筒状部材22、24とともに、弾性支持部81、82を可動体20に固定する。
【0057】
図6は、本実施の形態に係る振動アクチュエータの第1軸部材の平面側斜視図であり、図7は、同第1軸部材の底面側斜視図である。なお、第2軸部材28は、第1ばねと同様に形成されているので、図6及び図7に示す第1軸部材26の説明とともに、第2軸部材28を説明する。
【0058】
第1及び第2軸部材26、28は、マグネット30を挟み振動方向で対称に配置される。第1及び第2軸部材26、28は、例えば、銅焼結からなる金属等により形成されている。なお、第1及び第2軸部材26、28は、弾性支持部81、82を筒状部材22、24に固定できれば、金属の他、樹脂等やどのような材料により形成されてもよい。第1及び第2軸部材26、28は、例えば、筒状部材22、24に圧入固定されるリベットであり、銅焼結によりなるリベットである場合、同じ材料で筒状部材22、24を構成すれば強固に接合できる。
【0059】
第1及び第2軸部材26、28は、それぞれ、先端263、283を有する軸状のピン本体(軸部材)262、282と、ピン本体262、282の基端部に径方向外側に張り出して設けられたフランジ264、284とを有する。
【0060】
ピン本体262、282は、接合筒部224、244に重ねて配置された内周部802を挿通した状態で、接合筒部224、244の貫通孔226、246(筒状部材22、24の貫通孔)にそれぞれ挿入されて固定される。ピン本体262、282は、筒状部材22、24にどのように固定されてもよい。ピン本体262、282は、筒状部材22、24に、圧入により止着されている。なお、ピン本体262、282は、「軸部材」を構成する。
【0061】
ピン本体262、282は、フランジ264、284とともに、マグネット30からフランジ264、284、つまり可動体20の両端までの長さを構成する。ピン本体262、282の先端263、283がマグネット30の表裏面30a、30bに当接している。
【0062】
言い換えれば、ピン本体262は、筒状部材22の長さ+弾性支持部81の厚みの長さを含み、ピン本体282は、筒状部材24の長さ+弾性支持部82の厚みの長さを含む。
【0063】
フランジ264、284は、接合筒部224、244の上下に位置する弾性支持部81、82の内周部802の上下に、配置されている。
【0064】
フランジ264、284は、第1及び第2軸部材26、28の基端部に含まれ、筒状部材22、24の基端側端面とで、一対の弾性支持部81、82の夫々を挟み、可動積層体15を、一対の弾性支持部81、82の夫々に接続している。
【0065】
ピン本体262、282のそれぞれの外周面には軸方向に沿って先端に至るスリット268、288が設けられている。スリット268、288は、ピン本体262、282の外周面に溝状に形成され、ピン本体262、282の先端から基端まで延在する。
【0066】
スリット268、288は、ピン本体262、282を接合筒部224、244の貫通孔226、246内に圧入する際に、貫通孔226、246内のエアを外部に排出する(抜く)ことができる。なお、フランジ264、284の裏面にはピン本体262、282の周囲を囲むように環状溝269が形成されている。環状溝269は、スリット268、288と連通している。
【0067】
フランジ264、284は、接合筒部224、244とで、それぞれ弾性支持部81、82の内周部802を挟持して、弾性支持部81、82を可動体20に強固に止着している。
【0068】
なお、弾性支持部81、82の内周部802と、接合筒部224、244及びフランジ264、284のうちの少なくとも一方とは、溶接、接着等で接合されてよく、更には溶接、接着、または、カシメを組み合わせて接合されてもよい。接合筒部224、244において内周部802に面する部分には溝が設けられ、溶接、接着の際に使用する材料が貯留し、接合筒部224、244自体を内周面802に互いに強固に接合するように構成されている。
【0069】
なお、筒状部材22、24は、磁性材料により構成されてもよいが、非磁性材料により構成されることが望ましい。筒状部材22、24が非磁性材料であれば、第1ヨーク41からの磁束が上方に流れることがないとともに、第2ヨーク42からの磁束が下方に流れることがなく、効率良く第1及び第2ヨーク41、42の外周側に位置するコイル61、62側に流すことができる。
【0070】
図8は、軸部材の変形例1を示す斜視図である。図8に示す変型例1としての筒状部材36は、第1及び第2軸部材26、28と同様に、軸状のピン本体362と、ピン本体362の基端部で径方向外側に張り出すフランジ364と、スリット368と、を有する。スリット368は、スリット268と同様の機能を有する。
【0071】
ピン本体362は、可撓性有し、変形可能に形成され、筒状部材22、24の貫通孔226、246に挿入された際に変形し、内嵌する錐台部362aを有する。
【0072】
錐台部362aは、基端部に、先端側から基端側に向かって外径が漸次大きくなるように形成されている。筒状部材36は、全体を樹脂等の可撓性を有する部材により形成され、ピン本体362が筒状部材22、24の貫通孔226、246に挿入された際に錐台部362aが変形して貫通孔226、246内で嵌まる。これにより、筒状部材36は、振動アクチュエータ1において、第1及び第2軸部材26、28に換えて、より弾性支持部81、82を強固に可動体20に固定することができる。
【0073】
<固定体50>
固定体50は、コイル61、62を保持するとともに、コイル61、62の径方向内側で、可動体20を、弾性支持部81、82を介して振動方向(コイル軸方向、可動体20の軸方向)に移動自在に支持する。
【0074】
固定体50は、ケース10、コイル61、62、コイルボビン部52、及びアウターヨーク58を有する。
【0075】
図9は、アウターヨーク58を外したコイル組立体Kを示す図である。
コイル61、62とコイルボビン部52とによりコイル組立体Kは構成されている。本実施の形態では、コイル組立体Kに、弾性支持部81、82を介した可動体20及びケース10等の振動を発生させる構成要素が略全て接続されることにより、振動アクチュエータ1は構成されている。
【0076】
コイルボビン部52は、外周面に巻回されるコイル61、62を保持し、内周面522aでマグネット30を囲み、マグネット30を有する可動体20の移動を案内する。
【0077】
コイルボビン部52は、フェノール樹脂、ポリブチレンテレフタレート(poly butylene terephtalate;PBT)等の樹脂により形成された筒状体である。コイルボビン部52は、本実施の形態では、難燃性の高いベークライト等のフェノール樹脂を含む素材で構成される。
【0078】
コイルボビン部52が、フェノール樹脂を含む素材で構成されることにより、難燃性が高まり、保持するコイル61、62に電流が流れた際にジュール熱により発熱しても、駆動の際の安全性の向上を図ることができる。また、寸法精度が高まり、コイル61、62の位置精度が高まるため、振動特性のばらつきを低減出来る。
【0079】
コイルボビン部52は、筒状のボビン本体部522と、ボビン本体部522の外周から放射方向に突出する中央フランジ部526及びフランジ部527、528と、端子絡げ部(コイル結線部)53と、可動範囲形成部54とを有する。
【0080】
コイルボビン部52には、コイル61、62が巻回される。このコイル61、62は、アウターヨーク58により覆われる。なお、端子絡げ部(コイル結線部)53は、便宜上、端子絡げ部(コイル結線部)53-1、53-2と図示して説明することもある。
【0081】
ボビン本体部522は、内側に配置される可動体20の駆動時におけるコイル61、62への衝突を保護する保護壁部として機能している。ボビン本体部522の厚みは、移動する可動体20が接触しても,外周側のコイル61、62に何ら影響を与えない強度をする厚みである。
【0082】
ボビン本体部522の外周側には、中央フランジ部526と各フランジ部527、528間(コイル取付部52b、52c)で、コイル61、62が、配置されている。コイル61、62は、可動体20の第1及び第2ヨーク41、42の外周面(マグネット30及び第1及び第2ヨーク41、42の外周面)を囲むように、コイル軸方向に並んで配置されている。
【0083】
具体的には、ボビン本体部522の外周面には、中央フランジ部526とフランジ部527、528に仕切られ、且つ、外周側に径方向外側に開口する凹状のコイル取付部52b、52cが設けられている。
【0084】
端子絡げ部53は、図9に示すように、コイル61、62のコイル巻線を絡げて、外部機器と接続するコネクタ結線部として機能する。端子絡げ部53を介してコイル61、62と外部機器とが接続され、コイル61、62とコイル61、62に電力が供給される。
【0085】
端子絡げ部53は、ボビン本体部522の外周部分に突設された導電性を有する部材である。端子絡げ部53は、本実施の形態ではボビン本体部522の外周において振動方向の中心に配置される中央フランジ部526の外周面に圧入される。これにより、端子絡げ部53は、中央フランジ部526の外周面から突出するように設けられている。
【0086】
フランジ部527、528は、ボビン本体部522の軸方向(本実施の形態では振動方向であり、上下方向でもある)で離間する両端部に設けられ、コイルボビン部52の上下端部を構成する。
【0087】
フランジ部527、528は、中央フランジ部526から離間する方向側の端部(本実施の形態では上下端部)で、弾性支持部81、82が固定される。
【0088】
可動範囲形成部54は、コイルボビン部52の上下端部に設けられ、ケース10内にコイルボビン部52を収容した際に、ケース10の蓋部12及び底部114と、可動体20との間の振動範囲を形成する。
【0089】
可動範囲形成部54は、フランジ部527、528のそれぞれから振動方向(上下方向)に突設された突状辺部である。可動範囲形成部54は、フランジ部527、528の円環状の上下の開口端面(それぞれ「上端面、下端面」とも称する)527a、528aにおいて、所定間隔を空けて設けられている。環状の上端面527aは、一方側の開口端面であり、下端面528aは、他方側の開口端面を意味している。
【0090】
フランジ部527は、一方側の開口端面に、振動方向に突出する突起状の可動範囲形成部54を有する。一方の開口端面は、可動範囲形成部54を介して蓋部12を受ける天面受部として機能する。フランジ部528は、他方の開口端面に、振動方向に突出する突起状の可動範囲形成部54を有する。他方の開口端面は、可動範囲形成部54を介して底部114を受ける底面受部として機能する。
【0091】
また、可動範囲形成部54は、図1図3に示すように、弾性支持部81、82に設けられた位置決め溝808に嵌合して、弾性支持部81、82の径方向の位置決めを行う。可動範囲形成部54(図1及び図9参照)は、径方向の所定の厚みと、径方向よりも長い周方向の長さとを有する軸方向から見て円弧状に形成されている。この可動範囲形成部54の形状に対応して位置決め溝808も形成されている。
【0092】
本実施の形態では、可動範囲形成部54は、位置決め溝808に嵌合することにより、弾性支持部81、82の径方向及び周方向の移動を規制して、コイルボビン部52に対する弾性支持部81、82の位置決めを行っている。
【0093】
可動範囲形成部54を位置決め溝808に嵌合することにより、駆動ユニット13の各個体において、弾性支持部81、82の取付位置をコイルボビン部52に対して一律に設定して、コイルボビン部52に対する弾性支持部81、82の安定した位置出しを行うことができる。
【0094】
これにより、弾性支持部81、82は、複数の構成部品を介して固定体側に固定されることがない。これにより、部品公差に影響されにくい構造で、回転するような周方向及び径方向への移動が規制され、製品として、弾性支持部81、82のバラツキを抑制し、安定した特性を実現できる。
【0095】
可動範囲形成部54は、コイルボビン部52の軸を中心に等間隔に間を空けて設けられている。可動範囲形成部54は、本実施の形態では、コイルボビン部52の軸を中心に等間隔を空けて3か所設けられているが、弾性支持部81、82を位置決めできる個数であれば、いくつ設けられていてもよい。
【0096】
また、3か所の可動範囲形成部54で、位置決め溝808を介して、弾性支持部81、82のそれぞれを受けている。これにより、コイルボビン部52内への可動体20の挿入時の引っ掛かりや摩擦を低減し、組立性良く、可動体20及びコイルボビン部52の位置出しを容易に行うことができる。
【0097】
コイルボビン部52は、上下端面の可動範囲形成部54を、蓋部12の縁部と、底部114の縁部とに当接させた状態で、ケース10に収容され、蓋部12の縁部と底部114の縁部とに固定される。
【0098】
フランジ部527、528は、アウターヨーク58に係合する、アウターヨーク位置出し用の位置決め係合部529(図2参照)を有する。位置決め係合部529は、フランジ部527、528の外周部、つまり、コイルボビン部52の外径部に設けられ、アウターヨーク58を、コイル61、62を囲む位置に位置させる。
【0099】
位置決め係合部529は、アウターヨーク58の被係合部589と係合する。位置決め係合部529は、本実施の形態では、それぞれのフランジ部527、528の外周部において、中央フランジ部526側に開口する凹状の溝であり、凸状の被係合部589と係合する。
【0100】
これら位置決め係合部529と被係合部589との係合により、コイルボビン部52に巻回されるコイル61、62に対してアウターヨーク58をずれること無く配置して、安定した磁気特性を得ることができる。
【0101】
なお、中央フランジ部526及び各フランジ部527、528の同一外径の外周面に、接着部を設け、接着部を介して、中央フランジ部526及び各フランジ部527、528にアウターヨーク58を固着してもよい。これにより、さらに安定した振動特性を実現できる。
【0102】
<コイル>
コイル61、62は、振動アクチュエータ1において、コイル61,62の軸方向(マグネット30の着磁方向)を振動方向として、マグネット30及び第1及び第2ヨーク41、42とともに、振動アクチュエータ1の駆動源の発生に用いられる。コイル61、62は、駆動時(振動時)に通電されて、マグネット30とともにボイスコイルモータを構成する。
【0103】
コイル取付部52b、52cには、コイル61、62が配置され、コイル61、62は、本実施の形態では、第1及び第2ヨーク41、42に対して振動方向と直交する方向で対向する位置に配置されている。
【0104】
コイル61、62は、コイルボビン部52に、コイル軸方向(振動方向)の長さの中心位置が、可動体20の振動方向の長さの中心位置(マグネット30の振動方向の中心位置)と、振動方向で略同じ位置(同じ位置も含む)となるように、保持されている。なお、本実施の形態のコイル61、62は、互いに逆方向に巻回されて構成され、通電時に逆方向に電流が流れるように構成されている。
【0105】
コイル61、62のそれぞれの端部は、中央フランジ部526の端子絡げ部53に絡げて接続されている。コイル61、62は、端子絡げ部53を介して、電源供給部(例えば、図14及び図15に示す駆動制御部203)に接続される。例えば、コイル61、62のそれぞれの端部は、交流供給部に接続され、交流供給部からコイル61、62に交流電源(交流電圧)が供給される。これにより、コイル61、62はマグネットとの間に、互いの軸方向で互いに接離方向に移動可能な推力を発生できる。
【0106】
コイル61、62のコイル軸は、コイルボビン部52の軸、或いは、マグネット30の軸と同軸上に配置されることが好ましい。
【0107】
コイル61、62は、コイルボビン部52の外側から、コイル取付部52b、52cに、コイル線を巻き付けることにより円筒状に形成されている。この構成により、コイル61、62を有するコイルボビン部52は、コイル61、62の円筒状体をそれぞれ維持するために、コイルを自己融着線を用いずに組み立てることができる。つまり、コイルとして空芯コイルを用いる必要がないので、コイル61、62自体の低コスト化、ひいては、振動アクチュエータ全体を低コスト化できる。
【0108】
また、コイル61、62は、ケース10の内側で、外周面をアウターヨーク58により囲まれ、コイル取付部内で封止され、コイル取付部内で接着等により固定される。本実施の形態ではコイル61、62は、ボビン本体部522、中央フランジ部526及び各フランジ部527、528の全てに接着により固定される。よって、コイル61、62はコイルボビン部52との接合強度を大きくすることができ、大きな衝撃が加わる場合でも、可動体がコイルと直接接触する構成と比較して、コイル61、62が破損することがない。
【0109】
アウターヨーク58は、コイルボビン部52の外周面を囲み、コイル61、62を径方向外側で覆う位置に配置される筒状の磁性体である。アウターヨーク58は、コイルボビン部52の端子引出部90及び位置決め係合部529を介してコイルボビン部52に位置決めされる。本実施の形態では、端子引出部90は、アウターヨーク58の開口部582に篏合する。これにより、端子引出部90は、アウターヨーク58の回転止めとして機能する。アウターヨーク58は、コイル61、62とともに固定体側磁気回路を構成し、可動体側磁気回路、つまり、マグネット30及び第1及び第2ヨーク41、42とともに構成する磁気回路において、振動アクチュエータ1の外部への漏れ磁束を防止する。
【0110】
アウターヨーク58は、アウターヨーク58の振動方向の長さの中心を、内側に配置されるマグネット30の振動方向の中心と同じ高さとなる位置となるように配置されている。このアウターヨーク58のシールド効果により、振動アクチュエータの外側への漏えい磁束の低減を図ることができる。
【0111】
また、アウターヨーク58は、磁気回路において、推力定数を大きくして電磁変換効率を高めることができる。アウターヨーク58は、マグネット30の磁気吸引力を利用して、マグネット30とともに磁気ばねとしての機能を有する。磁気ばねは、弾性支持部81、82を機械バネにした際の応力を低下させることができ、弾性支持部81、82の耐久性を向上させることができる。
【0112】
<弾性支持部81、82>
弾性支持部81、82は、可動体20を固定体50に対して振動方向に往復移動自在に支持する。
【0113】
弾性支持部81、82は、可動体20の振動方向で、可動体20を挟み、且つ、可動体20と固定体50との双方に振動方向と交差するように架設されている。弾性支持部81、82は、本実施の形態では、図2図4に示すように、可動体20において振動方向で離間する両端部(上下端部)で互いに離間して配置され、可動体20の径方向外側で固定体50と接続する。本実施の形態では、弾性支持部81、82は、それぞれ振動方向と直交する方向で互いに対向して配置されている。
【0114】
弾性支持部81、82では、それぞれの内周部802が、可動体20の軸方向(振動方向)で離れ、且つ可動体の軸心上に位置する両端部(接合筒部224、244)に、それぞれ接合されている。
【0115】
また、外周固定部806側が、可動体20に、径方向外側(放射方向)に張り出すように取り付けられる。
【0116】
弾性支持部81、82は、可動体20を、マグネット30の軸方向に沿う振動方向で往復振動可能に支持する一対の弾性支持部である。弾性支持部81、82の夫々が、外周固定部(外周部)で固定体50に接合され、内周部802で筒状部材22、24に接合されている。
【0117】
弾性支持部81、82は、可動体20を、振動方向に移動するように構成され、可動体20の可動体の非駆動時及び駆動時において、固定体50に接触しないように支持する。なお、弾性支持部81、82は、可動体20の駆動(振動)時において、可動体20のボビン本体部522の内周面522aに接触しても、磁気回路、具体的には、コイル61、62が損傷することはない。弾性支持部81、82は、可動体20を可動自在に弾性支持するものであれば、どのようなもので構成されてもよい。弾性支持部81、82は、本実施の形態では同様の構成を有する同部材である。
【0118】
弾性支持部81、82は、非磁性体であってもよいし磁性体(具体的には、強磁性体)であってもよい。弾性支持部81、82は、非磁性体の板ばねであれば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼板を用いて構成されてもよい。また、弾性支持部81、82が磁性体であれば、SUS301等のステンレス鋼板を適用可能である。弾性支持部81、82の材料としては、例えば、非磁性材料(SUS304、SUS316等)に比べて、磁性材料(例えば、SUS301)の方が、耐久性が高く、安価であることが知られている。弾性支持部81、82は、本実施の形態では、SUS301で構成されている。
【0119】
弾性支持部81、82は、それぞれ平板状の複数の板ばねである。可動体20は、複数の弾性支持部81、82を3つ以上の板ばねとしてもよい。これら複数の板ばねは、振動方向と直交する方向に沿って取り付けられる。
【0120】
板ばねである弾性支持部81、82は、内側のばね端部である環状の内周部802と、外側のばね端部である外周固定部806と、が弾性変形する平面視円弧状の変形アーム部804により接合された形状を有する。弾性支持部81、82のそれぞれにおいて、変形アーム部804の変形により、内周部802が、外周固定部806に対し、軸方向で変位する。
【0121】
弾性支持部81、82としての板ばねは、本実施の形態では、ステンレス鋼板を用いて板金加工により形成されており、より具体的には、薄い平板円盤状の渦巻型ばねである。弾性支持部81、82は、平板状であるので、円錐状のばねと比較して、位置精度の向上、つまり加工精度の向上を図ることできる。
【0122】
図3図5に示す複数の弾性支持部81、82は、本実施の形態では、渦巻きの向きが同一となる向きで、それぞれ外周側の一端である外周固定部806が固定体50に固定されるとともに、内周側の他端である内周部802が可動体20に固定されている。
【0123】
なお、弾性支持部82は、弾性支持部81と同様の構成であるので弾性支持部81について詳細に説明し、弾性支持部82の説明は省略する。
【0124】
内周部802は、円環状に形成されている。内周部802の外周縁の一部には切り欠き803が形成されている。切り欠き部803は、内周部802をと接合筒部224、244及びフランジ264、284との間でこれらの一方或いは両方と接着する際の接着剤を貯留させる。貯留した接着剤は、内周部802と接合筒部224、244及びフランジ264、284との間で毛細管現象により広がった状態で固化している。これにより、内周部802と接合筒部224、244及びフランジ264、284のうち一方或いは両方とは互いに強固に接合されている。
【0125】
変形アーム部804は、弾性変形可能であり、外周固定部806と内周部802との間に配置されている。変形アーム部804は、一端部で外周固定部806と結合し、他端部で内周部802と結合している。変形アーム部804は、外周固定部806と内周部802とを連結する。
【0126】
変形アーム部804は、本実施の形態では、内周部802の外周に等間隔を空けて、渦巻状に複数配置されている。変形アーム部804は、内周部802の外周に沿ってスパイラル状に延在し、内周部802の外周に対して、隙間を空けて径方向で対向するように配置されている。
【0127】
なお、変形アーム部804は、本実施の形態では、外周固定部806と内周部802との間に、双方を接続するように3つ設けられているが、これに限らず、渦巻状に形成された1本の変形アーム部としてもよい。複数の板ばねの渦の方向が反対向きであれば、複数の板ばねは、互いに座屈方向ないし引っ張り方向に動くことになり、円滑な動きが妨げられることになる。
【0128】
本実施の形態の弾性支持部81、82は、渦巻きの向きが同一となるように可動体20に固定されているので、可動体20の移動量が大きくなったとしても、円滑に動く、つまり、変形することができ、より大きな振幅となり、振動出力を高めることが可能である。
但し、所望の可動体20の振動範囲によっては、複数の弾性支持部81、82の渦巻き方向を互いに反対方向とする設計であってもよい。
【0129】
板状の弾性支持部81、82は、可動体20に対して、弾性支持部81、82のそれぞれの内周部802を、可動体20の振動方向の端部を構成する接合筒部224、244に重ねて配置されている。弾性支持部81、82の内周部802が、上述したように、軸部材26、28のフランジ264、284と接合筒部224、244とで挟持されている。
【0130】
一方、上側の弾性支持部81の外周固定部806は、径方向外側で、コイルボビン部52の上端部に固定されている。具体的には、弾性支持部81の外周固定部806は、コイルボビン部52の上端部を形成する上側のフランジ部527の環状の上端面527aにおいて、可動範囲形成部54を避けた部位に固定される。
【0131】
弾性支持部81の外周固定部806は、ケース10内において、フランジ部527の環状の上端面527aと蓋部12の押圧部128とに挟持されて固定される。なお、上端面527aは、上側(一方側)のフランジ部527の上側(一方側)において、可動範囲形成部54を避けた部分の上側(一方側)の端面を意味する。
【0132】
また、下側の弾性支持部82の外周固定部806は、振動アクチュエータ1において可動体20よりも径方向外側で、コイルボビン部52の下端部に固定されている。具体的には、弾性支持部82の外周固定部806は、コイルボビン部52の下端部を形成する下側のフランジ部528の環状の下端面528aにおいて、可動範囲形成部54を避けた部位に固定される。
【0133】
弾性支持部82の外周固定部806は、ケース10内において、フランジ部528の環状の下端面528aと、底部114の周縁部に設けられた段差部118とに挟持されて固定される。なお、下端面528aは、下側(他方側)のフランジ部528の下側(他方側)において、可動範囲形成部54を避けた部分の上側(他方側)の端面を意味する。
【0134】
外周固定部806は、図3に示すように、弾性支持部81(弾性支持部82も同様)において、最外周部分806aと、最外周部分806aから内側に張り出す内側張出部分806bとを有する。
最外周部分806aは、上下端面527a、528aと、押圧部128、段差部118とで挟持されて固定される。
内側張出部分806bは、外周固定部806において減衰部72が取り付けられる部位である。
【0135】
<減衰部72>
減衰部(ダンパー)72は、弾性支持部81、82に取り付けられ、弾性支持部81、82において発生する振動を効果的に減衰する。
減衰部72は、弾性支持部81、82から外れないように、弾性支持部81、82に取り付けられている。
【0136】
減衰部72は、弾性支持部81(82)における鋭いばね共振を減衰して、共振周波数付近での振動が著しく大きくなることで周波数による振動の差が大きくなることを防止する。これにより、可動体20は、塑性変形する前に、共振峰を抑え、蓋部12及び底部114に接触することなく、広範囲にわたり安定した振動を発生することができ、接触により異音が生じることがない。減衰部72は、弾性支持部81(82)における鋭い振動の発生を防止するものであれば、どのような形状、材料等で形成されてもよい。減衰部72は、例えば、エラストマーにより構成されてもよく、熱硬化樹脂或いは接着剤等の経時変化により硬化する粘性を有する材料により構成されていてもよい。接着剤により減衰部72を構成する場合は、攪拌時に低粘度となり通常時に高粘度となるチクソ性を有する接着剤等を用いてもよい。
【0137】
減衰部72は、径方向で対向する複数の変形アーム部804において、最も外周側の部位と、外周固定部806とに亘って設けられている。
【0138】
減衰部72は、外周固定部806の側面と、変形アーム部804の側面とに接着等により接合されるとともに、外周固定部806の上下面である表裏面、変形アーム部804の表裏面とのうち、少なくとも一方の面側で接着剤等により接合されている。
【0139】
なお、減衰部72は、弾性支持部81、82において固定体50側に近く、組み付け寸法が安定した箇所に設けられている。このように減衰部72は、減衰部72自体の著しい移動がなく、駆動時の減衰部72が弾性支持部81、82から離脱するリスクが抑制された状態である。減衰部72は、弾性支持部81、82に対する位置ずれが生じにくく、振動減衰のバラツキを防止できる。また、減衰部72は弾性支持部81、82からの離脱を防止して、初期の振動特性の変化を抑制できる。
【0140】
減衰部72は、弾性支持部81,82の構造上、形状・位置の最も安定した箇所に設けられた状態となっており、可動体20の振動減衰の特性安定性を実現して振動アクチュエータ1の駆動の信頼性を高めることができる。
【0141】
<ケース10>
ケース10は、図1及び図2に示すように、周壁部112及び底部114を有する有底筒状のケース本体11と、ケース本体11の開口部115を閉塞する蓋部12とを有する。なお、ケース10は、前記ケース10に内設されるコイル61、62との協働により振動方向に可動体20を往復運動させ、十分な推力を生じさせることができる高さ(可動体20の可動域)を有する柱状である。例えば、本実施の形態のケース10は、有底円筒状のケース本体11と蓋部12とにより円柱状に形成されているが、この形状に限らず、楕円柱状、多角柱状であってもよく、振動方向の長さが、振動方向と直交する方向の長さよりも長くても、短くてもよい。なお、本実施の形態における楕円柱状、楕円形状における楕円とは、主に、平行な直線状の部分を含む楕円であり、小判形状を意味する。また、楕円は、長円であってもよい。また、ケース10は、例えば、非磁性体の樹脂等により構成され、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT:Poly Butylene Terephthalate)等の樹脂により成型される。
【0142】
図1図3に示すように、蓋部12及び底部114は、駆動ユニット13の可動体20に可動体20の振動方向で所定間隔を空けて対向して配置され、結合して中空の円柱状体を構成する。
【0143】
蓋部12は、天面部122の外周の一部から垂下して垂下部124が設けられ、垂下部124は、ケース本体11の切り欠き102に係合し、蓋部12とケース本体11とを位置決めして結合させる。
蓋部12及び底部114は、それぞれ可動体20の可動範囲を抑制する。蓋部12及び底部114は、可動体20のハードストップ(可動範囲限定)となる可動範囲抑制部としての機能を有する。
【0144】
具体的には、蓋部12及び底部114は、可動範囲形成部54により形成される可動範囲を規制する。つまり、蓋部12及び底部114は、蓋部12及び底部114から駆動ユニット13(コイルボビン部52)の上下端部の縁部(上下のフランジ部527、528の環状の上下端面527a、528a)までの長さを規制する。これにより、ケース10の中空は、可動体20が移動する空間である可動体空間を形成している。
【0145】
このように、可動体空間は、弾性支持部81、82が塑性変形しない範囲の長さに規定されている。よって、可動体20に、可動体20の可動範囲を超える力が加わる場合でも、弾性支持部81、82は、塑性変形することなく、固定体50(蓋部12及び底部114の少なくとも一方)に接触する。これにより、弾性支持部81、82は破損することなく、振動アクチュエータ1の信頼性を高めることができる。
【0146】
また、蓋部12及び底部114は、それぞれ通気孔126、116が貫通して設けられている。通気孔126、116は、それぞれケース10内において、可動体20の往復振動により形成される圧縮空気を外部に放出する。
【0147】
<振動アクチュエータ1の動作>
図10は、同振動アクチュエータの磁気回路構成を示す模式的に示す図である。図11及び図12は、コイル61、62とマグネット30との相対的な移動状態を示す図である。
【0148】
振動アクチュエータ1の動作について、マグネット30において着磁方向の一方側(図では上側)の表面30a側がN極、着磁方向の他方側(図では下側)の裏面30b側がS極となるように着磁されている場合を一例に図10を用いて、説明する。
【0149】
振動アクチュエータ1では、可動体20は、ばね-マス系の振動モデルにおけるマス部に相当すると考えられるので、共振が鋭い(急峻なピークを有する)場合、振動を減衰することにより、急峻なピークを抑制する。振動を減衰することにより共振が急峻では無くなり、共振時の可動体20の最大振幅値、最大移動量がばらつくことがなく、好適な安定した最大移動量による振動が出力される。
【0150】
振動アクチュエータ1では、図10に示す磁気回路が形成される。振動アクチュエータ1において、コイル61、62は、コイル軸がマグネット30を振動方向で挟む第1及び第2ヨーク41、42からの磁束に直交するように、配置されている。
【0151】
磁気回路では、マグネット30の表面30a側から出射し、第1ヨーク41からコイル61側に放射され、アウターヨーク58を通り、コイル62を介してマグネット30の下側の第2ヨーク42からマグネット30へ入射する磁束の流れmfが形成される。
【0152】
したがって、図10に示すように通電が行われると、マグネット30の磁界とコイル61、62に流れる電流との相互作用により、フレミング左手の法則に従ってコイル61、62に-f方向のローレンツ力が生じる。
【0153】
-f方向のローレンツ力は、磁界の方向とコイル61、62に流れる電流の方向に直交する方向である。コイル61、62は固定体50(コイルボビン部52)に固定されているので、作用反作用の法則に則り、この-f方向のローレンツ力と反対の力が、マグネット30を有する可動体20にF方向の推力として発生する。これにより、マグネット30を有する可動体20側がF方向、つまり蓋部12(蓋部12の天面部122)側に移動する(図11参照)。
【0154】
また、コイル61、62の通電方向が逆方向に切り替わり、コイル61、62に通電が行われると、逆向きのF方向のローレンツ力が生じる。このF方向のローレンツ力の発生により、作用反作用の法則に則り、このf方向のローレンツ力と反対の力が、可動体20に推力(-F方向の推力)として発生し、可動体20は、-F方向、つまり、固定体50の底部114側に移動する(図12参照)。
【0155】
振動アクチュエータ1では、通電していない場合の非駆動時(非振動時)においては、マグネット30とアウターヨーク58との間に磁気吸引力がそれぞれ働き磁気バネとして機能する。このマグネット30とアウターヨーク58との間に発生する磁気吸引力と、弾性支持部81、82の元の形状に戻ろうとする復元力により、可動体20は、元の位置に戻る。
【0156】
振動アクチュエータ1は、コイル61、62を有する固定体50と、コイル61、62の径方向内側に配置され、且つ、コイル61、62の軸方向に磁化されたマグネット30を有する可動体20と、を備える。加えて、振動アクチュエータ1は、可動体20をコイル軸方向である振動方向に、移動自在に弾性保持する平板状の弾性支持部81、82を備える。
【0157】
また、コイル61、62は、コイルボビン部52のボビン本体部522の外周に配置され、ボビン本体部522の内周側に、間隔を空けて、可動体20の外周面20aが配置され、コイル61、62は、その外周面をアウターヨーク58により囲まれている。
【0158】
弾性支持部81、82は、可動体20を、可動体20の非振動時及び振動時に接触しないようにボビン本体部522の内周面522aから所定の間隔を空けて支持する。
【0159】
また、コイル61、62はボビン本体部522の外周に配置される、つまり、コイル61、62がボビン本体部522の外周に巻き付けられる構成であるので、空芯コイルを用いた構成と比較して、低コスト化をはかることができる。更に、振動アクチュエータ1では、ケース10内に駆動ユニット13を収容する構造であり、ケース10の周壁部112の外周面を滑らか面に構成できる。これにより、振動アクチュエータ1を電子機器に取り付ける際に、取付箇所との間に介在させるスポンジ等の緩衝材の貼り付けを確実に容易に行うことができる。
【0160】
コイル61、62は、ケース10内に配置されるコイル保持部であるコイルボビン部52の外周側に配置されている。よって、コイル61、62がコイル保持部の内周側に配置される構成において、組み立ての際の、外部機器と接続するために、コイル線の端部を外側に持ち出す作業を行う必要がない。
【0161】
また、振動アクチュエータ1は、ケース10内に駆動ユニット13を配置することにより構成されているので、高い寸法精度が必要な弾性支持部81、82の固定は、コイルボビン部52に組み付けることにより行うことができる。これにより、弾性支持部81、82の固定を含む可動体20の配置は、コイルボビン部52を基準として決定させることができ、製品としての振動発生方向の精度を高めることができる。具体的には、例えば樹脂等により一つの部品として形成されるコイルボビン部52の寸法精度を上げるだけで、コイル61、62と、弾性支持部81、82を介して取り付けられる可動体20(マグネット30)とを正確な位置関係で位置させることを容易に行うことができる。
【0162】
また、ケース10内に配置されるコイルボビン部52に、アウターヨーク58が、コイル61、62を囲むように取り付けられることにより、ケース10における周壁部112の外周面は面精度の良い樹脂となり滑らかな面となる。これにより、緩衝材を取り付ける部材、例えば、両面テープの接合状態が良好となり、接合強度を高めることができる。
【0163】
また、ケース10は、有底筒状、つまり、カップ状のケース本体11と蓋部12とで形成されている。これにより、周壁部112と底部114とを別体にした構成よりも、部品点数を減らし、組立性の向上を図ることができるとともに、耐衝撃性が向上する。
【0164】
また、蓋部12は、カップ状のケース本体11の開口部115に溶着する或いはカシメることで固定されている。例えば、蓋部12は、ケース本体11内に弾性支持部81、82を介して可動体20が取り付けられたコイルボビン部52を収容した後、ケース本体11の開口部115を閉塞するように、開口部115に嵌合される。そして、蓋部12と開口部115との嵌合部分を溶着する等して、蓋部12は、ケース本体11に固定される。また、開口部115の形状を、開口部115を塞ぐように配置した蓋部12の周囲で、蓋部12の上方に延びるように形成しておき、蓋部12上に延びるその開口部115の開口端を蓋部12にカシメて屈曲して、蓋部12と、ケース本体11とを固定してもよい。
【0165】
なお、振動アクチュエータ1において、可動体20は、固定体50に対して、移動時或いは非移動時に関わらず、ボビン本体部522との間に隙間を空けて支持される。可動体20は、固定体50に対して、常に、ボビン本体部522との間に隙間を空けて支持される。これにより、可動体20は移動中、つまり、振動中に、固定体50への接触が発生することがない。また、衝撃を受けた場合でも、可動体20とボビン本体部522とは、可動体20の外周面20aとボビン本体部522の内周面522aとの間の範囲で相対移動し、可動体20は、コイル61、62に接触することがない。
【0166】
このように振動アクチュエータ1によれば、耐衝撃性を有するとともに、振動表現力の高い好適な体感振動を出力できる。
【0167】
振動アクチュエータ1は、電源供給部(例えば、図14及び図15に示す駆動制御部203)からコイル61、62へ入力される交流波によって駆動される。つまり、コイル61、62の通電方向は周期的に切り替わり、可動体20には、蓋部12の天面部122側のF方向の推力と底部114側の-F方向の推力が交互に作用する。これにより、可動体20は、振動方向(コイル61、62の径方向と直交するコイル61、62の巻回軸方向、或いは、マグネット30の着磁方向)に振動する。
【0168】
以下に、振動アクチュエータ1の駆動原理について簡単に説明する。本実施の形態の振動アクチュエータ1では、可動体20の質量をm[kg]、ばね(ばねである弾性支持部81、82)のばね定数をKspとした場合、可動体20は、固定体50に対して、下式(1)によって算出される共振周波数F[Hz]で振動する。
【0169】
【数1】
【0170】
可動体20は、ばね-マス系の振動モデルにおけるマス部を構成すると考えられるので、コイル61、62に可動体20の共振周波数Fに等しい周波数の交流波が入力されると、可動体20は共振状態となる。すなわち、電源供給部からコイル61、62に対して、可動体20の共振周波数Fと略等しい周波数の交流波を入力することにより、可動体20を効率良く振動させることができる。
【0171】
振動アクチュエータ1の駆動原理を示す運動方程式及び回路方程式を以下に示す。振動アクチュエータ1は、下式(2)で示す運動方程式及び下式(3)で示す回路方程式に基づいて駆動する。
【0172】
【数2】
【0173】
【数3】
【0174】
すなわち、振動アクチュエータ1における質量m[kg]、変位x(t)[m]、推力定数Kf[N/A]、電流i(t)[A]、ばね定数Ksp[N/m]、減衰係数D[N/(m/s)]等は、式(2)を満たす範囲内で適宜変更できる。また、電圧e(t)[V]、抵抗R[Ω]、インダクタンスL[H]、逆起電力定数K[V/(rad/s)]は、式(3)を満たす範囲内で適宜変更できる。
【0175】
このように、振動アクチュエータ1では、可動体20の質量mと板ばねである弾性支持部81、82のばね定数Kspにより決まる共振周波数Fに対応する交流波によりコイル61、62への通電を行った場合に、効率的に大きな振動出力を得ることができる。
【0176】
また、振動アクチュエータ1は、式(2)、(3)を満たし、式(1)で示す共振周波数を用いた共振現象により駆動する。これにより、振動アクチュエータ1では、定常状態において消費される電力は減衰部72による損失だけとなり、低消費電力で駆動、つまり、可動体20を低消費電力で直線往復振動させることができる。また、減衰係数Dを大きくすることにより、高帯域に渡り振動を発生させることができる。
【0177】
本実施の形態によれば、可動体20の上下(振動方向)に板状の弾性支持部81、82を配置しているので、可動体20を上下方向に安定して駆動すると同時に、マグネット30の上下の弾性支持部81、82から効率的にコイル61、62の磁束を分布できる。これにより、振動アクチュエータ1として、高出力の振動を実現することができる。
【0178】
(可動体20の特徴)
本実施の形態の振動アクチュエータ1では、図13に示すように、可動体20は、板状の弾性支持部81、82に挟まれるように、コイルを有するボビン本体部522内に配置されている。
【0179】
可動体20は、円盤状のマグネット30を中央に有する。可動体20は、マグネット30の軸方向の表裏面30a、30bに、嵌合口411、421を有する一対のヨーク41、42と積層した可動積層体15と、一対の接続部21、23とを有する。一対の接続部21、23は、筒状部材22、24及び筒状部材22、24に挿入され基端にフランジ264、284を有する軸部材26、28を夫々有する。
【0180】
嵌合口411、421には、軸部材26、28が挿入され、その先端263、283がマグネット30の表裏面30a、30bに当接している。加えて、筒状部材22、24の先端側端面が、筒状部材22、24に挿入される軸部材26、28の先端263、283とともに、一対のヨーク41、42の嵌合口411、421内でマグネット30の表裏面30a、30bに当接している。
【0181】
一対の弾性支持部81、82は、中央部(内周部802)で、接続部21、23に挟持され、外周部(外周固定部806)で固定体50に接続されている。固定体50は、内部に、可動体20を軸方向に往復振動可能な状態で収容し、且つ、可動体20の径方向外側に配置されたコイル61、62を有する。
可動体20の全長は、中央部のマグネット30の厚みa+軸部材の長さe×2であり、3つの部品だけで構成されている。
【0182】
軸部材26、28のピン本体262、282がマグネット30の表裏面30a、30bに当接する構成である。よって、弾性支持部81、82に取り付けられた可動体20自体の全長は、3つの部材(軸部材26、28及びマグネット30)の軸方向の寸法の合計だけで設定される。
【0183】
軸部材26、28のピン本体262、282がマグネット30に当接しない構成の軸部材を、軸部材J1で示す。この軸部材J1を、振動アクチュエータ1において、軸部材26、28に替えて用いた場合の可動体の全長は、マグネットの厚みa+弾性支持部の厚みd×2+筒状部材の長さb×2+軸部材の厚みc×2分の長さとなる。このように本実施の形態によれば、可動体20の全長を構成する部品点数をはるかに少なくできる。
【0184】
すなわち、可動体20の全長に関わる部品点数が少なくなるので、部品点数が多くなることによる寸法誤差が生じにくくなる。よって、可動体20の全長の寸法の安定性の向上を図ることができ、振動特性の安定化を図ることで、コイル61、62に入力する電圧を最大化すすることができる。
【0185】
このように本実施の形態によれば、振動を減衰しても、安定した高い出力で好適な体感振動を発生させることができる。また、低コストで小型化を図り、耐衝撃性を有し、静音化が図られた安定した性能を有する振動アクチュエータ1を実現できる。
【0186】
また、固定体50は、コイル61、62の保持機能、可動体20に対するコイル61、62の保護機能を兼ねたコイルボビン部52を有する。これにより、固定体50が衝撃を受けた場合でも、その衝撃に耐えるとともに、弾性支持部81、82に変形などのダメージを与えない。また、コイル61、62に対しては、樹脂製のボビン本体部522を介して衝撃が伝わるため、ダメージを抑制することができ、信頼性の高い振動アクチュエータ1を実現できる。
【0187】
(電子機器)
図14及び図15は、振動アクチュエータ1の実装形態の一例を示す図である。図14は、振動アクチュエータ1をゲームコントローラGCに実装した例を示し、図15は、振動アクチュエータ1を携帯端末Mに実装した例を示す。
【0188】
ゲームコントローラGCは、例えば、無線通信によりゲーム機本体に接続され、ユーザが握ったり把持したりすることにより使用される。ゲームコントローラGCは、ここでは矩形板状を有し、ユーザが両手でゲームコントローラGCの左右側を掴み操作するものとしている。
【0189】
ゲームコントローラGCは、振動により、ゲーム機本体からの指令をユーザに通知する。なお、ゲームコントローラGCは、図示しないが、指令通知以外の機能、例えば、ゲーム機本体に対する入力操作部を備える。
【0190】
携帯端末Mは、例えば、携帯電話やスマートフォン等の携帯通信端末である。携帯端末Mは、振動により、外部の通信装置からの着信をユーザに通知するとともに、携帯端末Mの各機能(例えば、操作感や臨場感を与える機能)を実現する。
【0191】
図14及び図15に示すように、ゲームコントローラGC及び携帯端末Mは、それぞれ、通信部201、処理部202、駆動制御部203、及び駆動部としての振動アクチュエータ1である振動アクチュエータ204、205、206を有する。なお、ゲームコントローラGCでは、複数の振動アクチュエータ204、205が実装される。
【0192】
ゲームコントローラGC及び携帯端末Mにおいて、振動アクチュエータ204、205、206は、端末の主面と振動アクチュエータ204、205、206の振動方向と直交する面、ここでは底部114の底面とが平行となるように実装されることが好ましい。端末の主面とは、ユーザの体表面に接触する面であり、本実施の形態では、ユーザの体表面に接触して振動を伝達する振動伝達面を意味する。なお、端末の主面と、振動アクチュエータ204、205、206の底部114の底面とが直交するように配置されてもよい。
【0193】
具体的には、ゲームコントローラGCでは、操作するユーザの指先、指の腹、手の平等が接触する面、或いは、操作部が設けられた面と、振動方向が直交するように振動アクチュエータ204、205が実装される。また、携帯端末Mの場合は、表示画面(タッチパネル面)と振動方向が直交するように振動アクチュエータ206が実装される。これにより、ゲームコントローラGC及び携帯端末Mの主面に対して垂直な方向の振動が、ユーザに伝達される。
【0194】
通信部201は、外部の通信装置と無線通信により接続され、通信装置からの信号を受信して処理部202に出力する。ゲームコントローラGCの場合、外部の通信装置は、情報通信端末としてのゲーム機本体であり、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信規格に従って通信が行われる。携帯端末Mの場合、外部の通信装置は、例えば基地局であり、移動体通信規格に従って通信が行われる。
【0195】
処理部202は、入力された信号を、変換回路部(図示省略)により振動アクチュエータ204、205、206を駆動するための駆動信号に変換して駆動制御部203に出力する。なお、携帯端末Mにおいては、処理部202は、通信部201から入力される信号の他、各種機能部(図示省略、例えばタッチパネル等の操作部)から入力される信号に基づいて、駆動信号を生成する。
【0196】
駆動制御部203は、振動アクチュエータ204、205、206に接続されており、振動アクチュエータ204、205、206を駆動するための回路が実装されている。駆動制御部203は、振動アクチュエータ204、205、206に対して駆動信号を供給する。
【0197】
振動アクチュエータ204、205、206は、駆動制御部203からの駆動信号に従って駆動する。具体的には、振動アクチュエータ204、205、206において、可動体20は、ゲームコントローラGC及び携帯端末Mの主面に直交する方向に振動する。
【0198】
可動体20は、振動する度に、蓋部12の天面部122又は底部114にダンパーを介して接触するようにしてもよい。この場合、可動体20の振動に伴う蓋部12の天面部122又は底部114への衝撃、つまり、筐体への衝撃が、ダイレクトにユーザに振動として伝達される。特に、ゲームコントローラGCでは、複数の振動アクチュエータ204、205が実装されているため、入力される駆動信号に応じて、複数の振動アクチュエータ204、205のうちの一方、または双方を同時に駆動させることができる。
【0199】
ゲームコントローラGC又は携帯端末Mに接触するユーザの体表面には、体表面に垂直な方向の振動が伝達されるので、ユーザに対して十分な体感振動を与えることができる。ゲームコントローラGCでは、ユーザに対する体感振動を、振動アクチュエータ204、205のうちの一方、または双方で付与でき、少なくとも強弱の振動を選択的に付与するといった表現力の高い振動を付与できる。
【0200】
このように本実施の形態の振動アクチュエータを用いることにより、ゲームコントローラGC又は携帯端末Mにおいて、優れた振動特性を安定的に得ることが可能となり、かつ静音での駆動を実現することができる。
【0201】
ケース10として、有底筒状としたケース本体11と、蓋部12とにより構成したが、形状はこれらに限定されず、駆動ユニットを収容可能な構成であれば、どのような形状であってもよい。
【0202】
ケース本体11を第1ケースとし、蓋部12を第2ケースとして、それぞれを有底筒状に形成したり、ケース本体11を底部と周壁部とに分割した構成としてもよい。また、天板部、底部及び周壁部のように3分割以上の分割片で構成してもよい。
【0203】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0204】
また、本発明に係る振動アクチュエータは、ゲームコントローラGC及び携帯端末M以外の携帯機器(例えば、タブレットPCなどの携帯情報端末、携帯型ゲーム端末、ユーザが身につけて使用するウェアラブル端末)に適用する場合に好適である。また、本実施の形態の振動アクチュエータ1は、上述した携帯機器の他、振動を必要とする美顔マッサージ器等の電動理美容器具にも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0205】
本発明に係る振動アクチュエータは、小型薄型化が可能な、安定して高出力で振動でき、ゲーム機端末或いは携帯端末等の電子機器に搭載されるものとして有用である。
【符号の説明】
【0206】
1 振動アクチュエータ
10 ケース
11 ケース本体
12 蓋部
13 駆動ユニット
15 可動積層体
20 可動体
20a 外周面
20b 可動体側平面部
21、23 接続部
22、24 筒状部材
26 第1軸部材
28 第2軸部材
30 マグネット
30a 表面
30b 裏面
41 第1ヨーク
42 第2ヨーク
50 固定体
52 コイルボビン部
52b、52c コイル取付部
53、53-1、53-2 端子絡げ部
54 可動範囲形成部
58 アウターヨーク
61、62 コイル
72 減衰部
81、82 弾性支持部
102 切り欠き
112 周壁部
114 底部
115 開口部
116、126 通気孔
118 段差部
122 天面部
124 垂下部
128 押圧部
201 通信部
202 処理部
203 駆動制御部
204、205、206 振動アクチュエータ
222、242 挿入筒部
224、244 接合筒部
262、282、362 ピン本体(軸部材)
264、284、364 フランジ
268、288、368 スリット(溝部)
362a 錘台部
411、421 嵌合口(開口部)
522 ボビン本体部
522a 内周面
526 中央フランジ部
527、528 フランジ部
527a 上端面
528a 下端面
529 位置決め係合部
582 開口部
589 被係合部
802 内周部
804 変形アーム部
806 外周固定部
806a 最外周部分
806b 内側張出部分
808 位置決め溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15