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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176571
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 41/00 20060101AFI20231206BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20231206BHJP
   F16C 35/07 20060101ALI20231206BHJP
   F16C 25/06 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C19/16
F16C35/07
F16C25/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088920
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】滝本 達也
(72)【発明者】
【氏名】内田 洋治
(72)【発明者】
【氏名】藤裏 英雄
(72)【発明者】
【氏名】井口 洋二
【テーマコード(参考)】
3J012
3J117
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
3J012AB01
3J012AB20
3J012BB03
3J012CB10
3J012DB20
3J012FB10
3J012HB02
3J117AA02
3J117AA10
3J117CA06
3J117DA01
3J117DB10
3J217JA02
3J217JA14
3J217JA24
3J217JB52
3J217JB55
3J217JB83
3J217JB88
3J701AA02
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA77
3J701BA79
3J701FA26
3J701FA41
(57)【要約】
【課題】予圧及び偏芯を検知することが可能な信号をひずみゲージから出力する軸受装置を提供する。
【解決手段】本軸受装置は、回転軸と、前記回転軸を支持する第1転がり軸受及び第2転がり軸受と、前記第1転がり軸受及び前記第2転がり軸受を保持する軸受ハウジングと、前記第1転がり軸受の荷重を検出する複数のひずみゲージを備えた、円筒状の第1ゲージ固定用部材と、前記第2転がり軸受の荷重を検出する複数のひずみゲージを備えた、円筒状の第2ゲージ固定用部材と、を有し、前記第1転がり軸受には前記第1ゲージ固定用部材側に予圧が加えられ、前記第2転がり軸受には前記第2ゲージ固定用部材側に予圧が加えられ、前記第1転がり軸受と前記第1ゲージ固定用部材とは、端面同士が当接するように前記回転軸の軸線方向に隣接して配置され、前記第2転がり軸受と前記第2ゲージ固定用部材とは、端面同士が当接するように前記回転軸の軸線方向に隣接して配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸を支持する第1転がり軸受及び第2転がり軸受と、
前記第1転がり軸受及び前記第2転がり軸受を保持する軸受ハウジングと、
前記第1転がり軸受の荷重を検出する複数のひずみゲージを備えた、円筒状の第1ゲージ固定用部材と、
前記第2転がり軸受の荷重を検出する複数のひずみゲージを備えた、円筒状の第2ゲージ固定用部材と、を有し、
前記第1転がり軸受には前記第1ゲージ固定用部材側に予圧が加えられ、前記第2転がり軸受には前記第2ゲージ固定用部材側に予圧が加えられ、
前記第1転がり軸受と前記第1ゲージ固定用部材とは、端面同士が当接するように前記回転軸の軸線方向に隣接して配置され、
前記第2転がり軸受と前記第2ゲージ固定用部材とは、端面同士が当接するように前記回転軸の軸線方向に隣接して配置されている、軸受装置。
【請求項2】
前記第1ゲージ固定用部材及び前記第2ゲージ固定用部材は、前記軸受ハウジングに保持されている、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記第1転がり軸受及び前記第2転がり軸受のそれぞれは、外輪と、前記外輪の内周側に前記外輪と同軸状に配置された内輪と、前記外輪と前記内輪との間に配置された複数の転動体と、を有し、
前記第1ゲージ固定用部材の端面は、前記第1転がり軸受の前記外輪の端面と当接し、
前記第2ゲージ固定用部材の端面は、前記第2転がり軸受の前記外輪の端面と当接する、請求項2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記第1ゲージ固定用部材及び前記第2ゲージ固定用部材は、前記回転軸の外周面に固定されている、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記第1転がり軸受及び第2転がり軸受のそれぞれは、外輪と、前記外輪の内周側に前記外輪と同軸状に配置された内輪と、前記外輪と前記内輪との間に配置された複数の転動体と、を有し、
前記第1ゲージ固定用部材の端面は、前記第1転がり軸受の前記内輪の端面と当接し、
前記第2ゲージ固定用部材の端面は、前記第2転がり軸受の前記内輪の端面と当接する、請求項4に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記第1ゲージ固定用部材及び前記第2ゲージ固定用部材のそれぞれは、内側面に前記ひずみゲージが固定された貫通孔を複数有する、請求項1乃至5の何れか一項に記載の軸受装置。
【請求項7】
前記貫通孔は、外周面から内周面に貫通する、請求項6に記載の軸受装置。
【請求項8】
前記第1ゲージ固定用部材のそれぞれの前記貫通孔と、前記第2ゲージ固定用部材のそれぞれの前記貫通孔とは、前記回転軸の軸線方向から視て、重なる部分を有する、請求項6に記載の軸受装置。
【請求項9】
1つの前記貫通孔内に複数の前記ひずみゲージが配置されている、請求項6に記載の軸受装置。
【請求項10】
複数の前記貫通孔は、前記第1ゲージ固定用部材及び前記第2ゲージ固定用部材のそれぞれの周方向に等間隔で配置されている、請求項6に記載の軸受装置。
【請求項11】
複数の前記貫通孔は、前記第1ゲージ固定用部材及び前記第2ゲージ固定用部材のそれぞれの周方向に配置された複数列の貫通孔を含む、請求項6に記載の軸受装置。
【請求項12】
複数の前記貫通孔は、千鳥状に配置されている、請求項11に記載の軸受装置。
【請求項13】
前記ひずみゲージは、Cr混相膜から形成された抵抗体を有する、請求項1乃至5の何れか一項に記載の軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、軸受ハウジングの内側に収容された転がり軸受を備えた軸受装置が知られている。このような軸受装置では、軸の剛性及び精度を向上するために、適正な範囲内において予圧を掛けることがある。このような軸受装置において、予圧の量を知りたい場合があるため、軸受装置にセンサを搭載し、予圧を検知することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-164241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、軸受装置において、予圧だけではなく偏芯を検知したい場合がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、予圧及び偏芯を検知することが可能な信号をひずみゲージから出力する軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本軸受装置は、回転軸と、前記回転軸を支持する第1転がり軸受及び第2転がり軸受と、前記第1転がり軸受及び前記第2転がり軸受を保持する軸受ハウジングと、前記第1転がり軸受の荷重を検出する複数のひずみゲージを備えた、円筒状の第1ゲージ固定用部材と、前記第2転がり軸受の荷重を検出する複数のひずみゲージを備えた、円筒状の第2ゲージ固定用部材と、を有し、前記第1転がり軸受には前記第1ゲージ固定用部材側に予圧が加えられ、前記第2転がり軸受には前記第2ゲージ固定用部材側に予圧が加えられ、前記第1転がり軸受と前記第1ゲージ固定用部材とは、端面同士が当接するように前記回転軸の軸線方向に隣接して配置され、前記第2転がり軸受と前記第2ゲージ固定用部材とは、端面同士が当接するように前記回転軸の軸線方向に隣接して配置されている。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、予圧及び偏芯を検知することが可能な信号をひずみゲージから出力する軸受装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る軸受装置を例示する断面図である。
図2】第1実施形態に係る第1ゲージ固定用部材を例示する斜視図である。
図3】第1実施形態に係る第1ゲージ固定用部材を例示する図である。
図4】第1実施形態に係る第1ひずみゲージを例示する平面図である。
図5】第1実施形態に係る第1ひずみゲージを例示する断面図である。
図6】第1実施形態の変形例1に係る軸受装置を例示する断面図である。
図7】第1実施形態の変形例2に係る第1ゲージ固定用部材を例示する図(その1)である。
図8】第1実施形態の変形例2に係る第1ゲージ固定用部材を例示する図(その2)である。
図9】第1実施形態の変形例2に係る第1ゲージ固定用部材を例示する図(その3)である。
図10】第1実施形態の変形例2に係る第1ゲージ固定用部材を例示する図(その4)である。
図11】第1実施形態の変形例2に係る第1ゲージ固定用部材を例示する図(その5)である。
図12】第1実施形態の変形例2に係る第1ゲージ固定用部材を例示する図(その6)である。
図13】第1実施形態の変形例3に係る第1ゲージ固定用部材を例示する図である。
図14図13に示す各貫通孔内におけるひずみゲージの抵抗体の向きを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
(軸受装置)
図1は、第1実施形態に係る軸受装置を例示する断面図であり、回転軸20の軸線mを通る断面を示している。
【0011】
図1に示すように、軸受装置1は、回転軸20と、第1転がり軸受30Aと、第2転がり軸受30Bと、軸受ハウジング40と、第1ゲージ固定用部材50Aと、第2ゲージ固定用部材50Bと、第1予圧付与部材60Aと、第2予圧付与部材60Bとを有している。
【0012】
回転軸20は、軸線m方向に互いに離隔して配置された第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bにより回転可能な状態で支持されている。第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bは、軸受ハウジング40に圧入や接着等により固定され、軸受ハウジング40に保持されている。軸受ハウジング40は、例えば、真鍮、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属により形成された中空円柱状の部材である。軸受ハウジング40は、外輪31の外周面を全周に亘って押さえていることが好ましい。
【0013】
第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bは、軸線m方向において互いに離隔して軸受ハウジング40の内周側に固定されている。第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bは、例えば、軸受ハウジング40の内周面に設けられた段差部に配置されている。図1の例では、軸受ハウジング40において、第1転がり軸受30Aは軸線m方向の左端に設けられており、第2転がり軸受30Bは軸線m方向の右端に設けられている。
【0014】
第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bは、外輪31と、内輪32と、複数の転動体33とを有している。外輪31は、軸線mを中心軸とする円筒形の構造体である。内輪32は、外輪31の内周側に外輪31と同軸状に配置された円筒形の構造体である。複数の転動体33の各々は外輪31と内輪32との間に形成される軌道内に配置された球体である。軌道内にはグリース等の潤滑剤が封入される。なお、軸受装置1は、第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bの内輪32が回転するタイプの軸受装置である。
【0015】
第1ゲージ固定用部材50A及び第2ゲージ固定用部材50Bは、円筒状の部材である。第1ゲージ固定用部材50A及び第2ゲージ固定用部材50Bは、例えば、軸線m方向の一端側及び他端側が開放された中空円柱状である。なお、円筒状の部材には、例えば、中空円柱状の部材の一部に加工が施されているものも含む。加工とは、例えば、中空円柱状の部材の一部にスリット、溝、穴、突起、段差などが設けられている場合である。
【0016】
第1ゲージ固定用部材50A及び第2ゲージ固定用部材50Bの外径は、例えば、第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bの外輪31の外径と略同一である。第1ゲージ固定用部材50A及び第2ゲージ固定用部材50Bの内径は、例えば、第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bの外輪31の内径と略同一である。
【0017】
第1ゲージ固定用部材50A及び第2ゲージ固定用部材50Bは、例えば、真鍮、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属により形成できる。ゲージ固定用部材110の材料としては、軸受ハウジング40の材料と線膨張係数が近い材料を選択することが好ましい。
【0018】
第1ゲージ固定用部材50A及び第2ゲージ固定用部材50Bは、軸線m方向において互いに離隔して軸受ハウジング40の内周側に保持されている。第1ゲージ固定用部材50A及び第2ゲージ固定用部材50Bは、第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bと共に、例えば、軸受ハウジング40の内周面に設けられた段差部に配置されている。
【0019】
軸受ハウジング40の内周側において、第1ゲージ固定用部材50Aは、第1転がり軸受30Aの第2転がり軸受30B側に配置されている。第1転がり軸受30Aと第1ゲージ固定用部材50Aとは、端面同士が当接するように回転軸20の軸線m方向に隣接して配置されている。図1の例では、第1ゲージ固定用部材50Aの一方の端面は、第1転がり軸受30Aの外輪31の一方の端面と当接している。
【0020】
軸受ハウジング40の内周側において、第2ゲージ固定用部材50Bは、第2転がり軸受30Bの第1転がり軸受30A側に配置されている。第2転がり軸受30Bと第2ゲージ固定用部材50Bとは、端面同士が当接するように回転軸20の軸線m方向に隣接して配置されている。図1の例では、第2ゲージ固定用部材50Bの一方の端面は、第2転がり軸受30Bの外輪31の一方の端面と当接している。なお、各部材において、端面とは、回転軸20の軸線mと略垂直な面を指す。
【0021】
第1予圧付与部材60Aは、第1転がり軸受30Aの内輪32の一方の端面と当接するように、回転軸20の一端側に挿入され、回転軸20の外周面に固定されている。第1予圧付与部材60Aは、第1転がり軸受30Aを第1ゲージ固定用部材50A側に押圧し、第1転がり軸受30Aに予圧を加えている。言い換えれば、第1転がり軸受30Aには第1ゲージ固定用部材50A側に予圧が加えられている。なお、第1転がり軸受30Aに第1ゲージ固定用部材50A側に予圧が加えられる形状であれば、第1予圧付与部材60Aは図示のようなフランジ型でなくてもよい。
【0022】
第2予圧付与部材60Bは、第2転がり軸受30Bの内輪32の一方の端面と当接するように、回転軸20の他端側に挿入され、回転軸20の外周面に固定されている。第2予圧付与部材60Bは、第2転がり軸受30Bを第2ゲージ固定用部材50B側に押圧し、第2転がり軸受30Bに予圧を加えている。言い換えれば、第2転がり軸受30Bには第2ゲージ固定用部材50B側に予圧が加えられている。なお、第2転がり軸受30Bに第2ゲージ固定用部材50B側に予圧が加えられる形状であれば、第2予圧付与部材60Bは図示のようなフランジ型でなくてもよい。
【0023】
第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bに適切な予圧を加えることで、回転軸20の振れ精度の向上や振動及び騒音の低減に寄与できる。なお、軸受装置1において、図示の形態で第1予圧付与部材60A及び第2予圧付与部材60Bを用いると定位置与圧となるが、これには限定されない。例えば、第1予圧付与部材60A及び第2予圧付与部材60Bと内輪32との間にバネ等を配した定圧予圧とすることも可能である。
【0024】
図1において、第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bの斜めの破線は、予圧の方向を模式的に示している。軸受装置1では、予圧側端面が互いに対向するように第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bを配置している。これは、予圧方向としては背面組み合せ(DB)である。なお、軸受装置1において、第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bを予圧側端面が互いに外側を向くように配置する正面組み合せ(DF)としてもよい。例えば、図1において、第1転がり軸受30Aと第1ゲージ固定用部材50Aとの位置関係を入れ替え、かつ第2転がり軸受30Bと第2ゲージ固定用部材50Bとの位置関係を入れ替えることにより、正面組み合せ(DF)とすることができる。なお、この場合は、第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bの間に、それぞれの内輪32に当接するスペーサ(不図示)を設けた状態で予圧を付与する。
【0025】
図2は、第1実施形態に係る第1ゲージ固定用部材を例示する斜視図である。図3は、第1実施形態に係る第1ゲージ固定用部材を例示する図であり、左側が径方向から視た図、右側が軸線m方向から視た図である。
【0026】
図2及び図3に示すように、第1ゲージ固定用部材50Aは、第1転がり軸受30Aの荷重を検出する複数のひずみゲージ100を備えている。第1ゲージ固定用部材50Aは、外周面から内周面に貫通し、内側面50iにひずみゲージ100が固定された貫通孔50xを複数有する。本実施形態では、径方向視で、貫通孔50xの形状は円形である。ただし、後述するように、貫通孔50xの形状は円形には限定されない。
【0027】
ひずみゲージ100は、例えば、それぞれの貫通孔50xの内側面50iにおいて、軸線m方向の同一側に配置されている。ひずみゲージ100は、例えば、貫通孔50xの内側面50iに接着剤により固定される。ひずみゲージ100は、第1転がり軸受30Aの所定位置の荷重を抵抗体の抵抗値の変化として検出するセンサである。
【0028】
貫通孔50xの個数は、最低4個程度でもよいが、より多くの貫通孔50xを設け、各貫通孔50xにひずみゲージ100を配置することが好ましい。これにより、第1ゲージ固定用部材50Aを第1転がり軸受30Aに当接するように配置したときに、第1転がり軸受30Aの各位置の荷重測定の分解能を向上することができる。
【0029】
なお、第2ゲージ固定用部材50Bは、第1ゲージ固定用部材50Aと同様の構造とすることができるため、詳細な説明は省略するが、第2ゲージ固定用部材50Bは、第2転がり軸受30Bの荷重を検出する複数のひずみゲージ100を備えている。第2ゲージ固定用部材50Bに設けられたひずみゲージ100は、第2転がり軸受30Bの所定位置の荷重を抵抗体の抵抗値の変化として検出するセンサである。
【0030】
第1ゲージ固定用部材50Aにおいて、複数の貫通孔50xは、第1ゲージ固定用部材50Aの周方向に等間隔で配置されていることが好ましい。また、第2ゲージ固定用部材50Bにおいて、複数の貫通孔50xは、第2ゲージ固定用部材50Bの周方向に等間隔で配置されていることが好ましい。
【0031】
軸受装置1において、第1ゲージ固定用部材50Aのそれぞれの貫通孔50xと、第2ゲージ固定用部材50Bのそれぞれの貫通孔50xとは、回転軸20の軸線m方向から視て、重なる部分を有することが好ましく、50%以上が重なることがより好ましく、80%以上が重なることがさらに好ましく、完全に重なることが特に好ましい。
【0032】
図3において、簡単のために位置P1、P2、P3、及びP4の4つの位置を考える。位置P1、P2、P3、及びP4は、第1ゲージ固定用部材50Aの周方向の位置を示しており、それぞれ軸線m方向から視て90度ずつずれている。例えば、各位置にあるひずみゲージ100の出力に基づいて、回転軸20が回転していない状態の位置P1、P2、P3、及びP4における荷重を計測することができる。そして、位置P1、P2、P3、及びP4における荷重の差に基づいて、予圧の不均一を検知することが可能である。例えば、位置P1における荷重が位置P3における荷重よりも大きければ、位置P1における予圧が位置P3における予圧よりも大きいことがわかる。
【0033】
また、第1ゲージ固定用部材50Aに設けられたひずみゲージ100の出力、及び第2ゲージ固定用部材50Bに設けられたひずみゲージ100の出力に基づいて、回転軸20の傾きや偏芯を検知することが可能である。例えば、第1ゲージ固定用部材50Aでは位置P1における荷重が位置P3における荷重よりも大きく、第2ゲージ固定用部材50Bでは位置P1における荷重が位置P3における荷重よりも小さければ、回転軸20が傾いていることがわかり、傾きの方向もわかる。また、この状態で回転軸20が回転すると偏芯が生じると予想できる。なお、第2ゲージ固定用部材50Bにおける位置P1~P4は、軸線m方向から視て、第1ゲージ固定用部材50Aにおける位置P1~P4と重なる位置であるとする。
【0034】
また、第1ゲージ固定用部材50Aに設けられたひずみゲージ100の出力、及び/又は第2ゲージ固定用部材50Bに設けられたひずみゲージ100の出力に基づいて、回転軸20が回転している状態の監視も可能である。具体的には、例えば、第1転がり軸受30A及び/又は第2転がり軸受30Bの劣化による偏芯、回転軸20と第1転がり軸受30A及び/又は第2転がり軸受30Bの内輪32との間に発生したクリープによる振動の検知、予圧抜けの検知等が可能となる。
【0035】
各ひずみゲージ100から情報を得るためには、ブリッジ回路を用いることができる。ブリッジ回路では、例えば、1つのひずみゲージ100がブリッジ回路の4辺のうち出力電圧取出し点の一方の側の一辺を構成し、固定抵抗が4辺のうち他の3辺を構成するように接続する。ひずみゲージ100毎にブリッジ回路を設けることで、各ひずみゲージ100の情報を周期的な電圧波形として得ることができる。
【0036】
また、第1ゲージ固定用部材50Aに設けられたひずみゲージ100に関し、各ひずみゲージ100から得た電圧信号を合成することで、1つの電圧波形が得られる。この電圧波形には、転動体33が各ひずみゲージ100の直下を通過したときに得られる第1周期の波形と、第1周期よりも大きな周期である回転に同期した第2周期の波形が含まれる。第2周期の波形は、回転軸20の偏芯を示す波形である。第2周期の波形の振幅により、回転軸20の偏芯量を知ることができる。なお、偏芯がまったくない場合には、第1周期の波形のみが現れ、回転に同期した第2周期の波形は現れない。第2ゲージ固定用部材50Bに設けられたひずみゲージ100に関しても、同様にして電圧波形を得ることができる。
【0037】
このように、軸受装置1は、予圧及び偏芯を検知することが可能な信号をひずみゲージ100から出力することができる。
【0038】
ここで、ひずみゲージ100について詳説する。
【0039】
(ひずみゲージ)
図4は、第1実施形態に係る第1ひずみゲージを例示する平面図である。図5は、第1実施形態に係る第1ひずみゲージを例示する断面図であり、図4のA-A線に沿う断面を示している。なお、各ひずみゲージ100は、必要に応じ、部分的に異なる構造としてもよい。例えば、基材の大きさやカバー層の有無、その他の仕様は必要に応じて変えてよい。
【0040】
図4及び図5を参照すると、ひずみゲージ100は、基材101と、機能層102と、抵抗体103と、配線104と、端子部105とを有している。但し、機能層102は、必要に応じて設ければよい。
【0041】
なお、本実施形態では、便宜上、ひずみゲージ100において、基材101の抵抗体103が設けられている側を「上側」と称し、抵抗体103が設けられていない側を「下側」と称する。又、各部位の上側に位置する面を「上面」と称し、各部位の下側に位置する面を「下面」と称する。ただし、ひずみゲージ100は天地逆の状態で用いることもできる。又、ひずみゲージ100は任意の角度で配置することもできる。又、平面視とは、基材101の上面101aに対する上側から下側への法線方向で対象物を視ることを指すものとする。そして、平面形状とは、前記法線方向で対象物を視たときの、対象物の形状を指すものとする。
【0042】
基材101は、抵抗体103等を形成するためのベース層となる部材である。基材101は可撓性を有する。基材101の厚さは特に限定されず、ひずみゲージ100の使用目的等に応じて適宜決定されてよい。例えば、基材101の厚さは5μm~500μm程度であってよい。なお、測定対象物の表面から受感部へのひずみの伝達性、及び、環境変化に対する寸法安定性の観点から考えると、基材101の厚さは5μm~200μmの範囲内であることが好ましい。また、絶縁性の観点から考えると、基材101の厚さは10μm以上であることが好ましい。
【0043】
基材101は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成される。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、かつ可撓性を有する部材を指す。
【0044】
基材101が絶縁樹脂フィルムから形成される場合、当該絶縁樹脂フィルムには、フィラーや不純物等が含まれていてもよい。例えば、基材101は、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成されてもよい。
【0045】
基材101の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO、ZrO(YSZも含む)、Si、Si、Al(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO、BaTiO)等の結晶性材料が挙げられる。又、前述の結晶性材料以外に非晶質のガラス等を基材101の材料としてもよい。又、基材101の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。金属を用いる場合、金属製の基材101と機能層102との間に絶縁膜が設けられる。
【0046】
機能層102は、基材101の上面101aに抵抗体103の下層として形成されている。本願において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗体103の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層102は、更に、基材101に含まれる酸素または水分による抵抗体103の酸化を防止する機能、および/または、基材101と抵抗体103との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層102は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0047】
基材101を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むことがあり、また、Crは自己酸化膜を形成することがある。そのため、特に抵抗体103がCrを含む場合、抵抗体103の酸化を防止する機能を有する機能層102を成膜することが好ましい。
【0048】
このように、抵抗体103の下層に機能層102を設けることにより、抵抗体103の結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる抵抗体103を作製することができる。その結果、ひずみゲージ100において、ゲージ特性の安定性が向上する。又、機能層102を構成する材料が抵抗体103に拡散することにより、ひずみゲージ100において、ゲージ特性が向上する。
【0049】
機能層102の材料としては、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0050】
機能層102の平面形状は、例えば抵抗体103、配線104、及び端子部105の平面形状と略同一にパターニングされてよい。しかしながら、機能層102と抵抗体103、配線104、及び端子部105との平面形状は略同一でなくてもよい。例えば、機能層102が絶縁材料から形成される場合には、機能層102を抵抗体103、配線104及び端子部105の平面形状と異なる形状にパターニングしてもよい。この場合、機能層102は例えば抵抗体103、配線104、及び端子部105が形成されている領域にベタ状に形成されてもよい。或いは、機能層102は、基材101の上面101aの全体にベタ状に形成されてもよい。
【0051】
抵抗体103は、基材101の上面101aに形成されている。抵抗体103は、基材101の上面101aに所定のパターンで形成された薄膜である。ひずみゲージ100において、抵抗体103は、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体103は、基材101の上面101aに直接形成されてもよいし、基材101の上面101aに他の層を介して形成されてもよい。
【0052】
抵抗体103は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体103は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0053】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、及びCrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでいてもよい。
【0054】
抵抗体103の厚さは特に限定されず、ひずみゲージ100の使用目的等に応じて適宜決定されてよい。例えば、抵抗体103の厚さは0.05μm~2μm程度であってよい。特に、抵抗体103の厚さが0.1μm以上である場合、抵抗体103を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する。また、抵抗体103の厚さが1μm以下である場合、抵抗体103を構成する膜の内部応力に起因する、(i)膜のクラックおよび(ii)膜の基材101からの反りが、低減される。
【0055】
横感度を生じ難くすることと、断線対策とを考慮すると、抵抗体103の幅は5μm以上100μm以下であることが好ましい。更に言えば、抵抗体103の幅は5μm以上70μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であるとより好ましい。
【0056】
例えば、抵抗体103がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上させることができる。又例えば、抵抗体103がCr混相膜である場合、抵抗体103がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ100のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、「主成分」とは、抵抗体を構成する全物質の50重量%以上を占める成分のことを意味する。ゲージ特性を向上させるという観点から考えると、抵抗体103はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。更に言えば、同観点から考えると、抵抗体103はα-Crを90重量%以上含むことがより好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0057】
又、抵抗体103がCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNが20重量%以下であることで、ひずみゲージ100のゲージ率の低下を抑制することができる。
【0058】
又、Cr混相膜におけるCrNとCrNとの比率は、CrNとCrNの重量の合計に対し、CrNの割合が80重量%以上90重量%未満となるようにすることが好ましい。更に言えば、同比率は、CrNとCrNの重量の合計に対し、CrNの割合が90重量%以上95重量%未満となるようにすることがより好ましい。CrNは半導体的な性質を有する。そのため、前述のCrNの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、前述のCrNの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで抵抗体103のセラミックス化を低減し、抵抗体103の脆性破壊が起こりにくくすることができる。
【0059】
一方で、CrNは化学的に安定であるという利点を有する。Cr混相膜にCrNをより多く含むことで、不安定なNが発生する可能性を低減することができるため、安定なひずみゲージを得ることができる。ここで「不安定なN」とは、Cr混相膜の膜中に存在し得る、微量のNもしくは原子状のNのことを意味する。これらの不安定なNは、外的環境(例えば高温環境)によっては膜外へ抜け出ることがある。不安定なNが膜外へ抜け出るときに、Cr混相膜の膜応力が変化し得る。
【0060】
ひずみゲージ100において、抵抗体103の材料としてCr混相膜を用いた場合、高感度化かつ、小型化を実現することができる。例えば、従来のひずみゲージの出力が0.04mV/2V程度であったのに対して、抵抗体103の材料としてCr混相膜を用いた場合は0.3mV/2V以上の出力を得ることができる。また、従来のひずみゲージの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)が3mm×3mm程度であったのに対して、抵抗体103の材料としてCr混相膜を用いた場合の大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)は0.3mm×0.3mm程度に小型化することができる。
【0061】
例えば、従来のひずみゲージの大きさでは、面積の大きな領域のひずみしか検出できないため、ひずみの検出精度が低くなる。一方、抵抗体103の材料としてCr混相膜を用いた場合、面積の小さな領域のひずみを検出できるため、ひずみの検出精度を向上できる。また、従来のひずみゲージの大きさでは、第1ゲージ固定用部材50A及び第2ゲージ固定用部材50Bを大型化する必要があるため、使用可能な転がり軸受が限られてしまう。一方、抵抗体103の材料としてCr混相膜を用いた場合、第1ゲージ固定用部材50A及び第2ゲージ固定用部材50Bを小型化できるため、より小型の転がり軸受にも使用することができる。
【0062】
また、従来のひずみゲージの大きさでは、ひずみゲージを貼り付ける面積を確保するため、第1ゲージ固定用部材50A及び第2ゲージ固定用部材50Bの貫通孔を大きくする必要があり、これは転がり軸受の軸振れ精度に影響を及ぼす。一方、抵抗体103の材料としてCr混相膜を用いた場合、ひずみゲージを貼り付ける面積を小さくできるため、第1ゲージ固定用部材50A及び第2ゲージ固定用部材50Bの貫通孔は小さくてよく、転がり軸受の軸振れ精度に影響を及ぼしにくくできる。また、抵抗体103の材料としてCr混相膜を用いた場合、第1ゲージ固定用部材50A及び第2ゲージ固定用部材50Bに多数のひずみゲージを搭載可能であるため、予圧や偏芯等を高精度で検出することができる。
【0063】
端子部105は、配線104を介して抵抗体103の両端部から延在しており、平面視において、抵抗体103及び配線104よりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部105は、ひずみにより生じる抵抗体103の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極である。抵抗体103は、例えば、端子部105及び配線104の一方からジグザグに折り返しながら延在して他方の配線104及び端子部105に接続されている。端子部105の上面を、端子部105よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。
【0064】
なお、抵抗体103と配線104と端子部105とは便宜上別符号としているが、これらは同一工程において同一材料により一体に形成できる。
【0065】
カバー層106は、必要に応じ、基材101の上面101aに、抵抗体103及び配線104を被覆し端子部105を露出するように設けられる。カバー層106の材料としては、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂が挙げられる。なお、カバー層106は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層106の厚さは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、カバー層106の厚さは2μm~30μm程度とすることができる。カバー層106を設けることで、抵抗体103に機械的な損傷等が生じることを抑制することができる。又、カバー層106を設けることで、抵抗体103を湿気等から保護することができる。
【0066】
(ひずみゲージの製造方法)
本実施形態に係るひずみゲージ100では、基材101上に、抵抗体103と、配線104と、端子部105とが形成される。なお、必要に応じ機能層102やカバー層106が形成されてもよい。
【0067】
以下、ひずみゲージ100の製造方法について説明する。ひずみゲージ100を製造するためには、まず、基材101を準備し、基材101の上面101aに金属層(便宜上、金属層Aとする)を形成する。金属層Aは、最終的にパターニングされて抵抗体103と、配線104と、端子部105となる層である。従って、金属層Aの材料や厚さは、前述の抵抗体103等の材料や厚さと同様である。
【0068】
金属層Aは、例えば、金属層Aを形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜することができる。金属層Aは、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法、蒸着法、アークイオンプレーティング法、またはパルスレーザー堆積法等を用いて成膜されてもよい。基材101の上面101aに金属層Aを成膜後、周知のフォトリソグラフィ法により、金属層Aを図4の抵抗体103、配線104、及び端子部105と同様の平面形状にパターニングする。
【0069】
なお、基材101の上面101aに下地層として機能層102を形成してから金属層Aを形成してもよい。例えば、基材101の上面101aに、所定の膜厚の機能層102をコンベンショナルスパッタ法により真空成膜してもよい。このように機能層102を設けることによって、ひずみゲージ100のゲージ特性を安定化させることができる。
【0070】
抵抗体103、配線104及び端子部105を形成した後、必要に応じ、基材101の上面101aにカバー層106を形成する。カバー層106は抵抗体103及び配線104を被覆するが、端子部105はカバー層106から露出する。例えば、基材101の上面101aに、抵抗体103及び配線104を被覆し端子部105を露出するように、半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートする。そして、当該絶縁樹脂フィルムを加熱して硬化させることにより、カバー層106を形成することができる。以上の工程により、ひずみゲージ100が完成する。
【0071】
なお、それぞれのひずみゲージ100において、抵抗体103は、長手方向(ゲージ長方向)を第1ゲージ固定用部材50A又は第2ゲージ固定用部材50Bの周方向に向けて配置することが好ましい。第1ゲージ固定用部材50A及び第2ゲージ固定用部材50Bの周方向は軸線m方向よりも伸縮し易いため、抵抗体103の長手方向を第1ゲージ固定用部材50A又は第2ゲージ固定用部材50Bの周方向に向けて配置することで、大きなひずみ波形を得ることができる。
【0072】
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bの外輪31が回転するタイプの軸受装置の例示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0073】
図6は、第1実施形態の変形例1に係る軸受装置を例示する断面図であり、回転軸20の軸線mを通る断面を示している。
【0074】
図6に示すように、軸受装置2は、第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bの外輪31が回転するタイプである点が、軸受装置1(図1等参照)と相違する。
【0075】
軸受装置2において、第1ゲージ固定用部材50A及び第2ゲージ固定用部材50Bは、回転軸20の外周面に固定されている。
【0076】
第1ゲージ固定用部材50Aは、第1転がり軸受30Aの第2転がり軸受30Bとは反対側に配置されている。第1転がり軸受30Aと第1ゲージ固定用部材50Aとは、端面同士が当接するように回転軸20の軸線m方向に隣接して配置されている。図6の例では、第1ゲージ固定用部材50Aの一方の端面は、第1転がり軸受30Aの内輪32の一方の端面と当接している。
【0077】
第2ゲージ固定用部材50Bは、第2転がり軸受30Bの第1転がり軸受30Aとは反対側に配置されている。第2転がり軸受30Bと第2ゲージ固定用部材50Bとは、端面同士が当接するように回転軸20の軸線m方向に隣接して配置されている。図6の例では、第2ゲージ固定用部材50Bの一方の端面は、第2転がり軸受30Bの内輪32の一方の端面と当接している。
【0078】
軸受装置2では、図6のような構造により、軸受装置1と同様に、第1ゲージ固定用部材50Aに設けられたひずみゲージ100の出力、及び第2ゲージ固定用部材50Bに設けられたひずみゲージ100の出力に基づいて、回転軸20の傾きや偏芯を検知することが可能である。また、軸受装置1と同様に、第1ゲージ固定用部材50Aに設けられたひずみゲージ100の出力、及び/又は第2ゲージ固定用部材50Bに設けられたひずみゲージ100の出力に基づいて、回転軸20が回転している状態の監視も可能である。
【0079】
〈第1実施形態の変形例2〉
第1実施形態の変形例2では、ひずみゲージを配置する貫通孔の形状と、ひずみゲージの配置の仕方のバリエーションについて示す。なお、第1実施形態の変形例2において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。また、以下の変形例では、第1ゲージ固定用部材について説明するが、第2ゲージ固定用部材も第1ゲージ固定用部材と同様の構造とすることができる。
【0080】
図7は、第1実施形態の変形例2に係る第1ゲージ固定用部材を例示する図(その1)である。図8は、第1実施形態の変形例2に係る第1ゲージ固定用部材を例示する図(その2)である。図9は、第1実施形態の変形例2に係る第1ゲージ固定用部材を例示する図(その3)である。図10は、第1実施形態の変形例2に係る第1ゲージ固定用部材を例示する図(その4)である。図11は、第1実施形態の変形例2に係る第1ゲージ固定用部材を例示する図(その5)である。図12は、第1実施形態の変形例2に係る第1ゲージ固定用部材を例示する図(その6)である。図7図12において、左側が径方向から視た図、右側が軸線m方向から視た図である。
【0081】
図7に示すように、第1ゲージ固定用部材50Cは、第1ゲージ固定用部材50Cの周方向に配置された複数列の貫通孔50xを含む。図7の例では、径方向視で貫通孔50xは円形であり、複数の貫通孔50xが第1ゲージ固定用部材50Cの周方向に2列に配置されている。ただし、複数の貫通孔50xが第1ゲージ固定用部材50Cの周方向に3列以上に配置されてもよい。各列において、複数の貫通孔50xは、第1ゲージ固定用部材50Cの周方向に等間隔で配置されていることが好ましい。複数の前記貫通孔50xは、千鳥状に配置されてもよい。
【0082】
このように、複数の貫通孔50xが第1ゲージ固定用部材の周方向に複数列に配置されていることで、複数の貫通孔50xが1列に配置されている場合よりも、1つの第1ゲージ固定用部材に、より多くの貫通孔50x(すなわち、より多くのひずみゲージ100)を配置することができる。そのため、軸受装置において、荷重検出の分解能を向上することができる。
【0083】
図8に示す第1ゲージ固定用部材50Dは、径方向視で貫通孔50xの形状が六角形である点が、第1ゲージ固定用部材50Cと相違する。また、1つの貫通孔50x内に複数のひずみゲージ100が配置されている点が、第1ゲージ固定用部材50Cと相違する。1つの貫通孔50x内に配置されたひずみゲージ100の各々は、隣接する貫通孔50x内に配置されたいずれかのひずみゲージ100と対向する位置に配置されている。図8の例では、1つの貫通孔50x内に4つのひずみゲージ100が配置されている。
【0084】
このように、1つの貫通孔50x内に複数のひずみゲージ100を配置することで、大きな出力を得ることができる。例えば、1つの貫通孔50x内に4つのひずみゲージ100を配置し、この4つのひずみゲージ100を用いてフルブリッジ回路を構成することにより、1つのひずみゲージ100と3つの固定抵抗でブリッジ回路を構成する場合と比べて、大きな出力を得ることができる。なお、1つの貫通孔50x内に2つのひずみゲージ100を配置し、この2つのひずみゲージ100を用いてハーフブリッジ回路を構成してもよい。
【0085】
なお、図9に示す第1ゲージ固定用部材50Eのように、径方向視で貫通孔50xの形状を五角形としてもよい。この場合も、第1ゲージ固定用部材50Dと同様の効果を奏する。
【0086】
また、図10に示す第1ゲージ固定用部材50Fのように、径方向視で周方向を長辺方向とする長方形の貫通孔50xを複数有してもよい。この場合も、1つの貫通孔50x内に配置された4つのひずみゲージ100を用いてフルブリッジ回路を構成することにより、1つの貫通孔50x内に配置された1つのひずみゲージ100と3つの固定抵抗でブリッジ回路を構成する場合と比べて、大きな出力を得ることができる。
【0087】
また、図11に示す第1ゲージ固定用部材50Gのように、径方向視で周方向を長辺方向とする長方形の貫通孔50xにおいて、第1列に位置する貫通孔50xの長辺の中央部近傍に、第2列において周方向に隣接する貫通孔50xの間の位置まで延伸するスリット部を設けてもよい。
【0088】
また、図12に示す第1ゲージ固定用部材50Hのように、貫通孔50xは、径方向視で、周方向に隣接する2つの長方形の短辺の軸線m方向の外側の端部同士を、短辺よりも細いスリット部で接続した眼鏡型としてもよい。図12において、複数の貫通孔50xは、第1列の長方形と第2列の長方形が対向し、第1列のスリット部と第2列のスリット部が対向しないように配置される。貫通孔50xを眼鏡型とすることで、過負荷(ひずみ)発生時に、起歪体が破損し難くなる。
【0089】
〈第1実施形態の変形例3〉
第1実施形態の変形例3では、ひずみゲージを配置する貫通孔の方向が第1実施形態とは異なる例を示す。なお、第1実施形態の変形例3において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。また、以下の変形例では、第1ゲージ固定用部材について説明するが、第2ゲージ固定用部材も第1ゲージ固定用部材と同様の構造とすることができる。
【0090】
図13は、第1実施形態の変形例3に係る第1ゲージ固定用部材を例示する図であり、左側が径方向から視た図、右側が軸線m方向から視た図である。図14は、図13に示す各貫通孔内におけるひずみゲージの抵抗体の向きを説明する模式図である。なお、図14では、参考のために軸線mの方向を記載している。
【0091】
図13に示すように、第1ゲージ固定用部材50Iは、一方の端面から他方の端面に貫通し、内側面50iにひずみゲージ100が固定された貫通孔50xを複数有する。つまり、図13の例では、各々の貫通孔50xは、第1ゲージ固定用部材50Iを軸線m方向に貫通している。図13の例では、軸線m方向から視て、貫通孔50xの形状は円形であるが、貫通孔50xの形状は円形には限定されない。
【0092】
第1ゲージ固定用部材50Iにおいて、複数の貫通孔50xは、第1ゲージ固定用部材50Iの周方向に等間隔で配置されていることが好ましい。また、図13の例では、貫通孔50xの個数は4個であるが、より多くの貫通孔50xを設け、各貫通孔50xにひずみゲージ100を配置することが好ましい。これにより、第1ゲージ固定用部材50Iを第1転がり軸受30Aに当接するように配置したときに、第1転がり軸受30Aの各位置の荷重測定の分解能を向上することができる。
【0093】
ひずみゲージ100は、例えば、それぞれの貫通孔50xの内側面50iにおいて、軸線mに近い側に配置されている。1つの貫通孔50x内に複数のひずみゲージ100が配置されてもよい。図14に示すように、それぞれのひずみゲージ100において、抵抗体103は、長手方向(ゲージ長方向)を軸線m方向に向けて配置することが好ましい。この理由は、貫通孔50xの軸線m方向の方が周方向よりも撓みやすいためである。
【0094】
このように、第1ゲージ固定用部材は、内側面にひずみゲージが固定された貫通孔を複数有していればよく、各貫通孔は、図3等に示すように第1ゲージ固定用部材を外周面から内周面に貫通してもよく、図13に示すように第1ゲージ固定用部材を一方の端面から他方の端面に貫通してもよい。また、ここでいう貫通孔の定義には、孔の周方向の一部が第1ゲージ固定用部材の軸方向や径方向に開口した、いわゆる切り欠き形状や溝形状等も含む。何れの場合も、軸受装置は、予圧及び偏芯を検知することが可能な信号をひずみゲージから出力することができる。
【0095】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0096】
1,2 軸受装置、20 回転軸、30A 第1転がり軸受、30B 第2転がり軸受、31 外輪、32 内輪、33 転動体、40 軸受ハウジング、50A,50C,50D,50E,50F,50G,50H,50I 第1ゲージ固定用部材、50B 第2ゲージ固定用部材、50i 内側面、50x 貫通孔、60A 第1予圧付与部材、60B 第2予圧付与部材、100 ひずみゲージ、101 基材、102 機能層、103 抵抗体、104 配線、105 端子部、106 カバー層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14