(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176608
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】害虫防除シート
(51)【国際特許分類】
A01M 29/12 20110101AFI20231206BHJP
【FI】
A01M29/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088980
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA16
2B121CC22
2B121EA01
2B121FA13
(57)【要約】
【課題】ルリアリ等の害虫に対して忌避効果が高く、持続性があり、周囲の物や環境への影響が少ない害虫防除シートを提供する。
【解決手段】多孔質シートをオイルに含浸した害虫防除シートであって、多孔質シートの厚さが0.5mm以上であり、多孔質シートの体積あたりのオイルの浸透量が、5mg/cm
3以上50mg/cm
3以下であることを特徴とする、害虫防除シートを提供する。また、多孔質シートにおける孔径が14μm以上200μm以下である細孔の、累計細孔容積は0.05mL/cm
3以上0.5mL/cm
3以下であり、孔径が1μm以上200μm以下である細孔の、累計細孔容積は0.1mL/cm
3以上1.1mL/cm
3以下であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質シートをオイルに含浸した害虫防除シートであって、
前記多孔質シートの厚さが0.5mm以上であり、
前記多孔質シートの体積あたりのオイルの浸透量が、5mg/cm3以上50mg/cm3以下であることを特徴とする、害虫防除シート。
【請求項2】
前記多孔質シートにおける直径が14μm以上200μm以下である細孔の、累計細孔容積は0.05mL/cm3以上0.5mL/cm3以下であることを特徴とする、請求項1に記載の害虫防除シート。
【請求項3】
前記多孔質シートにおける直径が1μm以上200μm以下である細孔の、累計細孔容積は0.1mL/cm3以上1.1mL/cm3以下であることを特徴とする、請求項1に記載の害虫防除シート。
【請求項4】
前記オイルが、オリーブオイル、ヤシ油又はアボカド油のいずれか一種から選択されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の害虫防除シート。
【請求項5】
前記多孔質シートが、合成ゴムのシートであることを特徴とする、請求項1に記載の害虫防除シート。
【請求項6】
前記多孔質シートの前記オイルへの含浸時間が3時間以上96時間以下であることを特徴とする、請求項1に記載の害虫防除シート。
【請求項7】
前記オイルのオレイン酸含有量が15%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の害虫防除シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質シートをオイルに含浸した害虫防除シートに関する。
【背景技術】
【0002】
アリ類は社会性昆虫であり、その生活様式や食性、生息範囲も広く、人間の生活環境と重複する側面も多い。アリによる人間活動への影響も報告されており、日本では一部の種が不快害虫にも指定されている。
【0003】
一般的な事例として家屋への侵入、食材に対する摂食などの被害が知られているが、特殊な例としてパソコンやプリンター、時計などの電子機器類や電気配線部に侵入し、内部構造をかじって故障を起こす被害も報告されている。これらの被害は餌の対象が幅広い雑食性の種類による場合が多く、その食性幅と採餌習性によりこうした特異な被害が引き起こされていると考えられる。
近年、国内ではアリが家庭用ティッシュ等の収納箱の内部に集団で侵入し、ティッシュ紙をかじり、破損する被害が報告されている。この特殊な被害は雑食性アリの1種であるルリアリ(Ochetellus glaber)によるケースが多く、本種はこうした人的被害を起こす代表的な種類の1つでもある。
【0004】
アリ類の完全な駆除は一般的に困難なことが多い。巣を見つけ出すことは簡単ではないし、たとえ見つけたとしても雌アリは巧妙に逃走することが多い。このようなアリの駆除にはベイト法(食毒)が有効である。
そのような家庭用ティッシュ等の収納箱にベイト法を用いた先行技術文献として、例えば、特許文献1には、シート状物品収納容器の防蟻カバーであって、シート状物品収納容器の側面の全周に連続して繋がる領域、及びシート状物品収納容器の底面の外側の全周に連続して繋がる領域でかつ底面を含む領域を覆い、防蟻カバーの内部又は表面に、防蟻剤が含有されている防蟻カバーが開示されている。
また、特許文献2には天面部、底面部、一対の側面部及び一対の妻面部を有し、天面部、底面部、側面部及び妻面部によって衛生用紙を封入する内部空間が形成され、天面部に環状の取出口形成用切込線が形成されて、天面部に取出口形成用切込線によって区画された切取部が形成されたカートン本体と、衛生用紙を取り出すためのスリットが形成され、天面部の内向面に、切取部を閉塞するように貼り付けられたウインドウフィルムと、天面部の切取部とウインドウフィルムとの間に封入された拭き取りシートと、を備え、拭き取りシートが、再剥離性接着剤からなる接着層を介して、切取部の内向面及びウインドウフィルムの外向面の少なくとも一方に再剥離可能かつ再貼着可能な状態で固定されている衛生用紙収納用カートンが開示され、更に拭き取りシートが、天然抽出物からなる防蟻剤を付着させたものである旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4663765号公報
【特許文献2】特許第5994267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように市販のアリ用のベイト剤を家庭用ティッシュ等の収納箱に塗布した場合、臭気が強く、ティッシュ等の紙製品に臭気が移り、鼻をかむなどに使用した場合不快になり、使用に耐えない。また、臭気を発して忌避効果を発生させる場合、長時間その効果を持続させることは困難である。
また、特許文献2のような防蟻剤をシートに含ませる対応や、フェロモンを拭い取る等の対応でも、ルリアリを防ぐことには十分ではなかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ルリアリ等の害虫に対して忌避効果が高く、持続性があり、周囲の物や環境への影響が少ない害虫防除シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は鋭意検討を行い、多孔質シートをオイルに含浸した害虫防除シートにおいて、多孔質シートの厚さと、多孔質シートの体積あたりのオイルの浸透量をそれぞれ所定の数値範囲内とすることで、ルリアリ等の害虫に対して忌避効果が高く、持続性があり、周囲の物や環境への影響が少ない害虫防除シートとすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1)本発明の第1の態様は、多孔質シートをオイルに含浸した害虫防除シートであって、前記多孔質シートの厚さが0.5mm以上であり、前記多孔質シートの体積あたりのオイルの浸透量が、5mg/cm3以上50mg/cm3以下であることを特徴とする、害虫防除シートである。
【0010】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の害虫防除シートであって、前記多孔質シートにおける直径が14μm以上200μm以下である細孔の、累計細孔容積は0.05mL/cm3以上0.5mL/cm3以下であることを特徴とするものである。
【0011】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載の害虫防除シートであって、前記多孔質シートにおける直径が1μm以上200μm以下である細孔の、累計細孔容積は0.1mL/cm3以上1.1mL/cm3以下であることを特徴とするものである。
【0012】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載の害虫防除シートであって、前記オイルが、オリーブオイル、ヤシ油又はアボカド油のいずれか一種から選択されるものであることを特徴とするものである。
【0013】
(5)本発明の第5の態様は、(1)に記載の害虫防除シートであって、前記多孔質シートが、合成ゴムのシートであることを特徴とするものである。
【0014】
(6)本発明の第6の態様は、(1)に記載の害虫防除シートであって、前記多孔質シートの前記オイルへの含浸時間が3時間以上96時間以下であることを特徴とするものである。
【0015】
(7)本発明の第7の態様は、(1)に記載の害虫防除シートであって、前記オイルのオレイン酸含有量が15%以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ルリアリ等の害虫に対して忌避効果が高く、持続性があり、周囲の物や環境への影響が少ない害虫防除シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る害虫防除シートの全体を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る害虫防除シートの害虫への効果を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る害虫防除シートの使用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0019】
<害虫防除シート>
本発明の一実施形態に係る害虫防除シート1は、
図1に示すように多孔質シート10をオイル20に含浸したものである。
なお、本発明における「害虫」とは、主にルリアリ(Ochetellus glaber)を指すが、ルリアリ以外にも、主に家庭用ティッシュ等の衛生用紙をかじり、破損させる特徴のある、雑食性のアリやその他触角を有する昆虫であれば、特に限定されない。
【0020】
本発明の害虫防除シート1は、多孔質シート10にオイル20を含浸させる処理を施すと、多孔質シート10の間隙部にオイル20が浸透する。特に、多孔質シート10の切断面は間隙部分が多いため、その断面部は
図2(a)に示すようにオイル20が層状になった構造となると考えられる。
一般に、アリは触角で周囲の臭いや化学成分を確認しながら進行方向、移動経路を決めている。
図2(b)に示すように害虫30が害虫防除シート1に接近し、触角がこの断面部に触れるとオイル20が付着し、触角の感覚器官を塞いでしまうため、すぐに後退、方向転換をして触角の掃除を開始する忌避的行動をとると考えられる。
【0021】
特に、本発明の害虫防除シート1では、後述するシートの厚さが、体長約2mmのルリアリが歩行時に頭部と触角を向ける高さより高いため、触角が断面部に触れやすいようである。また、平面部ではルリアリは地表面の臭いを確認するため触角を表面に触れさせるように歩行する。シート表面は断面部の間隙部ほどではないが小孔部があるため、そこに溜まったオイル20が触角に付着し、歩行や移動がスムーズに行えない。
このように、オイル20の触角付着や機能の阻害がゴム断面部や表面部でのルリアリの行動を制限し、忌避的行動につながっていると考えられる。
【0022】
(多孔質シート)
多孔質シート10は、表面が平滑で内部に一定の細孔があるものであれば、特に限定されないが、スポンジシートなどのゴム系シートであることが好ましい。また、ゴム系シートは、シリコンゴムやクロロプレンゴムなどの合成ゴムのシートであることが好ましく、中でもシリコンゴムやクロロプレンゴムのシートであることがより好ましい。厚紙等の紙類は、オイルを吸収してしまい、オイル層を形成できないため、持続性、忌避効果に劣る上、表面がべたつく。また、アクリル板等のプラスチックは、細孔がほとんど存在しないため、オイル層を形成できない。
スポンジゴムのシートは、緩衝材などの用途で弾力性をつけるためゴム内に間隙ができるよう気泡を入れて製造されており、特にシリコンゴムのシートは小さな隙間にも入れられるように、薄く圧縮加工されていることが多い。この圧縮によって小さい間隙部が密に重なった構造になり、それにオイル20が浸透することによって「微小なオイル層の壁」が形成される。この層構造が、高い忌避効果(防除効果)を生んでいる。
さらに、密で小さな間隙部に浸透したオイル20の成分は乾燥しにくくなる。別のシートを使用した実験では表面に埃やゴミがつくと忌避効果が低下していたが、薄い断面部であればそうしたゴミも堆積しづらい。これらの構造的特徴が、本発明の害虫防除シート1において示された高い持続性の理由と思われる。
【0023】
多孔質シート10の厚さは0.5mm以上であり、1.0mm以上であることが好ましい。厚さが0.5mm未満であると害虫30の触角が接しないため、忌避効果が無い。
なお、多孔質シート10の厚さ以外の寸法は、後述する家庭用ティッシュの収納箱の下に敷く等の用途でも問題ない程度の寸法であれば特に限定されないが、縦(長辺)の寸法が200mm以上300mm以下、横(短辺)方向の寸法が100mm以上160mm以下であることが好ましい。
【0024】
また、多孔質シート10にオイル20を浸透させるためには、大気圧で浸透可能な一定量かつ一定サイズ以上の空隙が必要であり、多孔質シート10における直径が14μm以上200μm以下である細孔の、累計細孔容積は0.05mL/cm3以上0.5mL/cm3以下であることが好ましい。また、多孔質シート10における直径が1μm以上200μm以下である細孔の、累計細孔容積は0.1mL/cm3以上1.1mL/cm3以下であることが好ましい。
直径が14μm以上200μm以下である細孔の累計細孔容積が0.05mL/cm3未満であるか、直径が1μm以上200μm以下である細孔の累計細孔容積が0.1mL/cm3未満であると、十分なオイル20が含浸できない。また、オイル層が多孔質シート10の内部にうまく形成されない(すなわち、忌避効果も持続性も無い)。直径が14μm以上200μm以下である細孔の累計細孔容積が0.5mL/cm3を超えるか、直径が1μm以上200μm以下である細孔の累計細孔容積が1.1mL/cm3を超えると、オイル量に対して空隙量が多い場合は害虫30の触角に接触せず(すなわち、忌避効果を発揮しない)、オイル量と空隙量が共に多い場合は害虫防除シート1の全体がベタベタして実用に耐えない。
【0025】
なお、多孔質シート10における直径が14μm以上200μm以下である細孔の、単位重量あたりの累計細孔容積は0.05mL/g以上0.8mL/g以下であることが好ましい。また、多孔質シート10における直径が1μm以上200μm以下である細孔の、単位重量あたりの累計細孔容積は0.1mL/g以上0.9mL/g以下であることが好ましい。
【0026】
(オイル)
多孔質シート10に含浸させるオイル20は、刺激臭の無い植物性オイルであれば特に限定されないが、オリーブオイル、ヤシ油又はアボカド油のいずれか一種から選択されるものであることが好ましく、中でもオリーブオイルがより好ましい。
また、オイル20は、オレイン酸含有量が15%以上であることが好ましい。含有量が15%以上であることにより、害虫防除シート1の忌避効果が高まる。なお、オレイン酸は18:1の略称で表されるω-9(n-9)脂肪酸の一種である。
【0027】
さらに、多孔質シート10のオイル20への含浸時間は3時間以上96時間以下であることが好ましい。3時間未満であると、多孔質シート10へ十分にオイル20が含浸しない。96時間を超えると、害虫防除シート1の表面がベタベタして周囲の物を汚染する。
【0028】
このとき、多孔質シート10の体積あたりのオイル20の浸透量が、5mg/cm3以上50mg/cm3以下であり、9mg/cm3以上30mg/cm3以下であることが好ましい。浸透量が5mg/cm3未満であると害虫30の触角にオイル20が接触せず、忌避効果を発揮しない。浸透量が50mg/cm3を超えるとべたべたして周囲の物を汚染する。
【0029】
また、多孔質シート10の重量あたりのオイル20の浸透量は3mg/g以上200mg/g以下であることが好ましい。浸透量が3mg/g未満であると害虫30の触角にオイル20が接触せず、忌避効果を発揮しない。浸透量が200mg/gを超えるとべたべたして周囲の物を汚染する。
【0030】
<害虫防除シートの使用方法>
本発明の害虫防除シート1は、例えば
図3に示すような使用方法であることが好ましい。
具体的には、
図3(a)のように衛生用紙収納箱40の底面部に本発明の害虫防除シート1を敷くことで、室内に侵入した害虫30の触角にオイル20を付着させ、防除効果を発揮することができる。また、
図3(b)のように底面部の一部分にのみ害虫防除シート1を敷くことでも、同様の効果を発揮することができる。また、本発明の害虫防除シート1を未使用の衛生用紙収納箱40の上に被せて使用するいわゆる防蟻カバーとして使用してもよい(図示しない)。
【0031】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0032】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0033】
<シートへのオイルの含浸実験例>
(1)シリコーン・スポンジゴムシート(ノーブランド社製、サイズ:50mm×50mm×2mm)を用意した。
(2)植物油(日清オリーブオイル)約50mLを入れたポリプロピレン容器を用意した。
(3)スポンジゴムシートをオイルに浸け、全面が浸るようにシート上に重りを置いてオイル中に沈め、常温下(25℃)で72時間浸した。
(4)(3)の処理後スポンジゴムシートを取り出し、キムタオルで挟んで上から軽く押して約6時間置き、余分なオイル分を吸収した。またシート表面上のオイルは拭き取った。
(5)(1)~(4)の作業を10枚のシートに対して行った。
【0034】
上述した浸透処理前のスポンジゴムシートの平均重量は3.26g、浸透処理後の重量は3.31gであった。
この結果から算出される、単位あたりオイル浸透量は以下のようになった。
・シートの重量(g)あたりのオイル浸透量:15.0mg
・シート体積(cm3)あたりのオイル浸透量:9.8mg
【0035】
<害虫防除シートの作製及び評価>
上記のシートへのオイルの含浸実験を踏まえ、表1に示す実施例1~9及び比較例1~5のそれぞれの害虫防除シートを作製し、以下の評価を行った。なお、累計細孔容積については、測定装置はオートポアV9620(micromeritics社製)を用い、前処理として害虫防除シートを120℃で4時間乾燥した後、水銀圧入法により細孔直径1μm以上200μm以下と14μm以上200μm以下についてそれぞれ求めた。細孔径は、Washburnの式(PD=-4σcosθ、P:圧力、D:細孔直径、σ:水銀の表面張力、θ:水銀と試料の接触角)を用いて算出した。
【0036】
(忌避効果)
作製した害虫防除シートと、コントロールとしてオイルを含浸していないシートを準備し、アリ飼育ケース内に並べて設置して、それぞれのシートに接近、接触したアリの行動を一定時間観察した。行動は、a:拒絶行動(逃避)、b:拒絶行動(逃避→触角の掃除)、c:無反応(接触しても特に目立った反応を示さない)、d:その他(触角でシートの壁面を触って調べる)の4カテゴリーに分類し、a又はbの拒絶行動をとった回数を接触回数100回あたりに換算し、下記の4段階で評価した。
◎→a又はbの拒絶行動をとった回数が50回以上
○→a又はbの拒絶行動をとった回数が35回以上49回以下
△→a又はbの拒絶行動をとった回数が20回以上34回以下
×→a又はbの拒絶行動をとった回数が19回以下
【0037】
(表面のべたつき)
作製した害虫防除シートについて、モニター30人により表面のべたつきを評価した。べたつきを感じると答えた人数によって以下の4段階で評価した。
◎→べたつきを感じると答えた人数が3人未満
○→べたつきを感じると答えた人数が3人~7人
△→べたつきを感じると答えた人数が8人~12人
×→べたつきを感じると答えた人数が13人以上
【0038】
(持続性)
上述した忌避効果を30日後、60日後にそれぞれ再度確認し、同様の評価方法で4段
階で評価した
【0039】
(触角への接触)
作製した害虫防除シートの断面への、ルリアリの触角での接触の状況を目視で確認し、以下の3段階で評価した。
◎→十分に接触していることが認められた
〇→接触していることを確認した(接触していない個体もみられた)
×→接触が確認されなかった
【0040】
【0041】
以上より、本実施例によれば、ルリアリ等の害虫に対して忌避効果が高く、持続性があり、周囲の物や環境への影響が少ない害虫防除シートを提供することができる。