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▶ ローランドディー.ジー.株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176579
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 303
B41J2/01 401
B41J2/01 125
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088929
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】岡本 仁成
(72)【発明者】
【氏名】藤本 潔
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB12
2C056EB30
2C056EB36
2C056EC11
2C056EC12
2C056EC29
2C056EC33
2C056FA02
2C056FA10
2C056HA29
2C056HA38
2C056HA46
(57)【要約】
【課題】印刷中におけるノズル面とプラテンとの上下方向の距離のばらつきの発生を抑制すること。
【解決手段】プリンタ10は、主走査方向Yに延びるガイドレール18と、ガイドレール18に沿って移動可能なキャリッジ22と、インクを吐出するノズルが形成されたノズル面24Aを有し、キャリッジ22に搭載されたインクヘッド24と、キャリッジ22と共に移動し、キャリッジ22を昇降させる昇降機構25と、制御装置70と、を備え、制御装置70は、主走査方向Yの複数の位置におけるガイドレール18に対するプラテン15の上下方向Zの相対的な位置を表すパラメータを記憶する記憶部72と、ノズル面24Aとプラテン15との上下方向Zの距離HGが所定の範囲内に含まれるようにパラメータに基づいて昇降機構25を制御してキャリッジ22を昇降させる昇降制御部74と、を備えている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体が載置される載置台と、
前記載置台より上方に配置され、かつ、主走査方向に延びるガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って前記主走査方向に移動可能なキャリッジと、
前記載置台に載置された前記記録媒体にインクを吐出するノズルと、前記ノズルが形成されたノズル面とを有し、前記キャリッジに搭載されたインクヘッドと、
前記キャリッジと共に移動し、かつ、前記キャリッジを昇降させる昇降機構と、
前記昇降機構を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記主走査方向の複数の位置における前記ガイドレールに対する前記載置台の上下方向の相対的な位置を表すパラメータを記憶する記憶部と、
前記キャリッジが前記主走査方向に移動する際に、前記ノズル面と前記載置台との上下方向の距離が所定の範囲内に含まれるように前記パラメータに基づいて前記昇降機構を制御して前記キャリッジを昇降させる昇降制御部と、を備えている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記昇降制御部は、前記ノズル面と前記載置台との上下方向の距離が一定になるように前記パラメータに基づいて前記昇降機構を制御して前記キャリッジを昇降させる、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記載置台に設けられ、かつ、前記載置台に載置された前記記録媒体を加熱するヒータを備え、
前記制御装置は、
前記ヒータに電気信号を供給して前記ヒータの温度を制御するヒータ制御部と、
前記電気信号の大きさに基づいて、前記パラメータを補正する第1補正部と、を備えている、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記載置台に設けられ、かつ、前記載置台に載置された前記記録媒体を加熱するヒータと、
前記ヒータの温度または前記載置台の温度を測定する温度センサと、を備え、
前記制御装置は、
前記ヒータに電気信号を供給して前記ヒータの温度を制御するヒータ制御部と、
前記温度センサによって測定された前記ヒータの温度または前記載置台の温度に基づいて、前記パラメータを補正する第2補正部と、を備えている、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
請求項1または2に記載のインクジェットプリンタを組み立てる方法であって、
前記パラメータを測定すること、
測定された前記パラメータを前記記憶部に記憶させること、を含む、組み立て方法。
【請求項6】
記録媒体が載置される載置台と、
前記載置台より上方に配置され、かつ、主走査方向に延びるガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って前記主走査方向に移動可能なキャリッジと、
前記載置台に載置された前記記録媒体にインクを吐出するノズルと、前記ノズルが形成されたノズル面とを有し、前記キャリッジに搭載されたインクヘッドと、
前記キャリッジと共に移動し、かつ、前記キャリッジを上昇および下降させる昇降機構と、を備え、前記主走査方向の複数の位置における前記ガイドレールに対する前記載置台の上下方向の相対的な位置を表すパラメータが記憶されたインクジェットプリンタにおいて、前記記録媒体にインクを吐出して画像を印刷する方法であって、
前記キャリッジが前記主走査方向に移動する際に、前記ノズル面と前記載置台との上下方向の距離が所定の範囲内に含まれるように前記パラメータに基づいて前記昇降機構を制御すること、
前記ノズルから前記記録媒体にインクを吐出させること、を含む印刷方法。
【請求項7】
前記ノズル面と前記載置台との上下方向の距離が一定になるように前記パラメータに基づいて前記昇降機構を制御する、請求項6に記載の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録媒体が載置される載置台と、載置台に載置された記録媒体にインクを吐出するノズルを有するインクヘッドと、インクヘッドを搭載しかつ主走査方向に移動可能なキャリッジと、主走査方向に延びかつキャリッジが摺動自在に設けられたガイドレールと、を備えたインクジェットプリンタが知られている。
【0003】
ここで、載置台に載置された記録媒体は、載置台から浮き上がることがあり得る。記録媒体が浮き上がることによって、インクヘッドのノズルが形成されたノズル面に記録媒体が接触する虞がある。また、記録媒体がノズル面に接触しなくても、ノズル面と記録媒体との上下方向の距離が変わってしまうことにより、ノズルから吐出されたインクの着弾位置がずれてしまい、印刷された画像の画質が低下する虞がある。かかる課題を解決すべく、特許文献1には、記録媒体の浮きの高さを検知する読み取りセンサを備え、浮きの高さに応じてインクヘッドを昇降させて、ノズル面と記録媒体との上下方向の距離を調整するプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-11025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、載置台に載置された記録媒体に浮きが発生していない場合であっても、ガイドレールに対する載置台の上下方向の相対的な位置(即ちガイドレールと載置台との上下方向の距離)が主走査方向の全体に亘って一定でないときには、ノズル面と載置台との上下方向の距離にばらつきが生じてしまう。特に、ガイドレールおよび載置台が主走査方向に長い場合には、ノズル面と載置台との上下方向の距離にばらつきが生じやすい傾向にある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷中におけるノズル面と載置台との上下方向の距離のばらつきの発生を抑制することができるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るインクジェットプリンタは、記録媒体が載置される載置台と、前記載置台より上方に配置され、かつ、主走査方向に延びるガイドレールと、前記ガイドレールに沿って前記主走査方向に移動可能なキャリッジと、前記載置台に載置された前記記録媒体にインクを吐出するノズルと、前記ノズルが形成されたノズル面とを有し、前記キャリッジに搭載されたインクヘッドと、前記キャリッジと共に移動し、かつ、前記キャリッジを昇降させる昇降機構と、前記昇降機構を制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、前記主走査方向の複数の位置における前記ガイドレールに対する前記載置台の上下方向の相対的な位置を表すパラメータを記憶する記憶部と、前記キャリッジが前記主走査方向に移動する際に、前記ノズル面と前記載置台との上下方向の距離が所定の範囲内に含まれるように前記パラメータに基づいて前記昇降機構を制御して前記キャリッジを昇降させる昇降制御部と、を備えている。
【0008】
本発明に係るインクジェットプリンタによると、制御装置の記憶部は、主走査方向の複数の位置におけるガイドレールに対する載置台の上下方向の相対的な位置を表すパラメータを記憶する。即ち、記憶部は、主走査方向の複数の位置におけるガイドレールと載置台との上下方向の距離のばらつきを予め記憶している。そして、制御装置の昇降制御部は、パラメータに基づいてキャリッジを昇降させることで、ノズル面と載置台との上下方向の距離を所定の範囲内に収めることができる。これにより、ノズル面と載置台との上下方向の距離のばらつきの発生を抑制しながら、キャリッジを主走査方向に移動させてインクヘッドのノズルから記録媒体にインクを吐出させることができるため、記録媒体に形成された画像の画質の向上が実現される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印刷中におけるノズル面と載置台との上下方向の距離のばらつきの発生を抑制することができるインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係るプリンタの正面図である。
図2図2は、一実施形態に係るプリンタの一部を示す正面図である。
図3図3は、一実施形態に係るプリンタの一部を示す断面図である。
図4図4は、一実施形態に係るプラテンの周辺の構造を示す平面図である。
図5図5は、一実施形態に係るガイドレールとプラテンとの上下方向の位置関係を示す正面図である。
図6図6は、一実施形態に係るプリンタの制御系のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るインクジェットプリンタ(以下プリンタとする)の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の正面図である。プリンタ10は、記録媒体5(図2参照)に印刷を行う。以下の説明では、プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。また、図面中の符号Yは主走査方向を示している。ここでは、主走査方向Yは左右方向である。符号Xは副走査方向を示している。ここでは、副走査方向Xは前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交している。符号Zは上下方向を示している。上下方向Zは、正面視において主走査方向Yと直交している。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0013】
記録媒体5は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体5は、記録紙に限定されない。例えば、記録媒体5には、PVC、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、アルミや鉄等から形成された金属板、ガラス板、木材板等の比較的厚みを有するものが含まれる。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、ベース部材40と、記録媒体5(図2参照)が載置されるプラテン15と、プラテン15を加熱するヒータ19(図3参照)と、ベース部材40に取り付けられた本体ケース50と、右脚部16Rと、左脚部16Lと、インクヘッドユニット20(図2も参照)と、を備えている。右脚部16Rおよび左脚部16Lは、ベース部材40の下部に取り付けられている。右脚部16Rおよび左脚部16Lは、ベース部材40を支持する。ベース部材40は、主走査方向Yに延びる。
【0015】
図1に示すように、ベース部材40は、主走査方向Yに延びる。図3に示すように、ベース部材40は、支持台41と、支持台41上に配置された支持ケース42とを備えている。支持台41は、一側面(ここでは上面)が開口した略直方体形状に形成されている。支持台41の下部には、右脚部16R(図1参照)および左脚部16L(図1参照)が取り付けられている。支持ケース42は、一側面(ここでは上面)が開口した略直方体形状に形成されている。支持ケース42は、プラテン15を支持する。
【0016】
図2に示すように、プラテン15は、主走査方向Yに延びる。記録媒体5への印刷は、プラテン15上で行われる。図3に示すように、プラテン15は、ベース部材40に設けられている。より詳細には、プラテン15は、ベース部材40の支持ケース42に設けられている。プラテン15は、支持ケース42の開口42Hを塞ぐように支持ケース42上に配置されている。プラテン15と支持ケース42とによって内部空間42Sが区画される。プラテン15は、平板状に形成されている。なお、後述するように、プラテン15の表面15Aは平坦状ではなく、僅かに凹凸がある。プラテン15は、載置台の一例である。
【0017】
図3に示すように、プリンタ10は、下流側ガイド部材61を備えている。下流側ガイド部材61は、プラテン15より前方に配置されている。下流側ガイド部材61は、ベース部材40に支持されている。下流側ガイド部材61の表面61Aは後方から前方に向けて斜め下方に傾いている。下流側ガイド部材61は、例えば横断面円弧状に形成されている。下流側ガイド部材61は、プラテン15から離れるほど下方に向かうように湾曲している。下流側ガイド部材61は、記録媒体5(図2参照)の移動をガイドする。
【0018】
図3に示すように、プリンタ10は、上流側ガイド部材62を備えている。上流側ガイド部材62は、プラテン15より後方に配置されている。上流側ガイド部材62は、ベース部材40に支持されている。上流側ガイド部材62の表面62Aは前方から後方に向けて斜め下方に傾いている。上流側ガイド部材62は、例えば横断面円弧状に形成されている。上流側ガイド部材62は、プラテン15から離れるほど下方に向かうように湾曲している。上流側ガイド部材62は、記録媒体5(図2参照)の移動をガイドする。
【0019】
ヒータ19は、プラテン15に載置された記録媒体5を加熱する。ヒータ19は、プラテン15を加熱することによって記録媒体5を加熱する。図3に示すように、ヒータ19は、プラテン15の裏面15Bに配置されている。図4に示すように、ヒータ19は、主走査方向Yに延びている。ヒータ19は、後述するグリットローラ36より前方に配置されている。ヒータ19は、例えば、ニクロム線や鉄クロム線等の電熱線である。
【0020】
図3に示すように、プリンタ10は、温度センサ28を備えている。温度センサ28は、プラテン15の温度を測定する。温度センサ28は、プラテン15の裏面15Bに配置されている。温度センサ28は、ヒータ19より前方に配置されている。温度センサ28は、例えば、サーミスタである。なお、温度センサ28は、例えば、ヒータ19の裏面に配置され、ヒータ19の温度を測定するようにしてもよい。
【0021】
図2に示すように、プリンタ10は、主走査方向Yおよび上下方向に延びる中央壁17を備えている。中央壁17は、ベース部材40に支持されている。中央壁17は、プラテン15の上方に配置されている。中央壁17とプラテン15との間には、記録媒体5が通過可能な間隙58が形成されている。中央壁17は、本体ケース50に収容されている。
【0022】
図2に示すように、プリンタ10は、ガイドレール18を備えている。ガイドレール18は、主走査方向Yに延びる。ガイドレール18は、中央壁17に設けられている。ガイドレール18は、プラテン15より上方に配置されている。ガイドレール18の左端部はプラテン15より左方に位置する。ガイドレール18の右端部はプラテン15より右方に位置する。
【0023】
図2に示すように、インクヘッドユニット20は、本体ケース50の内方に配置されている。インクヘッドユニット20は、プラテン15より上方に配置されている。図3に示すように、インクヘッドユニット20は、キャリッジベース21と、キャリッジ22と、ケース23と、インクヘッド24と、昇降機構25(図2参照)と、を備えている。キャリッジベース21は、ガイドレール18に係合している。キャリッジベース21は、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。キャリッジベース21は、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びる。キャリッジ22は、キャリッジベース21に設けられている。キャリッジ22は、キャリッジベース21の下端から前方に延びる。ケース23は、キャリッジ22に取り付けられている。インクヘッド24は、キャリッジ22に搭載されている。インクヘッド24は、ケース23内に収容されている。インクヘッド24は、プラテン15に載置された記録媒体5にインクを吐出するノズル(図示せず)と、ノズルが形成されたノズル面24Aと、を有する。インクヘッド24は、記録媒体5に所定の画像を印刷する。キャリッジ22およびケース23およびインクヘッド24は、キャリッジベース21の移動に伴って、主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0024】
昇降機構25は、キャリッジ22を昇降させる機構である。即ち、昇降機構25は、インクヘッド24を昇降させる。昇降機構25は、キャリッジベース21に設けられている。昇降機構25は、キャリッジ22と共に移動する。図2に示すように、昇降機構25は、駆動モータ25Mと、ボールねじ25Aと、連結部材25Bと、を有する。駆動モータ25Mは、ボールねじ25Aに連結されている。駆動モータ25Mは、例えば、サーボモータやステッピングモータである。ボールねじ25Aは、上下方向Zに延びる。連結部材25Bは、ボールねじ25Aおよびキャリッジ22に固定されている。連結部材25Bは、例えば、ナットである。駆動モータ25Mを駆動させてボールねじ25Aが回転することにより、連結部材25Bがボールねじ25Aに沿って上昇または下降する。これにより、キャリッジ22も上昇または下降する。即ち、連結部材25Bが上下方向に移動することにより、キャリッジ22に搭載されたインクヘッド24も上下方向に移動する。
【0025】
図2に示すように、プリンタ10は、キャリッジ移動機構30を備えている。キャリッジ移動機構30は、プラテン15に載置された記録媒体5に対してインクヘッドユニット20のキャリッジベース21を相対的に主走査方向Yに移動させる機構である。キャリッジ移動機構30は、キャリッジベース21を主走査方向Yに移動させる。なお、キャリッジ移動機構30の構成は特に限定されない。キャリッジ移動機構30は、第1プーリ31と、第2プーリ32と、無端状のベルト33と、キャリッジモータ34とを備えている。第1プーリ31は、ガイドレール18の左端側に設けられている。第2プーリ32は、ガイドレール18の右端側に設けられている。ベルト33は、第1プーリ31と第2プーリ32とに巻き掛けられている。ベルト33は、キャリッジベース21の背面上部に固定されている。第2プーリ32には、キャリッジモータ34が接続されている。ただし、キャリッジモータ34は、第1プーリ31に接続されていてもよい。ここでは、キャリッジモータ34が駆動して、第2プーリ32が回転することで、第1プーリ31と第2プーリ32との間においてベルト33が走行する。これにより、キャリッジ22およびインクヘッド24は主走査方向Yに移動する。
【0026】
図2に示すように、プリンタ10は、媒体搬送機構35を備えている。媒体搬送機構35は、ベース部材40に設けられている。媒体搬送機構35は、プラテン15に載置された記録媒体5を副走査方向Xに移動させる機構である。媒体搬送機構35は、グリットローラ36と、ピンチローラ37と、フィードモータ38(図6参照)とを備えている。グリットローラ36は、プラテン15に設けられている。ここでは、グリットローラ36の一部はプラテン15に埋設されている。ピンチローラ37は、グリットローラ36と上下方向Zで対向するように、グリットローラ36の上方に配置されている。ピンチローラ37は、記録媒体5を上から押え付ける部材である。フィードモータ38は、グリットローラ36に接続されている。グリットローラ36とピンチローラ37との間に記録媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ38が駆動してグリットローラ36が回転すると、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。
【0027】
図1に示すように、プリンタ10は、制御装置70を備えている。制御装置70は、本体ケース50に収容されている。図6に示すように、制御装置70は、キャリッジ移動機構30のキャリッジモータ34と、媒体搬送機構35のフィードモータ38と、インクヘッド24と、昇降機構25の駆動モータ25Mと、ヒータ19と、温度センサ28と、通信可能に接続されている。制御装置70は、キャリッジモータ34、フィードモータ38、インクヘッド24、駆動モータ25Mおよびヒータ19の動作を制御する。制御装置70は、典型的にはコンピュータである。制御装置70は、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器からの印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROMと、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAMと、上記プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置とを備えている。
【0028】
図6に示すように、制御装置70は、記憶部72と、昇降制御部74と、ヒータ制御部76と、補正部78と、ヘッド制御部80と、を備えている。制御装置70の各部の機能は、プログラムによって実現されている。このプログラムは、例えば、インターネットを通じてダウンロードされるものである。なお、このプログラムは、例えばCDやDVDなどの記録媒体から読み込まれてもよい。また、制御装置70の各部の機能は、プロセッサおよび/または回路などによって実現可能なものであってもよい。
【0029】
記憶部72は、主走査方向Yの複数の位置(好ましくは主走査方向Yの全体の位置)におけるガイドレール18に対するプラテン15の上下方向Zの相対的な位置を表すパラメータを記憶する。パラメータは、例えば、上下方向Zに関してガイドレール18とプラテン15との距離D(図5参照)である。ここで、ガイドレール18とプラテン15(より詳細にはプラテン15の表面15A)とは平行に配置されていることが好ましいが、部品公差や組立公差等により完全に平行に配置することは困難である。このため、例えば、ガイドレール18を基準としたときにプラテン15の平行度が0.03mmになるように設定している。図5は、ガイドレール18とプラテン15との位置関係を示す正面図であり、ガイドレール18が真っすぐ形成されているのに対してプラテン15は凹凸を有している例を示す。図5に示すように、ガイドレール18とプラテン15との上下方向Zの距離Dは、主走査方向Yに関してばらつきが生じている。本実施形態では、プリンタ10を組み立てる際にガイドレール18に例えばハイトゲージを取り付けて、ハイトゲージを主走査方向Yに移動させることでプラテン15の平行度を測定する。このとき、ハイトゲージは主走査方向Yの複数の位置(例えば主走査方向Yの全域)におけるガイドレール18に対するプラテン15の上下方向Zの相対的な位置を表すパラメータ(例えば上下方向Zの距離D)を測定する。そして、測定されたパラメータを記憶部72に記憶させる。図5では、主走査方向Yの位置P1、位置P2、位置P3、位置P4、位置P5、位置P6および位置P7においてパラメータを測定し、測定されたパラメータが位置P1から順に距離D1、距離D2、距離D3、距離D3、距離D3、距離D2、距離D1の場合を一例として示している。距離D2は距離D1より長く、距離D3より短い。このように、記憶部72は、主走査方向Yに関してガイドレール18とプラテン15との上下方向Zの距離Dのばらつきを予め記憶している。
【0030】
昇降制御部74は、印刷中に昇降機構25を制御してキャリッジ22を昇降させる。昇降制御部74は、キャリッジ22が主走査方向Yに移動する際に、ノズル面24Aとプラテン15との上下方向Zの距離HG(図3参照)が所定の範囲内に含まれるようにパラメータに基づいて昇降機構25を制御してキャリッジ22を昇降させる。好ましくは、昇降制御部74は、キャリッジ22が主走査方向Yに移動する際に、ノズル面24Aとプラテン15との上下方向Zの距離HGが一定になるようにパラメータに基づいて昇降機構25を制御してキャリッジ22を昇降させる。例えば、図5に示す例において、位置P2および位置P6における距離D2が最適な距離の場合、位置P1および位置P7では第1距離(距離D2-距離D1)だけキャリッジ22を上昇させ、位置P3および位置P4および位置P5では第2距離(距離D3-距離D2)だけキャリッジ22を下降させる。なお、昇降制御部74は、後述するように補正部78によってパラメータが補正されたときには、補正後のパラメータに基づいて昇降機構25を制御する。
【0031】
ヒータ制御部76は、ヒータ19に電気信号を供給してヒータ19の温度を制御する。
【0032】
補正部78は、温度センサ28によって測定されたプラテン15の温度に基づいて、パラメータを補正する。なお、補正部78は、ヒータ制御部76がヒータ19に供給した電気信号の大きさ(例えば電圧の大きさ)に基づいて、パラメータを補正してもよい。また、温度センサ28がヒータ19の温度を測定する場合には、ヒータ19の温度に基づいて、パラメータを補正してもよい。ここで、プラテン15が例えばアルミニウムから形成されている場合、ヒータ19によってプラテン15が加熱されるとプラテン15が僅かに変形する。即ち、ノズル面24Aとプラテン15との上下方向Zの距離HGが変動し得る。このため、ヒータ19を用いる場合には、補正部78によってパラメータを補正することで、印刷中にプラテン15の主走査方向Yの全体に亘って距離HGをより適正な値にすることができる。なお、記憶部72には、プラテン15の温度またはヒータ19の温度(あるいはヒータ19に供給する電気信号の大きさ)とプラテン15の変形量との関係を示すテーブルが予め記憶されている。補正部78は、記憶部72に記憶された上記テーブルに基づいてパラメータを補正する。補正されたパラメータは、記憶部72に記憶される。
【0033】
ヘッド制御部80は、インクヘッド24を制御する。ヘッド制御部80は、インクヘッド24を制御して、インクヘッド24のノズルから記録媒体5にインクを吐出させる。ヘッド制御部80は、インクヘッド24のノズルから記録媒体5に吐出するインクの量やタイミング等を制御する。記録媒体5に画像を印刷する際には、昇降制御部74によってノズル面24Aとプラテン15との上下方向Zの距離HGが調整されながら、ヘッド制御部80によって記録媒体5にインクが吐出されて画像が形成される。
【0034】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、制御装置70の記憶部72は、主走査方向Yの複数の位置におけるガイドレール18に対するプラテン15の上下方向Zの相対的な位置を表すパラメータを記憶する。即ち、記憶部72は、主走査方向Yの複数の位置におけるガイドレール18とプラテン15との上下方向Zの距離のばらつきを予め記憶している。そして、制御装置70の昇降制御部74は、パラメータに基づいてキャリッジ22を昇降させることで、ノズル面24Aとプラテン15との上下方向Zの距離HGを所定の範囲内に収めることができる。これにより、ノズル面24Aとプラテン15との上下方向Zの距離HGのばらつきの発生を抑制しながら、キャリッジ22を主走査方向Yに移動させてインクヘッド24のノズルから記録媒体5にインクを吐出させることができるため、記録媒体5に形成された画像の画質の向上が実現される。
【0035】
本実施形態のプリンタ10では、昇降制御部74は、ノズル面24Aとプラテン15との上下方向Zの距離HGが一定になるようにパラメータに基づいて昇降機構25を制御してキャリッジ22を昇降させる。上記態様によれば、印刷中において、ノズル面24Aとプラテン15との上下方向Zの距離HGが一定に保たれるため、より高品質に記録媒体5に画像を形成することができる。
【0036】
本実施形態のプリンタ10は、プラテン15に設けられ、かつ、プラテン15に載置された記録媒体5を加熱するヒータ19を備え、制御装置70は、ヒータ19に電気信号を供給してヒータ19の温度を制御するヒータ制御部76と、電気信号の大きさに基づいて、パラメータを補正する補正部78と、を備えていてもよい。上記態様によれば、ヒータ19によって記録媒体5に吐出されたインクの乾燥を促進することができる。ここで、ヒータ19が記録媒体5を加熱するときにはプラテン15に熱が伝導されるため、プラテン15は僅かに変形する。しかしながら、制御装置70の補正部78は、ヒータ19に供給する電気信号の大きさに基づいてパラメータを補正することができるため、ヒータ19を用いた場合であってもノズル面24Aとプラテン15との上下方向Zの距離HGのばらつきの発生を抑制することができる。
【0037】
本実施形態のプリンタ10は、プラテン15に設けられ、かつ、プラテン15に載置された記録媒体5を加熱するヒータ19と、プラテン15またはヒータ19の温度を測定する温度センサ28と、を備え、制御装置70は、ヒータ19に電気信号を供給してヒータ19の温度を制御するヒータ制御部76と、温度センサ28によって測定されたプラテン15またはヒータ19の温度に基づいて、パラメータを補正する補正部78と、を備えている。上記態様によれば、ヒータ19によって記録媒体5に吐出されたインクの乾燥を促進することができる。ここで、ヒータ19が記録媒体5を加熱するときにはプラテン15に熱が伝導されるため、プラテン15は僅かに変形する。しかしながら、制御装置70の補正部78は、温度センサ28によって測定されたプラテン15またはヒータ19の温度に基づいてより精度よくパラメータを補正することができるため、ヒータ19を用いた場合であってもノズル面24Aとプラテン15との上下方向Zの距離HGのばらつきの発生をより抑制することができる。
【0038】
本実施形態の組み立て方法は、パラメータを測定すること、測定されたパラメータを記憶部72に記憶させること、を含む。上記態様によれば、プリンタ10を組み立てる際にパラメータを測定し、そのパラメータを記憶部72に記憶させるため、より精度よくノズル面24Aとプラテン15との上下方向Zの距離HGのばらつきの発生を抑制することができる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0040】
上述した実施形態では、昇降機構25は、キャリッジ22を昇降させることによってインクヘッド24を昇降させていたが、これに限定されない。昇降機構25は、インクヘッド24を直接昇降させてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、昇降機構25は、駆動モータ25Mを用いてキャリッジ22を昇降させていたが、これに限定されない。昇降機構25は、例えば、ソレノイドを用いてキャリッジ22を昇降させてもよい。この場合、ソレノイドの供給する電圧を適宜調整することにより、精度よくキャリッジ22の上下方向Zの位置を調整することができる。
【0042】
上述した実施形態では、プリンタ10は、記録媒体5が載置されるプラテン15を備え、記録媒体5はグリットローラ36によって副走査方向Xに搬送されるように構成されていたがこれに限定されない。例えば、プリンタ10は、いわゆるフラットベッドタイプのプリンタであってもよい。即ち、プリンタ10は、記録媒体5を主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動可能なテーブルを備えていてもよい。また、プリンタ10は、いわゆるガントリータイプのプリンタであってもよい。即ち、プリンタ10は、記録媒体5が載置されたテーブルに対して、キャリッジ22が主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動可能な構成であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
5 記録媒体
10 プリンタ(インクジェットプリンタ)
15 プラテン
18 ガイドレール
19 ヒータ
20 インクヘッドユニット
21 キャリッジベース
22 キャリッジ
24 インクヘッド
24A ノズル面
25 昇降機構
25M 駆動モータ
28 温度センサ
70 制御装置
72 記憶部
74 昇降制御部
76 ヒータ制御部
78 補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6