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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176505
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】成膜用霧化装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 17/06 20060101AFI20231206BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20231206BHJP
   C23C 16/448 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B05B17/06
H01L21/205
C23C16/448
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088823
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】392022570
【氏名又は名称】サムコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌幸
【テーマコード(参考)】
4D074
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4D074AA01
4D074BB02
4D074DD03
4D074DD05
4D074DD12
4D074DD18
4D074DD33
4D074DD52
4K030EA01
5F045EC07
5F045EE02
5F045EF02
(57)【要約】
【課題】霧化用原料液と超音波伝達液が混合するおそれがなく、しかも高効率で原料液の霧化を行うことのできる成膜用霧化装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る成膜用霧化装置10は、超音波伝達液を収容する外槽11と、外槽11に設けられた超音波発生器12、13と、少なくとも霧化用原料液18を収容する部分において側壁と底壁が一体のプラスチック又はガラスから成り、該底壁の厚さが2000μm以下であり、前記底壁が前記外槽に収容された超音波伝達液14の液面以下に配置される原料液容器15とを有する。少なくとも霧化用(成膜用)原料液を収容する部分において側壁と底壁が一体であるため、成膜用原料液18と超音波伝達液14が混合するおそれがない。また、底壁の素材がプラスチック又はガラスであって厚さが2000μm以下であるため、超音波の減衰が最小限に抑えられ、高効率で原料液の霧化を行うことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波伝達液を収容する外槽と、
前記外槽に設けられた超音波発生器と、
少なくとも霧化用原料液を収容する部分において側壁と底壁が一体のプラスチック又はガラスから成り、該底壁の厚さが2000μm以下であり、前記底壁が前記外槽に収容された超音波伝達液の液面以下に配置される原料液容器と
を有することを特徴とする成膜用霧化装置。
【請求項2】
前記プラスチックがポリカーボネート、アクリル、テフロン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートのいずれかである請求項1に記載の成膜用霧化装置。
【請求項3】
前記原料液容器の霧化用原料液を収容する部分が透明又は半透明である請求項1に記載の成膜用霧化装置。
【請求項4】
前記原料液容器の底壁の厚さが500μm以下である請求項1~3のいずれかに記載の成膜用霧化装置。
【請求項5】
前記超音波発生器の超音波発生中心線が鉛直から傾斜している請求項1~3のいずれかに記載の成膜用霧化装置。
【請求項6】
前記超音波発生器が複数台備えられている請求項5に記載の成膜用霧化装置。
【請求項7】
前記原料液容器に原料液の液面センサーが設けられている請求項1~3のいずれかに記載の成膜用霧化装置。
【請求項8】
前記外槽と前記原料液容器の間が閉鎖されている請求項1~3のいずれかに記載の成膜用霧化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板等の表面に成膜を行う際に成膜原料を供給するための霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置等を製造するために半導体基板上に成膜を行う際、成膜原料はガス状で供給する他、霧化状態(ミスト)で供給する方法がある。ミストによる場合は、後にガス化する必要があるものの、成膜原料を液体のバルクの状態からガス化するほどの高温にする必要がないことから、成膜原料選択の自由度が大きいという利点がある。
【0003】
成膜原料の霧化装置では、通常、容器内に溜めた液体状の成膜原料(原料液)に超音波を投入することにより原料液の液体表面からミストを発生させる。前記のガス状での供給に対するミスト状での供給の利点を生かすためには、ミストをできるだけ細かく、しかも大量に発生する必要がある。また、成膜の厚さを均一とするためには、ミストの生成量をできるだけ一定とする必要がある。そのため、従来、様々な霧化装置が提案されてきた。
【0004】
特許文献1の霧化装置では、原料液の液面の高さをできるだけ変化させない工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-190173号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の霧化装置は、霧化用原料液が収容されている筒状体と、超音波伝達液が収容されている超音波伝達液槽と、前記超音波伝達液槽の底面部に前記筒状体の底面部に対して超音波を照射する超音波振動子とを具備し、前記筒状体の少なくとも底面部が前記超音波伝達液に浸漬しており、前記原料液の液面の高さを調節する液面調節手段をさらに具備することを特徴としている。
【0007】
特許文献1の霧化装置において、超音波振動子で発生した超音波は超音波伝達液槽内の超音波伝達液(実施例では水)内を進行した後、筒状体の底面部から筒状体内に収容されている原料液に入り、その上部の液面で原料液を霧化する。このような超音波の伝達経路における超音波の減衰を最小限にとどめ、より効率よくミストを生成するためには、超音波伝達液や原料液内での減衰を差し置けば、筒状体の底面部に存在する、超音波伝達液と原料液を隔てる底面部材における超音波の減衰を最小限にする必要がある。
【0008】
特許文献1において、筒状体の底面部は、筒状体側に固定されたものではなく、超音波伝達液槽と筒状体との間に張設された高分子フィルム(具体的にはテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体。厚さは不明。)である。すなわち、超音波伝達液槽は槽本体および固定用ナットからなり、槽本体と固定用ナットとが高分子フィルムを介して螺合されることにより、高分子フィルムによって筒状体の底面部が閉塞され、該閉塞により前記筒状体の底面が形成されている。
【0009】
このような構成では、固定用ナットの軸方向に超音波振動が作用するとナットが緩み、螺合した部分から原料液が外部(超音波伝達液側)に漏れ出したり、逆に外部の超音波伝達液が原料液側に侵入するおそれがある。また、原料液を別のものに変更する際には霧化装置全体を分解する必要があり、煩雑である。
【0010】
本発明は従来技術のこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、霧化用原料液と超音波伝達液が混合するおそれがなく、しかも高効率で原料液の霧化を行うことのできる成膜用霧化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係る成膜用霧化装置は、
超音波伝達液を収容する外槽と、
前記外槽に設けられた超音波発生器と、
少なくとも霧化用原料液を収容する部分において側壁と底壁が一体のプラスチック又はガラスから成り、該底壁の厚さが2000μm以下であり、前記底壁が前記外槽に収容された超音波伝達液の液面以下に配置される原料液容器と
を有することを特徴とする。
【0012】
上記原料液容器は、少なくとも霧化用原料液を収容する部分において側壁と底壁は一体であるが、それよりも上部において側壁は一体であってもよいし、別の部材と接合や螺合したものであってもよい。
【0013】
上記原料液容器の側壁と底壁が一体である部分は、バルクから機械加工により削り出しで作製することもできるし、別部材として準備した側壁部と底壁部を加熱融合、摩擦融合、超音波融合等で融合させることにより一体化してもよい。
【0014】
また、霧化用原料液を収容する部分よりも上においては、側壁が複数部材の接合や螺合により構成されていてもよい。
【0015】
前記プラスチックには、ポリカーボネート、アクリル、テフロン(登録商標)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等を用いることができる。前記ガラスには、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、パイレックス(登録商標)等を用いることができる。
【0016】
前記原料液容器の霧化用原料液を収容する部分は透明又は半透明(内部の霧化用原料液の液面が分かる程度の透明度)であることが望ましいが、必ずしもそうでなくてもよい。
【0017】
前記原料液容器の底壁の厚さは、500μm以下とすることが望ましい。ミストが充分に発生できる点で、底壁の厚さは100μm以下とすると更によく、50μmが更によい。底壁の厚さの下限は特に制限はないが底壁の耐久性の点で10μm以上が好ましい。
【0018】
前記外槽とその中に配置された原料液容器の間は閉鎖することが望ましい。これにより、外槽内の超音波伝達液が蒸発することを防ぎ、長時間安定して使用することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る成膜用霧化装置では、少なくとも霧化用(成膜用)原料液を収容する部分において側壁と底壁が一体であるため、成膜用原料液と超音波伝達液が混合するおそれがない。また、底壁の素材がプラスチック又はガラスであって厚さが2000μm以下であるため、超音波の減衰が最小限に抑えられ、高効率で原料液の霧化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態の霧化装置の概略構成図。
図2】第1の従来技術の霧化装置の概略構成図。
図3】第2の従来技術の霧化装置の概略構成図。
図4】2台の超音波発生器の配置を示す斜視図(a)、及び、そのB方向から見た側面図(b)及びC方向から見た側面図(c)。
図5】超音波発生器から発射された超音波が液面を盛り上げ、その先端の液滴群が水面に落ちる状態を示す説明図。
図6】3台の超音波発生器の配置図。
図7】本発明の一実施形態の霧化装置(a)、第1の従来技術の霧化装置(b)、第2の従来技術の霧化装置(c)における霧化状況を表す図。
図8】液面検出機構を設けた霧化装置の概略構成図。
図9】霧化装置の原料液の液面高さを変化させた場合の液面センサー(ファイバーセンサー)出力を表す表。
図10】霧化装置を用いた半導体基板の成膜装置の概略構成図。
図11】Oリングにより外槽とその中に配置された原料液容器の間を閉鎖した霧化装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の効果を確認するために、本発明の一実施形態である霧化装置と従来技術による霧化装置について、それらの霧化効率を調べる試験を行った。
【0022】
まず、本発明の一実施形態の霧化装置と従来技術による霧化装置に共通して用いた外槽について説明する。
外槽11は図1図2図3に示すような、アクリル製の幅180 mm、奥行180 mm、深さ40 mmの角型の容器である。外槽11の底壁11aには2台の超音波発生器12、13が設けられている。2台の超音波発生器12、13は共に直径19 mmの円盤状のものを使用し、外槽11の底壁11aに埋め込むように設置した。両超音波発生器12、13は、底壁11aの中心に関して互いに180°となるような位置に、ただし、該中心からの距離が異なるように、配置した。そして、図4に示すように、両超音波発生器12、13は、その中心軸(超音波発生中心線)が2枚の平行面の中にそれぞれあり、且つ、共に外槽11の底面の中心軸(法線)から10°傾斜するように配置した。このように超音波発生器12、13の超音波発生中心線が鉛直から傾斜するようにしたのは、図5に示すように、超音波が液面を盛り上げて生成される液滴群が水面に落ちるまでの時間を延ばすことにより霧化効率を向上させるためである。2台の超音波発生器12、13の中心軸が交わらないように設定したのも同じ理由からである。
【0023】
なお、超音波発生器は3台以上設けてもよい。例えば3台の場合は、図6に示すように、各超音波発生器の中心軸が原料液容器内の原料液の液面以下では交わらないように配置しておくことが望ましい。
【0024】
次に、各霧化装置の原料液容器について説明する。
本発明の一実施形態の霧化装置10の原料液容器15は、図1に示すような、ポリカーボネート製の直径115 mm、長さ(高さ)125 mmの円柱状の素材を機械加工により削り出し、周壁の厚さが3 mm、底壁の厚さが100μm以下の有底円筒状の容器としたものである。原料液容器15の上部には、原料液容器15を気密に閉鎖し、ミスト放出口17aを有する蓋17が固定されている。
【0025】
従来技術による霧化装置は2種作製した。
第1の従来技術による霧化装置20の原料液容器25は、図2に示すような、外径100 mm、周壁厚さ3 mmの円筒状ガラス製の本体部21の底側開口に厚さ25μmのポリエチレン製フィルム22を張設し、該フィルム22を厚さ1 mmのゴム製のリング状パッキン23で本体部21の周壁下面に押し付けて、それよりも外側のフィルム22の周囲を、台座24及び支持体26で固定することにより液体容器としたものである。そして、本体部21上部に前記同様のミスト放出口27aを有する蓋27を気密に取り付け、本体部21を挟んで蓋27と台座24を近づけるように上下から締め付けた。
【0026】
第2の従来技術による霧化装置30の原料液容器35は、図3に示すような、市販の外径70 mm、内径66 mm、底壁厚さ2 mmの一体成形されたポリプロピレン製の容器である。これについても、本体部上部にミスト放出口37aを有する蓋37を気密に取り付けた。
【0027】
上記構成の3種の霧化装置10、20、30を用いて、霧化のための準備を次のように行った。
各原料液容器15、25、35に、成膜用原料液18として金属イオンを含む水溶液を高さ20 mmまで収容した。そして外槽11内に、超音波伝達液14として水を高さ30 mmまで収容し、その超音波伝達液14内に、成膜用原料液18を収容した原料液容器15、25、35を、その下面が液面下20mmとなる位置に配置して固定した。
【0028】
こうして3種の霧化装置10、20、30を構成し、それぞれの霧化装置10、20、30において超音波発生器12、13を作動させて成膜用原料液18の霧化状況を調べた。各霧化装置10、20、30を起動してから60 sec後の各原料液容器15、25、35の内部の様子を図7(a)、(b)、(c)に示す。これらの図に現れているとおり、本発明の一実施形態の霧化装置10と第1の従来技術による霧化装置20では、内部が見えないほどの十分な量のミストが発生したが、第2の従来技術による霧化装置30では、ほとんどミストが発生しなかった。
【0029】
第1の従来技術による霧化装置20ではパッキン23を挟んでいるとはいえ、フィルム22と本体部21とは別体であるため、それらの隙間から外部の超音波伝達液14が原料液容器25内に浸入し、原料液の劣化が生じる可能性があることを考慮すると、本発明の一実施形態の霧化装置10は高い霧化効率と高い霧化品質の維持という点で優位性を持つ。
【0030】
ミストの発生量を一定にするためには、原料液容器15内の原料液18の液面高さを一定にしておく必要がある。そこで霧化装置10に液面検出機構を設けた。液面検出機構は、図8に示すように、原料液容器15内の原料液18の液面上に浮遊する液面シート81と、原料液容器15の外に設けられたファイバーセンサー82から構成される。液面シート81は原料液18よりも比重の小さい有色樹脂製のリング状のシートであり、外径は原料液容器15の内径よりもやや小さく、内径は85 mmである(従って、リング幅は約15 mm)。ファイバーセンサー82は、原料液容器15を挟んで水平に対向するように設けられたレーザービーム発生器83とレーザービーム検知器84で構成される。
【0031】
このような構成とした霧化装置80において、原料液容器15内の原料液18の液面高さを変化させてファイバーセンサー82のレーザービーム検知器84の出力を測定すると、その結果は図9のとおりであった。原料液容器15内の原料液18の量が多く、液面がファイバーセンサーの測定線(レーザービーム発生器とレーザービーム検出器の間)よりも高い位置にあるときには、レーザービームが原料液18内を通過し、レーザービーム検知器84による検知強度は500カウント以下であった。原料液容器15内の原料液18が減少し、液面シート81が丁度測定線の位置に来たとき、検知強度は50カウント以下となった。原料液18が更に減少し、測定線が液面よりも上を通過する場合は、ミストが生成されている際は検知強度が50~200カウントであった。なお、原料液容器15内に何も存在しない状態での検知出力は300カウント以下であった。このことから、液面シート81を用いることにより、原料液容器15内の原料液18の位置を検知することができ、その検知出力に応じて原料液18を原料液容器15内に供給することにより、常に原料液容器15内の原料液18の量をほぼ一定に保持することができるようになる。これは、生成されるミストの量をほぼ一定に保つことにつながり、ひいてはそのミストを用いた成膜処理における単位時間当たりの成膜量を一定に保持することに資する。
【0032】
本発明の一実施形態である霧化装置10は、半導体基板の成膜装置として、例えば次のように使用することができる。図10に示すように、霧化装置10の原料液容器15の上部空間にミスト送給ガス供給源(窒素ガス、酸素ガスまたはアルゴンガス源)90及び原料液タンク91を接続し、ミスト放出口17aを成膜室92の上部空間に接続する。ミスト送給ガス供給源90と原料液容器15を接続する配管にはミスト送給ガスの流量を制御するマスフローコントローラー93及びバルブ94が、そして原料液タンク91と原料液容器15を接続する配管には原料液の供給をコントロールするバルブ95が設けられている。これらマスフローコントローラー93、バルブ94、バルブ95、そして霧化装置10の超音波発生器12、13及び成膜室92に設けられた被成膜基板96を加熱するヒーター97は制御装置98によりコントロールされる。一方、霧化装置10の液面を検出するファイバーセンサー82からは液面検知信号が制御装置98に送られる。
【0033】
被成膜基板96の表面に成膜を行う工程は次のとおりである。成膜室92の基板台に被成膜基板96を置き、制御装置98から開始信号を送ることによりヒーター97による被成膜基板96の加熱を開始する。また、バルブ95を制御し、原料液タンク91から原料液容器15に所定高さまで原料液18を供給する。原料液容器15内での原料液18の液面高さは、一般に市販されている超音波発生器(例えば、本多電子製HMC-2401)を用いる場合には、32.5 mm±5 mm程度が適当である。
【0034】
原料液18は成膜目的に応じて選択されるが、一般的には金属を含む水溶液を用いる。金属としては、ガリウム、アルミニウム、シリコン、亜鉛、ニッケル、銅、インジウム等が用いられる。これらの2種以上の金属が共存する溶液であってもよい。
【0035】
被成膜基板96が所定温度まで加熱される所定時間が経過した後、超音波発生器12、13に振動開始信号を送り、原料液容器15内の原料液18に超音波を投入して原料液18をその表面から霧化するとともに、バルブ94及びマスフローコントローラー93を所定開度で開放しミスト送給ガスを所定流量で原料液容器15内に送給する。これにより、原料液18のミストが一定流量で原料液容器15から成膜室92に送られ、成膜室92で被成膜基板96上での成膜が行われる。成膜処理の間、制御装置98はファイバーセンサー82からの信号を基に、原料液容器15内の原料液18の液面高さが一定の範囲となるように原料液の供給をコントロールするバルブ95を制御する。これにより、均等な成膜が確保される。
【0036】
上記実施形態において、原料液容器15はいずれも横断面が円形の円筒状としたが、横断面が多角形の筒状、横断面が楕円の筒状等でも構わない。
【0037】
霧化装置10の外槽11とその中に配置された原料液容器15の間は閉鎖することが望ましい。これにより、外槽11内の超音波伝達液14が蒸発することを防ぎ、長時間安定して使用することが可能となる。具体的には、図11に示すように、外槽11と原料液容器15の間にOリング99を介挿する態様が考えられる。あるいは、外槽に、原料液容器15が入る大きさの孔を有する蓋を被せる態様も考えられる(図示せず)。一実施例としてOリングを備えた外径135 mm、内径118 mm、深さ15 mmの外槽に超音波伝達液を50 ml入れ、ポリカーボネート製の直径115 mm、長さ(高さ)125 mmの円柱状の素材を機械加工により削り出し、周壁の厚さが2 mm、底壁の厚さが100μm以下の有底円筒状の容器を差し込んだ。超音波伝達液14として水を高さ30 mmまで収容した場合と同様に霧化することが確認された。更に、1時間の霧化を実施した後も超音波伝達液14はほとんど減っていないことが確認され、Oリング封止によって蒸発が防がれていることを確認した。
【符号の説明】
【0038】
10、20、30、80…霧化装置
11…外槽
11a…底壁
12…超音波発生器
14…超音波伝達液
15、25、35…原料液容器
17、27、37…蓋
17a、27a、37a…ミスト放出口
18…成膜用原料液
20…霧化装置
21…本体部
22…フィルム
23…パッキン
24…台座
26…支持体
27…蓋
30…霧化装置
35…原料液容器
81…液面シート
82…ファイバーセンサー
83…レーザービーム発生器
84…レーザービーム検知器
90…ミスト送給ガス供給源
91…原料液タンク
92…成膜室
93…マスフローコントローラー
94…バルブ
95…バルブ
96…被成膜基板
97…ヒーター
98…制御装置
99…Oリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11