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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017657
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】マスタースレーブアーム装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 3/00 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
B25J3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122049
(22)【出願日】2021-07-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売日 令和3年5月26日 販売した場所 株式会社カットランドジャパン ウェブサイトの掲載日 令和3年6月1日 ウェブサイトのアドレス https://cutlandjapan.co.jp/ https://cutlandjapan.co.jp/master-slave-robo-mark2.html 発行日 令和3年6月23日 刊行物 日刊工業新聞 令和3年6月23日日刊,第9面
(71)【出願人】
【識別番号】512057460
【氏名又は名称】株式会社 カットランドジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】森 健一
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS12
3C707AS27
3C707AS28
3C707BS02
3C707BS06
3C707HS27
3C707HT22
3C707HT24
3C707HT25
3C707JT04
3C707KS16
(57)【要約】
【課題】より操作し易く、さらには、危険環境下においても正確且つ確実に作動するマスタースレーブアーム装置を提供すること。
【解決手段】本発明のマスタースレーブアーム装置によれば、マスター機100が水平軸114と、その水平軸114に直交する軸116を中心として回動可能な持ち手部112と、水平軸114方向に設けられ、垂直軸140を中心として旋回可能に構成されているレール120と、持ち手部112が載置され、レール120上を水平軸114方向に進退動可能に構成されている台座122を具えているので、操作者は、持ち手部112を手首の動きに合わせて回動させ、さらに、台座122とレール120を肘の動きに合わせて進退動及び回動させることができるので、より操作し易い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスター機の動作に応じてスレーブ機を動作させるマスタースレーブアーム装置であって、
前記マスター機は、
水平軸と、該水平軸に直交する軸を中心として回動可能な持ち手部と、
前記水平軸方向に設けられ、垂直軸を中心として旋回可能に構成されているレールと、
前記持ち手部が載置され、前記レール上を前記水平軸方向に進退動可能に構成されている台座と、
前記持ち手部の水平軸と該水平軸に直交する軸を中心とした回動の回転位置、前記レールの旋回の回転位置、及び前記台座の進退動の変位をそれぞれ検出する第一乃至第四検出手段を具え、
前記スレーブ機は、
第一乃至第四モータと、
作業部材が取付けられ、水平軸に直交する軸を中心として回動可能な作業部材取付部と、
前記作業部材取付部に連結され、前記水平軸を中心として回動可能な手首ユニットと、
前記手首ユニットに連結され、垂直軸を中心として旋回可能、且つ、前記水平軸方向に進退動可能に構成されている腕ユニットを具え、
前記第一乃至第四検出手段によって検出した前記回転位置及び変位に応じて、前記第一乃至第四モータが、それぞれ、前記作業部材取付部と前記手首ユニットを回動させ、前記腕ユニットを旋回及び進退動させることを特徴とする、
マスタースレーブアーム装置。
【請求項2】
前記台座に設けられたナットと、該ナットと螺合するすべりねじをさらに具え、
前記台座の進退動の変位を検出する前記第四検出手段が前記すべりねじの回転位置を検出する、請求項1のマスタースレーブアーム装置。
【請求項3】
前記腕ユニットが、前記水平軸方向に設けられた直線状溝を具え、
前記腕ユニットを旋回させる前記第三モータからのトルクが旋回用歯車に伝達されるように構成され、
前記旋回用歯車が、周方向に沿って形成された周方向溝を具え、
前記直線状溝と周方向溝の両方に嵌っている棒状部材を具える、請求項1又は2のマスタースレーブアーム装置。
【請求項4】
前記マスター機が、マスター側第一かさ歯車、マスター側第二かさ歯車、並びに、前記マスター側第一かさ歯車及びマスター側第二かさ歯車と噛合うマスター側ピニオンギアを具えたマスター側デファレンシャルギア機構をさらに具え、
前記持ち手部の前記水平軸を中心とする回動のトルクが、該水平軸を中心とするマスター側平歯車、該マスター側平歯車と噛合うマスター側第一ギア付ボールスプライン、該マスター側第一ギア付ボールスプラインと係合するマスター側第一シャフトを介して、前記マスター側第一かさ歯車へ伝達されるように構成され、
前記持ち手部の前記水平軸に直交する軸を中心とする回動のトルクが、前記マスター側平歯車を貫通するマスター側第二シャフト、該マスター側第二シャフトに設けられている差動入力ギア、該差動入力ギアが噛合う内歯と外歯を有するマスター側環状ギア、前記マスター側環状ギアの外歯と噛合うマスター側第二ギア付ボールスプライン、該マスター側第二ギア付ボールスプラインと係合するマスター側第三シャフトを介して、マスター側第二かさ歯車へ伝達されるように構成され、
前記水平軸に直交する軸を中心とした回動の回転位置を検出する前記第二検出手段が、前記マスター側ピニオンギアの公転の回転位置を検出するように構成されている、
請求項1から3のいずれかのマスタースレーブアーム装置。
【請求項5】
前記スレーブ機が、スレーブ側第一かさ歯車、スレーブ側第二かさ歯車、並びに、前記スレーブ側第一かさ歯車及びスレーブ側第二かさ歯車と噛合うスレーブ側ピニオンギアを具えたスレーブ側デファレンシャルギア機構をさらに具え、
前記手首ユニットを水平軸を中心として回動させるように連動するスレーブ側平歯車と、
内歯と外歯を有するスレーブ側環状ギアと、
前記スレーブ側環状ギアの内歯と噛合う差動出力ギアと、
前記差動出力ギアに連結され、前記スレーブ側平歯車を貫通するスレーブ側第二シャフトをさらに具え、
前記第一モータからのトルクが、前記スレーブ側第一かさ歯車に伝達されるとともに、前記スレーブ側平歯車とスレーブ側環状ギアを同一方向に同回転数で回動させ、
前記第二モータからのトルクが、前記スレーブ側ピニオンギアを公転させ、前記第二スレーブ側かさ歯車に、前記第一スレーブ側かさ歯車に対する差動と、前記スレーブ側環状ギアに、前記スレーブ側平歯車に対する差動を生じさせて、前記差動出力ギアを回転させ、
前記差動出力ギアのトルクにより、前記作業部材取付部を前記水平軸に直交する軸を中心に回動させる、
請求項4のマスタースレーブアーム装置。
【請求項6】
前記マスター機が、入力されたトルクを減速比1:1で出力する、マスター側第一遊星歯車機構とマスター側第二遊星歯車機構の組合せ、及びマスター側第三遊星歯車機構とマスター側第四遊星歯車機構の組合せをさらに具え、
前記持ち手部の前記水平軸を中心とする回動のトルクが、該水平軸を中心とするマスター側平歯車、該マスター側平歯車と噛合うマスター側第一ギア付ボールスプライン、該マスター側第一ギア付ボールスプラインと係合するマスター側第一シャフトを介して、前記マスター側第一遊星歯車機構とマスター側第二遊星歯車機構の組合せ、及び前記マスター側第三遊星歯車機構とマスター側第四遊星歯車機構の組合せに伝達され、
前記持ち手部の前記水平軸に直交する軸を中心とする回動のトルクが、前記マスター側平歯車を貫通するマスター側第二シャフト、該マスター側第二シャフトに設けられている差動入力ギア、該差動入力ギアが噛合う内歯と外歯を有するマスター側環状ギア、前記マスター側環状ギアの外歯と噛合うマスター側第二ギア付ボールスプライン、該マスター側第二ギア付ボールスプラインと係合するマスター側第三シャフトを介して、前記マスター側第一遊星歯車機構又はマスター側第二遊星歯車機構、或いは、前記マスター側第三遊星歯車機構又はマスター側第四遊星歯車機構に伝達されて、前記マスター側第一遊星歯車機構とマスター側第二遊星歯車機構の組合せ、又は前記マスター側第三遊星歯車機構とマスター側第四遊星歯車機構の組合せの出力トルクに差動を生じさせるように構成され、
前記水平軸に直交する軸を中心とした回動の回転位置を検出する前記第二検出手段が、前記マスター側第一遊星歯車機構又はマスター側第二遊星歯車機構、或いは、前記マスター側第三遊星歯車機構又はマスター側第四遊星歯車機構の出力トルクの差動の回転位置を検出するように構成されている、
請求項1から3のいずれかのマスタースレーブアーム装置。
【請求項7】
前記スレーブ機が、入力されたトルクを減速比1:1で出力する、スレーブ側第一遊星歯車機構とスレーブ側第二遊星歯車機構の組合せ、及びスレーブ側第三遊星歯車機構とスレーブ側第四遊星歯車機構の組合せをさらに具え、
前記手首ユニットを水平軸を中心として回動させるように連動するスレーブ側平歯車と、
内歯と外歯を有するスレーブ側環状ギアと、
前記スレーブ側環状ギアの内歯と噛合う差動出力ギアと、
前記差動出力ギアに連結され、前記スレーブ側平歯車を貫通するスレーブ側第二シャフトをさらに具え、
前記第一モータからのトルクが、前記スレーブ側第一遊星歯車機構とスレーブ側第二遊星歯車機構の組合せ、及び前記スレーブ側第三遊星歯車機構とスレーブ側第四遊星歯車機構の組合せに伝達されるとともに、前記スレーブ側平歯車とスレーブ側環状ギアを同一方向に同回転数で回動させ、
前記第二モータからのトルクが、前記スレーブ側第一遊星歯車機構若しくはスレーブ側第二遊星歯車機構、又は前記スレーブ側第三遊星歯車機構若しくはスレーブ側第四遊星歯車機構の出力トルクに差動を生じさせるように伝達されるとともに、前記差動出力ギアを回転させ、
前記差動出力ギアのトルクにより、前記作業部材取付部を前記水平軸に直交する軸を中心に回動させる、
請求項6のマスタースレーブアーム装置。
【請求項8】
前記第一モータからのトルクが、スレーブ側第一シャフトを介して前記スレーブ側平歯車に、スレーブ側第三シャフトを介して前記スレーブ側環状歯車にそれぞれ伝達され、
前記第二モータからのトルクによる差動が、前記スレーブ側第三シャフトに伝達され、
前記手首ユニットが、前記スレーブ側第一シャフトと前記スレーブ側第三シャフトの一方の側に配設され、前記第一乃至第三モータが、前記スレーブ側第一シャフトと前記スレーブ側第三シャフトの他方の側に配設されている、
請求項5又は7のマスタースレーブアーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者が操作するマスター機の動作に応じてスレーブ機を動作させるマスタースレーブ方式の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マスター機と離れた場所にあるスレーブ機に対し、操作者による操作に応じてスレーブ機を動作させるという装置が開発されてきており、発明者は、スレーブ機を直感的に簡便且つ正確に操作することができ、さらには、製造コストを比較的掛けずに、スレーブ機が受けた力をマスター機に反映させることができるマスタースレーブアーム装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6749671号公報
【0004】
特許文献1の装置によれば、スレーブ機が手首ユニットと腕ユニットで構成され、手首ユニットが水平方向に軸を有する第一回転軸及び当該第一回転軸と直交する水平方向に軸を有する第二回転軸を具え、腕ユニットが水平方向に可動な第一直線可動部と第二直線可動部、垂直方向に可動な第三直線可動部、及び垂直方向に軸を有する第六回転軸を具え、操作部により、第一モータ乃至第六モータを別々に駆動させてこれらをそれぞれ別個に操作することができるので、スレーブ機の直線動作も簡単に実現させることができ、スレーブ機を直感的に簡便且つ正確に操作することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、より操作し易く、さらには、水中や放射能レベルの高い環境など、危険環境下においても正確且つ確実に作動するマスタースレーブアーム装置とする余地はある。
【0006】
そこで、本発明は、より操作し易く、さらには、危険環境下においても正確且つ確実に作動するマスタースレーブアーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、マスター機の動作に応じてスレーブ機を動作させるマスタースレーブアーム装置であって、
前記マスター機は、
水平軸と、該水平軸に直交する軸を中心として回動可能な持ち手部と、
前記水平軸方向に設けられ、垂直軸を中心として旋回可能に構成されているレールと、
前記持ち手部が載置され、前記レール上を前記水平軸方向に進退動可能に構成されている台座と、
前記持ち手部の水平軸と該水平軸に直交する軸を中心とした回動の回転位置、前記レールの旋回の回転位置、及び前記台座の進退動の変位をそれぞれ検出する第一乃至第四検出手段を具え、
前記スレーブ機は、
第一乃至第四モータと、
作業部材が取付けられ、水平軸に直交する軸を中心として回動可能な作業部材取付部と、
前記作業部材取付部に連結され、前記水平軸を中心として回動可能な手首ユニットと、
前記手首ユニットに連結され、垂直軸を中心として旋回可能、且つ、前記水平軸方向に進退動可能に構成されている腕ユニットを具え、
前記第一乃至第四検出手段によって検出した前記回転位置及び変位に応じて、前記第一乃至第四モータが、それぞれ、前記作業部材取付部と前記手首ユニットを回動させ、前記腕ユニットを旋回及び進退動させることを特徴とするマスタースレーブアーム装置によって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマスタースレーブアーム装置によれば、マスター機が水平軸と、その水平軸に直交する軸を中心として回動可能な持ち手部と、当該水平軸方向に設けられ、垂直軸を中心として旋回可能に構成されているレールと、持ち手部が載置され、レール上を当該水平軸方向に進退動可能に構成されている台座を具えているので、操作者は、持ち手部を手首の動きに合わせて回動させ、さらに、台座とレールを肘の動きに合わせて進退動及び回動させることができるので、より操作し易いマスタースレーブアーム装置とすることができる。
【0009】
また、台座に設けられたナットと、ナットと螺合するすべりねじをさらに具え、台座の進退動の変位を検出する第四検出手段がすべりねじの回転位置を検出する構成とすれば、台座をスムーズに進退動させ易いので、操作がし易い。
【0010】
また、スレーブ機の腕ユニットが、水平軸方向に設けられた直線状溝を具え、腕ユニットを旋回させる第三モータからのトルクが旋回用歯車に伝達されるように構成され、旋回用歯車が、周方向に沿って形成された周方向溝を具え、直線状溝と周方向溝の両方に嵌っている棒状部材を具える構成とすれば、スレーブ機の腕ユニットの旋回のガタつきを防止し、腕ユニットの旋回を円滑なものとすることができる。
【0011】
また、マスター機が、マスター側第一かさ歯車、マスター側第二かさ歯車、並びに、マスター側第一かさ歯車及びマスター側第二かさ歯車と噛合うマスター側ピニオンギアを具えたマスター側デファレンシャルギア機構をさらに具え、持ち手部の水平軸を中心とする回動のトルクが、水平軸を中心とするマスター側平歯車、マスター側平歯車と噛合うマスター側第一ギア付ボールスプライン、マスター側第一ギア付ボールスプラインと係合するマスター側第一シャフトを介して、マスター側第一かさ歯車へ伝達されるように構成され、一方で、持ち手部の水平軸に直交する軸を中心とする回動のトルクが、マスター側平歯車を貫通するマスター側第二シャフト、マスター側第二シャフトに設けられている差動入力ギア、差動入力ギアが噛合う内歯と外歯を有するマスター側環状ギア、マスター側環状ギアの外歯と噛合うマスター側第二ギア付ボールスプライン、マスター側第二ギア付ボールスプラインと係合するマスター側第三シャフトを介して、マスター側第二かさ歯車へ伝達されるように構成され、水平軸に直交する軸を中心とした回動の回転位置を検出する第二検出手段が、マスター側ピニオンギアの公転の回転位置を検出するように構成すれば、持ち手部を水平軸を中心として回動させた状態、或いは、回動させている状態において、持ち手部を水平軸に直交する軸を中心として回動させても、水平軸に直交する軸を中心とした回動の回転位置を正確に検出することができる。
【0012】
これは、マスター機が、入力されたトルクを減速比1:1で出力する、マスター側第一遊星歯車機構とマスター側第二遊星歯車機構の組合せ、及びマスター側第三遊星歯車機構とマスター側第四遊星歯車機構の組合せをさらに具え、持ち手部の水平軸を中心とする回動のトルクが、水平軸を中心とするマスター側平歯車、マスター側平歯車と噛合うマスター側第一ギア付ボールスプライン、マスター側第一ギア付ボールスプラインと係合するマスター側第一シャフトを介して、マスター側第一遊星歯車機構とマスター側第二遊星歯車機構の組合せ、及びマスター側第三遊星歯車機構とマスター側第四遊星歯車機構の組合せに伝達され、持ち手部の水平軸に直交する軸を中心とする回動のトルクが、マスター側平歯車を貫通するマスター側第二シャフト、マスター側第二シャフトに設けられている差動入力ギア、差動入力ギアが噛合う内歯と外歯を有するマスター側環状ギア、マスター側環状ギアの外歯と噛合うマスター側第二ギア付ボールスプライン、マスター側第二ギア付ボールスプラインと係合するマスター側第三シャフトを介して、マスター側第一遊星歯車機構又はマスター側第二遊星歯車機構、或いは、マスター側第三遊星歯車機構又はマスター側第四遊星歯車機構に伝達されて、マスター側第一遊星歯車機構とマスター側第二遊星歯車機構の組合せ、又はマスター側第三遊星歯車機構とマスター側第四遊星歯車機構の組合せの出力トルクに差動を生じさせるように構成され、水平軸に直交する軸を中心とした回動の回転位置を検出する第二検出手段が、マスター側第一遊星歯車機構又はマスター側第二遊星歯車機構、或いは、マスター側第三遊星歯車機構又はマスター側第四遊星歯車機構の出力トルクの差動の回転位置を検出するように構成しても実現することができる。
【0013】
さらに、マスター機の構成と基本的に合わせるように、スレーブ機が、スレーブ側第一かさ歯車、スレーブ側第二かさ歯車、並びに、前記スレーブ側第一かさ歯車及びスレーブ側第二かさ歯車と噛合うスレーブ側ピニオンギアを具えたスレーブ側デファレンシャルギア機構をさらに具え、手首ユニットを水平軸を中心として回動させるように連動するスレーブ側平歯車と、内歯と外歯を有するスレーブ側環状ギアと、スレーブ側環状ギアの内歯と噛合う差動出力ギアと、差動出力ギアに連結され、スレーブ側平歯車を貫通するスレーブ側第二シャフトをさらに具え、第一モータからのトルクが、スレーブ側第一かさ歯車に伝達されるとともに、スレーブ側平歯車とスレーブ側環状ギアを同一方向に同回転数で回動させ、第二モータからのトルクが、スレーブ側ピニオンギアを公転させ、第二スレーブ側かさ歯車に、第一スレーブ側かさ歯車に対する差動と、スレーブ側環状ギアに、スレーブ側平歯車に対する差動を生じさせて、差動出力ギアを回転させ、差動出力ギアのトルクにより、作業部材取付部を水平軸に直交する軸を中心に回動させる構成とすることにより、マスター機とスレーブ機の同期を取り易くすることができる。
【0014】
マスター機において、遊星歯車機構を具えている場合は、スレーブ機が、入力されたトルクを減速比1:1で出力する、スレーブ側第一遊星歯車機構とスレーブ側第二遊星歯車機構の組合せ、及びスレーブ側第三遊星歯車機構とスレーブ側第四遊星歯車機構の組合せをさらに具え、手首ユニットを水平軸を中心として回動させるように連動するスレーブ側平歯車と、内歯と外歯を有するスレーブ側環状ギアと、スレーブ側環状ギアの内歯と噛合う差動出力ギアと、差動出力ギアに連結され、スレーブ側平歯車を貫通するスレーブ側第二シャフトをさらに具え、第一モータからのトルクが、スレーブ側第一遊星歯車機構とスレーブ側第二遊星歯車機構の組合せ、及びスレーブ側第三遊星歯車機構とスレーブ側第四遊星歯車機構の組合せに伝達されるとともに、スレーブ側平歯車とスレーブ側環状ギアを同一方向に同回転数で回動させ、第二モータからのトルクが、スレーブ側第一遊星歯車機構若しくはスレーブ側第二遊星歯車機構、又はスレーブ側第三遊星歯車機構若しくはスレーブ側第四遊星歯車機構の出力トルクに差動を生じさせるように伝達されるとともに、差動出力ギアを回転させ、差動出力ギアのトルクにより、作業部材取付部を水平軸に直交する軸を中心に回動させる構成とすればよい。
【0015】
また、スレーブ機において、上述したデファレンシャルギア機構又は遊星歯車機構を採用している場合において、第一モータからのトルクが、スレーブ側第一シャフトと、スレーブ側第一シャフトに係合するスレーブ側第一ギア付ボールスプラインを介してスレーブ側平歯車に、スレーブ側第三シャフトと、スレーブ側第三シャフトに係合するスレーブ側第二ギア付ボールスプラインを介してスレーブ側環状歯車にそれぞれ伝達され、第二モータからのトルクによる差動が、スレーブ側第三シャフトに伝達され、手首ユニットが、スレーブ側第一シャフトとスレーブ側第三シャフトの一方の側に配設され、第一乃至第三モータが、スレーブ側第一シャフトと前記スレーブ側第三シャフトの他方の側に配設されている構成とすれば、作業部材取付部と手首ユニットが水中や放射能レベルの高い環境など、危険環境下に置かれたとしても、これらを作動させるモータを安全な環境下に置き易くすることができるので、危険環境下においても正確且つ確実に作動するマスタースレーブアーム装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態のマスター機の正面図。
図2図1の一部省略左側面図。
図3】本発明の一実施形態のスレーブ機の一部省略右側面図。
図4図3の正面図。
図5】本発明の一実施形態のマスター機の要部側面部。
図6図5の平面図。
図7】本発明の一実施形態のマスター機の検出部の展開図。
図8】本発明の一実施形態のスレーブ機の要部側面部。
図9図8の旋回機構の要部を示す図。
図10】本発明の一実施形態のスレーブ機の駆動部の展開図。
図11図8の手首ユニットの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例を、図1~11を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明は、マスター機100の動作に応じてスレーブ機200を動作させるマスタースレーブアーム装置である。図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態のマスター機100は、操作者(図示省略。)が着座するシート102(図2では省略。)と、操作者が一方の腕及び手で操作する進退動回動操作部110と、操作者が他方の手で操作する縦横位置操作部104を有する。
【0019】
進退動回動操作部110と縦横位置操作部104は、それぞれ、マスター側支柱101,103に取り付けられている。マスター側支柱101,103には、進退動回動操作部110と縦横位置操作部104の垂直方向位置を調整するマスター側高さ調節機構106,108がそれぞれ設けられていてもよい。マスター側高さ調節機構106,108は、ねじとナット等で構成すればよい。
【0020】
図3に示すようにスレーブ機200は、スレーブ側支柱201と、スレーブ側支柱201によって支持されている腕ユニット210を具えている。スレーブ機200は、さらに、腕ユニット210の垂直方向位置を調整するスレーブ側高さ調節機構202と、図4に示すような、腕ユニット210の水平方向位置を調整するスレーブ側横位置調節機構204を具えることができる。スレーブ側高さ調節機構202とスレーブ側横位置調節機構204は、ねじとナット等で構成すればよい。前述したマスター機100の縦横位置操作部104を操作することにより、スレーブ側高さ調節機構202とスレーブ側横位置調節機構204を作動させ、腕ユニット210の垂直方向位置と水平方向位置を調整することができるように構成するのがよい。なお、腕ユニット210は、安全のため、懸架装置206によって吊り下げられている。
【0021】
図5及び6に示すように、マスター機100の進退動回動操作部110は、持ち手部112を具えている。持ち手部112は、水平軸114を中心として回動可能に構成されており、持ち手部112の水平軸114を中心とした回動に伴い、マスター側平歯車130も回動するように構成されている。また、持ち手部112は、水平軸114に直行する軸116を中心としても回動可能に構成されており、持ち手部112の水平軸114に直行する軸116を中心とした回動によるトルクは、マスター側平歯車130を貫通するマスター側第二シャフト132を介して、マスター側第二シャフト132に設けられている差動入力ギア134に伝達され、差動入力ギア134が噛合う内歯を有するマスター側環状ギア136に伝達される。なお、マスター側環状ギア136は、外歯を有するが、外歯は、マスター側平歯車130と同ピッチで同歯数とするのが好ましい。
【0022】
持ち手部112の水平軸114を中心とした回動に伴い、マスター側平歯車130が回動すると、マスター側平歯車130のトルクは、マスター側平歯車130と噛合うマスター側第一ギア付ボールスプライン138を介して、マスター側第一ギア付ボールスプライン138と係合するマスター側第一シャフト152に伝達される。
【0023】
また、マスター側第二シャフト132がマスター側平歯車130を貫通し、マスター側第二シャフト132に設けられている差動入力ギア134がマスター側環状ギア136の内歯に噛合っているので、持ち手部112の水平軸114を中心とした回動に伴い、マスター側平歯車130が回動すると、マスター側環状ギア136も同方向に等速で回動する。マスター側環状ギア136のトルクは、マスター側環状ギア136の外歯と噛合うマスター側第二ギア付ボールスプライン139を介して、マスター側第二ギア付ボールスプライン139と係合するマスター側第三シャフト156に伝達される。
【0024】
一方、持ち手部112が水平軸114に直交する軸116を中心として回動させられると、そのトルクは、マスター側第二シャフト132とマスター側第二シャフト132に設けられている差動入力ギア134を介して、マスター側環状ギア136に伝達され、マスター側第三シャフト156に伝達される。すなわち、持ち手部112が水平軸114に直交する軸116を中心としてのみ回動させられると、マスター側第三シャフト156にトルクが伝達されるが、マスター側第一シャフト152にトルクは伝達されない。一方、持ち手部112が水平軸114と水平軸114に直交する軸116の両方を中心として同時に回動させられると、マスター側第一シャフト152とマスター側第三シャフト156には異なる回転数のトルクが伝達され、差動が発生する。
【0025】
また、進退動回動操作部110は、水平軸114の軸方向(以下、単に、「水平軸方向」という。)に亘って設けられたレール120を具える。レール120内には、マスター側第一シャフト152、マスター側第三シャフト156、及び進退動検出軸154がレール120に沿って配設されている。レール120は、垂直軸140を中心として旋回可能に構成されている。レール120の旋回によるトルクは、旋回検出軸142に伝達され、旋回検出軸142の回転位置は、エンコーダやモータ等の第三検出手段E3によって検出される。
【0026】
持ち手部112は、台座122の上に載置され、固定されている。台座122は、レール120上を水平軸114方向に進退動可能に構成されている。台座122の進退動は、進退動検出軸154の回転に変換されるように構成するのがよい。例えば、台座122にナット(図示省略。)を設け、進退動検出軸154をナットと螺合するすべりねじとすることができる。本構成とすれば、台座122をスムーズに進退動させ易いので、操作がし易い。また、台座122が、操作者の肘を乗せることができる肘置き部124を有する構成とすれば、操作者がより操作し易い。
【0027】
次に、図7を参照して、マスター機100の進退動回動操作部110における、持ち手部112の水平軸114を中心とした回動の回転位置、水平軸114に直交する軸を中心とした回動の回転位置、及び台座122の進退動の変位をそれぞれどのように検出するかを説明する。
【0028】
台座122の進退動の変位は、公知のエンコーダやセンサで構成された検出手段で検出すればよい。具体的には、台座122の進退動を進退動検出軸154の回転に変換し、進退動検出軸154の回転位置を第四検出手段E4で検出する構成とすることができる。
【0029】
また、マスター機100の進退動回動操作部110は、マスター側デファレンシャルギア機構160を具えている。マスター側デファレンシャルギア機構160は、マスター側第一かさ歯車162、マスター側第二かさ歯車164、並びに、マスター側第一かさ歯車162及びマスター側第二かさ歯車164と噛合うマスター側ピニオンギア166を有する。マスター側デファレンシャルギア機構160のように、本発明で使用されるデファレンシャルギア機構は、第一かさ歯車と第二かさ歯車が同軸上に相対回転可能に対向して設けられ、第一かさ歯車及び第二かさ歯車と同軸で回転可能なピニオンキャリアに回転可能に設けられたピニオンギアが第一かさ歯車と第二かさ歯車に噛合う構成を有する。
【0030】
マスター側第一シャフト152に伝達されたトルクは、マスター側第一かさ歯車162へ伝達されるように構成されている。一方で、マスター側第三シャフト156に伝達されたトルクは、マスター側第二かさ歯車164に伝達されるように構成されている。ここで、マスター側第一シャフト152とマスター側第三シャフト156からマスター側第一かさ歯車162とマスター側第二かさ歯車164に同時にトルクが伝達されるときは、マスター側第一かさ歯車162とマスター側第二かさ歯車164が反対方向に回転するように構成する。これにより、マスター側第一シャフト152とマスター側第三シャフト156の回転に差動が生じていない場合、マスター側ピニオンギア166は自転させられるだけで、公転しない。これに対し、マスター側第一シャフト152とマスター側第三シャフト156の回転に差動が生じた場合は、マスター側ピニオンギア166は公転する。
【0031】
マスター側第一シャフト152の回転位置は、エンコーダやモータ等の第一検出手段E1によって検出される。他方、マスター側第一シャフト152とマスター側第三シャフト156の回転に差動が生じ、マスター側ピニオンギア166が公転した場合、マスター側ピニオンギア166の公転の回転位置、すなわち、マスター側ピニオンキャリア168の回転位置は、エンコーダやモータ等の第二検出手段E2によって検出される。
【0032】
上述した第一乃至第四検出手段E1~E4によって検出された回転位置及び変位は、電気信号に変換され、演算手段(図示省略。)により、後述するスレーブ機200の第一乃至第四モータM1~M4のいずれをどの方向にどの程度、どの回転数で回転させるかという電気的情報に変換される。このようにして変換された電気的情報は、スレーブ機200の第一乃至第四モータM1~M4のそれぞれに送られ、第一乃至第四モータM1~M4を別々に駆動する。すなわち、第一乃至第四検出手段E1~E4によって検出した回転位置及び変位に応じて、第一乃至第四モータM1~M4が駆動される。このとき、第一乃至第四検出手段E1~E4によって検出した回転位置及び変位の量に基づく回転数と第一乃至第四モータM1~M4の回転数を一致させても、変動させてもよい。なお、第一モータM1と第二モータM2は、駆動させないときにそのロータが回転しないようにロック機能を具え、第三モータM3と第四モータM4も同様にロック機能を具えることができる。
【0033】
図8に示すように、スレーブ機200の腕ユニット210は、手首ユニット220と連結され、手首ユニット220は、作業部材取付部270と連結されている。作業部材取付部270には、作業部材272が取付けられている。本実施例では、作業部材272は、ワークW(図3参照)を研磨するディスクグラインダーであるが、作業部材はこれに限られるものではない。
【0034】
腕ユニット210は、垂直軸240を中心として旋回可能に構成されている。具体的には、図9に示すように、腕ユニット210は、まず、水平軸214方向に設けられた直線状溝242を具えている。また、垂直軸240と軸芯が異なる旋回用歯車244を有する。旋回用歯車244は、周方向に沿って周方向溝246が形成されている。また、直線状溝242と周方向溝246の両方に嵌る棒状部材248を具えている。旋回用歯車244には、第三モータM3(図8参照。)からのトルクが伝達されるように構成されている。第三モータM3が駆動すると旋回用歯車244が回転して、棒状部材248の直線状溝242と周方向溝246に対する位置が変位する。これにより、腕ユニット210を垂直軸240を中心として旋回させることができる。本構成とすることにより、スレーブ機200の腕ユニット210の旋回のガタつきを防止し、腕ユニット210の旋回を円滑なものとすることができる。なお、垂直軸240に対し、第三モータM3からのトルクを直接伝達させる構成とすることも可能なことは言うまでもない。
【0035】
また、腕ユニット210は、水平軸214方向に進退動可能に構成されている。具体的には、腕ユニット210は、基部218と伸縮部219で構成し、基部218が軸支するねじ軸254(図10参照。)に、伸縮部219に配設されたナット(図示省略。)を螺合させ、ねじ軸254の回転によって伸縮部219が基部218に対して進退動するように構成することができる。ねじ軸254には、第四モータM4からトルクが伝達される(図10参照。)。
【0036】
腕ユニット210、より具体的には、伸縮部219の先端側に連結される手首ユニット220は、水平軸214と、水平軸214に直交する軸216を中心として回動可能に構成されている。まず、手首ユニット220は、水平軸214を中心として回動するスレーブ側平歯車230と連動するように構成されている。これにより、スレーブ側平歯車230が回動すると、手首ユニット220及びこれと連結されている作業部材取付部270と作業部材272も水平軸214を中心として回動することとなる。
【0037】
また、手首ユニット220は、内歯と外歯を有するスレーブ側環状ギア236を具えている。スレーブ側環状ギア236の外歯は、スレーブ側平歯車230と同ピッチで同歯数とするのがよい。スレーブ側環状ギア236の内歯には、図11に示すように、差動出力ギア234が噛合っている。差動出力ギア234は、スレーブ側平歯車230を貫通するスレーブ側第二シャフト232と連結されている。差動出力ギア234が回動すると、そのトルクは、スレーブ側第二シャフト232を介して、作業部材取付部回動機構233(図8も参照。)に伝達され、作業部材取付部270を水平軸に直交する軸216を中心に回動させる。なお、手首ユニット220の場合、作業部材取付部回動機構233は、クランク機構(リンク機構)であるが、スレーブ側第二シャフト232のトルクを利用して作業部材取付部270を水平軸に直交する軸216を中心に回動させることができれば、これに限られるものではない。
【0038】
ここで、スレーブ側平歯車230、スレーブ側環状ギア236、及び差動出力ギア234にそれぞれどのようにトルクが伝達されるかを説明する。図10に示すように、スレーブ機200の腕ユニット210は、スレーブ側デファレンシャルギア機構260を具えている。スレーブ側デファレンシャルギア機構260は、スレーブ側第一かさ歯車262、スレーブ側第二かさ歯車264、並びに、スレーブ側第一かさ歯車262及びスレーブ側第二かさ歯車264と噛合うスレーブ側ピニオンギア266を具えている。
【0039】
第一モータM1のみが駆動しているとき、第一モータM1からのトルクは、スレーブ側第一シャフト252に伝えられるとともに、スレーブ側第一かさ歯車262にも伝達される。このとき、第二モータM2のロック機能により、スレーブ側ピニオンキャリア268は回転しないので、スレーブ側ピニオンギア266は公転せずに自転して、スレーブ側第二かさ歯車264にトルクが伝達されるから、スレーブ側第一かさ歯車262とスレーブ側第二かさ歯車264は等速回転する。スレーブ側第二かさ歯車264に伝達されたトルクは、スレーブ側第三シャフト256に対し、スレーブ側第一シャフト252と同一方向に同回転数で回動するように伝えられる。このようにして、第一モータM1が駆動したとき、スレーブ側第一シャフト252とスレーブ側第三シャフト256は、同一方向に同回転数で回動する。
【0040】
一方で、第二モータM2のみが駆動すると、第二モータM2からのトルクは、スレーブ側ピニオンキャリア268に伝えられる。このとき、第一モータM1のロック機能により、スレーブ側第一かさ歯車262は回転しないので、スレーブ側ピニオンギア266は、自転しながら公転し、そのトルクをスレーブ側第二かさ歯車264に伝達する。スレーブ側第二かさ歯車264に伝達されたトルクは、スレーブ側第三シャフト256に伝達される。よって、この場合、スレーブ側第一シャフト252は回動しないが、スレーブ側第三シャフト256は回動する。
【0041】
他方、第一モータM1と第二モータM2が同時に駆動すると、第一モータM1からのトルクによって側第一シャフト252とスレーブ側第三シャフト256が同一方向に同回転数で回動使用とするが、同時に、第二モータM2からのトルクが、スレーブ側ピニオンギア266の自転及び公転によってスレーブ側第二かさ歯車264に伝達され、スレーブ側第一かさ歯車262とスレーブ側第二かさ歯車264の間で差動が発生する。よって、スレーブ側第一シャフト252とスレーブ側第三シャフト256が異なる回転数で回動する。
【0042】
スレーブ側第一シャフト252に伝達されたトルクは、ボールスプライン等のトルク伝達機構を介して、手首ユニット220のスレーブ側平歯車230に伝達される。一方で、スレーブ側第三シャフト256に伝達されたトルクは、同様に、ボールスプライン等のトルク伝達機構を介して、手首ユニット220のスレーブ側環状ギア236の外歯からスレーブ側環状ギア236に伝達される。
【0043】
スレーブ側第一シャフト252とスレーブ側第三シャフト256が同一方向に同回転数で回動すると、図11に示すスレーブ側平歯車230とスレーブ側環状ギア236も同一方向に同回転数で回動するように構成されている。このとき、スレーブ側環状ギア236の内歯に噛合っている差動出力ギア234は回動しない。よって、手首ユニット220、作業部材取付部270、及び作業部材272を水平軸214を中心として回動させることができる。
【0044】
一方、スレーブ側第一シャフト252は回動しないが、スレーブ側第三シャフト256が回動している状態、或いは、スレーブ側第一シャフト252とスレーブ側第三シャフト256が異なる回転数で回動している場合、すなわち、スレーブ側第一シャフト252とスレーブ側第三シャフト256の回転数に差動が生じている場合、スレーブ側環状ギア236の内歯に噛合っている差動出力ギア234が回動する。これにより、作業部材取付部270を水平軸に直交する軸216を中心に回動させることができる。
【0045】
ここで、図8に示されているように、手首ユニット220が、スレーブ側第一シャフト252とスレーブ側第三シャフト256の一方の側に配設され、第一乃至第三モータM1~M3が、スレーブ側第一シャフト252とスレーブ側第三シャフト256の他方の側に配設されている構成とするのがよい。この構成とすることにより、作業部材取付部270と手首ユニット220が水中や放射能レベルの高い環境など、危険環境下に置かれたとしても、これらを作動させる第一乃至第三モータM1~M3を安全な環境下に置き易くすることができるので、危険環境下においても正確且つ確実に作動するマスタースレーブアーム装置とすることができる。
【0046】
また、腕ユニット210が力検出機能を具え、第一乃至第四検出手段E1~E4をモータで構成するのがよい。例えば、第一乃至第四モータM1~M4がトルクセンサ等の力検出機能を具えることができる。そして、力検出機能によって検知した力を、電気信号に変換し、その量に応じて、第一乃至第四モータM1~M4を駆動して、進退動回動操作部110に力を付与するように構成してもよい。これにより、腕ユニット210が受けた力を進退動回動操作部110の操作者が得ることができ、進退動回動操作部110の操作者は、その感触に応じた操作を行うことができる。本構成は、特に、ディスクグラインダーによる研削作業など、作業部材を作業対象に押付けて作業する場合のマスタースレーブアーム装置とする場合などに好適である。
【0047】
以上では、マスター機100の進退動回動操作部110とスレーブ機200の腕ユニット210がデファレンシャルギア機構を具える例を説明したが、デファレンシャルギア機構に変えて、遊星歯車機構を適用することもできる。本発明に適用できる遊星歯車機構は、回転可能なサンギア、サンギアと同軸上に設けられ、サンギアに対し相対回転可能なリングギア、サンギアと同軸上に回転可能なプラネタリキャリアに回転可能に設けられ、サンギアとリングギアに噛合うプラネタリギアで構成される。
【0048】
図示しての説明は省略するが、具体的には、まず、マスター機100の進退動回動操作部110が、入力されたトルクを減速比1:1で出力する、マスター側第一遊星歯車機構とマスター側第二遊星歯車機構の組合せ、及びマスター側第三遊星歯車機構とマスター側第四遊星歯車機構の組合せをさらに具えるように構成することができる。そして、持ち手部112の水平軸114を中心とする回動のトルクが、水平軸114を中心とするマスター側平歯車130、マスター側平歯車130と噛合うマスター側第一ギア付ボールスプライン138、マスター側第一ギア付ボールスプライン138と係合するマスター側第一シャフト152を介して、マスター側第一遊星歯車機構とマスター側第二遊星歯車機構の組合せ、及びマスター側第三遊星歯車機構とマスター側第四遊星歯車機構の組合せに伝達されるように構成する。一方で、持ち手部112の水平軸114に直交する軸116を中心とする回動のトルクが、マスター側平歯車130を貫通するマスター側第二シャフト132、マスター側第二シャフト132に設けられている差動入力ギア134、差動入力ギア134が噛合う内歯と外歯を有するマスター側環状ギア136、マスター側環状ギア136の外歯と噛合うマスター側第二ギア付ボールスプライン139、マスター側第二ギア付ボールスプライン139と係合するマスター側第三シャフト156を介して、マスター側第一遊星歯車機構又はマスター側第二遊星歯車機構、或いは、マスター側第三遊星歯車機構又はマスター側第四遊星歯車機構に伝達されて、マスター側第一遊星歯車機構とマスター側第二遊星歯車機構の組合せ、又はマスター側第三遊星歯車機構とマスター側第四遊星歯車機構の組合せの出力トルクに差動を生じさせるように構成する。そして、水平軸114に直交する軸116を中心とした回動の回転位置を検出する第二検出手段E2が、マスター側第一遊星歯車機構又はマスター側第二遊星歯車機構、或いは、マスター側第三遊星歯車機構又はマスター側第四遊星歯車機構の出力トルクの差動の回転位置を検出するように構成することができる。
【0049】
また、スレーブ機200の腕ユニット210が、入力されたトルクを減速比1:1で出力する、スレーブ側第一遊星歯車機構とスレーブ側第二遊星歯車機構の組合せ、及びスレーブ側第三遊星歯車機構とスレーブ側第四遊星歯車機構の組合せをさらに具えるように構成することができる。スレーブ側平歯車230と、スレーブ側環状ギア236と、差動出力ギア234と、スレーブ側第二シャフト232を具える点は、デファレンシャルギア機構の場合と同様である。また、第一モータM1からのトルクが、スレーブ側第一遊星歯車機構とスレーブ側第二遊星歯車機構の組合せ、及びスレーブ側第三遊星歯車機構とスレーブ側第四遊星歯車機構の組合せに伝達されるとともに、スレーブ側平歯車230とスレーブ側環状ギア236を同一方向に同回転数で回動させるように構成する。そして、第二モータM2からのトルクが、スレーブ側第一遊星歯車機構若しくはスレーブ側第二遊星歯車機構、又はスレーブ側第三遊星歯車機構若しくはスレーブ側第四遊星歯車機構の出力トルクに差動を生じさせるように伝達されるとともに、差動出力ギア234を回転させるように構成する。こうすることで、差動出力ギア234のトルクにより、作業部材取付部270を水平軸114に直交する軸を中心に回動させることができる。
【0050】
以上に説明したように、本発明によれば、操作者が持ち手部を手首の動きに合わせて回動させ、さらに、台座とレールを肘の動きに合わせて進退動及び回動させることができるので、より操作し易いマスタースレーブアーム装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0051】
100 マスター機
110 進退動回動操作部
112 持ち手部
114 水平軸
116 水平軸に直交する軸
120 レール
122 台座
130 マスター側平歯車
132 マスター側第二シャフト
134 差動入力ギア
136 マスター側環状ギア
138 マスター側第一ギア付ボールスプライン
139 マスター側第二ギア付ボールスプライン
140 垂直軸
152 マスター側第一シャフト
156 マスター側第三シャフト
160 マスター側デファレンシャルギア機構
162 マスター側第一かさ歯車
164 マスター側第二かさ歯車
166 マスター側ピニオンギア
200 スレーブ機
210 腕ユニット
214 水平軸
220 手首ユニット
230 スレーブ側平歯車
232 スレーブ側第二シャフト
233 作業部材取付部回動機構
234 差動出力ギア
236 スレーブ側環状ギア
240 垂直軸
242 直線状溝
244 旋回用歯車
246 周方向溝
248 棒状部材
252 スレーブ側第一シャフト
256 スレーブ側第三シャフト
260 スレーブ側デファレンシャルギア機構
262 スレーブ側第一かさ歯車
264 スレーブ側第二かさ歯車
266 スレーブ側ピニオンギア
270 作業部材取付部
272 作業部材
E1 第一検出手段
E2 第二検出手段
E3 第三検出手段
E4 第四検出手段
M1 第一モータ
M2 第二モータ
M3 第三モータ
M4 第四モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11