(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176520
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】設備情報システム、設備情報導出方法、および、設備情報導出プログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/62 20180101AFI20231206BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20231206BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20231206BHJP
A61L 9/22 20060101ALI20231206BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
F24F11/62
A61L9/16 F
A61L9/20
A61L9/22
A61L9/16 Z
A61L9/01 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088843
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 尚利
【テーマコード(参考)】
3L260
4C180
【Fターム(参考)】
3L260AA05
3L260AA09
3L260AB15
3L260AB18
3L260BA09
3L260BA12
3L260BA75
3L260CA03
3L260EA04
3L260FC01
3L260FC22
3L260FC23
3L260FC28
4C180AA07
4C180CA10
4C180DD03
4C180DD09
4C180DD12
4C180HH11
4C180KK03
(57)【要約】
【課題】既設空気清浄設備について、病原体除去能力が基準値を満たすようになるための情報を導出できる、設備情報システムを提供する。
【解決手段】設備情報システムは制御部を有する。制御部は、対象空間に設置された既設空気清浄設備の空気清浄能力に関する第1入力情報E1と、対象空間内の利用者の病原体感染に関する第2入力情報E2と、に基づいて、対象空間に設けられる設備の病原体除去能力が基準値を満たすように、既設空気清浄設備に対する空気清浄能力の関連情報を導出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を有する設備情報システムであって、
前記制御部は、
対象空間に設置された既設空気清浄設備の空気清浄能力に関する第1入力情報と、
前記対象空間内の利用者の病原体感染に関する第2入力情報と、に基づいて、前記対象空間に設けられる設備の病原体除去能力が基準値を満たすように、前記既設空気清浄設備に対する前記空気清浄能力の関連情報を導出する、設備情報システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1入力情報に基づいて前記対象空間における現状病原体除去能力を算出し、
前記第2入力情報に基づいて前記基準値を算出し、
前記現状病原体除去能力と前記基準値とに基づいて前記関連情報を導出する、
請求項1に記載の設備情報システム。
【請求項3】
前記制御部は、空気清浄能力に関する設備情報と、前記第1入力情報と、前記第2入力情報と、を関係付ける設備関係情報を有し、
前記制御部は、前記第1入力情報と、前記第2入力情報と、前記設備関係情報と、に基づいて、前記関連情報を導出する、
請求項1に記載の設備情報システム。
【請求項4】
前記関連情報は、前記既設空気清浄設備に対する追加設備、前記既設空気清浄設備のグレードアップ量、または、前記既設空気清浄設備の病原体除去ツールのグレードアップ量に関する情報である、
請求項1に記載の設備情報システム。
【請求項5】
前記第2入力情報は、前記対象空間を利用する利用者の数であり、
前記制御部は、前記対象空間を利用する利用者の数に基づいて前記基準値を算出する、
請求項2に記載の設備情報システム。
【請求項6】
前記第2入力情報は、前記対象空間を利用する利用者における感染者の想定数を含み、
前記制御部は、感染者1人あたりに必要な病原体除去能力と前記感染者の前記想定数とに基づいて前記基準値を算出する、
請求項2に記載の設備情報システム。
【請求項7】
前記感染者1人あたりに必要な病原体除去能力は、WHO基準によって定められる値である、請求項6に記載の設備情報システム。
【請求項8】
前記第2入力情報は、さらに利用者の感染予防度を含み、
前記制御部は、前記感染予防度に応じて前記基準値を補正する、
請求項5に記載の設備情報システム。
【請求項9】
前記第2入力情報は、さらに病原体の危険度を含み、
前記制御部は、前記危険度の分類に応じて、前記基準値を補正する、
請求項5に記載の設備情報システム。
【請求項10】
前記第1入力情報は、前記既設空気清浄設備の空気清浄能力としての処理風量を含み、
前記制御部は、前記処理風量と換算情報とに基づいて前記既設空気清浄設備の前記現状病原体除去能力を算出し、
前記換算情報は、前記既設空気清浄設備の空気清浄能力を前記病原体除去能力に換算する情報である、
請求項2に記載の設備情報システム。
【請求項11】
前記換算情報は、病原体除去効率であり、
前記病原体除去効率は、空気清浄設備の病原体除去ツールに対して設定される値である、
請求項10に記載の設備情報システム。
【請求項12】
前記病原体除去効率は、病原体の種別毎に設定される、
請求項11に記載の設備情報システム。
【請求項13】
前記第1入力情報は、前記対象空間への外気導入量を含み、
前記制御部は、前記対象空間への外気導入量に基づいて、前記現状病原体除去能力を算出する、
請求項2に記載の設備情報システム。
【請求項14】
前記病原体除去ツールは、フィルタ、UV装置、イオナイザー装置、除ウィルスの散布装置、または、ストリーマ装置を含む、
請求項4または11に記載の設備情報システム。
【請求項15】
対象空間に設けられる空気清浄設備に関する関連情報を導出する設備情報導出方法であって、
前記対象空間に設置された既設空気清浄設備の空気清浄能力に関する第1入力情報を取得する工程と、
前記対象空間内の利用者の病原体感染に関する第2入力情報を取得する工程と、
前記第1入力情報と前記第2入力情報とに基づいて、前記対象空間に設けられる設備の病原体除去能力が基準値を満たすように、前記既設空気清浄設備に対する前記空気清浄能力の関連情報を導出する工程と、を含む、
設備情報導出方法。
【請求項16】
コンピュータに、対象空間に設けられる空気清浄設備に関する関連情報を導出させる、設備情報導出プログラムであって、
前記コンピュータの入力部から入力される情報であって、前記対象空間に設置された既設空気清浄設備の空気清浄能力に関する第1入力情報を取得させるステップと、
前記コンピュータの入力部から入力される情報であって、前記対象空間内の利用者の病原体感染に関する第2入力情報を取得させるステップと、
前記第1入力情報と前記第2入力情報とに基づいて、前記対象空間に設けられる設備の病原体除去能力が基準値を満たすように、前記既設空気清浄設備に対する前記空気清浄能力の関連情報を導出させるステップと、を含む、
設備情報導出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設備情報システム、設備情報導出方法、および、設備情報導出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
室内環境の快適性のため対象空間に空気清浄設備が設置される。空気清浄設備として、対象空間から対象物を除去する空気清浄装置、および、外気を取り入れる換気装置が挙げられる。一方、対象空間の汚染量を推定する技術が知られている。例えば、特許文献1に記載のシステムは、対象空間の汚染量を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、感染対策ため、空気清浄設備の改善が求められる場合がある。しかし、対象空間における空気清浄設備の病原体除去能力については不明であることが多い。そこで、感染対策の観点において、対象空間に対する空気清浄設備の能力についての情報を提供できるシステムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決する第1観点の設備情報システムは、制御部を有する設備情報システムであって、前記制御部は、対象空間に設置された既設空気清浄設備の空気清浄能力に関する第1入力情報と、前記対象空間内の利用者の病原体感染に関する第2入力情報と、に基づいて、前記対象空間に設けられる設備の病原体除去能力が基準値を満たすように、前記既設空気清浄設備に対する前記空気清浄能力の関連情報を導出する。この構成によれば、既設空気清浄設備について、病原体除去能力が基準値を満たすようになるための情報を導出できる。
【0006】
第2観点の設備情報システムは、第1観点の設備情報システムであって、前記制御部は、前記第1入力情報に基づいて前記対象空間における現状病原体除去能力を算出し、前記第2入力情報に基づいて前記基準値を算出し、前記現状病原体除去能力と前記基準値とに基づいて前記関連情報を導出する。この構成によれば、既設空気清浄設備について、空気清浄能力の関連情報を簡単に導出できる。
【0007】
第3観点の設備情報システムは、第2観点の設備情報システムであって、前記制御部は、空気清浄能力に関する設備情報と、前記第1入力情報と、前記第2入力情報と、を関係付ける設備関係情報を有し、前記制御部は、前記第1入力情報と、前記第2入力情報と、前記設備関係情報と、に基づいて、前記関連情報を導出する。この構成によれば、第1入力情報と第2入力情報と設備関係情報とに基づいて、既設空気清浄設備に対する関連情報を簡単に導出できる。
【0008】
第4観点の設備情報システムは、第2観点または第3観点の設備情報システムであって、前記関連情報は、前記既設空気清浄設備に対する追加設備、前記既設空気清浄設備のグレードアップ量、または、前記既設空気清浄設備の病原体除去ツールのグレードアップ量に関する情報である。この構成によれば、既設空気清浄設備に対して、追加設備、既設空気清浄設備のグレードアップ量、または、既設空気清浄設備の病原体除去ツールのグレードアップ量を導出できる。
【0009】
第5観点の設備情報システムは、第2観点~第4観点のいずれか1つの設備情報システムであって、前記第2入力情報は、前記対象空間を利用する利用者の数であり、前記制御部は、前記対象空間を利用する利用者の数に基づいて前記基準値を算出する。この構成によれば、対象空間を利用する利用者の数に基づいて基準値を簡単に算出できる。
【0010】
第6観点の設備情報システムは、第2観点~第5観点のいずれか1つの設備情報システムであって、前記第2入力情報は、前記対象空間を利用する利用者における感染者の想定数を含み、前記制御部は、感染者1人あたりに必要な病原体除去能力と前記感染者の前記想定数とに基づいて前記基準値を算出する。この構成によれば、感染者の想定数を反映した基準値を算出できる。
【0011】
第7観点の設備情報システムは、第6観点の設備情報システムであって、前記感染者1人あたりに必要な病原体除去能力は、WHO基準によって定められる値である。この構成によれば、病原体除去能力に関する基準値をWHO基準に準じた値に設定できる。
【0012】
第8観点の設備情報システムは、第5観点~第7観点のいずれか1つの設備情報システムであって、前記第2入力情報は、さらに利用者の感染予防度を含み、前記制御部は、前記感染予防度に応じて前記基準値を補正する。この構成によれば、病原体除去能力に関する基準値を利用者の感染予防度に応じた値に設定できる。
【0013】
第9観点の設備情報システムは、第5観点~第8観点のいずれか1つの設備情報システムであって、前記第2入力情報は、さらに病原体の危険度を含み、前記制御部は、前記危険度の分類に応じて、前記基準値を補正する。この構成によれば、病原体除去能力に関する基準値を病原体の危険度に応じた値で設定できる。
【0014】
第10観点の設備情報システムは、第2観点~第9観点のいずれか1つの設備情報システムであって、前記第1入力情報は、前記既設空気清浄設備の空気清浄能力としての処理風量を含み、前記制御部は、前記処理風量と換算情報とに基づいて前記既設空気清浄設備の前記現状病原体除去能力を算出し、前記換算情報は、前記既設空気清浄設備の空気清浄能力を前記病原体除去能力に換算する情報である。この構成によれば、現状病原体除去能力を精確に算出できる。
【0015】
第11観点の設備情報システムは、第10観点の設備情報システムであって、前記換算情報は、病原体除去効率であり、前記病原体除去効率は、空気清浄設備の病原体除去ツールに対して設定される値である。この構成によれば、病原体除去効率が空気清浄設備の病原体除去ツールに対する値であるため、現状病原体除去能力を精確に算出できる。
【0016】
第12観点の設備情報システムは、第11観点の設備情報システムであって、前記病原体除去効率は、病原体の種別毎に設定される。この構成によれば、病原体に対応した現状病原体除去能力を算出できる。
【0017】
第13観点の設備情報システムは、第2観点~第12観点のいずれか1つの設備情報システムであって、前記第1入力情報は、前記対象空間への外気導入量を含み、前記制御部は、前記対象空間への外気導入量に基づいて、前記現状病原体除去能力を算出する。この構成によれば、外気導入量が反映された現状病原体除去能力を算出できる。
【0018】
第14観点の設備情報システムは、第4観点または第11観点のいずれか1つの設備情報システムであって、前記病原体除去ツールは、フィルタ、UV装置、イオナイザー装置、除ウィルスの散布装置、または、ストリーマ装置を含む。この構成によれば、これらのツールについて、空気清浄能力に関する情報を提供できる。例えば、これらのツールについてのグレードアップ量を提供できる。
【0019】
課題を解決する第15観点の設備情報導出方法は、対象空間に設けられる空気清浄設備に関する関連情報を導出する設備情報導出方法であって、前記対象空間に設置された既設空気清浄設備の空気清浄能力に関する第1入力情報を取得する工程と、前記対象空間内の利用者の病原体感染に関する第2入力情報を取得する工程と、前記第1入力情報と前記第2入力情報とに基づいて、前記対象空間に設けられる設備の病原体除去能力が基準値を満たすように、前記既設空気清浄設備に対する前記空気清浄能力の関連情報を導出する工程と、を含む。この構成によれば、既設空気清浄設備について、対象空間に設けられる設備の病原体除去能力が基準値を満たすための情報を導出できる。
【0020】
課題を解決する第16観点の設備情報導出プログラムは、コンピュータに、対象空間に設けられる空気清浄設備に関する関連情報を導出させる、設備情報導出プログラムであって、前記コンピュータの入力部から入力される情報であって、前記対象空間に設置された既設空気清浄設備の空気清浄能力に関する第1入力情報を取得させるステップと、前記コンピュータの入力部から入力される情報であって、前記対象空間内の利用者の病原体感染に関する第2入力情報を取得させるステップと、前記第1入力情報と前記第2入力情報とに基づいて、前記対象空間に設けられる設備の病原体除去能力が基準値を満たすように、前記既設空気清浄設備に対する前記空気清浄能力の関連情報を導出させるステップと、を含む。この構成によれば、既設空気清浄設備について、対象空間に設けられる設備の病原体除去能力が基準値を満たすための情報を導出できる。
【0021】
第3観点に関連する第17観点の設備情報システムは、第1観点の設備情報システムであって、前記制御部は、空気清浄能力に関する設備情報と、前記第1入力情報と、前記第2入力情報と、を関係付ける設備関係情報を有し、前記制御部は、前記第1入力情報と、前記第2入力情報と、前記設備関係情報と、に基づいて、前記関連情報を導出する。この構成によれば、第1入力情報と第2入力情報と設備関係情報とに基づいて、既設空気清浄設備に対する関連情報を簡単に導出できる。
【0022】
第4観点に関連する第18観点の設備情報システムは、第1観点の設備情報システムであって、前記関連情報は、前記既設空気清浄設備に対する追加設備、前記既設空気清浄設備のグレードアップ量、または、前記既設空気清浄設備の病原体除去ツールのグレードアップ量に関する情報である。この構成によれば、既設空気清浄設備に対する追加設備、既設空気清浄設備のグレードアップ量、または、既設空気清浄設備の病原体除去ツールのグレードアップ量を導出できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】第1入力情報および第2入力情報を入力する入力画面の一例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1~
図4を参照して、設備情報システム10について説明する。
設備情報システム10は、対象空間Sに設けられる空気清浄設備2の病原体除去能力についての関連情報を出力する。対象空間Sは、空調に対象となる空間を示す。例えば、ビル全体を空調する場合、対象空間Sはビル内の空間である。地下街の一画を空調する場合、対象空間Sは一画全体である。建築物1の所定の部屋を空調する場合、対象空間Sは所定の部屋内の空間である。工場全体を空調する場合、対象空間Sは工場内の空間である。
【0025】
空気清浄設備2は、対象空間Sの空気を清浄にする設備およびグレードアップによって対象空間Sの空気を清浄にできる設備を含む。空気清浄設備2の例として、換気装置3、空気調和機4、および、空気清浄機5が挙げられる。換気装置3は、換気によって対象空間Sの空気を清浄にする。空気調和機4、および、空気清浄機5は、フィルタまたは空気清浄機能によって空気を清浄にする。
【0026】
図1は、対象空間Sを含む建築物1の一例を示す。この例では、対象空間Sは、ビル内の空間である。対象空間Sを構成する部屋には、空気清浄設備2として、換気装置3と空気調和機4が設置される。
【0027】
対象空間Sの空調のために設置される空気清浄設備2の仕様は、対象空間Sの広さ、対象空間Sにおける空気清浄設備2の使用目的、対象空間Sを構成する建築物1の断熱性、対象空間Sの地域に基づいて設定される。仕様は、空調機器の台数、空調機器の出力、および、空調機器の種類を含む。空調機器の例は、空気調和機4および空気清浄機5である。「対象空間Sにおける空気清浄設備2の使用目的」とは、ビルの場合ではオフィス作業における快適性、工場の場合では空気清浄設備2の冷却および作業者の快適性など、である。対象空間Sの地域として、寒冷地域、または、温暖地域が挙げられる。
【0028】
ところで、感染病の対策に関して、空気清浄設備2の仕様は十分に検討されていない場合がある。このような場合において、設備情報システム10は、既設空気清浄設備2Aに対して、既設空気清浄設備2Aの病原体除去能力についての関連情報を出力できる。関連情報の例として、既設の空気清浄設備2(以下、既設空気清浄設備2A)の病原体除去能力が対象空間Sに対して十分であるか否かの情報、および、対象空間Sに対して病原体除去能力が十分となるようにするための既設空気清浄設備2Aのグレードアップに関する情報、が挙げられる。以下、設備情報システム10について具体的に説明する。
【0029】
<設備情報システム>
設備情報システム10は、制御部11を有する。制御部11は、1つまたは複数のCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。制御部11は、(1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサ、(2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは(3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0030】
一例では、制御部11は、パーソナルコンピュータまたはタッチパネル型のコンピュータによって構成されてもよい。制御部11は、サーバ12内に設けられてもよい。制御部11は、ネットワークN上のサーバ12に設けられてもよい。制御部11は、入力部21から情報を受け付ける。制御部11は、表示部22に情報を出力する。例えば、制御部11がパーソナルコンピュータによって構成される場合、入力部21はキーボードであり、表示部22は、モニターである。制御部11がタッチパネル型のコンピュータによって構成される場合、入力部21および表示部22はタッチパネル部によって構成される。制御部11がネットワークN上のサーバ12に設けられている場合、入力部21は、ネットワークNに接続される端末20のキーボードであり、表示部22は端末20のモニターである。
【0031】
設備情報システム10は外部メモリ23を備えてもよい。外部メモリ23は、ネットワークN上に設けられてもよい。外部メモリ23は、制御部11がアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。例えば、外部メモリ23は、半導体記憶媒体、ハードディスク、磁気テープ、および、光ディスクを含む。
【0032】
図2は、設備情報システム10の一例を示す。設備情報システム10の制御部11は、サーバ12に設けられる。サーバ12は、ネットワークNに接続される。ネットワークNの一例はインターネットである。サーバ12は、ネットワークNに接続される端末20からアクセス可能に構成される。サーバ12は、外部メモリ23を備える。端末20は、コンピュータによって構成される。端末20は、入力部21と表示部22とを備える。
【0033】
制御部11は、入力部21から第1入力情報E1と第2入力情報E2とを受け付ける。制御部11は、第1入力情報E1と、第2入力情報E2とに基づいて、対象空間Sに設けられる設備の病原体除去能力が基準値を満たすように、既設空気清浄設備2Aに対する空気清浄能力の関連情報を導出する。
【0034】
図3は、入力部21に示される入力画面25の一例である。入力画面25には、第1入力情報E1を入力する第1部分25Aと、第2入力情報E2を入力する第2部分25Bとが設けられる。第1部分25Aには、処理風量の入力欄31、および、外気導入量の入力欄32が設けられる。第2部分25Bには、対象空間S内の利用者数の入力欄33、対象空間Sを利用する利用者における感染者の想定数の入力欄34、利用者の感染予防度の入力欄35、および、病原体の危険度の入力欄36が設けられる。第2部分25Bには、対象空間Sを利用する利用者における感染者の想定数の入力欄34に替えて、対象空間Sを利用する利用者における感染者割合の入力欄を設けてもよい。
【0035】
<第1入力情報>
第1入力情報E1は、対象空間Sに設置された既設空気清浄設備2Aの空気清浄能力に関する情報である。例えば、第1入力情報E1は、既設空気清浄設備2Aの空気清浄能力としての処理風量を含む。処理風量は、既設空気清浄設備2Aの空気清浄能力を示す仕様の1つである。処理風量は、空気調和機4または空気清浄機5の処理風量を示す。処理風量は、空気清浄設備2が単位時間あたりに処理できる空気量を示す。具体的には、空気清浄設備2がフィルタを有する場合、処理風量は、単位時間あたりにフィルタを通過する風量である。空気清浄設備2がUV装置を有する場合、処理風量は、単位時間あたりにUV装置を通過する風量である。処理風量は、空気清浄設備2が単位時間にあたりに吹き出す空気量として定義されてもよい。
【0036】
第1入力情報E1は、対象空間Sへの外気導入量を含んでもよい。外気導入量は、換気装置3が単位時間あたりに対象空間Sに導入できる空気量を示す。換気装置3は、換気装置3および換気装置3に準ずる装置を含む。換気装置3に準ずる装置は、換気を行うことができる装置である。換気装置3に準ずる装置は、ドアおよび窓を含む。ドアおよび窓の開閉によって換気が行われる。ドアおよび窓が多い対象空間Sは、ドアおよび窓が少ない空間に比べて、換気が行われ易い。このため、ドアおよび窓は換気装置3に準ずる装置に属する。
【0037】
<現状病原体除去能力の算出>
制御部11は、第1入力情報E1に基づいて対象空間Sにおける現状病原体除去能力を算出する。一例では、病原体除去能力は風量で表される。
【0038】
<現状病原体除去能力の算出(1)>
既設空気清浄設備2Aが空気調和機4または空気清浄機5を含む場合がある。この場合、制御部11は、既設空気清浄設備2Aに関する第1入力情報E1として処理風量を取得する。そして、制御部11は、処理風量と換算情報とに基づいて、既設空気清浄設備2Aの現状病原体除去能力(以下、第1現状病原体除去能力)を算出してもよい。換算情報は、既設空気清浄設備2Aの空気清浄能力を病原体除去能力に換算する情報である。一例では、既設空気清浄設備2Aの現状病原体除去能力は、処理風量と換算値との乗算によって算出される。換算値は、換算情報の一例である。
【0039】
現状病原体除去能力(第1現状病原体除去能力)=処理風量×換算値・・・(1)
【0040】
一例では、換算情報は病原体除去効率である。病原体除去効率は予め設定される。既設空気清浄設備2Aに病原体を除去する能力がない場合、既設空気清浄設備2Aの病原体除去効率は「0」である。既設空気清浄設備2Aに病原体を除去する能力がある場合、既設空気清浄設備2Aに病原体除去効率が設定される。
【0041】
病原体除去効率の設定の一例を説明する。既設空気清浄設備2Aが処理空気内の全ての病原体を除去または不活性化する場合、実質的に病原体が含まれない空気が既設空気清浄設備2Aから出される。この場合、空気清浄設備2は換気装置3と同じ機能を有する。このため、空気清浄設備2の病原体除去効率は「1」に設定される。病原体除去効率が「1」である空気清浄設備2の現状病原体除去能力は、空気清浄設備2の処理風量と等しい。
【0042】
既設空気清浄設備2Aが処理空気内の病原体の全数の50%の病原体を除去または不活性化する場合、病原体の濃度として実質的に50%分減った空気が既設空気清浄設備2Aから出される。この場合、一例では、空気清浄設備2の病原体除去効率は「0.5」に設定される。病原体除去効率が「0.5」である空気清浄設備2の現状病原体除去能力は、空気清浄設備2の処理風量の半量になる。
【0043】
既設空気清浄設備2Aが処理空気内の病原体の全数の30%の病原体を除去または不活性化する場合、病原体の濃度として実質的に30%分減った空気が既設空気清浄設備2Aから出される。この場合、一例では、空気清浄設備2の病原体除去効率は「0.3」に設定される。病原体除去効率が「0.3」である空気清浄設備2の現状病原体除去能力は、空気清浄設備2の処理風量の30%になる。
【0044】
病原体除去効率は、空気清浄設備2の病原体除去ツールに対して設定される値である。例えば、病原体除去ツールは、フィルタ、UV装置、イオナイザー装置、除ウィルスの散布装置、および、ストリーマ装置を含む。病原体除去ツール毎との病原体除去効率は、制御部11のメモリに記憶される。病原体除去ツールごとの病原体除去効率は、外部メモリ23に記憶されてもよい。
【0045】
病原体除去効率は、病原体の種別毎に設定されてもよい。例えば、病原体除去ツールそれぞれに病原体の種別毎に病原体除去効率が設定される。UV装置の例では、インフルエンザウィルスおよびコロナウイルスそれぞれの病原体除去効率が設定される。病原体除去ツールそれぞれについて病原体の種別毎の病原体除去効率は、制御部11のメモリに記憶される。病原体除去ツールごとの病原体除去効率は、外部メモリ23に記憶されてもよい。
【0046】
<現状病原体除去能力の算出(2)>
既設空気清浄設備2Aが換気装置3を含む場合がある。この場合、制御部11は、既設空気清浄設備2Aに関する第1入力情報E1として外気導入量を取得する。一例では、換気装置3の外気導入量は、換気装置3のファンの最大風量によって設定される。換気装置3に準ずる装置としてのドアまたは窓の外気導入量は、開閉頻度およびドアまたは窓の大きさに基づいて予め設定される。そして、制御部11は、対象空間Sへの外気導入量に基づいて、現状病原体除去能力(以下、第2現状病原体除去能力)を算出する。
【0047】
現状病原体除去能力(第2現状病原体除去能力)=外気導入量・・・(2)
【0048】
<現状病原体除去能力の算出(3)>
既設空気清浄設備2Aが、空気調和機4および空気清浄機5の一方と、換気装置3とを含む場合がある。また、既設空気清浄設備2Aが、空気調和機4、空気清浄機5、および、換気装置3を含む場合がある。この場合、制御部11は、第1現状病原体除去能力と、第2現状病原体除去能力とに基づいて、現状病原体除去能力を算出する。一例では、制御部11は、第1現状病原体除去能力と第2現状病原体除去能力との和を現状病原体除去能力として算出する。
【0049】
現状病原体除去能力=第1現状病原体除去能力+第2現状病原体除去能力・・・(3)
【0050】
<第2入力情報>
第2入力情報E2は、対象空間Sにおける感染リスクを見積もるための情報である。感染リスクは、感染の広がり易さと、感染後の重症化し易さと、を含む。
【0051】
具体的には、第2入力情報E2は、対象空間S内の利用者の病原体感染に関する情報である。例えば、第2入力情報E2は、対象空間Sを利用する利用者の数である。人に感染する病原体は、人を介して感染を拡大させる。対象空間Sを利用する利用者の数の大きいほど、対象空間S内で感染するリスクが高くなる。このような理由から、対象空間Sを利用する利用者の数は、対象空間Sにおける病原体の量を見積もるための情報となる。
【0052】
第2入力情報E2は、対象空間Sを利用する利用者における感染者割合を含むことが好ましい。感染者割合は、対象空間Sを有す建築物1の地域における感染者割合であってもよい。この場合、制御部11は、対象空間Sを利用する利用者における感染者割合として、web上のニュース源から自動的にその地域の感染者割合を取得してもよい。
【0053】
第2入力情報E2は、対象空間Sを利用する利用者における感染者の想定数を含んでもよい。第2入力情報E2は、人口当たりの感染者数を含んでもよい。制御部11は、人口当たりの感染者数と利用者の数とに基づいて想定数を算出してもよい。制御部11は、web上のニュース源から自動的に第2入力情報E2として人口当たりの感染者数を取得してもよい。
【0054】
第2入力情報E2は、利用者の感染予防度を含んでもよい。例えば、感染予防度は、ワクチン接種率、または、マスク着用率である。感染予防度によって、対象空間Sにおける感染リスクが低減する。このため、感染予防度は対象空間Sにおける感染リスクを見積もるための情報になる。
【0055】
第2入力情報E2は、さらに病原体の危険度を含む。危険度は、感染後の重症化し易さを示す。病原体によって危険度は異なる。このため、危険度は、対象空間Sにおける感染リスクを見積もるための情報になる。
【0056】
<基準値の算出>
制御部11は、基準値を算出する。感染除去能力を基準値と比較できるようにするため、基準値は風量で表される。基準値は、対象空間Sの空気清浄設備2の病原体除去能力が十分であるか否かを判定するための基準となる値である。基準値は、対象空間S内の利用者の数、対象空間Sを利用する利用者における感染者の想定数、利用者の感染予防度、病原体の危険度によって、変更され得る。
【0057】
制御部11は、第2入力情報E2に基づいて基準値を算出する。
第1例では、制御部11は、対象空間Sを利用する利用者の数(以下、利用者数)に基づいて基準値を算出する。具体的には、制御部11は、感染者1人あたりに必要な病原体除去能力と、利用者数と、感染者割合とに基づいて基準値を算出する。一例では、制御部11は、感染者1人あたりに必要な病原体除去能力と利用者数と感染者割合との乗算によって基準値を算出する。
【0058】
基準値=感染者1人あたりに必要な病原体除去能力×利用者数×感染者割合・・(4)
【0059】
感染者1人あたりに必要な病原体除去能力は風量で表される。感染者1人あたりに必要な病原体除去能力は、WHO基準によって定められる値である。WHOは、世界保健機関の略称である。例えば、感染者1人あたりに必要な病原体除去能力は、WHOが医療施設に対して推奨する基準に基づいて設定される。WHOが医療施設に対して推奨する基準は、2009年発行の「Natural Ventilation for Infection Control in Health-Care Settings」というガイドラインに示されている。感染者1人あたりに必要な病原体除去能力は、WHOが医療施設に対して推奨する基準と異なる値であってもよい。
【0060】
第2例では、制御部11は、感染者1人あたりに必要な病原体除去能力と感染者の想定数とに基づいて基準値を算出する。一例では、制御部11は、感染者1人あたりに必要な病原体除去能力と感染者の想定数との乗算によって基準値を算出する。
【0061】
基準値=感染者1人あたりに必要な病原体除去能力×感染者の想定数・・・(5)
【0062】
第3例では、制御部11は、感染予防度に応じて、上記第1例または上記第2例で算出された基準値を補正する。感染予防度が高い場合、感染が広がり難い。このため制御部11は、感染予防度が高い場合、基準を緩和する。具体的には、制御部11は、感染予防度が高いほど、第1例または第2例で算出された基準値が低くなるように、基準値を補正する。一例では、制御部11は、感染予防度に対応する第1係数を有する。第1係数は、感染予防度が高いほど小さい値を有する。第1係数は、0以上1以下の値をとる。制御部11は、第1係数によって基準値を補正する。制御部11は、第1例または上記第2例で算出された基準値と第1係数との乗算によって、新たな基準値を導出する。次の(6)式は、上記(4)式に補正項を加えた式である。次の(7)式は、上記(5)式に補正項を加えた式である。
【0063】
基準値=感染者1人あたりに必要な病原体除去能力×利用者数×感染者割合×第1係数・・・(6)
【0064】
基準値=感染者1人あたりに必要な病原体除去能力×感染者の想定数×第1係数・・・(7)
【0065】
第4例では、制御部11は、危険度の分類に応じて、上記第1例、第2例、または第3例で算出された基準値を補正する。危険度が高い場合、重症化リスクが高くなる。このため制御部11は、危険度が高い場合、基準が厳しくする。具体的には、制御部11は、危険度が高いほど、第1例、第2例または第3例で算出された基準値が高くなるように、基準値を補正する。一例では、制御部11は、危険度に対応する第2係数を有する。第2係数は、危険度が高いほど大きい値を有する。第2係数は、0以上の値をとる。制御部11は、第2係数によって基準値を補正する。制御部11は、第1例、第2例または第3例で算出された基準値と第2係数との乗算によって、新たな基準値を導出する。次の(8)式は、上記(4)式に補正項を加えた式である。次の(9)式は、上記(5)式に補正項を加えた式である。次の(10)式は、上記(6)式に補正項を加えた式である。次の(11)式は、上記(7)式に補正項を加えた式である。
【0066】
基準値=感染者1人あたりに必要な病原体除去能力×利用者数×感染者割合×第2係数・・・(8)
【0067】
基準値=感染者1人あたりに必要な病原体除去能力×感染者の想定数×第2係数・・・(9)
【0068】
基準値=感染者1人あたりに必要な病原体除去能力×利用者数×感染者割合×第1係数×第2係数・・・(10)
【0069】
基準値=感染者1人あたりに必要な病原体除去能力×感染者の想定数×第1係数×第2係数・・・(11)
【0070】
<関連情報の導出>
制御部11は、関連情報を導出する。上述のとおり、制御部11は、第1入力情報E1と、第2入力情報E2とに基づいて、対象空間Sに設けられる設備の病原体除去能力が基準値を満たすように、既設空気清浄設備2Aに対する空気清浄能力の関連情報を導出する。「対象空間Sに設けられる設備の病原体除去能力が基準値を満たすように、既設空気清浄設備2Aに対する空気清浄能力の関連情報を導出する」とは、次を意味する。既設空気清浄設備2Aが基準値を満たさない場合に、基準に対する病原体除去能力分の設備または設備グレードアップに関する情報を関連情報(追加設備情報)として導出することを意味する。
【0071】
関連情報は、上述のとおり、対象空間Sに設けられる空気清浄設備2の病原体除去能力についての情報である。
【0072】
制御部11は、現状病原体除去能力と基準値とに基づいて関連情報を導出する。
第1例では、制御部11は、現状病原体除去能力と基準値との差分(過不足量)に基づいて、病原体除去能力が不足している場合には、病原体除去能力の不足量に応じた追加設備情報を関連情報として出力する。追加設備情報は、病原体除去能力の不足量を満たすことができる追加設備に関する情報である。この場合、追加設備情報としての関連情報は、既設空気清浄設備2Aに対する追加設備、既設空気清浄設備2Aのグレードアップ量、または、既設空気清浄設備2Aの病原体除去ツールのグレードアップ量に関する情報である。
【0073】
一例では、制御部11は、過不足量と、追加設備情報とを対応づけるテーブルを有する。過不足量の一区分には、複数の追加設備情報が対応づけられてもよい。例えば、X1以上X2以下の不足量は、第1グレードの空気清浄設備2と対応付けられるとともに、第1グレードの換気装置3と対応付けられる。
【0074】
第2例では、制御部11は、空気清浄能力に関する設備情報と、第1入力情報E1と、第2入力情報E2と、を関係付ける設備関係情報を有する。制御部11は、第1入力情報E1と、第2入力情報E2と、設備関係情報と、に基づいて、関連情報を導出する。
【0075】
図4を参照して、設備関係情報のデータ構造を説明する。設備関係情報は、予め作成される。設備関係情報の一例は、3次元データベースによって構成される。第1軸には、第1入力情報E1が第1パラメータとして配列される。第1パラメータは、空気清浄設備2に対応する第1入力情報E1を値として取る。例えば、第1パラメータは、処理風量と外気導入量とを要素とする配列である。この配列は、R1(処理風量A,外気導入量B)と表される。
【0076】
第2軸には、第2入力情報E2が第2パラメータとして配列される。例えば、第2パラメータは、対象空間Sを利用する利用者の数と、感染者の想定数と、感染予防度と、危険度と、を要素とする配列である。この配列は、R2(対象空間Sを利用する利用者の数N、感染者の想定数M、感染予防度P、危険度Q)と表される。
【0077】
第1パラメータと第2パラメータとの組それぞれに1または複数の追加設備情報が対応付けられる。追加設備情報は、既設空気清浄設備2Aに対する追加設備、既設空気清浄設備2Aのグレードアップ量、または、既設空気清浄設備2Aの病原体除去ツールのグレードアップ量に関する情報である。この配列は、R3(追加設備X、既設空気清浄設備2Aのグレードアップ量Y、既設空気清浄設備2Aの病原体除去ツールのグレードアップ量Z)と表される。
図4では、第1パラメータと第2パラメータとの組に複数の追加設備情報が対応付けられる場合の例が示されている。複数の追加設備情報は、第1パラメータと第2パラメータとを有する既設空気清浄設備2Aに対する複数の選択肢としてユーザに示される。
【0078】
3次元データベースは、第1パラメータと第2パラメータとから追加設備情報が特定されるように構築される。追加設備情報は、第1パラメータと第2パラメータとを有する既設空気清浄設備2Aに追加される設備に関する情報である。追加設備情報は、追加設備情報に係る設備が既設空気清浄設備2Aに追加された場合において追加後の空気清浄設備2の病原体除去能力が基準値を満たすように、設定される。
【0079】
設備関係情報は、機械学習によって形成される学習モデルであってもよい。学習モデルは、ディーブラーニングによって形成できる。学習モデルを形成する際に用いられる入力は、第1入力情報E1および第2入力情報E2である。学習モデルを形成する際に用いられる教師データは、第1入力情報E1および第2入力情報E2と対応付けられた追加設備情報である。追加設備情報は、対象空間Sに設けられる空気清浄設備2の病原体除去能力が基準値を満たすように、第1入力情報E1および第2入力情報E2に対して予め設定される。
【0080】
<設備情報導出方法>
設備情報導出方法は、対象空間Sに設けられる空気清浄設備2に関する関連情報を導出する設備情報導出方法である。設備情報導出方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程とを含む。
【0081】
第1工程では、制御部11は、対象空間Sに設置された既設空気清浄設備2Aの空気清浄能力に関する第1入力情報E1を取得する。
【0082】
第2工程では、制御部11は、対象空間S内の利用者の病原体感染に関する第2入力情報E2を取得する。第2工程は、第1工程の前に行われてもよく、第1工程の後に行われてもよい。
【0083】
第3工程では、制御部11は、第1入力情報E1と第2入力情報E2とに基づいて、対象空間Sに設けられる設備の病原体除去能力が基準値を満たすように、既設空気清浄設備2Aに対する空気清浄能力の関連情報を導出する。第3工程における関連情報の導出方法は、上記の<関連情報の導出>の欄に記載の方法と同じである。
【0084】
<設備情報導出プログラム>
設備情報導出プログラムは、コンピュータに、対象空間Sに設けられる空気清浄設備2に関する関連情報を導出させる。設備情報導出プログラムは、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップとを含む。
【0085】
第1ステップは、対象空間Sに設置された既設空気清浄設備2Aの空気清浄能力に関する第1入力情報E1を取得させる。第1入力情報E1は、コンピュータの入力部21から入力される情報である。
【0086】
第2ステップは、対象空間S内の利用者の病原体感染に関する第2入力情報E2を取得させる。第2入力情報E2は、コンピュータの入力部21から入力される情報である。
【0087】
第3ステップは、第1入力情報E1と第2入力情報E2とに基づいて、対象空間Sに設けられる設備の病原体除去能力が基準値を満たすように、既設空気清浄設備2Aに対する空気清浄能力の関連情報を導出させる。第3ステップにおける関連情報の導出方法は、上記の<関連情報の導出>の欄に記載の方法と同じである。
【0088】
<作用>
本実施形態の作用を説明する。
設備情報システム10において、制御部11は、第1入力情報E1と、第2入力情報E2とを取得する。第1入力情報E1は、対象空間Sに設置された既設空気清浄設備2Aの空気清浄能力に関する情報である。第2入力情報E2は、対象空間S内の利用者の病原体感染に関する情報である。第2入力情報E2は、対象空間Sにおいて病原体感染を抑制するために必要な空気清浄能力に関連する情報である。したがって、第1入力情報E1と第2入力情報E2とから、既設空気清浄設備2Aについて病原体感染を抑制するために必要な情報が得られる。そして、制御部11は、第1入力情報E1と第2入力情報E2とに基づいて、対象空間Sに設けられる設備の病原体除去能力が基準値を満たすように、既設空気清浄設備2Aに対する空気清浄能力の関連情報を導出する。これによって、既設空気清浄設備2Aについて、病原体除去能力が基準値を満たすようになるための情報をユーザに提供できる。
【0089】
<効果>
本実施形態の効果を説明する。
(1)設備情報システム10において、制御部11は、第1入力情報E1と、第2入力情報E2とに基づいて、対象空間Sに設けられる設備の病原体除去能力が基準値を満たすように、既設空気清浄設備2Aに対する空気清浄能力の関連情報を導出する。第1入力情報E1は、対象空間Sに設置された既設空気清浄設備2Aの空気清浄能力に関する情報である。第2入力情報E2は、対象空間S内の利用者の病原体感染に関する情報である。この構成によれば、既設空気清浄設備2Aについて、病原体除去能力が基準値を満たすようになるための情報を導出できる。
【0090】
(2)制御部11は、第1入力情報E1に基づいて対象空間Sにおける現状病原体除去能力を算出する。制御部11は、第2入力情報E2に基づいて基準値を算出する。制御部11は、現状病原体除去能力と基準値とに基づいて関連情報を導出する。この構成によれば、既設空気清浄設備2Aについて、空気清浄能力の関連情報を簡単に導出できる。
【0091】
(3)制御部11は、空気清浄能力に関する設備情報と、第1入力情報E1と、第2入力情報E2と、を関係付ける設備関係情報を有する(
図4参照)。制御部11は、第1入力情報E1と、第2入力情報E2と、設備関係情報と、に基づいて、関連情報を導出する。この構成によれば、第1入力情報E1と第2入力情報E2と設備関係情報とに基づいて、既設空気清浄設備2Aに対する関連情報を簡単に導出できる。
【0092】
(4)関連情報は、既設空気清浄設備2Aに対する追加設備、既設空気清浄設備2Aのグレードアップ量、または、既設空気清浄設備2Aの病原体除去ツールのグレードアップ量に関する情報である。この構成によれば、既設空気清浄設備2Aに対して、追加設備、既設空気清浄設備2Aのグレードアップ量、または、既設空気清浄設備2Aの病原体除去ツールのグレードアップ量を導出できる。
【0093】
(5)第2入力情報E2は、対象空間Sを利用する利用者の数である。制御部11は、対象空間Sを利用する利用者の数に基づいて基準値を算出する。この構成によれば、対象空間Sを利用する利用者の数に基づいて基準値を簡単に算出できる。
【0094】
(6)第2入力情報E2は、対象空間Sを利用する利用者における感染者の想定数を含む。制御部11は、感染者1人あたりに必要な病原体除去能力と感染者の想定数とに基づいて基準値を算出する。この構成によれば、感染者の想定数を反映した基準値を算出できる。
【0095】
(7)一例では、感染者1人あたりに必要な病原体除去能力は、WHO基準によって定められる値である。この構成によれば、病原体除去能力に関する基準値をWHO基準に準じた値に設定できる。
【0096】
(8)第2入力情報E2は、さらに利用者の感染予防度を含む。制御部11は、感染予防度に応じて基準値を補正する。この構成によれば、病原体除去能力に関する基準値を利用者の感染予防度に応じた値に設定できる。
【0097】
(9)第2入力情報E2は、さらに病原体の危険度を含む。制御部11は、危険度の分類に応じて、基準値を補正する。この構成によれば、病原体除去能力に関する基準値を病原体の危険度に応じた値で設定できる。
【0098】
(10)第1入力情報E1は、既設空気清浄設備2Aの空気清浄能力としての処理風量を含む。制御部11は、処理風量と換算情報とに基づいて既設空気清浄設備2Aの現状病原体除去能力を算出してもよい。この構成によれば、現状病原体除去能力を精確に算出できる。
【0099】
(11)一例では、換算情報は、病原体除去効率である。病原体除去効率は、空気清浄設備2の病原体除去ツールに対して設定される値である。この構成によれば、病原体除去効率が空気清浄設備2の病原体除去ツールに対する値であるため、現状病原体除去能力を精確に算出できる。
【0100】
(12)病原体除去効率は、病原体の種別毎に設定されてもよい。この構成によれば、病原体に対応した現状病原体除去能力を算出できる。
【0101】
(13)第1入力情報E1は、対象空間Sへの外気導入量を含む。制御部11は、対象空間Sへの外気導入量に基づいて、現状病原体除去能力を算出してもよい。この構成によれば、外気導入量が反映された現状病原体除去能力を算出できる。
【0102】
(14)病原体除去ツールは、フィルタ、UV装置、イオナイザー装置、除ウィルスの散布装置、または、ストリーマ装置を含む。この構成によれば、これらのツールについて、空気清浄能力に関する情報を提供できる。
【0103】
(変形例)
本開示の設備情報システム10は、上記各実施の形態以外に、例えば以下に示される変形例、及び相互に矛盾しない少なくとも二つの変形例を組み合わせた形態としてもよい。
【0104】
・設備情報システムにおける基準値の設定例は、実施形態の例に限られない。基準値は、ユーザが指定する値に設定されてもよい。制御部11は、基準値として複数の値を有してもよい。この場合、基準値としての複数の値は、ユーザによって選択される。これによって、複数の基準それぞれにおいて、病原体除去能力についての関連情報を得ることができる。
【0105】
・制御部11は、対象の設備の病原体除去能力が基準値を満たすようになるための関連情報を導出するとともに、他の情報を算出してもよい。他の情報として、関連情報に係る追加設備の費用、および、設備の施工費が挙げられる。また、他の情報として、関連情報に係る追加設備よりもグレードが低い設備の情報、および、関連情報に係る追加設備よりもグレード高い設備の情報が挙げられる。たま、他の情報として、将来における、対象の設備の病原体除去能力の低下予測情報が挙げられる。
【0106】
・以上、設備情報システム10、設備情報導出方法、および、設備情報導出プログラムについて実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された設備情報システム10、設備情報導出方法、および、設備情報導出プログラムの趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0107】
E1…第1入力情報、E2…第2入力情報、S…対象空間、2…空気清浄設備、2A…既設空気清浄設備、10…設備情報システム、11…制御部、21…入力部。