(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176519
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】キャップ及びこれを含むチューブ容器
(51)【国際特許分類】
B65D 41/04 20060101AFI20231206BHJP
B65D 35/44 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B65D41/04 300
B65D35/44 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088842
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】岩田 賢
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA03
3E084AA22
3E084AA23
3E084AA24
3E084AA26
3E084AA34
3E084AA37
3E084AB06
3E084AB10
3E084BA02
3E084CC07
3E084DB12
3E084DB17
3E084DB20
3E084DC03
3E084DC07
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084JA20
(57)【要約】
【課題】本発明は、キャップ及びこれを含むチューブ容器に関し、プラスチック成形品と、開口部から内部に嵌まり込み、プラスチック成形品と一体的に回転可能な紙成形品とを備え、プラスチック成形品が開口部から脱落するのを防止できる。
【解決手段】プラスチック成形品30と、プラスチック成形品30が開口部71から内部に係合した紙成形品40と、を備えたキャップ10であり、プラスチック成形品30が開口部71から脱落するのを防止する脱落防止部aを備える。また、紙成形品40の材料は、当該キャップ10の全体の材料に対し、質量比で50%を超える。紙成形品40は、一方の端部が開口部71を形成する筒体部70を備え、プラスチック成形品30は、キャップ10が装着される容器20の口部21を開閉する蓋体部50と、紙成形品40と接合する接合部60と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック成形品と、前記プラスチック成形品が開口部から内部に係合した紙成形品と、を備えたキャップであり、
前記プラスチック成形品が前記開口部から脱落するのを防止する脱落防止部を備えることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記紙成形品の材料は、当該キャップの全体の材料に対し、質量比で50%を超える請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記紙成形品は、一方の端部が前記開口部を形成する筒体部を備え、
前記プラスチック成形品は、前記キャップが装着される容器の口部を開閉する蓋体部と、前記紙成形品と接合する接合部と、を備え、
前記脱落防止部は、前記筒体部の内側面と対向する前記接合部の外側面に位置し、前記筒体部の内側面に向かって突出する突起部を備える請求項1又は請求項2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記筒体部の内側面は、メッシュ状の凹凸部を備える請求項3に記載のキャップ。
【請求項5】
前記突起部は、前記開口部に近づくに連れて突出量が徐々に増加する楔形である請求項3に記載のキャップ。
【請求項6】
前記突起部は、前記接合部の外側面から前記開口部に近づくに連れて外側に向かうように斜めに突出する請求項3に記載のキャップ。
【請求項7】
前記筒体部の内面は、平面視で多角形又は円形に形成され、
前記接合部は、多角形又は円形の板状に形成され、
前記突起部は、前記接合部の外周面に周方向に等間隔に離隔した位置のそれぞれに形成されている請求項3に記載のキャップ。
【請求項8】
前記突起部は、前記接合部との間に薄肉のヒンジ部を備える請求項3に記載のキャップ。
【請求項9】
前記突起部は、前記接合部の全周に沿って等間隔に離れて複数個形成され、
隣り合う突起部同士を前記接合部の円周方向にスカート状につなぐ連結部を備える請求項7に記載のキャップ。
【請求項10】
前記紙成形品は、一方の端部が前記開口部を形成する筒体部と、当該筒体部の他方の端部を塞ぐ天板部と、を備え、
前記プラスチック成形品は、前記キャップが装着される容器の口部を開閉する蓋体部と、前記紙成形品と接合する接合部と、を備え、
前記筒体部の内周面には、上下面が開口し中空な円筒状をなす前記脱落防止部としての紙管部が嵌まり込み、
前記紙管部は、外周面が前記筒体部の内周面と接触して摩擦抵抗により軸方向の移動が阻止されると共に、一方の端面と前記天板部との間に前記接合部の周縁部が位置する請求項1に記載のキャップ。
【請求項11】
前記接合部は、前記蓋体部とは逆側を向く面に、前記天板部に食い込むスパイク部を備える請求項10に記載のキャップ。
【請求項12】
前記接合部は、前記天板部と前記紙管部の端面との間に挟み込まれている請求項10に記載のキャップ。
【請求項13】
前記紙管部は、前記接合部が前記天板部と前記紙管部の端面との間で前記筒体部の軸方向に移動可能となる位置で、前記筒体部の内周面に固定され、
前記天板部と、前記天板部と対向する前記接合部とには、互いに嵌まり合う凹部及び凸部の一方がそれぞれ形成されていて、前記凸部の高さは、前記接合部が最も紙管部側に移動した位置において、前記凹部から前記凸部が完全に離脱した状態となる寸法である請求項10に記載のキャップ。
【請求項14】
プラスチック成形品と、前記プラスチック成形品が開口部から内部に係合した紙成形品と、を備えたキャップであり、
前記紙成形品は、一方の端部が前記開口部を形成する筒体部と、当該筒体部の他方の端部を塞ぐ天板部と、前記筒体部の内周面に位置し、前記筒体部の内径以下の外径を有し、前記筒体部と内外に重なり合う筒状の紙管部と、を備え、
前記紙管部の肉厚は、前記筒体部の肉厚以上であることを特徴とするキャップ。
【請求項15】
請求項1又は14に記載のキャップを含むチューブ容器であって、
一方端が閉塞されたチューブ状の胴部と、前記胴部の他方端に取り付けられた注出口部と、を備え、
前記胴部が、紙を主体とする材料により形成される、チューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ及びこれを含むチューブ容器に関し、プラスチック成形品と、開口部から内部に嵌まり込み、プラスチック成形品と一体的に回転可能な紙成形品とを備えたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成形部材がパルプモールド形成部材の開口部に装着され、成形部材の外周面には、ネジ山が形成されており、このネジ山に蓋体の内周面に形成されたネジ溝を螺着させることで蓋体を容器本体に装着できるようにしたパルプモールド成形体が知られている(特許文献1の明細書の段落番号「0010」並びに
図1及び
図3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来のパルプモールド成形体は、蓋体のネジ溝をパルプモールド成形しているので、ネジ溝の精密加工が困難であり、又、容器の密封性を保持することが困難であった。
そこで、本発明は従来の課題を解決するためになされたものであり、キャップの用途上、必要限度の範囲内でプラスチック成形品を用いることで、ネジ溝の精密加工が可能であり、又、密封性を向上でき、それに伴うプラスチックの比率の増加を抑制できる共に、繰り返しの使用によっても簡単には使用不能とはならないキャップを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るキャップは、プラスチック成形品と、前記プラスチック成形品が開口部から内部に係合した紙成形品と、を備えたキャップであり、前記プラスチック成形品が前記開口部から脱落するのを防止する脱落防止部を備えることを特徴とする。
また、本発明の一態様に係るキャップは、前記紙成形品の材料は、当該キャップの全体の材料に対し、質量比で50%を超えることを特徴とする。
本発明の一態様に係るキャップは、前記紙成形品は、一方の端部が前記開口部を形成する筒体部を備え、前記プラスチック成形品は、前記キャップが装着される容器の口部を開閉する蓋体部と、前記紙成形品と接合する接合部と、を備え、前記脱落防止部は、前記筒体部の内側面と対向する前記接合部の外側面に位置し、前記筒体部の内側面に向かって突出することを特徴とする。
【0006】
本発明の一態様に係るキャップは、前記筒体部の内側面は、メッシュ状の凹凸部を備えることを特徴とする。
本発明の一態様に係るキャップは、前記突起部は、前記開口部に近づくに連れて突出量が徐々に増加する楔形であることを特徴とする。
本発明の一態様に係るキャップは、前記突起部は、前記接合部の外側面から前記開口部に近づくに連れて外側に向かうように斜めに突出することを特徴とする。
本発明の一態様に係るキャップは、前記筒体部の内面は、平面視で多角形又は円形に形成され、前記接合部は、多角形又は円形の板状に形成され、前記突起部は、前記接合部の外周面に周方向に等間隔に離隔した位置のそれぞれに形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係るキャップは、前記突起部は、前記接合部との間に薄肉のヒンジ部を備えることを特徴とする。
本発明の一態様に係るキャップは、前記突起部は、前記接合部の全周に沿って等間隔に離れて複数個形成され、隣り合う突起部同士を前記接合部の円周方向にスカート状につなぐ連結部を備えることを特徴とする。
本発明の一態様に係るキャップは、前記紙成形品は、一方の端部が前記開口部を形成する筒体部と、当該筒体部の他方の端部を塞ぐ天板部と、を備え、前記プラスチック成形品は、前記口部を開閉する蓋体部と、前記紙成形品と接合する接合部と、を備え、前記筒体部の内周面には、上下面が開口し中空な円筒状をなす前記脱落防止部としての紙管部が嵌まり込み、前記紙管部は、外周面が前記筒体部の内周面と接触して摩擦抵抗により軸方向の移動が阻止されると共に、一方の端面と前記天板部との間に前記接合部の周縁部が位置することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係るキャップは、前記接合部は、前記蓋体部とは逆側を向く面に、前記天板部に食い込むスパイク部を備えることを特徴とする。
本発明の一態様に係るキャップは、前記接合部は、前記天板部と前記紙管部の端面との間に挟み込まれていることを特徴とする。
本発明の一態様に係るキャップは、前記紙管部は、前記接合部が前記天板部と前記紙管部の端面との間で前記筒体部の軸方向に移動可能となる位置で、前記筒体部の内周面に固定され、前記天板部と、前記天板部と対向する前記接合部とには、互いに嵌まり合う凹部及び凸部の一方がそれぞれ形成されていて、前記凸部の高さは、前記接合部が最も紙管部側に移動した位置において、前記凹部から前記凸部が完全に離脱した状態となる寸法であることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係るキャップは、プラスチック成形品と、前記プラスチック成形品が開口部から内部に係合した紙成形品と、を備えたキャップであり、前記紙成形品は、一方の端部が前記開口部を形成する筒体部と、当該筒体部の他方の端部を塞ぐ天板部と、前記筒体部の内周面に位置し、前記筒体部の内径以下の外径を有し、前記筒体部と内外に重なり合う筒状の紙管部と、を備え、前記紙管部の肉厚は、前記筒体部の肉厚以上であることを特徴とする。
本発明の一態様に係るチューブ容器は、キャップを含むチューブ容器であって、一方端が閉塞されたチューブ状の胴部と、前記胴部の他方端に取り付けられた注出口部と、を備え、前記胴部が、紙を主体とする材料により形成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係るキャップによれば、プラスチック成形品と、開口部から内部に嵌まり込み、プラスチック成形品と一体的に回転可能な紙成形品とを備え、プラスチック成形品が開口部から脱落するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係わり、キャップの一部の断面図である。
【
図2】
図1に示すキャップと容器との側面図である。
【
図4】
図1に示すプラスチック成形品の斜視図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係わり、キャップの断面図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態に係わり、キャップの断面図である。
【
図8】本発明の第4の実施形態の変形例1に係わり、キャップの平面図である。
【
図9】本発明の第4の実施形態の変形例2に係わり、キャップの平面図である。
【
図10】本発明の第4の実施形態の変形例3に係わり、キャップの平面図である。
【
図11】本発明の第5の実施形態に係わり、キャップの平面図である。
【
図13】装着前のプラスチック成形品の縦断面図である。
【
図14】本発明の第6の実施形態に係わり、キャップの平面図である。
【
図20】本発明の第7の実施形態に係わり、キャップの断面図である。
【
図21】本発明の第8の実施形態に係わり、キャップの断面図である。
【
図22】本発明の第9の実施形態に係わり、同図(A)は紙成形品に対し、プラスチック成形品をロック状態とし、両者を供回り可能な状態としたものであり、同図(B)はロック状態を解除し、プラスチック成形品が紙成形品内で空転可能な状態としたものである。
【
図23】本発明の第10の実施形態に係わり、チューブ容器との分解斜視図である。
【
図26】本発明の第11の実施形態に係わり、チューブ容器の胴部を構成するシートの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、以下に図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内であって、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。
(キャップ10)
キャップ10は、
図1~
図5に示すように、大別すると、プラスチック成形品30と、プラスチック成形品30が開口部71から内部に係合した紙成形品40と、を備える。
【0014】
(容器20)
容器20は、
図2に示すように、例えばチューブ状であり、容器20の内容物を抽出可能な口部21を有する。そして、容器20の口部21には、キャップ10が脱着可能に装着され、口部21を開閉する。
口部21の外周には、キャップ10を脱着可能な雄ねじが形成されている。なお、口部21の内周に雌ねじを形成しても良い。
また、容器20として、チューブ状容器を例示したが、これに限定されず、チューブ以外の容器20であっても良い。
容器20は、特に用途は問わないが、内容物としては、例えばシャンプー、リンス、ボディーソープ、洗顔料、歯磨き粉、洗剤、漂白剤、柔軟剤、飲料、食品、エンジンオイル等が挙げられる。
【0015】
(プラスチック成形品30)
プラスチック成形品30は、プラスチックの射出成型品である。
プラスチックの種類は、問わないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等が使用できる。
プラスチック成形品30は、原料モノマー中のバイオマス由来の樹脂の含有量が50質量%を超え、好ましくは60質量%以上、より好ましく80質量%以上である。
バイオマス由来の樹脂としては、例えばバイオマス由来のエチレン、プロピレンを原材料に用いたバイオマスポリエチレン、バイオマスポリプロピレン又はバイオマスポリエチレンテレフタレートを一部又は全部に含む。
プラスチック成形品30は、キャップ10の機能上、必要最低限,例えば容器20の口部21の開閉、バリア性、密閉性等を有するものである。
【0016】
(プラスチック成形品30の各部)
プラスチック成形品30は、
図1、
図3及び
図4に示すように、大別すると、次の各部を有する。プラスチック成形品30の各部の詳細については後述する。
(1)蓋体部50
(2)接合部60
【0017】
(紙成形品40)
紙成形品40は、例えばパルプモールドで成形したものである。
ここで、パルプモールドは、植物繊維(主に古紙)を水で溶かし絡み合わせて、金型で抄き上げた後、乾燥させてできるものをいう。
なお、紙成形品40は、パルプモールドに限定されず、主成分にパルプと澱粉とを用いた成形材料を射出成形して、3次元立体構造物を実現する紙素材射出成形方法、紙管の製造方法、コップや容器などの型材を用いた製造方法でも良いし、或いは射出成型の金型に紙のブランクスを入れて、一体成型するインサートインジェクションの技術を用いて製造しても良い。
紙成形品40は、紙を主とするバイオマス素材が用いられ、その材料は、キャップ10全体の材料に対し、質量比で50%を超え、好ましくは60質量%以上、より好ましく80質量%以上である。
【0018】
(バイオマス)
バイオマスとは、再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたものいう。
バイオマス要素には、その賦存状態により、(1)廃棄物系バイオマス、(2)未利用バイオマス、(3)資源作物に分類されている。
廃棄物系バイオマスには、例えば廃棄紙、食品廃棄物、黒液(パルプ工場廃液)等が含まれる。
未利用バイオマスには、例えば稲わら、麦わら、もみがら、林地残材等が含まれる。
資源作物には、例えば糖質資源(さとうきび等)、でんぷん資源(とうもろこし等)、油脂資源(なたね等)、柳、ポプラ、スイッチグラス等が含まれる。
紙成形品40の厚みは、例えば、ラフモールドを想定した場合には、0.5mm~5.0mmであり、パルプモールドの高精細品を想定した場合には、好ましくは0.8~5mmである。
【0019】
(紙成形品40の各部)
紙成形品40は、
図1、
図3及び
図5に示すように、筒体部70を有する。筒体部70の詳細については後述する。
【0020】
(蓋体部50)
蓋体部50は、容器20の口部21を開閉するものである。
蓋体部50は、筒形状、例えば円筒形に形成されている。また、蓋体部50の内周面には、口部21の外周面に形成された雄ねじに対応した雌ねじであるスクリュー部51を有する。
なお、蓋体部50の内周面に、雌ねじであるスクリュー部51を形成したが、これに限らず、例えば口部の径が大きな容器の場合には、口部21の内周面に雌ねじを形成し、蓋体部50の外周面に対応する雄ねじを形成しても良い。
また、蓋体部50は、その軸方向が接合部60の表面に直交する方向を向くように、接合部60の中心位置に結合されている。
【0021】
(接合部60)
接合部60は、蓋体部50の上部から張り出し、筒体部70の開口部71から内部に係合する。接合部60は、その中心を挟んで左右外側に位置する両側の端面が、筒体部70の内側面の対向間隔内に位置する。接合部60のその中心を挟んで左右外側に位置する両側の端面の間隔は、全周に亘って、筒体部70の内側面の対向間隔以上に設定されている。これにより、接合部60は、筒体部70の内側面の対向間隔にはまり込む。接合部60は、筒体部70内の内側面と隙間無く接触し、両者の摩擦抵抗により、プラスチック成形品30が開口部71から脱落するのを防止する脱落防止部aとして機能する。
また、筒体部70の内側面には、メッシュ状の凹凸部74が形成され、接合部60の外側の端面が引っ掛かることで、脱落をより確実に防止できる。
そして、接合部60は、正多角形、例えば正六角形の板形状に形成されている。
なお、接合部60の正多角形として、正六角形を例示したが、これに限らず、例えば正三角形、正四角形、正五角形、正七角形以上としても良い。
【0022】
(筒体部70)
筒体部70は、下面に開口部71を有し、上面が天板部72により塞がれた、全体がキャップ状に形成されている。そして、筒体部70は、内部が中空で、プラスチック成形品30がはめ込まれた状態で、紙成形品40とプラスチック成形品30が一体的に回転する。筒体部70は、外周部全体からプラスチック成形品30を包囲するように延びており、蓋体部50が口部21を閉状態としたときに、容器20の口部21を隠すように先端部分が当該容器20に当接する。
筒体部70は、接合部60の正多角形の各辺から立ち上がる側板部から構成された多角柱形状で、例えば正六角柱形状である。
また、筒体部70先端部には、正六角形の縁を円形に縁取る補強用のフランジ部73を形成している。そして、フランジ部73を円形に形成したのは、筒体部70の剛性を向上するためである。
【0023】
(キャップ10の組み立て)
図1及び
図3を用いて、キャップ10の組み立てについて説明する。
筒体部70の開口部71に合わせて、プラスチック成形品30を接合部60側から紙成形品40に挿入すると、筒体部70の内側面の対向面が、接合部60の外側に位置する両側の端面に押されて、紙を伸張させながら、筒体部70の開口部71にはまり込む。プラスチック成形品30は、接合部60の上面が天板部72の下面に当接するまで紙成形品40内に押し込む。
【0024】
このとき、接合部60を筒体部70内にはめ込むと、はめ込む際に伸張していた紙成形品40が収縮することで筒体部70の内面と接合部60の外面とが密着し、プラスチック成形品30が筒体部70の開口部71から抜け落ちることが防止される。また、筒体部70の内面が正六角であり、接合部60の外面が正六角であることから、内外の角部が重なり合うことで、紙成形品40とプラスチック成形品30とは供回りする。
これにより、キャップ10の容器20に対する着脱を繰り返しても、プラスチック成形品30と紙成形品40とは容易には分離しないので、キャップ10としての機能を長期に亘って維持することができる。
【0025】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。
紙成形品40は、一方の端部が開口部71を形成する筒体部70を備え、プラスチック成形品30は、
図6に示すように、キャップ10が装着される容器20の口部21を開閉する蓋体部50と、紙成形品40と接合する接合部60と、を備え、脱落防止部aは、筒体部70の内側面と対向する接合部60の外側面に位置し、筒体部70の内側面に向かって突出する突起部61を備える。
突起部61の突出量は、筒体部70の肉厚未満に設定されている。
【0026】
筒体部70の開口部71に合わせて、接合部60を下方からはめ込むと、接合部60の両端に位置する突起部61に押圧されて、紙を伸張させながら、筒体部70の開口部71にはまり込む。接合部60は、その上面が天板部72の下面に当接するまで押し込み、少し下降させると、筒体部70の内側面に食い込み、プラスチック成形品30が筒体部70の開口部71から抜け落ちることが防止される。
突起部61は、開口部71に近づくに連れて突出量が徐々に増加する楔形である。突起部61の端面には、アンダーカットを設けている。
突起部61を楔形に形成されていることから、突起部61の食い込みが外れ難くなっている。
【0027】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。
突起部61は、
図7に示すように、接合部60の外側面から開口部71に近づくに連れて外側に向かうように斜めに突出する。
突起部61は、斜めに突出していることから、突起部61の食い込みがより外れ難くなっている。
【0028】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、三種類の変形例1~3を含む。
筒体部70の内面は、
図8~
図10に示すように、平面視で円形に形成され、接合部60は、多角形又は円形の板状に形成され、突起部61は、接合部60の外周面に周方向に等間隔に離隔した位置のそれぞれに形成されている。そして、突起部61は、接合部60の外周面に周方向に等間隔に離隔して位置する。このため、筒体部70の外周面を持つと、筒体部70が僅かに縮径方向に変形することで、複数の突起部61のうち少なくとも直径に沿って位置する二つの突起部61が筒体部70の内周面に等しく食い込み、筒体部70からプラスチック成形品30が脱落することが防止されるとともに、筒体部70とプラスチック成形品30とが供回りする。
【0029】
(第4の実施形態の変形例1)
第4の実施形態の変形例1について説明する。
筒体部70の内面は、
図8に示すように、平面視で円形に形成され、円形の内周面には接合部60が位置し、接合部60は、例えば正六角形の多角形の板状に形成されている。多角形の各角部には、筒体部70の内周面に向かって円錐形に突出した計6個の突起部61が位置し、突起部61は、外周面に周方向に等間隔に離隔した位置のそれぞれに形成されている。つまり、突起部61は、接合部60の外周面に周方向に60度間隔に離隔している。このため、筒体部70の外周面を持つと、筒体部70が僅かに縮径方向に変形することで、6個の突起部61のうち少なくとも直径に沿って位置する二つの突起部61が筒体部70の内周面に食い込み、筒体部70からプラスチック成形品30が脱落することが防止されるとともに、筒体部70とプラスチック成形品30とが供回りする。
【0030】
(第4の実施形態の変形例2)
第4の実施形態の変形例2について説明する。
筒体部70の内面は、
図9に示すように、筒体部70の内面に、平面視で円形に形成され、円形の内周面には接合部60が位置し、接合部60は、方形の板状に形成され、接合部60の外周面には、計3個の突起部61が位置する。突起部61は、120度間隔で外周面に周方向に等間隔に離隔した位置のそれぞれに形成されている。そして、突起部61は、接合部60の外周面に周方向に等間隔に離隔した位置する。このため、筒体部70の外周面を持つと、筒体部70が僅かに縮径方向に変形することで、3個の突起部61が筒体部70の内周面に食い込み、筒体部70からプラスチック成形品30が脱落することが防止されるとともに、筒体部70とプラスチック成形品30とが供回りする。
【0031】
(第4の実施形態の変形例3)
第4の実施形態の変形例3について説明する。
筒体部70の内面は、
図10に示すように、筒体部70の内面に、平面視で円形に形成され、円形の内周面には接合部60が位置し、接合部60は、方形の板状に形成され、接合部60の外周面には、計2個の突起部61が位置する。突起部61は、180度間隔で外周面に周方向に等間隔に離隔した位置のそれぞれに形成されている。
そして、2個の突起部61の対向方向と90位相が異なる直交する筒体部70の対向する外周面を互いに接近する方向に手で押圧すると、筒体部70が2個の突起部61の対向方向に長い楕円形に変形し、2個の突起部61が筒体部70の内周面から離隔し、食い込みが抜ける。このため、接合部60が、筒体部70の開口部71から抜け、紙成形品40とプラスチック成形品3とが分離して別々に廃棄可能となる。
【0032】
(第5の実施形態)
第5の実施形態について説明する。
突起部61は、
図11~12に示すように、接合部60との間に薄肉のヒンジ部62を備える。
筒体部70の内周面は、平面視で円形に形成され、接合部60は筒体部70の内周に位置し、外形は例えば正六角形の多角形の板状に形成されている。接合部60の辺の対向間隔は、筒体部70の内周面の直径より短く設定され、接合部60の辺に位置する外面は、筒体部70の内周面から離れて位置する。6個の各辺のそれぞれには突起部61が形成されていて、これにより、接合部60全体としては、60度間隔で6個の突起部61が設けられている。そして、接合部60と接合部60との間には、接合部60の下面から上方に向かって尖った三角形に切り欠いてヒンジ部62が形成されている。
【0033】
突起部61は、
図13に示すように、キャップ10への装着前には、ヒンジ部62を介して接合部60から直線的に伸びる。筒体部70の開口部71に合わせて接合部60を挿入すると、突起部61が、
図12に示すように、開口部71の端面に押されて、ヒンジ部62を介して下方に折り畳まれながれ、開口部71内に進行する。さらに、接合部60が、開口部71内に進行すると、筒体部70の内周面が突起部61に押されて紙を伸張させながら、接合部60が筒体部70の内部に進行する。そして、接合部60は、その上面が天板部72の下面に当接するまで押し込み、押し込む力を解放すると、突起部61が、筒体部70の内周面に食い込み、プラスチック成形品30が筒体部70の開口部71から抜け落ちることが防止される。また、6個の突起部61が、筒体部70の内周面にそれぞれ所定間隔置きに食い込むことで、キャップ10を回転したときに、紙成形品40とプラスチック成形品30とは供回りする。
【0034】
(第6の実施形態)
第6の実施形態について説明する。
突起部61は、
図14~19に示すように、接合部60の全周に沿って10度間隔に離れて36個形成され、隣り合う突起部61同士を接合部60の円周方向にスカート状につなぐ36個の連結部64を備える。
その結果、突起部61を点状に細分化し、筒体部70の内周面に食い込む部位を増加し、キャップ10の変形に対する追従性を良くし、隣り合う突起部61同士をスカート状につなぎ、且つひだを付けることで、キャップ10の変形に対する装着性を向上でき、全周に均等に配置することでより確実に抜け難くできる。
【0035】
(第7の実施形態)
第7の実施形態について説明する。
紙成形品40は、
図20に示すように、一方の端部が開口部71を形成する筒体部70と、当該筒体部70の他方の端部を塞ぐ天板部72と、を備え、プラスチック成形品30は、口部21を開閉する蓋体部50と、紙成形品40と接合する接合部60と、を備え、筒体部70の内周面には、上下面が開口し中空な円筒状をなす脱落防止部aとしての紙管部80が嵌まり込み、紙管部80は、外周面が筒体部70の内周面と接触して摩擦抵抗により軸方向の移動が阻止されると共に、一方の端面と天板部72との間に接合部60の周縁部が位置する。
その結果、紙管部80により、プラスチック成形品30が筒体部70の開口部71から抜け落ちることが防止される。
紙管部80の肉厚は、筒体部70の肉厚以上とする。紙管部80の肉厚は、筒体部70の肉厚が1mmに対し、好ましくは例えば2mm以上とする。
その結果、筒体部70の剛性を簡便に向上できる。
【0036】
(第7の実施形態の変形例)
第7の実施形態の変形例について説明する。
即ち、この変形例は、
図20に示した第7の実施形態の構成において、さらに、紙管部80の外周面を、筒体部70の内周面に糊などで接着するというものである。
その結果、紙管部80の外周面は、筒体部70の内周面にずれなく、一層、強固に固定できる。
【0037】
(第8の実施形態)
第8の実施形態について説明する。
即ち、
図21に示すように、第8の実施形態の構成は、
図20に示した第7の実施形態の構成を備えるともに、さらに、接合部60は、蓋体部50とは逆側を向く面に、天板部72に食い込むスパイク部63を備える。
その結果、接合部60のスパイク部63により、紙管部80とプラスチック成形品30とをより確実に供回りさせることができる。
【0038】
(第9の実施形態)
第9の実施形態について説明する。
即ち、第9の実施形態では、
図22に示すように、紙管部80は、接合部60が天板部72と紙管部80の端面との間で筒体部70の軸方向に移動可能となる位置で、筒体部70の内周面に固定され、天板部72と、天板部72と対向する接合部60とには、互いに嵌まり合う凹部75及び凸部65の一方がそれぞれ形成されていて、凸部65の高さは、接合部60が最も紙管部80側に移動した位置において、凹部75から凸部65が完全に離脱した状態となる寸法となっている。
【0039】
(凹部75と凸部65との嵌まり合い)
筒体部70の天板部72を、
図22(A)に示すように、接合部60に向かって押し込むと、凹部75と凸部65とが互いに嵌まり合い、紙管部80とプラスチック成形品30とが連結され、供回りする。これにより、筒体部70を押し込んだときのみ、容器20の開栓が可能となる。
【0040】
(凹部75と凸部65との離隔)
これに対し、筒体部70の天板部72を押し込むのを止め、筒体部70を意図的に上昇させると、
図22(b)に示すように、凹部75と凸部65とが離隔し、紙管部80とプラスチック成形品30との連結状態が解除され、紙管部80を回転しても、プラスチック成形品30が空転する。これにより、容器20の開栓が不能となる。
その結果、
図22(B)に示すように、凹部75と凸部65との嵌まり合いを外した状態で凹部75と凸部65とが重ならない位置に紙成形品40を回してずらしておけば、凹部75と凸部65とが嵌まり合う位置にまで紙成形品40を回転させないとプラスチック成形品30を回転させて容器から外すことができなくなるから、小児等によって不用意に開閉されないキャップ、いわゆるチャイルドプルーフキャップに代表される誤操作防止用キャップを提供できる。
【0041】
(第10の実施形態)
第10の実施形態について説明する。
キャップ10を含むチューブ容器100であって、
図23に示すように、胴部110の一方の端部111が閉塞されたチューブ状の胴部110と、胴部110の他方端に取り付けられた口部21と、を備え、胴部110が、紙を主体とする材料により形成する。
その結果、チューブ容器100に適合したキャップ10を提供できる。
【0042】
(口部21)
口部21は、
図23~
図25に示すように、胴部110に収容された内容物を外部に抽出するためのスパウトであり、筒状の注出筒部120と張出部130とを備える。張出部130は、注出筒部120の一方の端部(
図23における下端)に接続され、注出筒部120の外方に延伸する平板状の部分である。本実施形態では、張出部130は、注出筒部120の軸方向と直交する方向(
図23における左右方向)に延伸するように形成されている。張出部130は、円環状に形成されているが、胴部110を接合することができる限り、張出部130の形状は限定されず、楕円形、長円形、トラック形、多角形等でも良い。
【0043】
口部21は、熱可塑性樹脂と、樹脂以外のフィラーを含む材料により成型される。口部21の材料に用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド及びシクロポリオレフィンのいずれか1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。フィラーとしては、タルク、カオリン、紙粉及びセルロース繊維のいずれか1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。口部21の材料として、熱可塑性樹脂と、樹脂以外のフィラーの混合物を用いることにより、成型性や胴部110のシート材との熱溶着性を維持しつつ、樹脂の使用量を低減することが可能となる。口部21の成型方法は特に限定されないが、射出成形、真空成形・熱板圧空成型等のサーモフォーミング、コンプレッション成型等の既存の成型方法を利用可能である。
【0044】
チューブ容器100の製造時に胴部110及び口部21を溶着する方法としては、超音波溶着、高周波溶着、ヒートシール溶着、ホットエア溶着、胴部インサートのコンプレッション成型等を利用することができるが、紙の断熱性に左右されにくい点で超音波溶着を採用することが好ましい。
【0045】
チューブ容器100のチューブ長さをL、チューブ口径をDとしたとき、L/Dを1~10の範囲とすることが好ましく、1.5~8の範囲とすることがより好ましい。ここで、
図23に示すように、チューブ長さLは、張出部130への溶着箇所から胴部110の端部までの軸方向の長さであり、チューブ口径Dは、張出部130が円形の場合、張出部130の直径であり、張出部130が楕円形の場合、(A+B)/2である(ただし、A:楕円の長径、B:楕円の短径)。L/Dの値が1未満の場合、チューブ口径Dに対してチューブ長さLが短すぎ、チューブ容器100の形状が包装容器に適さないものとなる。一方、L/Dの値が10を超える場合、チューブ口径Dに対してチューブ長さLが長すぎるために、チューブ容器100の外観が悪くなり、チューブ容器100の形状が包装容器に適さないものとなる。
【0046】
チューブ容器100は、口部21の注出筒部120に螺合により着脱可能なスクリューキャップを更に備えていても良い。チューブ容器100がスクリューキャップを備える場合、チューブ容器100の開封後に再封することが容易となる。
また、チューブ容器100は、スクリューキャップに代えて、ヒンジキャップを備えていても良い。ヒンジキャップを設ける場合、
図23に示した注出筒部120に螺合によりヒンジキャップを口部21に取り付けても良い。あるいは、注出筒部120の外面にネジ山の代わりにリブを設け、リブを介した嵌合によりヒンジキャップを口部21に取り付けても良い。
【0047】
さらに、注出筒部120の内部は、チューブ容器100の未開封状態において容器内部を密閉状態に保つために、隔壁により閉鎖されていても良い。隔壁を設ける場合、注出筒部120の内周に沿って円形状のハーフカットを設けると共に、ハーフカットによって囲まれた部分に接続されるプルリングを設けることが好ましい。このように構成すれば、チューブ容器100の開封時には、使用者がプルリングを引っ張って隔壁のハーフカットの部分を破断させることにより、ハーフカットで囲まれた隔壁の一部を除去して、胴部110から注出筒部120へと内容物を注出するための開口部を形成することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態においては、胴部110を紙とシーラントを有するシートで構成し、口部21を熱可塑性樹脂及び樹脂以外のフィラーを含む材料により成型しており、胴部110及び口部21を構成する材料の質量合計のうち、紙の質量割合が最も高くなっている。従来の樹脂性のチューブ容器において、胴部110を構成するシートの樹脂層を単に薄膜化した場合、胴部110のコシが不足し、チューブ容器100の自立性やハンドリング性が低下する。これに対して、本実施形態では、胴部110の構造材として紙を用いることにより、樹脂の使用量を低減しつつ、胴部110にコシを付与することができる。また、口部21の成形材料に樹脂以外のフィラーが配合されていることによっても、チューブ容器100の樹脂使用量を少なくすることができる。したがって、本実施形態によれば、従来と比べて樹脂使用量が低減され、かつ、容器の自立性やハンドリング性に必要なコシを有するチューブ容器100を実現できる。また、胴部110に用いる紙の坪量が200g/m2以下であるため、胴部110を形成する際における丸め加工、貼り合わせ部7の溶着、胴部110を口部21に取り付ける際における胴部110の端部111を近傍の折り畳み、胴部110の端部111近傍の張出部130への溶着を問題なく行うことができ、加工装置による成形性が良好である。
【0049】
また、本実施形態に係るチューブ容器100においては、
図24及び
図25に示すように、張出部130が注出筒部120の中心軸に対して直交する平板形状を有しており、胴部110が張出部130の外面に溶着されているため、チューブ容器100の内容物が少なくなった場合に、胴部110を張出部130の外周縁に沿って折り畳むことにより、内容物を容易に絞り出すことができる。また、張出部130が平板形状であり、張出部130によって内容物が残存する空間が形成されないため、胴部110を張出部130の外周縁に沿って折り曲げ、張出部130と胴部110とをほぼフラットな状態とすることにより、内容物を残らず絞り出すことができる。
【0050】
(第11の実施形態)
第11の実施形態について説明する。
チューブ容器100の胴部110は、
図26に示すように、紙を主体とするシート140により構成する。
シート140は、紙層141の一方面に、基材フィルム層142、バリア層143及びシーラント層144をこの順に積層し、紙層141の他方面に、紙保護層145を積層し、更に紙保護層145上にインキ層146及びオーバーコートニス層147を積層した多層シートである。以下、各層の詳細を説明する。
【0051】
(紙層141)
紙層141は、チューブ容器100に強度及びコシを付与する構造層である。紙層141を構成する用紙の種類は特に限定されないが、強度、屈曲耐性、印刷適性を備える点で、片艶クラフト紙又は両艶クラフト紙を用いることが好ましい。また、紙層141を構成する用紙として、必要に応じて、耐水紙又は耐油紙を使用しても良い。
【0052】
紙層141に用いる紙の坪量は、30~200g/m2であり、50~120g/m2であることが好ましい。紙層141に用いる紙の坪量が30g/m2未満である場合、胴部110のコシが不足する。コシを補うためには、例えば、紙層141より内側に設ける樹脂フィルムを厚くする必要があるが、樹脂比率の上昇に繋がり、環境負荷低減の面で望ましくない。また、紙層141に用いる紙の坪量が200g/m2を超える場合、紙のコシや断熱性により、製筒性(製袋性)、成型性及び溶着性が悪化する上、製造コストも増加するため好ましくない。
【0053】
(基材フィルム層142)
基材フィルム層142は、シート140に耐熱性と強靱性等の物理的強度とを付与する層である。基材フィルム層142は、バリア層143の基材となる層でもある。基材フィルム層142を構成するフィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性及び物理的強度の観点から、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の延伸フィルムを用いることが好ましい。ただし、基材フィルム層142を紙により構成しても良い。
【0054】
(バリア層143)
バリア層143は、酸素や水蒸気等を遮断して、内容物の保存性を向上させる機能層である。バリア層143は、例えば、シリカやアルミナ等の無機化合物の蒸着膜、アルミニウム等の金属蒸着膜、アルミニウム等の金属箔、板状鉱物及び/又はバリア性樹脂を含むバリアコート剤の塗膜の1種以上により構成することができる。バリアコート剤に用いるバリア性樹脂としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)やポリ塩化ビニリデン(PVDC)等を使用することができ、バリアコート剤にはバリア性樹脂以外のバインダー樹脂が適宜配合される。バリア層143は、予め基材フィルム層142上に積層されてバリアフィルムを構成していても良いし、単層膜として設けられても良い。
【0055】
(シーラント層144)
シーラント層144の材質は特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂であることが好ましい。シーラント層144は、軟化温度が基材フィルム層142の軟化温度より20℃以上低い樹脂を用いる。シーラント層144の軟化温度が、基材フィルム層142の軟化温度より20℃以上低くない場合、シール時に基材フィルム層142が軟化してピンホールが発生する可能性が高くなるため好ましくない。シーラント層144の軟化温度は、基材フィルム層142の軟化温度より40℃以上低いことが好ましい。
【0056】
シーラント層144に用いる熱可塑性樹脂は、後述する口部21の材料を構成する熱可塑性樹脂に対して接着性を有するものであれば良いが、口部21に用いる熱可塑性樹脂と同じ材質であることが好ましい。シーラント層144に用いる熱可塑性樹脂と口部21に用いる熱可塑性樹脂層とを同じにすることにより、胴部110と口部21とのシール強度を向上させることができる。
【0057】
(紙保護層145)
紙保護層145は、シート140を構成する紙層141への内容物や汚れの付着から保護するための層である。紙保護層145の材料や形成方法は特に限定されないが、熱可塑性樹脂の押出コートや、耐水剤あるいは耐油剤等のコート剤のコートにより紙保護層145を積層することができる。紙保護層145の厚みは、0.2~50μmであることが好ましく、1~20μmであることがより好ましい。紙保護層145の厚みが0.2μm未満である場合、紙保護層145にピンホールが発生する可能性があり、紙層141の保護が不十分となる場合がある。また、紙保護層145の厚みが50μmを超える場合、樹脂使用量や製造コストの面で好ましくない。
【0058】
(インキ層146、オーバーコートニス層147)
インキ層146は、各種表示を行うために印刷により施される層であり、オーバーコートニス層147は、耐摩性等を付与するための層である。インキ層146とオーバーコートニス層の積層順序は
図26と逆であっても良い。また、オーバーコートニス層147が紙保護層145を兼ねていても良い。
【0059】
胴部110を構成するシート140の厚み(総厚)は、特に限定されないが、30~300μmであることが好ましい。胴部110を構成するフィルムの厚みが、この範囲であれば、製袋機やピロー・スティック包装機等を用いて胴部110を容易に筒状に加工することができる。また、紙層141によって強度とコシが付与されるため、一般的なラミネートチューブ(厚み300~500μm)と比べて、薄くすることができ、樹脂使用量も低減できる。
【0060】
胴部110を構成するシート140の樹脂比率を低減するため、シート140の質量のうち、紙層141の占める割合が50%以上であることが好ましい。樹脂の使用量を低減する観点では紙層141の割合は高いほど好ましい。
【0061】
なお、胴部110を構成するシートは、少なくとも紙層141の一方面側(チューブ容器100の内側となる面側)にシーラント層144が積層されたものであれば良く、上記の基材フィルム層142、バリア層143、紙保護層145、インキ層146及びオーバーコートニス層147の1層以上を省略しても良い。
【0062】
(実施形態の特徴点と効果)
実施形態の特徴点と効果とは、次の通りである。
(第1の特徴点)
第1の特徴点は、プラスチック成形品30と、例えば
図1に示すように、プラスチック成形品30が開口部71から内部に係合した紙成形品40と、を備えたキャップ10であり、プラスチック成形品30が開口部71から脱落するのを防止する脱落防止部aを備える点である。
(第1の特徴点の効果)
第1の特徴点によれば、脱落防止部aにより、プラスチック成形品30が紙成形品40の開口部71から脱落する防止できる。
【0063】
(第2の特徴点)
第2の特徴点は、紙成形品40の材料は、当該キャップ10の全体の材料に対し、質量比で50%を超える点である。
(第2の特徴点の効果)
第2の特徴点によれば、プラスチック成形品をキャップの用途上、必要限度の範囲内で用いるにとどめ、紙成形品を主体として積極的に用いることで、使い捨てプラスチック製品の削減目標に、より適合できる。
【0064】
(第3の特徴点)
第3の特徴点は、紙成形品40は、例えば
図6に示すように、一方の端部が開口部71を形成する筒体部70を備え、プラスチック成形品30は、キャップ10が装着される容器20の口部21を開閉する蓋体部50と、紙成形品40と接合する接合部60と、を備え、脱落防止部aは、筒体部70の内側面と対向する接合部60の外側面に位置し、筒体部70の内側面に向かって突出する突起部61を備える点である。
(第3の特徴点の効果)
第3の特徴点によれば、接合部60の突起部61を、例えば
図6に示すように、筒体部70の内側面を食い込ませることで、プラスチック成形品30が紙成形品40の開口部71から脱落するのを防止できる。
【0065】
(第4の特徴点)
第4の特徴点は、筒体部70の内側面は、例えば
図1に示すように、メッシュ状の凹凸部74を備える点である。
(第4の特徴点の効果)
第4の特徴点によれば、接合部60の突起部61が筒体部70のメッシュ状の凹凸部74に引っ掛かることで、脱落をより確実に防止できる。
【0066】
(第5の特徴点)
第5の特徴点は、突起部61は、例えば
図6に示すように、開口部71に近づくに連れて突出量が徐々に増加する楔形である点である。
(第5の特徴点の効果)
第5の特徴点によれば、突起部61を楔形できるので、筒体部70の内側面に食い込んだ突起部61を抜け難くできる。
【0067】
(第6の特徴点)
第6の特徴点は、突起部61は、例えば
図7に示すように、接合部60の外側面から開口部71に近づくに連れて外側に向かうように斜めに突出する点である。
(第6の特徴点の効果)
第6の特徴点によれば、突起部61を斜めに突出することで、筒体部70の内側面に食い込んだ突起部61を抜け難くできる。
【0068】
(第7の特徴点)
第7の特徴点は、筒体部70の内面は、例えば
図8~
図10に示すように、平面視で多角形又は円形に形成され、接合部60は、多角形又は円形の板状に形成され、突起部61は、接合部60の外周面に周方向に等間隔に離隔した位置のそれぞれに形成されている点である。
(第7の特徴点の効果)
第7の特徴点によれば、例えば
図8~
図10に示すように、突起部61を、接合部60の外周面に周方向に等間隔に離隔した位置に複数の突起部61を形成し、突起部61の抜け力を均等に配置することで、突起部61を抜け難くできる。
【0069】
(第8の特徴点)
第8の特徴点は、突起部61は、例えば
図11~
図19に示すように、接合部60との間に薄肉のヒンジ部62を備える点である。
(第8の特徴点の効果)
第8の特徴点によれば、薄肉のヒンジ部62を利用し、筒体部70の内側面に向かって突起部61を押圧できるので、キャップ10の変形に対する追従性を向上できる。
【0070】
(第9の特徴点)
第9の特徴点は、突起部61は、例えば
図13~
図19に示すように、接合部60の全周に沿って等間隔に離れて複数個形成され、隣り合う突起部61同士を接合部60の円周方向にスカート状につなぐ連結部64を備える点である。
(第9の特徴点の効果)
第9の特徴点によれば、突起部61を、連結部64を介してスカート状につなぐことで、キャップ10の変形に対する追従性を向上できる。
【0071】
(第10の特徴点)
第10の特徴点は、紙成形品40は、例えば
図20~
図22に示すように、一方の端部が開口部71を形成する筒体部70と、当該筒体部70の他方の端部を塞ぐ天板部72と、を備え、プラスチック成形品30は、口部21を開閉する蓋体部50と、紙成形品40と接合する接合部60と、を備え、筒体部70の内周面には、上下面が開口し中空な円筒状をなす脱落防止部aとしての紙管部80が嵌まり込み、紙管部80は、外周面が筒体部70の内周面と接触して摩擦抵抗により軸方向の移動が阻止されると共に、一方の端面と天板部72との間に接合部60の周縁部が位置する点である。
(第10の特徴点の効果)
第10の特徴点によれば、紙管部80により、プラスチック成形品30の脱落を防止できる。
【0072】
(第11の特徴点)
第11の特徴点は、接合部60は、例えば
図21に示すように、蓋体部50とは逆側を向く面に、天板部72に食い込むスパイク部63を備える点である。
(第11の特徴点の効果)
第11の特徴点によれば、接合部60のスパイク部63が天板部72に食い込むことで、紙管部80とプラスチック成形品30とを確実に供回りさせることができる。
【0073】
(第12の特徴点)
第12の特徴点は、接合部60は、例えば
図20~
図22に示すように、天板部72と紙管部80の端面との間に挟み込まれている点である。
(第12の特徴点の効果)
第12の特徴点によれば、接合部60を、天板部72と紙管部80の端面との間に挟み込み、紙管部80を用いることで、プラスチック成形品30の脱落を防止するのみでなく、接合部60の移動範囲を一定の範囲に規制できる。
【0074】
(第13の特徴点)
第13の特徴点は、紙管部80は、例えば
図22(A)及び
図22(B)に示すように、接合部60が天板部72と紙管部80の端面との間で筒体部70の軸方向に移動可能となる位置で、筒体部70の内周面に固定され、天板部72と、天板部72と対向する接合部60とには、互いに嵌まり合う凹部75及び凸部65の一方がそれぞれ形成されていて、凸部65の高さは、接合部60が最も紙管部80側に移動した位置において、凹部75から凸部65が完全に離脱した状態となる寸法である点である。
(第13の特徴点の効果)
第13の特徴点によれば、紙管部80を用いることで、小児等によって不用意に開閉されないキャップ、いわゆるチャイルドプルーフキャップに代表される誤操作防止用キャップを容易に実現できる。
【0075】
(第14の特徴点)
第14の特徴点は、プラスチック成形品30と、例えば
図20~
図22に示すように、紙を主な材料として使用して成形され且つプラスチック成形品30が開口部71から内部に嵌まり込み、プラスチック成形品30と一体的に回転可能な紙成形品40と、を備え、キャップ10が装着される容器20の口部21に装着されるキャップ10であり、紙成形品40は、一方の端部が開口部71を形成する筒体部70と、当該筒体部70の他方の端部を塞ぐ天板部72と、筒体部70の内周面に位置し、筒体部70の内径以下の外径を有し、筒体部70と内外に重なり合う筒状の紙管部80と、を備え、紙管部80の肉厚は、筒体部70の肉厚以上である点である。
(第14の特徴点の効果)
第14の特徴点によれば、紙管部80を用いることで、簡便に筒体部70の剛性を向上できる。
【0076】
(第15の特徴点)
第15の特徴点は、例えば
図23に示すように、キャップ10を含むチューブ容器100であって、一方端が閉塞されたチューブ状の胴部110と、例えば
図2及び
図23に示すように、胴部の他方端に取り付けられた口部21と、を備え、胴部110が、紙を主体とする材料により形成される、チューブ容器100である点である。
(第15の特徴点の効果)
第15の特徴点によれば、チューブ容器100に適合したキャップ10を提供できる。
【符号の説明】
【0077】
10 キャップ
20 容器
21 口部
30 プラスチック成形品
40 紙成形品
50 蓋体部
51 スクリュー部
60 接合部
61 突起部
62 ヒンジ部
63 スパイク部
64 連結部
65 凸部
a 脱落防止部
70 筒体部
71 開口部
72 天板部
73 フランジ部
74 凹凸部
75 凹部
80 紙管部
100 チューブ容器
110 胴部
120 注出筒部
130 張出部
111 胴部の端部
140 シート
141 紙層
142 基材フィルム層
143 バリア層
144 シーラント層
145 紙保護層
146 インキ層
147 オーバーコートニス層