(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176592
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】X線診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
A61B6/00 300Z
A61B6/00 300D
A61B6/00 300X
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088951
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林原 弘道
(72)【発明者】
【氏名】粥川 陽介
(72)【発明者】
【氏名】菅野 光宣
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093CA08
4C093EC16
4C093EC56
4C093FA53
4C093FA54
4C093FA55
(57)【要約】
【課題】撮影装置の移動に伴うCアームの振動を抑制すること。
【解決手段】実施形態に係るX線診断装置は、床旋回アームと、Cアームと、電磁石と、磁石と、電流制御部とを備える。床旋回アームは、床に支持される。Cアームは、床旋回アームに支持され、X線照射部及びX線検出器を保持する。電磁石は、床旋回アームに設けられる。磁石は、電磁石に対向する床下の位置に設けられる。電流制御部は、電磁石に流す電流を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床に支持される床旋回アームと、
前記床旋回アームに支持され、X線照射部及びX線検出器を保持するCアームと、
前記床旋回アームに設けられる電磁石と、
前記電磁石に対向する床下の位置に設けられる磁石と、
前記電磁石に流す電流を制御する電流制御部と、
を備えるX線診断装置。
【請求項2】
前記電磁石は第1の電磁石であり、前記磁石は第2の電磁石である、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記床旋回アームの振動情報を取得する情報取得部、
をさらに備え、
前記電流制御部は、前記情報取得部によって取得された前記床旋回アームの鉛直方向又は旋回方向の振動を相殺するように前記電磁石に流す電流の向きを制御する、
請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記床旋回アームの振動情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部によって取得された前記床旋回アームの振動の相殺振動に対応する前記電磁石に流す電流値を取得する電流値取得部と、
をさらに備え、
前記電流制御部は、前記電流値取得部によって取得された電流値に従って、前記電磁石に流す電流を制御する、
請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記床旋回アームと、前記Cアームとを備える撮影装置の移動前の位置と移動後の位置との組に基づいて、前記床旋回アームの振動の相殺振動に対応する前記電磁石に流す電流値変動を生成する学習済みモデルに対して、前記撮影装置の移動前の位置と移動後の位置との組を入力することで、前記電磁石に流す電流値変動を取得する電流値取得部
をさらに備え、
前記電流制御部は、前記電流値取得部によって取得された電流値変動に従って、前記電磁石に流す電流を制御する、
請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記電磁石と前記磁石はいずれも複数である、
請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記床旋回アームに設けられた前記電磁石の個数は、対向する位置の前記磁石の個数よりも多く配置される、
請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記床旋回アームのねじれ情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部によって取得された前記床旋回アームのねじれの相殺ねじれに対応する前記電磁石に流す電流値を取得する電流値取得部と、
をさらに備え、
前記電流制御部は、前記電流値取得部によって取得された電流値に従って、前記電磁石に流す電流を制御する、
請求項7に記載のX線診断装置。
【請求項9】
床に支持される床旋回アームと、
前記床旋回アームに支持され、X線照射部及びX線検出器を保持するCアームと、
床下に設けられる電磁石と、
前記電磁石に対向する前記床旋回アームの位置に設けられる磁石と、
前記電磁石に流す電流を制御する電流制御部と、
を備えるX線診断装置。
【請求項10】
天井レールを走行する台車と、
前記台車に支持される鉛直支持部と、
前記鉛直支持部に支持され、X線照射部及びX線検出器を保持するCアームと、
前記鉛直支持部に設けられる電磁石と、
前記電磁石に対向する前記台車の位置に設けられる磁石と、
前記電磁石に流す電流を制御する電流制御部と、
を備えるX線診断装置。
【請求項11】
天井レールを走行する台車と、
前記台車に支持される鉛直支持部と、
前記鉛直支持部に支持され、X線照射部及びX線検出器を保持するCアームと、
前記台車に設けられる電磁石と、
前記電磁石に対向する天井の位置に設けられる磁石と、
前記電磁石に流す電流を制御する電流制御部と、
を備えるX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置として、C型のアーム(以下、「Cアーム」と呼ぶ)を天井から吊下げ支持した構造の撮影装置を備えるX線診断装置が知られている。この吊下げ式の撮影装置は、Cアームに、被検体にX線を照射するX線照射部と、当該X線を検出してX線画像データを生成するX線検出部とを対向配置する。そして、Cアームは、吊下げ機構を介して天井から伸縮自在に支持される。通常、Cアームは、吊下げ機構に対して、水平方向の軸を回転軸として回転したり(回転動)、Cアームの円弧に沿ってスライドしたり(円弧動)するように移動される。
【0003】
また、X線診断装置として、Cアームを、床に支持される床旋回アームに支持した構造の撮影装置を備えるX線診断装置も知られている。この床旋回式のX線診断装置もまた、Cアームに、X線照射部とX線検出部とを対向配置する。そして、Cアームは、床旋回アームを介して鉛直軸を中心に旋回することで移動される。また、Cアームは、床旋回アームに対して、水平方向の軸を回転軸として回転したり、Cアームの円弧に沿ってスライドしたりするように移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、撮影装置の移動に伴うCアームの振動を抑制することである。ただし、本明細書等に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を、本明細書等に開示の実施形態が解決する他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るX線診断装置は、床旋回アームと、Cアームと、電磁石と、磁石と、電流制御部とを備える。床旋回アームは、床に支持される。Cアームは、床旋回アームに支持され、X線照射部及びX線検出器を保持する。電磁石は、床旋回アームに設けられる。磁石は、電磁石に対向する床下の位置に設けられる。電流制御部は、電磁石に流す電流を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るX線診断装置の構成を示す概略図。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るX線診断装置に備えられる撮影装置のアーム側磁石とガイド磁石の配置について説明するための図。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るX線診断装置の機能を示すブロック図。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るX線診断装置に備えられるアーム側磁石に流す電流の向きによる床旋回アームの作用を示す側面図。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るX線診断装置に備えられるアーム側磁石に流す電流の大きさによる床旋回アームの作用を示す側面図。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るX線診断装置の動作をフローチャートとして示す図。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るX線診断装置の第1変形例における構成を示す概略図。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係るX線診断装置の第1変形例における機能を示すブロック図。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係るX線診断装置の第1変形例において、学習時におけるデータフローの一例を示す説明図。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係るX線診断装置の第1変形例において、運用時におけるデータフローの一例を示す説明図。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係るX線診断装置の第2変形例に備えられるアーム側磁石に流す電流の向きによる床旋回アームの作用を示す側面図。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係るX線診断装置の第3変形例において、アーム側磁石に流す電流の向きによる床旋回アームの作用を説明するための側面図。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係るX線診断装置の構成を示す概略図。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係るX線診断装置に備えられる撮影装置のガイド磁石の配置について説明するための図。
【
図15】
図15は、第3実施形態に係るX線診断装置の構成を示す概略図。
【
図16】
図16は、第3実施形態に係るX線診断装置に備えられる撮影装置のガイド磁石の配置について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、X線診断装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
実施形態に係るX線診断装置は、撮影装置と画像処理装置を備え、X線撮影を行う。X線撮影は、X線の照射方法により「撮影」と「透視」に大別される。「撮影」は、比較的高い管電流にてX線を照射する。一方で、「透視」は、比較的低い管電流にてX線を照射する。また、「透視」は、連続透視及びパルス透視に大別される。パルス透視とは、連続透視と異なり、X線のパルスが断続的に繰り返し照射される透視方法を意味する。パルス透視によれば、連続透視に比べ、画像の連続性(フレームレート)がやや劣るが患者に対する被ばく線量を抑えることができる。本明細書で使用される「X線撮影」は、「撮影」と「透視」とのうち少なくとも一方を含むものとする。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るX線診断装置の構成を示す概略図である。
【0011】
図1は、X線診断装置1のうち、第1実施形態に係る床旋回式のX線診断装置1Aを示す。床旋回式のX線診断装置1Aは、撮影装置10Aと、寝台装置20と、画像処理装置(例えば、コンソール)30とを備える。撮影装置10Aと、寝台装置20とは、検査室(「血管造影撮影室」、「カテーテル室」とも呼ばれる)内に設置される。一方で、画像処理装置30は、検査室に隣接する制御室に設置される。
【0012】
撮影装置10Aは、床旋回アーム11と、鉛直支持部12と、Cアーム軸回転部13と、Cアーム円弧回転部14と、Cアーム15と、X線照射部16と、X線検出部17と、センサSとを設ける。
【0013】
床旋回アーム11は、床面に支持され、y軸に平行な軸D1を中心として旋回可能である。床旋回アーム11は、画像処理装置30による制御又は手動操作によって、軸D1を中心とする移動、つまり、旋回動を行うことができる。鉛直支持部12は、床旋回アーム11に支持される。
【0014】
Cアーム軸回転部13は、鉛直支持部12に支持され、xz平面上の軸D2(
図1ではx軸に平行な軸を例示)を中心として回転可能である。Cアーム軸回転部13は、画像処理装置30による制御又は手動操作によって、軸D2を中心とする移動、つまり、回転動を行うことができる。
【0015】
Cアーム円弧回転部14は、Cアーム軸回転部13に支持される。Cアーム15は、Cアーム円弧回転部14によって支持され、Cアーム15の軸方向(すなわち、円周方向)に沿ってスライド可能である。Cアーム円弧回転部14は、画像処理装置30による制御又は手動操作によって、Cアーム15の軸方向に沿った移動、つまり、円弧動を行うことができる。また、Cアーム15は、X線照射部16とX線検出部17とを、患者Pを中心に対向配置させる。
【0016】
X線照射部16は、Cアーム15の一端に保持される。X線照射部16は、画像処理装置30による制御又は手動操作によって、X線焦点とX線検出器の中心とを結ぶ方向(SID(Source Image Distance)方向)に沿って動作、すなわち、前後動作を行うことができる。
【0017】
X線照射部16は、X線管などのX線源(図示省略)と、可動絞り装置(図示省略)とを設ける。X線管は、高電圧発生装置(図示省略)からの高電圧電力の供給を受けてX線を発生する。可動絞り装置は、画像処理装置30による制御によって、X線管のX線照射口で、X線を遮蔽する物質から構成された絞り羽根を移動可能に支持する。なお、X線管の前面に、X線管によって発生されたX線の線質を調整する線質調整フィルタ(図示省略)を備えてもよい。
【0018】
X線検出部17は、Cアーム15の他端に、X線照射部16に対向するように保持される。X線検出部17は、画像処理装置30による制御又は手動操作によって、SID方向に沿って動作、すなわち、前後動作を行うことができる。また、X線検出部17は、画像処理装置30による制御又は手動操作によって、SID方向を中心とした回転方向に沿って移動、つまり、回転動を行うことができる。
【0019】
X線検出部17は、図示しないFPD(平面検出器:Flat Panel Detector)と、A/D(Analog to Digital)変換回路とを備える。FPDは、二次元に配列された複数の検出素子を有する。FPDの各検出素子間は、走査線と信号線とが直交するように配設される。なお、FPDの前面に、グリッド(図示省略)が備えられてもよい。グリッドは、FPDに入射する散乱線を吸収してX線画像のコントラストを改善するために、X線吸収の大きい鉛等によって形成されるグリッド板と透過しやすいアルミニウムや木材等とが交互に配置されて成る。A/D変換回路は、FPDから出力される時系列的なアナログ信号(ビデオ信号)の投影データをデジタル信号に変換し、画像処理装置30に出力する。
【0020】
なお、X線検出部17は、I.I.(Image Intensifier)-TV系であってもよい。I.I.-TV系では、患者Pを透過したX線及び直接入射されるX線を可視光に変換し、さらに、光-電子-光変換の過程で輝度の倍増を行なって感度のよい投影データを形成させ、CCD(Charge Coupled Device)撮影素子を用いて光学的な投影データを電気信号に変換する。
【0021】
寝台装置20は、患者Pを載置可能な天板21を備える。天板21は、画像処理装置30による制御の下、x軸方向に沿って動作、すなわち、左右方向へのスライドを行うことができる。天板21は、画像処理装置30による制御の下、y軸方向に沿って動作、すなわち、昇降方向へのスライドを行うことができる。天板21は、画像処理装置30による制御の下、z軸方向に沿って動作、すなわち、頭足方向へのスライドを行うことができる。また、天板21は、画像処理装置30による制御の下、ローリング動作や、チルト動作を行うことも可能である。
【0022】
画像処理装置30は、コンピュータをベースとして構成されており、X線診断装置1A全体の動作制御や、撮影装置10Aによって取得されたX線画像に関する画像処理等を行なう装置である。画像処理装置30は、処理回路31と、メモリ32と、X線画像生成回路33と、X線画像処理回路34と、ディスプレイ36と、入力インターフェース35とを有する。
【0023】
処理回路31は、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、又はGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサの他、ASIC、及び、プログラマブル論理デバイス等によって構成される。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。
【0024】
また、処理回路31は、単一の回路によって構成されてもよいし、複数の独立した回路要素の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、メモリ32は回路要素ごとに個別に設けられてもよいし、単一のメモリ32が複数の回路要素の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。なお、処理回路31は、処理部の一例である。
【0025】
メモリ32は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって構成される。メモリ32は、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)等の可搬型メディアによって構成されてもよい。メモリ32は、処理回路31において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータを記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ28への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェース35によって行うことができるGUI(Graphical User Interface)を含めることもできる。なお、メモリ32は、記憶部の一例である。
【0026】
X線画像生成回路33は、処理回路31の制御によって、X線検出部17から出力された投影データに対して対数変換処理(LOG処理)行なって必要に応じて加算処理して、X線画像のデータを生成する。X線画像生成回路33は、X線画像生成部の一例である。
【0027】
X線画像処理回路34は、処理回路31の制御によって、X線画像生成回路33によって生成されたX線画像に対して画像処理を施す。画像処理としては、データに対する拡大/階調/空間フィルタ処理や、時系列に蓄積されたデータの最小値/最大値トレース処理、及びノイズを除去するための加算処理などが挙げられる。なお、X線画像処理回路34による画像処理後のデータは、ディスプレイ36に出力されると共に、メモリ32に記憶される。X線画像処理回路34は、X線画像処理部の一例である。
【0028】
入力インターフェース35は、操作者によって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、トラックボール、スイッチ、マウス、キーボード、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力デバイス、及び、音声入力デバイス等によって実現される。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路はその操作に応じた信号を生成して処理回路31に出力する。なお、入力インターフェース35は、入力部の一例である。
【0029】
ディスプレイ36は、例えば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等の一般的な表示出力装置により構成される。ディスプレイ36は、処理回路31の制御に従って各種情報を表示する。なお、ディスプレイ36は、表示部の一例である。
【0030】
また、
図1において、撮影装置10Aが備えるCアーム構造は、X線照射部16が天板21の下方に位置するアンダーテーブルの場合を示す。しかしながらその場合に限定されるものではなく、X線照射部16が天板21の上方に位置するオーバーテーブルの場合であってもよい。また、Cアーム15には、Ωアームが組み合わされてもよい。
【0031】
撮影装置10Aは、床旋回アーム11にアーム側磁石111を設ける。アーム側磁石111は、磁性材料の芯のまわりに巻かれたコイルを通電することによって一時的に磁力を発生させる電磁石である。アーム側磁石111に流れる電流の向きを変えることにより、アーム側磁石111をS極又はN極の極性とすることができる。また、アーム側磁石111に流れる電流の大きさを変えることにより、磁力の強さを替えることができる。
【0032】
一方で、撮影装置10Aは、アーム側磁石111に対向する床面にガイド磁石112を設ける。ガイド磁石112は、電磁石、又は、永久に一定の磁力を発生させ続ける永久磁石である。ガイド磁石112が電磁石である場合、アーム側磁石111は第1の電磁石であり、ガイド磁石112は第2の電磁石となる。なお、アーム側磁石111が永久磁石である一方で、ガイド磁石112が電磁石であってもよい。
図2を用いて、撮影装置10Aのアーム側磁石111とガイド磁石112の配置について説明する。
【0033】
図2(A)は、アーム側磁石111の配置を示す斜視図である。また、
図2(B)は、ガイド磁石112の配置を示す上面図である。床旋回アーム11は、旋回軸D1を中心として旋回する。
図2(A)に示すように、床旋回アーム11の旋回軸D1側は床に接している一方で、床旋回アーム11の回転円周側(すなわち、ガイド磁石112に対向する側)は床との間には隙間が設けられる。アーム側磁石111は、床旋回アーム11の床との隙間に、円周に沿って複数個設けられる。
【0034】
図2(B)に示すように、ガイド磁石112は、床旋回アーム11の床に対する旋回動に応じたアーム側磁石111の軌道R1に対向する床下の位置に複数個埋め込まれる。軌道R1に対向する床下の位置にガイド磁石112を複数個埋め込むことで、床旋回アーム11が軸D1を中心とする旋回方向のどの角度に位置していても、後述する吸着力又は反発力を発生させることができる。なお、床旋回アーム11の長軸方向をu軸方向と定義し、u軸方向とy軸方向とに直交する方向をv軸方向と定義する。
図2(A),(B)において、xyz座標系におけるx軸がu軸と平行でありz軸がv軸と平行な場合について図示するが、床旋回アーム11が床に対して旋回するとxz平面においてu軸とv軸は回転する。
【0035】
図1の説明に戻って、センサSは、床旋回アーム11に取り付けられる。センサSは、例えば、3次元空間における3軸の加速度を検知する3軸加速度センサであり、床旋回アーム11、つまり、撮影装置10Aの振動情報(振動の振幅と位相と周波数)を検知してデジタルデータとして画像処理装置30に出力する。
【0036】
続いて、床旋回式のX線診断装置1Aの機能について
図3を用いて説明する。
図3は、床旋回式のX線診断装置1Aの機能を示すブロック図である。
【0037】
画像処理装置30の処理回路31は、メモリ32に記憶された、又は、処理回路31内に直接組み込まれたコンピュータプログラムを読み出して実行することで、
図2に示すように、X線撮影機能F1と、移動指示検知機能F2と、情報取得機能F3と、電流値取得機能F4と、電流制御機能F5とを実現する。以下、機能F1~F5がコンピュータプログラムの実行によりソフトウェア的に機能する場合を例に挙げて説明するが、機能F1~F5の全部又は一部は、ASICなどの回路により実現されてもよい。
【0038】
X線撮影機能F1は、検査オーダに含まれる撮影の目的に応じて、患者Pに対する撮影装置10Aの位置合わせを行う機能と、X線のばく射スイッチの押圧に応じてX線撮影を実行する機能と、X線撮影によりX線画像処理回路34が生成したX線画像データをディスプレイ36(又は、検査室内のディスプレイ)に表示させる機能とを含む。なお、患者Pに対する撮影装置10Aの位置合わせは、Cアーム15の回転動及び円弧動と、床旋回アーム11の旋回と、天板21のスライド動などによる位置合せである。
【0039】
ここで、X線撮影中の撮影装置10Aの移動、例えば、床旋回アーム11の旋回動や、Cアーム15の回転動や、Cアーム15の円弧動などに伴うCアーム15の振動が画質低下に繋がるため、振動が収まってからX線撮影を行うなどの対応が取られているケースがある。しかし、その場合、X線撮影に要する時間が長くなってしまい患者P及び操作者(例えば、放射線技師)の負担が大きいという問題がある。その問題解決の一つの方法として、Cアームから突っ張り棒を出して床面に固定し、Cアームの移動に伴う振動を抑制する方法がある。しかしその場合、床面にケーブルなどが這っていると突っ張り棒がケーブルを踏んでしまったり、床面に液体等が飛散していると突っ張り棒に付着して周囲を汚染してしまったりといった新たな問題が生じる。
【0040】
そこで、X線診断装置1Aは、Cアームに突っ張り棒を備えることなく効果的にCアーム15の振動を低減することを目的として磁石111,112を備えるとともに、後述する機能F2~F5を備えるものとする。
【0041】
移動指示検知機能F2は、X線撮影機能F1によるX線撮影中に撮影装置10Aの移動指示を検知する機能を含む。例えば、撮影装置10Aの移動は、床旋回アーム11の旋回動、Cアーム15の回転動、Cアーム15の円弧動などを含む。
【0042】
情報取得機能F3は、移動指示検知機能F2によりCアーム15の撮影装置10Aの移動指示を検知すると、センサSから床旋回アーム11の振動情報を取得する機能を含む。例えば、情報取得機能F3は、y軸方向やv軸方向(
図2に図示)の振動情報を取得する。
【0043】
電流値取得機能F4は、情報取得機能F3によって取得された床旋回アーム11の振動の相殺振動に対応するアーム側磁石111に流す電流値を取得(算出)する機能を含む。なお、アーム側磁石111が複数設けられる場合は、複数のアーム側磁石111のそれぞれについて電流値を取得する。
【0044】
電流制御機能F5は、電流値取得機能F4によって取得された電流値に従って、アーム側磁石111に流す電流を制御する機能を含む。電流制御機能F5の電流制御による床旋回アーム11、つまり、撮影装置10Aの作用について
図4を用いて説明する。
【0045】
図4(A),(B)は、アーム側磁石111に流す電流の向きによる床旋回アーム11の作用を説明するための側面図である。
図4(A),(B)は、床旋回アーム11の下部に設けられる2個のアーム側磁石111(111A,111B)と、2個のアーム側磁石111に対向する位置に設けられる2個のガイド磁石112(112A,112B)とを示す。また、
図4(C)は、アーム側磁石111とガイド磁石112とが無い従来技術の場合における床旋回アーム11の振動の時間変化をグラフとして示す。
【0046】
図4(C)のタイミングt1において、従来技術では、床旋回アーム11はy軸正方向に変位することになる。そこで、電流制御機能F5は、タイミングt1において、電磁石であるアーム側磁石111A,111Bに、ガイド磁石112A,112Bと反極となるような向きの電流を流す。その場合、
図4(A)に示すように、アーム側磁石111Aとガイド磁石112Aとの間と、アーム側磁石111Bとガイド磁石112Bとの間とにそれぞれy軸負方向の吸着力(引力)が発生する。吸着力の向きは、
図4(A)において矢印の向きで示す。それにより、床旋回アーム11のy軸正方向の変位を相殺することができる。
【0047】
また、
図4(C)のタイミングt2において、従来技術では、床旋回アーム11はy軸正方向に変位することになる。そこで、電流制御機能F5は、タイミングt2において、電磁石であるアーム側磁石111A,111Bに、ガイド磁石112A,112Bと同極となるような向きの電流を流す。その場合、
図4(B)に示すように、アーム側磁石111Aとガイド磁石112Aとの間と、アーム側磁石111Bとガイド磁石112Bとの間とにそれぞれy軸正方向の反発力(斥力)が発生する。反発力の向きは、
図4(B)において矢印の向きで示す。それにより、床旋回アーム11のy軸負方向の変位を相殺することができる。
【0048】
さらに、
図5(A)~(C)は、アーム側磁石111に流す電流の大きさによる床旋回アーム11の作用を説明するための側面図である。
図5(A)~(C)は、床旋回アーム11の下部に設けられる2個のアーム側磁石111(111A,111B)と、2個のアーム側磁石111に対向する位置に設けられる2個のガイド磁石112(112A,112B)とを示す。また、
図5(D)は、アーム側磁石111とガイド磁石112とが無い従来技術の場合における床旋回アーム11の振動の時間変化をグラフとして示す。
【0049】
図5(D)のタイミングt3において、従来技術では、床旋回アーム11はy軸正方向に小さく変位することになる。そこで、電流制御機能F5は、タイミングt3において、電磁石であるアーム側磁石111A,111Bに、ガイド磁石112A,112Bと反極となるような向きの小さな電流を流す(
図5(A)に図示)。それにより、床旋回アーム11のy軸負方向の小さい変位を相殺することができる。
【0050】
また、
図5(D)のタイミングt4において、従来技術では、床旋回アーム11はy軸正方向に中程度に変位することになる。そこで、電流制御機能F5は、タイミングt4において、電磁石であるアーム側磁石111A,111Bに、ガイド磁石112A,112Bと反極となるような向きの中程度の電流を流す(
図5(B)に図示)。それにより、床旋回アーム11のy軸負方向の中程度の変位を相殺することができる。
【0051】
また、
図5(D)のタイミングt5において、従来技術では、床旋回アーム11はy軸正方向に大きく変位することになる。そこで、電流制御機能F5は、タイミングt5において、電磁石であるアーム側磁石111A,111Bに、ガイド磁石112A,112Bと反極となるような向きの大きな電流を流す(
図5(C)に図示)。それにより、床旋回アーム11のy軸負方向の大きい変位を相殺することができる。
【0052】
このように、電流制御機能F5は、電磁石であるアーム側磁石111A,111Bに、床旋回アーム11の振動の振幅に応じた大きさの電流を逐次流すことで、
図5に示すように、アーム側磁石111Aとガイド磁石112Aとの間と、アーム側磁石111Bとガイド磁石112Bとの間とにそれぞれy軸方向の吸着力が発生する。吸着力の大きさは、
図5(A)~(C)において矢印の長さで示す。
【0053】
図4と
図5を用いて説明したように、アーム側磁石111A,111Bに流れる電流の向きと大きさとを制御することで、撮影装置10Aの見かけの剛性が大きくなる作用を生む。撮影装置10Aの剛性が高くなると、次の式(1)より同一荷重に対しy軸方向の変位量が少なくなる。これにより、Cアーム15のy軸方向の振動を抑制することができる。なお、次の式(1)において、「F」は荷重であり、「K」は剛性であり、xは、変位量である。
F=Kx …(1)
【0054】
続いて、床旋回式のX線診断装置1Aの動作について
図6を用いて説明する。
図6は、床旋回式のX線診断装置1Aの動作をフローチャートとして示す図である。
図6において、「ST」に数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0055】
床旋回式のX線診断装置1AのX線撮影機能F1は、検査オーダに含まれる撮影の目的に応じて、天板21に載置された患者Pに対する撮影装置10Aの位置合わせを行うことで、X線撮影の準備を行う(ステップST1)。
【0056】
X線撮影機能F1は、X線のばく射スイッチの押圧に応じて患者PにX線を照射し、X線撮影を開始させる(ステップST2)。ステップST2により開始されたX線撮影によりX線画像処理回路34が生成したX線画像データをディスプレイ36(又は、検査室内のディスプレイ)に表示させる。
【0057】
移動指示検知機能F2は、ステップST2によって開始されたX線撮影中に撮影装置10Aの移動の開始指示(例えば、撮影装置10Aの移動後の位置の指定)を検知したか否かを判断する(ステップST3)。例えば、撮影装置10Aの移動は、床旋回アーム11の旋回動、Cアーム15の回転動、Cアーム15の円弧動などを含む。ステップST3の判断にてNO、つまり、X線撮影中に撮影装置10Aの移動の開始指示を検知していないと判断される場合、ステップST9に進む。
【0058】
一方で、ステップST3の判断にてYES、つまり、X線撮影中に撮影装置10Aの移動の開始指示を検知したと判断される場合、X線撮影機能F1は、移動の内容に従い撮影装置10Aを移動させるとともに(ステップST4)、情報取得機能F3は、センサSから床旋回アーム11の振動情報を取得する(ステップST5)。
【0059】
電流値取得機能F4は、ステップST5によって取得された床旋回アーム11の振動の相殺振動に対応するアーム側磁石111に流す電流値を取得(算出)する(ステップST6)。電流制御機能F5は、ステップST6によって取得された電流値に従って、アーム側磁石111に流す電流を制御する(ステップST7)。
【0060】
移動指示検知機能F2は、ステップST3によって指示された位置まで撮影装置10Aが移動したか、つまり、撮影装置10Aの移動を終了するか否かを判断する(ステップST8)。ステップST8の判断にてNO、つまり、X線撮影中に撮影装置10Aの移動を終了しないと判断される場合、ステップST4に戻り、撮影装置10Aの移動と床旋回アーム11の振動情報の取得とを継続する。
【0061】
一方で、ステップST8の判断にてYES、つまり、X線撮影中に撮影装置10Aの移動を終了すると判断される場合、X線撮影機能F1は、ステップST1によって開始されたX線撮影を終了するか否かを判断する(ステップST9)。ステップST9の判断にてNO、つまり、X線撮影を継続すると判断される場合、ステップST3の判断に戻る。
【0062】
一方で、ステップST9の判断にてYES、つまり、X線撮影を終了すると判断される場合、X線撮影機能F1は、患者PへのX線の照射を終了してX線撮影を終了させる。
【0063】
以上説明したように、床旋回式のX線診断装置1Aによれば、センサSからの振動情報に基づいて、撮影装置10Aの移動に伴い振動する床旋回アーム11に相殺振動を与えることができるので、撮影装置10Aの移動に伴うCアーム15のy軸方向の振動を抑制することができる。
【0064】
(第1変形例)
上述では、センサSを用いて床旋回アーム11の振動をリアルタイムで検知しながら床旋回アーム11の振動を相殺する相殺振動を与えるものであるが、その場合に限定されるものではない。例えば、メモリ32に学習済みモデル(又は、シミュレーションデータ)を記憶させておき、電流値取得機能Fは、記憶された情報に基づいて、床旋回アーム11の振動の相殺振動に対応する電流値変動を取得してもよい。その場合について、
図7~
図10を用いて説明する。
【0065】
図7は、第1実施形態に係るX線診断装置の第1変形例における構成を示す概略図である。
【0066】
図7は、X線診断装置1のうち、第1実施形態に係る床旋回式のX線診断装置1Aの第1変形例を示す。床旋回式のX線診断装置1Aは、撮影装置10Aと、寝台装置20と、画像処理装置30とを備える。
【0067】
撮影装置10Aは、床旋回アーム11と、鉛直支持部12と、Cアーム軸回転部13と、Cアーム円弧回転部14と、Cアーム15と、X線照射部16と、X線検出部17とを設ける。第1変形例において、撮影装置10Aは、センサS(
図1に図示)を設ける必要はない。
【0068】
なお、
図7において、
図1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0069】
続いて、床旋回式のX線診断装置1Aの第1変形例の機能について
図8を用いて説明する。
図8は、床旋回式のX線診断装置1Aの第1変形例における機能を示すブロック図である。
【0070】
画像処理装置30の処理回路31は、メモリ32に記憶された、又は、処理回路31内に直接組み込まれたコンピュータプログラムを読み出して実行することで、
図8に示すように、X線撮影機能F1と、移動指示検知機能F2と、電流制御機能F5と、電流値取得機能F6とを実現する。以下、機能F1,F2,F5,F6がコンピュータプログラムの実行によりソフトウェア的に機能する場合を例に挙げて説明するが、機能F1,F2,F5,F6の全部又は一部は、ASICなどの回路により実現されてもよい。
【0071】
電流値取得機能F6は、移動指示検知機能F2による移動指示に基づいて、メモリ32に記憶された学習済みモデルなどの情報から、床旋回アーム11の振動の相殺振動に対応するアーム側磁石111に流す電流値を取得する機能を含む。なお、アーム側磁石111が複数設けられる場合は、複数のアーム側磁石111のそれぞれについて電流値を取得する。
【0072】
ここで、電流値取得機能F6は、撮影装置10Aの移動前の位置と移動後の位置との組に基づいて、床旋回アーム11の振動の相殺振動に対応するアーム側磁石111に流す電流値変動を取得する処理を行う。この処理には、例えば、撮影装置10Aの移動前及び移動後の位置の組とアーム側磁石111に流す電流値変動とを関連付けたルックアップテーブル(LUT)が用いられる。また、この処理には、機械学習が用いられる。機械学習としてCNN(畳み込みニューラルネットワーク)や畳み込み深層信念ネットワーク(CDBN:Convolutional Deep Belief Network)等の、多層のニューラルネットワークを用いた深層学習が用いられる。
【0073】
ここでは、電流値取得機能F6がニューラルネットワークNaを含み、深層学習を用いて、撮影装置10Aの移動前の位置と移動後の位置との組に基づいて、電流値変動を取得する場合の例を示す。つまり、電流値取得機能F6は、撮影装置10Aの移動前の位置と移動後の位置との組に基づいて電流値変動を取得するための学習済みモデルに対して、撮影装置10Aの移動前の位置と移動後の位置との組を入力することで、アーム側磁石111に流すべき電流値変動を取得する。
【0074】
図9は、学習時におけるデータフローの一例を示す説明図である。
【0075】
電流値取得機能F6は、トレーニングデータが多数入力されて学習を行うことにより、パラメータデータPaを逐次的に更新する。トレーニングデータは、トレーニング入力データとしての撮影装置10Aの移動前の位置と移動後の位置の組G1,G2,G3,…と、アーム側磁石111に流す電流値変動H1,H2,H3,…との組みからなる。撮影装置10Aの移動前の位置と移動後の位置の組G1,G2,G3,…は、トレーニング入力データ群Gを構成する。撮影装置10Aの移動前の位置と移動後の位置の組G1,G2,G3,…の位置は、床旋回アーム11の旋回動の方向における位置(角度)や、Cアーム15の回転動の方向における位置(角度)や、Cアーム15の円弧動の方向における位置(角度)などからなる。電流値変動H1,H2,H3,…は、トレーニング出力データ群Hを構成する。電流値変動H1,H2,H3,…はそれぞれ、対応する撮影装置10Aの移動前の位置と移動後の位置の組G1,G2,G3,…に関する電流値変動(又は、振動情報)である。
【0076】
電流値取得機能F6は、トレーニングデータが入力されるごとに、撮影装置10Aの移動前の位置と移動後の位置の組G1,G2,G3,…をニューラルネットワークNaで処理した結果が電流値変動H1,H2,H3,…に近づくようにパラメータデータPaを更新していく、いわゆる学習を行う。一般に、パラメータデータPaの変化割合が閾値以内に収束すると、学習は終了と判断される。以下、学習後のパラメータデータPaを特に学習済みパラメータデータPa´という。
【0077】
図10は、運用時におけるデータフローの一例を示す説明図である。
【0078】
運用時には、電流値取得機能F6は、撮影装置10Aの移動前の位置と移動後の位置の組G´を入力し、学習済みパラメータデータPa´を用いて、アーム側磁石111に流す電流値変動を出力する。
【0079】
なお、ニューラルネットワークNaと学習済みパラメータデータPa´は、学習済みモデル31aを構成する。ニューラルネットワークNaは、プログラムの形態でメモリ32に記憶される。学習済みパラメータデータPa´は、メモリ32に記憶されてもよいし、ネットワークを介してX線診断装置1に接続された記憶媒体(図示省略)に記憶されてもよい。この場合、処理回路31のプロセッサにより実現される電流値取得機能F6は、メモリ32から学習済みモデル31aを読み出して実行することで、撮影装置10Aの移動前の位置と移動後の位置の組に基づいて、電流値変動を取得する。なお、学習済みモデル31aは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路によって構築されてもよい。
【0080】
そして、電流制御機能F5は、電流値取得機能F4によって取得された電流値変動に従って、アーム側磁石111に流す電流を制御する。
【0081】
以上説明したように、床旋回式のX線診断装置1Aの第1変形例によれば、予め決定された情報(例えば、学習済みモデル)に基づいて、撮影装置10Aの移動に伴い振動する床旋回アーム11に相殺振動を与えることができるので、撮影装置10Aの移動に伴うCアーム15の振動を抑制することができる。
【0082】
(第2変形例)
上述では、床旋回アーム11の振動を検知して床旋回アーム11の振動を相殺する相殺振動を与えるものであるが、その場合に限定されるものではない。例えば、床旋回アーム11のねじれを検知して床旋回アーム11のねじれを相殺するものであってもよい。その場合について
図11を用いて説明する。
【0083】
図11は、アーム側磁石111に流す電流の向きによる床旋回アーム11の作用を説明するための側面図である。
図11は、床旋回アーム11の下部に設けられる2個のアーム側磁石111(111A,111B)と、2個のアーム側磁石111に対向する位置に設けられる2個のガイド磁石112(112A,112B)とを示す。
【0084】
情報取得機能F3は、センサSから床旋回アーム11のねじれ情報を取得する機能を含む。ここで、センサSは位置センサであり、複数設けられる。情報取得機能F3は、床旋回アーム11に取り付けられた複数の位置センサの位置情報を比較することで、床旋回アーム11のねじれ情報を取得することができる。
【0085】
電流値取得機能F4は、情報取得機能F3によって取得された床旋回アーム11のねじれを相殺する相殺ねじれに対応するアーム側磁石111に流す電流値を取得(算出)する機能を含む。なお、アーム側磁石111が複数設けられる場合は、複数のアーム側磁石111のそれぞれについて電流値を取得する。
【0086】
電流制御機能F5は、電磁石であるアーム側磁石111Aに、ガイド磁石112Aと同極となるような向きの電流を流すとともに、電磁石であるアーム側磁石111Bに、ガイド磁石112Bと反極となるような向きの電流を流す。その場合、
図11に示すように、アーム側磁石111Aとガイド磁石112Aとの間にy軸方向の反発力が発生するとともに、アーム側磁石111Bとガイド磁石112Bとの間にy軸方向の吸引力が発生する。また、電流の向きに加えアーム側磁石111A,111Bに流れる電流の大きさを制御することで、撮影装置10Aの、u軸を中心とする回転方向のねじれを抑制することができる。
【0087】
以上説明したように、床旋回式のX線診断装置1Aの第2変形例によれば、撮影装置10Aのねじれを相殺することができる。
【0088】
(第3変形例)
第3変形例は、y軸方向の振動ではなく、床旋回アーム11の旋回方向(v軸方向)の振動を抑制するものである。
図12は、アーム側磁石111に流す電流の向きによる床旋回アーム11の作用を説明するための側面図である。
図12は、床旋回アーム11の下部に設けられる3個のアーム側磁石111(111A,111B,111C)と、3個のアーム側磁石111に対向する位置に設けられる2個のガイド磁石112(112A,112B)とを示す。つまり、床旋回アーム11に設けられるアーム側磁石111の個数は、対向するガイド磁石112の個数よりも多く配置される。
【0089】
情報取得機能F3は、センサSから床旋回アーム11のv軸方向の振動情報を取得する機能を含む。電流値取得機能F4は、情報取得機能F3によって取得された床旋回アーム11のv軸方向の振動を相殺する相殺振動に対応するアーム側磁石111に流す電流値を取得(算出)する機能を含む。
【0090】
電流制御機能F5は、電磁石である真中のアーム側磁石111Bに、ガイド磁石112Aと同極となるような向き、かつ、ガイド磁石112Bと反極となるような向きの電流を流す(ガイド磁石112Aとガイド磁石112Bとは反極)。その場合、
図12に示すように、アーム側磁石111Bとガイド磁石112Aとの間にv軸正方向の成分を含む反発力が発生するとともに、アーム側磁石111Bとガイド磁石112Bとの間にv軸正方向の成分を含む吸着力が発生する。これにより、床旋回アーム11のv軸正方向の変位を生じる。なお、ガイド磁石112Aとの間でアーム側磁石111Bに発生する反発力のy軸正方向の成分は、ガイド磁石112Bとの間でアーム側磁石111Bに発生する吸着力のy軸負方向の成分でほぼ相殺される。また、電流の向きに加えアーム側磁石111Bに流れる電流の大きさを制御することで、撮影装置10Aの、y軸を中心とする旋回方向の振動を抑制することができる。
【0091】
以上説明したように、床旋回式のX線診断装置1Aの第3変形例によれば、撮影装置10Aの移動に伴うCアーム15のv軸方向の振動を相殺することができる。なお、端のアーム側磁石111A,111Cにそれぞれ所定の向き及び大きさの電流を流すことで、上述したように、床旋回アーム11、つまり、Cアーム15のy軸方向の振動やねじれを相殺することもできる。
【0092】
(第2実施形態)
図13は、X線診断装置1のうち、第2実施形態に係る吊下げ式のX線診断装置1Bを示す。吊下げ式のX線診断装置1Bは、撮影装置10Bと、寝台装置20(図示省略)と、画像処理装置30(図示省略)とを備える。撮影装置10Bは、検査室内に設置される。
【0093】
撮影装置10Aは、台車18と、回転部(図示省略)と、鉛直支持部19と、Cアーム軸回転部13と、Cアーム円弧回転部14と、Cアーム15と、X線照射部16と、X線検出部17と、センサSとを設ける。
【0094】
台車18は、天井レールに支持され、天井レール上を走行可能である。鉛直支持部19は、回転部を介して台車18に支持される。鉛直支持部19は、回転部によりy軸に平行な軸D3を中心として台車18に対して回転可能である。鉛直支持部19は、画像処理装置30による制御又は手動操作によって、軸D3を中心とする移動、つまり、回転動を行うことができる。
【0095】
Cアーム軸回転部13は、鉛直支持部19に支持され、xz平面上の軸D2(
図13ではx軸に平行な軸を例示)を中心として回転可能である。Cアーム軸回転部13は、画像処理装置30による制御又は手動操作によって、軸D2を中心とする移動、つまり、回転動を行うことができる。
【0096】
センサSは、鉛直支持部19に取り付けられる。なお、第1変形例で上述したように、センサSは必須の構成ではない。
【0097】
なお、
図13において、
図1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0098】
図14は、X線診断装置1Bに備えられる撮影装置10Bのガイド磁石112の配置について説明するための図である。
【0099】
図14に示すように、ガイド磁石112は、鉛直支持部19の回転動に応じたアーム側磁石111の軌道R2に対向する台車18の位置に複数個埋め込まれる。軌道R2に対向する台車18の位置にガイド磁石112を複数個埋め込むことで、鉛直支持部19が軸D3を中心とする回転方向のどの角度に位置していても、磁石111,112間に吸着力又は反発力を発生させることができる。なお、鉛直支持部19をxz平面に投影した場合の長軸方向をu軸方向と定義し、u軸方向とy軸方向とに直交する方向をv軸方向と定義する。
図14において、xyz座標系におけるx軸がu軸と平行でありz軸がv軸と平行な場合について図示するが、鉛直支持部19が台車18に対して回転するとxz平面においてu軸とv軸は回転する。
【0100】
なお、吊下げ式のX線診断装置1Bの機能について、
図3に示す床旋回式のX線診断装置1Aの機能と同等であるので、説明を省略する。床旋回式のX線診断装置1Aの床旋回アーム11の振動を、鉛直支持部19の振動に読み替えればよい。また、上述の第1~第3変形例は吊下げ式のX線診断装置1Bに対しても適用することができる。
【0101】
以上説明したように、吊下げ式のX線診断装置1Bによれば、センサSからの振動情報(又は、予め決定された情報)に基づいて、撮影装置10Bの移動に伴い振動する鉛直支持部19に相殺振動を与えることができるので、撮影装置10Bの移動に伴うCアーム15の振動を抑制することができる。
【0102】
(第3実施形態)
図15は、X線診断装置1のうち、第3実施形態に係る吊下げ式のX線診断装置1Cを示す。吊下げ式のX線診断装置1Cは、撮影装置10Cと、寝台装置20(図示省略)と、画像処理装置30(図示省略)とを備える。撮影装置10Cは、検査室内に設置される。
【0103】
撮影装置10Cは、台車18と、鉛直支持部19と、Cアーム軸回転部13と、Cアーム円弧回転部14と、Cアーム15と、X線照射部16と、X線検出部17と、センサSとを設ける。
【0104】
センサSは、台車18に取り付けられる。なお、第1変形例で上述したように、センサSは必須の構成ではない。
【0105】
なお、
図15において、
図1及び
図13と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0106】
図16は、X線診断装置1Cに備えられる撮影装置10Cのガイド磁石112の配置について説明するための図である。
【0107】
図16に示すように、ガイド磁石112は、台車18の走行に応じた台車18の軌道R3に対向する天井の位置に複数個埋め込まれる。軌道R3に対向する天井の位置にガイド磁石112を複数個埋め込むことで、台車18が走行方向のどこに位置していても、磁石111,112間に吸着力又は反発力を発生させることができる。なお、台車18が走行する方向をu軸方向と定義し、u軸方向とy軸方向とに直交する方向をv軸方向と定義する。
図16において、台車18が天井に対して回転しないのでxz平面においてu軸とv軸は回転しない。つまり、xyz座標系におけるx軸がu軸と平行でありz軸がv軸と平行である。
【0108】
なお、吊下げ式のX線診断装置1Cの機能について、
図3に示す床旋回式のX線診断装置1Aの機能と同等であるので、説明を省略する。床旋回式のX線診断装置1Aの床旋回アーム11の振動を、台車18の振動に読み替えればよい。また、上述の第1~第3変形例は吊下げ式のX線診断装置1Cに対しても適用することができる。
【0109】
以上説明したように、吊下げ式のX線診断装置1Cによれば、センサSからの振動情報(又は、予め決定された情報)に基づいて、撮影装置10Cの移動に伴い振動する台車18に相殺振動を与えることができるので、撮影装置10Cの移動に伴うCアーム15の振動を抑制することができる。
【0110】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、撮影装置10Aの移動に伴うCアーム15の振動を抑制することができる。
【0111】
なお、X線撮影機能F1は、X線撮影部の一例である。移動指示検知機能F2は、移動指示検知部の一例である。情報取得機能F3は、情報取得部の一例である。電流値取得機能F4,F6は、電流値取得部の一例である。電流制御機能F5は、電流制御部の一例である。
【0112】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせ、実施形態と1又は複数の第1変形例との組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0113】
1…X線診断装置
1…X線診断装置
1A…床旋回式のX線診断装置
1B,1C…吊下げ式のX線診断装置
10A,10B,10C…撮影装置
11…床旋回アーム
111,111A,111B…アーム側磁石
112,112A,112B…ガイド磁石
12…鉛直支持部
15…Cアーム
30…画像処理装置
31…処理回路
F1…X線撮影機能
F2…移動指示検知機能
F3…情報取得機能
F4,F6…電流値取得機能
F5…電流制御機能