(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176518
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】樹脂封止装置
(51)【国際特許分類】
B29C 43/32 20060101AFI20231206BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20231206BHJP
B29C 45/64 20060101ALI20231206BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B29C43/32
B29C45/02
B29C45/64
B29C43/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088841
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 雅彦
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AA36
4F202AD07
4F202AH33
4F202AH37
4F202CA09
4F202CA12
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB17
4F202CL02
4F202CQ01
4F204AA36
4F204AG03
4F204AH37
4F204AJ08
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB17
4F204FN11
4F204FQ09
4F204FQ40
4F206AA36
4F206AD07
4F206AH33
4F206AH37
4F206JA02
4F206JB12
4F206JB17
4F206JL02
4F206JQ82
4F206JQ83
(57)【要約】
【課題】プレス装置の固定プラテンにおいて、型閉じ時の金型固定面の平坦度の低下を防止でき、且つ、軽量化を図ることができる樹脂封止装置を実現する。
【解決手段】本発明に係る樹脂封止装置1は、上型204及び下型206の型閉じ・型開きを行うプレス装置250を備え、プレス装置250は、上型204及び下型206の一方が固定される固定プラテン252及び他方が固定される可動プラテン254と、固定プラテン252を固定すると共に可動プラテン254を昇降可能に保持するタイバー256と、可動プラテン254を昇降させる駆動装置とを有し、固定プラテン252は、本体部270における第1面270a側にタイバー256と固定される固定部272が設けられると共に、第1面270aと逆向きの第2面270b側に釣鐘状部280が設けられており、上型204及び下型206の一方が釣鐘状部280に固定される構成である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型及び下型を備える封止金型を用いて、ワークを樹脂により封止して成形品に加工する樹脂封止装置であって、
前記上型及び前記下型の型閉じ・型開きを行うプレス装置を備え、
前記プレス装置は、前記上型及び前記下型の一方が固定される固定プラテン及び他方が固定される可動プラテンと、前記固定プラテンを固定すると共に前記可動プラテンを昇降可能に保持するタイバーと、前記可動プラテンを昇降させる駆動装置と、を有し、
前記固定プラテンは、本体部における第1面側に前記タイバーと固定される固定部が設けられると共に、前記第1面と逆向きの第2面側に釣鐘状部が設けられており、前記上型及び前記下型の一方が前記釣鐘状部に固定される構成であること
を特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
前記本体部と前記釣鐘状部との間に、径方向の中心に向かって穿設される周状の窪み部が設けられていること
を特徴とする請求項1記載の樹脂封止装置。
【請求項3】
前記窪み部は、左右方向及び前後方向の両方において、径方向の最奥部が、前記上型及び前記下型の一方の外周部よりも、径方向の中心寄りに位置するように形成されていること
を特徴とする請求項2記載の樹脂封止装置。
【請求項4】
前記固定部は、前記本体部の四隅に放射状に延設されるアーム部の先端部に設けられており、
前記アーム部は、前記型閉じが行われる際に応力を集中させる設定とすることによって他の部位よりも相対的に大きく撓みを発生させる撓み発生部として構成されていること
を特徴とする請求項1記載の樹脂封止装置。
【請求項5】
前記本体部と前記釣鐘状部とは、鋳造によって一体に構成されており、径方向の中心位置に、前記第1面から前記第2面に向かう方向に穿設される中心穴が設けられており、
前記中心穴は、前記第1面から前記第2面に向かう方向に段階状もしくはテーパ状に内径が小さくなるように形成されていること
を特徴とする請求項1記載の樹脂封止装置。
【請求項6】
前記中心穴は、前記釣鐘状部における金型固定面まで貫通しないように形成されていること
を特徴とする請求項5記載の樹脂封止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に電子部品が搭載されたワークを封止樹脂(以下、単に「樹脂」と称する場合がある)により封止して成形品に加工する樹脂封止装置の例として、トランスファ成形方式や圧縮成形方式によるものが知られている。
【0003】
トランスファ成形方式は、上型と下型とを備えて構成される封止金型に設けられる二個の上下型の封止領域(キャビティ)に所定量の樹脂を供給するポットを設け、当該各封止領域に対応する位置にワークをそれぞれ配置して、上型と下型とでクランプしポットからキャビティに樹脂を流し込む操作によって樹脂封止する技術である。また、圧縮成形方式は、上型と下型とを備えて構成される封止金型に設けられる封止領域(キャビティ)に所定量の樹脂を供給すると共に当該封止領域にワークを配置して、上型と下型とでクランプする操作によって樹脂封止する技術である。一例として、上型にキャビティを設けた封止金型を用いる場合、ワーク上の中心位置に一括して樹脂を供給して成形する技術等が知られている。一方、下型にキャビティを設けた封止金型を用いる場合、当該キャビティを含む金型面を覆うフィルム及び樹脂を供給して成形する技術等が知られている。
【0004】
いずれの方式においても、特許文献1(特開2008-093987号公報)等に例示されるプレス装置、すなわち、封止金型(上型及び下型)の型閉じ(型締め)を行ってワークの樹脂封止を行う機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-093987号公報
【特許文献2】特開2004-042356号公報
【特許文献3】特開2009-148933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、封止金型は、一対の可動プラテン及び固定プラテンに固定されており、駆動装置によって可動プラテンが固定プラテンに向けて駆動(押動)されることによって、当該封止金型に型閉じ力(加圧力)が印加される構成が一般的である。しかしながら、加圧力として極めて大きな力が作用するため、固定プラテンに変形が生じてしまい、特に、封止金型(上型もしくは下型)が固定される金型固定面の平坦性が低下(悪化)してしまうことが課題となっていた。すなわち、当該金型固定面の平坦性の低下(悪化)が発生すると、固定される封止金型に変形(撓み)が生じて、成形不良(具体的に、成形品の寸法形状が設計通りとならない状態)の原因となってしまうため、その解決が要望されていた(特許文献2:特開2004-042356号公報、特許文献3:特開2009-148933号公報等参照)。
【0007】
上記課題の解決を図るべく、本願発明者は鋭意研究を行い、先ず、プレス装置の固定プラテンに関し、型閉じ力(クランプ力)すなわち封止金型に印加される加圧力の向上に比例して、特に径方向の中心位置における肉厚(すなわち、型閉じ方向(上下方向)の厚さ寸法)を増加させることによって剛性を確保して、金型固定面の変形を抑制する構成(比較例)を案出した(不図示)。しかしながら、近年における製品(樹脂封止による成形品)の大型化や、充填性の向上等が必要となるデバイス(成形品の組み込み製品)の増加に伴って、さらに大きな型閉じ力(クランプ力)の印加が可能な装置の要求が高まっており、その結果、固定プラテンが極めて厚く、重い構成となってしまうという別の課題が生じることとなった。このように、固定プラテンの金型固定面の変形防止と、固定プラテンの単体重量の軽量化とは、相反する課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、プレス装置の固定プラテンにおいて、型閉じ時の金型固定面の平坦度の低下を防止でき、且つ、軽量化を図ることができる樹脂封止装置を実現することを目的とする。
【0009】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0010】
本発明に係る樹脂封止装置は、上型及び下型を備える封止金型を用いて、ワークを樹脂により封止して成形品に加工する樹脂封止装置であって、前記上型及び前記下型の型閉じ・型開きを行うプレス装置を備え、前記プレス装置は、前記上型及び前記下型の一方が固定される固定プラテン及び他方が固定される可動プラテンと、前記固定プラテンを固定すると共に前記可動プラテンを昇降可能に保持するタイバーと、前記可動プラテンを昇降させる駆動装置と、を有し、前記固定プラテンは、本体部における第1面側に前記タイバーと固定される固定部が設けられると共に、前記第1面と逆向きの第2面側に釣鐘状部が設けられており、前記上型及び前記下型の一方が前記釣鐘状部に固定される構成であることを要件とする。
【0011】
これによれば、プレス装置を構成する固定プラテンに関し、型閉じ力が印加された際に金型固定面の平坦度の低下防止と、小型化・軽量化とを同時に実現することができる。一例として、前述の比較例に対し、変形量(平坦面に対する撓み量)を2分の1以下に抑えることができ、且つ、上下方向寸法を50%程度小型化でき、重量を30%程度軽量化できる効果を得ることができる。
【0012】
また、前記本体部と前記釣鐘状部との間に、径方向の中心に向かって穿設される周状の窪み部が設けられていることが好ましい。これによれば、釣鐘状部における径方向の中心寄りの変形量と径方向の外周寄りの変形量とのバランスを保つ、すなわち、変形量の差が生じないようにする作用効果が得られる。したがって、金型固定面を平坦面に保つ効果(すなわち、金型固定面の平坦性を低下(悪化)させない効果)を得ることができる。
【0013】
また、前記窪み部は、左右方向及び前後方向の両方において、径方向の最奥部が、前記上型及び前記下型の一方の外周部よりも、径方向の中心寄りに位置するように形成されていることが好ましい。これによれば、金型固定面を平坦面に保つ効果(すなわち、金型固定面の平坦性を低下(悪化)させない効果)をより一層、高めることができる。
【0014】
また、前記固定部は、前記本体部の四隅に放射状に延設されるアーム部の先端部に設けられており、前記アーム部は、前記型閉じが行われる際に応力を集中させる設定とすることによって他の部位よりも相対的に大きく撓みを発生させる撓み発生部として構成されていることが好ましい。これによれば、型閉じ力が作用したときに、アーム部を積極的に変形させる(撓ませる)ことによって、釣鐘状部、特に、金型固定面の変形を防止することができる。固定プラテンの径方向の中心位置における肉厚を増加させるという従来の剛性向上手法を用いることなく、金型固定面の変形を抑制することができる。
【0015】
また、前記本体部と前記釣鐘状部とは、鋳造によって一体に構成されており、径方向の中心位置に、前記第1面から前記第2面に向かう方向に穿設される中心穴が設けられており、前記中心穴は、前記第1面から前記第2面に向かう方向に段階状もしくはテーパ状に内径が小さくなるように形成されていることが好ましい。これによれば、固定される一方の金型を介して釣鐘状部に作用する型閉じ力を、アーム部へ向けて作用させる、すなわち、アーム部に応力を集中させることができる。また、固定プラテンの軽量化を図ることができる。さらに、鋳造による一体形成が可能となり、生産効率の向上及び生産コストの低減を図ることができる。
【0016】
また、前記中心穴は、前記釣鐘状部における金型固定面まで貫通しないように形成されていることが好ましい。これによれば、金型固定面を平坦面に保つ効果、すなわち、金型固定面の平坦性が低下(悪化)させない効果をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、固定プラテンの金型固定面の変形防止と、固定プラテンの単体重量の軽量化という相反する課題の解決を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る樹脂封止装置の例を示す平面図である。
【
図2】
図1の樹脂封止装置のプレス装置の例を示す正面断面図である。
【
図3】
図1の樹脂封止装置の封止金型の例を示す正面断面図である。
【
図4】
図1の樹脂封止装置の固定プラテンの例を示す斜視図である。
【
図5】
図4の固定プラテンの例を示す平面図である。
【
図6】
図4の固定プラテンの例を示す正面図である。
【
図7】
図4におけるVII-VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(全体構成)
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る樹脂封止装置1の例を示す平面図(概略図)である。尚、説明の便宜上、図中において矢印により樹脂封止装置1における左右方向(X方向)、前後方向(Y方向)、上下方向(Z方向)を示す。また、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰返しの説明は省略する場合がある。
【0020】
本実施形態に係る樹脂封止装置1は、上型204及び下型206を備える封止金型202を用いて、ワーク(被成形品)Wを樹脂封止する装置である。以下、樹脂封止装置1として、下型206でワークWを保持し、上型204に設けられたキャビティ208(金型面を一部含む)をリリースフィルム(以下、単に「フィルム」と称する場合がある)Fで覆って、上型204と下型206とのクランプ動作を行い、ワークWを樹脂で樹脂封止する圧縮成形装置を例として説明する。但し、これに限定されるものではない。
【0021】
先ず、成形対象であるワークWは、基材Waに複数個の電子部品Wbが行列状に搭載された構成を備えている。より具体的には、基材Waの例として、長方形状、円形状等に形成された樹脂基板、セラミックス基板、金属基板、キャリアプレート、リードフレーム、ウェハ等の板状部材が挙げられる。また、電子部品Wbの例として、半導体チップ、MEMSチップ、受動素子、放熱板、導電部材、スペーサ等が挙げられる。但し、これに限定されるものではない。
【0022】
基材Waに電子部品Wbを搭載する方法の例として、ワイヤボンディング実装、フリップチップ実装等による搭載方法がある。あるいは、樹脂封止後に成形品Wpから基材(ガラス製や金属製のキャリアプレート)Waを剥離する構成の場合には、熱剥離性を有する粘着テープや紫外線照射により硬化する紫外線硬化性樹脂を用いて電子部品Wbを貼付ける方法もある。
【0023】
一方、樹脂の例として、液状の熱硬化性樹脂(例えば、フィラー含有のエポキシ系樹脂等)が用いられる。尚、樹脂は、上記の状態に限定されるものではなく、粒状(顆粒状、粉砕状、粉末状等の総称として用いる)、板状、シート状等、他の状態(形状)であってもよく、エポキシ系熱硬化性樹脂以外の樹脂であってもよい。
【0024】
また、フィルムFの例として、耐熱性、剥離容易性、柔軟性、伸展性に優れたフィルム材、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(ポリテトラフルオロエチレン重合体)、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジン等が好適に用いられる。本実施形態においては、フィルムFとしてロール状のフィルムが用いられる。尚、他の例として、短冊状のフィルムを用いる構成としてもよい(不図示)。
【0025】
続いて、本実施形態に係る樹脂封止装置1の概要について説明する。
図1に示すように、樹脂封止装置1は、ワークW及び成形品Wpの搬送を主に行う搬送ユニット100A、ワークWの供給を主に行うワーク供給ユニット100B、樹脂の供給を主に行う樹脂供給ユニット100C、ワークWを樹脂封止して成形品Wpへの加工を主に行うプレスユニット100D、樹脂封止後の成形品Wpのポストキュアを主に行うポストキュアユニット100E、ポストキュア後の成形品Wpの収納を主に行う成形品収納ユニット100F、各機構及び各工程の制御を主に行う制御ユニット100G、を主要構成として備えている。
【0026】
本実施形態においては、搬送ユニット100Aが装置中央に配置されると共に、各ユニットが当該搬送ユニット100Aを囲むように配置されている。具体的に、搬送ユニット100Aの前側にワーク供給ユニット100B、樹脂供給ユニット100C、成形品収納ユニット100Fが配置されている。また、搬送ユニット100Aの後側にプレスユニット100Dが配置されている。また、搬送ユニット100Aの右側及び右前側にポストキュアユニット100Eが配置されている。また、搬送ユニット100Aの右後側に制御ユニット100Gが配置されている。但し、これに限定されるものではない。
【0027】
尚、樹脂封止装置1は、ユニットの構成を変えることによって、全体の構成態様を変更することができる。例えば、
図1に示す構成は、プレスユニット100Dを二台配置した例であるが、プレスユニット100Dを一台のみ配置する、あるいは三台以上配置する構成等も可能である。また、他のユニットを追加配置する構成等も可能である(いずれも不図示)。
【0028】
(搬送ユニット)
先ず、樹脂封止装置1が備える搬送ユニット100Aについて説明する。
【0029】
搬送ユニット100Aは、ワークW及び成形品Wpの搬送を行う搬送装置102を備えている。一例として、搬送装置102は、ガイドレール104と、ガイドレール104に沿って所定方向(一例として、左右方向)に往復動するベース部106と、ベース部106に固定されてワークW及び成形品Wpの保持、移動を行う保持移動機構108(一例として、多関節ロボット)と、を備えて構成されている。これにより、ワークWや成形品Wpを保持して、各ユニット間の搬送及び各機構への搬入・搬出等を行うことができる。
【0030】
(ワーク供給ユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備えるワーク供給ユニット100Bについて説明する。
【0031】
ワーク供給ユニット100Bは、ワークWの収容に用いられるワークストッカ110を備えている。一例として、ワークストッカ110には、公知のスタックマガジン、スリットマガジン等が用いられ、複数個のワークWを一括して収容可能となっている。当該複数個のワークWは、保持移動機構108によって、一つずつ搬出される構成となっている。
【0032】
(樹脂供給ユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備える樹脂供給ユニット100Cについて説明する。この樹脂供給ユニット100Cでは、搬送装置102によってワーク供給ユニット100Bから搬入されたワークWに対して、樹脂の供給(載置)が行われる。
【0033】
樹脂供給ユニット100Cは、シリンジ314内の樹脂(ここでは、液状樹脂)をワークW上へ吐出して供給する一対のディスペンサ312と、当該一対のディスペンサ312の間に交換用の複数個のシリンジ314を回転可能に保持するリボルバ式のシリンジ供給部316と、を備えて構成されている。各ディスペンサ312は、共用のシリンジ供給部316から順次、交換用のシリンジ314の供給を受けながら、樹脂の吐出を行う構成となっている。
【0034】
(プレスユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備えるプレスユニット100Dについて説明する。このプレスユニット100Dでは、搬送装置102によって樹脂供給ユニット100Cから搬入されたワークW(樹脂が載置された状態)に対して、樹脂封止が行われる。
【0035】
プレスユニット100Dは、開閉される一対の金型(例えば、合金工具鋼からなる複数の金型ブロック、金型プレート、金型ピラー等やその他の部材が組み付けられたもの)を有する封止金型202を備えている。また、封止金型202を開閉駆動してワークWを樹脂封止するプレス装置250を備えている。さらに、封止金型202に対して、ワークW及び成形品Wpの搬入・搬出を行う搬送ローダ210を備えている(尚、搬送ローダ210を設けずに、前述の保持移動機構108によって直接、搬入・搬出を行う構成としてもよい)。
【0036】
ここで、プレス装置250は、
図2に示すように、一対のプラテン252、254と、一対のプラテン252、254が架設される複数のタイバー256と、プラテン254を可動(昇降)させる駆動装置等を備えて構成されている。具体的に、当該駆動装置は、駆動源(例えば、電動モータ)260及び駆動伝達機構(例えば、ボールねじやトグルリンク機構)262等を備えて構成されている(但し、これに限定されるものではない)。本実施形態においては、鉛直方向において上方側のプラテン252を固定プラテン(タイバー256に固定されるプラテン)とし、下方側のプラテン254を可動プラテン(タイバー256に摺動可能に保持されて昇降するプラテン)として設定している。但し、これに限定されるものではなく、上下逆に、すなわち上方側を可動プラテン、下方側を固定プラテンに設定してもよく、あるいは、上方側、下方側共に可動プラテンとして設定してもよい(いずれも不図示)。
【0037】
一方、封止金型202は、プレス装置250における上記一対のプラテン252、254間に配設される一対の金型として、鉛直方向における上方側の一方の金型(上型204)と、下方側の他方の金型(下型206)とを備えている。この上型204と下型206とが相互に接近・離反することで型閉じ・型開きが行われる(すなわち、鉛直方向(上下方向)が型開閉方向となる)。本実施形態においては、上型204が上方側のプラテン(この場合、固定プラテン252)に組み付けられ、下型206が下方側のプラテン(この場合、可動プラテン254)に組み付けられている。
【0038】
また、本実施形態においては、一例として、ロール状のフィルムFを封止金型202の内部へ搬送(供給)するフィルム供給機構214が設けられている。
【0039】
次に、封止金型202の上型204について説明する。
図3に示すように、上型204は、上プレート222、キャビティ駒226、クランパ228等を備え、これらが組み付けられて構成されている。本実施形態においては、上型204の下面(下型206側の面)にキャビティ208が設けられている。
【0040】
より具体的に、キャビティ駒226は、上プレート222の下面に対して固定して組み付けられる。一方、クランパ228は、キャビティ駒226を囲うように環状に構成されると共に、付勢部材232を介して、上プレート222の下面に対して離間(フローティング)して上下動可能に組み付けられる。このキャビティ駒226がキャビティ208の奥部(底部)を構成し、クランパ228がキャビティ208の側部を構成する。尚、本実施形態においては、一つの上型204にキャビティ208が一つ設けられている。但し、この構成に限定されるものではなく、左右方向(もしくは前後方向)に複数並設される構成としてもよい。
【0041】
また、本実施形態においては、上型204を所定温度(例えば、100℃~200℃)に加熱する上型加熱機構(例えば、電熱線ヒータ等)が設けられている。
【0042】
次に、封止金型202の下型206について説明する。
図3に示すように、下型206は、下プレート224、保持プレート236等を備え、これらが組み付けられて構成されている。ここで、保持プレート236は、下プレート224の上面(上型204側の面)に対して固定して組み付けられている。
【0043】
また、本実施形態においては、ワークWを保持プレート236の下面における所定位置に保持するワーク保持部205が設けられている。このワーク保持部205は、一例として、保持プレート236及び下プレート224を貫通して配設された吸引路240aを介して吸引装置(不図示)に連通している。尚、吸引路240aを備える構成と並設して、ワークWの外周を挟持する保持爪を備える構成としてもよい(不図示)。
【0044】
本実施形態においては、前述の上型204の構成(キャビティ208が一つ設けられる構成)に対応して、一つの下型206にワーク保持部205が一つ設けられて、ワークWを一つずつ樹脂封止する構成となっている。但し、これに限定されるものではない。
【0045】
また、本実施形態においては、下型206を所定温度(例えば、100℃~200℃)に加熱する下型加熱機構(例えば、電熱線ヒータ等)が設けられている。
【0046】
続いて、本実施形態に特徴的なプレス装置250の固定プラテン252について詳しく説明する。ここで、
図2に樹脂封止装置1のプレス装置250の正面断面図(概略図)を示す。また、
図3に樹脂封止装置1の封止金型202の正面断面図(概略図)を示す。ここで、固定プラテン252の斜視図(概略図)を
図4に示し、平面図を
図5に示し、正面図を
図6に示す。尚、
図7は
図4におけるVII-VII線断面図である。
【0047】
本実施形態に係る固定プラテン252は、本体部270と釣鐘状部280とを備えて構成されている(後述のように、本実施形態においては一体で形成されている)。一例として、本体部270における第1面270a側にタイバー256と固定される固定部272が設けられている。また、第1面270aに対して上下方向における逆向きの第2面270b側に釣鐘状部280が設けられており、上型204及び下型206の一方の金型(本実施形態では、上型204)が釣鐘状部280に固定される構成を備えている。
【0048】
ここで、釣鐘状部280は、本体部270から離れるにつれて(すなわち、第1面270aから第2面270bに向かう方向に沿って)末広がりとなる形状(次第に外径が大きくなる形状)に形成されており、本体部270の第1面270aに対して上下方向における逆向きの面が金型固定面280aとなる。この釣鐘状部280を備える構成によって、型閉じ時(すなわち、加圧時)に、金型固定面280aの平坦度が低下してしまうことを防止できる効果が得られる。
【0049】
より具体的な構成として、固定部272は、本体部270の四隅に放射状に延設されるアーム部274の先端部に設けられている。当該アーム部274は、型閉じが行われる際に応力を集中させる設定とすることによって他の部位よりも相対的に大きく撓みを発生させる「撓み発生部」として構成されている。これによれば、型閉じ力が作用したときに、アーム部274を積極的に変形させる(撓ませる)ことによって、釣鐘状部280、特に、金型固定面280aの変形を防止することが可能となる。したがって、固定プラテン252の径方向の中心位置における肉厚を増加させるという従来の剛性向上手法を用いることなく、金型固定面280aの変形を抑制することが可能となる。
【0050】
また、固定プラテン252は、本体部270と釣鐘状部280との間に、径方向の中心に向かって穿設される周状(具体的に、固定プラテン252に固定される上型204の外周形状に沿う環状に形成されている)の窪み部276が設けられている。これによれば、金型固定面280aを平坦面に保つ効果(すなわち、金型固定面280aの平坦性を低下(悪化)させない効果)が得られる。その理由として、本願発明者の研究・検証によれば、窪み部276を設けることによって、釣鐘状部280における径方向の中心寄りの変形量と径方向の外周寄りの変形量とのバランスを保つ、すなわち、変形量の差が生じないようにする作用効果が得られるからであると考えられる。
【0051】
ここで、上記の窪み部276は、左右方向及び前後方向の両方において、径方向の最奥部276aが、固定プラテン252に固定される一方の金型(本実施形態では、上型204)の外周部204aよりも、径方向の中心寄りに位置するように形成されている。本願発明者による実験及びシミュレーションにおいて、当該形状を備えることで、金型固定面280aを平坦面に保つ効果(すなわち、金型固定面280aの平坦性を低下(悪化)させない効果)がより一層、高められることが確認された。
【0052】
また、本実施形態において、本体部270と釣鐘状部280とは、鋳造によって一体に形成されており、径方向の中心位置に、第1面270aから第2面270bに向かう方向に穿設される中心穴278が設けられている。ここで、中心穴278は、第1面270aから第2面270bに向かう方向に段階状もしくはテーパ状に内径が小さくなるように形成されている。これによれば、封止金型(上型204)を介して釣鐘状部280に作用する型閉じ力を、アーム部274へ向けて作用させる、すなわち、アーム部274に応力を集中させることが可能となる。また、固定プラテン252の軽量化を図ることが可能となる(比較例に対して30%程度の軽量化が可能となることが確認された)。さらに、鋳造による一体形成が可能となり、生産効率の向上及び生産コストの低減を図ることが可能となる。
【0053】
ここで、中心穴278の深さは適宜設定されるものであり、一例として、上下方向において、釣鐘状部280まで至る形状である。但し、これに限定されるものではなく、窪み部276まで至る形状や、本体部270のみに形成される形状等としてもよい(いずれも不図示)。本実施形態においては、釣鐘状部280における金型固定面280aまで貫通しないように形成されている。これによれば、金型固定面280aを平坦面に保つ効果、すなわち、金型固定面280aの平坦性が低下(悪化)させない効果をより一層高めることができる。
【0054】
以上の通り、本実施形態に係るプレス装置250として、圧縮成形方式による樹脂封止装置用の封止金型202(上型204にキャビティを有する構成)が取付けられる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、圧縮成形方式による樹脂封止装置用の封止金型(下型206にキャビティを有する構成)や、トランスファ成形方式による樹脂封止用の封止金型、等に対しても同様に適用することができる(いずれも不図示)。
【0055】
(ポストキュアユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備えるポストキュアユニット100Eについて説明する。このポストキュアユニット100Eでは、搬送装置102によってプレスユニット100Dから搬入された成形品Wpに対して、ポストキュアが行われる。
【0056】
ポストキュアユニット100Eは、搬送装置102によって搬入される成形品Wpを内部に保持すると共に設定温度で加熱することによってポストキュアを行う加熱室402を複数個有するオーブン(ポストキュアオーブン)400を一台もしくは複数台備えている。尚、ポストキュアユニット100Eを備えない構成としてもよい(不図示)。
【0057】
(成形品収納ユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備える成形品収納ユニット100Fについて説明する。この成形品収納ユニット100Fでは、搬送装置102によってポストキュアユニット100Eから搬入された成形品Wpの収納が行われる。
【0058】
成形品収納ユニット100Fは、成形品Wpの収容に用いられる成形品ストッカ112を備えている。一例として、成形品ストッカ112には、公知のスタックマガジン、スリットマガジン等が用いられ、複数個の成形品Wpを一括して収容可能となっている。当該複数個の成形品Wpは、保持移動機構108によって、一つずつ搬入される構成となっている。
【0059】
(制御ユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備える制御ユニット100Gについて説明する。この制御ユニット100Gは、オペレータが樹脂封止装置1の作動条件の入力等を行う操作部152と、オペレータによって入力された作動条件及びあらかじめ記憶された作動条件に沿って樹脂封止装置1における各機構の作動制御を行う制御部150と、を備えて構成されている。尚、操作部152は、制御ユニット100G内に配置される構成に限定されるものではなく、他のユニット内もしくはその隣接位置等に配置される構成としてもよい。
【0060】
(樹脂封止動作)
続いて、本実施形態に係る樹脂封止装置1を用いて樹脂封止を行う動作(すなわち、樹脂封止方法)の概略について説明する。ここでは、一個の上型204に一組のキャビティ208を設けると共に、一個の下型206に一個のワークWを配置して樹脂封止を行い、一個の成形品Wpを得る構成を例に挙げる。但し、これに限定されるものではなく、複数個のワークWを一括して樹脂封止する構成としてもよい。
【0061】
準備工程として、上型加熱機構によって、上型204を所定温度(例えば、100℃~200℃)に調整して加熱する加熱工程(上型加熱工程)を実施する。また、下型加熱機構によって、下型206を所定温度(例えば、100℃~200℃)に調整して加熱する加熱工程(下型加熱工程)を実施する。さらに、フィルム供給機構214によってフィルムFを搬送して(送り出して)封止金型202における所定位置(上型204と下型206との間の位置)にフィルムFを供給する工程(フィルム供給工程)を実施する。
【0062】
次いで、搬送装置102によって、ワークストッカ110からワークWを一つずつ搬出し、樹脂供給ユニット100Cへ搬送する工程を実施する。
【0063】
次いで、搬送装置102によって、ワークWがディスペンサ312のシリンジ314の直下位置となるように搬送し、当該シリンジ314からワークWの上面に規定量の樹脂を供給(吐出)して載置する工程を実施する。尚、封止金型202内(具体的には、キャビティ208内等)に直接、樹脂を供給(搬送)する工程としてもよい。
【0064】
次いで、搬送装置102によって、ワークW(上面に樹脂が載置された状態)をプレスユニット100Dへ搬送し、搬送ローダ210に受け渡す工程を実施する。
【0065】
次いで、搬送ローダ210によって、ワークWを封止金型202内へ搬送する工程を実施する。尚、封止金型202内へ搬送(搬入)する前に、ワークWの予備加熱工程を実施してもよい。
【0066】
次いで、封止金型202の型閉じ(型締め)を行い、上型204と下型206とでワークWをクランプして樹脂封止する工程(樹脂封止工程)を実施する。具体的に、プレス装置250の駆動装置(駆動源260、駆動伝達機構262等)を駆動し、可動プラテン254を固定プラテン252に向けて移動(押動)して、封止金型202に型閉じ力(加圧力)を印加する。これにより、上型204のキャビティ208において、キャビティ駒226が相対的に下降して、下型206に保持されたワークWに対して樹脂を加熱加圧する。このようにして、樹脂が熱硬化して樹脂封止(圧縮成形)が行われ、成形品Wpが形成される。
【0067】
次いで、封止金型202の型開きを行い、搬送ローダ210によって、成形品Wpを封止金型202内から取り出す工程を実施する。
【0068】
次いで、搬送装置102によって、成形品Wpを搬送ローダ210から受け取り、ポストキュアユニット100Eへ搬送する工程を実施する。
【0069】
これと並行して(もしくは、その後に)、フィルム供給機構214によってフィルムFを搬送する(送り出す)ことにより、使用済みフィルムFを封止金型202外へ搬出する工程を実施する。
【0070】
次いで、搬送装置102によって、成形品Wpを所定のオーブン400に搬入し、ポストキュア(成形後加熱)を行う工程(ポストキュア工程)を実施する。尚、ポストキュア工程を省略してもよい。
【0071】
ポストキュア工程の実施後は、搬送装置102によって、オーブン400の加熱室402から成形品Wpを搬出し、成形品収納ユニット100Fへ搬送する工程を実施する。次いで、搬送装置102によって、成形品Wpを一つずつ成形品ストッカ112へ搬入する工程を実施する。
【0072】
以上が樹脂封止装置1を用いて行う樹脂封止方法の主要工程である。但し、上記の工程順は一例であって、支障がない限り先後順の変更や並行実施が可能である。例えば、本実施形態においては、二台のプレスユニット100Dを備える構成であるため、上記の動作を並行して実施することで、効率的な成形品形成が可能となる。
【0073】
以上、説明した通り、本発明に係る樹脂封止装置によれば、プレス装置における固定プラテンの金型固定面の変形防止と、当該固定プラテンの単体重量の軽量化という相反する課題の解決を図ることが可能となる。
【0074】
尚、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。特に、鉛直方向における上方側のプラテンが固定プラテンとなる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、鉛直方向における下方側のプラテンが固定プラテンとなる構成にも適用可能である。
【0075】
また、上記の実施形態においては、上型にキャビティを備える圧縮成形装置を例に挙げて説明したが、下型にキャビティを備える圧縮成形装置にも適用可能である。また、トランスファ成形方式の樹脂封止装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 樹脂封止装置
204 上型
206 下型
250 プレス装置
252 固定プラテン
254 可動プラテン
256 タイバー
274 アーム部(撓み発生部)
280 釣鐘状部