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特開2023-176509硬化膜の製造方法および硬化膜の製造装置
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  • 特開-硬化膜の製造方法および硬化膜の製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176509
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】硬化膜の製造方法および硬化膜の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231206BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 501
B41M5/00 100
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088829
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 陽平
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
【Fターム(参考)】
2C056EA13
2C056FA04
2C056FD20
2C056HA44
2H186AB11
2H186AB12
2H186AB23
2H186BA08
2H186DA12
2H186FB04
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB29
2H186FB34
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB48
2H186FB55
(57)【要約】
【課題】活性線硬化型インクにより形成された硬化膜からの臭気を低減することができる、硬化膜の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に関する硬化膜の製造方法は、活性線硬化型インクを基材に付与する工程と、前記付与された活性線硬化型インクに、第1の活性線を照射して、前記活性線硬化型インクを前記基材に定着させる工程と、前記基材に定着させた前記活性線硬化型インクに、第2の活性線を照射する工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性線硬化型インクを基材に付与する工程と、
前記付与された活性線硬化型インクに、第1の活性線を照射して、前記活性線硬化型インクを前記基材に定着させる工程と、
前記基材に定着させた前記活性線硬化型インクに、第2の活性線を照射する工程と、
を有する、硬化膜の製造方法。
【請求項2】
前記第2の活性線は、前記活性線硬化型インクに照射される単位時間あたりのエネルギー量が前記第1の活性線よりも多い、請求項1に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項3】
前記第1の活性線および前記第2の活性線は、いずれも紫外線であり、
前記第2の活性線は、前記第1の活性線のピーク波長よりも短いピーク波長を有する、請求項1または2に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項4】
前記活性線硬化型インクは、色材を含む、請求項1または2に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項5】
前記活性線硬化型インクは、ゲル化剤を含む、請求項1または2に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項6】
前記第2の活性線は、前記第1の活性線の照射後、5分以上の間隔を空けて照射される、請求項1または2に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項7】
前記基材に定着させた前記活性線硬化型インクを加熱する工程を有し、
前記第2の活性線は、前記加熱された活性線硬化型インクに照射される、
請求項1または2に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項8】
前記活性線硬化型インクは、インクジェット法により前記基材に付与される、請求項1または2に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項9】
活性線硬化型インクを基材に付与する付与部と、
前記付与された活性線硬化型インクに、第1の活性線を照射して、前記活性線硬化型インクを前記基材に定着させる第1照射部と、
前記第1の活性線を照射された前記活性線硬化型インクに、前記第1の活性線とは異なる第2の活性線を照射する第2照射部と、
を有する、硬化膜の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化膜の製造方法および硬化膜の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線や電子線などの活性線を照射されると重合する重合性化合物と、重合を開始させるための任意成分としての重合開始剤とを含み、活性線の照射により硬化する活性線硬化型インクが知られている。活性線硬化型インクは、活性線の照射により短時間で硬化させて基材に定着させることができ、かつ多種多様な基材への展開が容易であることから、幅広い分野に応用されている。また、活性線硬化型インクをインクジェット法などに応用して、高精細な画像の形成するためにも用いることができる。
【0003】
活性線硬化型インクの速い硬化性を活用するため、上流側および下流側のインクジェットヘッド間に活性線照射部を設けた記録装置が、引用文献1に記載されている。引用文献1では、それぞれのインクジェットヘッドから吐出されたインクを瞬時に硬化させることで、下流側のインクジェットヘッドから吐出されたインクとの混色を防ぐことができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-144565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者らの知見によれば、活性線硬化型インクにより形成された硬化膜からは、未反応の重合性化合物が揮発して臭気が発生することがあった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、活性線硬化型インクにより形成された硬化膜からの臭気を低減することができる硬化膜の製造方法、および当該硬化膜の製造方法に用いることができる硬化膜の製造装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、下記[1]~[8]の硬化膜の製造方法に関する。
[1]活性線硬化型インクを基材に付与する工程と、
前記付与された活性線硬化型インクに、第1の活性線を照射して、前記活性線硬化型インクを前記基材に定着させる工程と、
前記基材に定着させた前記活性線硬化型インクに、第2の活性線を照射する工程と、
を有する、硬化膜の製造方法。
[2]前記第2の活性線は、前記活性線硬化型インクに照射される単位時間あたりのエネルギー量が前記第1の活性線よりも多い、[1]に記載の硬化膜の製造方法。
[3]前記第1の活性線および前記第2の活性線は、いずれも紫外線であり、
前記第2の活性線は、前記第1の活性線のピーク波長よりも短いピーク波長を有する、[1]または[2]に記載の硬化膜の製造方法。
[4]前記活性線硬化型インクは、色材を含む、[1]または[2]に記載の硬化膜の製造方法。
[5]前記活性線硬化型インクは、ゲル化剤を含む、[1]または[2]に記載の硬化膜の製造方法。
[6]前記第2の活性線は、前記第1の活性線の照射後、5分以上の間隔を空けて照射される、[1]または[2]に記載の硬化膜の製造方法。
[7]前記基材に定着させた前記活性線硬化型インクを加熱する工程を有し、
前記第2の活性線は、前記加熱された活性線硬化型インクに照射される、
[1]または[2]に記載の硬化膜の製造方法。
[8]前記活性線硬化型インクは、インクジェット法により前記基材に付与される、[1]または[2]に記載の硬化膜の製造方法。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明の別の態様は、下記[9]の硬化膜の製造装置に関する。
[9]活性線硬化型インクを基材に付与する付与部と、
前記付与された活性線硬化型インクに、第1の活性線を照射して、前記活性線硬化型インクを前記基材に定着させる第1照射部と、
前記第1の活性線を照射された前記活性線硬化型インクに、前記第1の活性線とは異なる第2の活性線を照射する第2照射部と、
を有する、硬化膜の製造装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、活性線硬化型インクにより形成された硬化膜からの臭気を低減することができる硬化膜の製造方法、および当該硬化膜の製造方法に用いることができる硬化膜の製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に関する硬化膜の製造方法の例示的なフロー図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に関する硬化膜の製造方法の別の例示的なフロー図である。
図3図3は、本発明の他の実施形態に関する硬化膜の製造装置の例示的な構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.硬化膜の製造方法
図1は、本発明の一実施形態に関する硬化膜の製造方法の例示的なフロー図である。図1に示すように、本実施形態に関する硬化膜の製造方法は、活性線硬化型インクを基材に付与する工程(工程S110)と、基材に付与された活性線硬化型インクに、第1の活性線を照射して、前記活性線硬化型インクを前記基材に定着させる工程(工程S120)と、第1の活性線を照射された活性線硬化型インクに、第1の活性線とは異なる第2の活性線を照射する工程(工程S130)と、を有する。以下、各工程について説明する。
【0012】
1-1.インクを付与する工程(工程S110)
本工程では、活性線硬化型インクを基材に付与する。
【0013】
付与される活性線硬化型インクは、活性線を照射されたときに重合する重合性化合物を含み、上記重合性化合物の重合によりインクが硬化し、インクを付与された基材に定着するものであればよい。
【0014】
活性線の例には、電子線、紫外線、α線、γ線およびエックス線などが含まれる。これらのうち、紫外線または電子線が好ましく、基材の損傷が少ないことから、紫外線がより好ましい。
【0015】
上記重合性化合物は、モノマーであってもよいし、重合性オリゴマーであってもよいし、プレポリマーであってもよいし、これらの混合物であってもよい。また、上記重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であってもよいし、カチオン重合性化合物であってもよいし、これらの混合物であってもよい。
【0016】
ラジカル重合性化合物は、分子中にエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物であればよい。ラジカル重合性化合物の例には、(メタ)アクリレートが含まれる。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基またはメタクリロイル基を意味する。ラジカル重合性化合物は、単官能の化合物であってもよいし、多官能の化合物であってもよい。多官能の化合物は、硬化膜中に架橋構造を形成し、硬化膜の硬度をより高めることができる。これらのラジカル重合性化合物は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
単官能の(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸およびt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが含まれる。上記単官能の(メタ)アクリレートは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0018】
多官能の(メタ)アクリレートの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの2官能の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートなどの3官能以上の(メタ)アクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマーを含む(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー、ならびにこれらの変性物などが含まれる。上記変性物の例には、エチレンオキサイド基を挿入したエチレンオキサイド変性(EO変性)(メタ)アクリレート、およびプロピレンオキサイドを挿入したプロピレンオキサイド変性(PO変性)(メタ)アクリレートが含まれる。上記多官能の(メタ)アクリレートは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
カチオン重合性化合物は、分子内二カチオン重合性基を有する化合物であればよい。カチオン重合性化合物の例には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、およびオキセタン化合物などが含まれる。これらのカチオン重合性化合物は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
上記エポキシ化合物の例には、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサノン-メタ-ジオキサンおよびビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環式エポキシ樹脂、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種類または2種類以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドなど)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどを含む脂肪族エポキシ化合物、ならびに、ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、およびノボラック型エポキシ樹脂などを含む芳香族エポキシ化合物などが含まれる。上記エポキシ化合物は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
上記ビニルエーテル化合物の例には、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、およびオクタデシルビニルエーテルなどを含むモノビニルエーテル化合物、ならびにエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、およびトリメチロールプロパントリビニルエーテルなどを含むジまたはトリビニルエーテル化合物などが含まれる。上記ビニルエーテル化合物は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0022】
上記オキセタン化合物の例には、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ベンジルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシブチル-3-メチルオキセタン、1,4ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタンおよびジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテルなどが含まれる。上記オキセタン化合物は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
これらのうち、本実施形態における臭気低減効果は、ラジカル重合性化合物を用いたときに顕著に奏され、(メタ)アクリレートを用いたときにより顕著に奏され、多官能の(メタ)アクリレートを用いたときにさらに顕著に奏される。これらの重合性化合物の割合は、活性線硬化型インクに含まれる重合性化合物の全質量に対して、70質量%100質量%以下であることが好ましく、80質量%100質量%以下であることがより好ましく、90質量%100質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
重合性化合物の含有量は、活性線硬化型インクの全質量に対して1質量%以上97質量%以下とすることができ、30質量%以上95質量%以下であることが好ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上90質量%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
また、重合性化合物の含有量は、活性線硬化型インクに含まれる液体成分の全質量に対して、30質量%以上100質量%以下であることが好ましく、50質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。上記重合性化合物の割合が多いほど、基材に付着させた活性線硬化型インクの乾燥がより短時間でよくなり、または不要になり、かつ乾燥時に液体成分が揮発することによる臭気の発生を抑制することができる。一方で、上記重合性化合物の割合が多いほど、硬化膜中に残存した未反応の重合性化合物が硬化膜から揮発しやすくなり、これによる臭気が発生しやすい。これに対し、本実施形態によれば、重合性化合物の割合を多くしても画像からの臭気の発生を抑制することができる。
【0026】
活性線硬化型インクは、活性線を照射されたときに重合性化合物の重合反応を開始させるための、重合開始剤を含んでいてもよい。上記重合開始剤は、活性線の照射により重合反応を開始させる、いわゆる光重合開始剤である。上記重合開始剤は、活性線硬化型インクがラジカル重合性化合物を含むときはラジカル重合開始剤であることが好ましく、活性線硬化型インクがカチオン重合性化合物を含むときはカチオン重合開始剤(光酸発生剤)であることが好ましい。
【0027】
ラジカル重合開始剤は、分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤であってもよいし、分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤であってもよい。これらのうち、分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤は、分子量がより小さい残渣が重合後に硬化膜中に残存しやすく、この残渣が揮発することによる臭気を発生させやすい。そのため、活性線硬化型インクが分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤を含むとき、本実施形態における臭気低減効果はより顕著に奏される。
【0028】
分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、および2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノンなどを含むアセトフェノン系の開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、およびベンゾインイソプロピルエーテルなどを含むベンゾイン類、2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドなどを含むアシルホスフィンオキシド系の開始剤、ならびに、ベンジルおよびメチルフェニルグリオキシエステルなどが含まれる。上記分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどを含むベンゾフェノン系の開始剤、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントンなどを含むチオキサントン系の開始剤、ミヒラーケトン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノンなどを含むアミノベンゾフェノン系の開始剤、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、ならびにカンファーキノンなどが含まれる。上記分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
カチオン重合開始剤の例には、光酸発生剤が含まれる。光酸発生剤の例には、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、およびホスホニウムなどを含む芳香族オニウム化合物のB(C 、PF 、AsF 、SbF 、CFSO 塩など、スルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、ならびに鉄アレン錯体などが含まれる。上記光酸発生剤は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0031】
重合開始剤の含有量は、活性線硬化型インクが十分に硬化できる範囲であればよく、たとえば、活性線硬化型インクの全質量に対して0.01質量%以上10質量%以下とすることができる。
【0032】
なお、照射する活性線として電子線を用いるときなど、重合開始剤がなくても活性線硬化型インクが十分に硬化して基材に定着するときには、活性線硬化型インクは重合開始剤を含まなくてもよい。ただし、重合開始剤は、残渣が硬化膜から揮発することによる臭気を発生させやすいため、活性線硬化型インクが重合開始剤を含むとき、本実施形態による臭気低減効果はより顕著である。また、重合開始剤は、後述する第2の活性根の照射時に未反応の重合性化合物の反応を促進して、臭気低減効果を高める。そのため、本実施形態では、活性線硬化型インクは重合開始剤を含むことが好ましい。
【0033】
活性線硬化型インクは、硬化膜を着色するための色材を含んでいてもよい。たとえば、硬化膜が集合した画像を形成するときなどには、色材の種類または量が異なる複数種の活性線硬化型インクを基材(記録媒体)に付与して硬化させることにより、多色のカラー画像を形成することができる。
【0034】
色材は、染料であってもよいし、顔料であってもよいし、これらを併用してもよい。
【0035】
硬化膜の着色を長期間にわたって維持する観点からは、色材は顔料であることが好ましい。顔料は、形成すべき硬化膜の色調や、形成すべき画像の色彩などに応じて、たとえば、黄(イエロー)顔料、赤またはマゼンタ顔料、青またはシアン顔料および黒顔料などから選択することができる。顔料は、これらの混合物であってもよい。
【0036】
黄顔料の例には、C.I.Pigment Yellow(以下、単に「PY」ともいう。) 1、PY3、PY12、PY13、PY14、PY17、PY34、PY35、PY37、PY55、PY74、PY81、PY83、PY93、PY94,PY95、PY97、PY108、PY109、PY110、PY137、PY138、PY139、PY153、PY154、PY155、PY157、PY166、PY167、PY168、PY180、PY185、およびPY193などが含まれる。
赤あるいはマゼンタ顔料の例には、C.I.Pigment Red(以下、単に「PR」ともいう。) 3、PR5、PR19、PR22、PR31、PR38、PR43、PR48:1、PR48:2、PR48:3、PR48:4、PR48:5、PR49:1、PR53:1、PR57:1、PR57:2、PR58:4、PR63:1、PR81、PR81:1、PR81:2、PR81:3、PR81:4、PR88、PR104、PR108、PR112、PR122、PR123、PR144、PR146、PR149、PR166、PR168、PR169、PR170、PR177、PR178、PR179、PR184、PR185、PR208、PR216、PR226、およびPR257、C.I.Pigment Violet(以下、単に「PV」ともいう。) 3、PV19、PV23、PV29、PV30、PV37、PV50、およびPV88、ならびに、C.I.Pigment Orange(以下、単に「PO」ともいう。) 13、PO16、PO20、およびPO36などが含まれる。
青またはシアン顔料の例には、C.I.Pigment Blue(以下、単に「PB」ともいう。) 1、PB15、PB15:1、PB15:2、PB15:3、PB15:4、PB15:6、PB16、PB17-1、PB22、PB27、PB28、PB29、PB36、およびPB60などが含まれる。
緑顔料の例には、C.I.Pigment Green(以下、単に「PG」ともいう。) 7、PG26、PG36、およびPG50などが含まれる。
黒顔料の例には、C.I.Pigment Black(以下、単に「PBk」ともいう。) 7、PBk26、およびPBk28などが含まれる。
上記顔料は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
色材の含有量は、活性線硬化型インクの全質量に対して0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。色材の含有量が、活性線硬化型インクの全質量に対して0.1質量%以上であると、得られる硬化膜の発色が十分となる。色材の含有量が活性線硬化型インクの全質量に対して20.0質量%以下であると、インクの粘度が高まりすぎない。なお、活性線硬化型インクは、色材を含まないか、または硬化膜の着色が確認できない程度(あるいは硬化膜が光透過性を有する程度)にしか色材を含まない、クリアインクであってもよい。
【0038】
なお、顔料は、分散剤で分散されていてもよい。上記分散剤は、上記顔料を十分に分散させることができればよい。分散剤の例には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびステアリルアミンアセテートが含まれる。上記分散剤は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
分散剤の含有量は、たとえば、顔料の全質量に対して20質量%以上70質量%以下とすることができる。
【0040】
活性線硬化型インクは、ゲル化剤を含んでいてもよい。ゲル化剤は、常温では固体だが、70℃~130℃程度に加熱すると液体となり、これによって、活性線硬化型インクを温度変化により、たとえば常温と70℃~130℃との間で、ゾルゲル相変化させる化合物である。ゲル化剤は、加温により活性線硬化型インクをゾル状に相変化させて基材への付与を可能とし、一方で基材に付与した活性線硬化型インクをゲル状に相変化させて基材上での活性線硬化型インクの過剰な濡れ広がりを抑制する(ピニング性を高める)。
【0041】
また、ゲル化剤は、結晶中に未反応の重合性化合物(および重合開始剤)の残差を捕捉して、硬化膜からのこれらの揮発を抑制する。さらには、ゲル化剤は、重合性硬化型インクが基材に付与されたときにインクの表面に染み出してインクを被覆する。この状態で硬化膜を形成することで、硬化膜の表面を被覆するゲル化剤が、未反応の重合性化合物(および重合開始剤)の残差の、硬化膜からの揮発を抑制することもできる。これらの作用により、ゲル化剤は、硬化膜の臭気をより低減させることができる。
【0042】
ゲル化剤は、活性線硬化型インクのゲル化温度以下の温度で、インク中で結晶化して、板状に結晶化したゲル化剤によって形成された三次元空間に光重合性化合物が内包される構造を形成することが好ましい。(このような構造を、以下「カードハウス構造」という。)。カードハウス構造が形成されると、液体の光重合性化合物が上記空間内に保持されるため、活性線硬化型インクのピニング性がより高まる。カードハウス構造をより形成させやすくする観点からは、活性線硬化型インク中で溶解している重合性化合物とゲル化剤とは、相溶していることが好ましい。
【0043】
なお、ゲル化温度とは、加熱によりゾル化または液体化した活性線硬化型インクを冷却していったときに、インクがゾルからゲルに相転移し、インクの粘度が急変する温度をいう。具体的には、ゾル化または液体化した活性線硬化型インクを、例えば、レオメータ「MCR300」(AntonPaar社製)で粘度を測定しながら冷却していき、粘度が急激に上昇した温度を、そのインクのゲル化温度とすることができる。逆に、ゲル化した活性線硬化型インクを、同様に粘度を測定しながら加温していき、粘度が急激に低下した温度を、そのインクのゾル化温度とすることができる。
【0044】
結晶化によるカードハウス構造の形成に好適なゲル化剤の例には、ケトンワックス、エステルワックス、高級脂肪酸、高級アルコール、ならびに、N-置換脂肪酸アミドおよび特殊脂肪酸アミドを含む脂肪酸アミドが含まれる。これらのゲル化剤は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。たとえば、ケトンワックスおよびエステルワックスを併用することで、活性線硬化型インクのピニング性をより高めることができる。
【0045】
上記ケトンワックスの例には、ジリグノセリルケトン、ジベヘニルケトン、ジステアリルケトン、ジエイコシルケトン、ジパルミチルケトン、ジミリスチルケトン、ミリスチルパルミチルケトンおよびパルミチルステアリルケトンが含まれる。上記ケトンワックスは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
上記エステルワックスの例には、ベヘニン酸ベヘニル、イコサン酸イコシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸パルミチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸オレイル、およびグリセリン脂肪酸エステルが含まれる。上記エステルワックスは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
上記高級脂肪酸の例には、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、およびエルカ酸が含まれる。上記高級脂肪酸は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0048】
上記高級アルコールの例には、ステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールが含まれる。上記高級アルコールは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0049】
上記脂肪酸アミドの例には、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ラウリル酸アミド、リシノール酸アミドおよび12-ヒドロキシステアリン酸アミドが含まれる。上記脂肪酸アミドは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0050】
上記N-置換脂肪酸アミドの例には、N-ステアリルステアリン酸アミドおよびN-オレイルパルミチン酸アミドが含まれる。上記N-置換脂肪酸アミドは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
上記特殊脂肪酸アミドの例には、N,N’-エチレンビスステアリルアミド、N,N’-エチレンビス-12-ヒドロキシステアリルアミドおよびN,N’-キシリレンビスステアリルアミドが含まれる。上記特殊脂肪酸アミドは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0052】
ゲル化剤は、炭素数が12以上26以下であるアルキル基を有する化合物であることが好ましい。上記アルキル基の炭素数が12以上であると、活性線硬化型インクのピニング性がより高まる。上記アルキル基の炭素数が26以下であると、活性線硬化型インクのゾル化温度が高くなりすぎず、活性線硬化型インクの付与が容易である。
【0053】
上記ゲル化剤の含有量は、活性線硬化型インクの全質量に対して0.5質量%以上10.0質量%未満であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%未満であることがより好ましく、2.0質量%以上7.0質量%以下であることがさらに好ましい。ゲル化剤の含有量が、活性線硬化型インクの全質量に対して0.5質量%以上であると、活性線硬化型インクのピニング性がより高まる。ゲル化剤の含有量が、活性線硬化型インクの全質量に対して10.0質量%以下であると、インクの粘度が高まりすぎない。
【0054】
活性線硬化型インクは、重合禁止剤、界面活性剤、光増感剤、多糖類、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防黴剤、防錆剤などを含んでもよい。上記その他の成分は、上記組成物中に、1種類のみが含まれていてもよく、2種類以上が含まれていてもよい。
【0055】
上記重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシムが含まれる。上記重合禁止剤は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0056】
上記重合禁止剤の含有量は、活性線硬化型インクの全質量に対して0.05質量%以上0.2質量%以下とすることができる。
【0057】
界面活性剤の例には、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、およびパーフルオロアルケニル基を有するフッ素系界面活性剤などが含まれる。上記界面活性剤は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
界面活性剤の含有量は、活性線硬化型インクの全質量に対して0.001質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましい。
【0059】
活性線硬化型インクの付与方法は特に限定されず、スプレー塗布法、浸漬法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法などの公知の方法を使用することができる。上記付与方法は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのうち、微細な硬化膜を精度よく基材上に配置して、高精細なパターン(画像等)を形成する観点からは、インクジェット法が好ましい。
【0060】
インクジェット法により付与されるとき、活性線硬化型インクの粘度は、インクジェットヘッドからの吐出時の粘度が1mPa・s以上100mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上20mPa・s以下であることがより好ましい。上記範囲とすることで、インクジェットヘッドからの吐出をより高めることができる。なお、吐出時の粘度とは、活性線硬化型インクが相変化しないとき(たとえば、ゲル化剤を含まないとき)は25℃における温度であり、活性線硬化型インクが相変化するとき(たとえば、ゲル化剤を含むとき)は80℃における温度とする。また、活性線硬化型インクがゲル化剤を含有するとき、基材に着弾した活性線硬化型インクのピニング性をより高める観点から、活性線硬化型インクの25℃における粘度は1000mPa・s以上であることが好ましい。
【0061】
活性線硬化型インクの25℃における粘度、および80℃における粘度は、レオメータにより、活性線硬化型インクを100℃に加熱し、ストレス制御型レオメータ「PhysicaMCR301」(Anton Paar社製)によって粘度を測定しながら、剪断速度11.7(1/s)、降温速度0.1℃/sの条件で20℃までインクを冷却して得られた粘度の温度変化曲線において25℃および80℃における粘度をそれぞれ読み取ることにより求める。
【0062】
活性線硬化型インクの付与量は特に限定されず、硬化膜の用途に応じて適宜設定することができる。たとえば、活性線硬化型インクの付与量は、15g/m以下であることが好ましく、11g/m以下であることがより好ましく、9g/m以下であることがさらに好ましい。付与量が多いほど未反応の重合性化合物が残存しやすく、硬化膜から臭気が発生しやすいため、本実施形態による臭気低減効果が顕著である。
【0063】
基材の種類は特に限定されず、非吸収性の基材であってもよいし、吸収性の基材であってもよい。非吸収性の基材の例には、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブタジエンテレフタレートなどのプラスチック、金属類およびガラスなどが含まれる。吸収性の基材の例には、紙類(たとえば、印刷用コート紙および印刷用コート紙B)が含まれる。
【0064】
1-2.第1の活性線を照射してインクを定着させる工程(工程S120)
本工程では、基材に付与された活性線硬化型インクに第1の活性線を照射して活性線硬化型インクを硬化させ、硬化した活性線硬化型インク(以下、本工程において硬化させたインクを「インク硬化物」ともいう。)を基材に定着させる。
【0065】
照射する第1の活性線は、電子線、紫外線、α線、γ線およびエックス線などのいずれの活性線であってもよいが、電子線または紫外線であることが好ましく、紫外線であることがより好ましい。
【0066】
本工程では、硬化した活性線硬化型インクを基材に定着させるように、第1の活性線を照射する。基材に定着させるとは、活性線硬化型インクが硬化してなるインク硬化物が基材から離脱しない程度にまで、活性線硬化型インクを十分に硬化させることを意味する。たとえば、本工程において形成したインク硬化物は、そのまま完成品としても実用に耐え得る程度の硬度および定着性を有する。
【0067】
より具体的には、本工程では、活性線硬化型インクの硬化率が80%以上となるように、第1の活性線を照射することが好ましい。
【0068】
活性線硬化型インクの硬化率とは、インク中の重合性化合物が全て反応したときを硬化率が100%であるとしたときの、当該活性線硬化型インクの硬化の度合いである。本実施形態において、活性線を照射されたインクの硬化率は、硬化率を100%とするための活性線の積算エネルギー量に対する、当該活性線硬化型インクに照射された活性線の積算エネルギー量の割合により求めることができる。
【0069】
このとき、当該活性線硬化型インクに異なるエネルギー量の活性線を照射して得られた異なるインク硬化物について、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)により得られる吸光スペクトル中の、重合性化合物に対応するピークの強度をそれぞれ測定する。照射した活性線の積算エネルギー量が多いほど、重合性化合物は反応するためピーク強度は減少していく。この、積算エネルギー量とピーク強度との関係を示す検量線を予め作成しておく。そして、活性線硬化型インクに活性線を照射して得られたインク硬化物をFT-IRで測定し、得られた吸光スペクトル中の重合性化合物に対応するピークの強度を、上記検量線に当てはめることで、当該活性線硬化型インクに照射された活性線の積算エネルギー量の求めることができる。上記検量線におけるピーク強度が0になる(重合性化合物がすべて反応する)ときの積算エネルギー量に対する、上記求められた積算エネルギー量の割合を、インク硬化物の硬化率とすることができる。
【0070】
80%以上の硬化率を有するインク硬化物は、上述したように、そのまま完成品としても実用に耐え得る程度に硬化され、基材に定着している。たとえば特許文献1に記載のような仮硬化では、この程度までに活性線硬化型インクを硬化させることはない。
【0071】
たとえば、第1の活性線の積算エネルギー量は、200mJ/cm以上1000mJ/cm以下であることが好ましく、300mJ/cm以上800mJ/cm以下であることがより好ましく、350mJ/cm以上500mJ/cm以下であることがさらに好ましい。上記積算エネルギー量が200mJ/cm以上だと、重合性化合物を十分に重合および架橋させて、インク硬化物の硬度を十分に高めることができる。上記積算エネルギー量が1000mJ/cm以下だと、照射される活性線による基材の損傷が生じにくい。
【0072】
また、第1の活性線の強度(単位時間あたりのエネルギー量)は、200mW/cm以上1000mW/cm以下であることが好ましく、300mW/cm以上800mW/cm以下であることがより好ましく、350mW/cm以上500mW/cm以下であることがさらに好ましい。上記強度が200mW/cm以上だと、重合性化合物を十分に重合および架橋させて、インク硬化物の硬度を十分に高めることができる。上記強度が1000mW/cm以下だと、照射される活性線による基材の損傷が生じにくく、かつ、架橋構造が密になりすぎないため折り割れが生じにくくなる。
【0073】
また、第1の活性線が紫外線であるとき、照射される第1の活性線の波長は、活性線硬化型インクに含まれる重合開始剤の吸収ピーク波長にあわせて選択すればよい。具体的には、照射される紫外線のピーク波長は、重合開始剤の吸収ピーク波長の上下30nm以内の波長であることが好ましく、上下15nm以内の波長であることがより好ましく、上下10nm以内の波長であることがさらに好ましい。
【0074】
1-3.第2の活性線を照射する工程(工程S130)
本工程では、前工程で第1の活性線を照射され、基材に定着した活性線硬化型インク(インク硬化物)に、第2の活性線を照射する。これにより、前工程で硬化され、基材に定着されたインク硬化物の臭気を低減させることができる(以下、本工程において第2の活性線を照射された硬化させたインク硬化物を「硬化膜」ともいう。)
【0075】
本実施形態では、前工程における第1の活性線の照射により、実用に耐え得る程度にまで活性線硬化型インクを硬化させる。ところで、通常、硬化膜の形成時には硬化率が100%になるまで活性線硬化型インクを硬化させることはない。そのため、形成された硬化膜の内部には、未反応の重合性化合物が残存している。活性線の照射により、活性線硬化型インクの内部で重合性化合物が重合していき、重合体の炭素鎖が成長していくと、未反応の重合性化合物の一部が炭素鎖に捕捉されることがある。そして、この捕捉された重合性化合物は、他の重合性化合物と近接できなかったり、あるいは重合ラジカルと出会えなかったりして、反応できずに硬化膜内部に取り残されることがある。このような残存した重合性化合物は、硬化膜の表面から揮発すると、臭気を発生させる。
【0076】
これに対し、本実施形態では、第1の活性線の照射により十分に硬化した活性線硬化型インクによりなるインク硬化物に、さらに第2の活性線を照射する。第2の活性線の照射により、上記残存した重合性化合物を重合させることで、これらの残存した重合性化合物の揮発による臭気の発生を抑制することができる。あるいは、第2の活性線の照射により残存した重合性化合物を分解させても、臭気の発生を抑制することができる。
【0077】
第2の活性線は、第1の活性線と種類(および波長)が同じである、第1の活性線と同一の活性線であってもよいし、これらの少なくともいずれかが第1の活性線と相違する、第1の活性線とは異なる活性線であってもよい。第1の活性線により反応しきれなかった重合性化合物を反応させる観点、あるいは重合性化合物をより分解させやすくする観点からは、第2の活性線は、第1の活性線とは異なる活性線であることが好ましい。
【0078】
また、第2の活性線は、強度(単位時間あたりのエネルギー量)が、前工程における第1の活性線のエネルギー量よりも多いことが好ましい。これにより、インク硬化物の内部で重合性化合物の重合(あるいは分解)を十分に進行させ、残存した重合性化合物の量を十分に減らして臭気をより効果的に低減させることができる。
【0079】
たとえば、第2の活性線の強度(単位時間あたりのエネルギー量)は、1000mW/cm以上1500mW/cm以下であることが好ましく、1100mW/cm以上1400mW/cm以下であることがより好ましく、1200mW/cm以上1300mW/cm以下であることがさらに好ましい。上記強度が1000mW/cm以上だと、残存した重合性化合物を十分に重合させて、硬化膜の臭気をより効果的に低減させることができる。上記強度が1500mW/cm以下だと、照射される活性線による基材の損傷が生じにくい。
【0080】
なお、同様の観点から、第2の活性線を電子線としてもよい。
【0081】
第2の活性線の積算エネルギー量は、1000mJ/cm以上1500mJ/cm以下であることが好ましく、1100mJ/cm以上1400mJ/cm以下であることがより好ましく、1200mJ/cm以上1300mJ/cm以下であることがさらに好ましい。上記積算エネルギー量が1000mJ/cm以上だと、残存した重合性化合物を十分に重合させて、硬化膜の臭気をより効果的に低減させることができる。上記積算エネルギー量が1500mJ/cm以下だと、照射される活性線による基材の損傷が生じにくい。
【0082】
また、第1の活性線および第2の活性線がいずれも紫外線であるとき、第2の活性線は、第1の活性線のピーク波長よりも短いピーク波長を有する(言い換えると、第2の活性線は第1の活性線よりも短波長である)ことが好ましい。短波長の光は、物質(本実施形態でいうとインク硬化物)に対する透過性が低い。そのため、第2の活性線として短波長の紫外線を照射すると、照射された第2の活性線はインク硬化物の内部まではさほど侵入せず、表面近傍で特異的に、残存した重合性化合物の重合を進行させる。これにより、硬化膜の表面近傍で重合性化合物が緻密に重合した構造を形成して、硬化膜の表面からの残存した重合性化合物(あるいは重合開始剤の残差)の揮発を抑制し、硬化膜の臭気をより効果的に低減することができる。
【0083】
このとき、第2の活性性を照射された重合開始剤により重合開始をより効率的に促進させる観点からは、第2の活性線のピーク波長は、第1の活性線のピーク波長に対して30nm以内の波長であることが好ましく、20nm以内の波長であることがより好ましく、10nm以内の波長であることがさらに好ましい。
【0084】
なお、図2に示すように、第1の活性線の照射による活性線硬化型インクの定着(工程S120)と、第2の活性線の照射(工程S130)との間に、活性線硬化型インクが基材に定着してなるインク硬化物を加熱する工程(工程S210)を有していてもよい。
【0085】
インク硬化物を加熱することで、残存した重合性化合物の熱による反応(重合)を促進し、残存する重合性化合物の量をさらに減らして硬化膜の臭気をより効果的に低減させることができる。また、加熱した状態で第2の活性線を照射することで、残存した重合性化合物をさらに効率的に重合させることもできる。
【0086】
このときの加熱温度は、80℃以上200℃以下であることが好ましく、100℃以上180℃以下であることがより好ましく、120℃以上160℃以下であることがさらに好ましい。加熱温度を80℃以上だと、インク硬化膜の内部に残存した重合性化合物がより効率的に重合し、硬化膜の臭気がより効果的に低減される。加熱温度を200℃以下だと、熱による基材の損傷が生じにくい。
【0087】
第2の活性線の照射(工程S130)は、第1の活性線の照射(工程S120)の直後に、同一の硬化膜製造装置中で(オンラインで)行ってもよいし、第1の活性線の照射(工程S120)から時間をおいた後に、別の装置で(オフラインで)行ってもよい。たとえば、第2の活性線は、第1の活性線の照射後、5分以上の間隔を空けて照射されてもよい。
【0088】
このようにして形成された硬化膜は、美感を要求され、かつ使用者が手に取って人体の近くで使用することが多い画像として硬化膜を使用するとき、臭気の低減により硬化膜の使用感の向上効果が顕著に得られる。
【0089】
2.硬化膜の製造装置
図3は、本発明の他の実施形態に関する硬化膜の製造装置の例示的な構成を示す模式図である。
【0090】
図3に示す硬化膜の製造装置100は、基材110の表面に活性線硬化型インクを付与するインク付与部120と、基材110の活性線硬化型インクが付与された面に第1の活性線を照射する第1照射部130と、基材110の活性線硬化型インクが付与された面に、第1照射部130よりも下流側で第2の活性線を照射する第2照射部140と、を有する。
【0091】
図1では、基材の搬送方向(図中矢印方向)に沿って上流側から、インク付与部120、第1照射部130および第2照射部140がこの順に配置されている。
【0092】
インク付与部120は、本実施形態ではインクジェット法により画像を形成するインク付与部であり、それぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色の活性線硬化型インク(インクジェットインク)をノズル121から吐出して、基材110の表面に形成された前処理層上に付与させるためのインクジェットヘッド122Y、122M、122Cおよび122Kを有する。インクジェットヘッド122Y、122M、122Cおよび122Kは、上記各色の活性線硬化型インクを、基材110の表面に付与する。
【0093】
第1照射部130は、基材110の搬送方向における、インク付与部120より下流側に配置され、基材110の活性線硬化型インクが付与されている面に向けて第1の活性線を照射する。これにより、第1照射部130は、基材110の表面に付与された活性線硬化型インクを硬化させて、基材110の表面に定着したインク硬化物を形成する。第1の活性線の照射条件は、硬化膜の製造方法について説明した通りである。
【0094】
第2照射部140は、基材110の搬送方向における、第1照射部130より下流側に配置され、基材110のインク硬化物(活性線硬化型インク)が定着している面に向けて第2の活性線を照射する。これにより、第2照射部140は、基材110の表面に定着しているインク硬化物に残存した重合性化合物を重合させる。この結果、上記残存した重合性化合物が硬化膜から揮発することによる臭気の発生を、抑制することができる。第2の活性線の照射条件は、硬化膜の製造方法について説明した通りである。
【0095】
また、図3に示すように、硬化膜の製造装置100は、第1照射部130による第1の活性線の照射により基材110の表面に形成されたインク硬化物を加熱する、加熱部150を有してもよい。加熱部150は、基材110の搬送方向における、第1照射部130より下流側に配置され、搬送される基材の表面に形成されたインク硬化物を加熱する。これにより、残存する重合性化合物の量をさらに減らして硬化膜の臭気をより効果的に低減させることができる。インク硬化物の加熱条件は、硬化膜の製造方法について説明した通りである。
【0096】
なお、上記の説明では、インクジェット法により基材110の表面に活性線硬化型インクを付与しているが、活性線硬化型インクの付与方法は特に限定されず、スプレー塗布法、浸漬法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法などの公知の方法を使用することができる。
【0097】
また、上記の説明では、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色の活性線硬化型インクを基材110に付与しているが、活性線硬化型インクの種類および組み合わせは特に限定されず、クリアインクや他色のインクを用いてもよいし、インクの数も1種類のみであってもよいし、複数種であってもよい。
【実施例0098】
以下、本発明をより具体的に説明するが、以下の説明は本発明を限定するものではない。
【0099】
1.活性線硬化型インクの調製
1-1.インク1の調製
以下に示す重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤、および上記顔料分散剤1を混合し、100℃に加熱して攪拌した。その後、得られた液体を、加熱下、#3000の金属メッシュフィルターでろ過した後に冷却して、インク1を調製した。
重合性化合物:ポリエチレングリコール#400ジアクリレート 53.52質量部
重合性化合物:4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート 15.0質量部
重合性化合物:6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 23.0質量部
重合開始剤:DAROCUR TPO(BASF社製) 6.0質量部
重合開始剤:ITX(DKSHジャパン社製) 1.0質量部
重合開始剤:DAROCUR EDB(BASF社製) 1.0質量部
界面活性剤:KF-352(信越化学社製) 0.1質量部
重合禁止剤:Irgastab UV10(チバ・ジャパン社製) 0.38質量部
【0100】
1-2.インク2の調製
以下に示す重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤、および上記顔料分散剤1を混合し、100℃に加熱して攪拌した。その後、得られた液体を、加熱下、#3000の金属メッシュフィルターでろ過した後に冷却して、インク2を調製した。
重合性化合物:ポリエチレングリコール#400ジアクリレート 48.52質量部
重合性化合物:4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート 15.0質量部
重合性化合物:6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 23.0質量部
重合開始剤:DAROCUR TPO(BASF社製) 6.0質量部
重合開始剤:ITX(DKSHジャパン社製) 1.0質量部
重合開始剤:DAROCUR EDB(BASF社製) 1.0質量部
界面活性剤:KF-352(信越化学社製) 0.1質量部
ゲル化剤:ジステアリルケトン(花王株式会社製、カオーワックスT1)5.0質量部
重合禁止剤:Irgastab UV10(チバ・ジャパン社製) 0.38質量部
【0101】
1-3.インク3の調製
以下に示す分散剤、重合性化合物、および重合禁止剤をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレートで加熱しながら、1時間加熱攪拌した。
分散剤:アジスパーPB824(味の素ファインテクノ社製) 9.0 質量部
重合性化合物:トリプロピレングリコールジアクリレート 70.0 質量部
重合禁止剤:Irgastab UV10(チバ・ジャパン社製) 0.02質量部
【0102】
上記混合液を室温まで冷却した後、これにPigment Red 122(大日精化製、クロモファインレッド6112JC)を21質量部加えた。混合液を、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理した。その後、ジルコニアビーズを除去して顔料分散液1を作製した。
【0103】
以下に示す重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤、および上記顔料分散剤1を混合し、100℃に加熱して攪拌した。その後、得られた液体を、加熱下、#3000の金属メッシュフィルターでろ過した後に冷却して、インク3を調製した。
重合性化合物:ポリエチレングリコール#400ジアクリレート 34.9質量部
重合性化合物:4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート 15.0質量部
重合性化合物:6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 23.0質量部
重合開始剤:DAROCUR TPO(BASF社製) 6.0質量部
重合開始剤:ITX(DKSHジャパン社製) 1.0質量部
重合開始剤:DAROCUR EDB(BASF社製) 1.0質量部
界面活性剤:KF-352(信越化学社製) 0.1質量部
顔料分散液1: 19.0質量部
【0104】
1-4.インク4の調製
以下に示す重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤、およびインク3の調製に使用した顔料分散剤1を混合し、100℃に加熱して攪拌した。その後、得られた液体を、加熱下、#3000の金属メッシュフィルターでろ過した後に冷却して、インク4を調製した。
重合性化合物:ポリエチレングリコール#400ジアクリレート 29.9質量部
重合性化合物:4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート 15.0質量部
重合性化合物:6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 23.0質量部
重合開始剤:DAROCUR TPO(BASF社製) 6.0質量部
重合開始剤:ITX(DKSHジャパン社製) 1.0質量部
重合開始剤:DAROCUR EDB(BASF社製) 1.0質量部
界面活性剤:KF-352(信越化学社製) 0.1質量部
ゲル化剤:ジステアリルケトン(花王株式会社製、カオーワックスT1)5.0質量部
顔料分散液1: 19.0質量部
【0105】
2.硬化膜の形成
インク1~インク4を、それぞれ、シングルパスのインクジェット記録装置(硬化膜形成装置)に装填した。インク供給系は、インクタンク、インク流路、インクジェット記録ヘッド直前のサブインクタンク、フィルター付き配管、インクジェットヘッドからなるものだった。
【0106】
インクジェットヘッドとしては、ノズル径20μm、ノズル数1024ノズル(512ノズル×2列、千鳥配列、1列のノズルピッチ600dpi)のピエゾ型インクジェットヘッドを用いた。インクジェットヘッドの温度は、インク1およびインク3を吐出するときは50℃に、インク2およびインク4を吐出するときは80℃に、それぞれ設定した。
【0107】
記録媒体(OKトップコート 米坪量128g/m 王子製紙株式会社製)に、インクジェットヘッドのノズルから吐出した各インクの液滴を着弾させた。このとき、それぞれのインクを、1滴の液滴量が3.0plとなる吐出条件で、液滴速度約6m/sで射出させて、1200dpi×1200dpiの解像度でベタ画像を形成した。画像形成は、23℃、55%RHの環境下で行った。
【0108】
着弾した液滴には、インクジェットヘッドよりも下流側に配置した第1照射部としてのLEDランプ(Phoseon Technology社製、395nm、水冷LED)から、第1の活性線としての紫外線(ピーク波長は395nm)を照射してインクを硬化させて記録媒体に定着させた。なお、それぞれのインク硬化物は、そのまま完成品としても実用に耐え得る程度の硬度および定着性を有していた。
【0109】
第1の活性線の照射により形成された、それぞれのインク硬化物の硬化率を測定した。
【0110】
それぞれのインクについて、異なる積算エネルギー量(積算光量)の紫外線を照射して得られるインク硬化物からフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)により得られる吸光スペクトル中の、重合性化合物に対応するピークの強度をそれぞれ測定し、積算エネルギー量とピーク強度との関係を示す検量線を予め作成しておいた。そして、第1の活性線を照射して得られたそれぞれのインク硬化物からフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)により得られる吸光スペクトル中、重合性化合物に対応するピークの強度をそれぞれ測定し、それぞれのインク硬化物に照射された紫外線の積算エネルギー量を求めた。そして、上記検量線におけるピーク強度が0になる(重合性化合物がすべて反応する)ときの積算エネルギー量に対する、上記求められた積算エネルギー量の割合を、それぞれのインク硬化物の硬化率とした。
【0111】
第1の活性線の照射により形成されたインク硬化物を、1分間静置した後、第2照射部としてのLEDランプから、第2の活性線としての紫外線を照射した。その際、第2照射部を適宜変更して、第2の活性線としての紫外線の波長および強度(単位時間あたりのエネルギー量)を変化させた。
【0112】
第2の活性線の照射により形成された、それぞれの硬化膜の硬化率を測定した。硬化膜の硬化率は、第1の活性線の照射により形成されたインク硬化膜の硬化率と同様にFT-IRにより吸光スペクトルを測定して、検量線をもとに算出した。
【0113】
3.評価
それぞれの硬化膜を、蓋つきのガラス瓶に保管し、24時間後に開放した。その後、10人の評価者により、以下の基準で硬化膜の臭気を4段階評価した。そして、評価の合計点をもとに、以下の基準で硬化膜の臭気を評価した。
・4段階評価
4点:ほぼ無臭である
3点:僅かな臭気があるがほとんど気にならない
2点:ある程度の臭気があるが、許容範囲内である
1点:強い臭気がある
・10人の合計点からの臭気評価
◎ :35以上40点以下
○ :25点以上34点以下
△ :15点以上24点以下
× :10点以上14点以下
【0114】
それぞれの実験におけるインクの種類、第1の活性性のピーク波長、光量(単位時間あたりのエネルギー量)および得られたインク硬化物の硬化率、第1の活性性のピーク波長、光量(単位時間あたりのエネルギー量)および得られた硬化膜の硬化率、ならびに評価結果を、表1および表2に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
実験1~実験6に示すように、第1の活性線の照射により活性線硬化型インクを硬化させて基材に定着させた後、第2の活性線を照射することで、活性線硬化型インクにより形成された硬化膜からの臭気を低減することができた。
【0118】
また、実験1~実験4に示すように、第2の活性線の単位時間あたりのエネルギー量が第1の活性線よりも多かったり、第2の活性線のピーク波長が第1の活性線よりも短かったりすると、臭気がより効果的に低減された。
【0119】
これに対し、実験7および実験8に示すように、第2の活性線を照射しないと、硬化膜からの臭気は改善しなかった。また、実験9に示すように、第1の活性線のエネルギー量を高めても、活性線硬化型インクの硬化率は高まらず、臭気は改善しなかった。また、実験10に示すように、第1の活性線の照射量を、活性線硬化型インクが仮硬化する程度に抑え、第2の活性線の照射により本硬化させても、おそらくは未反応の重合性化合物が多すぎたため、臭気は改善しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明によれば、活性線硬化型インクにより形成される硬化膜の臭気、特には経時的な臭気を改善することができる。本発明は、各種用途、特には画像などの人体の近くで使用される用途における硬化膜の使用感を高め、活性線硬化型インクのさらなる普及に貢献すると期待される。
【符号の説明】
【0121】
100 硬化膜の製造装置
110 基材
120 インク付与部
121 ノズル
122Y、122M、122C、122K インクジェットヘッド
130 第1照射部
140 第2照射部
150 加熱部
図1
図2
図3