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特開2023-176532クラフトリグニン含有フェノール樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176532
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】クラフトリグニン含有フェノール樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/20 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
C08G8/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088865
(22)【出願日】2022-05-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】真清 武
(72)【発明者】
【氏名】北川 拓実
【テーマコード(参考)】
4J033
【Fターム(参考)】
4J033CA01
4J033CA11
4J033CA37
4J033CC03
4J033CC08
4J033HA03
4J033HB09
(57)【要約】
【課題】
クラフトリグニン(K)とフェノール樹脂の不揮発分が同程度である時、塗布するのに最適な粘度、良好な保存性、剥離試験結果、仮接着性試験結果が有られる、クラフトリグニン(K)含有フェノール樹脂の製造方法を確立することである。
【解決手段】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、フェノール樹脂を製造する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、フェノール樹脂を製造する方法。
【請求項2】
フェノール類(P)100質量部に対し、クラフトリグニン(K)が、有効成分として10~60質量部、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)が、有効成分として0.05~10質量部である請求項1に記載のフェノール樹脂樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合板、LVL(Laminated Veneer Lumber)等の接着剤用途として使用され、環境問題に対応できるように、バイオマス材料であるクラフトリグニン(K)を含有するフェノール樹脂を安定的に製造できる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、環境問題が重要な社会的な課題として国際社会に広く認識されている。このような中、化学分野では、バイオマス材料を利用した開発が盛んに行われている。
特許文献1は、有機媒体や樹脂等の疎水性媒体中において、より少ない機械力で改質セルロースを得る製造方法、及び易解繊性を有する改質セルロースを提供する公報である。
この様にバイオマス材料として、生物学でいうところの木本系材料、草本系材料を利用した公報は、多数公開されている。
【0003】
セルロース以外のバイオマス材料としては、ポリ乳酸、ポリアミド、リグニン等が挙げられる。リグニンは、エポキシ樹脂成形体、フィルムの充填剤として検討されている。接着剤の分野では、リグニンはホットメルト接着剤の充填剤としての利用が検討されている。リグニンは木材の25-30%を構成する芳香族高分子化合物であり、フェノール樹脂系接着剤への利用が検討されるようになってきている。
【0004】
木材からパルプを製造する際の方法としては、酸処理のサルファイトパルプ化法、アルカリ処理のクラフトパルプ化法等が挙げられる。サルファイトパルプ化法では、リグノスルホン酸を主成分とする酸処理リグニンが得られ、この利用が進んでいる。一方、クラフトパルプ化法で得られるクラフトリグニンは、燃料として用いられ、熱として回収される場合が多く、クラフトリグニンの熱回収以外の利用は、酸処理リグニンほど進んでいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-006628
【特許文献2】国際公開2016/098667
【特許文献3】特表2014-516370
【特許文献4】国際公開2017/163163
【0006】
特許文献2は要約書に、「含浸板は、基材と、基材に含浸される樹脂組成物とを含み、樹脂組成物が、リグニンと、フェノール類と、アルデヒド類との反応生成物を含有する。」とあるが、ここで用いられているリグニンは酸処理リグニンである。
特許文献3、特許文献4は、クラフトリグニンを使用しているが、その性能には改善の余地が有った。
クラフトリグニン(K)とフェノール樹脂の不揮発分が同程度である時、塗布するのに最適な粘度、良好な保存性、剥離試験結果、仮接着性試験結果が得られる、クラフトリグニン含有フェノール(K)樹脂が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クラフトリグニン(K)とフェノール樹脂の不揮発分が同程度である時、塗布するのに最適な粘度、良好な保存性、剥離試験結果、仮接着性試験結果が有られる、クラフトリグニン(K)含有フェノール樹脂の製造方法を確立することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、フェノール樹脂を製造する方法。
【発明の効果】
【0009】
クラフトリグニン(K)とフェノール樹脂の不揮発分が同程度である時、塗布するのに最適な粘度、良好な保存性、剥離試験結果、仮接着性試験結果が得られる、クラフトリグニン(K)含有フェノール樹脂の製造方法であるので、環境にやさしく、しかも作業面、性能面で優れた合板、LVLを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明の合板、LVL(Laminated Veneer Lumber)等の接着剤用途として使用され、環境問題に対応できるように、バイオマス材料であるクラフトリグニン(K)を含有するフェノール樹脂を安定的に製造できる方法の一例を示す。
【0011】
本願のクラフトリグニン(K)含有フェノール樹脂は、フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上にて熱処理した後いったん中和を行い、そこにアルカリ触媒(C)、アルデヒド類(F)を添加して反応させることによって得られる。
本願発明において使用されるフェノール類(P)としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、ノニルフェノール、パラ-ターシャリー-ブチルフェノール、パラ-セカンダリー-ブチルフェノール、ナフトール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、ジメチルヒドロキノン、等が挙げられる。
【0012】
クラフトリグニン(K)とは、紙パルプ製造プロセスの化学パルプ化のパルプ廃液に含まれるリグニン成分を、アルカリ処理して得られる材料である。
クラフトリグニン(K)の添加量は、フェノール類(P)100質量部に対し、有効成分として10~60質量部、より好適には15~55質量部である。
クラフトリグニン(K)は、Stora Enso Oyj社より、100%品、および含水クラフトリグニンが市販されている。
【0013】
カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液は、無機酸としては濃硫酸、濃亜硫酸、濃塩酸、濃硝酸、リン酸、有機酸としては、パラトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。尚、カルボキシル基を有する酸は、クラフトリグニン(K)含有フェノール樹脂の粘度が高く、優れた接着性を得ることができないので、使用しない方がよい。
カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)の添加量は有効成分として、フェノール類(P)100質量部に対し0.05~10質量部、より好適には0.1~8質量部である。
【0014】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液の熱処理温度は、85℃以上、より好適には90℃以上である。処理時間としては、0.1~5時間、より好適には0.5~3時間である。尚、処理温度を高くすることで、処理時間を短くすることができる。
熱処理後は、pHが3以上に成るようにアルカリ成分で中和させて、次の工程に進むことができる。アルカリ成分としては、次項で述べるアルカリ触媒(C)と同様の化合物を用いることができる。中和のためのアルカリ成分の添加量としては有効成分として、フェノール類(P)100質量部に対し0.05~1量部、より好適には0.1~0.8質量部である。
【0015】
フェノール類(P)とアルデヒド類(F)とを反応させる際に用いるアルカリ触媒(C)としては、特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の塩基性触媒を適宜使用することができる。
アルカリ触媒(C)の添加量としては有効成分として、フェノール類(P)100質量部に対し1.5~40質量部、より好適には6~33質量部である。
本願のクラフトリグニン(K)含有フェノール樹脂は、アルカリ触媒(C)は、反応による発熱が激しい場合は、多段階に分割して投入することもできる。また、溶解させる時間を省くために、予め水に溶解させたアルカリ触媒(C)を使用することができる。
【0016】
アルデヒド類(F)としてはフェノール樹脂の製造に使用可能とされているアルデヒド類(F)であれば使用可能である。
例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン(メタホルムアルデヒド)などを単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
アルデヒド類(F)の添加量は有効成分として、フェノール類(P)100質量部に対し40~100質量部、より好適には50~90質量部である。
アルカリ触媒(C)同様、予め水に溶解させたアルデヒド類(F)を使用することもできる。
【0017】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液の熱処理、アルカリ成分中和後、フェノール類(P)とアルデヒド類(F)とを反応させる際に用いるアルカリ触媒(C)の反応は、一段階で行うこともできるが、この反応は発熱反応のため、前述のように多段階に分けて反応を行うこともできる。また熱処理後の中和用のアルカリ成分、アルカリ触媒(C)の合計を同時に添加することもできる。
例えば1段階で反応を行う場合、フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液の熱処理、アルカリ成分中和後に、必要なアルデヒド類(F)を添加し、アルカリ触媒(C)の全量を添加して、加熱して反応を行う。
反応温度は70~110℃、より好適には80~100℃であり、反応時間は1~8時間、より好適には6~7時間である。
【0018】
反応終了後、pH調整のため、アルカリ成分を添加することができる。pH調整のためのアルカリ成分の添加量としては有効成分として、フェノール類(P)100質量部に対し1~20量部、より好適には2~10質量部である。
【0019】
本願のクラフトリグニン(K)含有フェノール樹脂は、フェノール類(P)と、アルデヒド類(F)を反応させた後、未反応のアルデヒド類(F)をトラップするため、尿素およびその誘導体、レゾルシンを添加することができる。これらの添加量としては有効成分として、フェノール類(P)100質量部に対し0~60質量部、より好適には0~50質量部である。
また、クラフトリグニン(K)含有フェノール樹脂は、粘度調整のために水を添加することができる。水の添加量としては、フェノール類(P)100質量部に対し1~20質量部、より好適には5~15質量部である。この時のクラフトリグニン(K)含有フェノール樹脂の不揮発分は、40~50%となる。この範囲から外れると、良好な減圧加圧はく離試験結果、仮接着性試験結果が得られない可能性が有る。
【0020】
合板、LVLを作製する場合の接着剤組成物は、フェノール樹脂に添加物を添加して、均一にした接着剤組成物を用い作製されるのが一般的な方法である。水を含むフェノール樹脂100質量部に対し、水を5~40質量部、より好適には10~30質量部、小麦粉を1~20質量部、より好適には5~15質量部、炭酸カルシウムを5~40質量部、より好適には10~30質量部、小麦粉を1~20質量部、より好適には5~25質量部、炭酸ナトリウムを0.5~20質量部、より好適には1~10質量部添加し、均一にすることで合板、LVL作製用接着剤組成物が得られる。
【0021】
<LVLの作製方法について>
LVLの13プライについて説明を行う。被着材の片面に、接着剤組成物を100~300g/m2、より好適には120~200g/m2となる様にそれぞれ塗布される。全て木目に平行にフェイス/コア/バックとなる様に重ね合わせられて、0.4~1.2MPa、より好適には0.6~1.0MPaにて5~35分間、より好適には10~30分間コールドプレスが行われる。
次に、100~170℃、より好適には110~160に加熱した熱圧プレスにて、圧力が0.4~1.2MPa、より好適には0.6~1.0MPa、プレス時間は800~2200秒、より好適には1000~2000秒にて圧諦することにより得ることができる。
【0022】
以下に、本発明について実施例、比較例および試験例等を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。
【実施例0023】
pH測定
pH測定は、東亜ティーケーケー社製、製品名:HM-25H、pHメーターを用い測定を行った。
【0024】
0.1mol/Lの水溶液のpH測定
0.1mol/Lの各水溶液を調整し、上記pHメーターを用い、pHを測定した。結果を表1、表2に示す。
【0025】
実施例1のフェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、酸(A)水溶液の処理方法
フェノール100g、63%-含水クラフトリグニンを50g(有効成分31.5g)、20%-硫酸を1g(有効成分0.2g)容器に秤取って、器内の温度が110℃になってから、1時間攪拌を行った。室温に戻す段階で、pHが3以上に成るようにアルカリ成分である48%-水酸化ナトリウム水溶液を0.52g(有効成分0.25g)添加し均一にした。
【0026】
実施例2~8、比較例1~10のフェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、酸(A)水溶液の処理方法
実施例1のフェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、酸(A)水溶液の処理方法と同様の方法で、表3、表4に示す割合で、実施例2~8、比較例1~10のフェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、酸(A)水溶液の処理を行った。
尚、実施例8は、100%-クラフトリグニンを用い、系中に水が殆ど存在せず、処理温度を100℃以上にできるので、120℃にて処理を行った。処理時間は0.5時間であった。処理終了後、水を23g足すことによって不揮発分を他の例とおおよそ合わせた。尚、表3、表4の()内は、有効成分としての質量を表している。
【0027】
実施例1のクラフトリグニン含有フェノール樹脂の製造方法
実施例1のフェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、酸(A)水溶液の処理方法で得られた液に、37%-ホルムアルデヒド水溶液を170g(有効成分62.9g)、48%-水酸化ナトリウム水溶液を45g(有効成分21.6g)、水を70g加え、90℃にて6時間反応を行った。
この後、pH調整のため48%-水酸化ナトリウム水溶液を15g(有効成分7.2g)、未反応のアルデヒド類(F)をトラップするために尿素を20g、粘度調整のため水を10g添加して、均一にした。
【0028】
実施例2~8、比較例1~10のクラフトリグニン含有フェノール樹脂の製造方法
実施例1のクラフトリグニン含有フェノール樹脂の製造方法と同様の方法で、実施例2~8、比較例1~10のクラフトリグニン含有フェノール樹脂を作製した。
【0029】
不揮発分
口径65mm、底径55mm、深さ20mm、厚さ0.05mmのアルミパンに、試料約1.5gを秤量し、初期重量とした。予め105±1℃に調整した恒温層に、試料を載せたアルミパンを投入し、3時間後の乾燥重量を測定した。乾燥後重量を初期重量で除し、百分率で表した値を不揮発分とした。結果を表5、表6に示す。
【0030】
粘度
実施例1~8、比較例1~10のクラフトリグニン含有フェノール樹脂の製造方法で得られた液の粘度を、JIS-Z-8803に準じて、測定を行った。粘度計は、芝浦システム社製、単一円筒型回転粘度計、商品名:ビスメトロンVG-A1にて行った。また、測定条件として、No.2ローター、60rpm、60秒値、23±1℃にて測定し、当該測定値を粘度とした。塗布するのに最適な粘度範囲は、200~250mPa・sである。粘度が高い場合、水を添加すれば粘度を合わせることができるが、その場合不揮発分が変化し、良好な減圧加圧はく離試験結果、仮接着性試験結果が得られないことが分かっている。
結果を表5、表6に示す。
【0031】
保存性
実施例1~8、比較例1~10のクラフトリグニン含有フェノール樹脂の製造方法にて得られた液を、20±5℃環境下にて2週間保管し、保管後の粘度を測定した。保管後の粘度を初期粘度にて除した値を表5、表6に示す。判定基準は、0.9~1.5が合格、この値から外れる場合は不合格である。
【0032】
実施例1の接着剤組成物の作製
実施例1のフェノール樹脂を100g、水を25g、小麦粉を10g、炭酸カルシウムを25g、炭酸ナトリウムを5g、撹拌容器に秤取り、撹拌羽を装着した新東科学社製、商品名:スリーワンモーターBL600にて30~60分間撹拌を行い実施例1の接着剤組成物を得た。
【0033】
実施例2~8、比較例1~10の接着剤組成物の作製
実施例1の組成物の作製と同様の手順で、実施例2~8、比較例1、比較例5~6の接着剤組成物を作製した。尚、比較例2~4、比較例7~10は、クラフトリグニン含有フェノール樹脂の製造方法で得られた液の粘度が適正範囲でなかったので、接着剤組成物を作製していない。
【0034】
13プライLVLの作製方法
3.8mm厚の杉を選定した。13ply構成のLVLにて、圧を掛けて貼り合わせた後の厚みが45mmとなる様にした。尚、これら材質の含水率は、6%以下で、各材質の面積は300mm×300mm、各材質の温度は23℃、作業環境は24℃である。
杉材の片面に、接着剤組成物を220g/m2となる様にそれぞれ塗布し、全て木目に平行にフェイス/コア/バックとなる様に重ね合わせた。0.8MPaにて20分間コールドプレスを行った。
次に、135℃に加熱した熱圧プレスに圧力が0.8MPa掛かる様に設定し、プレス時間1575秒にて試験片を作製した。
尚、熱圧プレス機は、イツミ社製の垂直2段強圧プレス機、S2D-100を用いた。
【0035】
減圧加圧はく離試験
単板積層材の日本農林規格の使用環境Aに則って減圧加圧はく離試験を行った。75×75mm角の試験片を室温の水中に浸漬し、0.085MPa以上の減圧を5分行い、更に0.51±0.03MPaの加圧を1時間行った。この処理を2回繰り返した後、70℃±3℃の恒温乾燥機に入れ、試験前の質量の100~110%の範囲となるように乾燥させた。上記処理を2回繰り返した後、はく離長さを測定、はく離率を計算した。判定基準は、はく離率5%以内、1接着層のはく離長さが、1/4以下である。これらの基準を満たすものを合格(:〇)、満たさないものを不合格(:×)とした。結果を表5、表6に示す。
【0036】
仮接着性試験
65mm×145mm×4mm厚のMDF(medium-density fiberboard)を2枚、45mm×145mm×9mm厚のMDFを一枚準備した。9mm厚のMDFの両面に、実施例、比較例の接着剤組成物液を40g/尺2、両面に塗布し、短辺の両端、長辺の片端を揃える様にして、4mm厚のMDFを2枚、上下に重ね合わせた。
23℃にて、0.8MPa、10分間加圧し、圧を解除した後25mm幅に切り出した。
治具を予め空けておいた隙間に差し込み、エー・アンド・デイ社製、商品名:テンシロンを用いて、23℃雰囲気下、10mm/minの速度で引き裂き接着強さを測定した。n=4平均である。判定基準は、150N以上は合格、150N未満は不合格である。結果を表5、表6に示す。尚、比較例5、比較例6は減圧加圧はく離試験が不合格となったので、試験を行っていない。
【0037】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、フェノール樹脂を製造した実施例1~8は、粘度、保存性、減圧加圧はく離試験、仮接着性試験、全て合格となった。
【0038】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、フェノール樹脂を製造する方法のうち、クラフトリグニンを使用していない比較例1は、粘度、減圧加圧はく離試験、仮接着試験は合格となったものの保存性は不合格となった。クラフトリグニンを使用しないと、保存安定性が悪いことが示された。
【0039】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、フェノール樹脂を製造する方法のうち、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を添加していない比較例2、カルボキシル基を有する酸であるシュウ酸を用い、かつ特にシュウ酸の添加量が少ない比較例3、フマル酸、トリカルバリル酸を使用した比較例6、比較例7、水酸化ナトリウムにて処理を行った比較例8、比較例9、比較例10は、粘度が適正粘度より高く、クラフトリグニン(K)が十分に処理されていないことが示唆される。
【0040】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、フェノール樹脂を製造する方法のうち、カルボキシル基を有する酸であるシュウ酸を用い、比較例3よりも添加量の多い比較例4、比較例5は、粘度は適正粘度となったが、減圧加圧はく離試験が不合格となり、仮接着性試験は行っていない。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
【表6】
【手続補正書】
【提出日】2022-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合板、LVL(Laminated Veneer Lumber)等の接着剤用途として使用される、アルカリ触媒(C)を用いてフェノール樹脂を製造する方法であって、
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、アルカリ触媒(C)を用いてフェノール樹脂を製造する方法。
【請求項2】
フェノール類(P)100質量部に対し、クラフトリグニン(K)が、有効成分として10~60質量部、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)が、有効成分として0.05~10質量部である請求項1に記載のフェノール樹脂の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、アルカリ触媒(C)を用いてフェノール樹脂を製造する方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、アルカリ触媒(C)を用いてフェノール樹脂を製造した実施例1~8は、粘度、保存性、減圧加圧はく離試験、仮接着性試験、全て合格となった。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、アルカリ触媒(C)を用いてフェノール樹脂を製造する方法のうち、クラフトリグニンを使用していない比較例1は、粘度、減圧加圧はく離試験、仮接着試験は合格となったものの保存性は不合格となった。クラフトリグニンを使用しないと、保存安定性が悪いことが示された。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、アルカリ触媒(C)を用いてフェノール樹脂を製造する方法のうち、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を添加していない比較例2、カルボキシル基を有する酸であるシュウ酸を用い、かつ特にシュウ酸の添加量が少ない比較例3、フマル酸、トリカルバリル酸を使用した比較例6、比較例7、水酸化ナトリウムにて処理を行った比較例8、比較例9、比較例10は、粘度が適正粘度より高く、クラフトリグニン(K)が十分に処理されていないことが示唆される。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、アルカリ触媒(C)を用いてフェノール樹脂を製造する方法のうち、カルボキシル基を有する酸であるシュウ酸を用い、比較例3よりも添加量の多い比較例4、比較例5は、粘度は適正粘度となったが、減圧加圧はく離試験が不合格となり、仮接着性試験は行っていない。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類(P)100質量部に対し、クラフトリグニン(K)が、有効成分として10~60質量部、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)が、有効成分として0.05~10質量部である水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、フェノール樹脂を製造する方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、フェノール樹脂を製造する方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、フェノール樹脂を製造した実施例1~8は、粘度、保存性、減圧加圧はく離試験、仮接着性試験、全て合格となった。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、フェノール樹脂を製造する方法のうち、クラフトリグニンを使用していない比較例1は、粘度、減圧加圧はく離試験、仮接着試験は合格となったものの保存性は不合格となった。クラフトリグニンを使用しないと、保存安定性が悪いことが示された。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、フェノール樹脂を製造する方法のうち、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を添加していない比較例2、カルボキシル基を有する酸であるシュウ酸を用い、かつ特にシュウ酸の添加量が少ない比較例3、フマル酸、トリカルバリル酸を使用した比較例6、比較例7、水酸化ナトリウムにて処理を行った比較例8、比較例9、比較例10は、粘度が適正粘度より高く、クラフトリグニン(K)が十分に処理されていないことが示唆される。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
フェノール類(P)、クラフトリグニン(K)、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、フェノール樹脂を製造する方法のうち、カルボキシル基を有する酸であるシュウ酸を用い、比較例3よりも添加量の多い比較例4、比較例5は、粘度は適正粘度となったが、減圧加圧はく離試験が不合格となり、仮接着性試験は行っていない。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
【表6】
【手続補正書】
【提出日】2022-12-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類(P)100質量部に対し、クラフトリグニン(K)が、有効成分として10~60質量部、カルボキシル基を有する酸を除く0.1mol/LのpHが1.8以下である酸(A)が、有効成分として0.05~10質量部からなる水溶液を、85℃以上の温度にて熱処理してから、フェノール樹脂を製造する方法。