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特開2023-176557油中水型乳化油脂組成物およびそれを用いた菓子、パン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176557
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】油中水型乳化油脂組成物およびそれを用いた菓子、パン
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/005 20060101AFI20231206BHJP
   A21D 2/14 20060101ALI20231206BHJP
   A21D 10/02 20060101ALI20231206BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20231206BHJP
   A23D 7/00 20060101ALI20231206BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20231206BHJP
【FI】
A23D7/005
A21D2/14
A21D10/02
A21D13/00
A23D7/00 506
A21D13/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088899
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】難波 真紀子
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG02
4B026DG04
4B026DG15
4B026DH05
4B026DK01
4B026DK05
4B026DL03
4B026DP01
4B026DP03
4B026DP04
4B026DX05
4B032DB01
4B032DB05
4B032DG02
4B032DK02
4B032DK12
4B032DK18
4B032DK43
4B032DK47
4B032DK54
4B032DL11
4B032DP08
4B032DP33
4B032DP40
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の課題は、バター風味に優れた油中水型乳化油脂組成物およびそれを用いた菓子、パンを提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、(A)食用油脂中に、(B)バター、(C)米油由来ガム質を含有する油中水型乳化油脂組成物を提供する。本発明の油中水型乳化油脂組成物によれば、食用油脂、バター、米油由来ガム質を含有することで、米油由来ガム質がバターに含まれる乳タンパク質の熱による凝集を抑制し、バターの風味に優れた油中水型乳化油脂組成物を得られ、さらに本発明の油中水型乳化油脂組成物を用いて製造した菓子およびパンはバター風味がより強く感じられるという効果を奏する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)食用油脂中に、(B)バター、(C)米油由来ガム質を含有する油中水型乳化油脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の油中水型乳化油脂組成物を含有する穀粉生地。
【請求項3】
菓子又はパンであり、請求項2記載の穀粉生地を焼成してなる焼成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑らかな物性であり、バター風味発現性に優れた油中水型乳化油脂組成物およびそれを用いた菓子、パンに関する。
【背景技術】
【0002】
消費者においては、バターの風味が楽しめるテーブルマーガリンや菓子、パンは根強い人気がある。バターは牛乳から分離したクリームを練って固めた食品であり、使用する場合には適切な温度に調温し、使用しやすい物性に調整する必要がある。しかし、バターの使用に適した温度域は小さく、物性的には使用しづらい原料である。そのため、バターと食用油脂を混ぜ合わせ、乳化し、使用しやすい物性に調整した油中水型乳化油脂組成物が使用される。このように、バター入り油中水型乳化油脂組成物は、バターの風味を有し、かつ、使用しやすい物性を有するものである。
バター入り油中水型乳化油脂組成物は、衛生面から製造時に加熱殺菌することは必須の工程である。しかし、加熱殺菌によってバターに含まれる乳タンパクが変性して凝集したり、変性した乳タンパク質が製造ライン中のストレーナーで濾すことで取り除かれることもある。バターに含まれる乳タンパクはバターの美味しさに影響を与えるため、熱変性あるいは、ストレーナーで取り除かれたりすると、バター入り油中水型乳化油脂組成物の風味が低下する原因となる。バター入り油中水型乳化油脂組成物はバターを希釈したものであるから当然バターよりは風味が劣るが、上記の通り希釈の影響以上に、製造時の加熱の影響によって、風味が劣ることがある。
【0003】
近年、バターの価格は高騰しており、少ない使用量でもバターの風味をより強く感じたいという消費者のニーズが高まっている。バター入り油中水型乳化油脂組成物のバター風味を強化する方法として、特許文献1では、乳脂肪の風味が強く発現された油脂組成物について乳脂肪(バター)とナッツオイルを特定の比率で配合する方法が開示されている。また、特許文献2では、精製ホエイタンパク質加水分解物及び乳化剤を配合し、均質化して生クリーム乳化物を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-54437号公報
【特許文献2】特開平7-79699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、製造時の殺菌工程でのバターの乳タンパク凝集は抑制できず、凝集した乳タンパク質は製造工程上で取り除かれるため、配合したバター本来の風味が損なわれ、風味として満足のいく品質ではない。また、特許文献2では、乳化剤が風味に影響し、生クリーム本来の味わい深い乳由来の風味が損なわれてしまうため、生クリームをバターに適用してもバター風味に優れた油中水型乳化油脂組成物は得られない。乳化剤を配合することで乳化を強め、製造時の乳タンパク凝集を抑制することはできるが、乳化剤特有の風味が感じられ、バターの風味が満足できる油中水型乳化油脂組成物とはならない。
以上の通り、製造時の加熱の影響、乳化油脂組成物に添加する乳化剤の影響がなく、バター風味が低減することのない油中水型乳化油脂組成物が望まれている。
すなわち本発明の課題は、バター風味に優れた油中水型乳化油脂組成物およびそれを用いた菓子、パンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は鋭意検討を重ねた結果、食用油脂、バター、米油由来ガム質を含有することで、米油由来ガム質がバターに含まれる乳タンパク質の熱による凝集を抑制し、バターの風味に優れた油中水型乳化油脂組成物を得られること、さらに本発明の油中水型乳化油脂組成物を用いて製造した菓子およびパンはバター風味がより強く感じられることを見出し本発明の完成に至った。
【0007】
すなわち、本発明は下記の〔1〕~〔3〕である。
〔1〕(A)食用油脂中に、(B)バター、(C)米油由来ガム質を含有する油中水型乳化油脂組成物。
〔2〕〔1〕記載の油中水型乳化油脂組成物を含有する穀粉生地。
〔3〕菓子又はパンであり、〔2〕記載の穀粉生地を焼成してなる焼成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、バター風味に優れた油中水型乳化油脂組成物、菓子およびパンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔油中水型乳化油脂組成物〕
本発明の油中水型乳化油脂組成物は、(A)食用油脂中に、(B)バター、(C)米油由来ガム質を含有し、バター風味が優れていることを特徴とする。
【0010】
((A)食用油脂)
(A)食用油脂としては、食用に適する油脂が使用できる。具体的には牛脂、豚脂、魚油、パーム油、パーム核油、菜種油、大豆油、コーン油等の天然の動植物油脂、およびこれらの硬化油、極度硬化油、エステル交換油等が挙げられる。これらを目的に応じて適宜選択し、1種類または2種類以上組み合わせて用いられる。
【0011】
((B)バター)
(B)バターとしては、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、または加工乳から得られた脂肪粒を練圧したものである。これらを目的に応じて適宜選択し、1種類または2種類以上組み合わせて用いる。
また、バター又はクリームからほとんどすべての乳脂肪以外の成分を除去したバターオイルを適宜組み合わせて用いることができる。
【0012】
(B)バターは、(A)食用油脂100質量部に対して、10~70質量部を含有することが好ましく、さらに好ましくは20~50質量部である。10質量部以上であれば、バター風味が得られ、菓子やパンに使用した際のバター風味を付与できる。70質量部以下であれば、使用に適した温度域が大きくなり、物性的には使用しやすくなる。
【0013】
((C)米油由来ガム質)
本発明の(C)米油由来ガム質は、米糠から搾油された精製前の米原油に含まれるガム状の粘着物質であり、米油精製時の副生成物である。各種植物原油の中でも、米原油に特異的に多くガム質が含まれている。
その製造方法は特に限定されないが、米糠を110~120℃のクッカー処理し、水分を低減させたのち、ヘキサンを用いて搾油後、ヘキサンを留去し、得らえた米原油に60~90℃の温水を対油1~3質量%添加し、穏やかに攪拌することにより米油由来ガム質を米原油から析出させ、その後、沈殿、遠心分離など任意の方法により米原油から分離し、乾燥、蒸留等などにより水分を除去して米油由来ガム質を得ることができる。これは米油の一般的な精製工程で得られた副生成物である。
【0014】
本発明の(C)米油由来ガム質には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸等からなるリン脂質混合物、トリグリセライド、遊離脂肪酸、ロウ、その他多種の成分が含まれる混合物であり、その成分のすべてを特定することはできないが、上記の工程を経て米原油から得られたものであり、アセトン不溶物20質量%以上75質量%以下、酸価50以下、水分含量1質量%以下であるものが好ましい。なお、アセトン不溶物は基準油脂分析試験法の「4.3.1-2013 アセトン不溶物」に準じて、酸価は基準油脂分析試験法の「2.3.1-2013 酸価」に準じて測定した。
米糠に含まれるホスホリパーゼの活性や米糠の保存状態、水和方法により得られる米油由来ガム質に含まれるアセトン不溶物量が変動するが、アセトン不溶物量として20~75質量%含むものであれば本発明の油中水型乳化油脂組成物に使用することができる。
【0015】
バターに含まれる乳タンパク質は加熱すると熱変性により、凝集が生じる。これはホエイタンパク質におけるβ-ラクトグロブリンの遊離SH基がカゼインミセル表面に存在するκ-カゼインの遊離SH基と分子間ジスルフィド結合により複合体を形成することに起因している。ホエイタンパク質のβ-ラクトグロブリンが分子内または分子間でジスルフィド結合することも要因として挙げられる。(C)米油由来ガム質は上記分子間に入り込み、ジスルフィド結合を阻害することで乳タンパク質の加熱による凝集を抑制することができる。
それによりバター本来の美味しさを損なうことなく本発明の油中水型乳化油脂組成物を製造することができる。
また、(C)米油由来ガム質は、特有の風味を有し、バターと米油由来ガム質を同時に加熱することで、バターの風味をより強く感じることができるため、本発明の油中水型乳化油脂組成物を菓子やパンの生地に練りこんで使用した際にバター風味に優れた菓子、パンを得ることができる。
【0016】
(C)米油由来ガム質は、(A)食用油脂100質量部に対して、0.01~3.0質量部を含有することが好ましく、特に好ましくは0.1~1.0質量部である。0.01質量部以上であれば、バター加熱時の乳タンパク凝集を抑制する効果が得られ、菓子やパンに使用した際のバター風味向上効果が得られる。3.0質量部以下の場合、米油由来ガム質特有の風味が強くなりすぎず、菓子やパンに使用した際バター風味を際立たせることができる。
【0017】
油中水型乳化油脂組成物製造時の殺菌工程によるバター中の乳タンパク質の変性を防ぎつつ、米油由来ガム質の風味が強くなりすぎないという観点から、(B)バター/(C)米油由来ガム質の質量比が(10~600)/1が好ましく、さらに好ましくは(20~100)/1がさらに好ましい。
【0018】
(その他成分)
本発明の油中水型乳化油脂組成物は、水を含有し、油中水型乳化物の形態である。水の含有量は、特に制限されないが、例えば、1~50質量%である。下限値としては、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上である。上限値としては、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0019】
本発明における油中水型乳化油脂組成物には、通常のマーガリンに使用する乳タンパク、乳化剤、加工澱粉、保存料、pH調整剤、色素、香料および酵素等を適宜使用してもよい。
【0020】
〔油中水型乳化油脂組成物の製造方法〕
本発明における油中水型乳化油脂組成物は、通常のマーガリンの製造方法を用いることができ、特に米油由来ガム質は油脂に溶解分散させればよい。例えば、以下の製法が挙げられる。
食用油脂、バター、米油由来ガム質および油溶成分を融点温度以上の温度(45~80℃)まで加熱し、均一溶解させる。次に、40~70℃に加温した温水を加え攪拌乳化し、65~80℃で5~20分間加熱殺菌を行う。その後、30℃以下まで冷却することにより、目的の油中水型乳化油脂組成物を得る。上記製造において、高温状態にある均一混合物を冷却する際には、均一混合物を入れている容器自身を外部から冷却してもよいが、一般的にマーガリン製造に用いられるチラー、ボテーター、コンビネーター等を用いて急冷するほうが性能上好ましい。
【0021】
〔穀粉生地〕
本発明の穀粉生地は、穀粉と、上記油中水型乳化油脂組成物を含有することを特徴とするものである。穀粉としては、例えば、小麦粉、米粉、大麦粉、ライ麦粉等が挙げられる。その他、菓子やパンに使用する原料を使用することができる。本発明の穀粉生地は、バター風味を強化することができ、菓子やパンに好適に利用することができる。
【0022】
〔焼成物〕
本発明の焼成物は、菓子又はパンであり、上記の穀粉生地を焼成してなるものである。
菓子としては、例えば、パウンドケーキ、フィナンシェ、マドレーヌ、バウムクーヘン、バターケーキ、フルーツケーキ、ワッフル、焼きドーナツ、マフィンなどのバターケーキ類、ビスケット、クッキー、サブレー、スコーンなどのソフトビスケット類などが挙げられる。
パンには、フィリングなどの詰め物をしたパンも含まれ、食パン、食事パン、特殊パン、調理パン、菓子パン等が挙げられる。具体的には、食事パンとして、フランスパン、バラエティブレッド、ロール(テーブルロール、バンズ、バターロール)が挙げられる。特殊パンとしては、マフィン等、調理パンとしては、サンドイッチ、ホットドック、ハンバーガー等、菓子パンとしては、ジャムパン、あんパン、クリームパン、レーズンパン、メロンパン等が挙げられる。
【実施例0023】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
【0024】
[米油由来ガム質の製造]
<米油由来ガム質A>
米糠を120℃で加熱後、ヘキサンにて油溶成分を抽出し、110℃にて加熱することで溶媒を除去した米原油を用いた。
米原油を70℃に加温し、遠心分離を行い、夾雑物である沈殿部を除去した。その後、70℃の温水を米原油に対して3%添加し、攪拌後、遠心分離を行い、沈殿した水和物を得た。この水和物を、凍結乾燥機にて乾燥させ、水分量が5質量%以下となった米油由来ガム質(米油由来ガム質A)を得た。得られた米油由来ガム質を以下のアセトン不溶物量として測定した結果、アセトン不溶物量は30質量%であった。得られた米油由来ガム質Aを用いて、実施例1~3の油中水型乳化油脂組成物を製造した。
<米油由来ガム質B>
米油由来ガム質Aと同様の方法で新たに入手した米糠から米油由来ガム質Bを得た。得られた米油由来ガム質Bのアセトン不溶物量は60質量%であった。得られた米油由来ガム質Bを用いて、実施例4~5の油中水型乳化油脂組成物を製造した。
【0025】
[油中水型乳化油脂組成物の製造]
(実施例1)
表1に示す配合組成の油中水型乳化油脂組成物をベースに以下の方法により製造した。パーム硬化油(融点42℃)5kg、パーム油30kg、菜種硬化油(融点36℃)35kg、菜種油30kg、バター30kg、米由来ガム質A500gをプロペラ攪拌にて攪拌しながら50~55℃にて加熱溶解した。50℃の温水19.5kgを加え、攪拌乳化し、70~75℃15分間加熱殺菌を行った。その後、マーガリン製造機を用いて70~75℃から20~25℃に急冷練り上げすることで油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0026】
実施例2~5および比較例1~3は、表1に示す配合組成にて実施例1と同一の製造条件にて油中水型乳化油脂組成物を得た。対照例はバター風味の熱による低下を防止するため70~75℃の加熱殺菌を行わず、乳タンパクの変性温度以下で油中水型乳化油脂組成物を作成した。すなわち表1に示す配合組成にて混合し、プロペラ攪拌にて攪拌しながら50~55℃にて加熱溶解・攪拌乳化し、その後、マーガリン製造機を用いて50~55℃から20~25℃に急冷練り上げすることで油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0027】
実施例1~5、比較例1~3および対照例の油中水型乳化油脂組成物の風味評価および油中型乳化油脂組成物を配合して製造した菓子、パンの風味を評価した。
(油中水型乳化油脂組成物の風味評価方法)
製造後、得られた各油中水型乳化油脂組成物を5~10℃で1晩保管後、対照例の油中水型乳化油脂組成物を基準として各油中水型乳化油脂組成物の風味の評価を行った。パネラー10人にて室温(20~25℃)に調温した油中水型乳化油脂組成物3~5gを食し、以下に示すように点数付けを行い、平均点を算出した。
対照例の油中水型乳化油脂組成物と比べ、「明らかにバター風味を強く感じる」を5点、「わずかにバター風味を強く感じる」を4点、「同等」を3点、「わずかにバター風味が弱く感じる」を2点、「明らかにバター風味が弱く感じる」を1点として評価した。各パネラーの評点を平均し、小数点第1位を四捨五入したものを評価結果とした。評価結果が5、4、3を合格とした。
【0028】
(菓子の製造方法)
実施例1~5、比較例1~3および対照例の油中水型乳化油脂組成物をそれぞれ用いてパウンドケーキを焼成した。
油中水型乳化油脂組成物200g、砂糖200gをホバートミキサーにて低速4分間攪拌後、全卵200gを中高速で攪拌しながら加えた。その後、篩った小麦粉200gとベーキングパウダー4gを加え、低速で1分攪拌し、パウンドケーキ生地(穀粉生地)を得た。パウンドケーキ生地を型に380g流し込み、上火170℃、下火150℃のオーブンにて35分焼成した。焼成後2時間室温に放置したのち、型から外して袋にいれ、20℃で1日保管したものを風味評価に用いた。
【0029】
(パンの製造方法)
実施例1~5、比較例1~3および対照例の油中水型乳化油脂組成物をそれぞれ用いてバターロールを焼成した。
強力粉700g、イースト30g、イーストフード1g、水420gをミキサーボウルに投入し、ドォフックを用いて低速2分、中低速2分で攪拌し、中種生地を得た。中種生地は28度で2時間発酵させた。
発酵した中種生地に、強力粉300g、上白糖140g、脱脂粉乳30g、食塩17g、全卵120g、水80gを加え、低速2分、中高速4分混合後、油中水型乳化油脂組成物を140g加え、さらに低速2分、中高速4分混合し生地(穀粉生地)を得た。フロアタイム30分とったのち、35gに分割し、ベンチタイム5分とり、バターロール型に生地を成形した。成形した生地は38℃、85%のホイロに60分入れ、その後、上火205℃、下火205℃のオーブンにて8分焼成した。焼成後40分間室温に放置したのち、袋に入れ、20℃で1日保管したものを風味評価に用いた。
【0030】
(菓子・パンの風味評価方法)
風味については、実施例1~5、比較例1~3および対照例の油中水型油脂組成物を使用して製造した菓子、パンをそれぞれの対照例を基準として風味の評価を行った。パネラー10人にて菓子およびパンを食し、以下に示すように点数付けを行い、平均点を算出した。
対照例を使用した菓子、パンと比べ、「明らかにバター風味を強く感じる」を5点、「わずかにバター風味を強く感じる」を4点、「同等」を3点、「わずかにバター風味が弱く感じる」を2点、「明らかにバター風味が弱く感じる」を1点として評価した。各パネラーの評点を平均し、小数点第1位を四捨五入したものを評価結果とした。評価結果が5、4、3を合格とした。
【0031】
【表1】
【0032】
表1より、(A)食用油脂に(B)バター、(C)米油由来ガム質を含有させることで、バター風味の発現性に優れた油中水型乳化油脂組成物となり、さらにそれを用いた菓子、パンはバター風味に優れていることが分かる。一方、(C)米油由来ガム質を含有しない場合、バター風味は低下し、乳化剤を配合することでバター風味はさらに低下することが分かる。
【0033】
(使用原料)
(1)(商品名)「日清レシチンDX」、日清オイリオグループ(株)製
(2)(商品名)「エマルジーMS」、理研ビタミン(株)製