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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001765
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20221226BHJP
   A61L 29/04 20060101ALI20221226BHJP
   A61L 29/14 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
A61M25/00 540
A61M25/00 650
A61L29/04 100
A61L29/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102688
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】591245624
【氏名又は名称】株式会社東海メディカルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏成
(72)【発明者】
【氏名】社本 譲
(72)【発明者】
【氏名】中村 大翔
【テーマコード(参考)】
4C081
4C267
【Fターム(参考)】
4C081AC05
4C081AC08
4C081BB07
4C081CA021
4C081CC01
4C081CE11
4C081DA03
4C267AA01
4C267BB02
4C267BB07
4C267BB40
4C267BB63
4C267CC08
4C267EE03
4C267GG02
4C267GG31
4C267GG32
4C267GG35
4C267HH11
(57)【要約】
【課題】
体内の温度を感知して、その形態、剛性、応力緩和性が変化することによって、様々な使用用途を有するカテーテルを提供する。
【解決手段】
本発明にかかるカテーテル100は、ガラス転移温度は23℃~38℃の間である4-メチル-1-ペンテンとα-オレフィン共重合体および該重合体を含む組成物を使用してなり、先端部が体内の温度により、軟質化又は形状記憶されている所定の形状に変形することを特徴とする。これにより、体内で所定の形状に変形させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度は23℃~38℃の間である4-メチル-1-ペンテンとα-オレフィン共重合体および該重合体を含む組成物を使用してなり、
先端部が体内の温度により、軟質化又は形状記憶されている所定の形状に変形することを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記所定の形状は、湾曲形状であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記所定の形状は、螺旋形状であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記所定の形状は、蛇腹形状であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記カテーテルに感温染料カプセルが混合されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記感温染料カプセルは、前記カテーテルに所定間隔で配置されていることを特徴とする請求項5に記載のカテーテル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓血管や血管造影のカテーテルの末端における屈曲部が患者の中で迅速に簡単に調整することができるカテーテル装置が提案されている(特許文献1)。かかるカテーテル装置は、カテーテルの曲げられた末端セグメントの長さと少なくとも同じ長さだけ、該カテーテルより数センチメートル短いシースを介して延びていて、カテーテルの末端における曲線部の形状は、カテーテル上でシースを進めることによって変化することができる。シースは、十分な剛性を備えており、その結果、シースがカテーテル上を進んだとき、カテーテルの曲線部に形状が徐々に変化しながら、カテーテルの曲線部がまっすぐになる方向に向かうことができる、とするものである。
【0003】
しかしながら、かかるカテーテルの曲線部の剛性は、一定であり、剛性自体を変更させることができるものではなかった。また、曲線部の形状は固定されており、カテーテル作製後にその形態を特定したりすることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-231068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、体内の温度を感知して、その形態、剛性、応力緩和性が変化することによって、様々な使用用途を有するカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明にかかるカテーテルは、
ガラス転移温度は23℃~38℃の間である4-メチル-1-ペンテンとα-オレフィン共重合体および該重合体を含む組成物を使用してなり、
先端部が体内の温度により、軟質化又は形状記憶されている所定の形状に変形することを特徴とする。
【0008】
本発明にかかるカテーテルは、4-メチル-1-ペンテンとα-オレフィン共重合体および該重合体を含む組成物「アブソートマー(登録商標)」(三井化学株式会社製)を使用してなる。かかる組成物は、ガラス転移温度内では、軟化しやすく、また、形状記憶性を有することから、体外に存在する場合には比較的硬質であり、体内に挿入することによって、徐々に軟化し、形状記憶されている形態に変形するので、かかる性質を利用して様々なカテーテルとして使用することができる。
【0009】
また、本発明にかかるカテーテルにおいて、前記所定の形状は、湾曲形状であることを特徴とするものであってもよい。
【0010】
先端部の形状記憶の所定形状を湾曲形状にすることによって、病変部位に応じて適切な湾曲形状を選択することができるので、カテーテル手技において、デバイスを挿通困難な箇所へ挿通させたり、塞栓箇所へ素早くかつ容易に到達させたりすることができるようになる。これにより、手技時間を短縮化することができ、患者にとって低侵襲で良好な予後を期待することができるカテーテルを提供することができる。
【0011】
さらに、本発明にかかるカテーテルにおいて、前記所定の形状は、螺旋形状であることを特徴とするものであってもよい。
【0012】
先端部の形状記憶の所定形状を螺旋形状にすることによって、ステントレトリーバーとして使用したり、動脈瘤の治療において行われるコイル塞栓術の塞栓コイルとして使用したりすることができる。
【0013】
さらに、本発明にかかるカテーテルにおいて、前記所定の形状は、蛇腹形状であることを特徴とするものであってもよい。
【0014】
先端部の形状記憶の所定形状を蛇腹形状にすることによって、バルーンカテーテルの代わりとして使用することができる。
【0015】
さらに、本発明にかかるカテーテルにおいて、前記カテーテルに感温染料カプセルが混合されていることを特徴とするものであってもよい。
【0016】
カテーテルに感温染料カプセルを混合することによって、温度によってカテーテルの色が変化するため、体内の温度を測定することができ、アブソートマーの形状記憶に好適なカテーテルとすることができる。
【0017】
さらに、本発明にかかるカテーテルにおいて、前記感温染料カプセルは、カテーテルに所定間隔で配置されていることを特徴とするものであってもよい。
【0018】
かかる構成を採用することによって、体内に挿入した長さや、体内の温度が異なる部位を測定するメジャーカテーテルとして使用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかるカテーテルによれば、体内の温度を感知して、その形態、剛性、応力緩和性が変化することによって、様々な使用用途を有するカテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、第1実施形態にかかるカテーテル100の使用例を示す図である。
図2図2は、実施例1にかかるカテーテル100の使用例を示す図である。
図3図3は、実施例2にかかるカテーテル110の使用例を示す図である。
図4図4は、実施例3にかかるカテーテル120の使用例を示す図である。
図5図5は、実施例4にかかるカテーテル130の使用例を示す図である。
図6図6は、第2実施形態にかかるカテーテル150の使用例を示す図である。
図7図7は、第2実施形態にかかるカテーテル150の別使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明にかかるカテーテル100の実施形態について、図を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0022】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかるカテーテルは、ガラス転移温度が23℃~38℃の間である4-メチル-1-ペンテンとα-オレフィン共重合体および該重合体を含む組成物(以下「4-メチルペンテン-1系重合体」という。)「アブソートマー(登録商標)」(三井化学株式会社製)を使用して作製されている。4-メチルペンテン-1系重合体は、感温性(温度依存性)があり、外部雰囲気下で硬く、体温により柔軟性が変化し体内の温度で柔らかくなる性質がある。また、形状記憶性を有し、体内に挿入することによって徐々に軟化し、形状記憶されている形態に戻るように変形することができる。
【0023】
かかるカテーテル100の第1実施形態について説明する。図1Aに第1実施形態にかかるカテーテル100が示されている。第1実施形態にかかるカテーテル100は、先端部10をJ字形状に湾曲した曲げ形状に記憶したものである。このようなカテーテル100は、4-メチルペンテン-1系重合体を含む樹脂で通常のカテーテルと同様の方法(例えば押出成形等)で直線のカテーテル100を作製した後、一旦ガラス転移点温度以上の温度で所定の形状、本実施形態では先端部10をJ字形状に曲げた形状に形状づけを行い冷却後、直線に変形し直すことによって、軟化した場合には冷却前のJ字形状に湾曲した曲げ形状に形状記憶され、体温で軟化した場合に先端部10は所定の形状に変形することになる。
【0024】
このようにして作製されたカテーテル100によれば、以下のような有利な点がある。一般的に従来のカテーテル200を血管内に挿入する場合には最終的に挿入する血管に応じて先端に曲げ加工又は曲げ成形がされていることが多い。この場合、図1Bに示すように、カテーテル200の先端をインサーター、シース又は各種コネクタ50などに差し込もうとするときに、先端の曲げが引っ掛かってしまうことがある。これに対し、本発明にかかるカテーテル100によれば、差し込む段階では外部雰囲気に晒されているので、直線形状をしているため、インサーター、シース又は各種コネクタ50に差し込み易く、体内に入ってから体内の温度で変形するので、差し込んだ後は外れ難くなり、取り扱いがしやすいカテーテルとすることができる。
【0025】
また、体温の温度によって軟質化する前において、外部雰囲気にある場合には比較的剛性が高い硬質なカテーテルであるので、体内の挿入時にはプッシュ性が高く挿入しやすく、その後、患部に到達した後は体温によって徐々に軟質化し、所定の形状に変化するので、血管選択しやすく抹消血管へ到達しやすくすることができる。
【0026】
こうした性質を利用して以下のようなカテーテルとして利用することができる。
【0027】
(実施例1)
通常の直線状のカテーテルでは挿通することが困難な箇所の血管を挿入する際に使用することもできる。例えば、先端部10が角度づけされた曲げ形状に記憶されたカテーテル100は、図2Aに示すように、左鎖骨下動脈91から大動脈弓92を介して、左総頸動脈93にカテーテル100を挿通したい場合、例えば、肘の付け根から左鎖骨下動脈91に通し、大動脈弓92にカテーテル100を挿通するときは、まだ、体温によってカテーテル100が軟化する前であり、直線状でかつ剛性も高いのでプッシュ性も高くスムーズに挿入させることができる。カテーテル100の先端部10が大動脈弓92まで到達したら、しばらく待って血管内の体温によりカテーテル100の先端部10が記憶された湾曲形状に変形するのを待つ。これにより、湾曲した形状に変形すると、鋭角の位置にある左総頸動脈93の方向にカテーテル100の先端部10が向くことになり、総頸動脈93にカテーテル100を挿入しやすくすることができる。このように、一般的に挿通困難な箇所の血管にも挿入しやすいカテーテルを提供することができる。
【0028】
(実施例2)
次に、ステントレトリーバーとして使用する例について説明する。ステントレトリーバーとして使用される実施例2にかかるカテーテル110が図3に示されている。実施例2にかかるカテーテル110は、先端部10が螺旋状に形状づけされて記憶されている。先端部10の形状を記憶させる方法は、第1実施形態と同様である。一般的にステントレトリーバーは、バスケット状に形状記憶されたニッケルチタンワイヤ等の金属線で作製されており、デリバリーカテーテル等から露出することによってバスケット状に展開し、血栓等を絡め取って回収する。この実施例2にかかるカテーテル110は、デリバリーカテーテル51内を送っている間は、体温の影響を受けにくく直線状で剛性が高い。この状態からカテーテル110をデリバリーカテーテル51から血管94内に露出しても直ちに変形することはなく、剛性の高い直線状に保たれる。そのため、剛性の高い状態のまま押し込むことによって、血栓95内を貫通させることができる。この状態のまましばらく待つと、体温によってカテーテル110の先端部10が螺旋状に変化し、血栓95と絡まることになる。この状態からカテーテル110を引き抜くことで血栓を絡めることができる。このように、カテーテル110の先端部10の螺旋形状が、従来の金属線のバスケット状の部分の機能を果たすことで、ステントレトリーバーとして使用することができる。
【0029】
金属線のステントレトリーバーを使用した場合と比較して、金属線と比較して樹脂線は柔らかいため、血管を損傷するリスクを低減することができる。また、金属線は鋭角に曲げたり、形状づけをするとキンクしやすくなったり、折れてしまったりすることがあるが、樹脂線は柔らかいため、こうした不具合を防止しつつ、複雑な形状付けを行うことができるという効果がある。
【0030】
(実施例3)
さらに、図4に示すように、動脈瘤96の治療において行われるコイル塞栓術の塞栓コイルとして使用することができる。本実施例にかかるカテーテル120は、先端が球状になるように形状記憶がなされている。このように形成されたカテーテル120は、デリバリーカテーテル51を利用して動脈瘤96まで送出し、動脈瘤96内にカテーテル120を配置することで、体温によって球状に変形し、塞栓コイルと同様に機能させることができる。このように体温で球状に変形するので、動脈瘤96から飛び出しにくくすることができる。また、金属線の塞栓コイルは、一般的には柔らかさを付与するために極細の金属線をコイル巻にしており、非常に作製が困難で高価なものであるが、本実施例によるカテーテル120では、塞栓コイルに相当する部分が樹脂で作製され体温で柔らかくなり、自動的に球状に変形するため、コイル形状に作製する必要がなく安価に作製することが可能となる。
【0031】
(実施例4)
さらに、バルーンカテーテルの代替として使用することができる。本実施例にかかるカテーテル130は、図5に示すように、先端部10が蛇腹状に変形し直径が太くなるような形態に形状記憶がなされている。かかるカテーテル130によれば、例えば、血栓飛び防止用のバルーンカテーテルの代替として使用することができる。通常のバルーンカテーテルの場合、血管内でバルーンを膨らますことによって、血管内を閉塞し、血栓の飛びをバルーンで阻止するものであるが、本実施例にかかるカテーテル130は、デリバリーカテーテル51によって、所望の場所までカテーテル130を挿入し、先端部10をデリバリーカテーテル51から露出して、留置位置に先端部10を配置することによって、先端部10が蛇腹状に変形することによって、径が太くなり、血管を塞栓することができる。このように、本実施例にかかるカテーテル130によれば、バルーン拡張流体を制御する必要がなく、容易に血管を塞栓することができる。
【0032】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかるカテーテル150は、第1実施形態にかかるカテーテル100に対して、感温染料カプセルを混合して、色が変形するように作製されている。感温染料は温度によって、可逆的に(発色)←→(消色)の変化をする成分をマイクロカプセル化したものであり、ある特定の温度より低温側では発色し、高温側では消色したりすることができる。このような感温染料カプセルを混合することによって、体内の温度によってカテーテル150の色を変化させることができる。感温染料カプセルとしては、例えば、株式会社日本カプセルプロダクツ社製の感温染料カプセルが好適に使用することができる。
【0033】
これにより、例えば、図6に示すように、胃や腸内を内視鏡画面を利用することによって、画面にてカテーテル150の色を視認することによって、体内部位の接触検温を行うことができる。
【0034】
また、図7に示すように、感温染料カプセルを先端から所定間隔ごとに配置することによって、挿入した長さ、又は体内の温度が異なる部位を測定するメジャーカテーテルとすることができる。例えば、がん細胞などの病変部を焼き付けて死滅させる手技(焼灼術)による治療を行った場合に、体内に挿入したカテーテルを取り出して色を確認することで病変部が目的の温度に達したかどうか判断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
上述した実施の形態で示すように、様々な場面で応用可能なカテーテルとして利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10…先端部、50…各種コネクタ、51…デリバリーカテーテル、91…左鎖骨下動脈、92…大動脈弓、93…総頸動脈、94…血管、95…血栓、96…動脈瘤、100…カテーテル、110…カテーテル、120…カテーテル、130…カテーテル、150…カテーテル、200…カテーテル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7