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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176578
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】断熱材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/80 20060101AFI20231206BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20231206BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20231206BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
E04B1/80 100Q
E04B1/76 100D
B32B7/027
B32B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088928
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 拓紀
(72)【発明者】
【氏名】庵本 卓矢
【テーマコード(参考)】
2E001
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001FA16
2E001GA03
2E001GA22
2E001GA23
2E001GA82
2E001HA11
2E001HB01
2E001HC01
2E001HC07
2E001HC08
2E001HD02
2E001HD03
2E001HD09
2E001HD11
4F100AB01B
4F100AB01D
4F100AB33B
4F100AB33D
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK12C
4F100AK51C
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA23A
4F100CA30A
4F100DG10B
4F100DG10D
4F100DJ01C
4F100EH66B
4F100EH66D
4F100GB07
4F100JJ02
4F100JJ02B
4F100JJ02D
4F100JK16A
(57)【要約】
【課題】
防滑剤のコーティングのムラを抑制し、防滑性と遮熱性とに優れる断熱材を提供する。
【解決手段】
合成樹脂発泡体からなる芯材の少なくとも片面に面材が積層されてなる断熱材であって、前記面材は、少なくとも輻射熱反射層と防滑層を有する積層面材であり、
前記防滑層は、輻射熱反射層より外側で、かつ断熱材最外面に位置するよう設けられ、
前記防滑層は、平均粒子径が1mm以下の防滑剤と合成樹脂を有し、
前記面材の防滑層と普通合板との静摩擦係数が0.49以上で、かつ分散Vが0.002以下、
前記面材の防滑層と普通合板との動摩擦係数が0.49以上で、かつ分散Vが0.001以下
であることを特徴とする断熱材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂発泡体からなる芯材の少なくとも片面に面材が積層されてなる断熱材であって、前記面材は、少なくとも輻射熱反射層と防滑層を有する積層面材であり、
前記防滑層は、輻射熱反射層より外側で、かつ断熱材最外面に位置するよう設けられ、
前記防滑層は、平均粒子径が1mm以下の防滑剤と合成樹脂を有し、
前記面材の防滑層と普通合板との静摩擦係数が0.49以上で、かつ分散Vが0.002以下、
前記面材の防滑層と普通合板との動摩擦係数が0.49以上で、かつ分散Vが0.001以下
であることを特徴とする断熱材。
【請求項2】
前記面材が芯材の両面に積層されてなり、一方の面材は前記防滑層を含まないことを特徴とする請求項1に記載の断熱材。
【請求項3】
前記合成樹脂発泡体がポリウレタンフォーム、ポリフェノールフォーム及びポリスチレンフォームからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の断熱材。
【請求項4】
前記輻射熱反射層が、金属箔単体、紙又はプラスチックフィルムと金属箔との複合品、及び紙又はプラスチックフィルムと金属蒸着物との複合品からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建住宅などの壁面や床面、屋根等に使用される断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂発泡体からなる芯材の両面に面材が積層されてなる断熱材は、戸建住宅などの壁面や床面、屋根用の断熱材として用いられている。例えば面材の表面に金属層を積層することで、太陽光を反射し遮熱性が付与されている断熱材が知られている(特許文献1)。
ところで、断熱材の中でも屋根用に使用される断熱材は、施工時に施工者が断熱材上に乗って作業をすることが多く、その際に施工者の足元が滑りやすいと、転倒や高所からの落下といった大けがを負うリスクがある。そこで、従来、断熱材の面材に、砂などの防滑剤を塗布して防滑処理を施すという対策が提案されている(特許文献2乃至特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3153591号公報
【特許文献2】特開平11-310990号公報
【特許文献3】特開2000-120234号公報
【特許文献4】特開2000-336791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、防滑性を付与するためには防滑剤の大きさはある程度必要であるものの、粒径の大きな防滑剤は沈降しやすく均一に塗布することが難しいため、防滑剤のコーティングのムラが発生しやすいものだった。そのため、施工者は、コーティングが不十分な箇所については滑りやすく感じていた。また、金属層に防滑処理を施すと太陽光の反射を阻害してしまい、断熱材が遮熱性に劣るおそれがあった。
特許文献1に記載の断熱材は、断熱性能が経時で劣化するのを抑制し、長期に亘り安定した断熱性能を発揮できる点から大変優れたものであるが、防滑処理は行われておらず、したがって、防滑剤のコーティングのムラを抑制する点も記載されていない。
特許文献2には、珪砂(粒径分布の中心150μm)と大理石の研磨後の廃粉(粒度分布の中心40μm)とが、重量比1:1でブレンドされた防滑用粒子Bを合成樹脂接着材料Aに混練して防滑用混練材料Cを調整し、該防滑用混練材料Cをメッシュロール(及びゴムロール)を用いてグラビアコーティングにより面材(ポリエチレンフィルム)に塗布し、該面材を防滑用混練材料Cが表面となるように合成樹脂発泡体に貼着して製造された屋根用断熱ボードが記載されている。前記屋根用断熱ボードは、屋根施工における、該屋根用断熱ボードの敷設に際して、作業員が該ボードに足を取られて滑落するといった危険を防止するとともに、該ボード敷設の作業能率の向上を図ることができる点から大変優れたものであるが、特許文献2には防滑剤のコーティングのムラを抑制する観点については記載されていない。
特許文献3及び特許文献4には、防滑性向上と輻射熱遮蔽の効果とを備えた断熱材が記載され、防滑性の評価として滑り抵抗係数や算術平均粗さが記載されているが、コーティングのムラを抑制するという観点の記載又は示唆はない。
したがって、防滑剤のコーティングのムラを抑え、防滑性と遮熱性とに優れる断熱材の開発が求められている。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、防滑剤のコーティングのムラを抑制し、防滑性と遮熱性とに優れる断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題解決を目標に鋭意検討した結果、合成樹脂発泡体からなる芯材の少なくとも片面に面材が積層されており、前記面材が、少なくとも輻射熱反射層と防滑層を有する積層面材であり、前記防滑層は、輻射熱反射層より外側で、かつ断熱材最外面に位置するよう設けられ、前記防滑層は、平均粒子径が1mm以下の防滑剤と合成樹脂を有し、前記面材の防滑層と普通合板との静摩擦係数が0.49以上で、かつ分散Vが0.002以下、前記面材の防滑層と普通合板との動摩擦係数が0.49以上で、かつ分散Vが0.001以下である断熱材が、防滑剤のコーティングのムラを抑制することができ、防滑性に優れるととも遮熱性にも優れることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)合成樹脂発泡体からなる芯材の少なくとも片面に面材が積層されてなる断熱材であって、
前記面材は、少なくとも輻射熱反射層と防滑層を有する積層面材であり、
前記防滑層は、輻射熱反射層より外側で、かつ断熱材最外面に位置するよう設けられ、
前記防滑層は、平均粒子径が1mm以下の防滑剤と合成樹脂を有し、
前記面材の防滑層と普通合板との静摩擦係数が0.49以上で、かつ分散Vが0.002以下、
前記面材の防滑層と普通合板との動摩擦係数が0.49以上で、かつ分散Vが0.001以下
であることを特徴とする断熱材、
(2)前記面材が芯材の両面に積層されてなり、一方の面材は前記防滑層を含まないことを特徴とする(1)に記載の断熱材、
(3)前記合成樹脂発泡体がポリウレタンフォーム、ポリフェノールフォーム及びポリスチレンフォームからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする(1)に記載の断熱材、
(4)前記輻射熱反射層が、金属箔単体、紙又はプラスチックフィルムと金属箔との複合品、及び紙又はプラスチックフィルムと金属蒸着物との複合品からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする(1)に記載の断熱材、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の断熱材は、防滑層を有する面材上の複数の箇所の摩擦係数を測定し、算出された分散Vの値が小さく、したがって、防滑剤が面材全体に均一に分散しているため、防滑剤のコーティングのムラが少なく、防滑性に優れるとともに遮熱性にも優れる。よって、屋根用等の断熱材として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る断熱材1を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態1に係る断熱材1を含む屋根の断熱構造の斜視図である。
図3】本発明の実施形態1に係る断熱材1が施工者によって実際に敷設されている様子を示す図である。
図4】(a)は、実施例1に係る断熱材1の表面を撮影した写真である。(b)は、比較例1に係る断熱材の表面を撮影した写真である。
図5】(a)は、実施例1に係る断熱材1の表面を10倍に拡大して撮影した写真である。(b)は、比較例1に係る断熱材の表面を10倍に拡大して撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[断熱材]
本発明の実施形態1の断熱材1は、図1に示すように、芯材2の両面に面材4、4´が積層されており、一方の面材4が輻射熱反射層41と防滑層42の積層面材となっており、他方の面材4´が輻射熱反射層41のみとなっており、前記防滑層42は、防滑剤6と合成樹脂8が混練されたものであって、前記輻射熱反射層41より外側で、かつ断熱材最外面に位置するように設けられている。
【0011】
実施形態1の断熱材1は、例えば、図2に示すように、屋根の断熱構造に適用される。図2は、軒げた91に下側タル木92を渡した後、この上に断熱材1を敷設した後、該断熱材1上に下側タル木92に対応するように上側タル木94を渡し、さらにこの上側タル木94上に野地板95を取り付け、この野地板95の上から防水紙96を敷きつめ、さらに、断熱材1のつなぎ目部分に防水テープ97による止水処理を行った様子を示している。そして、図3に示すように施工者はすでに敷設した断熱材1に乗り、他の断熱材の敷設を行う。また、断熱材1上に上側タル木94を渡す場合や、上側タル木94上に野地板95を取り付ける場合にも、施工者はすでに施設した該断熱材1に乗り、野地板95の取り付けを行う。
【0012】
<芯材>
実施形態1の断熱材1は合成樹脂発泡体からなる芯材2を有する。そのような合成樹脂発泡体としては、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリフェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム等のプラスチック系断熱材やグラスウール、ロックウール、セルローズファイバー等が挙げられる。これら合成樹脂発泡体の中でも防露、結露防止のため、気密化のとりやすいポリウレタンフォーム、ポリフェノールフォーム及びポリスチレンフォームが好ましく、強度の高いポリウレタンフォームがさらに好ましい。
【0013】
ポリウレタンフォームとしては例えば、熱伝導率が0.024W/(m・K)以下のものが好ましい。この範囲の熱伝導率を有するポリウレタンフォームは、断熱性能に優れており、断熱材1の断熱効果の向上も期待できる。
【0014】
<面材>
面材4は、芯材2の少なくとも片面に積層されており、少なくとも輻射熱反射層41と防滑層42を有する積層面材である。面材4は、遮熱及び/又は結露防止の効果が期待できるものが使用される。面材4は単独又は複数組み合わせて積層させたものであってもよい。
本発明における遮熱とは、輻射熱を反射(夏であれば太陽光から発する輻射熱を屋外側へ反射し、冬であれば室内で使用される暖房機器などから発せられる輻射熱を室内側へ反射する)することを云い、また、結露防止とは、屋外・屋内の温度差や湿度環境において、建築躯体内を流れる水蒸気の透湿を遮断することを云う。
夏と冬で建物の内外の温度や湿度が逆転するので、本発明の実施形態1の断熱材1のように両面に面材4が存在した方が効果が大きくなるため好ましい。また、両面に面材4が存在した方が施工者も断熱材の敷設の際に屋根側と室内側を間違えて敷設する虞がなくなるために好ましい。
しかし、後述する輻射熱反射層41の効果は、室外側の方が際立って大きくなるため、室内側の面材4´については、例えば経済的な観点から防滑層を省略したり素材を変更することも可能である。
【0015】
<輻射熱反射層>
輻射熱反射層41としては、一般の建築部材の表面よりも放射率が低く輻射熱遮蔽の効果及び/又は結露防止の効果が期待できるものあればどのようなものでもかまわない。こ
こで、放射率とは、物質の発する熱放射(輻射熱)の度合を示す値であり、放射率の値が低いほど遮熱性に優れる。金属は、熱反射により放射率が低い素材である。
そこで、輻射熱反射層41としては、例えば、金属箔単体、紙又はプラスチックフィルムと金属箔との複合品、及び紙又はプラスチックフィルムと金属蒸着物との複合品等を挙げることができる。
金属箔としては、さびにくいものであればよく、特に限定されないが、例えば、アルミニウム箔、銅箔、鉄箔、鉛箔、ニッケル箔、クロム箔やそれらの合金箔等が挙げられる。アルミニウム箔が軽量であるため好ましい。
紙としては、例えば、クラフト紙、ライナー紙、炭酸カルシウム紙、ガラスペーパー及び紙状の不織布等が挙げられる。
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム及びポリ塩化ビニルフィルム等が挙げられる。
【0016】
<防滑層>
防滑層42は、防滑剤6と合成樹脂8を含有し、該防滑剤6と該合成樹脂8が混練されたものである。防滑層42は、輻射熱反射層41の輻射熱遮蔽の効果及び/又は結露防止の効果を阻害することなく積層可能であり、かつ防滑性を付与できるものであれば問題なく使用できる。輻射熱遮蔽の効果及び/又は結露防止の効果を阻害しないために、合成樹脂8には、光の透過率の高い素材からなるものを使用することが好ましく、輻射熱反射層41に防滑層42を積層した状態で放射率が0.6以下であることが好ましい。
【0017】
<防滑剤>
防滑層42が含有する防滑剤6としては、防滑性能を発揮できるものであれば種々の材質、形状のものが使用できる。そのような防滑剤6としては、例えば、砂、珪砂、二酸化硅素粒子、炭化硅素粒子、セラミック粒子、ガラス粒子、酸化アルミニウム粒子及び金属粒子等の無機系粒子が挙げられる。また、例えば、硬質合成樹脂チップ、木材チップ及びコルクチップ等の有機系粒子も挙げられる。
【0018】
前記防滑剤6の平均粒子径は、1mm以下、好ましくは0.3mm以下である。また、上記粒子の中でも珪砂の5~9号品(平均粒子径1mm以下)が好ましい。なお、これら防滑剤6は1種類のみを用いることもできるし、2種類以上を組み合わせて(混ぜ合わせて)使用することもできる。
【0019】
<合成樹脂>
実施形態1の断熱材1は、防滑剤6を固着するために合成樹脂接着材料(溶媒に合成樹脂8が溶解されたもの)を用いる。合成樹脂接着材料に前記防滑剤6を混練し、これを輻射熱反射層41の表面に塗布することで防滑剤8を輻射熱反射層41の表面に固着する。前記塗布方法として、ロールコート、グラビアコート、フレキソコート及びスプレーコート等の種々の塗布方法を採用することができる。合成樹脂接着材料の組成は、輻射熱反射層41の表面との接着性を考慮して選択され、また溶媒との混合比率は、溶媒の揮発後に防滑剤6の輪郭の一部が輻射熱反射層41の表面に現れるように定められる。合成樹脂接着材料に用いられる合成樹脂8としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びユリア樹脂等が挙げられるがこれらに限定されない。なお、合成樹脂接着材料の、輻射熱反射層41の表面に対する接着性を向上させるために、必要に応じて、輻射熱反射層41の表面に種々の処理(たとえばコロナ放電処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、化学反応処理、プライマー処理等)を施すことができる。
【0020】
防滑層42は、防滑剤6と合成樹脂8以外にも本発明の効果を損なわない範囲で、木粉
等の有機材料、クレーや層状ケイ酸塩等の無機材料、加水分解防止剤、抗菌剤、防黴剤、粘度調整剤、可塑剤、酸化チタン等の着色剤、充填剤及び帯電防止剤等の添加剤を必要に応じて含有してもよい。
【0021】
<静摩擦係数及び動摩擦係数>
実施形態1の断熱材1は、芯材2の両面に面材4、4´が積層されており、該面材4の防滑層42と普通合板との静摩擦係数が0.49以上で、かつ分散Vが0.002以下、該面材4の防滑層42と普通合板との動摩擦係数が0.49以上で、かつ分散Vが0.001以下である。
【0022】
本発明において、断熱材1の静摩擦係数及び動摩擦係数は、JIS K 7125に準じて面材4の最外層である防滑層42の摩擦係数を測定することにより求められる。すなわち、標準試験板(テーブル)の上に相手材として普通合板を固定し、当該普通合板上に所定サイズの面材4を防滑層42を下側にして載せる。当該面材4の上に滑り片を載せた状態で、法線力(均一な圧力分布)をかけつつ面材4を引っ張り、最大荷重と、接触面間の相対ずれ運動を開始した後から60mmまでの平均荷重とを測定し、下記算出式(1)及び算出式(2)を用いて静摩擦係数及び動摩擦係数を求める。
【0023】
【数1】
【0024】
【数2】
【0025】
面材4の静摩擦係数は、0.49以上であり、好ましくは0.60以上であり、より好ましくは0.63以上である。
面材4の動摩擦係数は、0.49以上であり、好ましくは0.54以上であり、より好ましくは0.59以上である。
【0026】
<分散V>
防滑層42の摩擦係数のばらつきは分散Vによって示される。分散Vは下記算出式(3)及び算出式(4)から求めることができる。n個の摩擦係数の測定値と摩擦係数の平均値の差をそれぞれ求め、この差を自乗する。そして自乗して得られた値の総和を(n-1)で除して、得られた値(不偏分散)を分散Vとする。
【0027】
【数3】
【0028】
【数4】
【0029】
分散Vの値はその値が小さいほど、ばらつきが小さいことを示す。したがって、面材4の複数個所の摩擦係数の測定を行い、分散Vを算出することでコーティングのムラが抑えられているかどうかを示すことができる。
【0030】
静摩擦係数の分散Vは、0.002以下であり、例えば、0.0015以下であり、例えば0.001以下である。
動摩擦係数の分散Vは、0.001以下であり、例えば、0.00075以下であり、例えば0.0005以下である。
【0031】
静摩擦係数の分散Vが0.002以下であり、動摩擦係数の分散Vが0.001以下であることで、断熱材1の面材4全体にムラなく防滑剤6が分布しており、したがって、該面材4を備えた断熱材は、例えば勾配のある箇所で好適に使用することができる。
【実施例0032】
以下に本発明の実施例を示し、さらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。実施例1の断熱材1及び比較例1の断熱材は、長さ方向が1820mm、幅方向が910mm、厚みが45mmの図1に示す形状のものである。
【0033】
[実施例1]
実施例1の断熱材1は、合成樹脂発泡体の芯材2がポリウレタンフォームからなり、芯材2の両面に面材4、4´が積層されている。該面材4は、輻射熱反射層41と防滑層42の積層面材となっており、該輻射熱反射層41は、芯材2側からポリエチレンフィルム/アルミニウム箔/ポリエチレンフィルム/クラフト紙/ポリエチレンフィルム/アルミニウム箔/ポリエチレンフィルムの順に積層されている。前記面材4´は輻射熱反射層41からなり、面材4から防滑層42を省略したものである。前記防滑層42は、輻射熱反射層41より外側で、かつ断熱材1最外面に位置するよう設けられている。そして、前記防滑層42は、防滑剤6を合成樹脂接着材料に混練し、これを輻射熱反射層41の表面に塗布することで形成されている。前記防滑剤6は平均粒子径が1mm以下の珪砂からなり、合成樹脂接着材料(防滑ニス)は、ウレタン樹脂とイソシアネート樹脂との混合樹脂(30質量%)からなる合成樹脂8とジメチルホルムアミドとトルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤(70質量%)からなる。実施例1の断熱材1の表面の状態を撮影した写真を図4(a)に示す。さらに、10倍に拡大して撮影した写真を図5(a)に示す。
【0034】
[比較例1]
比較例1の断熱材は、合成樹脂発泡体の芯材2がポリウレタンフォームからなり、芯材2の両面に面材4、4´が積層されている。該面材4は、輻射熱反射層41と防滑層42の積層面材となっており、該輻射熱反射層41は、芯材2側からポリエチレンフィルム/アルミニウム箔/ポリエチレンフィルム/クラフト紙/ポリエチレンフィルム/アルミニウム箔/ポリエチレンフィルムの順に積層されている。前記面材4´は輻射熱反射層41からなり、面材4から防滑層42を省略したものである。前記防滑層42は、輻射熱反射層41より外側で、かつ断熱材最外面に位置するよう設けられている。そして、前記防滑層42は、防滑剤6を合成樹脂接着材料に混練し、これを輻射熱反射層41の表面に塗布することで形成されている。前記防滑剤6は平均粒子径が1.0mmを超えて1.5mm以下の珪砂からなり、合成樹脂接着材料(防滑ニス)は、ウレタン樹脂とイソシアネート樹脂との混合樹脂(30質量%)からなる合成樹脂8とジメチルホルムアミドとトルエン
とメチルエチルケトンの混合溶剤(70質量%)からなる。比較例1の断熱材の表面の状態を撮影した写真を図4(b)に示す。さらに、10倍に拡大して撮影した写真を図5(b)に示す。
【0035】
(防滑性評価:靴底)
社団法人 産業安全技術協会発行「安全靴・作業靴技術指針TIIS-ST-0603」に基づいて、靴底に対する静摩擦係数及び動摩擦係数を測定した。具体的には、木造住宅施工時に施工者が履くことを想定した足袋靴(26cm)及び軽作業靴(26cm)に、実施例1の断熱材1及び比較例1の断熱材の上から鉛直荷重(260N)を与え、路面となる断熱材を12m/分の速度で水平方向にスライドさせた際の静摩擦係数及び動摩擦係数を測定した。測定は6回行い、1回目の測定値を除いた2乃至6回目の測定値の平均を算出した。結果を表1に示す。
【0036】
(防滑性及びコーティングのムラ評価:普通合板)
(1)静摩擦係数及び動摩擦係数の測定
実施例1の断熱材1及び比較例1の断熱材の面材4を、幅80mm×長さ100mmのサイズにそれぞれ10枚に切断し、これら面材4を防滑層42を下側にして厚さ6mmの普通合板(合板の日本農林規格:JAS 2類1等に相当)の上に載せ、該面材4の上に滑り片を載せ、JIS K 7125に準じて最表面層である防滑層42の静摩擦係数及び動摩擦係数を測定した。なお、滑り片の接触面積は63mm×63mm、滑り片の全質量を200g(1.96N)とし、滑り片の面材との接触面にはフェルトを貼り付け、滑り速度100mm/分の条件で面材4を引っ張って測定を行った。このとき、普通合板の木目方向と引っ張り方向とを合わせた。静摩擦係数及び動摩擦係数は、下記算出式(1)及び算出式(2)を用いて求め、各結果の平均値を表1に示す。
【0037】
【数5】
【0038】
【数6】
【0039】
(2)分散Vの算出
上記結果から得られた静摩擦係数及び動摩擦係数を用いて分散Vを下記算出式(3)及び算出式(4)から求めた。結果を表1に示す。
【数7】
【0040】
【数8】
【0041】
(遮熱性評価)
実施例1の断熱材1の面材4及び比較例1の断熱材の面材4を金型温調機の上に置き、重しで密着させて加熱した(金型設定温度:50℃)。そして、測定部分近くの温度を接触式温度計にて測定した。得られた測定温度とほぼ同じになるよう、放射温度計(株式会社堀場製作所製、IT-540S;距離100mmに対し、φ30mmの測定)の放射率設定値を調整し、両方の温度計の値が同じになったときの放射率を測定した。なお、面材表面と放射温度計レンズの距離は100mmで固定した。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示すように、一般的に施工者が履く足袋及び軽作業靴の靴底に対する実施例1の断熱材1及び比較例1の断熱材の静摩擦係数及び動摩擦係数は、同程度の値を示すことがわかった。
しかしながら、実施例1の断熱材1の面材4の方が、比較例1の断熱材の面材4に対して静摩擦係数及び動摩擦係数の分散Vの値がそれぞれ約6分の1及び約7分の1程度小さいという結果が得られた。したがって、防滑剤6のコーティングのムラがより抑えられていることがわかる。これは、実際に図4(a)及び図4(b)の表面の外観からも示されている。図4(a)からは、実施例1の断熱材1における白い防滑剤6が面材4全体に均一に分散していることが見て取れるのに対して、図4(b)では白い防滑剤6が濃く分布する密な箇所と防滑剤6が存在しないがために黒く見える疎な箇所があり、防滑剤6のコーティングのムラが面材4全体にあることがわかる。さらに、実施例1の断熱材1及び比
較例1の断熱材における防滑剤6のコーティングがなされている箇所についてそれぞれ10倍に拡大すると、図5(a)の実施例1の断熱材1については、局所的にも防滑剤6が均一に分散していることが見て取れるのに対して、図5(b)の比較例1の断熱材については、防滑剤6のコーティングのムラは局所的な範囲でもあることがわかった。
また、遮熱性について一般的な建築材料の放射率は、0.8~0.95程度であり、実施例1及び比較例1ともに放射率の値は低い結果ではあったが、実施例1の断熱材1の方が、比較例1の断熱材に対して放射率の値も小さいという結果が得られ、遮熱性の観点からも優れていることがわかった。
したがって、実施例1の断熱材1の方が、防滑剤のコーティングのムラが抑制され、防滑性に優れるととも遮熱性にも優れているという結果が得られた。よって、屋根用等の断熱材として好適に使用できることがわかった。
【符号の説明】
【0044】
1 断熱材
2 芯材
4 面材
4´ 面材(室内側)
41 輻射熱反射層
42 防滑層
6 防滑剤
8 合成樹脂
91 軒げた
92 下側タル木
94 上側タル木
95 野地板
96 防水紙
97 防水テープ
図1
図2
図3
図4
図5