(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176504
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド、およびサーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/335 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
B41J2/335 101F
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088822
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】中久保 一也
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065JF03
2C065JF05
2C065JF16
(57)【要約】
【課題】 保護層の耐摩耗性を向上させるのに適したサーマルプリントヘッドを提供する。
【解決手段】 サーマルプリントヘッドA1は、厚さ方向zのz1側を向く主面11を有する基板1と、主面11の上に配置され、主走査方向に配列された複数の発熱部41を有する抵抗体層4と、主面11の上に配置され、且つ抵抗体層4に導通する配線層3と、少なくとも抵抗体層4を覆う保護層5と、を備え、保護層5(第2層52)は、ガラスと添加物粒子とを含んで構成されており、前記添加物粒子は、窒化ホウ素粒子を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の一方側を向く主面を有する基板と、
前記主面の上に配置され、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、
前記主面の上に配置され、且つ前記抵抗体層に導通する配線層と、
少なくとも前記抵抗体層を覆う保護層と、を備え、
前記保護層は、ガラスと添加物粒子とを含んで構成されており、
前記添加物粒子は、窒化ホウ素粒子を含む、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記保護層は、前記抵抗体層の上に積層された複数の層を含み、
前記複数の層の少なくともいずれかは、前記窒化ホウ素粒子を含む、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記保護層は、第1層および第2層を含む前記複数の層によって構成されており、
前記第1層は、前記抵抗体層に接しており、
前記第2層は、前記複数の層のうち前記厚さ方向の一方側の端に位置し、且つ前記厚さ方向に見て前記抵抗体層に重なっており、
前記第2層は、前記窒化ホウ素粒子を含む、請求項2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記第1層に前記窒化ホウ素粒子が含まれていない、請求項3に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記第2層における前記添加物粒子の配合比率は、5~80重量%である、請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記第2層における前記窒化ホウ素粒子の配合比率は、10~30重量%である、請求項5に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記保護層は、前記添加物粒子としてアルミナ粒子を含み、
前記第2層における前記アルミナ粒子の配合比率は、0~70重量%である、請求項5に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記第2層の厚さは、2~6μmである、請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
前記窒化ホウ素粒子の粒径は、前記第2層の厚さ以下である、請求項8に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
前記窒化ホウ素粒子の粒径は、0~4μmである、請求項9に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項11】
前記保護層は、前記第1層および前記第2層からなり、
前記第1層の厚さは、前記第2層の厚さよりも大である、請求項8に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項12】
前記第2層は、酸化鉛を含まない無鉛ガラスにより構成される、請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項13】
前記第1層の軟化点は、前記第2層の軟化点よりも高い、請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項14】
前記第1層の軟化点は、前記第2層の軟化点以下であり、
前記配線層は、前記抵抗体層に対して副走査方向に離隔して配置され、且つ前記主走査方向に延びる共通部を有し、
前記第2層は、前記厚さ方向に見て前記共通部に重ならない、請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項15】
前記主面の上に配置されたグレーズ層をさらに備え、
前記抵抗体層は、前記グレーズ層の上に配置されている、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドと、
前記複数の発熱部に対向して配置されたプラテンと、を備える、サーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッド、およびサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のサーマルプリントヘッドの一例が開示されている。同文献に開示のサーマルプリントヘッドは、基板、グレーズ層、電極層、抵抗体層、保護層および駆動ICを備える。基板は、絶縁材料からなる板状の部材であり、たとえばアルミナ(Al2O3)などのセラミックからなる。グレーズ層は、基板の表面に形成されており、たとえばガラスからなる。電極層は、グレーズ層上に形成されており、抵抗体層に選択的に電流を流すための電流経路を構成している。抵抗体層は、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する。駆動ICは、各発熱部に流す電流を制御する。保護層は、少なくとも抵抗体層を覆っている。
【0003】
このような構成のサーマルプリントヘッドにおいて、複数の発熱部を発熱させるとともに、感熱紙などの印刷媒体を保護層に押し当てながら副走査方向に送ることで、前記印刷媒体に印字する。抵抗体層(複数の発熱部)を覆う保護層においては、印刷媒体との接触を繰り返すことにより、耐摩耗性が要求される。また、近年、印刷速度の高速化が進められている。さらに、印刷媒体の多様化にともない、比較的硬質な印刷媒体が用いられる場合がある。このような状況により、保護層の耐摩耗性の向上が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、保護層の耐摩耗性を向上させて、印刷媒体に適切に印刷可能なサーマルプリントヘッドを提供することを主たる課題とする。
【0006】
本開示の第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、厚さ方向の一方側を向く主面を有する基板と、前記主面の上に配置され、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、前記主面の上に配置され、且つ前記抵抗体層に導通する配線層と、少なくとも前記抵抗体層を覆う保護層と、を備え、前記保護層は、ガラスと添加物粒子とを含んで構成されており、前記添加物粒子は、窒化ホウ素粒子を含む。
【0007】
本開示の第2の側面によって提供されるサーマルプリンタは、本開示の第1の側面に係るサーマルプリントヘッドと、前記複数の発熱部に対向して配置されたプラテンと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、保護層の耐摩耗性の向上を図ることができる。
【0009】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
【
図3】
図3は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
【
図6】
図6は、本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
【
図8】
図8は、本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
【
図10】
図10は、本開示の第4実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
【
図12】
図12は、本開示の第5実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
【
図14】
図14は、本開示の第6実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
本開示における「第1」、「第2」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0013】
本開示において、「ある物Aがある物Bに形成されている」および「ある物Aがある物B上に形成されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接形成されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに形成されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物Bに配置されている」および「ある物Aがある物B上に配置されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接配置されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに配置されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物B上に位置している」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに接して、ある物Aがある物B上に位置していること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物が介在しつつ、ある物Aがある物B上に位置していること」を含む。また、「ある物Aがある物Bにある方向に見て重なる」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bのすべてに重なること」、および、「ある物Aがある物Bの一部に重なること」を含む。また、本開示において「ある面Aが方向B(の一方側または他方側)を向く」とは、面Aの方向Bに対する角度が90°である場合に限定されず、面Aが方向Bに対して傾いている場合を含む。
【0014】
<第1実施形態>
図1~
図5は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA1は、基板1、グレーズ層2、配線層3、抵抗体層4、保護層5、複数のワイヤ61、駆動IC71、保護樹脂72およびコネクタ73を備えている。
【0015】
図1は、サーマルプリントヘッドA1を示す平面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う概略断面図である。
図3は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大平面図である。
図4は、
図2の一部を拡大した要部拡大断面図である。
図5は、
図4の一部を拡大した要部拡大断面図である。なお、理解の便宜上、
図1および
図3においては、保護層5を省略している。
図4においては、コネクタ73を省略している。また、これらの図において、基板1の厚さ方向を「厚さ方向z」という。
図2、
図4の上方は、「厚さ方向zの一方側」であり、「厚さ方向zのz1側」と呼ぶ。
図2、
図4の下方は、「厚さ方向zの他方側」であり、「厚さ方向zのz2側」と呼ぶ。また、「平面視」とは、厚さ方向zに見たときをいう。さらに、サーマルプリントヘッドA1における主走査方向を「主走査方向x」といい、サーマルプリントヘッドA1における副走査方向を「副走査方向y」という。副走査方向yについては、
図1、
図3の下方(
図2、
図4の左方)は印刷媒体が送られてくる上流側であり、「副走査方向yのy1側」と呼ぶ。
図1、
図3の上方(
図2、
図4の右方)は印刷媒体が排出される下流側であり、「副走査方向yのy2側」と呼ぶ。
【0016】
サーマルプリントヘッドA1は、印刷媒体82に印字を施するサーマルプリンタPr(
図2参照)に組み込まれるものである。サーマルプリンタPrは、サーマルプリントヘッドA1およびプラテンローラ81を備える。プラテンローラ81は、サーマルプリントヘッドA1に正対する。印刷媒体82は、サーマルプリントヘッドA1とプラテンローラ81との間に挟まれ、このプラテンローラ81によって、副走査方向yに搬送される。このような印刷媒体82としては、たとえばバーコードシールおよびレシートを作成するための感熱紙が挙げられる。プラテンローラ81に替えて、平坦なゴムからなるプラテンを使用してもよい。このプラテンは、大きな曲率半径を有する円柱状のゴムにおける、断面視して弓形状の一部を含む。本開示において、「プラテン」という用語は、プラテンローラ81と平坦なプラテンとの双方を含む。
【0017】
基板1は、たとえばAl
2O
3などのセラミックからなり、その厚さがたとえば0.5~1.5mm程度とされている。
図1に示すように、基板1は、主走査方向xに長く延びる長矩形状とされている。基板1は、主面11を有する。主面11は、厚さ方向zのz1側を向く。グレーズ層2、配線層3、抵抗体層4、保護層5、駆動IC71および保護樹脂72の各々は、基板1の主面11上に配置されている。コネクタ73は、外部の機器との接続を行うためのものであり、たとえば、基板1の副走査方向yのy1側の端部に設けられている。
【0018】
グレーズ層2は、基板1上に配置されており、例えば非晶質ガラスなどのガラス材料からなる。このガラス材料の軟化点は、たとえば800~850℃である。本実施形態のグレーズ層2は、一定の厚みを有するように形成されており、厚さ方向zのz1側を向く略平坦なグレーズ主面21を有している。グレーズ層2の厚みは、たとえば10~300μmである。
【0019】
サーマルプリントヘッドA1は、いわゆる厚膜型と呼ばれる構成を備えており、厚膜印刷を利用して製作される。グレーズ層2は、ガラスペーストを基板1上に厚膜印刷したのちに、これを焼成することにより形成されている。グレーズ層2は、厚膜形成技術によって形成されている。
【0020】
配線層3は、抵抗体層4に通電するための経路を構成するためのものであり、グレーズ層2のグレーズ主面21上に配置されている。配線層3は、抵抗体層4の比抵抗値よりも小さな比抵抗値を有するように形成されている。配線層3は、たとえば銀(Ag)を主成分とした導電体からなる。配線層3の厚さの一例を挙げると、配線層3の厚さは、たとえば0.5~30μm程度である。
【0021】
図3~
図5に示すように、配線層3は、共通電極31、複数の個別電極32、複数の信号配線部35および複数のパッド部36を有している。
【0022】
共通電極31は、共通部311および複数の共通電極帯状部312を有する。具体的には、共通部311は、抵抗体層4に対して副走査方向yのy2側に離隔して配置されている。共通部311は、主走査方向xに沿って延びており、副走査方向yの幅寸法が比較的大きくされている。複数の共通電極帯状部312は、各々が共通部311から副走査方向yのy1側に延びており、主走査方向xに等ピッチで配列されている。
【0023】
複数の個別電極32は、抵抗体層4に対して部分的に通電するためのものであり、共通電極31に対して逆極性となる部位である。個別電極32は、抵抗体層4から駆動IC71に向かって延びている。複数の個別電極32は、主走査方向xに配列されており、各々が個別電極帯状部33および連結部34を有している。
【0024】
各個別電極帯状部33は、副走査方向yに延びた帯状部分であり、共通電極31の隣り合う2つの共通電極帯状部312の間に位置している。連結部34は、個別電極帯状部33から駆動IC71に向かって延びる部分であり、そのほとんどが副走査方向yに沿った部位および副走査方向yに対して傾斜した部位を有している。連結部34は、副走査方向yのy1側において、主走査方向xに比較的狭い間隔で配列されている。当該副走査方向yのy1側において隣り合う連結部34どうしの間隔は、たとえば100μm以下程度となっている。
【0025】
複数の信号配線部35は、コネクタ73と駆動IC71とに接続される配線パターンを構成している。
図4においては1つの信号配線部35のみ表れているが、複数の信号配線部35は、駆動IC71の近傍において、主走査方向xに配列されるとともに各々が副走査方向yに延びている。なお、サーマルプリントヘッドA1に使用される駆動IC71は、通常、長矩形状の平面形状を有する(
図1参照)。駆動IC71の長辺は、抵抗体層4が延びる方向である主走査方向xに沿う。
【0026】
図3、
図4に示すように、複数のパッド部36は、複数のワイヤ61を介して駆動IC71と接続される部分である。複数のパッド部36は、主走査方向xおよび副走査方向yに複数ずつ配列されている。複数のパッド部36は、複数の連結部34(個別電極32)のいずれかの副走査方向yのy1側の端部、または複数の信号配線部35のいずれかの副走査方向yのy2側の端部につながっている。複数のパッド部36の各々には、駆動IC71と接続するためのワイヤ61がボンディングされている。本実施形態において、複数のパッド部36のうち主走査方向xに隣り合う連結部34につながるものは、副走査方向yに互い違いに配置されている。これにより、複数の連結部34につながる複数のパッド部36は、連結部34のほとんどの部位よりも幅が大きいにも関わらず、たがいに干渉することが回避されている。
【0027】
なお、配線層3の一部は、金(Au)を主成分とした導電体により構成してもよい。具体的には、配線層3のうちAuを主成分とする部位は、たとえば共通電極31の共通部311および複数の共通電極帯状部312と、複数の個別電極32における個別電極帯状部33と、を含む。さらに、配線層3のすべてを、Auを主成分とした導電体により構成してもよい。
【0028】
抵抗体層4は、配線層3を構成する材料よりも抵抗率が高い、たとえば酸化ルテニウムなどからなり、主走査方向xに延びる帯状に形成されている。
図3に示すように、抵抗体層4は、共通電極31の複数の共通電極帯状部312と複数の個別電極32の個別電極帯状部33とに交差している。さらに、抵抗体層4は、共通電極31の複数の共通電極帯状部312と複数の個別電極32の個別電極帯状部33に対して基板1とは反対側に積層されている。抵抗体層4のうち各共通電極帯状部312と各個別電極帯状部33とに挟まれた部位が、配線層3によって部分的に通電されることにより発熱する発熱部41とされている。1個の個別電極帯状部33を挟んで隣り合う2個の発熱部41の発熱によって1個の印字ドットが形成される。抵抗体層4の厚さは、たとえば1~10μm程度である。
【0029】
保護層5は、少なくとも抵抗体層4を保護するためのものであり、たとえば非晶質ガラスなどのガラスを主成分として含む。本実施形態においては、保護層5は、互いに積層された第1層51および第2層52を含む。
【0030】
第1層51は、少なくとも抵抗体層4(複数の発熱部41)を覆っており、抵抗体層4に接する。本実施形態において、第1層51は、抵抗体層4の全体および配線層3の大部分を覆っている。具体的には、第1層51は、基板1の副走査方向yのy1側端縁の手前から基板1の副走査方向yのy2側の端縁にわたる領域に形成されている。ただし、第1層51は、配線層3のうち複数のパッド部36を含む領域を露出させている。
図4に示すように、第1層51は、複数の開口519を有する。各開口519は、第1層51を厚さ方向zに貫通する。複数の開口519はそれぞれ、パッド部36を露出させている。このように、第1層51は、配線層3および抵抗体層4を保護している。
【0031】
第1層51は、たとえば非晶質ガラスにより構成されており、たとえばアルミナ粒子などの添加物を含んでいてもよい。第1層51を構成する非晶質ガラスの軟化点は、たとえば780℃程度である。第1層51は、ガラスペーストをグレーズ層2上において抵抗体層4と配線層3の一部とを覆うように厚膜印刷したのちに、これを焼成することによって形成される。第1層51の厚さt1は特に限定されないが、たとえば6~8μm程度である。
【0032】
第2層52は、第1層51上に形成されている。第2層52は、保護層5を構成する複数の層(本実施形態では第1層51および第2層52)のうち、厚さ方向zのz1側の端に位置する。第2層52は、平面視(厚さ方向z視)において抵抗体層4に重なっており、印刷媒体82の搬送時に当該印刷媒体82が接触し得る領域に形成されている。第2層52は、第1層51の一部を覆っている。具体的には、第2層52は、副走査方向yにおいて、抵抗体層4を挟んだ両側の一部ずつを覆っている。第2層52は、各個別電極32の個別電極帯状部33の少なくとも一部と、共通電極31とを覆う。
【0033】
第2層52は、たとえば非晶質ガラスにより構成されており、1種類または2種類以上の添加物粒子を含む。第2層52は、添加物粒子として少なくとも窒化ホウ素(BN)粒子を含む。本実施形態において、第2層52は、前記添加物粒子として、窒化ホウ素粒子およびアルミナ粒子を含む。なお、第2層52は、前記アルミナ粒子を含まない構成であってもよい。本実施形態においては、第2層52を構成する非晶質ガラスの軟化点は、たとえば700℃程度である。したがって、前記第1層51を構成する非晶質ガラスの軟化点は、第2層52を構成する非晶質ガラスの軟化点よりも高い。第2層52のガラス材料は、たとえば酸化鉛を含まない無鉛ガラスにより構成される。前記窒化ホウ素粒子は、たとえば立方晶窒化ホウ素(cBN)からなる粒であり、好ましくは丸みを帯びた形状である。立方晶窒化ホウ素は、ダイヤモンドに次ぐ硬さを有し、ヌープ硬度にして4700Hk程度である。また、立方晶窒化ホウ素は耐熱性にも優れる。アルミナ粒子は、アルミナからなる粒であり、好ましくは丸みを帯びた形状である。
【0034】
第2層52の厚さt2は、第1層51の厚さt1よりも小であり、たとえば2~6μm程度である。第2層52に含まれる窒化ホウ素粒子の粒径は、第2層52の厚さt2以下であり、好ましくは0~4μm程度である。
【0035】
本実施形態において、第2層52における添加物粒子(本実施形態では窒化ホウ素粒子およびアルミナ粒子)の配合比率は、たとえば5~80重量%である。また、第2層52における窒化ホウ素粒子の配合比率は、好ましくは10~30重量%である。第2層52におけるアルミナ粒子の配合比率は、たとえば0~70重量%である。
【0036】
第2層52は、ガラスペーストに窒化ホウ素粒子およびアルミナ粒子が混入した材料を厚膜印刷し、これを焼成することによって形成される。第2層52を構成する非晶質ガラスの密度と窒化ホウ素粒子の密度とは、比較的近似した値である。形成された第2層52において、窒化ホウ素粒子は概ね均一に分散した状態となる。なお、前記第1層51においては、第2層52と異なり、窒化ホウ素粒子が含まれていない。
【0037】
駆動IC71は、複数の個別電極32を選択的に通電させることにより、抵抗体層4を部分的に発熱させる機能を果たす。
図1、
図4に示すように、駆動IC71は、抵抗体層4(複数の発熱部41)に対して副走査方向yのy1側に配置されている。本実施形態において、グレーズ層2上に複数の駆動IC71が配置されている。駆動IC71には、複数のパッドが設けられている。
図4に示すように、駆動IC71のパッドと複数のパッド部36とは、それぞれにボンディングされた複数のワイヤ61を介して接続されている。ワイヤ61は、たとえばAuからなる。
図2および
図4に示すように、駆動IC71は、保護樹脂72によって覆われている。保護樹脂72は、たとえば黒色の軟質樹脂からなる。また、駆動IC71とコネクタ73とは、上記複数の信号配線部35によって接続されている。駆動IC71には、コネクタ73を介して外部から送信される印字信号、制御信号および複数の発熱部41に供給される電圧が入力される。複数の発熱部41は、印字信号および制御信号にしたがって個別に通電されることにより、選択的に発熱させられる。
【0038】
次に、サーマルプリントヘッドA1の使用方法の一例について簡単に説明する。
【0039】
サーマルプリントヘッドA1は、サーマルプリンタPrに組み込まれた状態で使用される。
図2に示したように、当該プリンタ内において、サーマルプリントヘッドA1の各発熱部41はプラテンローラ81に対向している。当該プリンタの使用時には、プラテンローラ81が回転することにより、感熱紙などの印刷媒体82が、副走査方向yに沿ってプラテンローラ81と各発熱部41との間に一定速度で送給される。印刷媒体82は、プラテンローラ81によって保護層5のうち各発熱部41を覆う部分に押しあてられる。一方、
図3に示した各個別電極32には、駆動IC71によって選択的に電位が付与される。これにより、共通電極31と複数の個別電極32の各々との間に電圧が印加される。そして、複数の発熱部41には選択的に電流が流れ、熱が発生する。そして、各発熱部41にて発生した熱は、保護層5を介して印刷媒体82に伝わる。そして、印刷媒体82上の主走査方向xに線状に延びるライン領域に、複数のドットが印刷される。また、各発熱部41にて発生した熱は、グレーズ層2にも伝わり、グレーズ層2にて蓄えられる。
【0040】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0041】
サーマルプリントヘッドA1において、印刷媒体82と接触し得る保護層5(第2層52)は、添加物粒子として窒化ホウ素粒子を含む。このような構成によれば、窒化ホウ素はその硬度が高く、保護層5(第2層52)の耐摩耗性を向上させることができる。
【0042】
本実施形態においては、保護層5は、第1層51および第2層52を含む複数の層によって構成されている。第1層51が抵抗体層4に接する一方、第2層52は、最上層(厚さ方向zのz1側の端)に位置し、平面視において抵抗体層4に重なる。そして、第2層52に窒化ホウ素粒子が含まれる。その一方、比較的広範囲に形成される第1層51には窒化ホウ素粒子が含まれていない。このような構成によれば、窒化ホウ素粒子の使用量を抑止しつつ、印刷媒体82が接触し得る第2層52の耐摩耗性の効率よく向上させることができる。また、発明者らの知見によれば、配線層3がAgを含む場合、窒化ホウ素粒子を含むガラス層を配線層3上に直接形成すると、配線層3のAg付近で発泡現象が生じることが確認されている。本実施形態では、配線層3上に直接形成される第1層51には窒化ホウ素粒子が含まれていない。したがって、配線層3がAgを含む場合において、Agに起因する前記発泡現象を防止することができる。
【0043】
第2層52における添加物粒子の配合比率は、5~80重量%である。また、第2層52における窒化ホウ素粒子の配合比率は、10~30重量%である。このような構成によれば、第2層52においては、窒化ホウ素粒子を均一に分散させるとともに、耐摩耗性の向上を図ることができる。発明者らの知見によると、同一条件で印刷処理を行った場合、印字濃度によって多少のバラつきがあるものの、第2層52における窒化ホウ素粒子の配合比率が10~30重量%の範囲においては、第2層52の研磨量が少なく、耐摩耗性の改善が確認されている。
【0044】
第1層51の厚さt1は、第2層52の厚さt2よりも大である。第2層52の厚さt2は、2~6μmである。このような構成によれば、第2層52の厚さt2は比較的小さく抑えられ、窒化ホウ素粒子の使用量を効果的に抑制することができる。また、第2層52に含まれる窒化ホウ素粒子の粒径は、第2層52の厚さt2以下であり、0~4μmである。このような構成によれば、第2層52において窒化ホウ素粒子を均一に分散させるとともに、第2層52の表面に窒化ホウ素粒子の外形が現れてしまうことを効果的に抑制することができる。したがって、保護層5(第2層52)の耐摩耗性を向上させるとともに、保護層5(第2層52)の表面を適度に平滑な状態とすることができる。
【0045】
発明者らの知見によると、窒化ホウ素粒子を添加するガラスペーストが酸化鉛を含む場合、焼成後のガラス層の表面において気泡が多数発生することが確認されている。本実施形態において、第2層52は、酸化鉛を含まない無鉛ガラスにより構成される。これにより、第2層52の表面における気泡発生を効果的に抑制することができ、保護層5(第2層52)の表面の平滑性を維持することができる。
【0046】
第1層51を構成するガラス材料の軟化点は、第2層52を構成するガラス材料の軟化点よりも高い。このような構成によれば、サーマルプリントヘッドA1の使用時などに保護層5の温度が上昇した場合、第2層52が軟化しても、第1層51は比較的固い状態を維持し得る。これにより、第2層52に含まれる窒化ホウ素粒子が第2層52から第1層51に沈降してしまうことを抑制することが可能である。したがって、前述の配線層3がAgを含む場合の発泡現象を適切に防止することができる。
【0047】
<第2実施形態>
図6および
図7は、本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。
図6は、本実施形態のサーマルプリントヘッドA2を示す要部拡大断面図であり、
図4と同様の断面図である。
図7は、
図6の一部を拡大した要部拡大断面図である。なお、
図6以降の図面において、上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。また、
図6以降の各実施形態における各部の構成は、技術的な矛盾を生じない範囲において相互に適宜組み合わせ可能である。
【0048】
本実施形態のサーマルプリントヘッドA2は、グレーズ層2の構成が上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と異なっている。
図6および
図7に示したサーマルプリントヘッドA2において、グレーズ層2は、ヒーターグレーズ部22およびガラス層23を有する。ヒーターグレーズ部22は、主走査方向xと直角である断面形状が厚さ方向zのz1側に膨出した形状であり、主走査方向xに長く延びる平面視帯状である。ガラス層23は、ヒーターグレーズ部22に隣接して形成されており、厚さ方向zのz1側を向くグレーズ主面21が平坦な形状である。ガラス層23は、ヒーターグレーズ部22の一部に重なっている。抵抗体層4(複数の発熱部41)は、ヒーターグレーズ部22の上に配置されており、平面視(厚さ方向z視)においてヒーターグレーズ部22と重なっている。このようなヒーターグレーズ部22およびガラス層23を有するグレーズ層2を形成する際には、基板1上にガラスペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することを複数回繰り返す。
【0049】
本実施形態のサーマルプリントヘッドA2において、印刷媒体(図示略)と接触し得る保護層5(第2層52)は、添加物粒子として窒化ホウ素粒子を含む。このような構成によれば、窒化ホウ素はその硬度が高く、保護層5(第2層52)の耐摩耗性を向上させることができる。
【0050】
本実施形態においては、保護層5は、第1層51および第2層52を含む複数の層によって構成されている。第1層51が抵抗体層4に接する一方、第2層52は、最上層(厚さ方向zのz1側の端)に位置し、平面視において抵抗体層4に重なる。そして、第2層52に窒化ホウ素粒子が含まれる。その一方、比較的広範囲に形成される第1層51には窒化ホウ素粒子が含まれていない。このような構成によれば、窒化ホウ素粒子の使用量を抑止しつつ、印刷媒体(図示略)が接触し得る第2層52の耐摩耗性の効率よく向上させることができる。また、発明者らの知見によれば、配線層3がAgを含む場合、窒化ホウ素粒子を含むガラス層を配線層3上に直接形成すると、配線層3のAg付近で発泡現象が生じることが確認されている。本実施形態では、配線層3上に直接形成される第1層51には窒化ホウ素粒子が含まれていない。したがって、配線層3がAgを含む場合において、Agに起因する前記発泡現象を防止することができる。その他にも、上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と同様の作用効果を奏する。
【0051】
<第3実施形態>
図8および
図9は、本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。
図8は、本実施形態のサーマルプリントヘッドA3を示す要部拡大断面図であり、
図4と同様の断面図である。
図9は、
図8の一部を拡大した要部拡大断面図である。本実施形態のサーマルプリントヘッドA3は、保護層5の構成が上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と異なっている。
【0052】
図8および
図9に示したサーマルプリントヘッドA3においては、保護層5は、単一の層からなる。本実施形態における保護層5は、サーマルプリントヘッドA1における第1層51に対応しており、サーマルプリントヘッドA1の第1層51と同程度の厚さを有する。その一方、本実施形態において、保護層5は、添加物粒子として少なくとも窒化ホウ素(BN)粒子を含む。本実施形態において、保護層5は、前記添加物粒子として、窒化ホウ素粒子およびアルミナ粒子を含む。なお、保護層5は、前記アルミナ粒子を含まない構成であってもよい。
【0053】
本実施形態のサーマルプリントヘッドA3において、印刷媒体(図示略)と接触し得る保護層5は、添加物粒子として窒化ホウ素粒子を含む。このような構成によれば、窒化ホウ素はその硬度が高く、保護層5の耐摩耗性を向上させることができる。その他にも、上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と同様の構成の範囲において、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0054】
<第4実施形態>
図10および
図11は、本開示の第4実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。
図10は、本実施形態のサーマルプリントヘッドA4を示す要部拡大断面図であり、
図4と同様の断面図である。
図11は、
図10の一部を拡大した要部拡大断面図である。本実施形態のサーマルプリントヘッドA4は、保護層5の構成が上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と異なっている。
【0055】
図10および
図11に示したサーマルプリントヘッドA4においては、保護層5は、第1層51、第2層52および第3層53を含む。本実施形態の保護層5においては、上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と比べて、第3層53を追加的に有する。第3層53は、厚さ方向zにおいて第1層51と第2層52との間に介在しており、第1層51および第2層52の双方に接する。第1層51および第2層52それぞれの具体的な構成は、上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と同様である。第3層53は、第1層51および第2層52と同様に、たとえば非晶質ガラスにより構成されている。第3層53は、添加物粒子を含んでいてもよい。第3層53が添加物粒子を含む場合、当該添加物粒子は、窒化ホウ素粒子およびアルミナ粒子のうちのいずれか一方、あるいは窒化ホウ素粒子およびアルミナ粒子の両方である。第3層53を構成するガラス材料の軟化点は、好ましくは、第2層52を構成するガラス材料の軟化点よりも高く、且つ第1層51を構成するガラス材料の軟化点よりも低い。
【0056】
本実施形態のサーマルプリントヘッドA4において、印刷媒体(図示略)と接触し得る保護層5(第2層52)は、添加物粒子として窒化ホウ素粒子を含む。このような構成によれば、窒化ホウ素はその硬度が高く、保護層5(第2層52)の耐摩耗性を向上させることができる。
【0057】
本実施形態においては、保護層5は、第1層51および第2層52を含む複数の層によって構成されている。第1層51が抵抗体層4に接する一方、第2層52は、最上層(厚さ方向zのz1側の端)に位置し、平面視において抵抗体層4に重なる。そして、第2層52に窒化ホウ素粒子が含まれる。その一方、比較的広範囲に形成される第1層51には窒化ホウ素粒子が含まれていない。このような構成によれば、窒化ホウ素粒子の使用量を抑止しつつ、印刷媒体(図示略)が接触し得る第2層52の耐摩耗性の効率よく向上させることができる。また、発明者らの知見によれば、配線層3がAgを含む場合、窒化ホウ素粒子を含むガラス層を配線層3上に直接形成すると、配線層3のAg付近で発泡現象が生じることが確認されている。本実施形態では、配線層3上に直接形成される第1層51には窒化ホウ素粒子が含まれていない。したがって、配線層3がAgを含む場合において、Agに起因する前記発泡現象を防止することができる。その他にも、上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と同様の作用効果を奏する。
【0058】
<第5実施形態>
図12および
図13は、本開示の第5実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。
図12は、本実施形態のサーマルプリントヘッドA5を示す要部拡大断面図であり、
図4と同様の断面図である。
図13は、
図12の一部を拡大した要部拡大断面図である。本実施形態のサーマルプリントヘッドA5は、保護層5の構成が上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と異なっている。
【0059】
図12および
図13に示したサーマルプリントヘッドA5においては、保護層5の第2層52の形成領域が上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と異なる。本実施形態において、第2層52は、平面視(厚さ方向z視)において抵抗体層4に重なる一方、平面視において共通部311に重ならない。また、本実施形態においては、第1層51を構成する非晶質ガラスの軟化点は、第2層52を構成する非晶質ガラスの軟化点以下である。
【0060】
本実施形態のサーマルプリントヘッドA5において、印刷媒体(図示略)と接触し得る保護層5(第2層52)は、添加物粒子として窒化ホウ素粒子を含む。このような構成によれば、窒化ホウ素はその硬度が高く、保護層5(第2層52)の耐摩耗性を向上させることができる。
【0061】
第1層51を構成するガラス材料の軟化点は、第2層52を構成するガラス材料の軟化点以下である。共通部311は、配線層3の他の各要素に比べて比較的まとまった広範囲に形成されている。第2層52は、平面視(厚さ方向z視)において共通部311に重ならない。このような構成によれば、サーマルプリントヘッドA1の使用時などに保護層5の温度が上昇した場合、第1層51が軟化して第2層52に含まれる窒化ホウ素粒子が第2層52から第1層51に沈降しても、配線層3がAgを含む場合において、共通部311での発泡現象は発生しない。したがって、前述の配線層3がAgを含む場合のAgに起因する発泡現象を抑制することができる。その他にも、上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と同様の構成の範囲において、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0062】
<第6実施形態>
図14および
図15は、本開示の第6実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。
図14は、本実施形態のサーマルプリントヘッドA6を示す要部拡大断面図であり、
図4と同様の断面図である。
図15は、
図14の一部を拡大した要部拡大断面図である。本実施形態のサーマルプリントヘッドA6は、保護層5の構成が上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と異なっている。
【0063】
図14および
図15に示したサーマルプリントヘッドA6においては、保護層5は、第1部55および第2部56を含む。第1部55は、抵抗体層4に接し、且つ抵抗体層4の周辺に形成されており、抵抗体層4(複数の発熱部41)を覆っている。第1部55は、平面視(厚さ方向z視)において抵抗体層4に重なり、主走査方向xに沿って延びている。第1部55は、上記第1実施形態のサーマルプリントヘッドA1における第2層52と同様の材料により構成される。第1部55は、たとえば非晶質ガラスにより構成されており、1種類または2種類以上の添加物粒子を含む。第1部55は、添加物粒子として少なくとも窒化ホウ素粒子を含む。本実施形態において、第1部55は、前記添加物粒子として、窒化ホウ素粒子およびアルミナ粒子を含む。なお、第1部55は、前記アルミナ粒子を含まない構成であってもよい。
【0064】
第2部56は、平面視(厚さ方向z視)において第1部55と重ならない領域に形成されており、第1部55よりも広範囲に形成される。第2部56は、上記第1実施形態のサーマルプリントヘッドA1における第1層51と同様の材料により構成される。第2部56は、たとえば非晶質ガラスにより構成されており、たとえばアルミナ粒子などの添加物を含んでいてもよい。第2部56においては、第1部55と異なり、窒化ホウ素粒子が含まれていない。
【0065】
本実施形態のサーマルプリントヘッドA6において、印刷媒体(図示略)と接触し得る保護層5(第1部55)は、添加物粒子として窒化ホウ素粒子を含む。このような構成によれば、窒化ホウ素はその硬度が高く、保護層5(第1部55)の耐摩耗性を向上させることができる。
【0066】
第1部55は、平面視において抵抗体層4に重なり、この第1部55に窒化ホウ素粒子が含まれる。その一方、比較的広範囲に形成される第2部56には窒化ホウ素粒子が含まれていない。このような構成によれば、窒化ホウ素粒子の使用量を抑止しつつ、印刷媒体(図示略)が接触し得る第1部55の耐摩耗性の効率よく向上させることができる。
その他にも、上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と同様の構成の範囲において、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0067】
本開示に係るサーマルプリントヘッドは、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示に係るサーマルプリントヘッドの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0068】
上記実施形態においては、保護層5が抵抗体層4上に積層された複数の層を含んで構成された場合、最上層である厚さ方向zのz1側の端に位置する層(上記実施形態では第2層52)にのみ窒化ホウ素粒子が含まれていたが、本開示はこれに限定されない。保護層5が抵抗体層4上に積層された複数の層を含む場合、当該複数の層のいずれか1つの層に窒化ホウ素粒子が含まれていればよく、たとえば厚さ方向zにおいて最下層(抵抗体層4に接する層)と最上層との間に位置する中間層にのみ窒化ホウ素粒子が含まれる構成であってもよい。
【0069】
本開示は、以下の付記に関する構成を含む。
【0070】
〔付記1〕
厚さ方向の一方側を向く主面を有する基板と、
前記主面の上に配置され、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、
前記主面の上に配置され、且つ前記抵抗体層に導通する配線層と、
少なくとも前記抵抗体層を覆う保護層と、を備え、
前記保護層は、ガラスと添加物粒子とを含んで構成されており、
前記添加物粒子は、窒化ホウ素粒子を含む、サーマルプリントヘッド。
〔付記2〕
前記保護層は、前記抵抗体層の上に積層された複数の層を含み、
前記複数の層の少なくともいずれかは、前記窒化ホウ素粒子を含む、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記3〕
前記保護層は、第1層および第2層を含む前記複数の層によって構成されており、
前記第1層は、前記抵抗体層に接しており、
前記第2層は、前記複数の層のうち前記厚さ方向の一方側の端に位置し、且つ前記厚さ方向に見て前記抵抗体層に重なっており、
前記第2層は、前記窒化ホウ素粒子を含む、付記2に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記4〕
前記第1層に前記窒化ホウ素粒子が含まれていない、付記3に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記5〕
前記第2層における前記添加物粒子の配合比率は、5~80重量%である、付記4に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記6〕
前記第2層における前記窒化ホウ素粒子の配合比率は、10~30重量%である、付記5に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記7〕
前記保護層は、前記添加物粒子としてアルミナ粒子を含み、
前記第2層における前記アルミナ粒子の配合比率は、0~70重量%である、付記5または6に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記8〕
前記第2層の厚さは、2~6μmである、付記4ないし7のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記9〕
前記窒化ホウ素粒子の粒径は、前記第2層の厚さ以下である、付記8に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記10〕
前記窒化ホウ素粒子の粒径は、0~4μmである、付記9に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記11〕
前記保護層は、前記第1層および前記第2層からなり、
前記第1層の厚さは、前記第2層の厚さよりも大である、付記8に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記12〕
前記第2層は、酸化鉛を含まない無鉛ガラスにより構成される、付記4ないし11のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記13〕
前記第1層の軟化点は、前記第2層の軟化点よりも高い、付記4ないし12のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記14〕
前記第1層の軟化点は、前記第2層の軟化点以下であり、
前記配線層は、前記抵抗体層に対して副走査方向に離隔して配置され、且つ前記主走査方向に延びる共通部を有し、
前記第2層は、前記厚さ方向に見て前記共通部に重ならない、付記4ないし12のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記15〕
前記主面の上に配置されたグレーズ層をさらに備え、
前記抵抗体層は、前記グレーズ層の上に配置されている、付記1ないし13のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記16〕
付記1ないし14のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドと、
前記複数の発熱部に対向して配置されたプラテンと、を備える、サーマルプリンタ。
【0071】
A1,A2,A3,A4,A5,A6:サーマルプリントヘッド
Pr :サーマルプリンタ
1 :基板
11 :主面
2 :グレーズ層
21 :グレーズ主面
22 :ヒーターグレーズ部
23 :ガラス層
3 :配線層
31 :共通電極
311 :共通部
312 :共通電極帯状部
32 :個別電極
33 :個別電極帯状部
34 :連結部
35 :信号配線部
36 :パッド部
4 :抵抗体層
41 :発熱部
5 :保護層
51 :第1層
519 :開口
52 :第2層
53 :第3層
55 :第1部
56 :第2部
61 :ワイヤ
71 :駆動IC
72 :保護樹脂
73 :コネクタ
81 :プラテンローラ
82 :印刷媒体