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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176595
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】加工工程監視装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/22 20060101AFI20231206BHJP
   B30B 15/28 20060101ALI20231206BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20231206BHJP
   B30B 15/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G01L5/22
B30B15/28 K
B30B15/28 Q
G01L5/00 L
G01L5/00 101Z
B30B15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088956
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】野尻 尚紀
【テーマコード(参考)】
2F051
4E088
4E089
【Fターム(参考)】
2F051AA11
2F051AB08
4E088JJ04
4E088JJ09
4E089EC01
4E089EE01
4E089FA02
4E089FB10
4E089FC05
4E089GA01
4E089GB05
4E089GC04
(57)【要約】
【課題】センサの個数を増やしたとしても、システム構成の装置数がセンサの個数に比例することなく、同じシステム構成にて各センサが出力する信号を取得できる加工工程監視装置を提供すること。
【解決手段】製造装置による加工工程を監視する加工工程監視装置は、製造装置に取り付けられた複数のセンサと、一つの入力部と複数の出力部を有し、複数のセンサの数と同数である複数のセレクタと、複数のセレクタのそれぞれの複数の出力部の数と同数である複数の信号線と、コントローラと、を備え、複数のセンサのそれぞれは、対応する複数のセレクタの入力部に接続され、コントローラは、複数のセレクタのそれぞれの入力部を、対応する出力部のうちの一端と接続するとともに他端と開放するように選択制御して、複数のセレクタのそれぞれの複数の出力部を、対応する複数の信号線のいずれかにそれぞれ接続する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造装置による加工工程を監視する加工工程監視装置であって、
前記製造装置に取り付けられた複数のセンサと、
前記複数のセンサの数と同じ数だけ設けられた複数のセレクタであって、前記複数のセレクタのそれぞれは、1つの入力部及び複数の出力部を有し、前記1つの入力部に入力された信号を前記複数の出力部のうちの1つから選択的に出力する、複数のセレクタと、
それぞれが、前記複数の出力部のそれぞれと接続された複数の信号線と、
前記複数のセレクタのそれぞれについて、前記入力部と前記複数の出力部のうちの1つとを選択的に接続し、前記入力部と前記複数の出力部の残りとを選択的に開放するよう制御するコントローラと、
を備えることを特徴とする、加工工程監視装置。
【請求項2】
前記複数のセンサのそれぞれは、荷重を測定する
ことを特徴とする請求項1に記載の加工工程監視装置。
【請求項3】
前記複数のセンサのそれぞれは、荷重を表す電圧を発生させるピエゾ素子を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の加工工程監視装置。
【請求項4】
前記複数のセンサのそれぞれは、歪みを測定する
ことを特徴とする請求項1に記載の加工工程監視装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記複数のセレクタそれぞれに対応するレジスタに信号を伝達することによって前記複数のセレクタを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の加工工程監視装置。
【請求項6】
前記レジスタは、シフト動作するようデイジーチェーン接続される
ことを特徴とする請求項5に記載の加工工程監視装置。
【請求項7】
前記複数の信号線は、前記レジスタのデイジーチェーン接続を構成する配線に沿って装置内に配置される
ことを特徴とする請求項6に記載の加工工程監視装置。
【請求項8】
前記複数の信号線と、前記レジスタのデイジーチェーン接続を構成する配線とが、多芯ケーブルをなして装置内に配置される
ことを特徴とする請求項7に記載の加工工程監視装置。
【請求項9】
前記加工工程監視装置は、
センサプレートを備え、
前記センサプレートは、前記複数のセレクタ、前記複数のセレクタ間を接続する前記複数の信号線、および前記レジスタのデイジーチェーン接続を構成する配線を内包する
ことを特徴とする請求項7に記載の加工工程監視装置。
【請求項10】
前記センサプレートは、前記複数のセンサの少なくとも一部を内包する
ことを特徴とする請求項9に記載の加工工程監視装置。
【請求項11】
前記複数のセレクタのそれぞれは、半導体スイッチによって構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の加工工程監視装置。
【請求項12】
前記製造装置は、同一の作業を繰り返すサイクル加工を行い、
前記コントローラは、前記サイクル加工におけるサイクル間の非加工中に前記レジスタのシフト動作を制御する
ことを特徴とする請求項6に記載の加工工程監視装置。
【請求項13】
前記複数のセレクタの出力部の数と、前記複数の信号線の数は2であり、
前記複数のセレクタのそれぞれは、第1信号線と接続される第1出力部および第2信号線と接続される第2出力部を有し、
前記コントローラは、前記複数のセレクタのうちの1つのみを選択し、選択されたセレクタの前記入力部と前記第1出力部とが接続され、他のセレクタの前記入力部と前記第2出力部とが接続されるよう前記複数のセレクタを制御する
ことを特徴とする請求項12に記載の加工工程監視装置。
【請求項14】
前記加工工程監視装置は、
前記複数の信号線それぞれに対応するチャージアンプを備え、
前記チャージアンプは、非加工中には容量素子の電荷をディスチャージし、加工中には電荷をチャージする動作を行うよう前記コントローラによって制御される
ことを特徴とする請求項12に記載の加工工程監視装置。
【請求項15】
前記加工工程監視装置は、
前記複数の信号線それぞれに対応するチャージアンプと、前記チャージアンプの出力を受けて増幅するアンプと、を備え、
前記チャージアンプは、前記コントローラから受信した制御信号に基づいて、非加工中には容量素子の電荷をディスチャージし、加工中には電荷をチャージする動作を行うよう設定され、
前記アンプは、増幅率が前記コントローラによって制御される
ことを特徴とする請求項12に記載の加工工程監視装置。
【請求項16】
前記加工工程監視装置は、
前記複数の信号線それぞれに対応する複数のA/D変換機と、
前記複数のA/D変換機の出力を受けるデータ処理部と、を備え、
前記複数のA/D変換機のそれぞれは、対応する信号線を通じて伝搬するアナログ信号をデジタル信号に変換する
ことを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の加工工程監視装置。
【請求項17】
前記加工工程監視装置は、
前記複数のA/D変換機、および前記コントローラからの信号を受けてデータの送受信を行う第1シリアルインタフェース装置と、
前記データ処理部と前記データの送受信を行う第2シリアルインタフェース装置と、を備え、
前記データは、前記第1シリアルインタフェース装置と前記第2シリアルインタフェース装置との間をシリアル通信によって転送される
ことを特徴とする請求項16に記載の加工工程監視装置。
【請求項18】
前記第1シリアルインタフェース装置は、シリアル通信に用いられるケーブルより電力を受け、前記複数のセンサから前記第1シリアルインタフェース装置までの回路に電力を供給する
ことを特徴とする請求項17に記載の加工工程監視装置。
【請求項19】
前記加工工程監視装置は、
前記複数のセンサから前記第1シリアルインタフェース装置までの回路が、プレス機に取り付けられる金型に設置される
ことを特徴とする請求項18に記載の加工工程監視装置。
【請求項20】
前記加工工程監視装置は、
前記複数のA/D変換機、および前記コントローラからの信号を受けてデータの送受信を行う第1無線送受信部と、
前記データ処理部と前記データの送受信を行う第2無線送受信部とを備え、
前記データは、無線通信によって前記第1無線送受信部と前記第2無線送受信部との間を無線通信によって転送される
ことを特徴とする請求項16に記載の加工工程監視装置。
【請求項21】
前記加工工程監視装置は、
前記複数のセンサから前記第1無線送受信部までの回路が、プレス機に取り付けられる金型に設置される
ことを特徴とする請求項20に記載の加工工程監視装置。
【請求項22】
前記加工工程監視装置は、
前記複数の信号線それぞれに対応する複数のA/D変換機と、
前記複数のA/D変換機の出力を受けるデータ処理部と、を備え、
前記複数のセンサのそれぞれは、荷重を測定し、
前記複数のA/D変換機のそれぞれは、対応する信号線を通じて伝搬するアナログ信号をデジタル信号に変換し、
前記データ処理部は、
全ての前記複数のセンサによって検出された荷重値を合算して波形データを求め、同一の作業を繰り返すサイクル加工における波形の履歴を蓄積して判定処理を行う全荷重判定処理と、
前記複数のセレクタのうちの1つが選択されると、前記複数のセンサのうちの、選択されたセレクタに対応するセンサによって検出された荷重値の波形データを取得して、前記選択されたセレクタに対応するチャネルの波形データとして格納し、前記対応するチャネルの波形の履歴を蓄積して判定処理を行うチャネル荷重判定処理と
を実行することを特徴とする請求項1に記載の加工工程監視装置。
【請求項23】
前記チャネル荷重判定処理は、全荷重判定処理とは異なる方法にて行われる
ことを特徴とする請求項22に記載の加工工程監視装置。
【請求項24】
前記加工工程監視装置は、プレス機に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の加工工程監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工工程の状態を複数の荷重を測定することによって監視する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス加工、射出成形などでは、比較的短いサイクルを繰り返して同一の加工を施す動作を行っている。このような装置に於ける加工の状態を、複数のセンサによってセンシングした時系列データである複数の加工センシングデータを解析することによって、加工状態または異常を判定する方法、従来提案されている。特に、荷重を測定することによって加工状態や異常を判定する方法が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載のプレス製造条件収集システムは、複数の圧力センサが配置されたセンサプレートが設けられ、それら複数のセンサから受信した全ての信号を同時にデジタル化し、データ分析することにより不良事象を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-126823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のプレス製造条件収集システムでは、より詳細な荷重や圧力分布を測定しようとした場合、システム構成が大がかりになるという問題がある。例えば、当該システムは、センサの個数に応じて、センサからのアナログ信号を伝達するためのケーブル、アナログ信号をデジタル化するためのA/D変換機、デジタルデータを処理するためのプロセッサが必要になる。
【0006】
本開示は、センサの個数を増やしたとしても、システム構成の要素数の増加を抑制し、同じシステム構成にて各センサが出力する信号を取得できる加工工程監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の加工工程監視装置は、製造装置による加工工程を監視する加工工程監視装置であって、製造装置に取り付けられた複数のセンサと、複数のセンサの数と同じ数だけ設けられた複数のセレクタであって、複数のセレクタのそれぞれは、1つの入力部及び複数の出力部を有し、1つの入力部に入力された信号を複数の出力部のうちの1つから選択的に出力する、複数のセレクタと、それぞれが、複数の出力部のそれぞれと接続された複数の信号線と、複数のセレクタのそれぞれについて、入力部と複数の出力部のうちの1つとを選択的に接続し、入力部と複数の出力部の残りとを選択的に開放するよう制御するコントローラと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、センサの個数を増やしたとしても、システム構成の要素数の増加を抑制し、同じシステム構成にて各センサが出力する信号を取得できる加工工程監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態1に係る加工工程監視装置の概略を示す図
図2】本開示の実施の形態1に係る加工工程監視装置において荷重を検出する装置の、金型に設置されている部分を示す図
図3】セレクタの回路構成を示す図
図4】デジタル選択信号が、セレクタそれぞれのフリップフロップFFとデイジーチェーン状に接続される状態を示した回路図
図5】信号線群を一組の信号とし、セレクタブロックとの接続を行う部分の回路図
図6】デイジーチェーン状に接続されたセレクタそれぞれの接続状態が、時間が経過するにつれてプレス機が繰り返し動作を行うサイクル毎にどのように変化していくのかを、横軸を時間にして示したチャート図
図7】データ処理部の詳細を示すフロー図
図8】全荷重波形による異常判定を行う例を示す図
図9】個別波形による状態検知を行う例を示す図
図10】実施の形態2にかかる複数のセレクタブロック間が一本の多芯ケーブルにて接続されるブロック図
図11】実施の形態3にかかる荷重センサとセレクタブロックとが一体となったセンサブロック間が接続されるブロック図
図12】実施の形態4にかかる金型がプレス機に設置されている状態を示す図
図13】実施の形態5にかかる金型の構造を示す図
図14】実施の形態6にかかるデジタル化されたデータをシリアルデータ転送するブロック図
図15】実施の形態7にかかるデジタル化されたデータを無線転送するブロック図
図16】従来の金型に荷重センサを取り付けたときの垂直断面の構造を示す図
図17】従来のアナログ信号を、デジタル化してデータ処理を行う回路を示すブロック図
図18】チャージアンプの内部構成を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(従来技術における課題)
まず、従来技術において、より詳細な判定を行うために、センサの個数を増やした場合に、システム構成が大がかりになるという問題があることについて、詳細に説明する。
【0011】
例えば、パンチ、ダイといった工具が組み込まれた金型をプレス機にセットし、金属等の材料を打抜き加工するプレス加工においては、より詳細な状態を把握するためには、プレス機に設置するセンサの個数を増やして、様々な装置構成の状態をモニタリングすることが有効である。プレス機によって荷重を与えることによって加工を施す打抜き加工においては、金型に対する荷重、とりわけ金型の内部の荷重を測定することが重要である。
【0012】
特に、金型内で異常が生じているのかどうかを判断する異常検知だけでなく、パンチ、ダイといった工具の状態を判断する状態検知を行うには、より小さな変化を直接捉える必要がある。より小さな変化を捉えるため、例えばパンチに荷重センサを取り付けることにより、パンチにかかる打抜き荷重を測定する、即ち加工そのものの荷重を測定することが挙げられる。この測定は、工具の摩耗状態といったより詳細な状態を把握することにつながる。
【0013】
しかしながら、全てのパンチに荷重センサを設ける場合、多数のパンチが配置されているような金型では、センサを設置したとしても、センサからの信号を伝えるためのケーブルなどが必要となり、当該ケーブル等を金型内で通す必要がある。これによって、センサの個数に比例したケーブル類を通すための溝などが必要となり、高い剛性を持つことによって高い精度を実現する必要のある金型に、歪み、たわみ等が生じ、加工に必要な位置精度等が保てなくなるという課題がある。
【0014】
図16は、荷重センサを取り付けた従来の金型の垂直断面の構造を示す。図16はより具体的には、金型における全てのパンチに荷重センサを設け、各センサからの信号線を金型外に配線した状態を示す。金型には様々な種類が存在するが、図16は、金型内に設けられている10本のパンチ全てに荷重センサを設けた例を示す。実際の金型は、各部品を固定するためのボルト、ポストなどのガイド類、プレートを押さえつけるスプリング、持ち上げるための機構、又は非加工材に対する位置決めを行うガイド等も必要である。しかし、図16は、構造を簡略化して説明するためにそのような部品を省略して示す。
【0015】
複数のパンチ901はそれぞれ、複数のダイ902のうちの対応するダイ902と対向するように位置し、被加工材911を打抜き加工するように金型内に配置される。パンチ901は、ストリッパプレート903によって、それぞれ対応するダイ902の水平方向(図面上での左右、及び奥行き方向)の位置と合うようにガイドされるとともに、パンチプレート904にてそれぞれ把持される。
【0016】
ダイ902は、それぞれダイプレート905にはめ込まれており、ダイバッキングプレート906の上に固定される。
【0017】
908a、908b、908c、908d、908e、908f、908g、908h、908iおよび908jはピエゾ効果を用いた荷重センサである(以降、総称として荷重センサ908と呼ぶ)。各荷重センサ908は、各パンチ901と、パンチバッキングプレート907との間に設置される。それによって、各荷重センサ908は、パンチバッキングプレート907と個々のパンチ901との間にかかる荷重、即ち加工時における被加工材911を打ち抜く個々のパンチ901の荷重を測定できる。ピエゾ効果を用いた荷重センサは、受ける荷重に応じた電荷を出力するという特徴がある。
【0018】
909A、909B、909C、909D、909E、909F、909G、909H、909Iおよび909Jはセンサからの信号を伝達するケーブルと接続する端子である(以降、総称して信号線端子909と呼ぶ)。また、909Aa、909Ba、909Ca、909Da、909Ea、909Fa、909Ga、909Ha、909Iaおよび909Jaは各信号線端子と接続するケーブルを示す信号線である(以降、総称として信号線909aと呼ぶ)。全信号線を示す信号線群910は、荷重センサ908の数と同数のケーブルを有する。信号線909aは、金型900の外縁部から外側へと引き回される。
【0019】
生産時には、金型900は、プレス機に設置され、スライダが上下動作することによって、被加工材911は所定の形状に打ち抜かれ、パンチ901にかかる打抜き荷重が荷重センサ908から信号線909aを介してそれぞれ出力される。
【0020】
図17は、従来のアナログ信号を、デジタル化してデータ処理を行う回路を示すブロック図である。また、図17は、信号線909aからのアナログ信号を、デジタル化してデータ処理を行う回路を示す。
【0021】
121a、121b、121c、121d、121e、121f、121g、121h、121iおよび121jはチャージアンプ(CA、以降、総称としてチャージアンプ121と呼ぶ)である。チャージアンプ121は、対応する荷重センサ108が受ける荷重に応じて出力する電荷を受けて、電圧に変換する積分回路である。
【0022】
状態信号端子125から出力される状態信号は、プレス機が繰り返し動作を行う1工程の中の、どのフェーズにあるのかを示す信号である。状態信号は、コントローラ124に入力される。状態信号は、例えばクランプ式プレス機の場合は回転角を、サーボ式プレス機の場合はスライダの位置を示す信号等である。状態信号端子125は、例えばこれらの装置の出力端子である。コントローラ124は、状態信号に基づいて、1工程の中のどのフェーズにあるのか、即ちスライダが下死点付近にあって加工中であるのか、上死点付近にあって被加工材111の送りなどを行う非加工中であるのかを判別できる。コントローラ124は、加工中のときにはチャージアンプ121を動作モードに、非加工中のときにはチャージアンプ121をリセットモードに設定するリセット制御信号を出力する。
【0023】
チャージアンプ121は、リセット制御信号に基づいて、非加工時には積分回路をリセットし、加工時には動作モードになることで積分回路動作を行う。
【0024】
122a、122b、122c、122d、122e、122f、122g、122h、122iおよび122jはレベル調整アンプ(以降、総称としてレベル調整アンプ122と呼ぶ)である。レベル調整アンプ122はそれぞれ、チャージアンプ121からの対応する信号を受信すると、後段のA/D変換機に適した電圧レベルになるよう、当該信号を設定された増幅率で増幅する。
【0025】
123a、123b、123c、123d、123e、123f、123g、123h、123iおよび123jはA/D変換機(以降、総称としてA/D変換機123と呼ぶ)である。A/D変換機123はそれぞれ、対応するレベル調整アンプ122からの信号を受信すると、当該信号をデジタル時系列データに変換してデータ処理部126に出力する。
【0026】
データ処理部126は、全ての荷重センサ108からのデジタル時系列データを受け、各工具の詳細な状態の検知、及び異常状態の有無の判定を行う。
【0027】
図18は、チャージアンプ121のうちの1つの内部構成を示す回路図である。チャージアンプ121は、入出力端子として、荷重センサ108からの電荷が入力される入力端子INと、リセット入力端子RSTと、出力端子OUTを備える。また、チャージアンプ121は、演算増幅器(以降、オペアンプと呼ぶ)OPと、容量素子C0と、リセットスイッチSW0とを備える。
【0028】
入力端子INは、共通信号COMを伝達する信号線と、共通信号COMを基準として電荷が入力される電荷入力信号CINを伝達する信号線とを介してオペアンプOPの2つの差動入力端子に接続される。オペアンプOPの出力端子は、出力端子OUTに接続される。共通信号COMを伝達する信号線は、システム内でグラウンドなどに接続される。
【0029】
容量素子C0は、電荷入力信号CINを伝達する信号線と出力端子OUTとの間に設けられる。電荷入力信号CINによって入力される電荷は、オペアンプOPの2つの差動入力の電位差がゼロとなるように増幅されることによって、容量素子C0にチャージされる。電荷の容量素子C0への蓄積によって、電荷量に応じた電圧信号が、出力端子OUTから出力される。
【0030】
リセットスイッチSW0は、容量素子C0と並列に配置される。リセットスイッチSW0は、リセット入力端子RSTからリセット信号を受けると、容量素子C0の両端をショートさせるようON状態になる。それによって、リセット時に容量素子C0の電荷はディスチャージされる。リセット入力端子RSTから出力される信号がリセット解除信号に変更されると、リセットスイッチSW0がOFF状態になり、容量素子C0は、電荷のチャージを開始する。
【0031】
しかしながら、個別に工具の状態を検知できるよう荷重センサの個数を増やした場合、その個数に比例してセンサからのケーブルの取り回しや、チャージアンプ、レベル調整アンプ、A/D変換機といった電気回路類が必要となるという課題がある。
【0032】
とりわけ、金型が小型であり、かつ金型のサイズに比して工具の数が多い場合、それら工具に対応する荷重センサからのケーブルを金型内から金型外へと引き出す必要があり、ケーブルを通すための領域を、全てのケーブルに沿って設ける必要が生じる。しかしながら、金型は、ボルト、ガイド類、スプリングや位置決めガイド等、多数の機構の為の領域を備える必要があるため、これに加えて全てのケーブルに沿ってスペースを確保するとなると、金型に求められる高い剛性による高い精度を実現する事が難しくなる。
【0033】
加えて、荷重センサの個数に比例した電気回路類は、その個数の多さから消費電力が多くなり、発熱が大きくなるという問題がある。したがって、温度が上昇すると熱膨張により高い精度を維持することが難しくなる金型の内部、又は近傍に電気回路類を配置することは難しい。そのため、電気回路類は、金型の外に設置される必要があり、金型内のセンサとは多数のケーブルで接続する必要がある。しかし、金型は、異常な状態にならなくても、定期的にプレス機から降ろして工具の再研磨などのメンテナンスを行う必要がある。そのため、ケーブルの本数など電気系統の部材が増えることでメンテナンス性が低下するという課題が生じる。
【0034】
本開示は、センサの個数を増やしたとしても、システム構成の要素数の増加を抑制し、同じシステム構成にて各センサが出力する信号を取得できる加工工程監視装置を提供することを目的とする。上記目的を達するため、本開示の加工工程監視装置は、例えば、センサからの出力をセレクタにて分岐し、着目するセンサと、着目するセンサ以外とに分類し、各センサに接続される信号線がデイジーチェーン状に接続されることを特徴とする。
【0035】
以下、本開示に係る加工工程監視装置による処理を実施するための最良な実施の形態を説明する。
【0036】
(実施の形態1)
図1は、本開示に係る加工工程監視装置1000の概略図である。より具体的には、図1は、製造装置の例であるプレス機2000に含まれる金型100、および金型100に対して信号を入出力してデータ処理を行う回路を示すブロック図である。プレス機2000は、加工工程監視装置1000を含む。加工工程監視装置1000は、金型100、表示装置200および当該回路を備える。回路は具体的には、デジタル選択信号として出力されるデジタル選択出力信号の生成と、全体荷重信号端子3Aおよび着目荷重信号端子3Bからの全体荷重信号および着目荷重信号のデータ処理とを行う回路を示す。全体荷重信号および着目荷重信号はアナログ信号であるため、デジタル化されて、データ処理される。表示装置200は、例えば、ディスプレイである。表示装置200は、加工工程監視装置1000の処理結果(例えば、後述する状態検知および異常検知の結果)を表示することができる。表示装置200は、プレス機2000の動作状態を表示できてもよいし、プレス機2000を操作するための図示しない入出力装置と同一であってもよい。図1に示すように、回路は、チャージアンプ12Aおよび12B、レベル調整アンプ13Aおよび13B、A/D変換機14Aおよび14B、コントローラ15およびデータ処理部16を含む。
【0037】
チャージアンプ12Aおよび12Bは、対応する全体荷重信号端子3A、および着目荷重信号端子3Bからのアナログ信号による電荷を受けて、電圧に変換する積分回路である。
【0038】
レベル調整アンプ13Aおよび13Bはそれぞれ、対応するチャージアンプ12Aおよび12Bからの信号(すなわち電圧)が入力されると、後段のA/D変換機に適した電圧レベルになるよう、設定された増幅率で増幅する。
【0039】
コントローラ15は、従来技術と同様、状態信号端子125からの信号を受け、プレス機2000が加工中であるのか非加工中であるのかを判別する機能を有する。コントローラ15は、チャージアンプ12Aおよび12Bに対して非加工中にはリセットモードに、加工中には動作モードに設定するリセット制御信号を出力する。コントローラ15は、例えば図示しないプロセッサを含む。
【0040】
プロセッサは、プログラムを実行することで所定の機能を実現するCPUまたはMPUのような汎用プロセッサを含む。プロセッサは、例えば図示しない記憶装置に格納された演算プログラム等を呼び出して実行することにより、コントローラによる信号出力処理等プロセッサにおける各種処理を実現する。プロセッサは、ハードウェア資源とソフトウェアとが協働して所定の機能を実現する態様に限定されず、所定の機能を実現する専用に設計されたハードウェア回路でもよい。すなわち、プロセッサは、CPU、MPU以外にも、GPU、FPGA、DSP、ASIC等の種々のプロセッサで実現され得る。このようなプロセッサは、例えば、半導体集積回路である信号処理回路で構成され得る。後述するデータ処理部16による処理も同様にプロセッサによって実行され得る。
【0041】
また、コントローラ15は、非加工中に次の加工で着目すべき荷重センサ108に関する情報を含むデジタル選択信号をデジタル選択信号端子5に対して出力することによって、後述するセレクタ1の選択状態を変更する。また、コントローラ15は、レベル調整アンプ13Bへゲイン制御信号を出力し、着目する荷重センサ108に合わせて、レベル調整アンプ13Bのゲイン設定を変更する。本実施の形態では、レベル調整アンプ13Aのゲイン設定は固定であり、レベル調整アンプ13Bのゲイン設定はコントローラ15からのゲイン制御信号によって動的に変更される。しかし、ゲイン設定は、これに限定されない。例えば、後段のA/D変換機の入力レンジから外れることなく良好な電圧レベルが得られるのであれば、レベル調整アンプ13Aのゲイン設定がコントローラ15による動的制御であっても、レベル調整アンプ13Bのゲイン設定が固定であってもよい。
【0042】
A/D変換機14Aおよび14Bはそれぞれ、対応するレベル調整アンプ13Aおよび13Bからの信号を受け、デジタル時系列データに変換してデータ処理部16に当該データを出力する。
【0043】
データ処理部16は、全体荷重信号および着目荷重信号に関する信号である、A/D変換機14Aおよび14Bからの信号を受信する。また、データ処理部16は、コントローラ15から、加工中における着目する荷重センサがどれなのかを示す情報を伝達する着目センサ情報信号と、レベル調整アンプ13Bに対するゲイン制御信号とを受信する。データ処理部16は、これらの信号に基づいてデータ処理を行う。データ処理部16はプロセッサ、又はFPGA等のデジタルハードウエア回路などによって構成されており、データ処理を行う。データ処理部16は、着目する荷重センサからのデータについては、着目しているパンチ101にかかり荷重ついての解析を行う。また、データ処理部16は、着目する荷重センサ以外からのデータについては、着目する荷重センサからのデータと合算して全体のパンチ101にかかる荷重についての解析を行う。荷重センサおよびパンチについては後述する。
【0044】
図2は、本開示に係る加工工程監視装置1000において荷重を検出する装置を示す。図2はより具体的には、当該装置において金型100に設置されている部分を示す。
【0045】
実際の金型は、各部品を固定するためのボルト、ポストなどのガイド類、プレートを押さえつけるスプリング、持ち上げるための機構、又は被加工材に対する位置決めを行うガイド等も必要である。しかし、図2は、構造を簡略化して説明するためにそのような部品を省略して示す。
【0046】
金型100は、複数のパンチ101と、複数のダイ102と、ストリッパプレート103と、パンチプレート104と、ダイプレート105と、ダイバッキングプレート106と、パンチバッキングプレート107と、を備える。また、金型100は、複数の荷重センサ108と、セレクタ1を有する複数のセレクタブロック2と、を備える。金型100内には、加工される材料である被加工材111が配置される。セレクタブロック2には、信号線3Aa、3Ba、5aが接続される。
【0047】
複数のパンチ101はそれぞれ、複数のダイ102とのうちの対応するダイ102と、対向するように位置し、被加工材111を打抜き加工するように金型100内に配置される。パンチ101は、ストリッパプレート103によって、それぞれ対応するダイ102の水平方向(図面上での左右、及び奥行き方向)の位置と合うようにガイドされるとともに、パンチプレート104にてそれぞれ把持される。
【0048】
ダイ102は、それぞれダイプレート105にはめ込まれており、ダイバッキングプレート106の上に固定される。
【0049】
108a、108b、108c、108d、108e、108f、108g、108h、108iおよび108jはピエゾ効果を用いた荷重センサである(以降、総称として荷重センサ108と呼ぶ)。各荷重センサ108はピエゾ素子を備える。各荷重センサ108は、各パンチ101と、パンチバッキングプレート107との間に設置される。それによって、各荷重センサ108は、パンチバッキングプレート107と個々のパンチ101との間にかかる荷重、即ち加工時における被加工材111を打ち抜く個々のパンチ101の荷重に応じた電荷を出力できる。
【0050】
1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h、1iおよび1jは、セレクタ(以降、総称としてセレクタ1と呼ぶ)である。各セレクタ1は、対応する荷重センサ108から出力されるアナログ信号を、2系統の信号線である第1信号線または第2信号線に選択的に接続する機能、即ち2系統の信号線のうちの一方に接続する機能を有する。金型100は、荷重センサ108と同数のセレクタ1を備える。
【0051】
2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2iおよび2jはセレクタブロック(以降、総称としてセレクタブロック2と呼ぶ)である。各セレクタブロック2は、対応するセレクタ1を有する。各セレクタ1は、それぞれのセレクタのデジタル切り替え信号に基づいて、対応する荷重センサ108を、第1信号線である信号線3Aa又は第2信号線である信号線3Baに電気的に接続する。それによって、各セレクタ1は、対応する荷重センサ108を全体荷重信号端子3A、又は着目荷重信号端子3Bに選択的に電気的に接続する機能を有する。荷重センサ108は、全体荷重信号端子3Aまたは着目荷重信号端子3Bにアナログ信号を出力する。全体荷重信号は、全体荷重信号端子3Aに出力される信号を示す。着目荷重信号は、着目荷重信号端子3Bに出力される信号を示す。
【0052】
プレス機2000が繰り返し動作を行う一回のサイクル動作における加工において、荷重センサ108は、着目するセンサと、それ以外のセンサとに分けられる。セレクタ1は、着目する荷重センサ108の少なくとも一つを着目荷重信号端子3Bの信号線3Baと、着目する荷重センサ108以外を全体荷重信号端子3Aの信号線3Aaと接続する。最も良好な実施の形態によれば、着目する荷重センサは一つであり、荷重センサ108の中の一つが信号線3Baと接続され、それ以外の荷重センサ108は信号線3Aaと接続される。
【0053】
また、セレクタ1は、デジタル選択入力信号を受信し、また、デジタル選択出力信号を送信する。最も良好な実施の形態によれば、一つのセレクタ1は、近接する他のセレクタ1とデイジーチェーン状に接続されている。図2ではセレクタ1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1hおよび1iは、デジタル選択入力信号として、それぞれセレクタ1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h、1iおよび1jからのデジタル選択出力信号を受ける。セレクタ1jは、デジタル選択入力信号として、信号線5aを介してデジタル選択信号端子5からデジタル選択信号を受ける。これらデイジーチェーン状の接続についての詳細は後述する。
【0054】
これらの構成により金型100に設けられる信号線群6は、荷重センサ108の個数にかかわらず信号線3Aa、3Baおよび5aの3つの信号線を有する。したがって、信号線群6は、全体荷重信号端子3A、着目荷重信号端子3B、およびデジタル選択信号端子5の3種類のインタフェース装置に接続される。金型は、例え荷重センサ108の個数が増加したとしても、同じ信号線およびインタフェース装置を使用することができるため、信号線群6を構成する信号線数は、増加しない。
【0055】
図3は、セレクタ1の一つであるセレクタ1jの回路構成を示す図である。セレクタ1のそれぞれは、全て同じ回路構成を有しており、ここではセレクタ1jについてのみ説明する。
【0056】
セレクタ1jは、荷重センサ108jの信号が入力される入力部、並びにセンサ信号Cに入力された信号を出力する第1出力部および第2出力部を備える。セレクタ1jは、第1出力部として出力端子Aを、第2出力部として出力端子Bを、入力部としてセンサ信号端子Cを有する。セレクタ1jは、センサ信号端子Cに入力された信号を、出力端子Aまたは出力端子Bのいずれかから選択的に出力できるように構成される。
【0057】
セレクタ1jは、セレクタ制御回路Saを介して伝達されるセレクタ制御信号によって接続切り替え動作が行われる。セレクタ1jは、セレクタ制御信号を制御するための制御信号として入力されるデジタル選択入力信号のデジタル選択入力信号端子CHAININと、出力されるデジタル選択出力信号のデジタル選択出力信号端子CHAINOUTと、を有する。
【0058】
各セレクタ1は、デジタル選択入力信号端子CHAININおよびデジタル選択出力信号端子CHAINOUTによってデイジーチェーン状に接続される。また、セレクタ1jは、アナログセレクタSELを有し、セレクタ制御信号に含まれるデジタル論理信号に基づいて、対応する荷重センサ108jからのセンサ信号を受信するセンサ信号端子Cを、センサ信号回路Caを介して出力端子A又は出力端子Bに選択的に電気的に接続する。出力端子Aは、全体荷重信号端子3Aと電気的に接続される。出力端子Bは、着目荷重信号端子3Bと電気的に接続される。
【0059】
アナログセレクタSELは、デジタル論理信号におけるハイ信号を受けると閉状態となり、ロー信号を受けると開放状態となるスイッチSWAおよびSWBを有する。スイッチSWAはセンサ信号端子Cと出力端子Aとの間に配置され、スイッチSWBはセンサ信号端子Cと出力端子Bとの間に配置される。また、アナログセレクタSELは、インバーターINVを有する。インバーターINVは、セレクタ制御回路SaとスイッチSWAとの間に配置され、セレクタ制御信号に含まれるデジタル論理信号が入力されると反転論理信号を出力する。
【0060】
スイッチSWAは、インバーターINVから出力される反転論理信号によって制御される。スイッチSWBは、セレクタ制御信号に含まれるデジタル論理信号によって制御される。これにより、アナログセレクタSELは、セレクタ制御信号がロー信号のときはセンサ信号端子Cと出力端子Aとが電気的に接続される閉状態、センサ信号端子Cと出力端子Bとが電気的に切り離される開放状態となる。一方、アナログセレクタSELは、セレクタ制御信号がハイ信号の時にはセンサ信号端子Cと出力端子Aとが電気的に切り離される開放状態、センサ信号端子Cと出力端子Bとが電気的に接続される閉状態となる。
【0061】
デジタル選択入力信号端子CHAININは、データ入力端子DINtと、クロック入力端子CKINtと、及び電源線(図示していない)とを有する。デジタル選択出力信号端子CHAINOUTは、データ出力端子DOUTtと、クロック出力端子CKOUTtと、及び電源線(図示していない)とを有する。セレクタ1jは、セレクタ制御回路Saによって伝達されるデジタル選択信号を保持しておくためのレジスタとして機能するフリップフロップFFを有する。フリップフロップFFは、データ入力端子Dと、クロック入力端子CKと、出力端子Qとを有する。フリップフロップFFのデータ入力端子Dは、データ入力端子DINtと接続され、クロック入力端子CKは、クロック入力端子CKINtと接続される。フリップフロップFFは、クロック入力端子CKからのクロック信号の立ち上がり変化時にデータ入力端子Dの論理状態を取り込むとともに出力端子Qから出力し、その論理状態を次のクロック信号の立ち上がり変化まで保持する、ラッチ動作を行う。データ出力端子Qは、セレクタ制御回路Saと接続されることによりアナログセレクタSELを制御する。
【0062】
また、デジタル選択入力信号端子CHAININからの電源線は、セレクタ1jに電源として使用するための電力を供給するとともに、デジタル選択出力信号端子CHAINOUTの電源線へと電力を供給する。
【0063】
データ出力端子Qからの出力は、バッファBUFDによってバッファされ、デイジーチェーン状に接続されている次のフリップフロップであるセレクタ1iが有するフリップフロップFFが正しくラッチできるよう遅延調整され、データ出力端子DOUTtから出力される。クロック入力端子CKは、バッファBUFCKによってバッファされ、デイジーチェーン状に接続されている次のフリップフロップであるセレクタ1iが有するフリップフロップFFが正しくラッチできるよう遅延調整され、クロック出力端子CKOUTtから出力される。なお、バッファBUFD、およびバッファBUFCKは、出力先のフリップフロップFFの動作に影響がない場合、設けられなくてもよい。
【0064】
このようにコントローラ15は、各セレクタ1について、入力部(すなわち、入力端子C)と、複数の出力部のうちの1つ(すなわち、出力端子Aまたは出力端子B)とを選択的に接続し、入力部と複数の出力部の残りとを選択的に開放するよう制御できる。
【0065】
スイッチSWAおよびSWBは、プレス機2000の比較的短いサイクルを繰り返す動作において毎サイクルの非加工中に切り替える動作を行う。そのため、スイッチの切り替え動作は極めて高頻度であり、例えば金型100の寿命を考慮すると場合によっては数億回を超えるため、スイッチSWAおよびSWBは、機械的接点を有しない半導体スイッチで構成されることが望ましい。
【0066】
半導体スイッチは、両端が閉じられた状態であるオン状態であったとしても、オン抵抗を少なからず持つ。しかしながら、チャージアンプ12Aおよび12Bを構成するオペアンプOPは、二つの入力の電圧差がゼロとなるように増幅動作することから、センサ信号端子Cと、出力端子AまたはBとの間の電圧差がゼロとなるよう働く。すなわち、オペアンプOPは、荷重を受けて電荷を出力するピエゾ素子による荷重センサからの出力電圧がゼロとなるように、並びにスイッチSWAおよびSWBの両端電圧差がゼロとなるように増幅するため、オン抵抗による影響を小さくすることが出来る。
【0067】
図4は、デジタル選択信号端子5と接続する信号線が、セレクタ1それぞれのフリップフロップFFとデイジーチェーン状に接続される状態を示した回路図である。説明する上でデジタル論理値には関係しないバッファBUFD、およびバッファBUFCKは、図からは省略して示している。
【0068】
デジタル選択信号端子5から出力される信号は、データ信号DINおよびクロック信号CKINによって構成される。デジタル選択信号端子5は、2つの信号線と接続され、2つの信号線のうちの一方はデータ信号DINを、他方はクロック信号CKINを伝達する。デジタル選択信号端子5と接続される2つの信号線は、セレクタ1jのデジタル選択入力信号端子CHAININと接続され、それによってフリップフロップFFのデータ入力端子D、およびクロック入力端子CKにそれぞれ接続される。データ信号DINおよびクロック信号CKINは、セレクタ1jのデジタル選択入力信号端子CHAININに入力されることで、フリップフロップFFのデータ入力端子D、およびクロック入力端子CKにそれぞれ入力される。また、セレクタ1j、1i、1h、1g、1f、1e、1d、1c、および1bのデジタル選択出力信号端子CHAINOUTと、セレクタ1i、1h、1g、1f、1e、1d、1c、1b、および1aのデジタル選択入力信号端子CHAININとが、それぞれ接続される。このようにして、コントローラ15によるデジタル選択信号端子5からのデータは、クロック信号の立ち上がりに応じてデイジーチェーン状に接続されているフリップフロップFF間を伝搬し、即ちシフト動作する。
【0069】
これらデイジーチェーン状に接続する構成により、デジタル選択信号端子5からの信号は、荷重センサ108の個数にかかわらず、デジタル選択信号入力端子CHAININとデジタル選択信号出力端子CHAINOUTとの接続のみによって伝達される。したがって、例え荷重センサ108の個数が増加したとしても、近傍のデジタル選択入力信号端子CHAININとデジタル選択出力信号端子CHAINOUTとを接続するだけでよく、金型の外に配置するための新たな信号線を用意する必要がない。
【0070】
図5は、信号線群6と、セレクタブロック2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、および2jとの接続を行う部分の回路図を示す。図5において、信号線群6を構成する信号線に出力される、デジタル選択信号端子5、全体荷重信号端子3Aおよび着目荷重信号端子3Bからの信号は、一組の信号として、各セレクタブロック2に入力または各セレクタブロック2から出力される。
【0071】
各セレクタブロック2と全体荷重信号端子3Aおよび着目荷重信号端子3Bに関する信号線との接続は、各セレクタブロック2のデジタル選択入力信号端子CHAININおよびデジタル選択出力信号端子CHAINOUTへの信号線の接続とともに行われ得る。これにより、ユーザは、金型内に設けられた同一のケーブルを通す領域で各セレクタブロック2と信号線との結線を行うことができる。また、ユーザは、金型100の中で、各荷重センサ108が近傍に位置するセレクタブロック2の間で信号線を接続することができる。このような構成は、全ての荷重センサ108からのケーブルを金型内から金型外へと引き出す必要がないだけでなく、近傍のセレクタブロック2間においてセレクタブロック2を互いに接続するケーブルを通すための領域を設けるだけでよいという利点を有する。したがって、当該構成は、ケーブルを通すための領域と、ボルト、ガイド類、スプリングや位置決めガイド等、金型内の多数の機構の為の領域との干渉を大きく軽減し、金型の剛性が著しく低下するのを防ぐことができる。
【0072】
また、セレクタブロック2が内蔵する回路は、数点の部品のデジタル回路であるため消費電力は非常に小さい。デジタル選択信号が変化しないとき、消費電力はリーク電流によってのみ発生するため実質的に無視できる。したがって、金型は、当該回路が内部に設けられたとしても温度上昇の影響を受けない。加えて、これらデジタル回路をなす部品は、米粒程度の大きさであり、数点という部品点数であれば極めて小さな領域しか必要としないため、金型の設計に与える影響を抑えることが可能である。
【0073】
図6は、デイジーチェーン状に接続されたセレクタ1のそれぞれの接続状態が、時間が経過するにつれてプレス機2000が繰り返し動作を行うサイクル毎にどのように変化していくのかを示した図であって、横軸に時間をとったチャート図である。以下、図6においてハッチングされている領域を、ON状態と呼ぶ。
【0074】
「非加工状態」がON状態の期間は、プレス機2000が繰り返し動作を行う一回のサイクルの中で、特定の加工とその次の加工との間の期間(以下、非加工中とも呼ぶ)を示す。非加工中の期間において、例えば、スライダが上死点付近にあって被加工材111が順送りされる。「非加工状態」がON状態ではない期間は加工中を示す。加工中の期間において、例えば、スライダが下死点付近にあって、被加工材が打ち抜かれる。デジタル選択信号のデジタル論理の状態、及びフリップフロップFFが出力するデジタル論理がON状態の期間は、ハイ論理を示し、ON状態ではない期間はロー論理であることを示す。
【0075】
デジタル選択信号に含まれるデータ信号DINおよびクロック信号CKINは、非加工中に送られる。クロック信号CKINのデジタル論理がロー論理からハイ論理に立ち上がるタイミングで、フリップフロップFFは、それぞれのデータ入力端子Dのデジタル論理を取り込む。図4に示したように、フリップフロップFFはデイジーチェーン状に接続されている。したがって、データ信号DINのデジタル論理値は、クロック信号CKINの立ち上がるタイミングで、デイジーチェーン状に接続に沿ったフリップフロップFFのデジタル論理がフリップフロップFFを伝搬していくシフト動作をする。複数回のシフト動作を行うことによって、全てのフリップフロップFFのデジタル論理がデジタル選択信号によって制御され得る。また、フリップフロップFFのデジタル論理に応じて、アナログセレクタSELのセンサ信号端子Cが、出力端子Aおよび出力端子Bとの一方と接続状態となり、他方が非接続状態となるよう制御されることは、図3にて説明したとおりである。
【0076】
良好な実施の形態によれば、シフト動作は一回の非加工中の間に一回のみ行う。荷重センサ108が設置されているパンチ101のそれぞれの状態を詳細に判定するために、コントローラ15は、パンチ101の中の一つのみを着目するように制御することが望ましい。全てのパンチ101を個別に着目して判定するために、コントローラ15は、パンチ101の個数分、つまり荷重センサ108の個数分を一回の詳細判定単位として着目するパンチ101をシフトする、つまりフリップフロップFFをシフト動作していけばよい。
【0077】
図7は、データ処理部16の詳細を示すブロック図である。データ処理部16で実行されるデータ処理は、上記したように図示しないプロセッサ等によって実行される。データ処理部16は、単位変換部51Aおよび51Bと、加算部52と、チャネル振り分け部53と、全荷重波形記憶部56と、1つ以上のチャネル荷重波形記憶部59と、全荷重判定処理部60と、着目チャネル判定処理部とを備える。
【0078】
A/D変換機14Aおよび14Bからのデジタルデータは、単位変換部51Aおよび51Bによって荷重を示すニュートンなどの物理量の値にそれぞれ変換される。この際、単位変換部51Aは、荷重センサ108の特性、チャージアンプ12Aの容量素子C0、レベル調整アンプ13Aのゲイン設定を考慮して適正な物理量の値に変換する。単位変換部51Bは、コントローラ15からのゲイン制御信号に基づいて、荷重センサ108の特性、チャージアンプ12Bの容量素子C0、レベル調整アンプ13Bのゲイン設定を考慮して適正な物理量の値に変換する。
【0079】
加算部52は、単位変換部51Aおよび51Bからのデータを受けて加算演算を行うことにより、全ての荷重センサ108にかかる荷重、すなわち荷重センサ108が取り付けられている全てのパンチ101にかかる荷重を求める。加算部52は、全荷重波形記憶部56の全荷重波形バッファ54に加算演算を行ったデータを出力する。全荷重波形バッファ54は、加算部52からのデータを受け、一回の加工における波形へと切り出された波形データのうち、最新の波形をバッファする、即ち波形データを一時保管する。
【0080】
全荷重波形記憶部56は、全荷重波形バッファ54および全荷重波形履歴バッファ55を含む。全荷重波形履歴バッファ55は、全荷重波形バッファ54からの波形データを受けて蓄積することにより波形の履歴をバッファする。全荷重波形記憶部56は、上記した記憶装置に設けられてもよい。
【0081】
全荷重判定処理部60は、全荷重波形記憶部56を参照し、波形の履歴と最新の波形とを用いて、主に緊急停止が必要となるような異常の発生の有無に関する異常判定を行い、全荷重判定結果を出力する。例えば、全荷重判定処理部60は、異常の発生の有無を判定すると、表示装置200に判定結果を表示してもよい。あるいは、またはそれに加えて、全荷重判定処理部60は、異常が発生したと判定すると、プレス機2000を停止するための停止信号を、プレス機2000を制御する図示しないコントローラに送信してもよい。当該コントローラは、加工工程監視装置1000のコントローラ15であってもよい。
【0082】
チャネル振り分け部53は、単位変換部51Bからのデータと、コントローラ15からの着目センサ情報信号を受け、荷重センサ108のそれぞれに割り当てられた複数のチャネルに対応するチャネル波形バッファ57にチャネル波形データを出力する。チャネル波形データは、着目センサ情報信号に基づいて各チャネル荷重波形記憶部59のチャネル波形バッファ57に振り分けられる。したがって、チャネル波形バッファ57は、対応する荷重センサ108によって着目して測定された最新の波形をバッファする。
【0083】
チャネル荷重波形記憶部59は、チャネル波形バッファ57およびチャネル波形履歴バッファ58を含む。チャネル波形履歴バッファ58は、チャネル波形バッファ57からのチャネル波形データを受けて蓄積することにより波形の履歴をバッファする。チャネル荷重波形記憶部59は、上記した記憶装置に設けられてもよい。
【0084】
着目チャネル判定処理部62は、チャネル荷重波形記憶部59を参照し、また、コントローラ15からの着目センサ情報信号を受けて更新されたチャネルに着目する。それによって、着目チャネル判定処理部62は、波形の履歴と最新の波形とを用いて、主に詳細な解析が必要となる後述する工具摩耗の状態などの状態判定を行い、チャネル判定結果を出力する。例えば、着目チャネル判定処理部62は、状態判定を行うと、表示装置200にチャネル判定結果を表示してもよい。あるいは、またはそれに加えて、着目チャネル判定処理部62は、状態判定の結果に基づいて(例えば工具が著しく摩耗していると判定した場合)、プレス機2000を停止するための停止信号を、上記した図示しないコントローラに送信してもよい。
【0085】
図8は、全荷重波形による異常判定を行う際に用いる波形図を示す。図8は、正常波形と、カス上がりが生じたときの異常波形とを比較して示した図である。
【0086】
正常波形31は、全荷重波形履歴バッファ55などにバッファされる。カス上がりが生じた時には、全荷重波形バッファ54に異常波形32がバッファされる。
【0087】
カス上がりなどのプレス機2000を停止させる必要があるような大きな変化が生じた場合、荷重センサ108にかかる荷重全体を測定してデジタル化された波形は、大きな波形変化を示す。したがって、このような場合、全荷重判定処理部60は、荷重センサ108のそれぞれを個別に測定してデジタル化された波形による判定を行うことなく、全荷重波形記憶部56に格納された波形から異常状態の有無を検知することが可能である。
【0088】
また、波形に対する異常の有無の判定は、波形に対して上限値および下限値を設定する、波形間のコサイン類似度を求める、マハラノビス距離といった統計的なデータを基にした類似度を求めるなど、一般的な異常判定の手法を用いることが可能である。
【0089】
金型のメンテナンスでは全く同じ状態を繰り返すことは困難であり、例えばパンチ101のそれぞれの長さに微少な差が生じ得るパンチ101のそれぞれの長さに差が生じた場合、全てのパンチ101にかかる荷重が合算して得られる全荷重波形履歴バッファ55には、金型のメンテナンスの度に多少の違いが生じる。したがって、正常な状態であるにもかかわらず、異常な状態であると判定しないためには、データ処理部16は、突発的な波形変化が生じているのか否かを判定することが望ましい。
【0090】
図9は、個別波形による状態検知を行う際に用いる波形図を示す。図9(a)および図9(b)はそれぞれ、工具が摩耗していない初期の状態での波形と、10万回の打抜きを行った後など摩耗がある程度進行してきている状態での波形を比較して示す。また、図9(a)および図9(b)は、それぞれ異なる個別工具の波形を示した図である。
【0091】
波形41aおよび41bは、それぞれ荷重センサ108aおよび108bを着目して測定した、チャネル波形バッファ57にバッファされるチャネル波形である。当該チャネル波形は、それぞれ工具摩耗していない初期の状態での波形である。波形42aおよび42bも同様に、それぞれ荷重センサ108aおよび108bを着目して測定した、チャネル波形バッファ57にバッファされるチャネル波形である。当該チャネル波形は、それぞれ工具摩耗が進行した状態での波形である。
【0092】
複雑な加工を施す順送金型の場合、金型100に取り付けられる複数の工具は異なる形状を有する。また工具の材質には超硬が一般的に用いられることが多いが、形状や求められる加工精度等によって超硬の種類やクリアランスといった設計値があえて異なる場合もある。よって、形状や超硬の種類によって摩耗の進行具合は異なるため、同じ10万回の打抜きを行った後であっても、波形の形状や変化の仕方は異なり得る。
【0093】
したがって、波形41aから波形42aへの変化、および波形41bから波形42bへの変化といった摩耗による微小な変化は、対応するそれぞれのパンチ101やダイ102によって異なる。そのため、着目チャネル判定処理部62は、それぞれに適した微小な変化を検出する判定を行うことで、例えば各工具の摩耗を検知する、状態検知を行うことが可能である。加えて、摩耗の進行による微小な変化は、変化が微少であるが故に、着目チャネル判定処理部62は、繰り返し動作するプレス機2000の毎サイクルで判定する必要はなく、着目チャネルが一巡する程度の頻度で行えばよい。状態検知に必要なプロセッサリソースは、荷重センサ108の個数に比例して増加することはなく一定にすることが可能である。
【0094】
また、例えばパンチ101のそれぞれの長さに微少な差が生じるといった金型のメンテナンスの度に多少の違いが生じたとしても、チャネル荷重波形記憶部59は、パンチ101の個別にかかる荷重をそれぞれ着目して得られる波形を格納する。当該波形は、複数の工具間に関連した影響を受けない事から、メンテナンスの違いによる影響を受けにくい。
【0095】
したがって、着目チャネル判定処理部62は、全荷重判定処理部60とは異なり、定量的な波形変化によって状態検知を行うことが望ましい。
【0096】
なお、本実施の形態では、10個の荷重センサを用いた構成について示したが、個数は10個に限られず、セレクタブロック2がデイジーチェーン状に接続されていればスケーラブルに異常検知と状態検知の両方に対応することが可能である。
【0097】
上記のように構成することで、本開示に係る加工工程監視装置1000は、比較的短いサイクルを繰り返して同一の加工を施す動作を行う加工において、加工状態を検出するためのセンサの個数を増やしたとしても、ケーブル数がセンサの個数に比例しない。同様に、加工工程監視装置1000は、A/D変換機数、プロセッサリソースがセンサの個数に比例しない。したがって、本開示に係る加工工程監視装置1000は、センサ間の接続容易性を向上し、かつ金型の剛性を維持することができる。このように、本開示に係る加工工程監視装置1000は、ケーブル数等の増加を抑えつつ、加工状態の詳細を推定する状態検知と、全体の異常の有無を判定する異常検知の両方を行うことができる。
【0098】
本実施の形態では、荷重センサ108からの信号は、全体荷重信号端子3Aまたは着目荷重信号端子3Bを介してチャージアンプ12Aまたは12Bに伝達される例を示したが、これに限定されない。荷重センサ108からの信号は、各端子3Aおよび3Bを介さず、それぞれ単一の信号線によってチャージアンプ12Aまたは12Bへと伝達されてもよい。デジタル選択信号、状態信号端子125からの信号についても同様である。
【0099】
また、本実施の形態では、セレクタ1は、2つの出力部を有するがこれに限定されず、3つ以上の出力部を有してもよい。例えばセレクタ1が3つの出力部を有する場合、データ処理部16は、全荷重波形と、2つの着目している荷重センサ108に関する波形とに関する波形とを取得して、金型の異常の有無の判定、および状態検知をすることができる。同時に着目することができる荷重センサ108が2つに増えることにより、より高頻度で状態を確認する必要がある工具について、状態検知の回数を増やすことが可能である。
【0100】
(実施の形態2)
実施の形態2は、信号線群6が多芯ケーブルによって構成され、アナログ信号とデジタル信号とが1本の多芯ケーブルで接続されるというところが、実施の形態1と異なる。なお、特段の言及のない構成については、実施の形態1と同様である。
【0101】
図10は、複数のセレクタブロック2の間が一本の多芯ケーブルにて接続されるブロック図である。
【0102】
セレクタブロック71は、セレクタブロック2のうちの一つを内包する。セレクタブロック71は、入力コネクタ72と出力コネクタ73を備える。入力コネクタ72と出力コネクタ73は、信号線群6を介して伝達される全体荷重信号、着目荷重信号およびデジタル選択信号を送受信する端子を備える。入力コネクタ72と出力コネクタ73との間は、多芯ケーブル6Aによって接続される。
【0103】
一般的には、アナログ信号はデジタル信号からのノイズの影響を受けないようにするため、グラウンドなどの共通信号にてシールドを施す必要がある。しかしながら、本実施の形態によるデジタル信号は、チャージアンプ12Aおよび12Bがリセットモードにある非加工中の期間のみで変化し、チャージアンプ12Aおよび12Bが動作モードにある加工中には変化することがない。したがって、デジタル信号の変化によるノイズがアナログ信号に入り込むことはなく、アナログ信号とデジタル信号とを多芯ケーブル6Aにて混在させても、デジタルノイズによる問題は生じない。
【0104】
金型のメンテナンスを行うとき、金型は分解され、場合によっては複数設置されているセレクタブロック2、およびセレクタブロック2の間のケーブルは外される。しかしながら、多芯ケーブル6Aによる一本のケーブルのみによってセレクタブロック71の間が接続されている場合、入力コネクタ72または出力コネクタ73と多芯ケーブル6Aとの接続を付け外しするのみで、ケーブルは付けられまたは外され得る。複数のケーブルに対する付け外しの必要がなくなり、メンテナンス性が向上し得る。
【0105】
(実施の形態3)
実施の形態3は、複数あるセレクタブロック71のそれぞれと、対応する荷重センサ108とが一体になっているというところが、実施の形態の2と異なる。なお、特段の言及のない構成については、実施の形態2と同様である。
【0106】
図11は、荷重センサとセレクタブロックとが一体となったセンサブロック間が接続されるブロック図である。
【0107】
センサブロック74は、セレクタブロック71と、対応するそれぞれの荷重センサ108とを内包する。センサブロック74は、一方の面である面75と、面75に対向する面である面76との間に働く荷重を測定するよう荷重センサが組み込まれ、一体化している。センサブロック74へと一体化することによって、セレクタブロック71と、対応するそれぞれの荷重センサ108とを接続する配線が必要なくなり、実施の形態1および2と比して更にメンテナンス性が向上し得る。
【0108】
本実施の形態によれば、全てのセレクタブロック71と、対応するそれぞれの荷重センサ108とが、センサブロック74によって内包されるが、これに限定されない。例えば、パンチ101の形状や測定レンジに起因して荷重センサの大きさが異なる場合、センサブロック74による一体化は一部にとどまってもよい。
【0109】
(実施の形態4)
実施の形態4は、デイジーチェーン状に接続されるセンサブロック74の一部が、荷重を測定するセンサを内包するのではなく、歪みを測定するセンサを内包するというところが、実施の形態の3と異なる。なお、特段の言及のない構成については、実施の形態3と同様である。
【0110】
図12は、金型100がプレス機2000に設置されている状態を示す。図12は具体的には、金型100とプレス機2000のフレームの一部とを、センサの設置が分かるよう示した図である。フレーム77Lおよび77Rは、プレス機2000を支えるフレームの一部であり、金型100のうちの上金型を支えるプレス機2000の構造物の一部であり、打抜き動作をするときには、打抜き荷重をも受ける。
【0111】
本実施の形態では、センサブロック74のうちの2個が歪みセンサを内蔵したセンサブロック74Sに置き換えられている。センサブロック74Sは、フレーム77Lおよび77Rにそれぞれ設置される。センサブロック74Sは、それぞれピエゾ素子を用いて歪みを測定する。センサブロック74Sは、歪み量に応じて電荷を出力するという点は、荷重センサと同様である。よって、センサブロック74Sは、フレーム77Lおよび77Rに発生するそれぞれの歪みを、同じデイジーチェーン状に接続したセンサブロック74の一部として測定することが可能である。図1に示したアナログ信号をデジタル化する回路は、なんら変更されることなく、プレス機2000にかかる歪みの変化をモニタリングすることが可能である。
【0112】
本実施の形態では、センサブロック74に内包する荷重センサを歪みセンサに置き換えた場合について説明したが、実施の形態1および2における荷重センサ108を歪みセンサに置き換えても、同様な効果が得られる。
【0113】
(実施の形態5)
実施の形態5は、複数のセンサブロック74が、一枚のプレート内に内包されるというところが、実施の形態の3と異なる。なお、特段の言及のない構成については、実施の形態3と同様である。
【0114】
図13は、金型の構造を示す。図13は具体的には、複数のセンサブロック74が内包された一枚のセンサプレート78が金型内に組み込まれている状態を示した図である。
【0115】
センサプレート78は、ボルト、ガイド類、スプリングや位置決めガイド等、金型内の多数の機構の為の領域が必要に応じて除かれた状態であり、金型100に組み込むことが可能なよう形状が加工されている。
【0116】
センサプレート78には、複数のセンサブロック74Pがパンチ101と対応するよう設置されており、金型100に取り付けられる。センサブロック74Pは、センサブロック74に対し、センサプレート78に内包するにあたり必要なくなったコネクタが削除された構造を有し、機能的な違いがない。
【0117】
また、センサプレート78の端面には、入力コネクタ72および出力コネクタ73とそれぞれ同機能を有する入力コネクタ72Pおよび出力コネクタ73Pが設けられている。センサプレート78の内部では、入力コネクタ72から出力コネクタ73Pの間に対して、信号線群6によって全てのセンサブロック74Pがデイジーチェーン状に接続されるところは、実施の形態1と同様である。
【0118】
本実施の形態では、金型のメンテナンス時には、プレートの取り付け、および取り外しを行うのみでよく、実施の形態1、2および3と比して更にメンテナンス性が向上し得る。
【0119】
(実施の形態6)
実施の形態6は、A/D変換機によってデジタル化されたデータが、データ処理に至るまでの間において、シリアルデータ転送されるというところが、実施の形態1、2、3、4または5と異なる。なお、特段の言及のない構成については、実施の形態1、2、3、4または5と同様である。
【0120】
図14は、図1に対してA/D変換機によってデジタル化されたデータをシリアルデータ転送し、データ処理を行う回路を示すブロック図である。
【0121】
シリアルインタフェース装置81Aは、シリアルインタフェース装置82Aとシリアルケーブル83Aを通じたデータ転送によって通信を行う。シリアルインタフェース装置81Aは、データ処理部16が必要とするA/D変換機14Aおよび14Bからのデータ、コントローラ15からのゲイン制御信号、および着目センサ情報信号を受け、シリアルインタフェース装置82Aへと送信する。
【0122】
また、シリアルインタフェース装置82Aは電源を供給できる。シリアルインタフェース装置82Aは、シリアルインタフェース装置81Aと荷重センサ108からシリアルインタフェース装置81Aに至るまでの回路に電源を供給する。
【0123】
また、シリアルインタフェース装置81Aと荷重センサ108からシリアルインタフェース装置81Aに至るまでの回路は、金型内に設置される。チャージアンプ12Aおよび12B、レベル調整アンプ13Aおよび13B、A/D変換機14Aおよび14B等に関連する回路は、消費電力により発熱する。しかし、これらの回路は、既に述べたとおり荷重センサ108の個数に比例することなく常に2系統のみでよく、従来の実施例に比べて発熱は低く抑えられる。したがって、これらの回路は、発熱するが、配置場所を工夫することによって、金型内、若しくは近傍に設置され得る。
【0124】
また、プレス機2000から金型100を上げ下ろしするときには、シリアルケーブル83の取り外しのみでよく、メンテナンス性が向上する。
【0125】
シリアル通信には、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)、若しくはLAN規格の一種で電源も供給可能なPoE(Power over Ethernet)を用いることが望ましい。
【0126】
(実施の形態7)
【0127】
実施の形態7は、A/D変換機によってデジタル化されたデータが、シリアルデータ通信でなく無線通信を介してデータ処理部に送信されるというところが、実施の形態6と異なる。なお、特段の言及のない構成については、実施の形態6と同様である。
【0128】
図15は、図14に対して、A/D変換機によってデジタル化されたデータを無線転送し、データ処理を行う回路を示すブロック図である。図15に示す回路は、図14に示す回路に対して、シリアルインタフェース装置81Aおよび82Aが無線送受信部81Bおよび82Bにそれぞれ置き換えられ、シリアルケーブル83Aが無線送受信部81Bおよび82Bのアンテナ83Bへと置き換えられている。また、無線送受信部81Bに至るまでの電源は、金型内に設置されるバッテリーや、プレス機2000と金型100に設けられるワイヤレス電力伝送などにより供給される。
【0129】
プレス機2000および金型100の周囲には、材料の送り機構や加工油の塗布など、様々な機器が設置される。しかし、本実施の形態では、データ処理部16を設置する上での新たなケーブル類は必要なく、実施の形態6と比してメンテナンスが向上するだけでなく、金型の周囲の機器と干渉するケーブルを通す必要はない。
【0130】
(まとめ)
既に述べてきたとおり、本開示に係る加工工程監視装置1000は、同一の作業を繰り返すサイクル加工を行う製造装置に対する加工工程において、状態検知と異常検知の両方を行うことができる。また、加工工程監視装置1000は、荷重をセンシングすることによって状態検知を行いながら異常検知も行う必要のある、プレス機2000に組み込まれている工具の状態を監視するのに適している。
【0131】
そして、加工工程監視装置1000は、製造装置に設置される荷重センサ108の個数が多くなればなるほど、より高い効果を発揮する。すなわち、加工工程監視装置1000は、センサ108の個数が増加したとしても、近傍のセンサ108間をデイジーチェーン状に接続するだけでよいため、金型内に組み込まれる部品との干渉を抑える事ができる。また、加工工程監視装置1000は、デイジーチェーン状に接続するインタフェース装置を配置することによって、金型外に設置された歪みセンサとも接続できるなど、ハードウェア、ソフトウェア構成を変更することなく拡張することが可能である。
【0132】
加えて、加工工程監視装置1000は、それぞれの配線を一本のデイジーチェーン状の接続に束ねることができ、メンテナンス性を向上させることが可能である。
【0133】
(態様のまとめ)
以上の説明から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施の形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0134】
(態様1)製造装置(2000)による加工工程を監視する加工工程監視装置(1000)は、製造装置(2000)に取り付けられた複数のセンサ(108)と、複数のセンサ(108)の数と同じ数だけ設けられた複数のセレクタ(1)であって、複数のセレクタ(1)のそれぞれは、1つの入力部(C)及び複数の出力部(A、B)を有し、1つの入力部(C)に入力された信号を複数の出力部(A、B)のうちの1つから選択的に出力する、複数のセレクタ(1)と、それぞれが、複数の出力部(A、B)のそれぞれと接続された複数の信号線(3Aa、3Ba)と、複数のセレクタ(1)のそれぞれについて、入力部(C)と複数の出力部(A、B)のうちの1つとを選択的に接続し、入力部(C)と複数の出力部(A、B)の残りとを選択的に開放するよう制御するコントローラ(15)と、を備える。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、センサの数が増加したとしても、ケーブル本数など、システム構成の要素数の増加を抑制し、同じシステム構成にて各センサ(108)が出力する信号を取得できる。
【0135】
(態様2)態様1の加工工程監視装置(1000)において、前記複数のセンサ(108)のそれぞれは、荷重を測定してもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、検出した荷重に基づいてセンサ(108)から出力される信号を取得できる。
【0136】
(態様3)態様2の加工工程監視装置(1000)において、前記複数のセンサ(108)のそれぞれは、荷重を表す電圧を発生させるピエゾ素子を備えてもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、センサ(108)から出力される電荷を信号として取得できる。
【0137】
(態様4)態様1から態様3のいずれか1つの加工工程監視装置(1000)において、複数のセンサ(108)のそれぞれは、歪みを測定してもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、検出した歪みに基づいてセンサ(108)から出力される信号を取得できる。
【0138】
(態様5)態様1から態様4のいずれか1つの加工工程監視装置(1000)において、コントローラ(15)は、複数のセレクタ(1)それぞれに対応するレジスタ(FF)に信号を伝達することによって複数のセレクタ(1)を制御してもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、制御したセンサから出力される信号を取得することができる。
【0139】
(態様6)態様5の加工工程監視装置(1000)において、レジスタ(FF)は、シフト動作するようデイジーチェーン接続されてもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、センサの個数を増やしたとしても、システム構成の要素数の増加を抑制し、同じシステム構成にて各センサが出力する信号を取得できる
【0140】
(態様7)態様6の加工工程監視装置(1000)において、複数の信号線(3Aa、3Ba)は、レジスタ(FF)のデイジーチェーン接続を構成する配線(5a)に沿って装置内に配置されてもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、センサの個数を増やしたとしても、システム構成の要素を配置する領域の拡大を抑制し、信号線の配置による製造装置への影響を抑えることができる。
【0141】
(態様8)態様7の加工工程監視装置(1000)において、複数の信号線と、レジスタ(FF)のデイジーチェーン接続を構成する配線(5a)とが、多芯ケーブル(6A)をなして装置内に配置されてもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、センサの個数を増やしたとしても、システム構成の要素を配置する領域の拡大を抑制し、信号線の配置による製造装置への影響を抑えることができる。また、加工工程監視装置(1000)のメンテナンス性が向上し得る。
【0142】
(態様9)態様7の加工工程監視装置(1000)は、センサプレート(78)を備え、センサプレート(78)は、複数のセレクタ(1)、複数のセレクタ(1)間を接続する複数の信号線(3Aa、3Ba)、およびレジスタ(FF)のデイジーチェーン接続を構成する配線(5a)を内包してもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、センサの個数を増やしたとしても、システム構成の要素を配置する領域の拡大を抑制し、信号線の配置による製造装置への影響を抑えることができる。また、加工工程監視装置(1000)のメンテナンス性が向上し得る。
【0143】
(態様10)態様9の加工工程監視装置(1000)において、センサプレート(78)は、複数のセンサ(108)の少なくとも一部を内包してもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)のメンテナンス性が向上し得る。
【0144】
(態様11)態様1から態様10のいずれか1つの加工工程監視装置(1000)において、複数のセレクタ(1)のそれぞれは、半導体スイッチによって構成されてもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)の耐久性が向上し得る。
【0145】
(態様12)態様6から態様11のいずれか1つの加工工程監視装置(1000)において、製造装置(2000)は、同一の作業を繰り返すサイクル加工を行い、コントローラ(15)は、サイクル加工におけるサイクル間の非加工中にレジスタ(FF)のシフト動作を制御してもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、センサの数が増加したとしても、システム構成の要素数の増加を抑制し、同じシステム構成にて各センサが出力する信号を取得できる。
【0146】
(態様13)態様12の加工工程監視装置(1000)において、複数のセレクタ(1)の出力部の数と、複数の信号線の数は2であり、複数のセレクタのそれぞれは、第1信号線(3Ba)と接続される第1出力部(B)および第2信号線(3Aa)と接続される第2出力部(A)を有し、コントローラ(15)は、複数のセレクタ(1)のうちの1つのみを選択し、選択されたセレクタ(1)の入力部(C)と第1出力部(B)とが接続され、他のセレクタ(1)の入力部(C)と第2出力部(A)とが接続されるよう複数のセレクタ(1)制御してもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、センサの数が増加したとしても、システム構成の要素数の増加を抑制し、同じシステム構成にて各センサが出力する信号を取得できる。
【0147】
(態様14)態様12または態様13の加工工程監視装置(1000)は、複数の信号線(3Aa、3Ba)それぞれに対応するチャージアンプ(12A、12B)を備え、チャージアンプ(12A、12B)は、非加工中には容量素子(C0)の電荷をディスチャージし、加工中には電荷をチャージする動作を行うようコントローラ(15)によって制御されてもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、加工ごとに各センサから出力された信号を取得することができる。
【0148】
(態様15)態様12または態様13の加工工程監視装置(1000)は、複数の信号線(3Aa、3Ba)それぞれに対応するチャージアンプ(12A、12B)と、チャージアンプ(12A、12B)の出力を受けて増幅するアンプ(13A、13B)とを備え、チャージアンプ(12A、12B)は、コントローラ(15)から受信した制御信号に基づいて、非加工中には容量素子の電荷をディスチャージし、加工中には電荷をチャージする動作を行うよう設定され、アンプ(13A、13B)は、増幅率がコントローラ(15)によって制御されてもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、加工ごとに各センサから出力された信号を取得することができる。
【0149】
(態様16)態様1から態様15のいずれか1つの加工工程監視装置(1000)は、複数の信号線(3Aa、3Ba)それぞれに対応する複数のA/D変換機(14A、14B)と、複数のA/D変換機(14A、14B)の出力を受けるデータ処理部(16)とを備え、複数のA/D変換機(14A、14B)のそれぞれは、対応する信号線(3Aa、3Ba)を通じて伝搬するアナログ信号をデジタル信号に変換してもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、加工ごとに各センサから出力された信号を取得し、データ処理を行うことができる。
【0150】
(態様17)態様16の加工工程監視装置(1000)は、複数のA/D変換機(14A、14B)、およびコントローラ(15)からの信号を受けてデータの送受信を行う第1シリアルインタフェース装置(81A)と、データ処理部(16)とデータの送受信を行う第2シリアルインタフェース装置(82A)とを備え、データは、第1シリアルインタフェース装置(81A)と第2シリアルインタフェース装置(82A)との間をシリアル通信によって転送されてもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、要素の一部を金型内に配置することができる。また、加工工程監視装置(1000)のメンテナンス性が向上し得る。
【0151】
(態様18)態様17の加工工程監視装置(1000)は、第1シリアルインタフェース装置(81A)は、シリアル通信に用いられるケーブル(83A)より電力を受け、複数のセンサ(108)から第1シリアルインタフェース装置(81A)までの回路に電力を供給してもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)のメンテナンス性が向上し得る。
【0152】
(態様19)態様18の加工工程監視装置(1000)は、複数のセンサ(108)から第1シリアルインタフェース装置(81A)までの回路が、プレス機(2000)に取り付けられる金型(100)に設置されてもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、要素の一部を金型内に配置することができる。また、加工工程監視装置(1000)のメンテナンス性が向上し得る。
【0153】
(態様20)態様16の加工工程監視装置(1000)は、複数のA/D変換機(14A、14B)、およびコントローラ(15)からの信号を受けてデータの送受信を行う第1無線送受信部(81B)と、データ処理部(16)とデータの送受信を行う第2無線送受信部(82B)とを備え、データは、無線通信によって第1無線送受信部(81B)と第2無線送受信部(82B)との間を無線通信によって転送されてもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、要素の一部を金型内に配置することができる。また、加工工程監視装置(1000)のメンテナンス性が向上し得る。
【0154】
(態様21)態様20の加工工程監視装置(1000)は、複数のセンサ(108)から第1無線送受信部(81B)までの回路が、プレス機(2000)に取り付けられる金型(100)に設置されてもよい。この態様によれば、要素の一部を金型内に配置することができる。また、加工工程監視装置(1000)のメンテナンス性が向上し得る。
【0155】
(態様22)態様2または態様3の加工工程監視装置(1000)は、複数の信号線(3Aa、3Ba)それぞれに対応する複数のA/D変換機(14A、14B)と、複数のA/D変換機(14A、14B)の出力を受けるデータ処理部(16)とを備え、複数のセンサ(108)のそれぞれは、荷重を測定し、複数のA/D変換機(14A、14B)のそれぞれは、対応する信号線(3Aa、3Ba)を通じて伝搬するアナログ信号をデジタル信号に変換し、データ処理部(16)は、全ての複数のセンサ(108)からの荷重値を合算して波形データを求め、同一の作業を繰り返すサイクル加工における波形の履歴を蓄積して判定処理を行う全荷重判定処理と、複数のセレクタ(1)のうちの1つが選択されると、複数のセンサ(108)のうちの対応するセンサ(108)のみから荷重値の波形データを取得して、選択されたセレクタ(1)に対応するチャネルの波形データとして格納し、対応するチャネルの波形の履歴を蓄積して判定処理を行うチャネル荷重判定処理とを実行してもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、加工ごとに各センサから出力された信号を取得し、全センサからの信号に基づいた異常有無の判定と、選択されたセンサからの信号に基づいた装置の状態の判定と、を行うことができる。
【0156】
(態様23)態様22の加工工程監視装置(1000)において、チャネル荷重判定処理は、全荷重判定処理とは異なる方法にて行われてもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、加工ごとに各センサから出力された信号を取得し、全センサからの信号に基づいた異常有無の判定と、選択されたセンサからの信号に基づいた装置の状態の判定と、を行うことができる。
【0157】
(態様24)態様1から態様23のいずれか1つの加工工程監視装置(1000)は、プレス機(2000)に取り付けられてもよい。この態様によれば、加工工程監視装置(1000)は、プレス機の各パンチ等の異常を検知することができる。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本開示によれば、比較的短いサイクルを繰り返して同一の加工を施す動作を行う加工において、加工状態を検出するためのセンサの個数を増やしたとしても、センサ間の接続容易性を向上させるとともに金型の剛性を維持し、ケーブル、A/D変換機、プロセッサリソースをセンサの個数に比例することなく、加工状態の詳細を推定する状態検知と、全体の異常の有無を判定する異常検知の両方を行う加工工程監視装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0159】
1000 加工工程監視装置
2000 プレス機
1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h、1i、1j セレクタ
2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2j セレクタブロック
3A 全体荷重信号端子
3B 着目荷重信号端子
5 デジタル選択信号端子
6 信号線群
12A、12B チャージアンプ
13A、13B レベル調整アンプ
14A、14B A/D変換機
15 コントローラ
16 データ処理部
A、B 出力端子
C センサ信号端子
Sa セレクタ制御回路
CHAININ デジタル選択信号入力端子
CHAINOUT デジタル選択信号出力端子
SEL アナログセレクタ
SWA、SWB スイッチ
INV インバーター
DINt データ入力端子
CKINt クロック入力端子
DOUTt データ出力端子
CKOUTt クロック出力端子
FF フリップフロップ
D データ入力端子
Q データ出力端子
CK クロック入力端子
BUFD、BUFCK バッファ
31 正常波形
32 異常波形
41a、41b、42a、42b 波形
51A、51B 単位変換部
52 加算部
53 チャネル振り分け部
54 全荷重波形バッファ
55 全荷重波形履歴バッファ
56 全荷重波形記憶部
57 チャネル波形バッファ
58 チャネル波形履歴バッファ
59 チャネル荷重波形記憶部
60 全荷重判定処理部
62 着目チャネル判定処理部
71 セレクタブロック
72、72P 入力コネクタ
73、73P 出力コネクタ
6A 多芯ケーブル
74、74S、74P センサブロック
75、75 面
77L、77R フレーム
78 センサプレート
81A、82A シリアルインタフェース装置
81B、82B 無線送受信部
83A シリアルケーブル
83B アンテナ
100 金型
101 パンチ
102 ダイ
103 ストリッパプレート
104 パンチプレート
105 ダイプレート
106 ダイバッキングプレート
107 パンチバッキングプレート
108、108a、108b、108c、108d、108e、108f、108g、108h、108i、108j 荷重センサ
111 被加工材
121、121a、121b、121c、121d、121e、121f、121g、121h、121i、121j チャージアンプ
122、122a、122b、122c、122d、122e、122f、122g、122h、122i、122j レベル調整アンプ
123、123a、123b、123c、123d、123e、123f、123g、123h、123i、123j A/D変換機
124 コントローラ
125 状態信号端子
126 データ処理部
200 表示装置
IN 入力端子
R リセット入力端子
OUT 出力端子
CIN 電荷入力信号
COM 共通信号
C0 容量素子
SW0 リセットスイッチ
RST リセット入力端子
図1
図2
図3
図4
図5
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