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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176567
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】中継装置及び中継方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20231206BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H04J99/00 100
H04L27/26 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088913
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小畑 晴香
(72)【発明者】
【氏名】古川 剛志
(72)【発明者】
【氏名】清水 逸平
(72)【発明者】
【氏名】多田 康崇
(72)【発明者】
【氏名】多賀 昇
(72)【発明者】
【氏名】増田 隆史
(57)【要約】
【課題】多重信号を中継する中継装置及び中継方法を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る中継装置は、受信部と、補正部と、判定部と、送信部と、を具備する。受信部は、第1電力レベルの第1信号と第1電力レベルより低い第2電力レベルの第2信号とを含む第3信号を受信する。補正部は、第3信号に基づいて第3信号の伝搬路の周波数特性の推定値を求め、第3信号の周波数特性を推定値に応じて補正する。判定部は、補正部により周波数特性が補正された第3信号の値を判定する。送信部は、判定部により判定された値の第3信号を送信する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電力レベルの第1信号と前記第1電力レベルより低い第2電力レベルの第2信号とを含む第3信号を受信する受信部と、
前記第3信号に基づいて前記第3信号の伝搬路の周波数特性の推定値を求め、前記第3信号の周波数特性を前記推定値に応じて補正する補正部と、
前記補正部により周波数特性が補正された前記第3信号の値を判定する判定部と、
前記判定部により判定された前記値の第3信号を送信する送信部と、
を具備する中継装置。
【請求項2】
前記第1信号は、第1マッピング方式に従った第1コンスタレーションマップに含まれる複数の第1候補点のいずれかである第1信号点を含み、
前記第2信号は、第2マッピング方式に従った第2コンスタレーションマップに含まれる複数の第2候補点のいずれかである第2信号点を含み、
前記第2マッピング方式は、前記第1マッピング方式と同じ方式又は異なる方式であり、
第3信号は、前記複数の第1候補点のそれぞれに前記第2コンスタレーションマップが重畳されることにより生成される第3コンスタレーションマップに含まれる複数の第3候補点のいずれかである第3信号点を含み、
前記判定部は、前記複数の第3候補点に基づいて前記第3信号点の値を判定する、請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記判定部は、軟判定又は硬判定により前記第3信号点の値を判定する、請求項2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記複数の第3候補点の中で前記第3信号点と最も近い第3候補点に基づき前記第3信号の値を判定する、請求項2に記載の中継装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記複数の第3候補点それぞれと前記第3信号点との対数尤度比に基づいて前記第3信号の値を判定する、請求項2に記載の中継装置。
【請求項6】
前記判定部は、
前記第1コンスタレーションマップに含まれる前記複数の第1候補点の中で前記第3信号点と最も近い第1候補点が位置する象限を検出し、
前記複数の第3候補点の中の前記第3コンスタレーションマップの前記象限に含まれる複数の第3候補点それぞれと前記第3信号点との対数尤度比に基づいて前記第3信号の値を判定する、請求項2に記載の中継装置。
【請求項7】
前記受信部は、前記第1マッピング方式を示す第1識別情報と、前記第2マッピング方式を示す第2識別情報とを受信し、
前記判定部は、前記第1識別情報に基づいて前記第1コンスタレーションマップを生成し、前記第2識別情報に基づいて前記第2コンスタレーションマップを生成する、請求項2に記載の中継装置。
【請求項8】
前記受信部は、前記第1信号又は前記第3信号を受信し、
前記受信部が前記第1信号を受信した場合、前記補正部は、前記第1信号に基づいて前記第1信号の伝搬路の周波数特性の第2推定値を求め、前記第1信号の周波数特性を前記第2推定値に応じて補正し、
前記受信部が前記第1信号を受信した場合、前記判定部は、前記補正部により周波数特性が補正された前記第1信号から第1信号の値を判定し、
前記受信部が前記第1信号を受信した場合、前記送信部は、前記判定部により判定された前記値の第1信号を送信する、請求項2に記載の中継装置。
【請求項9】
前記第1マッピング方式は、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)方式、又は64QAM方式であり、
前記第2マッピング方式は、QPSK方式、16QAM方式、又は64QAM方式である、請求項2乃至請求項8のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項10】
第1電力レベルの第1信号と前記第1電力レベルより低い第2電力レベルの第2信号とを含む第3信号を受信し、
前記第3信号に基づいて前記第3信号の伝搬路の周波数特性の推定値を求め、
前記第3信号の周波数特性を前記推定値に応じて補正し、
前記周波数特性が補正された前記第3信号の値を判定し、
前記判定された値の第3信号を送信する、中継方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線信号の中継装置及び中継方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中継装置は、送信装置から送信された信号を受信し、受信した信号を処理し、処理後の信号を受信装置へ送信する。
【0003】
近年、周波数利用効率を向上させるために、2つの異なる信号を異なる電力で加算した多重信号を送信することにより、2つの異なる信号を同時刻に同帯域で送信する階層分割多重(Layered Division Multiplexing:LDM)方式が提案されている。
【0004】
従来の中継装置は、LDM方式を考慮していないので、多重信号を正しく判定することができず、多重信号を中継した場合性能の劣化が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-67123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、多重信号を中継する中継装置及び中継方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る中継装置は、第1電力レベルの第1信号と第1電力レベルより低い第2電力レベルの第2信号とを含む第3信号を受信する受信部と、第3信号に基づいて第3信号の伝搬路の周波数特性の推定値を求め、第3信号の周波数特性を推定値に応じて補正する補正部と、補正部により周波数特性が補正された第3信号の値を判定する判定部と、判定部により判定された値の第3信号を送信する送信部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るLDM方式の多重信号の一例を説明するための図。
図2】実施形態に係るLDM方式の概念を説明するための図。
図3】実施形態に係るLDM方式のインジェクションレベルを説明するための図。
図4】実施形態に係る送信装置の一例を示すブロック回路図。
図5】実施形態に係る送信装置の多重信号のマッピングの一例を説明するための図。
図6】実施形態に係る送信装置の多重信号のマッピングの他の例を説明するための図。
図7】実施形態に係る送信装置の多重信号のマッピングのさらに他の例を説明するための図。
図8】実施形態に係るLDM方式のインジェクションレベルとマッピング候補点の関係の一例を説明するための図。
図9】実施形態に係るLDM方式のインジェクションレベルとマッピング候補点の関係の他の例を説明するための図。
図10】実施形態に係るLDM方式のインジェクションレベルとマッピング候補点の関係のさらに他の例を説明するための図。
図11】実施形態に係るLDM方式におけるOFDMセグメントの一例を説明するための図。
図12】実施形態に係る中継装置の一例を示すブロック回路図。
図13】実施形態に係る中継装置のシンボル判定の一例を説明するための図。
図14】実施形態に係る中継装置のシンボル判定の他の例を説明するための図。
図15】実施形態に係る受信装置の一例を示すブロック回路図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。以下の説明は、実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、以下に説明する構成要素の構造、形状、配置、材質等に限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各要素のサイズ、厚み、平面寸法又は形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、互いの寸法の関係や比率が異なる要素が含まれることもある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して重複する説明を省略する場合もある。いくつかの要素に複数の呼称を付す場合があるが、これら呼称の例はあくまで例示であり、これらの要素に他の呼称を付すことを否定するものではない。また、複数の呼称が付されていない要素についても、他の呼称を付すことを否定するものではない。なお、以下の説明において、「接続」は直接接続のみならず、他の要素を介した接続も含む場合もある。
【0010】
サービス統合地上デジタル放送(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial:ISDB-T)方式と称される現行の地上デジタルテレビジョン放送の次世代規格の検討において、周波数利用効率の向上または現行方式との共存を可能とするため、LDM方式の利用が提案されている。一例として、ISDB-T方式に準拠する信号(以下、ISDB-T信号と称される)を高電力階層とし、ISDB-T方式を高度化させた次世代地上デジタルテレビジョン放送方式(例えば、4K8K方式、あるいはスーパーハイビジョン(SHV)方式)に準拠する信号(以下、SHV信号と称される)を低電力階層とした多重信号を送信することが考えられている。これにより、新たな周波数を割り当てることなく、SHV信号を送信することができる。
【0011】
先ず、実施形態に係るLDM方式の一例を説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係るLDM方式の多重信号の一例を説明するための図である。LDM方式では、同一または異なる方式により変調された高電力階層(上位階層(UL)とも称される)信号と低電力階層(下位階層(LL)とも称される)信号の2つの異なる信号が加算され、多重信号が送信される。これにより、同時刻に同帯域で2つの信号が送信される。上位階層信号の例はISDB-T信号であってもよく、下位階層信号の例はSHV信号であってもよい。上位階層信号の電力レベルは下位階層信号の電力レベルより高い。2つの階層信号の電力比は、インジェクションレベルと称される。インジェクションレベルの例は、23dB又は15dBである。
【0013】
なお、2つの異なる信号の多重信号に限らず、同じ信号の多重信号が送信されてもよい。例えば、ISDB-T信号は送信されず、SHV信号が上位階層と下位階層で送信されてもよい。また、2つの階層の信号に限らず、3つ以上の階層の信号の多重信号が送信されてもよい。以下では、階層数は2であり、上位階層信号はISDB-T信号であり、下位階層信号はSHV信号であるLDM方式を説明する。
【0014】
図2は、実施形態に係るLDM方式の概念を説明するための図である。LDM方式は、複数の信号を正規化してから加算する方式と、正規化しないで加算する方式を含む。図2は、複数の信号を正規化してから加算する方式の例を示す。
【0015】
ISDB-T信号Txiが電力調整部2に入力される。電力調整部2は、ISDB-T信号Txiの電力レベルを正規化係数βに基づいて調整する。時間領域のSHV信号Txsが電力調整部4に入力される。電力調整部4は、SHV信号Txsの電力レベルを正規化係数βとスケーリング係数αの積に基づいて調整する。電力調整部2、4の出力が加算部6において加算され、ISDB-T信号TxiとSHV信号Txsの多重信号Txが生成される。多重信号Txは式1Aで表される。
Tx=βTxi+αβTxs 式1A
インジェクションレベルは、SHV信号Txsの平均電力に対するISDB-T信号Txiの平均電力の比を表わす値である。インジェクションレベルが大きいほど多重信号におけるISDB-T信号Txiの電力割合が大きく、インジェクションレベルが小さいほど多重信号におけるISDB-T信号Txiの電力割合が小さくなる。電力調整の係数である正規化係数βとスケーリング係数αはインジェクションレベルに応じて定められる。
【0016】
図3は、実施形態に係るLDM方式のインジェクションレベルを説明するための図である。インジェクションレベルは正規化係数βとスケーリング係数αに応じて定められる。
【0017】
複数の信号を正規化しないで加算するLDM方式の場合、多重信号Tx1は式1Bで表される。
Tx1=ATxi+BTxs 式1B
A、Bは任意の係数である。係数A、Bを調整することにより、ISDB-T信号とSHV信号の振幅を任意に変化させて多重できる。
【0018】
図4は実施形態に係る送信装置の一例を示すブロック図である。実施形態に係る信号変調方式の一例は、直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:OFDM)変調である。
【0019】
送信装置は、上位階層(UL)情報ビット生成部12と下位階層(LL)情報ビット生成部42を備える。UL情報ビット生成部12とLL情報ビット生成部42は送信装置の上位レイヤの装置により実現されてもよい。UL情報ビット生成部12は上位階層信号(ISDB-T信号)の情報ビット列を生成し、LL情報ビット生成部42は下位階層信号(SHV信号)の情報ビット列を生成する。
【0020】
先ず、上位階層信号の送信処理について説明する。ISDB-T信号の情報ビット列は、符号化部14に入力される。符号化部14は外符号化部とも称される。符号化部14は、例えばリードソロモン(Reed Solomon:RS)符号化方式を採用することができる。以下、符号化部14はRS符号化部14と称される。RS符号化部14は、例えば短縮化RS符号化を行う。短縮化RS符号化では、204バイト中8バイトまでのランダム誤りを訂正可能である。
【0021】
RS符号化部14から出力される符号化ビット列は、エネルギー拡散部16に入力される。エネルギー拡散は、疑似ランダム符号系列PRBSを用いて行われる。疑似ランダム符号系列PRBSの生成多項式を式2に示す。
g1(x)=x15+x14+1 式2
すなわち、疑似ランダム符号系列PRBSの生成回路は直列に接続された15個のD型フリップフロップからなる。入力側から数えて14番目のフリップフロップの出力x14と15番目のフリップフロップの出力x15が加算され、1番目のフリップフロップに入力される。
【0022】
同期バイトを除く信号とPRBS系列との間でビット単位の排他的論理和が取られる。PRBS生成回路の各フリップフロップの初期値は、入力側から“100101010000000”とされ、OFDMフレーム毎に初期化される。
【0023】
エネルギー拡散部16の出力ビット列は、バイトインターリーブ(バイトIL)部18に入力される。バイトIL部18は、204バイトの信号に対して畳み込みバイトインターリーブを行う。インターリーブの深さは、例えば12バイトとする。バイトIL部18は、12のパスを有する。パス0は遅延量0である。パス1のFIFOシフトレジスタの容量は17バイトであり、パス2のFIFOシフトレジスタの容量は17×2=34バイトであり、以下同様に、パス11のFIFOシフトレジスタの容量は17×11=187バイトである。入力と出力は、1バイト毎にパス0、パス1、パス2、…パス11、パス0、パス1、…と順次巡回的に切り替えられる。
【0024】
バイトIL部18の出力ビット列は、畳み込み符号化部22に入力される。畳み込み符号化部22は内符号化部とも称される。畳み込み符号化部22は、例えば、高速長k=7、符号化率1/2をマザーコードとするパンクチャード畳み込み符号化を行う。マザーコードの生成多項式は、X出力に関してはG1=171(10進数)、Y出力に関してはG2=133(10進数)とする。畳み込み符号化部22も誤り訂正符号化を行う。
【0025】
畳み込み符号化部22から出力される符号化ビット列は、ビットインターリーブ(ビットIL)部24に入力される。ビットIL部24の出力は、時間・周波数インターリーブ(時間・周波数IL)部28に入力される。先ず、時間・周波数IL部28は、変調シンボル単位(I軸、Q軸単位)のセグメント内時間インターリーブ処理を行う。次に、時間・周波数IL部28は、キャリアローテション処理とキャリアランダマイズ処理を行うことによりセグメント内インターリーブ処理を行う。
【0026】
時間・周波数IL部28の出力は、マッピング・LDM多重部32に入力される。
【0027】
次に、下位階層信号の送信処理について説明する。SHV信号の情報ビット列は、エネルギー拡散部44に入力される。エネルギー拡散部44は、エネルギー拡散部16と同様に、疑似ランダム符号系列PRBSを用いてエネルギー拡散を行う。
【0028】
エネルギー拡散部44の出力ビット列は、符号化部に入力される。符号化部は、畳み込み符号化方式、BCH(Bose Chaudhuri Hocquenghem)符号化方式、BCC(Block Check Character)符号化方式、LDPC(Low Density Parity Check)符号化方式等を採用することができる。ここでは、BCH符号化方式とLDPC符号化方式が採用される。エネルギー拡散部44の出力ビット列は、BCH符号化部46に入力される。BCH符号化部46の出力ビット列は、LDPC符号化部48に入力される。BCH符号化部46もLDPC符号化部48も誤り訂正符号化を行う。
【0029】
図4は、上位階層と下位階層の符号化方式が異なる方式を示したが、上位階層と下位階層の符号化方式が同じ方式であってもよい。上位階層と下位階層の符号化方式を同じ方式とした場合、上位階層と下位階層の符号化方式の誤り訂正能力や符号長は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0030】
LDPC符号化部48から出力される符号化ビット列は、ビットインターリーブ(ビットIL)部52に入力される。ビットIL部52の出力は、時間・周波数IL部56に入力される。時間・周波数IL部56は時間・周波数IL部28と同様な処理を行う。なお、上位階層と下位階層のインターリーブ長は同じでもよいし、異なってもよい。
【0031】
時間・周波数IL部56の出力は、マッピング・LDM多重部32に入力される。
【0032】
多重化について説明する。
【0033】
マッピング・LDM多重部32は、ISDB-T信号とSHV信号についてそれぞれ指定された多数値のマッピングを周波数領域で行う。マッピング方式の種類は、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)方式、64QAM方式を含む。送信装置は、ISDB-T信号とSHV信号それぞれについてのマッピング方式の種類を選択して、選択した方式のマッピングを実行する。
【0034】
QPSK方式:多数値は2であり、入力信号の2ビットが1シンボルとされ、シンボルが複素平面上の4個のマッピング候補点のいずれかにマッピングされ、マッピングされた点を表す複素座標情報がマッピングデータとして出力される。マッピング候補点の座標はマッピングデータの候補値である。
【0035】
16QAM方式:多数値は4であり、入力信号の4ビットが1シンボルとされ、シンボルが複素平面上の16個のマッピング候補点のいずれかにマッピングされ、マッピングされた点を表す複素座標情報がマッピングデータとして出力される。
【0036】
64QAM方式:多数値は6であり、入力信号の6ビットが1シンボルとされ、シンボルが複素平面上の64個のマッピング候補点のいずれかにマッピングが行われ、マッピングされた点を表す複素座標情報がマッピングデータとして出力される。
【0037】
マッピングの具体例は図5図6及び図7を参照して後述する。
【0038】
マッピング・LDM多重部32は、図2に示すように、キャリア変調後のISDB-T信号を上位階層信号とし、SHV信号を下位階層信号として、下位階層信号の電力レベルを上位階層信号の電力レベルより低くして、両信号を電力差を付けて加算して、多重信号を生成する。
【0039】
マッピング・LDM多重部32から出力される多重信号は、パイロット付加部34に入力される。パイロット付加部34は、OFDMセグメントにパイロット信号を挿入する。パイロット付加部34のパイロット信号挿入処理の詳細は図11を参照して後述する。パイロット信号は既知信号である。OFDMセグメントにパイロット信号が挿入されることにより、受信装置は、受信したパイロット信号を既知の信号と比較することにより伝搬路の周波数特性を推定することができ、推定結果に応じて伝搬路の周波数特性を補正することにより、伝搬路の周波数特性の劣化を補償することができる。伝搬路の周波数特性が劣化すると、伝送データが誤る可能性がある。伝搬路の周波数特性の劣化を補償すると、伝送誤りを減らすことができる。
【0040】
パイロット信号は、周波数方向(キャリア方向)に分散して挿入されるスキャッタードパイロット信号(SP信号と称される)と、OFDMセグメント以外の伝送帯域内の周波数で時間方向に連続して挿入されるコンティニュアルパイロット信号(連続パイロット信号、CP信号とも称される)を含む。なお、SP信号は時間方向(シンボル方向)にも分散して挿入されてもよい。
【0041】
パイロット付加部34の出力は、逆高速フーリエ変換(IFFT)部38に入力される。IFFT部38は、OFDMセグメントをIFFT処理して、時間領域のビット列を求める。
【0042】
IFFT部38の出力は、ガードインターバル(GI)付加部40に入力されてもよい。GI付加部は、IFFT後の出力データのうち、時間的に後側から、指定された時間長のデータ(ガードインターバル)をOFDMシンボルの前にそのまま付加する。
【0043】
GI付加部40の出力が図示しない送信回路、送信アンテナを介して送信される。送信装置から送信された信号は、受信装置(テレビジョン受信機)により受信される。送信装置と受信装置間の距離が長い場合は、送信装置と受信装置間の間に中継装置が設けられ、送信装置から送信された信号は、中継装置を介して受信装置により受信される。
【0044】
図5は、実施形態に係る送信装置の変調の一例を説明するための図である。図5は、複素数で表現した信号のマッピング候補点を示すコンスタレーションマップである。I軸、Q軸は、位相が90度ずれた2つの信号成分の振幅を表す。図5は、マッピング・LDM多重部32は、ISDB-T信号をQPSK方式でマッピングし、SHV信号をQPSK方式でマッピングする例を示す。マッピング・LDM多重部32は、ISDB-T信号のシンボルを、図5(a)に示すコンスタレーションマップ上の4個のマッピング候補点のいずれかにマッピングする。マッピング・LDM多重部32は、SHV信号のシンボルを、図5(b)に示すコンスタレーションマップ上の4個のマッピング候補点のいずれかにマッピングする。
【0045】
LDM方式では、マッピング・LDM多重部32は、上位階層信号(ISDB-T信号)の4個のマッピング候補点それぞれに4個のマッピング候補点を含む下位階層信号(SHV信号)のコンスタレーションマップを重畳して、図5(c)に示すISDB-T信号のマッピング候補点(4個)とSHV信号のマッピング候補点(4個)の積である16個のマッピング候補点を含む多重信号のコンスタレーションマップを生成する。マッピング・LDM多重部32は、QPSK方式でマッピングされたISDB-T信号とQPSK方式でマッピングされたSHV信号の多重信号のシンボルを、多重信号のコンステレーションマップ上の16個のマッピング候補点のいずれかにマッピングする。QPSK方式でマッピングされたISDB-T信号とQPSK方式でマッピングされたSHV信号の多重信号は、16QAM方式でマッピングされた信号と等価である。
【0046】
例えば、ISDB-T信号のシンボルのマッピング点が図5(a)の第1象限のマッピング候補点70であり、SHV信号のシンボルのマッピング点が図5(b)の第3象限のマッピング候補点72である場合、多重信号のシンボルのマッピング点は、図5(c)の第1象限の4個のマッピング候補点の中の左下のマッピング候補点74である。
【0047】
図6は、実施形態に係る送信装置のマッピングの他の例を説明するためのコンスタレーションマップである。図6は、マッピング・LDM多重部32は、ISDB-T信号をQPSK方式でマッピングし、SHV信号を16QAM方式でマッピングする例を示す。マッピング・LDM多重部32は、ISDB-T信号のシンボルを、図6(a)に示すコンスタレーションマップ上の4個のマッピング候補点のいずれかにマッピングする。マッピング・LDM多重部32は、SHV信号のシンボルを、図6(b)に示すコンスタレーションマップ上の16個のマッピング候補点のいずれかにマッピングする。
【0048】
マッピング・LDM多重部32は、上位階層信号(ISDB-T信号)の4個のマッピング候補点それぞれに16個のマッピング候補点を含む下位階層信号(SHV信号)のコンスタレーションマップを重畳して、図6(c)に示す多重信号のコンスタレーションマップを生成する。図6(c)は、ISDB-T信号のマッピング候補点(4個)とSHV信号のマッピング候補点(16個)の積である64個のマッピング候補点を含む多重信号のコンスタレーションマップを示す。マッピング・LDM多重部32は、QPSK方式でマッピングされたISDB-T信号と16QAM方式でマッピングされたSHV信号の多重信号のシンボルを、多重信号のコンステレーションマップ上の64個のマッピング候補点のいずれかにマッピングする。QPSK方式でマッピングされたISDB-T信号と16QAM方式でマッピングされたSHV信号の多重信号は、64QAM方式でマッピングされた信号と等価である。
【0049】
例えば、ISDB-T信号のシンボルのマッピング点が図6(a)の第3象限のマッピング候補点76であり、SHV信号のマッピング点が図6(b)の第1象限の4個のマッピング候補点の中の左上のマッピング候補点78である場合、多重信号のシンボルのマッピング点は、図6(c)の第3象限の16個のマッピング候補点の中の一番上の行の右から2番目のマッピング候補点80である。
【0050】
図7は、実施形態に係る送信装置のマッピングのさらに他の例を説明するためのコンスタレーションマップである。図7は、マッピング・LDM多重部32は、ISDB-T信号を16QAM方式でマッピングし、SHV信号を64QAM方式でマッピングする例を示す。マッピング・LDM多重部32は、ISDB-T信号のシンボルを、図7(a)に示すコンスタレーションマップ上の16個のマッピング候補点のいずれかにマッピングする。マッピング・LDM多重部32は、SHV信号のシンボルを、図7(b)に示すコンスタレーションマップ上の64個のマッピング候補点のいずれかにマッピングする。
【0051】
マッピング・LDM多重部32は、上位階層信号(ISDB-T信号)の16個のマッピング候補点それぞれに64個のマッピング候補点を含む下位階層信号(SHV信号)のコンスタレーションマップを重畳して、図7(c)に示す多重信号のコンスタレーションマップを生成する。図7(c)は、ISDB-T信号のマッピング候補点(16個)とSHV信号のマッピング候補点(64個)の積である1024個のマッピング候補点を含む多重信号のコンスタレーションマップを示す。マッピング・LDM多重部32は、QPSK方式でマッピングされたISDB-T信号とQPSK方式でマッピングされたSHV信号の多重信号のシンボルを、多重信号のコンステレーションマップ上の1024個のマッピング候補点のいずれかにマッピングする。16QAM方式でマッピングされたISDB-T信号と64QAM方式でマッピングされたSHV信号の多重信号は、1024QAM方式でマッピングされた信号と等価である。
【0052】
例えば、ISDB-T信号のシンボルのマッピング点が図7(a)の第1象限の4個のマッピング候補点の中の左下のマッピング候補点82であり、SHV信号のシンボルのマッピング点が図7(b)の第2象限の16個のマッピング候補点の中の左上のマッピング候補点84である場合、多重信号のシンボルのマッピング点は、図7(c)の第1象限の256個のマッピング候補点の中の一番左端の列の上から8番目のマッピング候補点86である。
【0053】
図8図9及び図10は、実施形態に係るLDM方式のインジェクションレベルとマッピング候補点の配置関係の一例を説明するための図である。図8図9及び図10は、異なるインジェクションレベルの場合のコンスタレーションマップを示す。図8図9及び図10では、ISDB-T信号のマッピング方式は16QAM方式であり、SHV信号のマッピング方式は64QAM方式である。図8は、インジェクションレベルが12dBの場合のコンスタレーションマップを示す。図9は、インジェクションレベルが16dBの場合のコンスタレーションマップを示す。図10は、インジェクションレベルが20dBの場合のコンスタレーションマップを示す。
【0054】
図8図9図10に示すように、インジェクションレベルを大きくしていくと、多重信号のマッピング候補点は、ISDB-T(UL)信号のマッピング候補点毎にグループ化され、マッピング候補点グループ間の間隔(コンスタレーション間距離)が大きくなり、コンスタレーション内距離は小さくなる。
【0055】
SHV(LL)信号のマッピング候補点のコンスタレーション内距離とSHV信号のマッピング候補点のコンスタレーション間距離は、インジェクションレベルに応じて変化する。インジェクションレベルが小さい程、SHV信号のマッピング候補点のコンスタレーション内距離は大きく、SHV信号のマッピング候補点のコンスタレーション間距離は小さい。インジェクションレベルが大きい程、SHV信号のマッピング候補点のコンスタレーション内距離は小さく、SHV信号のマッピング候補点のコンスタレーション間距離は大きい。すなわち、インジェクションレベルが大きいと、ISDB-T信号は誤りが少なく、SHV信号は誤りが多い。
【0056】
図11を参照して、パイロット付加部34によるSP信号の挿入の一例を説明する。図11は、実施形態に係るLDM方式における1個のOFDMセグメントの一例を説明するための図である。図11の例では、1個のOFDMセグメントは431個のキャリアを含む。OFDMセグメントのキャリア数はこの例に限らず、108個又は216個のキャリアを含むこともある。431個のキャリアシンボルは纏めてシンボルグループと称される。13個のOFDMセグメントは1OFDMシンボルと称される。204個のOFDMシンボルはOFDMフレームと称される。13個のOFDMセグメントは1OFDMシンボルと称される。すなわち、1OFDMシンボルは、5616(=13×432)シンボルである。CP信号が挿入された場合は、1OFDMシンボルは5617シンボルである。Si,j(i=0~383、j=0~203)は、インターリーブ後のキャリアシンボルを表わす。
【0057】
パイロット付加部34は、周波数(キャリア番号)方向において、12個のキャリアシンボル毎に1個のSP信号をOFDMセグメントに挿入する。周波数方向におけるSP信号の挿入周期は、第1周期(12個のキャリア)である。パイロット付加部34は、時間(シンボル番号)方向において、4個のキャリアシンボル毎に1個のSP信号を挿入する。時間方向におけるSP信号の挿入周期は、第2周期(4個のキャリアシンボル)である。
【0058】
例えば、パイロット付加部34は、シンボル番号0のシンボルグループの中のキャリア番号0、12、…のキャリアシンボルにSP信号を挿入する。
パイロット付加部34は、シンボル番号1のシンボルグループの中のキャリア番号3、15、…のキャリアシンボルにSP信号を挿入する。
以下、同様に、パイロット付加部34は、シンボルグループ毎に、隣接するシンボルグループとは異なるキャリア番号のキャリアシンボルにSP信号を挿入する。
なお、SP信号が挿入されるキャリアシンボルのキャリア番号は、数シンボルグループ毎に同じでも構わない。例えば、パイロット付加部34は、シンボル番号4のシンボルグループについては、シンボル番号0のシンボルグループの場合と同様に、キャリア番号0、12、…のキャリアシンボルにSP信号を挿入する。
【0059】
SP信号は、PRBS生成回路の出力ビット列Wiに対し、OFDMセグメントのキャリア番号iに相当するWiに関係づけられたBPSK(Binary Phase Shift Keying)信号である。ビット列g2(x)を生成するPRBS生成回路の生成多項式を式3に示す。
g2(x)=x11+x+1 式3
すなわち、PRBS生成回路は直列に接続された11個のD型フリップフロップからなる。9番目のフリップフロップの出力xと11番目のフリップフロップの出力x11(=Wi)が加算され、1番目のフリップフロップに入力される。PRBS生成回路の初期値は、OFDMセグメント毎に決まっている。
【0060】
パイロット付加部34は、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号とAC(Auxiliary Channel)信号もOFDMセグメントに挿入する。
【0061】
TMCC信号は、制御情報を伝送するための信号である。制御信号は、階層構成やOFDMセグメントの伝送パラメータ等、受信装置の判定と復号動作を補助する情報である。制御情報は、システム識別、伝送パラメータ切替指標、起動制御信号(緊急警報放送用起動フラグ)、カレント情報、ネクスト情報等を含む。カレント情報は各階層信号の現在の伝送パラメータを示し、ネクスト情報は各階層信号の切り替え後の伝送パラメータを示している。ネクスト情報は、切り替えカウントダウン前において任意の時刻に設定、或いは変更ができるが、カウントダウン中は変更できない。
【0062】
カレント・ネクスト情報に含まれる各階層信号の伝送パラメータ情報は、マッピング方式の種類を表す。例えば、伝送パラメータ情報“001”はQPSK方式を表し、伝送パラメータ情報“010”は16QAM方式を表し、伝送パラメータ情報“011”は64QAM方式を表し、伝送パラメータ情報“111”は当該階層が未使用であること、またはネクスト情報が存在しないことを表す。送信装置は、伝送パラメータ情報をTMCC信号以外に信号、例えばAC信号に含めて中継装置へ送信してもよいし、チャンネル推定のためのパイロット信号以外の制御情報のいずれかに含めて送信してもよい。
【0063】
AC信号は放送に関する付加情報を伝送するための拡張用信号である。付加情報は、伝送制御に関する付加情報、または地震動警報情報である。実施形態に係る中継装置が設置されるエリアにある送信装置は、多重信号に限らず、ISDB-T信号単独の信号も送信するとする。中継装置は、多重信号を受信した場合と、非多重信号(ISDB-T信号)を受信した場合で、異なる中継処理を行う。そのため、パイロット付加部34は、送信する信号が多重信号であるかISDB-T信号であるかを示す多重フラグをAC信号に含ませる。送信装置は、多重フラグをAC信号以外に信号、例えばTMCC信号に含めて中継装置へ送信してもよいし、チャンネル推定のためのパイロット信号以外の制御情報のいずれかに含めて送信してもよい。
【0064】
TMCC信号とAC信号のキャリアは、マルチパスによる伝搬路特性の周期的なディップの影響を軽減するために、周波数方向にランダムに配置されている。
【0065】
図4に示す送信装置から送信された多重信号は、各家庭のテレビジョン受信機で受信される。放送局からの直接波が届きにくい場所では、送信装置から送信された信号が中継装置を介してテレビジョン受信機で受信される。
【0066】
図12は、実施形態に係る中継装置の一例を示すブロック回路図である。中継装置は、受信装置の機能と送信装置の機能を備えてもよい。受信装置の機能は、伝搬路の周波数特性の劣化を補償するために周波数特性を補正する機能と、対数尤度比(Log-Likelihood Ratio:LLR)を計算する機能と、送信側でインターリーブされた信号をデインターリーブする機能と、送信側で符号化された信号を復号する機能と、送信側でエネルギー拡散された信号を逆拡散する機能を含み得る。送信装置の機能は、符号化機能と、信号のエネルギーを拡散する機能と、信号をインターリーブする機能と、シンボルマッピング機能と、パイロット信号を付加する機能を含み得る。中継装置が受信装置と同じ機能を備え、受信装置と同じように、周波数特性補正、LLR計算、デインターリーブ、復号、エネルギー逆拡散の処理を実行し、処理後の信号を送信すると、受信装置における誤り率が最も低くなる。しかし、中継装置が受信装置と同じような処理を実行すると、中継に時間が係り、遅延が生じてしまう。実施形態に係る中継装置は、周波数特性補正とシンボル判定の処理を実行し、デインターリーブと復号とエネルギー逆拡散の処理は実行しないを実行しないことにより、受信装置における誤り率を低減しつつ、中継に要する時間を短縮するものである。
【0067】
中継装置は、GI除去部112を備える。図示しないアンテナと受信回路により受信された多重信号がGI除去部112に入力される。GI除去部112は、多重信号からOFDMシンボル間のGIを除去する。
【0068】
GI除去部112の出力は高速フーリエ変換(FFT)部114に入力される。FFT部114は、入力信号をFFTサイズでFFT処理し、周波数領域の信号を得る。
【0069】
多重信号の周波数領域の送信信号Txiに対する周波数領域の伝搬路特性をHとする。FFT後の受信信号Rxは式4に示すように表される。ここでは、雑音は無視して説明する。
【0070】
Rx=HTxi 式4
FFT部114の出力は、周波数等化部116と伝搬路推定部118に入力される。
【0071】
伝搬路推定部118は、入力された周波数領域の信号からパイロット信号を取り出し、取り出したパイロット信号を送信信号Txiとして、FFT後の受信信号Rxから周波数領域の多重信号の伝搬路特性(周波数特性)Hを推定する。伝搬路推定部118の出力は、周波数等化部116に入力される。
【0072】
周波数等化部116は、伝搬路推定部118の推定結果に応じて多重信号に対して周波数等化処理を行い、伝搬路の周波数特性の劣化が補償された多重信号を得る。周波数等化処理とは、伝搬路の周波数特性の補正である。具体的には、周波数等化部116は、式5に示すように、FFT後の受信信号Rxを伝搬路の周波数特性Hで割り、周波数等化信号Reqを得る。
Req=Rx/H 式5
周波数等化部116の出力Reqは、セレクタ122とLDM判定部124に入力される。LDM判定部124は、周波数等化部116の出力からAC信号を取り出し、AC信号から多重フラグを取り出す。LDM判定部124は、多重フラグに基づいてセレクタ122を切り替える。
【0073】
セレクタ122の第1出力端子は、上位階層信号のシンボル判定部132に接続される。セレクタ122の第2出力端子は、多重信号のシンボル判定部142に接続される。LDM判定部124は、入力信号からAC信号を取り出し、AC信号から多重フラグを取り出す。LDM判定部124は、多重フラグが送信信号は多重信号であることを示す場合、セレクタ122に入力信号を第2出力端子から出力させる。LDM判定部124は、多重フラグが送信信号はISDB-T信号であることを示す場合、セレクタ122に入力信号を第1出力端子から出力させる。
【0074】
シンボル判定部132、142は、入力信号からTMCC信号を取り出し、TMCC信号から伝送パラメータ情報を取り出す。シンボル判定部132、142は、伝送パラメータ情報により表されるマッピング方式に応じたシンボルコンステレーションマップ上のマッピング候補点に基づいて入力信号のシンボルのマッピング点の位置を決定(シンボル判定)する。シンボル判定は、硬判定と軟判定を含む。シンボル判定の詳細は図13図14を参照して後述する。
【0075】
入力信号がISDB-T信号である場合、セレクタ122は、入力信号をシンボル判定部132へ出力する。ISDB-T信号のマッピング方式が例えば16QAM方式である場合、シンボル判定部132は、16QAM方式の16個のマッピング候補点に基づいて入力信号のシンボルのマッピング点の位置を決定する。
【0076】
シンボル判定部132の出力は、IFFT部134に入力される。IFFT部134は、ISDB-T信号のOFDMセグメントをIFFT処理して、時間領域のビット列を求める。
【0077】
IFFT部134の出力は、GI付加部136に入力される。GI付加部136は、IFFT後の出力データのうち、時間的に後側から、指定された時間長のデータ(GI)をOFDMシンボルの前にそのまま付加するものである。
【0078】
GI付加部136の出力は図示しない送信回路、送信アンテナ等を介してISDB-T信号として送信される。
【0079】
入力信号が多重信号である場合、セレクタ122は、入力信号をシンボル判定部142へ出力する。ISDB-T信号のマッピング方式が例えばQPSK方式であり、SHV信号のマッピング方式が例えば16QAM方式である場合、シンボル判定部142は、64QAM方式の64個のマッピング候補点に基づいて入力信号のシンボルのマッピング点の位置を決定する。
【0080】
シンボル判定部142の出力は、IFFT部144に入力される。IFFT部144は、多重信号のOFDMセグメントをIFFT処理して、時間領域のビット列を求める。
【0081】
IFFT部144の出力は、GI付加部146に入力される。GI付加部146は、IFFT後の出力データのうち、時間的に後側から、指定された時間長のデータ(GI)をOFDMシンボルの前にそのまま付加するものである。
【0082】
GI付加部146の出力は図示しない送信回路、送信アンテナ等を介して多重信号として送信される。
【0083】
シンボル判定部132、142によるシンボル判定の具体例を説明する。
【0084】
図13は、実施形態に係る中継装置のシンボル判定部142の動作の一例を説明するための図である。図13は、送信装置がISDB-T信号をQPSK方式でマッピングし、SHV信号を16QAM方式でマッピングした多重信号を送信した場合のシンボル判定部142による硬判定の例を示す。シンボル判定部142は、伝送パラメータ情報からISDB-T信号とSHV信号のマッピング方式を検出する。図13に示すコンスタレーションマップは、図6(c)に示すコンスタレーションマップに対応する。送信装置が送信した多重信号のシンボルのマッピング点は、図13に示す64個のマッピング候補点のいずれかである。送信装置から中継装置までの伝搬路で雑音や干渉の影響をうける。その場合、シンボル判定部142への入力されたシンボルのコンスタレーションマップ上の点(以下、入力シンボル点と称される)170は、図13に示すように、64個のマッピング候補点からずれることがある。
【0085】
シンボル判定部142は、硬判定又は軟判定処理により、入力シンボル点を判定する。シンボル判定部142は、入力シンボル点を判定することにより、送信装置から中継装置までの伝搬路でのシンボルの歪を低減できる。
【0086】
硬判定の場合、シンボル判定部142は、図13に示すように、入力シンボル点170と多重信号のコンスタレーションマップ上の64個のマッピング候補点それぞれとの間隔を計算し、入力シンボル点170と最も近いマッピング候補点172を検出する。シンボル判定部142は、検出したマッピング候補点172の座標を送信装置が送信した多重信号のシンボルのマッピング点の座標(I座標、Q座標)、すなわち判定値として出力する。
【0087】
軟判定の場合、シンボル判定部142は、多重信号のコンスタレーションマップ上の64個のマッピング候補点と入力シンボル点170に対して軟判定演算を行い、軟レプリカの位置を求める。
【0088】
軟判定演算は、LLR計算、ビット尤度計算、シンボル確率計算、軟レプリカ計算を含む。
【0089】
1シンボルは複数ビットのデータを伝送するとする。シンボル判定部142は、1シンボルのk番目のビットのLLRを式6により計算する。
【0090】
【数1】
【0091】
ここで、y、yは、入力シンボル点170のk番目のビットのI成分、Q成分を示す。xj,I、yj,Qは、多重信号のマッピング候補点の中のj番目のシンボルのI成分、Q成分を示す。σは中継装置で推定される雑音分散である。Jk,0は、多重信号のマッピング候補点の中でk番目のビットが0であるシンボルの集合である。Jk,1は多重信号のマッピング候補点の中でk番目のビットが1であるシンボルの集合である。
【0092】
k番目のビット尤度P(0)とP(1)は、P(0)+P(1)=1である。シンボル判定部142は、k番目のビット尤度P(0)、P(1)をLLRkを用いて式7、式8により計算する。
【0093】
(0)=exp(LLR)/(1+exp(LLR)) 式7
(1)=1/((1+exp(LLR)) 式8
シンボル判定部142は、シンボルが表すビット系列に応じてシンボル確率を式9により計算する。
【0094】
【数2】
【0095】
ここで、vは1つのシンボルが表すビット数を示し、b(k)は任意のマッピング候補点xが表すビット系列のk番目のビットを示す。
【0096】
シンボル判定部142は、シンボル確率Q(xj)を用いて式10、式11により軟レプリカの位置(I座標、Q座標)を計算する。
【0097】
【数3】
【0098】
シンボル判定部142は、軟レプリカの位置を送信装置が送信した多重信号のシンボルのマッピング点の座標、すなわち判定値として出力する。
【0099】
以上説明したように、シンボル判定部142は、多重信号のコンスタレーションマップ上のマッピング候補点を用いる硬判定又は軟判定により多重信号の入力シンボル点の位置を判定する。
【0100】
シンボル判定部132の動作は、シンボル判定部142の動作と略同じである。シンボル判定部132の動作がシンボル判定部142の動作と異なる点は、入力信号が多重信号ではなく、ISDB-T信号である点だけである。シンボル判定部132は、ISDB-T信号のマッピング方式に従ったコンスタレーションマップ上のマッピング候補点と入力シンボル点との距離に応じて、硬判定又は軟判定により、入力シンボル点の位置を判定する。
【0101】
式6から式11に示す軟判定演算は、変調信号の全てのマッピング候補点についてのLLR計算を含む。ISDB-T信号のマッピング方式がQPSK方式であり、SHV信号のマッピング方式が16QAM方式である場合、多重信号のマッピング候補点は、図13に示すように、64個である。多重信号の変調ビット数が多くなり、マッピング候補点の数が多くなると、軟レプリカの計算量が多くなる。例えば、ISDB-T信号のマッピング方式が64QAM方式であり、SHV信号のマッピング方式が64QAM方式である場合、多重信号のマッピング候補点の数は4096個になり、LLR計算に多大な時間が係る。軟レプリカの計算時間が長いと、中継に遅延が生じる場合がある。
【0102】
軟レプリカの計算時間を削減できる軟判定方法の他の例を説明する。
【0103】
LDM方式では、インジェクションレベルが大きい場合、ISDB-T信号の伝送誤りが少なく、SHV信号の伝送誤りが多いことが想定される。LDM方式では、インジェクションレベルは大きいことが想定される。
【0104】
軟判定の方法の他の例では、ISDB-T信号のシンボルは伝送中に誤差が生じないと仮定される。先ず、シンボル判定部142は、入力信号のシンボル点がISDB-T信号のコンスタレーションマップのどの象限に含まれるかを先ず判定する。次に、シンボル判定部142は、その象限に含まれるマッピング候補点のみから軟判定値を計算する。
【0105】
図14は、実施形態に係る中継装置のシンボル判定部142の動作の他の例を説明するための図である。図14は、送信装置がISDB-T信号をQPSK方式でマッピングし、SHV信号を16QAM方式でマッピングした多重信号を送信した場合の例を示す。図14(a)は、ISDB-T信号のコンスタレーションマップを示し、図14(b)は多重信号のコンスタレーションマップを示す。
【0106】
先ず、シンボル判定部142は、入力シンボル点180と図14(a)に示すISDB-T信号のコンスタレーションマップ上の4個のマッピング候補点それぞれとの間隔を計算し、入力シンボル点180と最も近いマッピング候補点182を検出する。シンボル判定部142は、入力シンボル点180と最も近いマッピング候補点182は第3象限に位置することを検出する。
【0107】
次に、シンボル判定部142は、図14(b)に示す多重信号のコンスタレーションマップ上の64個のマッピング候補点の中の第3象限に位置する16個のマッピング候補点184と入力シンボル点180に対して軟判定演算を行い、軟レプリカの位置を求める。
【0108】
このように、上位階層信号についてシンボル判定を行い、多重信号の軟判定演算の対象となるマッピング候補点の数を1/4に減少したことにより、軟レプリカの計算時間が削減される。
【0109】
SP信号は既知であるので、シンボル判定部132、142は、SP信号が挿入されているシンボルについてはシンボル判定を省略してもよい。シンボル判定部132、142は、SP信号が挿入されているシンボルについては、判定結果を挿入するのではなく、既知のSP信号を挿入してもよい。
【0110】
図15は、実施形態に係る受信装置の一例を示すブロック回路図である。受信装置は、図12に示した中継装置に対して複数の処理部が追加されたものである。受信装置は、GI除去部212、FFT部214、周波数等化部216、伝搬路推定部218、セレクタ222、LDM判定部224、LLR計算部232及びLLR計算部252を備える。GI除去部212、FFT部214、周波数等化部216、伝搬路推定部218、セレクタ222、及びLDM判定部224は、中継装置のGI除去部112、FFT部114、周波数等化部116、伝搬路推定部118、セレクタ122、及びLDM判定部124と、それぞれ等価である。LLR計算部232は、ISDB-T信号のマッピング候補点を利用して入力信号のシンボル点のLLRを計算し、LLRを時間・周波数De-IL部234へ出力する。
【0111】
時間・周波数De-IL部234は、LLRに対して、図4に示した送信装置の時間・周波数IL部28のインターリーブ処理の逆処理に対応するデインターリーブ処理を行い、時間・周波数IL部28への入力、すなわちビットIL部24の出力に相当する信号を得る。
【0112】
時間・周波数De-IL部234の出力は、ビットDe-IL部236に供給される。ビットDe-IL部236は、送信装置のビットIL部24のインターリーブ処理の逆処理に対応するデインターリーブ処理を行い、ビットIL部24の入力、すなわち畳み込み符号化部22の出力に相当する信号を得る。ビットDe-IL部236の出力は、ビタビ復号部238に入力される。
【0113】
ビタビ復号部238は、送信装置の畳み込み符号化部22の符号化処理の逆処理に対応する誤り訂正復号処理を行い、畳み込み符号化部22の入力、すなわちバイトIL部18の出力に相当する信号を得る。ビタビ復号部238の出力は、バイトデインターリーブ(De-IL)部240に入力される。
【0114】
バイトDe-IL部240は、送信装置のバイトIL部18のインターリーブ処理の逆処理に対応するデインターリーブ処理を行い、バイトIL部18の入力、すなわちエネルギー拡散部16の出力に相当する信号を得る。バイトDe-IL部240の出力は、エネルギー逆拡散部242に入力される。
【0115】
エネルギー逆拡散部242は、送信装置のエネルギー拡散部16のエネルギー拡散処理の逆処理に対応するエネルギー逆拡散処理を行い、エネルギー拡散部16の入力、すなわちRS符号化部14の出力に相当する信号を得る。エネルギー逆拡散部242の出力はRS復号部244に入力される。
【0116】
RS復号部244は、送信装置のRS符号化部14の符号化処理の逆処理に対応する誤り訂正RS復号処理を行い、RS符号化部14の入力、すなわち上位階層のISDB-T信号の情報ビット列を得る。
【0117】
LLR計算部252は、多重信号のマッピング候補点を利用して入力信号のシンボル点のLLRを計算し、LLRを時間・周波数De-IL部254へ出力する。
【0118】
時間・周波数De-IL部254は、LLRに対して、図4に示した送信装置の時間・周波数IL部56のインターリーブ処理の逆処理に対応するデインターリーブ処理を行い、時間・周波数IL部56への入力、すなわちビットIL部52の出力に相当する信号を得る。
【0119】
時間・周波数De-IL部254の出力は、ビットDe-IL部256に入力される。
【0120】
ビットDe-IL部256は、送信装置のビットIL部52のインターリーブ処理の逆処理に対応するデインターリーブ処理を行い、ビットIL部52の入力、すなわちLDPC符号化部48の出力に相当する信号を得る。ビットDe-IL部256の出力は、LDPC復号部258に入力される。
【0121】
LDPC復号部258は、送信装置のLDPC符号化部48の符号化処理の逆処理に対応する誤り訂正復号処理を行い、LDPC符号化部48の入力、すなわちBCH符号化部46の出力に相当する信号を得る。LDPC復号部258の出力は、BCH復号部260に入力される。
【0122】
BCH復号部260は、送信装置のBCH符号化部46の符号化処理の逆処理に対応する誤り訂正復号処理を行い、BCH符号化部46の入力、すなわちエネルギー拡散部44の出力に相当する信号を得る。BCH復号部260の出力は、エネルギー逆拡散部262に入力される。
【0123】
エネルギー逆拡散部262は、送信装置のエネルギー拡散部44のエネルギー拡散処理の逆処理に対応するエネルギー逆拡散処理を行い、エネルギー拡散部44の入力、すなわち下位階層のSHV信号の情報ビット列を得る。
【0124】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0125】
112…GI除去部、114…FFT部、116…周波数等化部、118…伝搬路推定部、122…セレクタ、124…LDM判定部、132…シンボル判定部、134…IFFT部、136…GI付加部、142…シンボル判定部、144…IFFT部、146…GI付加部
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