(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176526
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】車両用導光体及び車両用灯具ユニット
(51)【国際特許分類】
F21S 41/24 20180101AFI20231206BHJP
F21S 41/147 20180101ALI20231206BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20231206BHJP
【FI】
F21S41/24
F21S41/147
F21W102:155
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088853
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野間 慶
(57)【要約】
【課題】配光パターンを適切な照度で照射する。
【解決手段】車両用導光体は、光源からの光を入射する入射面と、入射面から入射した光を内面反射する第1反射面と、第1反射面で反射される光の少なくとも一部を焦点及び焦点の近傍を通過するように前方に向けて内面反射する第2反射面と、第2反射面で反射された光の一部を遮光する遮光部と、第2反射面の前側端部と遮光部との間に位置し、第2反射面で内面反射された光の一部を前方に向けて内面反射する内面反射面と、第2反射面で内面反射される光を出射する出射面と、内面反射面のうち遮光部の後方であって第2反射面の焦点よりも左右の一方に寄った部分に設けられ、第2反射面で反射される光の一部の光を内面反射又は屈折させることで出射面とは異なる部分から外部に出射させる調整部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を入射する入射面と、
前記入射面から入射した前記光を内面反射する第1反射面と、
前記第1反射面で反射される前記光の少なくとも一部を焦点及び前記焦点の近傍を通過するように前方に向けて内面反射する第2反射面と、
前記第2反射面で反射された前記光の一部を遮光する遮光部と、
前記第2反射面の前側端部と前記遮光部との間に位置し、前記第2反射面で内面反射された前記光の一部を前方に向けて内面反射する内面反射面と、
前記第2反射面で内面反射される光を出射する出射面と、
前記内面反射面のうち前記遮光部の後方であって前記第2反射面の前記焦点よりも左右の一方に寄った部分に設けられ、前記第2反射面で反射される光の一部の光を内面反射又は屈折させることで前記出射面とは異なる部分から外部に出射させる調整部と
を備える車両用導光体。
【請求項2】
上記の車両用導光体において、前記調整部は、前記内面反射面から外部に突出した形状であり、前後方向の前側には前記第2反射面で反射される光の一部を前記出射面とは異なる部分に向けて内面反射するように後方にかけて下方に傾斜する傾斜面を有し、前後方向の後側には前記傾斜面の後側端部から上方に折り返して前記内面反射面に接続される折り返し面を有する。
請求項1に記載の車両用導光体。
【請求項3】
前記折り返し面は、前記傾斜面に比べて上下方向に立った状態で設けられる
請求項2に記載の車両用導光体。
【請求項4】
前記調整部は、左右方向の中央部から両側に向けて突出量が徐々に小さくなるように形成される
請求項2に記載の車両用導光体。
【請求項5】
前記内面反射面は、前記調整部の後方に当該内面反射面から内側に凹んだ凹部を有する
請求項1に記載の車両用導光体。
【請求項6】
前記調整部は、前記内面反射面から内側に凹んだ形状であり、前後方向の後側に前記第2反射面で反射される光の一部を外部に出射する屈折面を有し、前後方向の前側に前記屈折面から出射される光を全反射する全反射面を有する
請求項1に記載の車両用導光体。
【請求項7】
前記調整部は、前記焦点から左右方向に離れるほど前記遮光部から前後方向に離れるように形成される
請求項6に記載の車両用導光体。
【請求項8】
前記調整部は、左右方向において前記焦点に近づくにつれて凹み量が小さくなるように形成される
請求項6に記載の車両用導光体。
【請求項9】
光源と、
前記光源からの光を導光して出射する請求項1に記載の車両用導光体であり、車両前方に集光パターンを照射する集光用導光体と、
前記光源からの光を導光して前記集光パターンに一部が重なるように車両前方に拡散パターンを出射する拡散用導光体と
を備える車両用灯具ユニット。
【請求項10】
前記調整部は、前記内面反射面から外部に突出した形状であり、前後方向の前側には前記第2反射面で反射される光の一部を前記出射面とは異なる部分に向けて内面反射するように後方にかけて下方に傾斜する傾斜面を有し、前後方向の後側には前記傾斜面の後側端部から上方に折り返して前記内面反射面に接続される折り返し面を有し、
前記拡散用導光体は、前記集光パターンのうち前記調整部による調整部分に前記拡散パターンが重ならないように形成される
請求項9に記載の車両用灯具ユニット。
【請求項11】
前記調整部は、前記内面反射面から内側に凹んだ形状であり、前後方向の後側に前記第2反射面で反射される光の一部を外部に出射する屈折面を有し、前後方向の前側に前記屈折面から出射される光を全反射する全反射面を有し、
前記拡散用導光体は、前記集光パターンのうち前記調整部による調整部分に前記拡散パターンが重なるように形成される
請求項9に記載の車両用灯具ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用導光体及び車両用灯具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
リフレクタ、シェード、投影レンズ等のそれぞれに対応する機能を1つの車両用導光体に集約させた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。つまり、このような車両用導光体は、光源からの光を入射する入射面と、入射した光を内面反射する内面反射面(リフレクタに対応)と、内面反射された光の一部を遮光する遮光部(シェードに対応)と、内面反射されて遮光部を通過する光を出射して車両前方に配光パターンを照射する出射面(投影レンズに対応)とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような車両用導光体では、車両前方に配光パターンを適切な照度で照射することが求められる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、車両前方に配光パターンを適切な照度で照射すること可能な車両用導光体及び車両用灯具ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用導光体は、光源からの光を入射する入射面と、前記入射面から入射した前記光を内面反射する第1反射面と、前記第1反射面で反射される前記光の少なくとも一部を焦点及び前記焦点の近傍を通過するように前方に向けて内面反射する第2反射面と、前記第2反射面で反射された前記光の一部を遮光する遮光部と、前記第2反射面の前側端部と前記遮光部との間に位置し、前記第2反射面で内面反射された前記光の一部を前方に向けて内面反射する内面反射面と、前記第2反射面で内面反射される光を出射する出射面と、前記内面反射面のうち前記遮光部の後方であって前記第2反射面の前記焦点よりも左右の一方に寄った部分に設けられ、前記第2反射面で反射される光の一部の光を内面反射又は屈折させることで前記出射面とは異なる部分から外部に出射させる調整部とを備える。
【0007】
上記の車両用導光体において、前記調整部は、前記内面反射面から外部に突出した形状であり、前後方向の前側には前記第2反射面で反射される光の一部を前記出射面とは異なる部分に向けて内面反射するように後方にかけて下方に傾斜する傾斜面を有し、前後方向の後側には前記傾斜面の後側端部から上方に折り返して前記内面反射面に接続される折り返し面を有する。
【0008】
上記の車両用導光体において、前記折り返し面は、前記傾斜面に比べて上下方向に立った状態で設けられる。
【0009】
上記の車両用導光体において、前記調整部は、左右方向の中央部から両側に向けて突出量が徐々に小さくなるように形成される。
【0010】
上記の車両用導光体において、前記内面反射面は、前記調整部の後方に当該内面反射面から内側に凹んだ凹部を有する。
【0011】
上記の車両用導光体において、前記調整部は、前記内面反射面から内側に凹んだ形状であり、前後方向の後側に前記第2反射面で反射される光の一部を外部に出射する屈折面を有し、前後方向の前側に前記屈折面から出射される光を全反射する全反射面を有する。
【0012】
上記の車両用導光体において、前記調整部は、前記焦点から左右方向に離れるほど前記遮光部から前後方向に離れるように形成される。
【0013】
上記の車両用導光体において、前記調整部は、左右方向において前記焦点に近づくにつれて凹み量が小さくなるように形成される。
【0014】
本発明に係る車両用灯具ユニットは、光源と、前記光源からの光を導光して出射する、上記の車両用導光体であり車両前方に集光パターンを照射する集光用導光体と、前記光源からの光を導光して前記集光パターンに一部が重なるように車両前方に拡散パターンを出射する拡散用導光体とを備える。
【0015】
上記の車両用灯具ユニットにおいて、前記調整部は、前記内面反射面から外部に突出した形状であり、前後方向の前側には前記第2反射面で反射される光の一部を前記出射面とは異なる部分に向けて内面反射するように後方にかけて下方に傾斜する傾斜面を有し、前後方向の後側には前記傾斜面の後側端部から上方に折り返して前記内面反射面に接続される折り返し面を有し、前記拡散用導光体は、前記集光パターンのうち前記調整部による調整部分に前記拡散パターンが重ならないように形成される。
【0016】
上記の車両用灯具ユニットにおいて、前記調整部は、前記内面反射面から内側に凹んだ形状であり、前後方向の後側に前記第2反射面で反射される光の一部を外部に出射する屈折面を有し、前後方向の前側に前記屈折面から出射される光を全反射する全反射面を有し、前記拡散用導光体は、前記集光パターンのうち前記調整部による調整部分に前記拡散パターンが重なるように形成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車両前方に配光パターンを適切な照度で照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る車両用灯具の一例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。
【
図5】
図5は、集光用導光体によって導光される光路の例を示す図である。
【
図6】
図6は、拡散用導光体によって導光される光路の例を示す図である。
【
図7】
図7は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される集光パターンの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される拡散パターンの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される合成パターンの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る車両用灯具ユニットの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る車両用導光体の一例を示す平面図である。
【
図14】
図14は、集光用導光体によって導光される光路の例を示す図である。
【
図15】
図15は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される集光パターンの一例を示す図である。
【
図16】
図16は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される拡散パターンの一例を示す図である。
【
図17】
図17は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される合成パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る車両用導光体及び車両用灯具ユニットの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。以下の説明において、前後、上下、左右の各方向は、車両用前照灯が車両に搭載された車両搭載状態における方向であって、運転席から車両の進行方向を見た場合における方向を示す。なお、本実施形態では、上下方向は鉛直方向に平行であり、左右方向は水平方向であるとする。
【0020】
図1は、本実施形態に係る車両用灯具100の一例を示す平面図である。車両用灯具100は、後述するロービームパターンP1(
図9参照)を車両前方に照射可能である。車両用灯具100は、光源10と、車両用導光体20とを備えている。なお、車両用灯具100は、光源、リフレクタ、シェード、投影レンズ等を有する他のユニットをさらに備える構成であってもよい。以下、本実施形態では、左側通行の道路を走行する車両に搭載する車両用灯具100の構成を例に挙げて説明する。
【0021】
[光源]
光源10は、本実施形態において、例えばLEDやOLED(有機EL)などの半導体型光源、レーザ光源等が用いられる。発光面11は、後述の車両用導光体20の入射面21に対向して配置される。発光面11が車両用導光体20に向けられた状態で配置される。本実施形態において、光源10は、左右方向に複数、例えば4つ配置される。なお、光源10の個数は、4つに限定されず、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0022】
[車両用導光体]
車両用導光体20は、光源10からの光を導光して車両搭載状態における前方に出射する。本実施形態に係る車両用導光体20は、例えば従来のプロジェクタ型の車両用前照灯におけるリフレクタ、シェード、投影レンズ等のそれぞれに対応する機能を集約させた構成である。車両用導光体20は、集光用導光体20A及び拡散用導光体20Bを含む。以下、車両用導光体20の説明において、集光用導光体20Aと拡散用導光体20Bとを区別して説明する場合がある。
【0023】
図2は、
図1におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。
図2(A)は集光用導光体20Aの構成、
図2(B)は拡散用導光体20Bの構成を示している。
図1及び
図2に示すように、車両用導光体20は、入射面21と、第1反射面22と、第2反射面23と、遮光部24と、内面反射面25と、出射面26とを備える。
【0024】
[入射面]
入射面21は、複数、例えば光源10毎に設けられる。なお、入射面21は、光源10とは1対1に対応しない位置に設けられてもよい。例えば、1つの光源10に対して、入射面21が複数設けられる構成であってもよい。複数の入射面21は、車両搭載状態における左右方向に並んで配置される。入射面21は、例えば円錐台状に形成される。本実施形態では、例えば4つの入射面21が配置される。なお、左右方向の中央側に配置される入射面21の径よりも、左右方向の外側に配置される入射面21の径の方が小さくてもよい。本実施形態では、左右方向の中央側の2つの入射面21の径よりも、左右方向の外側に配置される2つの入射面21の径の方が小さい。
【0025】
本実施形態において、車両用導光体20のうち集光用導光体20Aには、左右方向の中央側に配置される2つの入射面21に光源10からの光を入射させる。また、拡散用導光体20Bには、左右方向の外側に配置される2つの入射面21に光を入射させる。
【0026】
各入射面21は、
図2に示すように、第1面21a及び第2面21bと、を有する。第1面21a及び第2面21bは、光源10からの光が入射する。第1面21aは、発光面11に対向する。第1面21aは、例えば光源10側に突出する凸面であるが、平面であってもよい。第2面21bは、光源10の側方に配置され、光源10の発光面11及び第1面21aを囲うように円筒面状に配置される。
【0027】
[第1反射面]
第1反射面22は、入射面21から入射した光を内面反射する。第1反射面22は、入射面21の第2面21bを囲うように配置され、当該第2面21bから入射した光を第2反射面23に向けて反射する。本実施形態において、第1反射面22は、入射面21に対応して設けられる。第1反射面22は、車両搭載状態における左右方向に複数並んで配置される。複数の第1反射面22は、集光パターン用反射面と、拡散パターン用反射面とを含む。例えば、左右方向の中央側に配置される2つの第1反射面22を集光パターン用反射面とし、左右方向の両側に配置される2つの第1反射面22を拡散パターン用反射面とすることができる。
【0028】
第1反射面22は、第1後方領域22aと、第1前方領域22bとを有する。第1後方領域22aは、光源10に対して後方に配置される。本実施形態において、第1後方領域22aは、例えば、光源10の光軸AXに対して前後方向の後方に配置される。第1前方領域22bは、光源10に対して前方に配置される。本実施形態において、第1前方領域22bは、例えば、光軸AXに対して前方に配置される。
【0029】
[第2反射面]
第2反射面23は、回転放物面を基調とする形状を有する。第2反射面23の一部は、当該回転放物面の焦点に一致又はほぼ一致する焦点Pを有する。焦点Pは、後述する出射面26の焦点の近傍の位置に配置される。第2反射面23は、第1反射面22からの光を焦点P側、つまり車両前方に向けて反射する。第2反射面23は、第1反射面22で反射される光の光軸に平行又は略平行な軸を有し、当該光を回転放物面の焦点P側に向けて内面反射する。
【0030】
第2反射面23は、第1反射面22の集光パターン用反射面に対応して配置される集光パターン形成領域と、第1反射面22の拡散パターン用反射面に対応して配置される拡散パターン形成領域とを含む。集光パターン形成領域は、第2反射面23の左右方向の中央に配置される。拡散パターン形成領域は、第2反射面23のうち、集光パターン形成領域に対して左右方向の外側に配置される。集光パターン形成領域は、例えば左右方向の中央に配置され、焦点P及び焦点Pの近傍を通過するように第1反射面22からの光を内面反射する。拡散パターン形成領域は、焦点Pを含め当該焦点Pに対して車両搭載状態における水平方向の外側にずれた位置を通過するように第1反射面22からの光を内面反射する。拡散パターン形成領域は、複数の第1反射面22のうち拡散パターン用反射面に対応して配置される。
【0031】
第2反射面23は、焦点Pに向けて反射される光と水平面との角度の最大値αが、いわゆるプロジェクタ型におけるリフレクタで反射される光と水平面との角度の最大値よりも小さくなっている。このため、第2反射面23で反射される光は、焦点Pに向けて、プロジェクタ型におけるリフレクタで反射される光よりも浅い角度で到達することになる。
【0032】
[遮光部]
遮光部24は、第2反射面23で内面反射される光の一部を遮光する。遮光部24は、後述の内面反射面25の前側端部(角部20g)に設けられる。角部20gは、車両用導光体20を外部側(下方)から見た場合に凹状である。角部20gは、左右方向に直線状又は湾曲した状態で延びている。遮光部24は、角部20gにおいて、後述する集光パターンPA1及び拡散パターンPB1のカットオフラインCL(
図7、
図8参照)を形成する。カットオフラインCLは、水平カットオフラインCLa、CLcと斜めカットオフラインCLb、CLdとを含む。
【0033】
遮光部24は、当該角部20gを含む領域に設けられる。遮光部24は、例えば当該遮光部24に到達する光を出射面26の方向とは異なる方向に屈折または内面反射させることで光を遮光してもよいし、角部20gを含む内面反射面25のうち当該遮光部24に対応する部分に光吸収層を配置しておき、当該光吸収層により光を吸収することで遮光してもよい。なお、遮光部24によって内面反射又は屈折される光は、車両用導光体20の外部に出射され、当該車両用導光体20の外部に配置されるインナーハウジング等によって吸収される。
【0034】
図3は、遮光部24の一例を示す断面図である。
図3(A)は、
図2(A)におけるB-B断面に沿った構成であり、集光用導光体20Aの遮光部24(以下、遮光部24Aと表記する)を示す。
図3(B)は、
図2(B)におけるC-C断面に沿った構成であり、拡散用導光体20Bの遮光部24(以下、遮光部24Bと表記する)を示す。
図3(A)に示すように、集光用導光体20Aにおいて、角部20gは、水平カットオフラインCLaを形成するための水平部分20Laと、斜めカットオフラインCLbを形成するための傾斜部分20Lbとを有する。
図3(B)に示すように、拡散用導光体20Bにおいて、角部20gは、水平カットオフラインCLcを形成するための水平部分20Lcと、斜めカットオフラインCLdを形成するための傾斜部分20Ldとを有する。
【0035】
図3(A)及び(B)に示すように、拡散用導光体20Bの遮光部24Bは、集光用導光体20Aの遮光部24Aに比べて、自車両の走行車線側(左側)から対向車両の走行車線側(右側)に向けた傾斜部分20Ldの長さが長くなっている。また、拡散用導光体20Bの遮光部24Bは、傾斜部分20Ldから対向車両の走行車線側(右側)に延びる部分が、集光用導光体20Aの遮光部24Aに比べて上方に配置される。このように、拡散用導光体20Bには、左右方向について、集光用導光体20Aの後述する調整部27に対応する部分が上方に凹んだ凹部20Leが形成される。拡散用導光体20Bは、凹部20Leが設けられることにより、後述するように、集光パターンPA1のうち調整部27による調整部分である調整領域PR1に拡散パターンPB1が重ならないようになっている(
図9等参照)。
【0036】
[内面反射面]
内面反射面25は、第2反射面23の前側端部から前方に延びる。内面反射面25は、第2反射面23の前側端部と遮光部24との間に位置する。内面反射面25は、水平面に沿った状態で設けられる。本実施形態において、内面反射面25は、例えば平面状である。なお、内面反射面25は、平面状に限定されず、曲面状であってもよい。内面反射面25は、水平面に沿った構成に限定されず、前方側が水平面に対して下方に傾いた構成であってもよい。内面反射面25では、前後方向に亘って内面反射可能な領域が確保される。
【0037】
図4は、
図2(A)の一部を拡大して示す図である。
図4に示すように、車両用導光体20において、集光用導光体20Aの内面反射面25には、調整部27が設けられる。なお、拡散用導光体20Bの内面反射面25には、調整部27は設けられない。調整部27は、遮光部24の近傍に配置される。調整部27は、後述する集光パターンPA1(
図7参照)のうち自車両に対する対向車線側の水平カットオフラインCLaの近傍の調整領域PR1に対応する光度を調整するために設けられる。具体的には、調整部27は、当該調整領域PR1に対応する光の一部を上方に内面反射することで、当該調整領域PR1の光度を低減させる。調整部27は、左右方向について、焦点Pに対して自車両の走行車線に対応する側、本実施形態では焦点Pに対して左側に寄った位置に配置される。
【0038】
調整部27は、例えば車両用導光体20の外部から見て凸状である。調整部27は、左右方向の中央部から両側に向けて突出量が徐々に小さくなるように形成される(
図3参照)。調整部27は、傾斜面27aと折り返し面27bとを有する。傾斜面27aは、遮光部24から後方に向けて下方に傾斜する。傾斜面27aは、第2反射面23で反射された光を上方に内面反射する。この構成により、傾斜面27aで内面反射される光は、出射面26に到達することなく、例えば上面20h等から車両用導光体20の外部に出射される。傾斜面27aは、第2反射面23で反射される光の一部が出射面26に到達することなく上面20h等から出射されるように傾斜角度等の形状が設定される。
【0039】
折り返し面27bは、傾斜面27aの後端から上方に折り返して内面反射面25に接続される。折り返し面27bは、傾斜面27aの後端から上方に傾斜又は湾曲する。折り返し面27bは、傾斜面27aに比べて上下方向に立った状態で設けられる。折り返し面27bは、上方又は下方から見た場合、傾斜面27aに比べて、前後方向の寸法が小さい。つまり、調整部27は、傾斜面27aが設けられる前方側に比べて、折り返し面27bが設けられる後方側の方が出っ張った形状又は膨らんだ形状を有している。折り返し面27bは、第2反射面23で反射された光が当該折り返し面27bに入射しないように形状等が設定される。
【0040】
[出射面]
出射面26は、第2反射面23で内面反射されて遮光部24により遮光されなかった光を出射して車両前方に集光パターンPA1(
図7参照)又は拡散パターンPB1(
図8参照)を照射する。本実施形態において、出射面26は、例えば曲面状であり、不図示の焦点と、光軸とを有する。なお、出射面26が例えば平面状であり、出射面26から出射される光を車両前方に照射する他の光学要素が配置された構成であってもよい。出射面26の焦点は、第2反射面23の焦点Pの近傍の位置に配置される。また、本実施形態では、出射面26の左右方向の幅が、第2反射面23の左右方向の幅よりも狭くてもよい。この場合、外部から見た場合の出射面26の寸法を抑制できる。
【0041】
車両用導光体20の上面20hには、プリズム部等の光拡散部が形成されてもよい。光拡散部は、第2反射面23で内面反射された光を拡散する。このため、上面20hで内面反射し、出射面26から車両用導光体20の外部に出射される光がグレアとなるのを抑制できる。
【0042】
[動作]
次に、上記のように構成された車両用灯具100の動作を説明する。
図5及び
図6は、車両用導光体20によって導光される光路の例を示す図である。なお、
図5は集光用導光体20Aによって導光される光路、
図6は拡散用導光体20Bによって導光される光路の例を示している。
【0043】
車両用灯具100の光源10を点灯させることにより、発光面11から光が放射される。この光は、入射面21の第1面21a及び第2面21bから車両用導光体20に入射する。第1面21aから入射した光は、第2反射面23側に向けて進行する。第2面21bから入射した光は、第1反射面22において第2反射面23に向けて内面反射される。
【0044】
図5に示すように、例えば、集光用導光体20Aにおいて、第2反射面23に到達した光のうち一部の光L1は、第2反射面23で内面反射され、内面反射面25及び遮光部24の上方を通過して出射面26に到達する。出射面26に到達した光L1は、出射面26から車両前方に出射される。
【0045】
また、第2反射面23に到達した光のうち一部の光L2は、第2反射面23で内面反射されて内面反射面25に到達する。本実施形態において、第2反射面23から遮光部24にかけて前後方向の全体に亘って形成される。このため、内面反射面25に到達する光L2は、無駄なく車両前方に内面反射される。内面反射面25によって内面反射された光L2は、遮光部24の上方を通過して出射面26に到達する。出射面に到達した光L2は、出射面26から車両前方に出射される。
【0046】
また、第2反射面23に到達した光のうち一部の光L3は、第2反射面23で内面反射されて調整部28の傾斜面27aに到達する。傾斜面27aに到達する光L3は、傾斜面27aにより内面反射されて上面20hから車両用導光体20の外部に出射される。この光L3は、出射面26からは出射されない。このように、第2反射面23で内面反射された光のうち一部を傾斜面27aに到達させることにより、出射面26から出射される光L2によるパターンの形状が調整される。
【0047】
一方、
図6に示すように、拡散用導光体20Bにおいて、第2反射面23に到達した光のうち一部の光L4は、第2反射面23で内面反射され、内面反射面25及び遮光部24の上方を通過して出射面26に到達する。出射面26に到達した光L4は、出射面26から車両前方に出射される。
【0048】
また、第2反射面23に到達した光のうち一部の光L5は、第2反射面23で内面反射されて内面反射面25に到達する。内面反射面25に到達する光L5は、車両前方に内面反射される。内面反射面25によって内面反射された光L5は、遮光部24の上方を通過して出射面26に到達する。出射面に到達した光L5は、出射面26から車両前方に出射される。
【0049】
図7から
図9は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される配光パターンの一例を示す図である。
図7は集光用導光体20Aによる配光パターン(集光パターン)、
図8は拡散用導光体20Bによる配光パターン(拡散パターン)を示している。
図9は、集光パターンと拡散パターンとを合成させた配光パターン(ロービームパターン)を示している。
【0050】
図7から
図9では、左側通行の車両に対応するパターンを示している。また、
図7から
図9において、V-V線がスクリーンの垂直線を示し、H-H線がスクリーンの左右の水平線を示す。また、ここでは、垂直線と水平線との交点が、水平方向の基準位置であるとする。
【0051】
集光用導光体20Aの出射面26から出射された光L1、L2は、
図7に示すように、集光パターンPA1として車両前方に照射される。具体的には、集光用導光体20Aの遮光部24の上方を通過して出射面26に到達した光L1、L2は、カットオフラインCLを含む集光パターンPA1を形成する。
図7では、カットオフラインCLのうち斜めカットオフラインCLbが右側に向けて下方に傾くように形成された状態を例に挙げて説明しているが、これに限定されず、斜めカットオフラインCLbが左側に向けて下方に傾く場合においても同様の説明が可能である。
【0052】
集光用導光体20Aでは、第2反射面23で反射される光の一部(光L3)が、傾斜面27aを介して、集光用導光体20Aの出射面26以外の部分から外部に放出される。したがって、傾斜面27aが設けられない構成に比べて、集光パターンPA1は、当該光L3に対応する領域、すなわち、集光パターンPA1のうち自車両の走行車線側の水平カットオフラインCLaの近傍の調整領域PR1において、明るさが周囲よりも低減された状態となる。
【0053】
一方、拡散用導光体20Bの出射面26から出射された光L4、L5は、
図8に示すように、拡散パターンPB1として車両前方に照射される。具体的には、拡散用導光体20Bの遮光部24の上方を通過して出射面26に到達した光L4、L5は、カットオフラインCLを含む拡散パターンPB1を形成する。
図8では、カットオフラインCLのうち斜めカットオフラインCLbが右側に向けて下方に傾くように形成された状態を例に挙げて説明しているが、これに限定されず、斜めカットオフラインCLbが左側に向けて下方に傾く場合においても同様の説明が可能である。
【0054】
本実施形態において、拡散用導光体20Bの遮光部24Bは、集光用導光体20Aの遮光部24Aに比べて、傾斜部分20Lbが自車両の走行車線側(左側)から対向車両の走行車線側(右側)に向けて上方への傾きが大きくなった形状を有する。また、拡散用導光体20Bの遮光部24Bは、傾斜部分20Lbから対向車両の走行車線側(右側)に延びる部分が、集光用導光体20Aの遮光部24Aに比べて上方に凹んだ形状を有する。このような遮光部24Bの形状により、拡散パターンPB1は、集光パターンPA1に比べて、上記調整領域PR1に対応する部分が下方に切り欠かれた回避部PQ1が形成された状態となる。
【0055】
集光パターンPA1と拡散パターンPB1とを合成させることにより、
図9に示すように、車両前方にロービームパターンP1が形成される。ロービームパターンP1では、拡散パターンPB1に回避部PQ1が形成されることにより、調整領域PR1においては集光パターンPA1のみが照射された状態となる。集光パターンPA1の明るさを低減させた状態で照射されるため、調整領域PR1では、急激な明るさの低下が抑制される。また、集光パターンPA1は、調整領域PR1以外の部分においては明るさが低減されていないため、水平カットオフラインCLaの水平性が確保される。
【0056】
[車両用灯具ユニット]
図10は、本実施形態に係る車両用灯具ユニット150の一例を示す図である。
図10は、車両搭載状態における前方から見た例を示している。
図10に示す車両用灯具ユニット150は、ハウジング151と、アウターレンズ152と、光源10と、複数の車両用導光体20とを有する。車両用灯具ユニット150は、ハウジング151とアウターレンズ152とで囲まれる灯室内に、ここでは例えば2つの車両用導光体20が配置された構成である。なお、灯室内に配置される車両用導光体20は、1つ又は3つ以上であってもよい。また、車両用導光体20は、前方から見た場合において、左右方向に並ぶ配置に限定されず、上下方向に並ぶ配置であってもよいし、斜め方向に並ぶ配置であってもよいし、左右方向、上下方向、斜め方向の2つ以上を組み合わせた状態で並ぶ配置であってもよい。なお、異なる車両用導光体20に対して、光源10の個数及び配置が異なるように構成してもよい。
【0057】
例えば、一つの車両用導光体20については、左右方向の中央側の入射面21に対して光を入射させるように光源10を配置した集光用導光体20Aの構成とし、他の車両用導光体20については、左右方向の外側の入射面21に対して光を入射させるように光源10を配置した拡散用導光体20Bの構成としてもよい。また、集光用導光体20Aの構成及び拡散用導光体20Bの構成の少なくとも一方を複数設けてもよい。この場合、各車両用導光体20からの発熱を抑制しつつ、車両用灯具ユニット150全体として、車両前方にロービームパターンP1を適切に形成できる。
【0058】
以上のように、本実施形態に係る車両用導光体20は、光源10からの光を入射する入射面21と、入射面21から入射した光を内面反射する第1反射面22と、第1反射面22で反射される光の少なくとも一部を焦点及び焦点の近傍を通過するように前方に向けて内面反射する第2反射面23と、第2反射面23で反射された光の一部を遮光する遮光部24と、第2反射面23の前側端部と遮光部24との間に位置し、第2反射面23で内面反射された光の一部を前方に向けて内面反射する内面反射面25と、第2反射面23で内面反射される光を出射する出射面26と、内面反射面25のうち遮光部24の後方であって第2反射面23の焦点よりも左右の一方に寄った部分に設けられ、第2反射面23で反射される光の一部の光を内面反射又は屈折させることで出射面26とは異なる部分から外部に出射させる調整部27とを備える。
【0059】
したがって、第1反射面22で反射される光の少なくとも一部を焦点及び焦点の近傍を通過するように前方に向けて内面反射する構成において、第2反射面23の焦点よりも左右方向で自車両の走行車線側に寄った部分に、第2反射面23で反射される光のうち遮光部24を含む部分を通過する一部の光を内面反射させることで出射面26とは異なる部分から外部に出射させる調整部27が設けられる。このため、出射面26により車両前方に形成される集光パターンPA1は、自車両の走行車線側の水平カットオフラインCLaの近傍の調整領域PR1において、明るさが周囲よりも低減された状態となる。このように、調整領域PR1には、集光パターンPA1の明るさが低減された状態となるため、周囲と比べて明るさが急激に低下することを抑制できる。また、集光パターンPA1は、調整領域PR1以外の部分においては明るさが低減されていないため、水平カットオフラインCLaの水平性が確保される。これにより、車両前方に配光パターンを適切な照度で照射することができる。
【0060】
上記の車両用導光体20において、調整部27は、内面反射面25から外部に突出した形状であり、前後方向の前側には第2反射面23で反射される光の一部を出射面26とは異なる部分に向けて内面反射するように後方にかけて下方に傾斜する傾斜面27aを有し、前後方向の後側には傾斜面27aの後側端部から上方に折り返して内面反射面25に接続される折り返し面27bを有する。この構成によれば、第2反射面23で反射される光の一部を傾斜面27aで内面反射することにより、当該光の一部を出射面26とは異なる部分に確実に到達させることができる。したがって、グレア光の発生を抑制できる。
【0061】
上記の車両用導光体20において、折り返し面27bは、傾斜面27aに比べて上下方向に立った状態で設けられる。この構成によれば、第2反射面23で反射される光の一部が調整部27に到達した場合に、より確実に傾斜面27aに入射させることができる。
【0062】
上記の車両用導光体20は、調整部27は、左右方向の中央部から両側に向けて突出量が徐々に小さくなるように形成される。この構成によれば、集光パターンPA1の調整領域PR1において中央部から両側に向けて徐々に明るくなるように明るさを調整することができる。
【0063】
本実施形態に係る車両用灯具ユニット150は、光源10と、光源10からの光を導光して出射する、車両用導光体20であり車両前方に集光パターンPA1を照射する集光用導光体20Aと、光源10からの光を導光して集光パターンPA1に一部が重なるように車両前方に拡散パターンPB1を出射する拡散用導光体20Bとを備える。この構成によれば、集光用導光体20Aで集光パターンPA1を形成し、拡散パターンPB1で拡散パターンPB1を形成することにより、パターン全体としての照度を適切に調整することができる。
【0064】
上記の車両用灯具ユニット150において、調整部27は、内面反射面25から外部に突出した形状であり、前後方向の前側には第2反射面23で反射される光の一部を出射面26とは異なる部分に向けて内面反射するように後方にかけて下方に傾斜する傾斜面27aを有し、前後方向の後側には傾斜面27aの後側端部から上方に折り返して内面反射面25に接続される折り返し面27bを有し、拡散用導光体20Bは、集光パターンPA1のうち調整部27による調整部分である調整領域PR1に拡散パターンPB1が重ならないように形成される。この構成によれば、調整領域PR1に拡散パターンPB1が照射されない構成とすることにより、当該調整領域PR1における明るさを集光用導光体20Aにより適切に調整することができる。
【0065】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を説明する。
図11及び
図12は、第2実施形態に係る車両用導光体120を示す図である。
図11は、車両用導光体120の一例を示す平面図である。
図12(A)及び(B)は、
図11のD-D断面に沿った構成を示している。
図12(A)は集光用導光体120A、
図12(B)は拡散用導光体120Bの構成を示している。
【0066】
また、
図13は、遮光部124の一例を示す図である。
図13(A)は、
図12(A)におけるE-E断面に沿った構成であり、集光用導光体120Aの遮光部124(以下、遮光部124Aと表記する)を示す。
図13(B)は、
図12(B)におけるF-F断面に沿った構成であり、拡散用導光体120Bの遮光部124(以下、遮光部124Bと表記する)を示している。
図13(A)及び(B)に示すように、集光用導光体120Aの遮光部124Aと、拡散用導光体120Bの遮光部124Bとは、ほぼ同様の形状を有する。
【0067】
本実施形態において、集光用導光体120Aの内面反射面25には、凹状の調整部28が設けられる。なお、拡散用導光体120Bの内面反射面25には、調整部28は設けられない。集光用導光体120Aにおいて、調整部28以外の構成については、第1実施形態において説明した集光用導光体20Aと同様の構成である。
【0068】
調整部28は、遮光部24の近傍に配置される。調整部28は、後述する集光パターンPA2(
図15参照)のうち自車両に対する対向車線側の水平カットオフラインCLaの近傍の調整領域PR2に対応する光度を調整するために設けられる。具体的には、調整部28は、当該調整領域PR2に対応する光の一部を下方に出射することで、当該調整領域PR2の光度を低減させる。調整部28は、左右方向について、焦点Pに対して自車両の走行車線に対応する側、本実施形態では焦点Pに対して左側に寄った位置に配置される。
【0069】
調整部28は、例えば車両用導光体20の外部から見て凹状である。調整部28は、前後方向の後側に屈折面28aを有し、前後方向の前側に全反射面28bを有する。屈折面28aは、前方に向けて上方に傾いた状態で形成される。屈折面28aは、第2反射面23で反射される光の一部を外部に出射する。全反射面28bは、屈折面28aの前側端部から下方に折り返すように形成される。全反射面28bは、前方に向けて下方に傾いた状態で形成される。全反射面28bは、屈折面28aから出射される光を全反射する。また、調整部28は、焦点Pから左右方向に離れるほど遮光部24から前後方向に離れるように形成される。換言すると、調整部28は、焦点Pに左右方向に近い部分ほど遮光部24に前後方向に近くなるように形成される。例えば、調整部28は、焦点Pから左右方向に離れるほど後方に配置されるように延びている(
図11参照)。なお、調整部28は、焦点Pから左右方向に離れるほど遮光部24から前後方向に離れる構成として、段階的に前後方向に離れる構成であってもよいし、後方に延びない部分を含んでもよい。調整部28は、左右方向に第1部分28c及び第2部分28dを有する。第1部分28cは、左右方向の内側に設けられる。第1部分28cは、焦点P側に向けて深さが徐々に浅くなるように形成される。第2部分28dは、第1部分28cに対して左右方向の外側に設けられる。第2部分28dは、第1部分28cよりも深さが深い。換言すると、第2部分28dは、内面反射面25から集光用導光体120Aの内側へ食い込んだ部分の上下方向の寸法が第1部分28cよりも大きい。第2部分28dは、左右方向の外側に向けて深さが徐々に浅くなるように形成される。
【0070】
このような構成により、第2反射面23で反射された光は、調整部28の屈折面28aにおいて集光用導光体120Aの外部に出射され、調整部28の全反射面28bにおいて下方に反射される。換言すると、屈折面28a及び全反射面28bは、第2反射面23で反射される光の一部を外部に出射して下方に反射することが可能となるように、傾斜角度等の形状が設定される。
【0071】
図14は、集光用導光体120Aによって導光される光路の例を示す図である。
図14に示すように、例えば、集光用導光体120Aにおいて、第1反射面22で反射され、第2反射面23に到達した光のうち一部の光L6は、第2反射面23で内面反射され、内面反射面25及び遮光部24の上方を通過して出射面26に到達する。出射面26に到達した光L6は、出射面26から車両前方に出射される。
【0072】
また、第2反射面23に到達した光のうち一部の光L7は、第2反射面23で内面反射されて内面反射面25に到達する。内面反射面25に到達する光L7は、無駄なく車両前方に内面反射され、遮光部24の上方を通過して出射面26に到達する。出射面に到達した光L7は、出射面26から車両前方に出射される。
【0073】
また、第2反射面23に到達した光のうち一部の光L8は、第2反射面23で内面反射されて調整部28の屈折面28aに到達する。屈折面28aに到達する光L8は、屈折面28aで屈折されて集光用導光体120Aの外部に出射される。この光L8は、屈折面28aの前方の全反射面28bにより下方に全反射される。したがって、光L8は、出射面26からは出射されない。このように、第2反射面23で内面反射された光のうち一部を屈折面28aに到達させることにより、出射面26から出射される光L7によるパターンの形状が調整される。
【0074】
なお、拡散用導光体120Bによって導光される光については、第1実施形態の拡散用導光体20Bと同様の説明が可能である。
【0075】
図15から
図17は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される配光パターンの一例を示す図である。
図15は集光用導光体120Aによる配光パターン(集光パターン)、
図16は拡散用導光体120Bによる配光パターン(拡散パターン)を示している。
図17は、集光パターンと拡散パターンとを合成させた配光パターン(ロービームパターン)を示している。
【0076】
図15から
図17では、左側通行の車両に対応するパターンを示している。また、
図15から
図17において、V-V線がスクリーンの垂直線を示し、H-H線がスクリーンの左右の水平線を示す。また、ここでは、垂直線と水平線との交点が、水平方向の基準位置であるとする。
【0077】
集光用導光体120Aの出射面26から出射された光L6、L7は、
図15に示すように、集光パターンPA2として車両前方に照射される。具体的には、集光用導光体120Aの遮光部24の上方を通過して出射面26に到達した光L6、L7は、カットオフラインCLを含む集光パターンPA2を形成する。
図15では、カットオフラインCLのうち斜めカットオフラインCLbが右側に向けて下方に傾くように形成された状態を例に挙げて説明しているが、これに限定されず、斜めカットオフラインCLbが左側に向けて下方に傾く場合においても同様の説明が可能である。
【0078】
集光用導光体120Aでは、第2反射面23で反射される光の一部(光L8)が、屈折面28a及び全反射面28bを介して、集光用導光体120Aの出射面26以外の部分から外部に放出される。したがって、屈折面28a及び全反射面28bが設けられない構成に比べて、集光パターンPA2は、当該光L8に対応する領域、すなわち、集光パターンPA2のうち自車両に対する対向車線側の水平カットオフラインCLaの近傍の調整領域PR2において、明るさが周囲よりも低減された状態となる。
【0079】
一方、拡散用導光体120Bの出射面26から出射された光は、
図16に示すように、拡散パターンPB2として車両前方に照射される。具体的には、拡散用導光体120Bの遮光部24の上方を通過して出射面26に到達した光は、カットオフラインCLを含む拡散パターンPB2を形成する。
図16では、カットオフラインCLのうち斜めカットオフラインCLdが右側に向けて下方に傾くように形成された状態を例に挙げて説明しているが、これに限定されず、斜めカットオフラインCLdが左側に向けて下方に傾く場合においても同様の説明が可能である。
【0080】
本実施形態において、拡散用導光体120Bの遮光部124Bは、集光用導光体120Aの遮光部124Aと同様の形状である。したがって、拡散パターンPB2は、集光パターンPA2の上記調整領域PR2に重なるように形成される。
【0081】
集光パターンPA2と拡散パターンPB2とを合成させることにより、
図17に示すように、車両前方にロービームパターンP2が形成される。ロービームパターンP2では、調整領域PR2において、集光パターンPA2及び拡散パターンPB2の両方が照射された状態となる。したがって、集光パターンPA2の明るさを低減させた部分に拡散パターンPB2が照射されるため、調整領域PR2では、急激な明るさの低下が抑制される。また、調整領域PR2以外の部分においては集光パターンPA2及び拡散パターンPB2の両方が照射されるため、水平カットオフラインCLaの水平性が確保される。
【0082】
以上のように、第2実施形態に係る車両用導光体120において、調整部28は、内面反射面25から内側に凹んだ形状であり、前後方向の後側に第2反射面23で反射される光の一部を外部に出射する屈折面28aを有し、前後方向の前側に屈折面から出射される光を全反射する全反射面28bを有する。
【0083】
上記の車両用導光体20において、調整部28は、焦点Pから左右方向に離れるほど遮光部24から前後方向に離れるように形成される。このため、集光パターンPA2の調整領域PR2について左右方向の対向車線側の境界部分をぼかすことができる。このため、集光パターンPA2において調整領域PR2の抜け感を緩和することができる。また、集光パターンPA2の調整領域PR2について左右方向の垂直線V-V側の境界部分を鮮明に形成することができる。
【0084】
上記の車両用導光体20において、調整部28は、左右方向において焦点Pに近づくにつれて凹み量が小さくなるように形成される。この構成によれば、集光パターンPA2の調整領域PR2について左右方向の垂直線V-V側に近づくほど明るくなるように明るさをより細かく調整することができる。
【0085】
本実施形態に係る車両用灯具ユニットは、光源10と、光源10からの光を導光して出射する、車両用導光体120であり車両前方に集光パターンPA2を照射する集光用導光体120Aと、光源10からの光を導光して集光パターンPA2に一部が重なるように車両前方に拡散パターンPB2を出射する拡散用導光体120Bとを備える構成とすることができる。この構成において、調整部28は、内面反射面25から内側に凹んだ形状であり、前後方向の前側に第2反射面23で反射される光の一部を外部に出射する屈折面28aを有し、前後方向の後側に屈折面から出射される光を全反射する全反射面28bを有し、拡散用導光体120Bは、集光パターンPA2のうち調整部28による調整部分である調整領域PR2に拡散パターンPB2が重なるように形成される。この構成によれば、集光パターンPA2の明るさを低減させた部分に拡散パターンPB2が照射されるため、調整領域PR2では、急激な明るさの低下が抑制される。また、調整領域PR2以外の部分においては集光パターンPA2及び拡散パターンPB2の両方が照射されるため、水平カットオフラインCLaの水平性が確保される。
【0086】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上記実施形態では、左側通行の道路を走行する車両に搭載する車両用灯具100の構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、右側通行の道路を走行する車両に車両用前照灯を搭載する場合においても同様の説明が可能である。
【0087】
また、上記した第1実施形態に記載の集光用導光体20Aにおいて、内面反射面25には、調整部27の後方に他の構成が設けられてもよい。
図18は、集光用導光体の他の例を示す図である。
図18に示すように、集光用導光体220Aは、内面反射面25において、調整部27の後方に、当該内面反射面25から内側に凹んだ凹部29が設けられてもよい。凹部29が設けられることにより、第2反射面23で内面反射されて焦点Pに向かう光の一部を遮光することができる。この構成により、ロービームパターンの一部の照度を調整することができる。
【0088】
また、上記した集光用導光体20A、120A、220Aは、第2反射面23と遮光部24とが内面反射面25により接続される構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0089】
図19は、集光用導光体の他の例を示す図である。
図19に示すように、集光用導光体320Aは、入射面21と、第1反射面22と、第2反射面23と、遮光部24と、調整面225と、透過面226と、内面反射面227と、再入射面228と、出射面26とを備える。
【0090】
入射面21、第1反射面22、第2反射面23、遮光部24及び出射面26の構成については、上記説明と同様である。調整面225は、第2反射面23の前側端部から前方に延びる。透過面226は、調整面225の前側端部から上下方向の上方に延びた状態で設けられ、第2反射面23で反射される光の一部を導光体外部に透過して前方に向ける。内面反射面227は、透過面226の上側端部と遮光部24との間に位置し、第2反射面23で内面反射された光の一部を前方に向けて内面反射する。再入射面228は、透過面226に対して前方かつ遮光部24に対して下方に配置され、透過面226から導光体外部に透過した光を再入射する。なお、出射面26は、第2反射面23で内面反射された光及び再入射面228から入射した光を出射する。
【0091】
この構成によれば、第2反射面23で反射され、内面反射面227の上方を通過し遮光部24又は遮光部24の上方を通過して出射面26から出射される光と、内面反射面227で内面反射され遮光部24又は遮光部24の上方を通過して出射面26から出射される光とにより、主となるパターン(ロービームパターン)が形成される。この構成では、第2反射面23と内面反射面227との間に調整面225が配置されているため、第2反射面23で反射される光の一部が、内面反射面227に到達せずに調整面225に到達し、調整面225を介して集光用導光体220Aの出射面26以外の部分から外部に放出される。このため、ロービームパターンの一部の照度を低下させることができ、パターン全体としての照度を適切に調整することができる。
【0092】
また、上記実施形態では、集光パターンを形成する集光用導光体と、拡散パターンを形成する拡散用導光体とが別個の車両用導光体である場合を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。1つの車両用導光体が集光パターン及び拡散パターンの両方を形成する構成であってもよい。この場合、例えば1つの車両用導光体において、左右方向の中央側に配置される2つの入射面21の少なくとも一方と、左右方向の外側に配置される2つの入射面21の少なくとも一方とにそれぞれ光を入射させることで実現可能である。
【符号の説明】
【0093】
AX…光軸、CL…カットオフライン、CLa,CLc…水平カットオフライン、CLb,CLd…斜めカットオフライン、L1,L2,L3,L4,L5,L6,L7,L8…光、P…焦点、P1,P2…ロービームパターン、PA1,PA2…集光パターン、PB1,PB2…拡散パターン、PQ1…回避部、PR1,PR2…調整領域、10…光源、11…発光面、20,120…車両用導光体、20A,120A,220A,320A…集光用導光体、20B,120B…拡散用導光体、20g…角部、20h…上面、20La,20Lc…水平部分、20Lb,20Ld…傾斜部分、20Le,29…凹部、21…入射面、21a…第1面、21b…第2面、22…第1反射面、22a…第1後方領域、22b…第1前方領域、23…第2反射面、24,24A,24B,124,124A,124B…遮光部、25,227…内面反射面、26…出射面、27,28…調整部、27a…傾斜面、27b…折り返し面、28a…屈折面、28b…反射面、28c…第1部分、28d…第2部分、100…車両用灯具、150…車両用灯具ユニット、151…ハウジング、152…アウターレンズ、225…調整面、226…透過面、228…再入射面