(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176501
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】測定システム及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 17/00 20060101AFI20231206BHJP
G01S 15/88 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G01B17/00 A
G01S15/88
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088811
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】390027177
【氏名又は名称】坂田電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180817
【弁理士】
【氏名又は名称】平瀬 実
(72)【発明者】
【氏名】坂田 文男
(72)【発明者】
【氏名】後藤 知英
(72)【発明者】
【氏名】宮原 幸治
【テーマコード(参考)】
2F068
5J083
【Fターム(参考)】
2F068AA02
2F068AA06
2F068AA13
2F068BB09
2F068DD04
2F068FF03
2F068GG01
2F068QQ05
2F068QQ21
2F068QQ24
5J083AA02
5J083AB20
5J083AD04
5J083AD30
5J083AE10
5J083AF01
5J083BA01
5J083BB03
5J083BE11
5J083BE12
5J083BE19
5J083CA01
5J083CB01
(57)【要約】
【課題】音波を用いて任意の2点間の距離又はその変化を容易に測定することを可能にする。
【解決手段】測定システム100は、第1音響導波管101と、パルス状の第1音波SW1を第1音響導波管101の内部へ送出し、第1音波SW1が第1音響導波管101の内部の第1反射部105で反射した第1反射波RW1を受信する第1送受信部102と、第1音波SW1が送出されてから第1反射波RW1が受信されるまでの第1時間に基づいて、第1送受信部102と第1反射部105との間の距離又はその変化を求める測定装置106とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1音響導波管と、
パルス状の第1音波を前記第1音響導波管の内部へ送出し、前記第1音波が前記第1音響導波管の内部の第1反射部で反射した第1反射波を受信する第1送受信部と、
前記第1音波が送出されてから前記第1反射波が受信されるまでの第1時間に基づいて、前記第1送受信部と前記第1反射部との間の距離又はその変化を求める測定装置とを備える
測定システム。
【請求項2】
前記第1反射部は、前記第1音響導波管の内部で移動可能である
請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記第1音響導波管の内部に配置される前記第1反射部をさらに備える
請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記第1反射部は、前記第1音響導波管の内部を途中まで満たす液体の液面である
請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項5】
前記第1音響導波管は、前記液体が内部に注入される連通管の一部である
請求項4に記載の測定システム。
【請求項6】
前記第1送受信部は、基準点に対して固定されている
請求項1から5のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項7】
前記第1音響導波管に並べて設けられ、パルス状の第2音波を伝播させるための第2音響導波管と、
前記第2音響導波管に配置され、前記第2音波を反射する第2反射部と
前記第2音波を前記第2音響導波管の内部へ送出し、前記第2音波が前記第2反射部で反射した第2反射波を受信する第2送受信部とをさらに備え、
前記測定装置は、
前記第2音波が送出されてから前記第2反射波が受信されるまでの第2時間と、前記第2送受信部と前記第2反射部との間の距離と、に基づいて、音速を求める音速測定部
を含む
請求項1から6のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項8】
第1音響導波管は、可撓性を有する
請求項1から7のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項9】
前記第1反射波が受信される時期は、前記第1送受信部が前記第1反射波の時間軸上の中心を受信した時期であり、
前記測定装置は、前記第1送受信部から出力される第1受信信号に基づいて、前記第1送受信部が受信する前記第1反射波の時間軸上の中心を検出する
請求項1から8のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項10】
前記第1送受信部は、圧電素子を含む
請求項1から11のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項11】
前記距離又はその変化を含む測定情報を外部装置へ送信する通信部をさらに備える
測定システム。
【請求項12】
パルス状の第1音波を第1音響導波管の内部へ送出し、
前記第1音波が前記第1音響導波管の内部の第1反射部で反射した第1反射波を受信し、
前記第1音波が送出されてから前記第1反射波が受信されるまでの第1時間に基づいて、前記第1送受信部と前記第1反射部との間の距離又はその変化を求める
測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定システム及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音波を用いて距離を測定するための機器などが種々提案されている。例えば、特許文献1には、管状部材の一端からスピーカによりパルス状音波を送出してからその反射波をマイクロフォンで集音するまでの時間から、管状部材の長さを測定するための音響式管路長測定器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の音響式管路長測定器によって管状部材の長さを測定することができたとしても、任意の2点間の距離又はその変化を測定することは困難である。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、音波を用いて任意の2点間の距離又はその変化を測定することが可能な測定システム及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る測定システムは、
第1音響導波管と、
パルス状の第1音波を前記第1音響導波管の内部へ送出し、前記第1音波が前記第1音響導波管の内部の第1反射部で反射した第1反射波を受信する第1送受信部と、
前記第1音波が送出されてから前記第1反射波が受信されるまでの第1時間に基づいて、前記第1送受信部と前記第1反射部との間の距離又はその変化を求める測定装置とを備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る測定方法は、
パルス状の第1音波を第1音響導波管の内部へ送出し、
前記第1音波が前記第1音響導波管の内部の第1反射部で反射した第1反射波を受信し、
前記第1音波が送出されてから前記第1反射波が受信されるまでの第1時間に基づいて、前記第1送受信部と前記第1反射部との間の距離又はその変化を求める。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、音波を用いて任意の2点間の距離又はその変化を測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る測定システムの構成例を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る測定装置の機能的な構成例を示す図である。
【
図3】第1音波SW1の波形の一例を示す図である。
【
図4】(a)~(c)は、第1反射信号FS1を含む第1受信信号RS1、第1パルスPA1、第2パルスPA2それぞれの波形の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る検出部の機能的な構成例を示す図である。
【
図6】実施の形態1に係る測定部の機能的な構成例を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係る測定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態1に係る検出処理の詳細例を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態1に係る第1送受信部の物理的な構成例を示す図である。
【
図11】実施の形態1に係る測定装置の物理的な構成例を示す図である。
【
図12】変形例11に係る検出処理の詳細例を示すフローチャートである。
【
図13】実施の形態2に係る測定システムの構成例を示す図である。
【
図14】実施の形態2に係る測定装置の機能的な構成例を示す図である。
【
図15】実施の形態2に係る音速測定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図16】実施の形態3に係る測定システム300の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
<実施の形態1>
本発明の実施の形態1に係る測定システム100は、その構成例を
図1に示すように、基準点P1と測定点P2との間の距離R又はその変化ΔRを測定するためのシステムである。
【0012】
基準点P1は、距離R又はその変化ΔRを測定する基準となる点である。測定点P2は、基準点P1からの距離R又はその変化ΔRを測定する対象となる点である。本実施の形態では、基準点P1と測定点P2とが、地面に設定される地点である例を用いて説明する。
【0013】
なお、基準点P1と測定点P2との各々は、任意に設定されてよく、例えば、建物、構造物、装置、機器、器具、製品などに設定されてもよい。
【0014】
測定システム100は、第1音響導波管101と、第1送受信部102と、第1固定部材103と、第1反射部105を含む第2固定部材104と、測定装置106と、外部装置107とを備える。
【0015】
第1送受信部102と測定装置106とは、有線、無線又はこれらを組み合わせた通信ネットワークN1を介して相互に情報を送受信する。測定装置106と外部装置107とは、有線、無線又はこれらを組み合わせた通信ネットワークN2を介して相互に情報を送受信する。通信ネットワークN1と通信ネットワークN2とは、共通のネットワークであってもよく、異なるネットワークであってもよい。
【0016】
第1音響導波管101は、音響導波管である。
【0017】
音響導波管とは、音波を伝播させるための中空の管である。音波は、音響導波管の内壁での反射と減衰とを可能な限り少なくするために、概ね平面波となって、音響導波管の内部の中空を伝播することが望ましい。このような音波の伝播を実現するための条件は、音響導波管の内径と音波の波長(或いは周波数)との関係で規定することができる。
【0018】
音波の波長に比べて内径が大きいと、伝播経路でマルチパスが生じて、音波の進行方向とは異なる方向への反射が生じる。音波の波長に比べて内径が小さいと、伝播インピーダンスが大きくなり、音波の減衰が大きくなる。このような観点から、音響導波管の内部を伝播する音波の波長は、例えば、音響導波管の内径の1/2~1/4程度が好適である。
【0019】
第1音響導波管101は、基準点P1と測定点P2との間の距離Rを測定するために必要な適宜の長さを有し、基準点P1と測定点P2との間に延びるように設けられる。
【0020】
詳細には例えば、第1音響導波管101は、長さ方向に沿って見た断面が円形の円管である。第1音響導波管101の内径は、例えば5~30mm程度である。距離Rは、例えば、数cm(センチメートル)~100m(メートル)程度である。第1音響導波管101の材料は、例えば、金属、樹脂、ゴムである。第1音響導波管101は、概ね曲がったり、撓んだりしない堅い管であってもよく、可撓性を有する管であってもよい。第1音響導波管101は、非透光性の管であってもよく、透光性を有する透明又は半透明の管であってもよい。
【0021】
なお、第1音響導波管101の形状、寸法、材料、材質などは適宜変更されてよい。第1音響導波管101の材質は、熱膨張率が小さいものが望ましい。
【0022】
第1送受信部102は、音波を送受信する部材である。
【0023】
第1送受信部102は、例えば測定装置106からの送出信号を受けて、第1音波SW1を出力する。第1音波SW1は、パルス状の音波である。また、第1送受信部102は、音波を受信すると、当該受信した音波に応じた第1受信信号RS1を測定装置106へ出力する。
【0024】
第1送受信部102は、第1音響導波管101の内部へ第1音波SW1を送出するように配置される。また、第1送受信部102は、第1反射波RW1を受信するように配置される。第1反射波RW1は、第1音波SW1が第1音響導波管101の内部の第1反射部105で反射した音波である。
【0025】
詳細には、本実施の形態に係る第1送受信部102は、音波を送出する部位及び音波を受信する部位を第1音響導波管101の内方へ向けて、第1音響導波管101の一端又は一端近傍に配置される。また、本実施の形態に係る第1送受信部102は、第1音響導波管101に固定される。
【0026】
ここで、「近傍」とは、ある位置から予め定められた範囲を意味し、例えば一端近傍は、一端から予め定められた範囲を意味する。以下においても、同様である。
【0027】
すなわち、第1送受信部102は、第1音波SW1を第1音響導波管101の内部へ送出し、第1音波SW1が第1音響導波管101の内部の第1反射部105で反射した第1反射波RW1を受信する。
【0028】
第1送受信部102は、第1反射波RW1を受信すると、第1反射信号FS1を含む第1受信信号RS1を出力する。第1反射信号FS1は、第1反射波RW1に応じた信号である。
【0029】
第1反射信号FS1を含む第1受信信号RS1は、第1反射信号FS1だけでなく、ノイズ信号を含むことが多い。そのため、第1反射信号FS1を含む第1受信信号RS1は、通常、第1反射信号FS1と完全には一致しておらず、第1反射信号FS1にノイズ信号を重畳した信号になる(
図4(a)参照)。ノイズ信号は、第1送受信部102が受信する雑音(第1反射波RW1以外の音)に基づくノイズ信号、電気系統に起因するノイズ信号などを含む。電気系統に起因するノイズ信号としては、例えば、電子回路に混入する外来雑音に基づくノイズ信号がある。
【0030】
なお、
図4(a)において、ノイズ信号のレベルは、分かり易くするため、第1反射信号FS1のレベルに対して大きく示している。第1反射信号FS1のレベルに対するノイズ信号のレベルの大きさは、実際には
図4(a)に示すよりも小さいことが通常である。
【0031】
第1固定部材103は、第1送受信部102を基準点P1に対して固定するための部材である。本実施の形態では、第1固定部材103は、その基端が基準点P1に固定されるとともに、その先端に第1送受信部102が固定されている。第1固定部材103は、第1送受信部102を固定又は保持すればよく、その部位は先端でなくてもよい。
【0032】
すなわち、本実施の形態では、第1送受信部102は、第1固定部材103を用いて、基準点P1に対して固定される。これにより、第1送受信部102の位置は、基準点P1に対して関連付けられる。
【0033】
なお、第1送受信部102は、基準点P1との位置関係が関連付けられていれば、基準点P1に対して固定されていなくてもよい。
【0034】
第1固定部材103は、例えば、金属の棒であるが、その材料、材質、形状は適宜変更されてもよい。
【0035】
第2固定部材104は、第1反射部105を含む部材である。第1反射部105は、第1送受信部102から送出された第1音波SW1を反射する部位である。第1反射部105は、第1音響導波管101の内部に配置される。
【0036】
詳細には、第2固定部材104は、固定部104aと、第1反射部105を含む円板部104bとを含む。
【0037】
固定部104aは、その基端が測定点P2に固定されるとともに、その先端に円板部104bが固定されている。
図1に示す例では、固定部104aは、基端と先端との間が屈曲した概ねL字状の棒であるが、その形状は適宜変更されてもよい。
【0038】
円板部104bは、第1音響導波管101の内径よりも小さい径の円板状をなし、第1音響導波管101に緩やかに嵌まる。円板部104bは、第1音響導波管101の他端又は他端近傍に配置される。
【0039】
第1反射部105は、円板部104bが有する2つの主面のうち、固定部104aが固定される面とは反対側の面、すなわち、第1音響導波管101の内方を向く面を形成する部位である。第1反射部105は、第1音響導波管101の長さ方向に延びるその内部空間を介して、第1送受信部102と対向する。
【0040】
第1反射部105は、例えば平面を形成する。なお、第1反射部105は、第1音波SW1を反射する形状であればよく、平面に限らず、曲面等であってもよい。
【0041】
すなわち、本実施の形態では、第1反射部105は、第2固定部材104を用いて、測定点P2に対して固定される。これにより、第1反射部105の位置は、測定点P2に対して関連付けられる。
【0042】
また、円板部104bは、上述の通り、第1音響導波管101の内径よりも小さい。そのため、第1反射部105は、第1音響導波管101の内部で移動可能である。
【0043】
なお、第2固定部材104は、これに限られない。例えば、第2固定部材104は、棒状の部材であってもよく、この場合、第1音響導波管101の内部に配置される第2固定部材104の端面が、第1反射部105として採用されてもよい。
【0044】
(測定装置106の機能的な構成例)
測定装置106は、第1時間に基づいて距離R又はその変化ΔRを求めるための装置である。第1時間は、第1送受信部102によって第1音波SW1が送出されてから第1反射波RW1が受信されるまでの時間である。距離Rは、上述の通り、基準点P1と測定点P2との間の距離である。
【0045】
詳細には、測定装置106は、その機能的な構成例を
図2に示すように、音波制御部108と、検出部109と、測定部110と、履歴記憶部111と、通信部112とを備える。
【0046】
音波制御部108は、パルス状の第1音波SW1を第1送受信部102に送出させる。詳細には例えば、音波制御部108は、送出信号を第1送受信部102に出力することで、パルス状の第1音波SW1を第1送受信部102に送出させる。
【0047】
図3は、第1音波SW1の波形の一例を示す図である。
図3の横軸は時間(単位は、例えば、秒)であり、縦軸は音の大きさ(単位は、例えば、デシベル)を示す。
図3に例示する第1音波SW1は、大きさがA1である時間長さ(パルス幅)がPTS1であり、かつ、それ以外の大きさが0である。パルス幅PTS1は、例えば、0.5mS(ミリ秒)秒である。第1音波SW1は、例えば超音波であり、その周波数は例えば、20kHz~40kHzである。
【0048】
図3に示す送出時期TS1は、第1送受信部102が第1音波SW1を送出した時期である。送出時期TS1は、第1送受信部102から第1音波SW1が送出される期間を代表する時点であればよく、例えば、第1音波SW1の時間軸上の中心である。
【0049】
図2を再び参照する。
検出部109は、第1送受信部102から出力される第1受信信号RS1に基づいて、第1反射波RW1の受信時期TR1を検出する。
【0050】
受信時期TR1は、第1送受信部102が第1反射波RW1を受信した時期である。受信時期TR1は、第1送受信部102によって第1反射波RW1が受信される期間を代表する時点であればよく、例えば、第1反射波RW1の時間軸上の中心である。検出部109は、第1送受信部102から出力される第1受信信号RS1に基づいて、第1送受信部102が受信する第1反射波RW1の時間軸上の中心を検出する。
【0051】
図4(a)は、第1反射信号FS1を含む第1受信信号RS1の波形の一例を示す図である。
図4(a)の横軸は時間(単位は、例えば、秒)であり、縦軸は信号レベル(単位は、例えば、ボルト)を示す。
図4(a)に例示する第1反射信号FS1は、受信時期TR1に受信された第1反射波RW1に応じた信号であり、その信号レベルの最大値がAR1、かつ、幅(時間長さ)がPTR1である。
【0052】
第1反射波RW1は、パルス状の第1音波SW1の反射波であるため、時間軸上の中心を介して概ね対称である。そのため、第1反射信号FS1も、第1反射波RW1の時間軸上の中心である受信時期TR1を介して概ね対称である。
【0053】
上述の通り、第1反射信号FS1を含む第1受信信号RS1はノイズ信号も含むことが多いが、通常、第1反射波RW1の信号レベルの方が、ノイズの信号レベルよりも大きい。そのため、
図4(a)に示すように、第1反射信号FS1を含む第1受信信号RS1は、第1反射信号FS1と同様に、第1反射波RW1の時間軸上の中心である受信時期TR1を介して概ね対称である。
【0054】
検出部109は、第1反射信号FS1を含む第1受信信号RS1が第1反射信号FS1の時間軸上の中心を介して概ね対称であることを利用して、第1反射信号FS1の時間軸上の中心を検出する。本実施の形態では、第1反射信号FS1の時間軸上の中心が、第1送受信部102が受信する第1反射波RW1の時間軸上の中心である。
【0055】
なお、信号処理などに要する時間のために、第1反射信号FS1を含む第1受信信号RS1の時間軸上の中心に対応する時期と、第1送受信部102が第1反射波RW1を受信した受信時期TR1との間に時間的なズレが生じることがある。この場合、検出部109は、この時間的なズレに基づいて較正を行って、第1送受信部102が受信する第1反射波RW1の時間軸上の中心を検出してもよい。
【0056】
図5を参照して、検出部109の詳細な機能的な構成を説明する。検出部109は、第1生成部113と、反射波検出部114と、中心特定部115とを含む。
【0057】
第1生成部113は、第1パルスPA1(信号)を発生させる。
【0058】
第1パルスPA1は、
図4(b)に示すように、1つの矩形波から構成されるパルスである。
図4(b)の点線で示す横軸は、時間軸である。第1パルスPA1は、例えば、レベルがA2である時間長さ(パルス幅)がPT2であり、それ以外のレベルが0の信号である。パルス幅PT2は、幅PTR1よりも大きい(すなわち、PT2>PTR1)。パルス幅PT2は、例えば、幅PTR1の約2倍である。レベルA2は、適宜定められてよいが、例えば1である。
【0059】
図5を再び参照する。
反射波検出部114は、第1送受信部102から出力される第1受信信号RS1と第1パルスPA1とに基づいて、第1送受信部102が第1反射波RW1を受信したことを検出する。例えば、反射波検出部114は、第1受信信号RS1と第1パルスPA1との積を時間軸に沿って足し合わせることで得られる値に基づいて、第1送受信部102が第1反射波RW1を受信したことを検出する。
【0060】
中心特定部115は、第1送受信部102が受信した第1反射波RW1の時間軸上の中心を特定する。例えば、中心特定部115は、第1送受信部102から出力される第1受信信号RS1に基づいて、第1送受信部102が受信する第1反射波RW1の時間軸上の中心を特定する。
【0061】
詳細には、中心特定部115は、第2生成部116と、パルス制御部117とを含む。
【0062】
第2生成部116は、第2パルスPA2(信号)を発生させる。
【0063】
第2パルスPA2は、
図4(c)に示すように、値がゼロとなる基準点RPを介して点対称な1組の矩形波から構成されるパルスである。
図4(c)の点線で示す横軸は、時間軸である。
【0064】
第2パルスPA2は、例えば、レベルが-A3の第1矩形波FPA2とレベルがA3の第2矩形波RPA2とから構成され、それら全体の時間長さ(パルス幅)がPT3であり、それ以外のレベルが0の信号である。パルス幅PT3は、パルス幅PT2と同じ程度であるか、又はパルス幅PT1よりも大きい(すなわち、PT3≧PT2)。レベルA3の大きさは、適宜定められてよいが、例えば1である。
【0065】
詳細には例えば、第1矩形波FPA2は、値がゼロとなる基準点RPより前の矩形波である。第1矩形波FPA2は、レベルが-A3である時間長さがPT3/2である。第2矩形波RPA2は、基準点RPより後の矩形波である。第2矩形波RPA2は、レベルがA3である時間長さがPT3/2である。
【0066】
第1矩形波FPA2と第2矩形波RPA2とは、レベルの大きさが同じA3であり、かつ、その時間長さ(PT3/2)が等しい。そのため、第1矩形波FPA2と第2矩形波RPA2とは、値がゼロとなる基準点RPを介して点対称である。なお、第1矩形波FPA2のレベルがA3、第2矩形波RPA2のレベルが-A3、であってもよい。
【0067】
図5を再び参照する。
パルス制御部117は、反射波検出部114によって検出された第1反射信号FS1を含む第1受信信号RS1と第2パルスPA2とに基づいて、第1送受信部102が受信する第1反射波RW1の時間軸上の中心を特定する。
【0068】
詳細には例えば、パルス制御部117は、基準点RPが第1反射信号FS1の時間軸上の中心となるように、第2生成部116が第2パルスPA2を発生させるタイミング(発生タイミング)を調整する。より詳細には、パルス制御部117は、第1受信信号RS1と第2パルスPA2との積を時間軸に沿って足し合わせることで得られる第2合算値が小さく(望ましくは、ゼロに)なるように、第2生成部116が第2パルスPA2を発生させるタイミングを調整する。第2パルスPA2が
図4(c)に示す波形である場合、パルス制御部117は、第2合算値が「正」であれば発生タイミングを早くし、第2合算値が「負」であれば発生タイミングを遅くするように調整する。
【0069】
そして、パルス制御部117は、調整した第2パルスPA2に基づいて、第1反射信号FS1の時間軸上の中心を検出する。第1反射信号FS1の時間軸上の中心を検出すると、パルス制御部117は、発生タイミングを調整した第2パルスPA2の基準点RPに基づいて、第1反射信号FS1の時間軸上の中心を特定する。
【0070】
第1反射信号FS1と第1反射波RW1とは時間軸上で対応しているので、それらの時間軸上の中心も対応している。そのため、第1反射信号FS1の時間軸上の中心を特定することで、パルス制御部117は、第1送受信部102が受信した第1反射波RW1の時間軸上の中心を特定することができる。
【0071】
なお、パルス制御部117は、反射波検出部114によって検出された第1反射信号FS1を用いずに、第1受信信号RS1を直接的に用いて、第1送受信部102が受信した第1反射波RW1の時間軸上の中心を検出してもよい。この場合、測定装置106は、第1生成部113及び反射波検出部114を含まなくてもよい。
【0072】
図2を再び参照する。
測定部110は、第1時間に基づいて、伝播距離DT、伝播距離DTの変化ΔDT、距離R、距離Rの変化ΔRを求める。ここで、伝播距離DTは、第1送受信部102(例えば、音波を送受信する部位)と、第1反射部105との間の距離である。
【0073】
詳細には、測定部110は、
図6に示すように機能的に、時間取得部118と、距離取得部119とを含む。
【0074】
時間取得部118は、送出時期TS1と受信時期TR1とに基づいて、第1時間を取得する。
【0075】
距離取得部119は、時間取得部118が求めた第1時間に基づいて、伝播距離DT、伝播距離DTの変化ΔDT、距離R、距離Rの変化ΔRなどを求める。
【0076】
より詳細には例えば、距離取得部119は、時間取得部118が求めた第1時間と音速とに基づいて、伝播距離DTを求める。距離取得部119は、基準点P1と第1送受信部102との位置関係、第1反射部105と測定点P2との位置関係を予め保持し、これらの位置関係と伝播距離DTとに基づいて、距離Rを求める。
【0077】
また例えば、距離取得部119は、過去に求めた伝播距離DTと現在の伝播距離DTとに基づいて、例えば現在の伝播距離DTから過去に求めた伝播距離DTを差し引く演算を行うことで、伝播距離DTの変化ΔDTを求める。距離取得部119は、過去に求めた距離Rと現在の距離Rとに基づいて、例えば現在の距離Rから過去に求めた距離Rを差し引く演算を行うことで、距離Rの変化ΔR(=現在の距離R-過去に求めた距離R)を求める。
【0078】
距離取得部119は、測定の結果を含む測定情報を生成して履歴記憶部111に記憶させる。測定情報は、伝播距離DT、その変化ΔDT、距離R、その変化ΔRを含む。履歴記憶部111は、測定情報の履歴を記憶するための記憶部である。
【0079】
通信部112は、通信ネットワークNを介して外部装置107(
図1参照)と通信する。通信部112は、例えば測定情報を外部装置107へ送信する。外部装置107は、測定装置106以外の装置である。例えば、外部装置107は、測定情報を管理するための装置である。
【0080】
これまで、本発明の実施の形態1に係る測定システム100の機能的な構成について主に説明した。ここから、本実施の形態に係る測定システム100の動作について説明する。
【0081】
(測定システム100の動作)
測定システム100は、
図7にフローチャートの一例を示す測定処理を実行する。測定処理は、任意に設定される基準点P1と測定点P2との間の距離R又はその変化ΔRを測定するための処理である。
【0082】
測定処理を開始する前に、第1音響導波管101が基準点P1と測定点P2との間に配置される。
【0083】
例えば、測定システム100を用いて地滑りや法面などの地表面の動きを測定する場合、基準点P1は、基準となる地表面に設定される。具体的には例えば、第1固定部材103の一部を地面に固定するなどの適宜の方法で、第1固定部材103が基準点P1に関連付けて固定されるとよい。測定点P2は、基準点P1に対する動きを測定する対象となる地表面に設定される。具体的には例えば、第2固定部材104の一部を地面に固定するなどの適宜の方法で、第2固定部材104が測定点P2に関連付けて固定されるとよい。この場合例えば、第1音響導波管101は、屋外の基準点P1と測定点P2との間の地表面に置かれるとよい。
【0084】
また例えば、測定システム100を用いて構造物間(例えば、橋脚間、建物間)の距離を測定する場合、基準点P1は、基準となる構造物の特定部位、地盤などに設定され、測定点P2は、基準点P1に対する動きを測定する対象となる構造物の特定部位に設定される。この場合例えば、第1音響導波管101は、基準点P1と測定点P2との間の空中に配置されてもよく、一部又は概ね全体が地面に置かれてもよい。
【0085】
なお、基準点P1と測定点P2とはこれらに限定されない。第1音響導波管101は、屋内に配置されてもよく、屋外と屋内とにまたがって配置されてもよい。第1音響導波管101の一部又は全部は、土中などに埋設されてもよい。
【0086】
第1送受信部102は、例えば、基準点P1に固定された第1固定部材103に取り付けられるとともに、第1音響導波管101の内部へ第1音波SW1を送出できるように第1音響導波管101(例えば、その一端)に取り付けられる。これにより、第1送受信部102は、基準点P1に関連付けて設けられる。
【0087】
第1反射部105は、例えば、測定点P2に固定された第2固定部材104に取り付けられるとともに、第1音波SW1を反射させるために第1音響導波管101の内部に配置される。これにより、第1反射部105は、測定点P2に関連付けて設けられる。
【0088】
このような準備の後に、測定装置106は、例えばユーザからの指示に応じて測定処理を開始する。
【0089】
図7を参照する。
音波制御部108は、第1送受信部102に第1音波SW1を送出させる。例えば、音波制御部108は、第1音波SW1を送出させるための送出信号を第1送受信部102に出力する。これに応じて、第1送受信部102は、第1音波SW1を送出する(ステップS101)。
【0090】
ステップS101において、第1送受信部102は、1つのパルス状の第1音波SW1を送出するとよい。ステップS101を実行した後、第1送受信部102は、第1音響導波管101の内部の音波を受信し、受信した音波に応じた第1受信信号RS1を出力する。
【0091】
検出部109は、第1受信信号RS1に基づいて、第1送受信部102が第1反射波RW1を受信したことを検出する(ステップS102)。
【0092】
図8は、本実施の形態に係る検出処理(ステップS102)の詳細例を示すフローチャートである。
【0093】
反射波検出部114は、第1送受信部102から第1受信信号RS1を取得する(ステップS111)。
【0094】
第1送受信部102は、例えば、音波を受信すると、その音波に応じた第1受信信号RS1を概ねリアルタイムで出力する。反射波検出部114は、ステップS101が実行された後、第1送受信部102からリアルタイムで出力される第1受信信号RS1を継続的に取得する。反射波検出部114は、取得した第1受信信号RS1を保持してもよい。
【0095】
第1生成部113及び第2生成部116は、それぞれ、第1パルスPA1及び第2パルスPA2を発生させる(ステップS112)。
【0096】
このとき、第1生成部113及び第2生成部116は、同期した(すなわち、時間軸上の中心位置が同じ)第1パルスPA1及び第2パルスPA2を発生させるとよい。また、第1生成部113及び第2生成部116は、パルス幅PT2,PT3が同じ第1パルスPA1及び第2パルスPA2を発生させてもよい。これにより、第1パルスPA1及び第2パルスPA2の発生時期(基準点RPを除いて、0ではない時期)は、概ね一致する。
【0097】
反射波検出部114は、ステップS111にて取得する第1受信信号RS1と第1パルスPA1とに基づいて、第1反射波RW1を検出したか否かを判定する(ステップS113)。
【0098】
詳細には例えば、反射波検出部114は、第1送受信部102から出力される第1受信信号RS1と第1パルスPA1とを時間軸に沿って乗算した値を第1パルスPA1のパルス幅PT2の全体で足し合わせる。なお、第1受信信号RS1と第1パルスPA1とを時間軸に沿って乗算する際に、第1パルスPA1のレベルA2は、例えば第1受信信号RS1のレベルAR1と等しくするなど、適宜修正されてもよい。
【0099】
反射波検出部114は、足し合わせることによって得られる第1合算値と第1閾値とを比較する。反射波検出部114は、第1合算値と第1閾値とを比較した結果に基づいて、第1受信信号RS1に含まれる第1反射信号FS1を検出する。第1閾値は、予め定められる値である。
【0100】
パルス幅PT2は、パルス幅PT1より大きいため、通常、第1反射波RW1のパルス幅よりも大きい。また、第1受信信号RS1に含まれるノイズは、通常、第1反射波RW1よりも小さい。さらに、例えば外来雑音に基づくノイズ信号のように、第1反射波RW1よりも高い周波数であり、かつ、そのレベルがゼロを中心に時間軸に沿って概ね正負均一に生じるノイズの場合、時間軸に沿って加算すること(電気回路のローパスフィルタを通過させること)で、ノイズは互いに打ち消されて概ねゼロとみなせる程度に小さくなる。そのため、第1合算値は、時間軸に沿った、第1反射信号FS1と第1パルスPA1との重なり度合いを精度良く表す値となる。
【0101】
第1合算値が大きいほど、第1パルスPA1と乗算した第1受信信号RS1の当該部分が第1反射信号FS1を含む可能性が高い。そのため、反射波検出部114は、例えば第1合算値が第1閾値よりも大きい場合に、第1反射波RW1を検出したと判定する。また例えば、第1合算値が第1閾値以下である場合に、反射波検出部114は、第1反射波RW1を検出していないと判定する。
【0102】
第1受信信号RS1は、上述の通り、第1送受信部102が受信した音波に応じて出力される信号である。そのため、第1受信信号RS1は、上述の通り、第1反射波RW1だけでなく、ノイズに対応する信号を含むことがある。また、一般的に、音響導波管では第1反射波RW1の振幅変動が大きくなることがある。第1反射信号FS1と第1パルスPA1との重なり度合いに基づいて第1反射信号FS1を検出することで、ノイズや振幅変動が検出精度に与える影響を軽減することができるため、第1受信信号RS1から第1反射信号FS1を精度良く検出することができる。そのため、第1反射波RW1が受信されたことを、を精度良く検出することができる。
【0103】
第1反射波RW1を検出していないと判定された場合(ステップS113;No)、第1生成部113及び第2生成部116は、ステップS112を再び実行する。
【0104】
第1反射波RW1を検出したと判定された場合(ステップS113;No)、パルス制御部117は、ステップS113にて第1反射波RW1を検出したと判定された第1受信信号RS1と第2パルスPA1とに基づいて、第1反射波RW1の時間軸上の中心を検出したか否かを判定する(ステップS114)。
【0105】
詳細には例えば、パルス制御部117は、第1反射信号FS1を含む第1受信信号RS1と第2パルスPA2とを時間軸に沿って乗算した値を第2パルスPA2のパルス幅PT3の全体で足し合わせることで、第2合算値を求める。なお、第1受信信号RS1と第2パルスPA2とを時間軸に沿って乗算する際に、第2パルスPA2のレベルA3は、例えば第1受信信号RS1のレベルAR1と等しくするなど、適宜修正されてもよい。
【0106】
パルス制御部117は、第2合算値と第2閾値とを比較する。パルス制御部117は、第2合算値と第2閾値とを比較した結果に基づいて、第1受信信号RS1に含まれる第1反射信号FS1の時間軸上の中心を検出する。
【0107】
パルス幅PT3は、パルス幅PT1より大きいため、通常、第1反射波RW1のパルス幅よりも大きい。また、例えば外来雑音に基づくノイズ信号のように、第1反射波RW1よりも高い周波数であり、かつ、そのレベルがゼロを中心に時間軸に沿って概ね正負均一に生じるノイズの場合、時間軸に沿って加算すること(電気回路のローパスフィルタを通過させること)で、ノイズは互いに打ち消されて概ねゼロとみなせる程度に小さくなる。そのため、第2合算値は、第1反射信号FS1と第2パルスPA2との時間軸に沿った中心の一致度合いを精度良く表す値となる。
【0108】
より詳細には、第2合算値が0に近いほど、第2パルスPA2の基準点RPが第1反射信号FS1の時間軸に沿った中心に近い可能性が高い。そのため、パルス制御部117は、例えば第2合算値が第2閾値よりも小さい場合に、第1反射波RW1の中心を検出したと判定する。また例えば、第2合算値が第2閾値以上である場合に、パルス制御部117は、第1反射波RW1の中心を検出していないと判定する。
【0109】
第2閾値は、予め定められる適宜の値でよいが、例えば、第1合算値の1/1000である。一般的に、第1受信信号RS1の電圧レベルは距離Rに応じて変動するため、第2閾値が第1合算値の1/1000程度であれば、第2合算値を0とみなすことができる。
【0110】
反射波RW1の時間軸上の中心を検出していないと判定した場合(ステップS114;No)、パルス制御部117は、第2パルスPA2を発生させるタイミング(発生タイミング)を調整する(ステップS115)。
【0111】
詳細には例えば、パルス制御部117は、第2合算値が第2閾値よりも小さくなるように、第2生成部116が第2パルスPA2を発生させるタイミング(発生タイミング)を調整する。
【0112】
発生タイミングの調整方法について、
図4(c)に示す第2パルスPA2を例に説明する。
図4(c)に示す第2パルスPA2は、基準点RPより前の第1矩形波FPA2のレベルが正で、基準点RPより後の第2矩形波RPA2のレベルが負である。
【0113】
この場合において、第2合算値が正の値となるときは、基準点RPが時間軸に沿って第1反射波RW1の中心よりも遅れている。そのため、パルス制御部117は、現在の設定よりも予め定められた時間だけ早く第2パルスPA2を発生させるように、第2生成部116を制御する。
【0114】
第2合算値が負の値となるときは、基準点RPが時間軸に沿って第1反射波RW1の中心よりも早い。そのため、パルス制御部117は、現在の設定よりも予め定められた時間だけ遅く第2パルスPA2を発生させるように、第2生成部116を制御する。
【0115】
本実施の形態では、第1パルスPA1及び第2パルスPA2が同期しているので、第2パルスPA2とともに、第1パルスPA1の発生タイミングも同様に調整される。
【0116】
続けて、ステップS111以降の処理が再び実行される。次のステップS112では、ステップS115で調整された発生タイミングで第1パルスPA1及び第2パルスPA2が発生することになる。
【0117】
第1反射波RW1の時間軸上の中心を検出したと判定した場合(ステップS114;Yes)、パルス制御部117は、第1反射波RW1の時間軸上の中心を特定し(ステップS116)、測定処理(
図7参照)へ戻る。
【0118】
詳細には例えば、検出された第1反射波RW1の時間軸上の中心は、調整された第2パルスPA2の基準点RPと時間軸上で対応する。そのため、パルス制御部117は、第1反射波RW1の時間軸上の中心を、第1送受信部102が受信した第1反射波RW1の時間軸上の中心として特定する。
【0119】
ここで、第1反射波RW1の時間軸上の中心を検出したと判定した場合には(ステップS114;Yes)、パルス制御部117は、ステップS115のような発生タイミングの調整を行わない。そのため、第1パルスPA1及び第2パルスPA2は、良好な発生タイミングを維持することができる。従って、第1反射波RW1が受信された時期を正確に追跡することが可能になる。
【0120】
図7を再び参照する。
時間取得部118は、送出時期TS1と受信時期TR1とに基づいて、第1時間を求める(ステップS103)。
【0121】
詳細には例えば、時間取得部118は、ステップS101が実行された時期に基づいて、第1音波SW1の送出時期TS1を特定する。
【0122】
また例えば、時間取得部118は、ステップS102での第1反射波RW1の検出結果に基づいて、第1反射波RW1の受信時期TR1を特定する。本実施の形態では、時間取得部118は、ステップS116にて特定された第1反射波RW1の時間軸上の中心に対応する時期を第1反射波RW1の受信時期TR1として取得する。
【0123】
第1受信信号RS1は、上述の通り、第1送受信部102が受信した音に応じて出力される信号である。そのため、第1受信信号RS1は、第1反射波RW1だけでなく、ノイズに対応する信号を含むことがある。また、一般的に、音響導波管では第1反射波RW1の振幅変動が大きい。このような場合であっても、ステップS114のように第1反射波RW1の全面積の中央値を用いることで、第1反射波RW1の時間軸上の中心を精度良く検出することができる。従って、第1反射波RW1の時間軸上の中心を精度良く特定し、第1時間を正確に求めることができる。
【0124】
そして、時間取得部118は、送出時期TS1と受信時期TR1との差に基づいて、第1時間を取得する。なお、第1時間を取得する方法は、これに限られず、時間取得部118は、第1音波SW1の送出時期TS1から、第1反射波RW1の受信時期TR1までの時間を計測することで、第1時間を取得してもよい。
【0125】
距離取得部119は、ステップS103にて求められた第1時間に基づいて、第1送受信部102と第1反射部105との間の距離である伝播距離DTなどを求める(ステップS104)。
【0126】
第1時間は、第1音波SW1が第1送受信部102と第1反射部105との間を往復する時間である。そのため、伝播距離DTは、音速をvとすると、DT=v×第1時間/2の演算により求められる。
【0127】
音速v(m/s)は、温度をT(℃)として、例えば、v=331.5+0.6071×Tの演算により求められる。音速を決定するための温度には、例えば第1音響導波管101の近傍で測定された気温が採用されるとよい。第1音響導波管101が屋外に配置される場合、温度T(℃)は、一般的に、マイナス数度~50度程度である。
【0128】
また例えば、第1音響導波管101の近傍の複数の測定点で温度を計測し、その平均値が音速を決定するための温度に採用されてもよい。距離取得部119は、例えばユーザの入力により、音速vを取得してもよい。また、距離取得部119は、例えばユーザの入力により、温度Tを取得し、取得した温度と上述の式に基づいて音速vを取得してもよい。
【0129】
本実施の形態では、上述の通り、第1送受信部102と第1反射部105とはそれぞれ基準点P1と測定点P2とに対して固定されている。距離取得部119は、第1送受信部102と基準点P1との位置関係として、第1送受信部102と基準点P1との間の距離を予め保持するとよい。また、距離取得部119は、第1反射部105と測定点P2との位置関係として、第1反射部105と測定点P2との間の距離を予め保持するとよい。距離取得部119は、例えば、予め保持されたこれらの距離と、伝播距離DTとに基づいて、基準点P1と測定点P2との間の距離Rを求める。
【0130】
距離取得部119は、履歴記憶部111に記憶された測定情報を参照し、過去に求めた伝播距離DT及び距離Rを取得する。距離取得部119は、ステップS104にて求めた現在の伝播距離DTと、過去に求めた伝播距離DTとの差に基づいて、伝播距離DTの変化ΔDTを取得する。同様に、距離取得部119は、ステップS104にて求めた現在の距離Rと、過去に求めた距離Rとの差に基づいて、距離Rの変化ΔRを取得する。
【0131】
距離取得部119は、ステップS104で求めた伝播距離DTなどを含む測定情報111aを生成する(ステップS105)。距離取得部119は、生成した測定情報を履歴記憶部111に記憶させる。
【0132】
図9は、測定情報111aの構成の一例を示す図である。同図に示す測定情報は、測定時期と、伝播距離DTと、伝播距離DTの変化ΔDTと、距離Rと、距離Rの変化ΔRとを関連付ける。測定時期は、測定された時期に関する情報であり、測定された日付、時刻などを含む。伝播距離DT、距離R、変化ΔDT、変化ΔRは、いずれもステップS104で求められる距離又はその変化である。
【0133】
本実施の形態では、上述の通り、第1送受信部102と第1反射部105とは、それぞれ、基準点P1と測定点P2とに対して固定されている。そのため、変化ΔDTと変化ΔRとは概ね等しくなる。そのため、距離R自体を管理せず、その変化ΔRを管理する場合には、第1送受信部102と基準点P1との位置関係や、第1反射部105と測定点P2との位置関係は、距離取得部119に予め保持されなくてもよい。
【0134】
また、第1送受信部102と第1反射部105はそれぞれ基準点P1と測定点P2に関連付けられていればよく、例えば、例えば、第1送受信部102(例えば、第1送受信部102が第1音波SW1を送出し第1反射波RW1を受信する部位)が、基準点P1とされてもよい。また例えば、第1反射部105が測定点P2とされてもよい。
【0135】
なお、距離取得部119は、伝播距離DT、その変化ΔDT、距離R、その変化ΔRの少なくとも1つを求めればよい。また、測定情報は、距離取得部119が求めた伝播距離DT、その変化ΔDT、距離R、その変化ΔRの少なくとも1つを含めばよい。
【0136】
通信部112は、ステップS105で生成した測定情報を通信ネットワークNを介して外部装置107へ送信し(ステップS106)、測定処理を終了する。
【0137】
このような測定処理を実行することにより、第1送受信部102と第1反射部105との間の伝播距離DT又はその変化ΔDTを測定することができる。また、第1送受信部102と第1反射部105とは異なる2点間の距離R又はその変化ΔRを測定する場合であっても、任意の2点(基準点P1、測定点P2)のそれぞれに関連付けて第1送受信部102と第1反射部105を設定することで、距離R又はその変化ΔRを測定することができる。
【0138】
このような測定処理は、例えば1日、1週間、1ヶ月などの予め定められた時間や、予め定められた時間間隔で実行されてもよい。これにより、測定情報111aの履歴を収集して管理し、例えば、地表面の動きなどを監視することができる。このとき、最初の測定処理で固定又は設置された第1固定部材103、第2固定部材104及び第1音響導波管101は、そのまま固定又は設置された状態にしておいて、2回目以降の測定処理でも用いられるとよい。これにより、繰り返し実行される各測定処理で、共通の基準点P1、測定点P2及び第1音響導波管101を利用することができるので、距離Rの変化ΔRを正確に測定することができる。
【0139】
なお、測定処理は、第1時間よりも長い予め定められた時間間隔で、例えば所定回数やユーザから終了の指示を受けるまで、繰り返し実行されてもよい。そして、各測定処理で求められた距離R、その変化ΔRなどの平均値が、距離R、その変化ΔRなどとして採用されてもよい。
【0140】
これまで、本発明の実施の形態1に係る測定システム100の動作について説明した。ここから、本実施の形態に係る測定システム100の物理的な構成例について説明する。
【0141】
(測定システム100の物理的な構成例)
図10は、第1送受信部102の物理的な構成例を示す図である。第1送受信部102は、例えば、音波素子910と、音波発生器912と、受信回路914と、A/D(Analog/Digital)変換器916とを含む。
【0142】
音波素子910は、パルス状の音波を発生させるとともに音波(反射波)を受信する素子である。音波素子910は、例えば、圧電素子である。
【0143】
音波発生器912は、音波素子910にパルス状の音波を発生させる回路である。
【0144】
受信回路914は、音波素子910から出力されるアナログ信号を受信する回路である。受信回路914は、例えば、増幅回路、整流回路、フィルタ回路、バッファ回路などから構成される。
【0145】
A/D変換器916は、アナログ信号をデジタル信号に変換する回路である。
【0146】
A/D変換器916と音波発生器912とは、測定装置106に接続されて、データを送受信する。この接続は、有線であっても無線であってもよい。
【0147】
第1送受信部102は、例えば1つのユニットで構成されて、ケース918に収容される。ケース918を含むことによって、音波発生素子を保護することができるとともに、第1音響導波管101の音響的な整合をとることができる。
【0148】
なお、第1送受信部102は、配線などで接続された複数のユニットで構成されてもよい。第1送受信部102は、音波を発生させる素子と音波を受信する素子とを個別に含んでもよい。
【0149】
図11は、測定装置106の物理的な構成例を示す図である。測定装置は、物理的には例えば、バス1010と、プロセッサ1020と、メモリ1030と、ストレージデバイス1040と、ネットワークインタフェース1050と、ユーザインタフェース1060と、入出力インタフェース1070とを含む。
【0150】
バス1010は、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、ネットワークインタフェース1050、ユーザインタフェース1060、入出力インタフェース1070が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ1020などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0151】
プロセッサ1020は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などで実現されるプロセッサである。メモリ1030は、RAM(Random Access Memory)などで実現される主記憶装置である。
【0152】
ストレージデバイス1040は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又はROM(Read Only Memory)などで実現される補助記憶装置である。ストレージデバイス1040は、測定装置106の機能を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ1020がこれら各プログラムモジュールをメモリ1030に読み込んで実行することで、そのプログラムモジュールに対応する機能が実現される。
【0153】
ネットワークインタフェース1050は、測定装置106を通信ネットワークNに接続するためのインタフェースである。
【0154】
ユーザインタフェース1060は、ユーザが情報を入力するためのインタフェースとしてのタッチパネル、キーボード、マウスなど、及び、ユーザに情報を提示するためのインタフェースとしての液晶パネルなどである。
【0155】
入出力インタフェース1070は、第1送受信部102との間で信号を送受信するためのインタフェースである。
【0156】
以上、本発明の実施の形態1について説明した。
【0157】
(作用・効果)
本実施の形態によれば、測定システム100は、第1音響導波管101と、第1送受信部102と、測定装置106とを備える。第1音響導波管101は、パルス状の第1音波SW1を伝播させるための部材である。第1送受信部102は、第1音波SW1を第1音響導波管101の内部へ送出し、第1音波SW1が第1音響導波管101の内部の第1反射部105で反射した反射波(第1反射波RW1)を受信する。測定装置106は、第1音波RW1が送出されてから反射波(第1反射波RW1)が受信されるまでの第1時間に基づいて、第1送受信部102と第1反射部105との間の距離DT又はその変化ΔDTを求める。
【0158】
また本実施の形態によれば、測定装置106は、音波制御部108と、検出部109と、測定部110とを備える。音波制御部108は、パルス状の第1音波SW1を第1送受信部102に送出させる。検出部109は、第1音波SW1が第1音響導波管101の内部の第1反射部105で反射した反射波(第1反射波RW1)の受信を検出する。測定部110は、第1音波SW1が送出されてから反射波(第1反射波RW1)が受信されるまでの第1時間に基づいて、第1送受信部102と第1反射部105との間の距離DT又はその変化ΔDTを求める。
【0159】
これにより、第1送受信部102と第1反射部105を任意の2点(基準点P1、測定点P2)に関連付けて設定することで、任意の2点間の距離R又はその変化ΔRを測定することができる。従って、音波を用いて任意の2点間の距離R又はその変化ΔRを測定することが可能になる。
【0160】
また、第1音波SW1及び第1反射波RW1は第1音響導波管101の内部を伝播する。そのため、第1音波SW1及び第1反射波RW1の伝播領域を限定するとともに、これらの伝播に対する外部の影響を受け難くすることができる。そのため、第1音波SW1及び第1反射波RW1を安定して伝播させることができる。従って、音波を用いて任意の2点間の距離R又はその変化ΔRを、安定的にかつ容易に測定することが可能になる。
【0161】
また、測定システム100は機械的な可動部を殆ど含まないため、堅牢かつコンパクトな測定システム100を提供することが可能になる。さらに、音波素子910は一般的に比較的安価である。そのため、電波、光などを用いて距離を測定する場合に比べて、経済的に優れた測定システム100を提供することが可能になる。
【0162】
一般的に、距離を測定するために、光、電波、音波が用いられることがある。しかし、光、電波、音波を用いる場合、基準点P1と測定点P2との間には、これらが伝播するための直線的な空間が必要になり、その間に入り込む障害物があると、距離の測定が困難になる可能性がある。特に例えば基準点P1や測定点P2の一方又は両方を屋外に設定する場合、一般的な光、電波、音波を用いて距離を測定すると、雨、雪、霧、植生、地表面の凹凸、石などの測定環境の影響で、距離の測定が困難になることがある。さらに、測定環境の影響で、予期せぬ反射に起因するマルチパスルなどが生じて測定結果の誤差が大きくなることもある。
【0163】
本実施の形態に係る測定システム100では、基準点P1と測定点P2との間に第1音響導波管101を設置すればよい。例えば、基準点P1と測定点P2との間の直線的な空間を確保することが困難な場合であっても、第1音響導波管101を設置することは容易であることが多い。また、上述の通り、第1音波SW1及び第1反射波RW1の伝播領域を限定するとともに、これらの伝播に対する外部の影響を受け難くすることができるので、測定環境の影響を受け難くなる。そのため、一般的に距離の測定が困難である場合や、測定結果の誤差が大きくなる場合であっても、音波を用いて任意の2点間の距離R又はその変化ΔRを、安定的にかつ容易に測定することが可能になる。
【0164】
屋外で長期にわたって2点間の距離R又はその変化ΔRを観測する場合などであっても、金属、樹脂、ゴムなどで作られた第1音響導波管101であれば、損傷し難い。これによっても、音波を用いて任意の2点間の距離R又はその変化ΔRを、安定的にかつ容易に測定することが可能になる。
【0165】
また、第1音響導波管101の損傷のおそれがある場合には、測定システム100は、第1音響導波管101を内部に収容する保護管をさらに備えてもよい。これにより、より牽牛な測定システム100を提供することが可能になる。
【0166】
本実施の形態によれば、第1反射部105は、第1音響導波管101の内部で移動可能である。これにより、第1反射部105を測定点P2に容易に関連付けて位置付けることができる。従って、音波を用いて任意の2点間の距離R又はその変化ΔRを、容易に測定することが可能になる。
【0167】
特に複数回にわたって2点間の距離R又はその変化ΔRを観測する場合には、例えば、初回の測定時に配置した第1音響導波管101を、第1送受信部102を取り付けるとともに第1反射部105を内部に配置した状態で置いておくとよい。第1反射部105が移動するので、同じ2点間の距離R又はその変化ΔRの測定を容易に繰り返すことができる。従って、音波を用いて任意の2点間の距離R又はその変化ΔRを、複数回にわたって容易に測定することが可能になる。
【0168】
本実施の形態によれば、第1送受信部102を基準点P1に対して固定するための第1固定部材103を備える。これにより、第1送受信部102を基準点P1に容易に関連付けることができる。従って、音波を用いて任意の2点間の距離R又はその変化ΔRを、容易に測定することが可能になる。
【0169】
特に複数回にわたって2点間の距離R又はその変化ΔRを観測する場合には、第1送受信部102を基準点P1に対して固定して位置付けておくことができる。従って、音波を用いて任意の2点間の距離R又はその変化ΔRを、複数回にわたって容易に測定することが可能になる。
【0170】
本実施の形態によれば、第1音響導波管101の内部に配置される第1反射部105を含んでおり、第1反射部105を測定点P2に対して固定するための第2固定部材104を備える。これにより、第1反射部105を測定点P2に容易に関連付けることができる。従って、音波を用いて任意の2点間の距離R又はその変化ΔRを、容易に測定することが可能になる。
【0171】
特に複数回にわたって2点間の距離R又はその変化ΔRを観測する場合には、第1反射部105を測定点P2に対して固定して位置付けておくことができる。従って、音波を用いて任意の2点間の距離R又はその変化ΔRを、複数回にわたって容易に測定することが可能になる。
【0172】
本実施の形態によれば、第1音響導波管101は、可撓性を有する。これにより、凹凸、障害物などがある場所であっても、第1音響導波管101を容易に配置することができる。従って、音波を用いて任意の2点間の距離R又はその変化ΔRを、容易に測定することが可能になる。
【0173】
本実施の形態によれば、第1反射波RW1が受信される時期TR1は、第1送受信部102が第1反射波RW1の時間軸上の中心を受信した時期である。測定装置106は、第1送受信部102から出力される第1受信信号RS1に基づいて、第1送受信部102が受信する第1反射波RW1の時間軸上の中心を検出する。
【0174】
これにより、第1反射波RW1の受信時期TR1を正確に取得することができる。また、測定を繰り返す場合、いずれの測定においても、第1反射波RW1の時間軸上の中心に基づいて、その受信時期TR1を決定することができる。そのため、測定のたびに、第1反射波RW1の時間軸上の異なる点に基づいてその受信時期TR1を決定することが殆どなくなるので、第1反射波RW1の受信時期TR1を安定して取得することができる。従って、音波を用いて任意の2点間の距離R又はその変化ΔRを、精度良く安定して測定することが可能になる。
【0175】
本実施の形態によれば、第1送受信部102は、圧電素子を含む。圧電素子は一般的に比較的安価な素子である。従って、経済的に優れた測定システム100を提供することが可能になる。
【0176】
本実施の形態によれば、距離DT,R、距離の変化ΔDT,ΔRの少なくとも1つを含む測定情報111aを外部装置107へ送信する通信部112を備える。これにより、基準点P1や測定点P2から離れた場所においても、測定情報111aを容易に管理することができる。従って、音波を用いて任意の2点間の距離R又はその変化ΔRを、容易に管理することが可能になる。
【0177】
<変形例1>
第1反射信号FS1が第1受信信号RS1のどこに含まれるか分からない場合、反射波検出部114は、第1反射波RW1を検出するために、時間軸に沿って広範囲の第1受信信号RS1を探索する必要がある。そこで、第1生成部113及び第2生成部116は、第1反射波RW1を探索するためのサーチモードと、第1反射波RW1を精度良く検出するための測距モードとで、パルス幅PT2,PT3を変更してもよい。
【0178】
例えば、サーチモードでのパルス幅PT2,PT3は、測距モードでのパルス幅PT2,PT3よりも大きいパルス幅が採用されるとよい。測距モードでのパルス幅PT2,PT3は、例えば、第1反射波RW1のパルス幅の2倍程度が採用されるとよい。
【0179】
詳細には例えば、パルス幅PT2,PT3の初期値には、サーチモードでのパルス幅PT2,PT3が設定されるとよい。そして、第1反射波RW1を検出していない間、第1生成部113及び第2生成部116は、サーチモードでのパルス幅PT2,PT3で第1パルスPA1及び第2パルスPA2を発生させるとよい。第1反射波RW1を検出した後に、第1生成部113及び第2生成部116は、測距モードでのパルス幅PT2,PT3で第1パルスPA1及び第2パルスPA2を発生させるとよい。
【0180】
図12は、本変形例に係る検出処理(ステップS102)の詳細例を示すフローチャートである。
【0181】
実施の形態1と同様のステップS111の後に、第1生成部113及び第2生成部116は、それぞれ、サーチモードで第1パルスPA1及び第2パルスPA2を発生させる(ステップS112a)。
【0182】
反射波検出部114は、ステップS111にて取得する第1受信信号RS1と、ステップS112aにて発生した第1パルスPA1とに基づいて、第1反射波RW1を検出したか否かを判定する(ステップS113a)。ここでの第1反射波RW1を検出する方法は、ステップS113と同様でよい。
【0183】
反射波RW1を検出していないと判定された場合(ステップS113a;No)、反射波検出部114は、ステップS112aに戻る。第1反射波RW1を検出したと判定された場合(ステップS113a;Yes)、第1生成部113及び第2生成部116は、それぞれ、測距モードで第1パルスPA1及び第2パルスPA2を発生させる(ステップS112b)。
【0184】
反射波検出部114は、ステップS113aにて第1反射波RW1を検出したと判定された第1受信信号RS1と、ステップS112bにて発生した第1パルスPA1とに基づいて、第1反射波RW1を検出したか否かを判定する(ステップS113b)。ここでの第1反射波RW1を検出する方法は、ステップS113と同様でよい。
【0185】
反射波RW1を検出していないと判定された場合(ステップS113b;No)、第1生成部113及び第2生成部116は、ステップS112bを再び実行する。
【0186】
第1反射波RW1を検出したと判定された場合(ステップS113b;Yes)、パルス制御部117は、ステップS113bにて第1反射波RW1を検出したと判定された第1受信信号RS1と、ステップS112bで発生した第2パルスPA1とに基づいて、第1反射波RW1の時間軸上の中心を検出したか否かを判定する(ステップS114)。ここでの第1反射波RW1の時間軸上の中心を検出する方法は、実施の形態1のステップS114と同様でよい。
【0187】
続けて、実施の形態1と同様のステップS115~S116が実行されるとよい。
【0188】
本変形例によれば、第1反射波RW1を検出する前のパルス幅PT2,PT3を、第1反射波RW1を検出した後のパルス幅PT2,PT3よりも大きくする。これにより、第1反射波RW1を速く検出することができる。従って、音波を用いて任意の2点間の距離R又はその変化ΔRを速く測定することが可能になる。
【0189】
<実施の形態2>
実施の形態1で説明したように、第1時間に基づいて伝播距離DTを求めるために、音速vを用いる。しかし、特に第1音響導波管101が屋外に配置されている場合などには、第1音響導波管101の一部に直射日光が当たり、残部が日陰になるなど、第1音響導波管101の内部における全体的な温度を測定することが難しく、その結果、音速vを正確に求めることが難しいことがある。
【0190】
実施の形態2では、第1音響導波管101に並べて設けた第2音響導波管を用いて、第1音響導波管101の内部における音速vを求める例を説明する。本実施の形態では、説明を簡潔にするため、実施の形態1と異なる点を主に説明し、重複する説明は適宜省略する。
【0191】
本発明の実施の形態2に係る測定システム200は、その構成例を
図13に示すように、
実施の形態1と同様の第1音響導波管101、第1送受信部102、第1固定部材103、第1反射部105、第2固定部材104及び外部装置107を備える。測定システム200は、実施の形態1に係る測定装置106に代わる測定装置206を備える。測定システム200は、さらに、第2音響導波管220と、第2送受信部221と、第2反射部223を含む固定部材222を備える。
【0192】
第2音響導波管220は、音響導波管である。第2音響導波管220は、パルス状の第2音波SW2を伝播させるために、第1音響導波管101に並べて設けられる。第2音響導波管220の長さは、第1音響導波管101の長さと同程度であってもよいが、適宜変更されてもよい。
【0193】
第2音響導波管220は、第1音響導波管101の近傍に分離して並べられてもよいが、第1音響導波管101とともに共通の収容管(図示せず)の中に収容されてもよい。これにより、第1音響導波管101及び第2音響導波管220を保護することができる。また、第1音響導波管101と第2音響導波管220とを並べて配置することが容易になる。
【0194】
第2音響導波管220は、音波が内部で伝播する環境を第1音響導波管101とできるだけ同じにするために、第1音響導波管101と同じ材料で作られることが望ましい。また、第2音響導波管220は、第1音響導波管101同径であることが望ましい。
【0195】
第2送受信部221は、第2音波SW2を第2音響導波管220の内部へ送出し、第2音波SW2が第2音響導波管220の内部の第2反射部223で反射した第2反射波RW2を受信する。第2送受信部221の構成の詳細は、第1送受信部102と同様でよい。
【0196】
すなわち、第2送受信部221は、測定装置206からの送出信号を受けて、第2音波SW2を発生させる。第2送受信部221は、音波を受信すると、受信した音に応じた第2受信信号RS2を測定装置206へ出力する。第2送受信部221が第2反射波RW2を受信すると、第2送受信部221から出力される第2受信信号RS2は、第2反射波RW2に応じた第2反射信号FS2を含む。また、第2送受信部221は、第2反射波RW1以外のノイズを受信し、ノイズに応じたノイズ信号を含む第2受信信号RS2を出力することがある点も、第1送受信部102と同様である。
【0197】
第2送受信部221は、例えば、第2音響導波管220の一端又は一端近傍に配置される。本実施の形態では、第2送受信部221は、第2音響導波管220の一端に固定される。
【0198】
第2反射部223は、第2送受信部221から送出された第2音波SW2を反射する部位であり、第2音響導波管220の内部に配置される。第2反射部223は、実施の形態1に係る第1反射部105と同様に構成されてもよいが、本実施の形態では固定部材222に含まれる。固定部材222は、円板状の部材であり、第2音響導波管220の他端又は他端近傍に配置される。
【0199】
本実施の形態では、固定部材222は、第2音響導波管220の他端に嵌まって固定される。第2反射部223は、固定部材222が有する2つの主面のうち、第2送受信部221に対向する面を形成する部位である。第2反射部223は、例えば平面を形成する。なお、第2反射部223は、第2音波SW2を反射する形状であればよく、平面に限らず、曲面等であってもよい。なお、固定部材222の形状は、平板状に限られず、適宜変更されてもよい。
【0200】
第2送受信部221と第2反射部223が第2音響導波管220に固定されるので、第2送受信部221と第2反射部223との間の距離である参照距離RDは、概ね一定である。参照距離RDは、予め測定されて既知である。
【0201】
(測定装置206の機能的な構成例)
測定装置206は、実施の形態1に係る測定装置106と同様の機能を備える。測定装置206は、さらに、第2時間と参照距離RDとに基づいて、音速vを求める。第2時間は、第2送受信部221によって第2音波SW2が送出されてから第2反射波RW2が受信されるまでの時間である。
【0202】
本実施の形態では、測定装置206が音速vを求めるために、実施の形態1に係る測定装置106が備える機能に追加して備える機能について主に説明する。
【0203】
測定装置206は、その機能的な構成例を
図14に示すように、実施の形態1と同様の測定部110、履歴記憶部111及び通信部112を備える。測定装置206は、実施の形態1に係る音波制御部108及び検出部109に代わる音波制御部208及び検出部209を備える。測定装置206は、さらに、音速測定部224を備える。
【0204】
音波制御部208は、実施の形態1に係る音波制御部108と同様の機能を備える。音波制御部208は、さらに、パルス状の第2音波SW2を第2送受信部221に送出させる。第2音波SW2は、第1音波SW1と同様である。ただし、第2音波SW2の大きさ、パルス幅の一方又は両方は、第1音波SW1の大きさA1、パルス幅PT1と異なっていてもよい。
【0205】
検出部209は、実施の形態1に係る検出部109と同様の機能を備える。検出部209は、さらに、第2送受信部221が第2反射波RW2を受信したことを検出する。例えば、検出部209は、第2送受信部221から出力される第2受信信号RS2に基づいて、第2送受信部221が第2反射波RW2を受信したことを検出する。
【0206】
検出部209は、実施の形態1に係る検出部109(第1生成部113、反射波検出部114、中心特定部115、第2生成部116、パルス制御部117)の説明において、「第1送受信部102」「第1反射波RW1」のそれぞれを「第2送受信部221」「第2反射波RW2」に置き換えた機能をさらに備える。
【0207】
これにより、検出部209は例えば、第2受信信号RS2と第1パルスPA1とに基づいて、第2反射波RW2を検出する。また例えば、検出部209は、第2送受信部221が受信した第2反射波RW2の時間軸上の中心を特定する。
【0208】
音速測定部224は、第2時間と参照距離RDとに基づいて、音速vを求める。
【0209】
詳細には、音速測定部224は、第2音波SW2の送出時期TS2と第2反射波RW2の受信時期TR2とに基づいて、第2時間を求める。送出時期TS2は、第2送受信部221が第2音波SW2を送出した時期であり、例えば、第2送受信部221が第2音波SW2の時間軸上の中心を送出した時期である。受信時期TR2は、第2送受信部221が第2反射波RW2を受信した時期であり、例えば、第2送受信部221が第2反射波RW2の時間軸上の中心を受信した時期である。
【0210】
これまで、本発明の実施の形態2に係る測定システム200の機能的な構成について主に説明した。ここから、本実施の形態に係る測定システム200の動作について説明する。
【0211】
(測定システム200の動作)
測定システム200は、実施の形態1と同様の測定処理を実行する。これに加えて、測定システム200は、
図15にフローチャートの一例を示す音速測定処理を実行する。音速測定処理は、音速vを測定するための処理である。
【0212】
測定処理を開始する前に、第2音響導波管220が第1音響導波管101とともに基準点P1と測定点P2との間に配置される。第2送受信部221は、第2音響導波管220の一端に固定される。固定部材222(第2反射部223)は、第2音響導波管220の他端に固定される。
【0213】
このような準備の後に、測定装置206は、例えばユーザからの指示に応じて音速測定処理を開始する。
【0214】
音波制御部208は、第2送受信部221に第2音波SW2を送出させる。例えば、音波制御部208は、第2音波SW2を送出させるための送出信号を第2送受信部221に出力する。これに応じて、第2送受信部221は、第2音波SW2を送出する(ステップS201)。
【0215】
ステップS201において、ステップS101と同様に、第2送受信部221は、1つのパルス状の第2音波SW2を送出するとよい。ステップS201を実行した後、第2送受信部221は、第2音響導波管220の内部の音波を受信し、受信した音波に応じた第2受信信号RS2を出力する。
【0216】
検出部209は、第2送受信部221から出力される第2受信信号RS2に基づいて、第2送受信部221が第2反射波RW2を受信したことを検出する(ステップS202)。
【0217】
検出処理(ステップS202)の詳細は、実施の形態1に係る検出処理(ステップS102)と概ね同様でよい。すなわち、検出処理(ステップS202)では、実施の形態1に係る検出処理(ステップS102)の説明において、「第1送受信部102」「第1受信信号RS1」「第1反射波RW1」「ステップS101」「第1時間」のそれぞれを、「第2送受信部221」「第2受信信号RS2」「第2反射波RW2」「ステップS201」「第2時間」に置き換えた処理が実行される。
【0218】
音速測定部224は、送出時期TS2と受信時期TR2とに基づいて、第2時間を求める(ステップS203)。
【0219】
ステップS203の詳細は、実施の形態1に係るステップS103と概ね同様でよい。すなわち、ステップS203では音速測定部224が、実施の形態1に係るステップS103の説明において、「第1送受信部102」「第1音波SW1」「第1反射波RW1」「ステップS101」「第1時間」のそれぞれを、「第2送受信部221」「第2音波SW2」「第2反射波RW2」「ステップS201」「第2時間」に置き換えた処理を実行する。
【0220】
音速測定部224は、ステップS203にて求めた第2時間で参照距離RDを除することによって音速vを求め(ステップS204)、音速測定処理を終了する。
【0221】
音速測定処理を実行することで、第2音響導波管220における音速vを求めることができる。第1音響導波管101は、第2音響導波管220に並べて設けられている。そのため、第2音響導波管220における音速vは、通常、第1音響導波管101における音速vと概ね等しい。従って、第1音響導波管101における音速vを求めることができる。
【0222】
測定処理では、音速測定処理で求めた音速vを用いて、伝播距離DTを求めるとよい。
【0223】
物理的には、第2送受信部221、測定装置206は、第1送受信部102、測定装置106のそれぞれと同様に構成されるとよい。
【0224】
以上、本発明の実施の形態2について説明した。
【0225】
(作用・効果)
本実施の形態によれば、測定システム200は、第2音響導波管220と、第2反射部223と、第2送受信部221とを備える。測定装置206は、音速測定部224を備える。
【0226】
第2音響導波管220は、第1音響導波管101に並べて設けられ、パルス状の第2音波SW2を伝播させるための部材である。第2反射部223は、第2音響導波管220に配置され、第2音波SW2を反射する。第2送受信部221は、第2音波SW2を第2音響導波管220の内部へ送出し、第2音波SW2が第2反射部223で反射した第2反射波RW2を受信する。音速測定部224は、第2音波SW2が送出されてから第2反射波RW2が受信されるまでの第2時間と、第2送受信部221と第2反射部223との間の距離(参照距離RD)と、に基づいて、音速vを求める。
【0227】
第2音響導波管220における音速vを求めることができる。上述の通り、第2音響導波管220における音速vは、通常、第1音響導波管101における音速vと概ね等しいので、第1音響導波管101における音速vを求めることができる。従って、音波を用いて任意の2点間の距離又はその変化を、精度良く測定することが可能になる。
【0228】
<実施の形態3>
実施の形態1では、測定システム100が第1反射部105(第2固定部材104)を備える例を説明した。しかし、第1反射部は液面であってもよい。実施の形態3では、第1反射部が液面の例を説明する。本実施の形態では、説明を簡潔にするため、実施の形態1と異なる点を主に説明し、重複する説明は適宜省略す
る。
【0229】
本発明の実施の形態3に係る測定システム300は、その構成例を
図16に示すように、
実施の形態1に係る第1音響導波管101に代わる第1音響導波管301と、実施の形態1と同様の第1送受信部102、測定装置106及び外部装置107とを備える。
【0230】
第1音響導波管301は、実施の形態1と同様に、音波を伝播させるための中空の管である。本実施の形態に係る第1音響導波管301は、実施の形態1に係る第1音響導波管101とは、設置態様が異なる。第1音響導波管301は、下端から内部の途中まで液体が満たされ、その液面が反射部305となる。このような反射部305は、実施の形態1に係る第1反射部105と同様に、第1音響導波管301の内部で移動可能である。
【0231】
例えば、
図16に例示するように、第1音響導波管301は、地中に埋設される。この場合、第1音響導波管301の途中まで満たす液体は、例えば、地下水である。また例えば、図示しないが、第1音響導波管301は、液体が内部に注入される連通管の一部であってもよく、この場合に、第1音響導波管301の途中まで満たす液体は、水などの適宜の液体でよい。
【0232】
第1音響導波管301は、設置態様を除いて、実施の形態1に係る第1音響導波管101と同様に構成されてよい。例えば、第1音響導波管301の形状、寸法、材料、材質などは、実施の形態1に係る第1音響導波管101と同様であってもよく、適宜変更されてもよい。
【0233】
本実施の形態では、第1送受信部102は、第1音響導波管301の上端又は上端近傍に固定される。これにより、第1送受信部102は、実施の形態1と同様に、第1音波SW1を第1音響導波管101の内部へ送出し、第1音波SW1が第1音響導波管101の内部の第1反射部105で反射した第1反射波RW1を受信する。
【0234】
本実施の形態に係る測定システム300は、実施の形態1に係る測定システム100と同様に動作するとよい。
【0235】
第1送受信部102から送出される第1音波SW1は、反射部305で第1音響導波管301の内部の第1反射部305で反射する。そして、第1送受信部102は、第1反射部305で反射した第1反射波RW1を受信する。そのため、測定装置106は、実施の形態1と同様に、第1音波SW1が送出されてから第1反射波RW1が受信されるまでの第1時間に基づいて、第1送受信部102と第1反射部305との間の距離DT又はその変化ΔDTを求めることができる。伝播距離DTの変化ΔDTは、実施の形態1と同様に、過去に求めた伝播距離DTと現在の伝播距離DTとに基づいて、伝播距離DTの変化ΔDTを求めることができる。
【0236】
図16に示す例では、伝播距離DTは、第1送受信部102(例えば、音波を送受信する部位)と、反射部305である液面との間の距離である。地表面から地下水の液面までの距離Rを測定する場合、例えば、地表面から上方に突き出している部分の長さ(地上長さL)を予め測定しておくとよい。そして、距離取得部119が地上長さLを予め保持し、伝播距離DTから地上長さLを差し引く演算をすることで、距離Rを測定することができる。距離Rの変化ΔRを求める場合、実施の形態1と同様に、過去に求めた距離Rと現在の距離Rとに基づいて、距離Rの変化ΔRを求める。
【0237】
以上、本発明の実施の形態3について説明した。
【0238】
(作用・効果)
本実施の形態によれば、第1反射部305は、第1音響導波管301の内部を途中まで満たす液体の液面である。
【0239】
これにより、第1音響導波管301の内部を途中まで液体を満たすだけで、第1送受信部102から液面までの距離などを測定することができる。従って、音波を用いて第1送受信部102と液面との距離又はその変化を測定することが可能になる。
【0240】
例えば、地下水の水位の変化を測定する場合、第1送受信部102を取り付けた第1音響導波管301を地中に埋設した状態で置いておけばよい。測定のたびに第1音響導波管301を地中に埋設する必要はないので、地下水の水位の変化を容易に測定することができる。
【0241】
なお、第1音響導波管301は、上述したように、液体が内部に注入される連通管の一部であってもよい。これにより、離れた2点の高さの差を測定するための水盛りに適用することができる。従って、離れた2点の高さの差を容易に測定することが可能になる。
【0242】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態及び変形例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。例えば、本発明は、これまで説明した実施の形態及び変形例の一部又は全部を適宜組み合わせた形態、その形態に適宜変更を加えた形態をも含む。また例えば、方法、処理などに含まれる複数の工程の順番は、内容的に支障のない範囲で変更されてもよい。
【0243】
例えば、実施の形態3においても、実施の形態2を適用することができる。第2音響導波管220を第1音響導波管301に並べて埋めておくことで、第1音響導波管301の内部における正確な音速vを求めて、より正確に測定することができる。
【符号の説明】
【0244】
100,200,300 測定システム
101,301 第1音響導波管
102 第1送受信部
103 第1固定部材
104 第2固定部材
104a 固定部
104b 円板部
105,305 第1反射部
106,206 測定装置
107 外部装置
108,208 音波制御部
109,209 検出部
110 測定部
111 履歴記憶部
111a 測定情報
112 通信部
113 第1生成部
114 反射波検出部
115 中心特定部
116 第2生成部
117 パルス制御部
118 時間取得部
119 距離取得部
220 第2音響導波管
221 第2送受信部
222 固定部材
223 第2反射部
224 音速測定部
【手続補正書】
【提出日】2023-03-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1音響導波管と、
パルス状の第1音波を前記第1音響導波管の内部へ送出し、前記第1音波が前記第1音響導波管の内部の第1反射部で反射した第1反射波を受信する第1送受信部と、
前記第1音波が送出されてから前記第1反射波が受信されるまでの第1時間に基づいて、前記第1送受信部と前記第1反射部との間の距離又はその変化を求める測定装置とを備える
測定システム。
【請求項2】
前記第1反射部は、前記第1音響導波管の内部で移動可能である
請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記第1音響導波管の内部に配置される前記第1反射部をさらに備える
請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記第1反射部は、前記第1音響導波管の内部を途中まで満たす液体の液面である
請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項5】
前記第1音響導波管は、前記液体が内部に注入される連通管の一部である
請求項4に記載の測定システム。
【請求項6】
前記第1送受信部は、基準点に対して固定されている
請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項7】
前記第1音響導波管に並べて設けられ、パルス状の第2音波を伝播させるための第2音響導波管と、
前記第2音響導波管に配置され、前記第2音波を反射する第2反射部と
前記第2音波を前記第2音響導波管の内部へ送出し、前記第2音波が前記第2反射部で反射した第2反射波を受信する第2送受信部とをさらに備え、
前記測定装置は、
前記第2音波が送出されてから前記第2反射波が受信されるまでの第2時間と、前記第2送受信部と前記第2反射部との間の距離と、に基づいて、音速を求める音速測定部
を含む
請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項8】
前記第1音響導波管は、可撓性を有する
請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項9】
前記第1反射波が受信される時期は、前記第1送受信部が前記第1反射波の時間軸上の中心を受信した時期であり、
前記測定装置は、前記第1送受信部から出力される第1受信信号に基づいて、前記第1送受信部が受信する前記第1反射波の時間軸上の中心を検出する
請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項10】
前記第1送受信部は、圧電素子を含む
請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項11】
前記距離又はその変化を含む測定情報を外部装置へ送信する通信部をさらに備える
請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項12】
パルス状の第1音波を第1音響導波管の内部へ送出し、
前記第1音波が前記第1音響導波管の内部の第1反射部で反射した第1反射波を受信し、
前記第1音波が送出されてから前記第1反射波が受信されるまでの第1時間に基づいて、前記第1送受信部と前記第1反射部との間の距離又はその変化を求める
測定方法。