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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176500
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】バスバー及びバスバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 53/00 20060101AFI20231206BHJP
   B21D 22/02 20060101ALI20231206BHJP
   B21D 7/022 20060101ALI20231206BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20231206BHJP
   H01B 5/02 20060101ALI20231206BHJP
   B21D 11/20 20060101ALI20231206BHJP
   B21D 7/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B21D53/00 D
B21D22/02 A
B21D7/022
H01B5/00 Z
H01B5/02 Z
B21D11/20 A
B21D7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088810
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】591093494
【氏名又は名称】株式会社ミスズ工業
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】窪田 貴則
(72)【発明者】
【氏名】望月 英治
【テーマコード(参考)】
4E063
4E137
5G307
【Fターム(参考)】
4E063AA08
4E063BA01
4E063CA02
4E063MA21
4E137AA11
4E137BA04
4E137BA05
4E137BB01
4E137CA02
4E137EA40
4E137GA06
4E137GB08
5G307AA01
5G307CA02
5G307CB03
(57)【要約】
【課題】加工残滓の発生がなく材料費の低減を可能にし、曲げ加工時に発生する膨らみが表裏両面より突出することを防止し、生産効率を高めることが可能なバスバー及びバスバーの製造方法を実現すること。
【解決手段】バスバー10は、展延性を有する平角帯状のワークWをエッジワイズ曲げ加工によって、直線部11a,11b、11cと屈曲部12a、12bとが同一平面上に成形される。少なくとも屈曲部12a、12bの屈曲範囲14,25各々には、幅方向所定位置15,26から屈曲部12a,12bの内側端面16,27が薄くなるように傾斜する斜面17,28が設けられており、斜面17,18は、表面18及び裏面19の同じ位置に設けられている。屈曲部12a,12bに斜面17,28を設けることによって、エッジワイズ曲げ加工時に発生する膨らみDが表裏両面より突出することを防止し、生産効率を高めることが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
展延性を有する平角帯状のワークをエッジワイズ曲げ加工によって、直線部と屈曲部とが同一平面上に成形されたバスバーであって、
少なくとも前記屈曲部の屈曲範囲には、幅方向所定位置から前記屈曲部の内側端面が薄くなるように傾斜する斜面が設けられており、
前記斜面は、表面及び裏面の同じ位置に設けられている、
ことを特徴とするバスバー。
【請求項2】
請求項1に記載のバスバーにおいて、
前記幅方向所定位置が前記内側端面から全幅の1/10~1/2の位置にあり、前記内側端面の残り厚みが総厚みの1/2~3/4の範囲にある、
ことを特徴とするバスバー。
【請求項3】
請求項1に記載のバスバーにおいて、
前記屈曲範囲の端部から前記表面又は前記裏面に達するまで徐々に浅くなる第2斜面が成形されており、前記斜面と前記第2斜面との接続部は境界線ができないように滑らかに連続されている、
ことを特徴とするバスバー。
【請求項4】
請求項1に記載のバスバーにおいて、
2か所の前記屈曲部に挟まれた前記直線部には、前記エッジワイズ曲げ加工の際に位置案内として使用可能な切欠き状に表裏を貫通する案内凹部、又は貫通する案内孔が設けられている、
ことを特徴とするバスバー。
【請求項5】
バスバーの展開長さを有する平角帯状のワークに、前記バスバーの屈曲範囲に幅方向所定位置から一方の側面側が薄くなるように傾斜する斜面を成形する工程と、
複数の前記ワークの前記斜面をパンチ側に向け、かつ厚み方向に重ね合わせてノックアウトに前記ワークをセットする工程と、
前記パンチ及びダイを相対的に動作し、複数の前記ワークを同時に屈曲させるエッジワイズ曲げ加工工程と、
を含む、
ことを特徴とするバスバーの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のバスバーの製造方法において、
前記ワークをセットする工程は、前記ワークの2か所の屈曲部に挟まれた直線部に設けられ、前記斜面が成形されている側面に対して反対側の側面に設けられた切欠き状の案内凹部を前記ノックアウトに設けられた案内凸部にセットする、
ことを特徴とするバスバーの製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載のバスバーの製造方法において、
前記ワークをセットする工程は、前記ワークの2か所の屈曲部に挟まれた直線部に設けられる表裏を貫通する案内孔に、複数の前記ワークを串刺しにした案内ピンの両端を前記ノックアウトに設けられた案内部にセットする、
ことを特徴とするバスバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバー及びバスバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平面方向に屈曲部を有する幅が厚みと同等以上の製品は、製品よりも大きい平板の原料から金型を用いた打抜き加工、ワイヤーカットやレーザーカットなどによって製造されることが一般的である。しかし、このような製造方法では、製品の成形後に加工残滓が発生し、製品よりも残滓が大きくなる場合があり、材料使用効率が悪いという課題がある。材質が銅系材料やアルミニウムなどの場合には、昨今の材料の価格高騰によって材料費を抑えることが喫緊の課題となっている。
【0003】
平面方向に屈曲部を有する金属製品において、加工残滓を発生させない加工方法として平角帯状の材料を所定位置で屈曲させるエッジワイズ曲げ加工がある。しかし、エッジワイズ曲げ加工は、打抜き加工などに比べて高度な加工技術が要求される。
【0004】
特許文献1には、エッジワイズ曲げ加工を用いて屈曲部を成形するバスバーの製造法及びバスバーが開示されている。このバスバーの製造方法は、所定長さの平角帯状の金属材料のエッジワイズ曲げ加工の曲げ内周部に当たる部分に凹部、曲げ外周部に当たる部分に凸部を成形し、この凹部及び凸部の位置で屈曲させ成形するというものである。
【0005】
特許文献2に記載のバスバーは、平角帯状の金属材料の屈曲範囲に、板面と交差する方向に交互に折り返された波形部が設けられており、この波形部の一方側の側縁の山間ピッチが他方の側縁の山間ピッチを小さくすることにより屈曲部(湾曲部)を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-67432号公報
【特許文献2】特開2014-238933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のバスバーは、従来の打抜き加工による成形に比べ、材料使用効率が良くなっている。しかし、エッジワイズ曲げ加工前の原料(以降、ワークという)には、曲げ内周部に凹部、曲げ外周部に凸部を設けていることから、ワーク成形のための打抜き加工が必要になり1工程増加し、打抜き加工では加工残滓が発生することになる。また、曲げ内周部の凹部、曲げ外周部に凸部を設けることによって曲げ易くなるが、屈曲部の表裏両面に膨らみが発生する。このような膨らみが発生すると、複数の金属材料を重ね合わせてエッジワイズ曲げ加工をしたときに相互間に隙間ができ、バスバーが反ったり、変形したりすることがあるため、複数のワークを重ね合わせて同時に曲げ加工をすることができず、単品加工にならざるを得ず生産効率を高めることができないという課題もある。
【0008】
上記特許文献2に記載のバスバーは、ワークの屈曲する範囲に波形部を設け、内周側の山間ピッチを外周側の山間ピッチを大きくすることにより金属材料を屈曲(湾曲)させているため、波形部を形成する金型が複雑になってしまう。また、このような波形部を形成した分だけ原料長が長くなり、必ずしも材料使用効率がよいとはいえない。また、波形部は、他の屈曲部以外の直線部より厚くなるため、バスバーの使用箇所が限定されることが考えられる。さらに、このバスバーは、波形部を成形することによって屈曲させているため、複数のワークを重ね合わせて同時に曲げ加工をすることができず、単品加工にならざるを得ず生産効率を高めることができないという課題もある。
【0009】
そこで、本発明は、このような課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、加工残滓の発生がなく材料費の低減を可能にし、エッジワイズ曲げ加工時に発生する膨らみが表裏両面より突出することを防止し、生産効率を高めることが可能なバスバー及びバスバーの製造方法を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明のバスバーは、展延性を有する平角帯状のワークをエッジワイズ曲げ加工によって、直線部と屈曲部とが同一平面上に成形されたバスバーであって、少なくとも前記屈曲部の屈曲範囲には、幅方向所定位置から前記屈曲部の内側端面が薄くなるように傾斜する斜面が設けられており、前記斜面は、表面及び裏面の同じ位置に設けられていることを特徴とする。
【0011】
[2]本発明のバスバーは、前記幅方向所定位置が前記内側端面から全幅の1/10~1/2の位置にあり、前記内側端面の残り厚みが総厚みの1/2~3/4の範囲にあることが好ましい。
【0012】
[3]本発明のバスバーは、前記屈曲範囲の端部から前記表面又は前記裏面に達するまで徐々に浅くなる第2斜面が成形されており、前記斜面と前記第2斜面との接続部は境界線ができないように滑らかに連続されていることが好ましい。
【0013】
[4]本発明のバスバーは、2か所の前記屈曲部に挟まれた前記直線部には、前記エッジワイズ曲げ加工の際に位置案内として使用可能な切欠き状に表裏を貫通する案内凹部、又は貫通する案内孔が設けられていることが好ましい。
【0014】
[5]本発明のバスバーの製造方法は、バスバーの展開長さを有する平角帯状のワークに、前記バスバーの屈曲範囲に幅方向所定位置から一方の側面側が薄くなるように傾斜する斜面を成形する工程と、複数の前記ワークの前記斜面をパンチ側に向け、かつ厚み方向に重ね合わせてノックアウトに前記ワークをセットする工程と、前記パンチ及びダイを相対的に動作し、複数の前記ワークを同時に屈曲させるエッジワイズ曲げ加工工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
[6]本発明のバスバーの製造方法においては、前記ワークをセットする工程は、前記ワークの2か所の屈曲部に挟まれた直線部に設けられ、前記斜面が成形されている側面に対して反対側の側面に設けられた切欠き状の案内凹部を前記ノックアウトに設けられた案内凸部にセットすることが好ましい。
【0016】
[7]本発明のバスバーの製造方法において、前記ワークをセットする工程は、前記ワークの2か所の屈曲部に挟まれた直線部に設けられる表裏を貫通する案内孔に、複数の前記ワークを串刺しにした案内ピンの両端を前記ノックアウトに設けられた案内部にセットすることが好ましい。
【0017】
なお、上記平角帯状のワークとは、断面形状が矩形の長尺材料であって、幅寸法が厚み寸法より大きい、エッジワイズ曲げ加工前のバスバーの原料となるものをいう。また、上記表面及び裏面とは、バスバーを被接続部材に接続する面である。また、エッジワイズ曲げ加工とは、平角帯状のワークを幅方向に曲げる(屈曲又は湾曲する)加工方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のバスバーは、平角帯状のワークをエッジワイズ曲げ加工によって屈曲させており、直線部と屈曲部とが同一平面上に成形されたものである。そのため、ワークは、単純な長尺材料を所定長さに切断して成形したものであり、従来の打抜き加工に対して加工残滓の発生がなく、材料費を低減することが可能となる。
【0019】
本発明のバスバーは、屈曲部の屈曲範囲に、幅方向所定位置から一方の幅方向の内側端面が薄くなるように傾斜する斜面が設けられたワークを成形し、エッジワイズ曲げ加工によって斜面部で屈曲させている。エッジワイズ曲げ加工によって発生する厚み方向の膨らみ量が、斜面を設けることによって斜面がない場合に比べて小さくなり、しかも、この膨らみが斜面内に収まり、バスバーの表面及び裏面から突出することがない。そのことから、この膨らみがバスバーの総厚みに影響することがなく、複数のワークを厚み方向に重ね合わせてエッジワイズ曲げ加工を実施することが可能となり、生産性を高めることが可能となる。
【0020】
以上のことから、本発明によれば、加工残滓の発生がなく材料費の低減を可能にし、曲げ加工時に発生する膨らみが表裏両面より突出することを防止し、生産効率を高めることが可能なバスバー及びバスバーの製造方法を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のバスバー10の1構成例を示す図である。
図2】バスバー10に、斜面17,28を設けることの意味を説明する図である。
図3】バスバー10を成形する前の原料となるワークWを示す図である。
図4】バスバー10の製造方法の第1例を説明する図である。
図5】ワークWを屈曲させてバスバー10を成形する状況を示す図である。
図6】バスバー10の製造方法の第2例を説明する図である。
図7】従来のバスバー50の製造方法を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態に係るバスバー10及びバスバー10の製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各図は、縦横比や縮尺が実際とは異なる模式図である。
【0023】
まず、従来から用いられているバスバー50の製造方法について図7を参照して説明する。なお、以下に説明する各バスバーは、配電盤や制御盤に大容量の電源を接続するための部材である。
【0024】
図7は、従来のバスバー50の製造方法を説明する平面図である。従来の製造方法によれば、バスバー50は、シート又は帯状の原料51から金型を用いて打ち抜き成形される。図示するバスバー50の例は、2か所に屈曲部52,53を有する略J字形状をしている。打抜き加工は、単位時間当たりの生産数が多く生産効率が高い製造方法である。しかし、製品であるバスバー50よりも打抜き加工後の残滓54の面積がはるかに大きく、加工後に残滓54が多く発生することから材料使用効率が悪いという課題がある。バスバー50として使用される材質は、通常、無酸素銅やタフピッチ銅などの銅系材料やアルミニウムなどであって、昨今の材料価格の高騰により材料費を抑えることが喫緊の課題となっている。
【0025】
(バスバー10の構成)
図1は、本発明のバスバー10の1構成例を示す図である。図1(a)は、平面図、図1(b)は、図1(a)のA-A切断線で切断した断面図、図1(c)は、図1(a)のB-B切断線で切断した断面図である。なお、図1(b)及び図1(c)は、図1(a)に対して拡大して表している。バスバー10は、平角帯状の展延性を有する金属材料からなるワークW(図3参照)をエッジワイズ曲げ加工によって直線部11a,11b,11c、及び屈曲部12a,12bとで構成されている。図1(a)に例示したバスバー10は、平面視して略J字形状を有し、同一平面上に展開されている。なお、バスバー10は、図7において説明したバスバー50と同じ形状のものを例示している。
【0026】
バスバー10の形状をさらに具体的に説明する。バスバー10は、直線部11aと直線部11aに直交する直線部11b、直線部11bに直交する直線部11c、直線部11aと直線部11bとに挟まれた屈曲部12a、及び直線部11bと直線部11cとに挟まれた屈曲部12bとで構成されている。なお、バスバー10の形状はこれに限らず、後述するエッジワイズ曲げ加工が可能な範囲で任意の形状とすることが可能であるが、ワークWとして単純な平角帯状材料を使用することで、加工残滓の発生がなく材料使用効率を高めることが可能となる。本例においては、バスバー10の幅HとワークWの総厚みTとの比を10:2としている。
【0027】
バスバー10には、2か所の屈曲部12a,12bに挟まれた直線部11bに、長さ方向の中央部に、製造時に位置案内として使用可能な切欠き状に表裏を貫通する案内凹部13が設けられている。なお、案内凹部13に替えて案内孔21を設ける構成もあり、案内孔21を長さ方向に位置をずらして複数設ける構造にすることも可能である。
【0028】
屈曲部12aにおいて、直線部11aは、直線部11bに対して90°に屈曲されている。そのため、屈曲範囲14は、少なくとも90度の範囲となる。ただし、この屈曲範囲14を90度より広くしてもよい。屈曲範囲14には、表面18の幅方向所定位置15から内側端面16に向かって、内側端面16の残り厚みが薄くなるように傾斜する斜面17が設けられている。図1(b)に示すように、この斜面17は、表面18及び裏面19両面の同じ位置、かつ同じ形状で成形されている。また、斜面17の一方の端部からからは、直線部11a側の表面18に達するまで徐々に浅くなる第2斜面20aが設けられ、他方の端部からは、直線部11b側の表面18に達するまで徐々に浅くなる第2斜面20bが設けられている。第2斜面20a,20bは、斜面17との接続部に境界線ができないように円弧などで滑らかに連続される。屈曲部12aにおいて、裏面19側も同じ斜面構成を有しているため、表面18側と同じ符号を付している。
【0029】
一方、屈曲部12bは、屈曲部12aと同様に、直線部11cが直線部11bに対して90°に曲げられている。そのため、屈曲範囲25は、少なくとも90度の範囲となる。ただし、この屈曲範囲14を90度より広くしてもよい。この屈曲範囲25には、幅方向所定位置26から内側端面27に向かって内側端面27の残り厚みが薄くなるように傾斜する斜面28が設けられている。図1(c)に示すように、この斜面28は、表面18及び裏面19両面の同じ位置、かつ同じ形状で形成されている。また、斜面28の一方の端部からからは、直線部11b側の表面18に達するまで徐々に浅くなる第2斜面29aが設けられ、他方の端部からは、直線部11c側の表面18に達するまで徐々に浅くなる第2斜面29bが設けられている。第2斜面29a,29bは、斜面28との接続部に境界線ができないように円弧などで滑らかに連続される。屈曲部12bにおいて、裏面19側も同じ斜面構成を有しているため、表面18側と同じ符号を付している。
【0030】
本例において、屈曲部12aの内側半径R1は幅Hの約1/3であり、屈曲部12bの内側半径R2は幅Hと同じとしているが、屈曲部12a及び屈曲部12bの各斜面の構成は同じになる。次いで、斜面17,28を設けることの意味について説明する。
【0031】
図2は、バスバー10に、斜面17,28を設けることの意味を説明する図である。図2(a)は、エッジワイズ曲げ加工によって成形したときの、斜面17,28がない場合の屈曲部12aを示し、図2(b)は、斜面17を設けた場合の屈曲部12aを示している。図1も参照しながら説明する。屈曲部12aに斜面17を設けない場合、図2(a)に示すように、屈曲範囲14には、徐々に内側端面16側が大きくなる膨らみDが発生する。膨らみDは、表面18及び裏面19から突出するため、複数のワークWを重ね合わせてエッジワイズ曲げ加工をすることができない。
【0032】
そこで、屈曲部12aに予め斜面17を成形し、エッジワイズ曲げ加工を行う。図2(b)に示すように、斜面17には膨らみDが発生する。しかし、膨らみDは、斜面17の範囲に収まって表面18及び裏面19から突出することはないため、複数のワークWを重ね合わせてエッジワイズ曲げ加工を実施することが可能となる。なお、斜面17を設けた場合には、内側端面16側を薄くしているため、斜面17がない場合よりも膨らみDの大きさを抑えることが可能となる。なお、屈曲部12bにおいても屈曲部12aと同様な状況となるため、説明を省略する。
【0033】
屈曲部12aにおいて、斜面17のみの構成の場合、斜面17と直線部11a及び直線部11bとの境界線、斜面28と直線部11b及び直線部11cとの境界線の付近で変形したり、膨らみが発生したりすることがある。そのため、第2斜面20a,20bを設け、さらに、斜面17と第2斜面20a,20bとをなだらかに円弧などで接続することによって、境界線付近の変形や膨らみを抑えることが可能となる。同様に、屈曲部12bにおいても、第2斜面29a,29bを設け、さらに、なだらかに円弧などで斜面28と第2斜面29a,29bとを接続することによって、境界線付近の変形や膨らみを抑えることが可能となる。
【0034】
以上説明したように、斜面17,28及び第2斜面20a,20b,29a,29bは、曲げ加工時の表裏両面から突出する膨らみDを防止するものであるから、斜面17,28及び第2斜面20a,20b,29a,29bは、この膨らみを吸収できる範囲で小さい方が好ましい。また、内側半径R1,R2が、例えば、幅Hと同じか、それ以上の場合には、膨らみDの発生が無視できる程度となるため斜面17,28及び第2斜面20a,20b,29a,29bを省略することができる。続いて、バスバー10の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0035】
(バスバー10の製造方法)
図3は、バスバー10を成形する前の原料となるワークWを示す図である。図3(a)は平面図、図3(b)は、図3(a)の矢印方向の側面図、図3(c)は、図3(a)の切断線A-Aで切断した断面図、図3(d)は、図3(a)の切断線B-Bで切断した断面図である。ワークWは、幅H、総厚みT、及び図1に示すバスバー10を展開した長さLを有する平角帯状を有している。バスバー10の材質としては、展延性に優れ、電気伝導率が高い無酸素銅、タフピッチ銅やアルミニウムなどの金属材料が用いられている。
【0036】
ワークWには、型押し加工によって表面18及び裏面19の表裏両面に、屈曲部12aとなる位置に斜面17及び第2斜面20a,20bが成形され、屈曲部12bとなる位置に斜面28及び第2斜面29a,29bが成形される。斜面17と第2斜面20a,20b、斜面28と第2斜面29a,29bとは、円弧でなだらかに連続している。ワークWの上記各斜面が形成される側の側面31に対して反対側の側面30には、屈曲部12aと屈曲部12bとの間の直線部11b(図1参照)に、エッジワイズ曲げ加工時に位置案内として使用可能な切欠き状に表裏を貫通する案内凹部13が設けられる。案内凹部13に替えて表裏を貫通する案内孔21を設ける構成を選択することが可能である。
【0037】
なお、斜面17,28各々は、幅方向所定位置15,26の位置が内側端面16,27から幅Hの1/10~1/2の範囲内にあり、内側端面16,27の残り厚みtが総厚みTの1/2~3/4の範囲内となるように設定されている。所定の長さLの切断、案内凹部13又は案内孔21は、打抜き加工によって成形され、斜面17,28及び第2斜面20a,20b,29a,29bは、型押し加工によって同時に成形することが可能である。但し、斜面17,28及び第2斜面20a,20b,29a,29bは、切削加工によって成形することも可能である。なお、直線部11a、11b、11c及び屈曲部12a、12bは、所定の電流を流すことが可能な断面積を有している。
【0038】
図4は、バスバー10の製造方法の第1例を説明する図である。図4(a)は、バスバー10をノックアウト36にセットした状況を正面から見た図、図4(b)は、バスバー10をノックアウト36にセットした状況を側方から見た断面図である。なお、前工程として、斜面を成形する工程によって図3に示したようなワークWを作成する。次いで、ワークWをセットする工程において、ワークWを図4(b)に示すように、厚み方向に複数重ね合わせた状態で幅方向を上下姿勢にし、案内凹部13を下方に向け、かつ厚み方向に重ね合わせてノックアウト36にセットする。具体的には、案内凹部13をノックアウト36に設けられた案内凸部37に嵌合させる。すなわち、案内凹部13をノックアウト36の案内凸部37にセットする。図4に示す例では、ワークWは10枚である。案内凸部37は、重ねられた10枚のワークWを厚み方向に貫通している。パンチ38は、ダイ35に向かう端面38aに屈曲部12a及び屈曲部12b(図1参照)の形状を成形するための内側半径R1,R2に相当する円弧が設けられている。ダイ35とノックアウト36の上面位置は同じ高さであり、ダイ35はワークWが上下方向に傾かないように支持する。
【0039】
重ね合わせた複数のワークWは、ガイドプレート39によって厚み方向に保持される。この際、隣り合うワークWの隙間が最小となるようにガイドプレート39の形状及び寸法が設定されている。例えば、図4(b)に示す左側のガイドプレート39を固定側とし、右側を押圧側として複数のワークWを密着させることが可能である。押圧手段としては、バネなどの弾性部材を介在させたり、空気圧を利用したりする方法を採用することができる。押圧力は、エッジワイズ曲げ加工の妨げにならない程度にする。ワークWをノックアウト36及びガイドプレート39にセットした後、エッジワイズ曲げ加工工程でワークWを屈曲させる。
【0040】
図5は、ワークWを屈曲させてバスバー10を成形する状況を示す図である。バスバー10は、パンチ38とノックアウト36とでワークWを挟み込み、パンチ38をダイ35に対して相対的に移動させることによって成形される。例えば、バスバー10の製造方法としては、固定されたダイ35に対してパンチ38及びノックアウト36を動作させて成形する方法、パンチ38及びノックアウト36を固定してダイ35を動作して成形する方法などが可能である。
【0041】
バスバー10の製造方法としては、パンチ38及びノックアウト36とダイ35の両方をフォーマー(フォーミングマシンなど)のように同期して動作させて成形することも可能である。ノックアウト36は、パンチ38とでワークWを挟み込んで連動する逆押さえ機能を有しているため、直線部11bが湾曲しない。このような製造方法によって、図1(a)に示すようなバスバー10を成形することが可能となる。成形後、ノックアウト36をダイ35に対してワークWをノックアウト36にセットするときの位置(図4に示す位置)まで移動させれば、バスバー10を除材することができる。なお、既述したバスバー10の製造法において、図4及び図5に示すバスバー10は、2か所の屈曲部12a、12bを有する例を示しているが、屈曲部12a,12bのいずれか一方のみの場合も適応させることが可能である。また、屈曲部12a,12bは、90度に屈曲させているが、90度以外の任意の角度に屈曲させることにも適応することが可能である。また、ノックアウト36及びパンチ38の対向面に互いに交差する凹凸を設けることによって、屈曲部12aと屈曲部12bとの間に、複数の屈曲部を設けることも可能である。
【0042】
なお、図4図5で説明したワークWのセット方法は、ワークWに設けられた案内凹部13をノックアウト36に設けられた案内凸部37に嵌合させるものであるが、他のセット方法を第2例として参照して説明する。
【0043】
図6は、バスバー10の製造方法の第2例を説明する図である。6(a)は、バスバー10をノックアウト36にセットした状況を正面から見た図、図6(b)は、バスバー10をノックアウト36にセットした状況を案内ピン40の軸方向で切断した断面図である。第2例において、ワークWをセットする工程では、予め、ワークWに設けられた案内孔21(図1図3参照)に、案内ピン40で複数のワークWを串刺しにしたうえで、案内ピン40の両端をノックアウト36に設けられた略U字形状に開口した案内部41にセットする。ノックアウト36は、複数のワークWの厚み方向の位置を規制する壁部36aを有し、この壁部36aに設けられた案内部41の上方から案内ピン40の両端をセットすることが可能な構成としている。ワークWの側面30は、ダイ35の上面位置と同じ位置となる。第2例において、ワークWの屈曲は、第1例と同様に行うことが可能である。この際、案内ピン40の長さは、複数のワークWを保持しつつダイ35を通過することが可能な長さに設定されている。
【0044】
以上説明したバスバー10は、展延性を有する平角帯状のワークWをエッジワイズ曲げ加工によって、直線部11aと直線部11bとの間、及び直線部11bと直線部11cとの間の各々に成形された屈曲部12a,12bで構成されている。屈曲部12a,12bの屈曲範囲14,25には、内側端面16,27各々に向かって傾斜する斜面17,28が表裏両面に設けられている。平角帯状のワークWをエッジワイズ曲げ加工で屈曲させて成形すれば、加工残滓の発生がなく材料費の低減を可能にし、材料使用効率を高めることができる。また、斜面17,28を設けることによって、エッジワイズ曲げ加工時に発生する膨らみDが表裏両面に突出することを防止することができることから、複数のワークWを重ね合わせて成形することができ、生産効率を高めることが可能となる。それらのことから、バスバー10のコスト低減を図ることが可能となる。
【0045】
また、斜面17,28各々は、幅方向所定位置15,26が内側端面16,27から幅Hの1/10~1/2の範囲内にあり、内側端面16,27の残り厚みtが総厚みTの1/2~3/4の範囲内に設定されている。このことによって、膨らみDが表面18及び裏面19から突出することを防止することができ、複数のワークWを重ね合わせてエッジワイズ曲げ加工が可能となる。なお、バスバー10は、屈曲部12a、12bにおいても所定の電流を流すことが可能な断面積が必要とされるものであるから、斜面17,28は、膨らみDの大きさに対応して可能な限り小さくすることがより好ましい。
【0046】
バスバー10は、斜面17,28のみの場合、屈曲部12a,12bを成形する際に、直線部11a,11b、11cとの間に段差が生ずる。段差があると、その位置に膨らみDが発生したり変形したりすることがある。そこで、屈曲範囲14,25各々の斜面端部から表面18又は裏面19に達するまで徐々に浅くなる第2斜面20a,20b,29a、29bを設け、斜面17,28と第2斜面20a,20b,29a、29bとの接続部は境界線ができないように滑らかに連続させている。このようにすれば、屈曲部12a,12bと直線部11a、11b、11cとの接続部の膨らみDの発生を抑え、バスバー10が反ったり、変形したりすることを防ぐことが可能となる。
【0047】
また、バスバー10には、2か所の屈曲部12a,12bに挟まれた直線部11bには、エッジワイズ曲げ加工時に位置案内として使用可能な切欠き状に表裏を貫通する案内凹部13、又は案内孔21が設けられている。このように、案内凹部13又は案内孔21を設けることによって、エッジワイズ曲げ加工時においてワークWの長さ方向の位置決めができ、所望の形状のバスバー10を成形することが可能となる。これら案内凹部13及び案内孔21は、エッジワイズ曲げ加工によって成形されたバスバー10に、さらに二次加工を行う際、又は組み立ての際の位置決め手段として使用することができる。
【0048】
本発明のバスバー10の製造方法は、まず、バスバー10の展開長さを有する平角帯状のワークWに、バスバー10の屈曲部12a及び屈曲部12bとなる位置の屈曲範囲14,25に斜面17,28を成形する。ワークWは、バスバー10の展開長さを有する単純な平角帯状の材料に斜面17,28及び第2斜面20a,20b,29a,29bを成形したものであるから、従来の打抜き加工のように残滓54が発生しないので、材料費の低減が可能となる。次いで、このワークWをエッジワイズ曲げ加工によって屈曲させバスバー10を成形する。ワークWには、屈曲部12a,12bに斜面17,28及び第2斜面20a,20b,29a,29bを成形しているため、エッジワイズ曲げ加工時に発生する膨らみDが表裏両面に突出することを防止することができるから、複数のワークWを重ね合わせて成形することができ、生産効率を高めることが可能となる。それらのことから、バスバー10のコスト低減を図ることが可能となる。
【0049】
ワークWをエッジワイズ曲げ加工する際、ワークWの斜面17,28が成形されている側面30に対して反対側の側面31に設けられた切欠き状の案内凹部13をノックアウト36に設けられた案内凸部37にセットする。このようにすることによって、ワークWの長さ方向の位置を容易に規制することができ、屈曲部12a,12bを高精度に成形することが可能となる。
【0050】
なお、ワークWには、上記案内凹部13に替えて案内孔21を設けることができる。複数のワークWの案内孔21を串刺しにした案内ピン40の両端をノックアウト36に設けられた案内部41にセットする。このようにすることによって、ワークWの長さ方向の位置を容易に規制することができ、屈曲部12a,12bの位置を高精度に成形することが可能となる。なお、案内凹部13又は案内孔21を組合せ、又は案内孔21を2個以上設けることによって、成形されたバスバー10に、後工程で使用することが可能な案内孔21として利用することも可能である。
【0051】
なお、バスバー10の製造方法は、既述した第1例及び第2例においては、ワークWをノックアウト36にセットする例をあげ説明している。しかし、第1例及び第2例の技術思想を応用して、パンチ38側にワークWをセットすることも可能である。
【符号の説明】
【0052】
10,50…バスバー、11a,11b、11c…直線部、12a,12b,52,53…屈曲部、13…案内凹部、14,25…屈曲範囲、15,26…幅方向所定位置、16,27…内側端面、17,28…斜面、18…表面、19…裏面、20a,20b,29a,29b…第2斜面、21…案内孔、30,31…側面、35…ダイ、36…ノックアウト、37…案内凸部、38…パンチ、38a…端面、39…ガイドプレート、40…案内ピン、41…案内部、51…原料、54…残滓、D…膨らみ、H…幅、T…総厚み、t…残り厚み、R1,R2…内側半径、W…ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7