(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176599
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ボルト締結検査装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20231206BHJP
G01M 13/00 20190101ALI20231206BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231206BHJP
【FI】
G01L5/00 103B
G01M13/00
G06T7/00 350B
G06T7/00 610Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088964
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(71)【出願人】
【識別番号】391064566
【氏名又は名称】株式会社北都鉄工
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】藤生 慎
(72)【発明者】
【氏名】福岡 知隆
(72)【発明者】
【氏名】東 靖博
(72)【発明者】
【氏名】袋 和雄
【テーマコード(参考)】
2F051
2G024
5L096
【Fターム(参考)】
2F051AB03
2G024AA03
2G024BA08
2G024BA27
2G024CA04
2G024CA22
5L096AA06
5L096BA03
5L096FA69
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】ボルトの締結状態の検査精度が高く、多数のボルトの締結状態を短時間に検査できるボルト締結検査装置の提供を目的とする。
【解決手段】撮影された画像から個々のボルトのボルト画像を抽出するボルト画像抽出手段と、前記抽出されたボルト画像からボルト締結部に有するマーキングパターンを抽出するマーキング画像抽出手段と、マーキングパターンとボルトの締結状態の関係を機械学習した学習済みのマーキング判定モデルとを有し、前記抽出されたマーキングパターンを前記マーキング判定モデルに入力することでボルトの締結状態を判定するボルト締結判定手段を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影された画像から個々のボルトのボルト画像を抽出するボルト画像抽出手段と、
前記抽出されたボルト画像からボルト締結部に有するマーキングパターンを抽出するマーキング画像抽出手段と、
マーキングパターンとボルトの締結状態の関係を機械学習した学習済みのマーキング判定モデルとを有し、
前記抽出されたマーキングパターンを前記マーキング判定モデルに入力することでボルトの締結状態を判定するボルト締結判定手段を有することを特徴とするボルト締結検査装置。
【請求項2】
前記マーキングパターンはボルト軸部,ナット,座金及びベース部とに付されたそれぞれのマーキングの位置関係であることを特徴とする請求項1記載のボルト締結検査装置。
【請求項3】
前記ボルト画像から前記ボルト締結部に有するマーキングパターンの抽出は前記ボルト画像からセマンティックセグメンテーションを用いてマーキングパターンのみを抽出したものであることを特徴とする請求項1又は2記載のボルト締結検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトの締結状態が正常であるか否かを検知するためのボルト締結検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁,鉄塔,鉄骨建築物等の構造物において、鋼材を接合(連結)するのに高力ボルトが使用されている。
このような分野では、ボルトの締結力(締結品質)を確保するために一次締めを行った後に、ボルトの軸部(おねじ部),締め付けるナット,座金及び締結される鋼材(ベース部)とにわたって直線状のマーキングを施し、レンチ等の工具を用いてナットを締め付ける際に、このナットのみが回転し、ボルト軸部や座金が共回りしていないことを確認することで、このボルトに所定の張力が得られていると判定している。
従来は、マーキングにずれがないか否かを目視で判定していたが、検査に時間がかかり、誤認も生じやすかった。
【0003】
例えば、特許文献1には、ボルト締結後に撮影した画像に基づいて、プレート,座金,ナット及び高力ボルトのそれぞれに施されたマーキングについて、マーキング角度を検出することでボルトの締め付け状態を判定する検知システムを開示する。
特許文献2には、ボルトに付されたマーキングの状態を判定するための機械学習を行った学習済みのマーキング判定モデルと、ピンテールの有無を判定するための機械学習を行った学習済みのピンテール判定モデルとを有するボルト検査装置を開示する。
【0004】
しかし、特許文献1は、撮影した画像からマーキング角度を検出する工程が複雑である。
特許文献2は、ナット判定モデルに各ボルト画像を入力するものであり、ボルト画像から直接マーキングを検出する方法では、マーキング部分の認識において、その周囲の画像の影響を受けやすく、判定精度に不安がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-9932号公報
【特許文献2】特開2021-113755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ボルトの締結状態の検査精度が高く、多数のボルトの締結状態を短時間に検査できるボルト締結検査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るボルト締結検査装置は、撮影された画像から個々のボルトのボルト画像を抽出するボルト画像抽出手段と、前記抽出されたボルト画像からボルト締結部に有するマーキングパターンを抽出するマーキング画像抽出手段と、マーキングパターンとボルトの締結状態の関係を機械学習した学習済みのマーキング判定モデルとを有し、前記抽出されたマーキングパターンを前記マーキング判定モデルに入力することでボルトの締結状態を判定するボルト締結判定手段を有することを特徴とする。
【0008】
本発明においてマーキングパターンは、ボルトの本締め前にボルトの軸部と締結される鋼材側のプレート等のベース部との間を締め付けるナットを介して、直線状に付したそれぞれのマーキングが本締め後にどのような位置関係にあるかを示すそれぞれのマーキングの位置関係(パターン)をいう。
具体的には、例えばマーキングパターンはボルト軸部,ナット,座金及びベース部とに付されたそれぞれのマーキングの位置関係であってよい。
【0009】
本発明において、ボルト画像から前記ボルト締結部に有するマーキングパターンの抽出は前記ボルト画像からセマンティックセグメンテーションを用いてマーキングパターンのみを抽出したものであるのが好ましい。
ここで、セマンティックセグメンテーション(Semantic Segmentation)は、画像素子(ピクセル)にラベルやカテゴリーを関連付けるディープラーニングのアルゴリズムの1つである。
これにより、ボルト画像からマーキング以外を取り除いたそれぞれのマーキングのみの位置関係を示すマーキングパターンを、前記マーキングパターンとボルトの締結状態の関係を機械学習した学習済みのマーキング判定モデルに入力することになるので、精度が向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るボルト締結検査装置は、ボルトの本締め後のマーキングパターンのみを抽出し検査に用いるので、短時間で高精度に検査できる。
従来の目視の場合に、例えば
図2に示した複数のボルトを目視で検査するには、約6秒/1本もかかり、判定にミスも生じやすいが、本発明に係る検査装置では現場で撮影した画像に基づいてボルト画像を自動検出し、さらにマーキングパターンのみを検出するので、約1秒/1本で済み、ボルト画像から直接マーキング状態を判定するよりもノイズが少なくなり判定精度も高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は現場で構造物の複数のボルトを撮影された画像からボルト画像を抽出した例を示し、(b)はボルト画像からマーキングパターンを抽出した状態を示す。
【
図3】(a)は本締め前のマーキング例を示す。(b)は本締め後の正常な状態例を示す。(c)はボルト軸部が共回りした異常な状態例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るボルト締結検査装置の構成例を図に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0013】
鋼材を高力ボルトを用いて接合した状態を
図2に示す。
図2は、H型鋼のフランジ部を2枚のプレートで挟み込むようにして複数の高力ボルトで締結し、接合した状態を示す。
この場合に、接合部の一方(
図2では下側)から締結孔にボルトを挿通し、他方のプレート等のベース部に座金を介してナットを螺着する。
【0014】
ボルトの締め付け手段としては、ボルトとナットとを一次締めを行い、
図3(a)に示すようにボルトの軸部,ナット,座金及びベース部までを直線状にマーキングする。
その後に、レンチ等の工具を用いて本締めする。
この分野においては、高力ボルトの先端部にピンテール部が設けられ、レンチ等にてナットを締め付けると、所定のトルクにてピンテール部が破断するようになっているものもある。
図3(b),(c)は、ピンテール部が破断した後の本締め後の状態を示す。
正常にナットが本締めされると、
図3(b)に示すようにナットのみが回転するが、本締めが正常に行われないと、
図3(c)に示すようにボルトの軸部が共回りしたり、座金が共回りする。
従来は、この検査を目視で行っていた。
【0015】
本発明は、
図2に示した現場での複数のボルトの本締め後の状態を、動画像や静止画像として撮影する。
現場を撮影したままの上記画像は、検査対象となるボルト付近以外の部位も多く含まれている。
そこで第1ステップとして上記画像データは、ピクセル単位情報の集合体であることから、例えばディープラーニング等の画像認識技術等を用いて
図1(a)に示すように、
図2におけるボルトの位置と対応させたボルト画像を抽出する(ボルト画像抽出手段)。
この第1ステップの段階では、ボルト画像の特徴を認識して選別処理する等のパターン認識技術等を用いてもよい。
図1(a)に示した画像では、ボルトが適正に本締めされているか否かの判定に時間を要する。
そこで本発明においては第2ステップとして、
図1(a)に示したボルト画像から
図1(b)に示したようにボルトの軸部11,ナット12,座金13及びベース部14のマーキングの位置のみをマーキングパターンとして抽出した点に特徴がある。
このマーキングパターンをマーキング画像として抽出する手段にはセマンティックセグメンテーションを用いることができる。
なお、本発明においては、上記のボルト画像抽出とマーキング画像の抽出を同時に処理してもよく、
図2に示したボルトの位置に対応させて直接マーキング画像を抽出してもよい。
【0016】
ボルト(ナット)の本締めが正常に行われた際のナット12のマーキングの回転位置と、ボルトの軸部11,座金13及びベース部14のマーキング位置との関係に対して、ボルトの軸部11のマーキングが共回りした異常状態や、座金13のマーキングが共回りした状態、ボルトの軸部11のマーキング、座金13のマーキングのいずれも共回りした状態等の各種異常状態を示すマーキングパターンと、ボルトの締結状態の関係をニューラルネットワーク等を用いて機械学習したマーキング判定モデルに、上記マーキングパターンを入力する。
その結果として、自動判定結果が出力され、検査が完了する。
なお、異常と判定されたボルトは、再度締結し直すことになる。
【符号の説明】
【0017】
11 ボルトの軸部
12 ナット
13 座金
14 ベース部