(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176530
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】調光シート、および、調光装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20231206BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20231206BHJP
G02F 1/137 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1334
G02F1/137 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088863
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】矢野 勇士
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088EA33
2H088GA02
2H088GA10
2H088GA13
2H088HA01
2H088HA02
2H088JA06
2H088KA26
2H088MA20
2H189BA04
2H189HA06
2H189HA16
2H189JA04
2H189JA06
2H189KA17
2H189LA01
2H189LA03
2H189MA15
(57)【要約】
【課題】調光シートの透明時と不透明時とにおいて、調光シートによって遮蔽する熱量を切り替えることを可能にしながら、調光シートの不透明時におけるぎらつきを抑えることを可能とした調光シート、および、調光装置を提供する。
【解決手段】調光シートは、空隙23Dを備えた透明高分子層23Tと、空隙23Dを充填する液晶組成物23Lとを備える調光層23と、調光層23を透明と不透明とに切り替える電圧を調光層23に印加するための透明電極層と、を備える。調光シートは、遮蔽係数を日射の反射および吸収の少なくとも一方によって低めるように構成され、調光シートにおける透明時の遮蔽係数と不透明時の遮蔽係数との差分値が0.08以上0.14以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空隙を備えた透明高分子層と、前記空隙を充填する液晶組成物とを備える調光層と、
前記調光層を透明と不透明とに切り替える電圧を前記調光層に印加するための透明電極層と、を備える調光シートであって、
遮蔽係数を日射の反射および吸収の少なくとも一方によって低めるように構成され、
前記調光シートにおける透明時の遮蔽係数と不透明時の遮蔽係数との差分値が0.08以上0.14以下である
調光シート。
【請求項2】
前記液晶組成物が、二色性色素を含み、
前記二色性色素は、前記調光シートにおける前記透明時の日射反射率よりも前記不透明時の日射反射率を高める
請求項1に記載の調光シート。
【請求項3】
前記液晶組成物が、二色性色素を含み、
前記二色性色素が、前記二色性色素の無色時における日射反射率よりも有色時の日射反射率を高める
請求項1に記載の調光シート。
【請求項4】
前記調光シートにおける前記不透明時の日射反射率が7%以上22%以下である
請求項1から3のいずれか一項に記載の調光シート。
【請求項5】
空隙を備えた透明高分子層と、前記空隙を充填する液晶組成物とを備える調光層と、
前記調光層を透明と不透明とに切り替える電圧を前記調光層に印加するための透明電極層と、を備える調光シートと、
前記透明電極層に電圧を印加する駆動部と、を備えた調光装置であって、
前記調光シートは、前記調光シートの遮蔽係数を日射の反射および吸収の少なくとも一方によって低めるように構成され、
前記駆動部は、前記調光シートにおける透明時の遮蔽係数と不透明時の遮蔽係数との差分値が0.08以上0.14以下になる前記電圧を前記透明時と前記不透明時とに印加する
調光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光シート、および、調光シートを備える調光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートの一例は、一対の透明導電性フィルムと、一対の透明導電性フィルムの間に挟まれた調光層と、調光層よりも調光シートに対する光の入射側に位置する熱反射フィルムとを備えている。熱反射フィルムは、70%以上の可視光透過率を有し、0.8以下の遮蔽係数を有する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、熱反射フィルムが有する遮蔽係数は一定の値に固定されるから、調光シートには、調光シートにおける熱遮蔽の度合いを切り替えることを期待し難い。また、遮蔽係数を低める観点では、日射反射率を高めることが有用である。しかしながら、日射の反射率を高めた場合には、調光シートにおいて反射された光を観察者が視認することによって、調光シートがぎらつくと感じる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための調光シートは、空隙を備えた透明高分子層と、前記空隙を充填する液晶組成物とを備える調光層と、前記調光層を透明と不透明とに切り替える電圧を前記調光層に印加するための透明電極層と、を備える。調光シートは、遮蔽係数を日射の反射および吸収の少なくとも一方によって低めるように構成される。前記調光シートにおける透明時の遮蔽係数と不透明時の遮蔽係数との差分値が0.08以上0.14以下である。
【0006】
上記調光シートによれば、遮蔽係数の差分値が0.08以上であるから、調光シートの透明時に調光シートによって遮蔽する熱量と、調光シートの不透明時に調光シートによって遮蔽する熱量とを切り替えることが可能である。また、遮蔽係数の差分値が0.14以上であるから、日射の反射により遮蔽係数を低め、これによって透明時と不透明時との遮蔽係数を異ならせたとしても、調光シートの不透明時において、調光シートがぎらつかない程度に日射の反射を抑えることが可能である。
【0007】
上記調光シートにおいて、前記液晶組成物が、二色性色素を含み、前記二色性色素は、前記調光シートにおける前記透明時の日射反射率よりも前記不透明時の日射反射率を高めてもよい。この調光シートによれば、二色性色素は、液晶分子とともに配向を変えることによって、液晶分子とともに、不透明時の日射反射率を透明時の日射反射率よりも高めることが可能である。
【0008】
上記調光シートにおいて、前記液晶組成物が、二色性色素を含み、前記二色性色素が、前記二色性色素の無色時における日射反射率よりも有色時の日射反射率を高めてもよい。この調光シートによれば、二色性色素が有する日射反射率の変化によって、調光シートにおける透明時の日射反射率と、不透明時の日射反射率とを異ならせることが可能である。
【0009】
上記調光シートにおいて、前記調光シートにおける前記不透明時の日射反射率が7%以上22%以下であってもよい。この調光シートによれば、調光シートにおける不透明時の日射反射率が7%以上であることによって、不透明時の遮蔽係数を低下させ、これによって、透明時と不透明時における遮蔽係数の差分値を大きくすることが可能である。また、調光シートにおける不透明時の日射反射率が22%以下であることによって、不透明時における調光シートのぎらつきを抑えることが可能である。
【0010】
上記課題を解決するための調光装置は、空隙を備えた透明高分子層と、前記空隙を充填する液晶組成物とを備える調光層と、前記調光層を透明と不透明とに切り替える電圧を前記調光層に印加するための透明電極層と、を備える調光シートと、前記透明電極層に電圧を印加する駆動部と、を備える。前記調光シートは、前記調光シートの遮蔽係数を日射の反射および吸収の少なくとも一方によって低めるように構成される。前記駆動部は、前記調光シートにおける透明時の遮蔽係数と不透明時の遮蔽係数との差分値が0.08以上0.14以下になる前記電圧を前記透明時と前記不透明時とに印加する。
【0011】
上記調光装置によれば、遮蔽係数の差分値が0.08以上であるように電圧を印加するから、調光シートの透明時に調光シートによって遮蔽する熱量と、調光シートの不透明時に調光シートによって遮蔽する熱量とを切り替えるように、調光シートを駆動することができる。また、遮蔽係数の差分値が0.14以下であるように電圧を印加するから、日射の反射により遮蔽係数を低め、これによって透明時と不透明時との遮蔽係数を異ならせたとしても、調光シートの不透明時において、調光シートがぎらつかない程度に日射の反射を抑えることが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、調光シートの透明時と不透明時とにおいて、調光シートによって遮蔽する熱量を切り替えることを可能にしながら、調光シートの不透明時におけるぎらつきを抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ノーマル型の調光シートの構造を駆動部とともに模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1が示す調光シートの非通電時における調光層の状態を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図1が示す調光シートの通電時における調光層の状態を模式的に示す断面図である。
【
図4】リバース型の調光シートの構造を駆動部とともに模式的に示す断面図である。
【
図5】
図4が示す調光シートの非通電時における調光層の状態を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図4が示す調光シートの通電時における調光層の状態を模式的に示す断面図である。
【
図7】調光シートの状態が変化することに伴う筐体内の温度における変化量を測定するための装置を模式的に示す断面図である。
【
図8】実施例および比較例の調光シートにおける遮蔽係数の差分値と、温度の変化量および調光シートのぎらつきとの関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から
図8を参照して、調光シートの一実施形態を説明する。本開示の調光シートにおける型式は、ノーマル型でもよいし、リバース型でもよい。以下では、
図1から
図3を参照して、ノーマル型の調光シートと駆動部とを備える第1調光装置を説明し、
図4から
図6を参照して、リバース型の調光シートと駆動部とを備える第2調光装置を説明する。
【0015】
なお、調光シートは、例えば、住宅、駅、空港などの各種の建物が備える窓、オフィスに設置されたパーティション、および、店舗に設置されたショーウインドウなどが備える透明部材に取り付けられる。あるいは、調光シートは、車両および航空機などの移動体が備える窓が備える透明部材に取り付けられる。調光シートの形状は、平面状であってもよいし、曲面状であってもよい。
【0016】
また、本開示における日射は、300nm以上2500nm以下の波長の放射を意味する。可視光線は、380nm以上780nm以下の波長の放射を意味する。紫外線は、日射のうち、UVB域およびUVA域の放射を意味する。なお、UVB域は、300nm以上315nm未満の波長域であり、UVAは315nm以上380nm未満の波長域である。
【0017】
[第1調光装置]
図1が示すように、第1調光装置10Nは、ノーマル型の調光シート11Nと、駆動部12とを備えている。調光シート11Nは、第1透明電極層21、第2透明電極層22、および、調光層23を備えている。調光シート11Nは、さらに、第1透明電極層21を支持する第1透明基材24、および、第2透明電極層22を支持する第2透明基材25を備えている。
【0018】
調光シート11Nは、第1透明電極層21の一部に取り付けられた第1電極21Eと、第2透明電極層22の一部に取り付けられた第2電極22Eとを備えている。調光シート11Nはさらに、第1電極21Eに接続された配線26と、第2電極22Eに接続された配線26とを備えている。第1電極21Eは、配線26によって駆動部12に接続されている。第2電極22Eは、配線26によって駆動部12に接続されている。
【0019】
第1透明電極層21、および、第2透明電極層22は、調光層23を透明と不透明とに切り替える電圧を調光層23に印加する。各透明電極層21,22は、可視光を透過する光透過性を有する。第1透明電極層21の光透過性は、調光シート11Nを通した物体の視覚認識を可能にする。第2透明電極層22の光透過性は、第1透明電極層21の光透過性と同様、調光シート11Nを通した物体の視覚認識を可能にする。
【0020】
各透明電極層21,22を形成するための材料は、例えば、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、および、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)から構成される群から選択されるいずれか1つであってよい。
【0021】
各透明基材24,25を形成する材料は、合成樹脂、または、無機化合物であってよい。合成樹脂は、例えば、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、および、ポリオレフィンなどである。ポリエステルは、例えばポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどである。ポリアクリレートは、例えばポリメチルメタクリレートなどである。無機化合物は、例えば、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、および、窒化ケイ素などである。
【0022】
各電極21E,22Eは、例えばフレキシブルプリント基板(FPC : Flexible Printed Circuit)である。FPCは、支持層、導体部、および、保護層を備えている。導体部が、支持層と保護層とに挟まれている。支持層および保護層は、絶縁性の合成樹脂によって形成されている。支持層および保護層は、例えばポリイミドによって形成される。導体部は、例えば金属薄膜によって形成されている。金属薄膜を形成する材料は、例えば銅であってよい。各電極21E,22Eは、FPCに限らず、例えば金属製のテープであってもよい。
【0023】
なお、各電極21E,22Eは、図示外の導電性接着層によって、各透明電極層21,22に取り付けられている。各電極21E,22Eのうち、導電性接着層に接続される部分では、導体部が保護層または支持層から露出している。
【0024】
導電性接着層は、例えば、異方性導電フィルム(ACF : Anisotropic Conductive Film)、異方性導電ペースト(ACP : Anisotropic Conductive Paste)、等方性導電フィルム(ICF : Isotropic Conductive Film)、および、等方性導電ペースト(ICP : Isotropic Conductive Paste)などによって形成されてよい。調光装置10の製造工程における取り扱い性の観点から、導電性接着層は、異方性導電フィルムであることが好ましい。
【0025】
各配線26は、例えば、金属製のワイヤーと、金属製のワイヤーを覆う絶縁層とによって形成されている。ワイヤーは、例えば銅などによって形成されている。
駆動部12は、第1透明電極層21と第2透明電極層22との間に交流電圧を印加する。駆動部12は、矩形波状を有した交流電圧を一対の透明電極層21,22間に印加することが好ましい。言い換えれば、駆動部12は、矩形波の電圧信号を出力することが好ましい。
【0026】
図2および
図3は、調光層23の一部を模式的に示している。なお、
図2は、調光層23の非通電時における調光層23の状態を模式的に示す一方、
図3は、調光層23の通電時における調光層23の状態を模式的に示している。
【0027】
図2が示すように、調光層23は、透明高分子層23Tと液晶組成物23Lとを備えている。透明高分子層23Tは、液晶組成物23Lが充填される空隙23Dを有している。液晶組成物23Lは、透明高分子層23Tが有する空隙23Dに充填されている。
【0028】
液晶組成物23Lの保持型式は、高分子ネットワーク型、高分子分散型、および、カプセル型から構成される群から選択されるいずれか1つである。高分子ネットワーク型は、3次元の網目状を有した透明な高分子ネットワークを備え、互いに連通した網目状の空隙23Dのなかに液晶組成物23Lを保持する。高分子ネットワークは、透明高分子層23Tの一例である。高分子分散型は、孤立した多数の空隙23Dを透明高分子層23Tのなかに備え、透明高分子層23Tに分散した空隙23Dのなかに液晶組成物を保持する。カプセル型は、カプセル状を有した液晶組成物23Lを透明高分子層23Tのなかに保持する。これにより、透明高分子層23Tには、液晶組成物23Lが充填される空隙23Dが形成される。
【0029】
液晶組成物23Lは、液晶分子23LMを含んでいる。液晶分子23LMの一例は、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、および、ジオキサン系から構成される群から選択されるいずれかである。液晶組成物23Lは、液晶分子23LMとして、誘電異方性が正であるポジ型のネマチック液晶を含んでいる。
【0030】
本実施形態において、液晶組成物23Lは、二色性色素23Pを含んでいる。二色性色素23Pは、細長い形状を有している。二色性色素23Pの分子における長軸方向での可視領域の吸光度が、分子の短軸方向における可視領域の吸光度よりも大きい。二色性色素23Pは、長軸方向が、光の入射方向に対して平行または略平行な場合にほぼ透明を呈する。これに対して、二色性色素23Pは、長軸方向が、光の入射方向に対して垂直または略垂直な場合に所定の色を呈する。
【0031】
そのため、二色性色素23Pは、調光層23における第1透明電極層21との接触面、および、調光層23における第2透明電極層22との接触面の法線方向に対して、長軸方向が平行または略平行であるように配向されたときに、透明を呈する。これに対して、二色性色素23Pは、調光層23における第1透明電極層21との接触面、および、調光層23における第2透明電極層22との接触面の法線方向に対して、長軸方向が垂直または略垂直であるように配向されたときに所定の色を呈する。二色性色素23Pが呈する色は、黒色または黒色に近い色であることが好ましい。二色性色素23Pは、液晶分子23LMをホストとしたゲストホスト型式によって駆動され、これによって、二色性色素23Pは呈色する。
【0032】
二色性色素23Pは、ポリヨウ素、アゾ化合物、アントラキノン化合物、ナフトキノン化合物、アゾメチン化合物、テトラジン化合物、キノフタロン化合物、メロシアニン化合物、ペリレン化合物、ジオキサジン化合物から構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。二色性色素23Pは、1種の色素、あるいは、2種以上の色素の組み合わせであってよい。二色性色素23Pの耐光性を高める観点、および、二色比を高める観点では、二色性色素23Pは、アゾ化合物およびアントラキノン化合物から構成される群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。二色性色素23Pは、アゾ化合物であることがより好ましい。
【0033】
調光層23における二色性色素23Pの含有率は、調光層23の総重量に対して、すなわち、調光層23の総重量を100重量%に設定する場合に、1重量%5重量%以下であってよい。二色性色素23Pの含有率が1重量%以上であることによって、調光シート11Nにおける日射の反射率を高め、これによって、調光シート11Nの透明時と不透明時との間における遮蔽係数の差分値を大きくすることができる。二色性色素23Pの含有率が、5重量%以下であることによって、調光シート11Nにおける日射の反射率が過剰に高まることを抑え、これによって、調光シート11Nのぎらつきを抑えることができる。
なお、液晶組成物23Lは、上述した液晶分子23LMおよび二色性色素23P以外に、例えば透明高分子層23Tを形成するためのモノマーを含んでもよい。
【0034】
図2が示すように、調光層23に対して電圧が印加されていない状態では、液晶分子23LMは、長軸方向の配向に所定の規則を有しない。すなわち、液晶分子23LMは、空隙23D内において不規則に配向している。これにより、二色性色素23Pは、液晶分子23LMと同様に、空隙23D内において不規則に配向している。そのため、調光層23、ひいては調光シート11Nは、調光層23に対して電圧が印加されていない状態において、不透明である。これにより、調光シート11Nは、相対的に高いヘイズ値を有する。調光シート11Nのヘイズ値は、JIS K 7136:2000「プラスチック-ヘーズの求め方」に準拠した方法によって求められる。また、調光シート11Nは、二色性色素23Pによる所定の色を呈する。
【0035】
第1調光装置10Nにおいて、調光シート11Nにおける不透明時の日射反射率が7%以上22%以下であってよい。日射反射率は、JIS A 5759:2016「建築窓ガラス用フィルム」に準拠した方法によって求められる。
【0036】
図3が示すように、調光層23に対して電圧が印加されている状態では、液晶分子23LMは、電界に対して平行に配向する。調光シート11Nは、調光層23に対して電圧が印加された際に、液晶分子23LMの長軸方向が、上述した接触面に対して垂直であるように構成されている。すなわち、液晶分子23LMは、垂直配向する。これにより、二色性色素23Pは、液晶分子23LMと同様に、垂直配向する。そのため、調光層23、ひいては調光シート11Nは、調光層23に対して電圧が印加されている状態において、透明である。これにより、調光シート11Nは、相対的に低いヘイズ値を有する。また、調光シート11Nは、二色性色素23Pによる所定の色を呈しない、すなわち透明を呈する。
【0037】
本開示の調光シート11Nは、調光シート11Nが有する遮蔽係数を調光シート11Nにおける日射の反射および吸収の少なくとも一方によって低めるように構成されている。調光シート11Nにおける透明時の遮蔽係数と、不透明時の遮蔽係数との差分値が0.08以上0.14以下である。遮蔽係数は、JIS A 5759:2016「建築窓ガラス用フィルム」に準拠した方法によって求められる。
【0038】
二色性色素23Pは、調光シート11Nにおける透明時の日射反射率よりも不透明時の日射反射率を高めるように構成されてよい。この場合には、調光シート11Nにおいて、液晶分子23LMも、調光シート11Nにおける透明時の日射反射率よりも不透明時の日射反射率を高めるように構成されてよい。
【0039】
またあるいは、二色性色素23Pは、二色性色素23Pの無色時における日射反射率よりも有色時の日射反射率を高めるように構成されてもよい。すなわち、ノーマル型の調光シート11Nでは、二色性色素23Pは、調光層23に電圧が印加されているときにおける二色性色素23Pの日射反射率よりも、調光層23に電圧が印加されていないときの二色性色素23Pの日射反射率を高めるように構成されてもよい。この場合には、例えば、二色性色素23Pの分子構造が有する物性によって、無色時における日射反射率よりも有色時の日射反射率を高めるように、二色性色素23Pが構成されてよい。
【0040】
[第2調光装置]
図4が示すように、第2調光装置10Rは、リバース型の調光シート11Rと駆動部12とを備えている。調光シート11Rは、ノーマル型の調光シート11Nが備える層に加えて、第1配向膜27および第2配向膜28を備えている。調光層23は、第1配向膜27と第2配向膜28との間に位置している。第1配向膜27は、調光層23と第1透明電極層21との間に位置し、かつ、調光層23に接している。第2配向膜28は、調光層23と第2透明電極層22との間に位置し、かつ、調光層23に接している。
【0041】
第1配向膜27および第2配向膜28を形成するための材料は、有機化合物、無機化合物、および、これらの混合物である。有機化合物は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、および、シアン化化合物などである。無機化合物は、シリコン酸化物、酸化ジルコニウムなどである。なお、配向膜27,28を形成するための材料は、シリコーンであってもよい。シリコーンは、無機性の部分と有機性の部分とを有する化合物である。
【0042】
第1配向膜27および第2配向膜28は、例えば垂直配向膜である。垂直配向膜は、第1透明電極層21に接する面とは反対側の面、および、第2透明電極層22に接する面とは反対側の面に対して垂直であるように、液晶分子の長軸方向を配向させる。このように、配向膜27,28は、調光層23が含む複数の液晶分子における配向を規制する。
【0043】
図5および
図6は、調光層23の一部を模式的に示している。なお、
図5は、調光層23の非通電時における調光層23の状態を模式的に示す一方、
図6は、調光層23の通電時における調光層23の状態を模式的に示している。
【0044】
図5が示すように、調光層23は、ノーマル型の調光シート11Nが備える調光層23と同様に、空隙23Dを含む透明高分子層23T、および、空隙23Dに充填された液晶組成物23Lを含んでいる。液晶組成物23Lは、液晶分子23LMと二色性色素23Pとを含んでいる。ただし、液晶組成物23Lは、液晶分子23LMとして、誘電異方性が負であるネガ型のネマチック液晶を含んでいる。また、調光層23における二色性色素23Pの含有率は、調光シート11Nと同様に、調光層23の総重量を100重量%に設定する場合に、1重量%以上5重量%以下であってよい。
【0045】
図5が示すように、調光層23に対して電圧が印加されていない状態では、液晶分子23LMは、配向膜27,28の配向規制力によって、上述した接触面に対して垂直に配向する。これにより、二色性色素23Pは、液晶分子23LMと同様に、垂直に配向する。そのため、調光層23、ひいては調光シート11Rは、調光層23に対して電圧が印加されていない状態において、透明である。これにより、調光シート11Rは、相対的に低いヘイズ値を有する。また、調光シート11Rは、二色性色素23Pによる色を呈しない、すなわち透明を呈する。
【0046】
図6が示すように、調光層23に対して電圧が印加されている状態では、液晶分子23LMは、電界に対して垂直に配向する。調光シート11Rは、調光層23に対して電圧が印加された際に、液晶分子23LMの長軸方向が、上述した接触面に対して平行であるように構成されている。すなわち、液晶分子23LMは、水平配向する。これにより、二色性色素23Pは、液晶分子23LMと同様に、水平配向する。そのため、調光層23、ひいては調光シート11Rは、調光層23に対して電圧が印加されている状態において、不透明である。これにより、調光シート11Rは、相対的に低いヘイズ値を有する。また、調光シート11Rは、二色性色素23Pによる所定の色を呈する。
【0047】
本開示の調光シート11Rは、調光シート11Rが有する遮蔽係数を調光シート11Rにおける日射の反射および吸収の少なくとも一方によって低めるように構成されている。調光シート11Rにおける透明時の遮蔽係数と、不透明時の遮蔽係数との差分値が0.08以上0.14以下である。遮蔽係数は、JIS A 5759:2016「建築窓ガラス用フィルム」に準拠した方法によって求められる。
【0048】
二色性色素23Pは、例えば、調光シート11Rにおける透明時の日射反射率よりも不透明時の日射反射率を高めるように構成されてよい。この場合には、調光シート11Rにおいて、二色性色素23Pは、液晶組成物23Lに含まれる液晶分子23LMとともに、透明時の日射反射率よりも不透明時の日射反射率を高めるように構成されてよい。
【0049】
またあるいは、二色性色素23Pは、二色性色素23Pの無色時における日射反射率よりも有色時の日射反射率を高めるように構成されてもよい。すなわち、リバース型の調光シート11Rでは、二色性色素23Pは、調光層23に電圧が印加されていないときにおける二色性色素23Pの日射反射率よりも、調光層23に電圧が印加されているときの二色性色素23Pの日射反射率を高めるように構成されてもよい。
【0050】
第2調光装置10Rにおいて、調光シート11Rにおける不透明時の日射反射率が7%以上22%以下であってよい。
【0051】
[作用および効果]
上述した調光シート11N,11Rの作用および効果を説明する。
本開示の調光シート11N,11Rによれば、遮蔽係数の差分値が0.08以上であるから、調光シートの透明時に調光シートによって遮蔽する熱量と、調光シートの不透明時に調光シートによって遮蔽する熱量とを切り替えることが可能である。また、遮蔽係数の差分値が0.14以下であるから、日射の反射により遮蔽係数を低め、これによって透明時と不透明時との遮蔽係数を異ならせたとしても、調光シートの不透明時において、調光シートがぎらつかない程度に日射の反射を抑えることが可能である。
【0052】
上述したように、二色性色素23Pは、調光シート11Nにおける透明時の日射反射率よりも不透明時の日射反射率を高めるように構成されてよい。この場合には、二色性色素23Pは、液晶分子23LMとともに配向を変えることによって、液晶分子23LMとともに、不透明時の日射反射率を透明時の日射反射率よりも高めることが可能である。
【0053】
上述したように、二色性色素23Pが二色性色素23Pの無色時における日射反射率よりも有色時の日射反射率を高めるように構成されてよい。この場合には、二色性色素23Pが有する日射反射率の変化によって、調光シート11N,11Rにおける透明時の日射反射率と、不透明時の日射反射率とを異ならせることが可能である。
【0054】
調光シート11N,11Rにおける不透明時の日射反射率が7%以上であることによって、不透明時の遮蔽係数を低下させ、これによって、透明時と不透明時における遮蔽係数の差分値を大きくすることが可能である。また、調光シート11N,11Rにおける不透明時の日射反射率が22%以下であることによって、不透明時における調光シート11N,11Rのぎらつきを抑えることが可能である。
【0055】
なお、調光シート11N,11Rの不透明時における日射反射率は、透明高分子層23Tに対する液晶組成物23Lの配合比を維持した状態で、調光層23における二色性色素23Pの含有率を高めることによって高まる。反対に、調光シート11N,11Rの不透明時における日射反射率は、透明高分子層23Tに対する液晶組成物23Lの配合比を維持した状態で、調光層23における二色性色素23Pの含有率を低めることによって低まる。
【0056】
調光シート11N,11Rの不透明時における日射反射率は、調光層23における後方散乱を高めるように空隙23Dを構成し、かつ、調光層23に対する二色性色素23Pの含有率を維持することによっても高まる。この際、空隙23Dは、調光層23の単位体積当たりにおける空隙23Dの表面積を高めることによって、後方散乱を高めることができる。
【0057】
また、調光シート11N,11Rの不透明時における日射吸収率は、透明高分子層23Tに対する液晶組成物23Lの配合比を維持した状態で、調光層23における二色性色素23Pの含有率を低めることによって高まる。反対に、調光シート11N,11Rの不透明時における日射吸収率は、透明高分子層23Tに対する液晶組成物23Lの配合比を維持した状態で、調光層23における二色性色素23Pの含有率を高めることによって低まる。
【0058】
調光シート11N,11Rの不透明時における日射吸収率は、調光層23における散乱を高めるように空隙23Dを構成し、かつ、調光層23に対する二色性色素23Pの含有率を維持することによっても高まる。この際、空隙23Dは、調光層23の単位体積当たりにおける空隙23Dの表面積を高めることによって、散乱を高めることができる。
【0059】
また、調光シート11N,11Rの不透明時における遮蔽係数は、日射の透過率、および、可視光線の透過率を高めることによって、高まる。調光シート11N,11Rの不透明時における日射の透過率は、日射の反射率および日射の吸収率の両方を低めるか、あるいは、一方の増加を上回る程度に他方を減少させることによって高まる。また、調光シート11N,11Rの不透明時における可視光線の透過率は、可視光線の反射率および可視光線の吸収率の両方を低めるか、あるいは、一方の増加を上回る程度に他方を減少させることによって高まる。
【0060】
反対に、調光シート11N,11Rの不透明時における日射の透過率は、日射の反射率および日射の吸収率の両方を高めるか、あるいは、一方の減少を上回る程度に他方を増加させることによって低められる。また、調光シート11N,11Rの不透明時における可視光線の透過率は、可視光線の反射率および可視光線の吸収率の両方を高めるか、あるいは、一方の減少を上回る程度に他方を増加させることによって低められる。
【0061】
[実施例]
図7および
図8を参照して、実施例および比較例を説明する。
[比較例1]
125μmの厚さを有したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、30μmの厚さを有した酸化インジウムスズ(ITO)膜が積層された透明導電フィルムを一対準備した。なお、PETフィルムは透明基材の一例であり、ITO膜は、透明電極層の一例である。
【0062】
調光層を形成するための塗液として、以下の組成を有した塗液を準備した。なお、塗液に含まれる各材料の含有量は、塗液における総重量に対する比率である。
【0063】
液晶分子:ポジ型ネマチック液晶(ネマチック‐等方相転移温度110℃、メルク社製、MNC‐6609)、50重量%
二色性色素:二色性色素
SI-486(三井化学ファイン(株)製)0.6重量%、
SI-426(三井化学ファイン(株)製)1.0重量%
SI-497(三井化学ファイン(株)製)1.4重量%
光重合性化合物:イソボニルアクリレート(新中村化学工業(株)製、A-IB)、44重量%
硬化助剤:ペンタエリスリトールテトラキス(3‐メルカプトブチレート)(昭和電工(株)製)、1重量%
重合開始剤:1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IGM Resins B.V.製、Omnirad 184)(Omniradは登録商標)、1重量%
スペーサー:PMMA製の真球状粒子、粒径15μm、(積水化成品工業(株)製)、1重量%
【0064】
一方の透明導電フィルムにおけるITO膜に、塗液を塗布した。次いで、他方の透明導電フィルムにおけるITO膜が塗液に接するように、一対の透明導電フィルムによって塗膜を挟んだ。そして、一方の透明導電フィルムが備えるPETフィルムに第1紫外線照射装置を対向させ、かつ、他方の透明導電フィルムが備えるPETフィルムに第2紫外線照射装置を対向させた状態で、塗膜に紫外線を照射した。この際に、各紫外線照射装置における紫外線の強度を5mW/cm2に設定し、かつ、紫外線の照射時間を100秒に設定した。これにより、比較例1の調光シートを得た。
【0065】
[比較例2]
比較例1において、二色性色素のうち、SI-486の配合比を0.5重量%に変更し、SI-426の配合比を0.5重量%に変更し、かつ、SI-497の配合比を2.0重量%に変更した以外は、比較例1と同様の方法で、比較例2の調光シートを得た。
【0066】
[実施例1]
比較例1において、二色性色素のうち、SI-486の配合比を0.5重量%に変更し、SI-426の配合比を0.4重量%に変更し、SI-497の配合比を2.1重量%に変更した以外は、比較例1と同様の方法で、実施例1の調光シートを得た。
【0067】
[実施例2]
比較例1において、二色性色素のうち、SI-486の配合比を0.5重量%に変更し、SI-426の配合比を0.5重量%に変更し、SI-497の配合比を2.1重量%に変更した。また、比較例1において光重合性化合物の配合比を43.9重量%に変更した。それ以外は、比較例1と同様の方法で、実施例2の調光シートを得た。
【0068】
[実施例3]
比較例1において、二色性色素のうち、SI-486の配合比を0.4重量%に変更し、SI-426の配合比を0.7重量%に変更し、SI-497の配合比を1.9重量%に変更した以外は、比較例1と同様の方法で、実施例3の調光シートを得た。
【0069】
[実施例4]
比較例1において、二色性色素のうち、SI-486の配合比を0.3重量%に変更し、SI-426の配合比を1.2重量%に変更し、SI-497の配合比を1.5重量%に変更した以外は、比較例1と同様の方法で、実施例4の調光シートを得た。
【0070】
[実施例5]
比較例1において、二色性色素のうち、SI-486の配合比を0.2重量%に変更し、SI-426の配合比を2.1重量%に変更し、SI-497の配合比を0.7重量%に変更した以外は、比較例1と同様の方法で、実施例5の調光シートを得た。
【0071】
[比較例3]
比較例1において、二色性色素のうち、SI-486の配合比を0.0重量%に変更し、SI-426の配合比を2.1重量%に変更し、SI-497の配合比を1.9重量%に変更した。また、比較例1において光重合性化合物の配合比を43重量%に変更した。それ以外は、比較例1と同様の方法で、比較例3の調光シートを得た。
【0072】
[評価方法]
[遮蔽係数]
各実施例の調光シート、および、各比較例の調光シートについて、不透明時における遮蔽係数を算出した。遮蔽係数の算出には、JIS A 5759:2016「建築窓ガラス用フィルム」に準拠した方法を用いた。なお、遮蔽係数の算出に際して、同一のJIS規格に準拠した方法によって、以下のパラメーターの値を算出した。この際に、一対のITO膜間に電圧が印加されていないときの調光シートの状態を不透明に設定した。
【0073】
・夏季の日射熱取得率
・冬期の日射熱取得率
・日射反射率(%)
・日射透過率(%)
・日射吸収率(%)
・可視光線反射率(%)
・可視光線透過率(%)
・紫外線透過率(%)
・熱貫流率(W/m2K)
【0074】
また、実施例1の調光シートについて、透明時における遮蔽係数、および、上述したパラメーターの値を同一のJIS規格に準拠した方法によって算出した。この際に、一対のITO膜間に100Vの電圧を印加し、これによって、調光シートのヘイズ値が飽和したときの調光シートの状態を透明に設定した。なお、各実施例の調光シート、および、各比較例の調光シートでは、分光は異なるが日射透過率が同一となるように調整したから、透明時における上記各パラメーターの値は、実施例1以外の調光シートにおいても同一である。
【0075】
透明時における遮蔽係数から不透明時における遮蔽係数を減算することによって、遮光係数の差分値を算出した。
【0076】
[筐体内の温度変化]
各実施例の調光シートおよび各比較例の調光シートについて、以下の温度測定装置を準備することにより、透明時における筐体内の温度と、不透明時における筐体内の温度を測定した。
【0077】
図7が示すように、温度測定装置30は、筐体31と、筐体31の一部に位置する窓32とを備えている。筐体31は、アクリル樹脂から形成された白色の箱体である。窓32は、ガラス板によって形成されている。ガラス板において対向する一対の面のうち、筐体31の内表面に含まれる面に、調光シート11Nが貼り付けられている。
【0078】
温度測定装置30は、熱照射部33を備えている。熱照射部33は、白熱電球である。白熱電球は、窓32と調光シート11Nとの積層体に対向するように配置されている。筐体31内には、温度測定部35と、温度測定部35を支持する支持部34とが位置している。温度測定部35は、筐体31内の温度を測定する。
【0079】
筐体内の温度変化を測定する際には、まず、調光シート11Nが透明を呈するように、調光シート11NのITO膜間に電圧を印加した。次いで、熱照射部による照射を開始し、かつ、熱照射部33による照射を1時間にわたって継続した。照射の開始から1時間が経過した時点において、温度測定部35によって、筐体31内の温度を測定した。
【0080】
次いで、調光シート11NのITO膜間への電圧の印加を停止し、これによって、調光シート11Nに不透明の状態を呈させた。そして、熱照射部33による照射条件を維持した状態で、熱照射部33による照射を1時間にわたって継続した。調光シート11Nの状態を透明から不透明に変更した時点から1時間が経過した時点において、温度測定部35によって、筐体31内の温度を測定した。
【0081】
調光シート11Nが不透明である状態で測定した温度から、調光シート11Nが透明である状態で測定した温度を減算することによって、温度の変化量を算出した。
【0082】
[調光シートのぎらつき]
各実施例の調光シート、および、各比較例の調光シートについて、LED光源によって照明された建物内において、不透明の状態を目視で観察した。以下の評価指標に基づいて、調光シートがぎらつかないか(○)あるいはぎらつくか(×)を判断した。
【0083】
○ 調光シートを正面視した場合に、調光シートから反射される光を眩しいと感じない。
× 調光シートを正面視した場合に、調光シートから反射される光を眩しいと感じる。
【0084】
[結果]
各パラメーターの値、遮光係数の差分値、および、温度の変化量の算出結果、および、調光シートのぎらつきにおける評価結果は、
図8に示す通りであった。
【0085】
図8が示すように、調光シートの不透明時において、実施例1の遮蔽係数は0.82であり、実施例2の遮蔽係数は0.81であり、実施例3の遮蔽係数は0.80であることが認められた。また、調光シートの不透明時において、実施例4の遮蔽係数は0.79であり、実施例5の遮蔽係数は0.76であることが認められた。また、調光シートの不透明時において、比較例1の遮蔽係数は0.87であり、比較例2の遮蔽係数は0.83であり、比較例3の遮蔽係数は0.74であることが認められた。また、調光シートの透明時において、実施例1の遮蔽係数は0.90であることが認められた。
【0086】
遮蔽係数の差分値は、実施例1において0.08であり、実施例2において0.10であり、実施例3において0.11であり、実施例4において0.12であり、実施例5において0.14であることが認められた。また、遮蔽係数の差分値は、比較例1において0.04であり、比較例2において0.07であり、比較例3において0.17であることが認められた。
【0087】
温度の変化量は、実施例1において-1.0℃であり、実施例2において-1.5℃であり、実施例3において-2.1℃であり、実施例4において-2.8℃であり、実施例5において-3.4℃であることが認められた。また、温度の変化量は、比較例1において-0.2℃であり、比較例2において-0.8℃であり、比較例3において-4.2℃であることが認められた。
【0088】
このように、遮蔽係数の差分値が0.08以上であることによって、温度の変化量が-1.0℃以上の値であることが認められた。これに対して、遮蔽係数の差分値が0.08に満たない場合には、温度の変化量も-1.0℃に満たないことが認められた。
【0089】
一方で、調光シートを目視で観察した場合には、実施例1から5、および、比較例1,2の調光シートにおいて、調光シートがぎらつかないことが認められた。これに対して、比較例3の調光シートはぎらつくことが認められた。すなわち、遮蔽係数の差分値が0.14以下であることによって、調光シートのぎらつきが抑えられることが認められた。
【0090】
以上説明したように、調光シートおよび調光装置の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)調光シート11N,11Rの透明時に調光シート11N,11Rによって遮蔽する熱量と、調光シート11N,11Rの不透明時に調光シート11N,11Rによって遮蔽する熱量とを切り替えることが可能である。また、調光シート11N,11Rの不透明時において、調光シート11N,11Rがぎらつかない程度に日射の反射を抑えることが可能である。
【0091】
(2)二色性色素23Pは、液晶分子23LMとともに配向を変えることによって、液晶分子23LMとともに、不透明時の日射反射率を透明時の日射反射率よりも高めることが可能である。
【0092】
(3)二色性色素23Pが有する日射反射率の変化によって、調光シート11N,11Rにおける透明時の日射反射率と、不透明時の日射反射率とを異ならせることが可能である。
【0093】
(4)調光シート11N,11Rにおける不透明時の日射反射率が7%以上であることによって、不透明時の遮蔽係数を低下させ、これによって、透明時と不透明時における遮蔽係数の差分値を大きくすることが可能である。また、調光シート11N,11Rにおける不透明時の日射反射率が22%以下であることによって、不透明時における調光シート11N,11Rのぎらつきを抑えることが可能である。
【0094】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[調光層]
・調光層23の液晶組成物23Lは、二色性色素23Pを含み、これによって上述した遮蔽係数を実現する構成に限らず、以下の構成であってもよい。例えば、液晶組成物23Lは、液晶分子23LMとしてコレステリック液晶を含んでもよい。この場合、液晶分子23LMは、空隙23D内において螺旋状に配向している。液晶分子23LMは、液晶分子23LMの螺旋軸と平行な入射光に対する旋光性を有する。液晶分子23LMは、選択反射能を有し、これによって、螺旋軸の捩じれ方向に一致する円偏光成分をブラッグ反射し、かつ、残りの光を透過させる。液晶分子23LMによって反射される光の中心波長λは、以下の式によって表される。以下の式において、液晶分子23LMの螺旋ピッチがpであり、螺旋軸に直交する平面内での平均屈折率がnである。
λ=n・p
【0095】
コレステリック液晶の平均屈折率は1に近い値であるから、液晶分子23LMは、螺旋ピッチとほぼ同じ長さの波長を有した光を反射する。なお、コレステリック液晶を含む液晶組成物23Lは、上述した第1調光装置に組み合わせられてもよいし、第2調光装置に組み合わせられてもよい。ただし、いずれの調光装置にコレステリック液晶が組み合わせられた場合でも、コレステリック液晶は、透明電極層21,22間に電圧が印加されていない状態において日射の透過率が相対的に低い一方で、透明電極層21,22間に電圧が印加されている状態において日射の透過率が相対的に高い。
【0096】
こうしたコレステリック液晶の特性を用いることによって、遮蔽係数の差分値が0.08以上0.14以下であるように調光シートを構成することが可能である。
【0097】
[駆動部]
・駆動部12は、調光シート11N,11Rにおける透明時の遮蔽係数と不透明時の遮蔽係数との差分値が0.08以上0.14以下になる電圧を透明時と不透明時とに印加するように構成されてもよい。この場合には、調光シート11N,11Rの駆動を制御する駆動部12は、互いに異なる遮蔽係数を電圧に変換するためのテーブルなどの情報を備えている。駆動部12は、例えば、外部の操作機器などから指定される遮蔽係数に対応付けられた電圧を印加する。駆動部12は、調光シート11N,11Rの透明時に、第1の遮蔽係数に紐付けられた第1の電圧を印加した場合に、調光シート11N,11Rの不透明時に、第2の遮蔽係数であって、第1の遮蔽係数との差分値が0.08以上0.14以下となるような第2の電圧を印加するように構成される。第1の遮蔽係数および第2の遮蔽係数のいずれか一方が、外部の操作機器などによって指定されてよい。
【0098】
または、第1の遮蔽係数および第2の遮蔽係数の両方が、外部の操作機器などによって指定されてもよい。この場合には、駆動部12は、第1の遮蔽係数および第2の遮蔽係数のうち最初に指定された遮蔽係数に応じて、次に指定される遮蔽係数を制限するような信号を、外部の操作機器などに送信してもよい。
【0099】
こうした駆動部12を備える調光装置によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(5)遮蔽係数の差分値が0.08以上であるように電圧を印加するから、調光シート11N,11Rの透明時に調光シート11N,11Rによって遮蔽する熱量と、調光シート11N,11Rの不透明時に調光シート11N,11Rによって遮蔽する熱量とを切り替えるように、調光シート11N,11Rを駆動することができる。また、遮蔽係数の差分値が0.14以下であるように電圧を印加するから、日射の反射により遮蔽係数を低め、これによって透明時と不透明時との遮蔽係数を異ならせたとしても、調光シート11N,11Rの不透明時において、調光シート11N,11Rがぎらつかない程度に日射の反射を抑えることが可能である。
【符号の説明】
【0100】
10N…第1調光装置
10R…第2調光装置
11N,11R…調光シート
12…駆動部
21…第1透明電極層
22…第2透明電極層
23…調光層
23D…空隙
23T…透明高分子層
23L…液晶組成物
23LM…液晶分子
23P…二色性色素