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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176619
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】掘削搬送方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 7/00 20060101AFI20231206BHJP
   E21D 1/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
E02F7/00 D
E21D1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089002
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】岡本 道孝
(72)【発明者】
【氏名】坂本 諭
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 里衣
(72)【発明者】
【氏名】福島 陽
(57)【要約】
【課題】掘削土の搬送に関する機器を狭隘な現場に容易に配置することができると共に、掘削土を効率よく搬送することができる掘削搬送方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る掘削搬送方法は、掘削して得られた掘削土Sを搬送する掘削搬送方法である。掘削搬送方法は、予め定めた範囲E1にある掘削土Sに界面活性剤から得られた気泡Bを供給する工程と、気泡Bが供給された掘削土Sを撹拌装置30が撹拌して掘削土Sを流動化する工程と、流動化した掘削土Sを吸引装置が吸引して範囲E1から掘削土Sを搬送する工程と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削して得られた掘削土を搬送する掘削搬送方法であって、
予め定めた範囲にある前記掘削土に界面活性剤から得られた気泡を供給する工程と、
前記気泡が供給された前記掘削土を撹拌装置が撹拌して前記掘削土を流動化する工程と、
流動化した前記掘削土を吸引装置が吸引して前記範囲から前記掘削土を搬送する工程と、
を備える掘削搬送方法。
【請求項2】
前記気泡を供給する工程では、
前記掘削土の表面に前記気泡を散布する工程、及び前記掘削土に気泡注入管を挿入して前記気泡注入管を介して前記掘削土に前記気泡を注入する工程、のいずれかを行う、
請求項1に記載の掘削搬送方法。
【請求項3】
前記気泡を供給する工程の前に、前記掘削土に供給する前記気泡の供給量を定める工程を備え、
前記気泡の供給量を定める工程では、前記掘削土の粒径が小さいほど前記気泡の供給量が大きくなるように前記供給量が定められる、
請求項1又は2に記載の掘削搬送方法。
【請求項4】
前記気泡を供給する工程の前に、前記界面活性剤を含む溶液に対する前記気泡の体積の倍率である発泡倍率を定める工程を備え、
前記発泡倍率を定める工程では、前記発泡倍率が2倍以上且つ200倍以下となるように前記発泡倍率が定められる、
請求項1又は2に記載の掘削搬送方法。
【請求項5】
前記気泡を供給する工程の前に、搬送する対象の前記掘削土の体積に対する前記気泡の体積の比率を定める工程を備え、
前記比率を定める工程では、前記比率が10%以上且つ300%以下となるように前記比率が定められる、
請求項1又は2に記載の掘削搬送方法。
【請求項6】
前記吸引装置は、スクイーズポンプ、サンドポンプ、遠心力ポンプ及びピストンポンプのいずれかである、
請求項1又は2に記載の掘削搬送方法。
【請求項7】
前記掘削土を搬送する工程の後に、前記掘削土に含まれる前記気泡を消す工程を備え、
前記気泡を消す工程では、前記掘削土に消泡剤を供給する工程、及び前記掘削土に温風を吹き付ける工程、のいずれかを行う、
請求項1又は2に記載の掘削搬送方法。
【請求項8】
前記気泡を供給する工程では、
前記掘削土に気泡注入管を挿入し、前記掘削土中の障害物への前記気泡注入管の接触によって前記障害物の有無を確認する工程と、
前記障害物の有無を確認した後に、前記気泡注入管を介して前記掘削土に前記気泡を注入する工程と、
を行う、
請求項1又は2に記載の掘削搬送方法。
【請求項9】
前記気泡を供給する工程では、前記気泡及び分散剤が前記掘削土に供給される、
請求項1又は2に記載の掘削搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、掘削によって得られた掘削土を搬送する掘削搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から掘削土を搬送する掘削搬送方法としては種々のものが知られている。特公平6-63259号公報には、掘削土砂の排出方法が記載されている。この排出方法は、既設構造物の下方の地盤が掘削され、地下構造物が構築される現場において用いられる。地盤の表面には気泡が吹き付けられると共に、地盤の表層部分には気泡が加圧された状態で注入される。
【0003】
気泡としては、界面活性剤又はたんぱく質系の起泡剤が水に溶解され、この水溶液が圧縮空気によって発泡したものが用いられる。気泡の生成は、現場に配置される気泡供給装置によって行われる。気泡を地盤の表面に吹き付ける場合には、気泡供給装置に接続されたホースからそのまま気泡が地盤に散布される。一方、気泡を地盤に注入する場合には、先端に注入孔が形成された針状の注入ノズルを上記のホースに接続し、地盤に貫入された当該注入ノズルを介して地盤に気泡が注入される。
【0004】
以上のように地盤に気泡が供給された後に、その部分の掘削がバックホウによって行われる。この掘削に伴って掘削土砂と気泡とが自動的に混合撹拌される。上記の気泡の供給により、気泡の潤滑作用で掘削が容易になると共に、パイプ輸送のときに掘削土砂がパイプの内面に付着することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6-63259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した掘削搬送方法では、バックホウによる掘削に伴って掘削土と気泡とが自動的に混合撹拌される。しかしながら、掘削と共に混合撹拌を行う場合には、掘削土が気泡と十分に混ざらないことがあるので、土砂の流動性及び搬送性の点において改善の余地がある。また、前述した掘削搬送方法では、バックホウによって掘削が行われる。しかしながら、現場によっては狭隘な場所もあり、狭隘な現場にバックホウ等の大型機械を配置することが難しいという問題が生じうる。従って、掘削土の搬送に関する機器を狭隘な現場でも容易に配置して、且つ掘削土を効率よく搬送することが求められる。
【0007】
本開示は、掘削土の搬送に関する機器を狭隘な現場に容易に配置することができると共に、掘削土を効率よく搬送することができる掘削搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る掘削搬送方法は、(1)掘削して得られた掘削土を搬送する掘削搬送方法である。掘削搬送方法は、予め定めた範囲にある掘削土に界面活性剤から得られた気泡を供給する工程と、気泡が供給された掘削土を撹拌装置が撹拌して掘削土を流動化する工程と、流動化した掘削土を吸引装置が吸引して範囲から掘削土を搬送する工程と、を備える。
【0009】
この掘削搬送方法では、予め範囲を設定し、予め設定した範囲の掘削土に気泡を供給する。そして、当該範囲において掘削土を気泡と共に撹拌及び流動化する。よって、予め範囲を設定し、設定した範囲において掘削土を気泡と共に撹拌するので、吸引及び搬送を行う前に掘削土を十分に流動化させることができる。設定された範囲内で十分に流動化された掘削土が吸引装置に吸引されて掘削土が搬送されるので、掘削土の吸引及び搬送を効率よく行うことができる。また、この掘削搬送方法では、撹拌機械を配置すればよく、バックホウ等の大型機器を配置する必要がない。従って、狭隘な現場にも掘削土の搬送に関する機器を容易に配置することができる。その結果、掘削土の搬送に関する機器を狭隘な現場に容易に配置して、流動化された掘削土を吸引装置の吸引によって効率よく搬送することができる。
【0010】
(2)上記(1)において、気泡を供給する工程では、掘削土の表面に気泡を散布する工程、及び掘削土に気泡注入管を挿入して気泡注入管を介して掘削土に気泡を注入する工程、のいずれかを行ってもよい。掘削土の表面に気泡を散布する場合、掘削土に気泡を散布すればよいので、掘削土への気泡の供給を効率よく行うことができる。気泡注入管を介して掘削土に気泡を注入する場合、掘削土の深い位置にも気泡を供給できるので、掘削土への気泡の供給をより十分に行うことができる。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)において、気泡を供給する工程の前に、掘削土に供給する気泡の供給量を定める工程を備えてもよい。気泡の供給量を定める工程では、掘削土の粒径が小さいほど気泡の供給量が大きくなるように供給量が定められてもよい。掘削土の粒径が大きいほど気泡の供給量が少なくても掘削土を十分に流動化でき、掘削土の粒径が小さいほどより多くの気泡を供給しなければ掘削土を流動化できないことが知られている。前述したように掘削土の粒径が小さいほど気泡の供給量が大きくなるように気泡の供給量が定められることにより、掘削土の粒径にかかわらず掘削土を十分に流動化させることができる。その結果、掘削土の搬送を更に効率よく行うことができる。
【0012】
(4)上記(1)~(3)のいずれかにおいて、気泡を供給する工程の前に、界面活性剤を含む溶液に対する気泡の体積の倍率である発泡倍率を定める工程を備えてもよい。発泡倍率を定める工程では、発泡倍率が2倍以上且つ200倍以下となるように発泡倍率が定められてもよい。この場合、発泡倍率が2倍以上であることによって気泡による掘削土の流動化を確実に行うことができる。発泡倍率が200倍以下であることにより、掘削土の流動化と共に気泡の生成を容易に行うことができる。
【0013】
(5)上記(1)~(4)のいずれかにおいて、気泡を供給する工程の前に、搬送する対象の掘削土の体積に対する気泡の体積の比率を定める工程を備えてもよい。比率を定める工程では、比率が10%以上且つ300%以下となるように比率が定められてもよい。当該比率が10%以上であることにより、気泡によって掘削土を十分に流動化させることができる。当該比率が300%以下であることにより、掘削土の体積に対する気泡の体積が多くなりすぎないようにできるので、単位時間あたりに搬送する掘削土の体積を多くすることができる。従って、掘削土の搬送性の更なる向上に寄与する。
【0014】
(6)上記(1)~(5)のいずれかにおいて、吸引装置は、スクイーズポンプ、サンドポンプ、遠心力ポンプ及びピストンポンプのいずれかであってもよい。この場合、高い吸引性能を有する吸引装置を用いることができるので、掘削土の搬送を一層効率よく行うことができる。
【0015】
(7)上記(1)~(6)のいずれかにおいて、掘削搬送方法は、掘削土を搬送する工程の後に、掘削土に含まれる気泡を消す工程を備えてもよい。気泡を消す工程では、掘削土に消泡剤を供給する工程、及び掘削土に温風を吹き付ける工程、のいずれかを行ってもよい。この場合、掘削土に含まれる気泡を消す工程を備えることにより、掘削土の気泡を消して掘削土を埋め戻し材として再利用することができる。従って、掘削土を埋め戻すことにより掘削土を再利用することができる。掘削土に消泡剤を供給する工程が行われる場合、消泡剤によって速やかに気泡を消すことができるので、掘削土の埋め戻しを効率よく行うことができる。また、掘削土に温風を吹き付ける工程が行われる場合、温風によって速やかに気泡を消すことができると共に掘削土の水分を低減させることができる。従って、掘削土をより確実に元の状態に戻すことができる。
【0016】
(8)上記(1)~(7)のいずれかにおいて、気泡を供給する工程では、掘削土に気泡注入管を挿入し、掘削土中の障害物への気泡注入管の接触によって障害物の有無を確認する工程と、障害物の有無を確認した後に、気泡注入管を介して掘削土に気泡を注入する工程と、を行ってもよい。この場合、掘削土に気泡を注入する気泡注入管の障害物への接触有無によって掘削土中の障害物の有無が確認される。従って、気泡注入管を障害物の探索用として兼用することができる。また、気泡注入管による障害物の有無確認と共に掘削土への気泡の注入を行うことができるので、障害物の有無確認と気泡の注入を効率よく行うことができる。
【0017】
(9)上記(1)~(8)のいずれかにおいて、気泡を供給する工程では、気泡及び分散剤が掘削土に供給されてもよい。この場合、掘削土の流動性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、掘削土の搬送に関する機器を狭隘な現場に容易に配置することができると共に、掘削土を効率よく搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)は、本実施形態に係る掘削搬送方法が適用される現場の例を示す断面図である。(b)は、現場における掘削土の搬送システムを示す断面図である。
図2】掘削土に気泡を注入する気泡注入管を模式的に示す縦断面図である。
図3】本実施形態に係る撹拌装置の例を示す側面図である。
図4】(a)は、気泡注入及び撹拌がなされていない掘削土の挙動を模式的に示す図である。(b)は、気泡注入及び撹拌がなされた掘削土の挙動を模式的に示す図である。
図5】本実施形態に係る吸引装置の一例であるスクイーズポンプを模式的に示す側面図である。
図6】(a)は、掘削土中の障害物の有無を確認する工程を模式的に示す断面図である。(b)は、掘削深さを決定する工程を模式的に示す断面図である。
図7】(a)は、気泡を供給する工程を模式的に示す断面図である。(b)は、気泡及び掘削土を撹拌する工程を模式的に示す断面図である。
図8】(a)は、吸引装置によって流動化された掘削土が吸引される状態を模式的に示す断面図である。(b)は、掘削が完了した状態を模式的に示す断面図である。
図9】(a)は、変形例に係る撹拌装置を示す側面図である。(b)は、変形例に係る吸引装置を示す斜視図である。
図10】(a)は、変形例に係る吸引装置を示す斜視図である。(b)は、変形例に係る吸引装置を示す側面図である。
図11】気泡又は分散剤を掘削土に供給した実証実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る掘削搬送方法の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0021】
図1(a)は、本実施形態に係る掘削土の掘削搬送方法が適用される例示的な現場Aを示す断面図である。一例として、現場Aでは、既存のシールドトンネルA14の周辺が開削され、シールドトンネルA14を備える施設の補強が行われる。例えば、現場Aは、地盤Gに構築された山留め壁A11と、山留め壁A11間に架設された梁A12と、各階を構成する複数の先行床A13と、先行床A13の下方に構築された複数のシールドトンネルA14とを備える。
【0022】
本実施形態に係る現場Aでは、例えば、シールドトンネルA14の周囲の狭隘領域Nにおいて掘削が行われる。狭隘領域Nの幅は、例えば、2m以下である。狭隘領域Nはバックホウ又は混合器等、大型機械が入れないほど狭隘な空間である。本実施形態に係る掘削搬送方法は、狭隘領域Nで掘削された掘削土を搬送することが可能である。
【0023】
図1(b)は、本実施形態に係る例示的な搬送システム1を示す断面図である。搬送システム1は、掘削によって得られる掘削土Sを搬送する搬送設備2を備える。搬送設備2は、例えば、内部において掘削土Sが搬送される配管2bを有する。配管2bは、例えば、鋼管であるが、金属以外の材料によって構成されていてもよい。配管2bの断面形状は、例えば、円環状であるが、四角形状等、他の形状であってもよい。
【0024】
本実施形態において、搬送設備2の配管2bは、現場Aを構成する地下に設けられており、例えば、配管2bの長さは10m~数十kmである。配管2bの入口は地下の現場Aに位置しており、配管2bの出口は地上Tに位置している。現場Aの地上Tの工事ヤードA1には、土砂運搬車両であるダンプトラックDが設けられる。配管2bの出口から排出された掘削土SはダンプトラックDに積載され、ダンプトラックDは積載された掘削土Sを移送する。
【0025】
鉛直方向に延在する断面において、搬送設備2の配管2bは、例えば、L字状とされている。配管2bがL字状とされていることにより、狭隘な都市土木の現場Aであっても、道路Rを避けた工事ヤードA1から掘削土Sを地上Tに排出することが可能となる。従って、道路Rを避けた工事ヤードA1から掘削土Sを排出することにより、一般交通の障害にならない箇所への掘削土Sの搬送が可能となる。
【0026】
その結果、掘削土Sの搬送を夜間に限らず昼間に実施することができるので、工期の短縮に寄与する。また、道路Rを避けた工事ヤードA1に掘削土Sを排出することにより配管2bの距離が長くなる場合であっても、搬送システム1では、掘削土Sの流動性を高めて掘削土Sを搬送するため、効率のよい掘削土Sの搬送が可能となる。
【0027】
一例として、現場Aにおける掘削土Sは、液性指数及び鋭敏比が一定値以上である土である。液性指数は、例えば、自然含水比、液性限界及び塑性係数から求められる。液性限界とは土が塑性体から液体に遷移するときの境界値となる含水比を示しており、塑性指数とは土が塑性状を示す含水比の幅を示している。掘削土Sの液性指数は、例えば、0.5以上であるが、0.7以上、0.8以上、又は1.0以上であってもよい。掘削土Sの鋭敏比は、例えば、2.0以上であるが、3.0以上、4.0以上、8.0以上、10.0以上、又は17.0以上であってもよい。
【0028】
前述したように、現場Aは、比較的狭隘な都市土木の現場であって、例えば地上Tに自動車R1が走行する道路Rと工事ヤードA1とが併存する現場である。地下の現場Aでは、例えば、地下構造物を構築するために地盤Gを掘削し、掘削によって生じた掘削土Sを搬送設備2(配管2b)に通して地下から地上Tに向かって掘削土Sを搬送する。
【0029】
本実施形態において、掘削土Sは、予め定められた範囲E1において気泡B(図2参照)が供給されて撹拌される。搬送システム1は、例えば、前述した搬送設備2と、範囲E1に気泡Bを供給する気泡供給装置11と、掘削土Sと気泡Bとを撹拌する撹拌装置12と、撹拌装置12によって撹拌された掘削土Sを吸引する吸引装置20とを備える。
【0030】
図2は、例示的な気泡供給装置11を示す断面図である。気泡供給装置11は、例えば、掘削土Sに供給する気泡Bを生成する装置本体11bと、装置本体11bによって生成された気泡Bが通る管状部材11cとを有する。装置本体11bは、例えば、界面活性剤から気泡Bを生成する。装置本体11bは、例えば、地上Tに設けられ、一例として、ダンプトラックDに載せられる。一例として、装置本体11bは、界面活性剤、水及び空気を網状体(例えばチェーン又はウール状部材)に通すと共に界面活性剤の溶液に空気圧を作用させて気泡Bを生成する。
【0031】
管状部材11cは、一例として、装置本体11bから延びるパイプ部材11dと、パイプ部材11dの装置本体11bとは反対側に取り付けられた気泡注入管11fとを有する。例えば、気泡注入管11fは、気泡注入管11fの側面に形成された複数の開口11gを有する。
【0032】
複数の開口11gは、例えば、気泡注入管11fの延在方向に沿って並ぶと共に、気泡注入管11fの周方向に沿って並んでいる。例えば、複数の開口11gは、気泡注入管11fの側面において格子状に配列されている。これにより、装置本体11bからの気泡Bはパイプ部材11dを通った後に、複数の開口11gのそれぞれから噴出される。以上、気泡供給装置11の構成の例について説明した。しかしながら、気泡供給装置11の構成は、上記の例に限定されず適宜変更可能である。
【0033】
撹拌装置12は、一例として、スコップである。この場合、掘削土Sにおける撹拌装置12の取り扱い性を良好にすることができる。しかしながら、図3に示されるように、撹拌装置12は、掘削土Sと気泡Bとを混合撹拌するハンドミキサーであってもよい。撹拌装置12は、人手で持てる程度の軽量の機器である。
【0034】
例えば、撹拌装置12は、作業者が把持する一対の把持部12bと、一対の把持部12bの間に位置する駆動部12cと、駆動部12cから延び出す棒状部12dと、棒状部12dの駆動部12cとは反対側の端部において回転する回転部12fとを備える。駆動部12cは、例えば、棒状部12dを中心として回転部12fを回転させるスイッチを有し、当該スイッチがオン操作されることによって回転部12fを回転させる。
【0035】
回転部12fは、掘削土S及び気泡Bを撹拌する部位であって、棒状部12dを中心として回転する羽根部12gを有する。回転部12fは、例えば、回転部12fの回転方向に沿って並ぶ複数の羽根部12gを有する。複数の羽根部12gが掘削土S及び気泡Bに浸漬された状態で複数の羽根部12gが棒状部12dを中心として回転することにより、撹拌装置12では掘削土S及び気泡Bを効率よく混合撹拌することが可能となる。また、撹拌装置12の大きさ、及び撹拌装置12の重量は、一人の作業者が手で持てる程度とされている。従って、狭隘な現場Aであっても撹拌装置12で効率よく掘削土S及び気泡Bを混合撹拌させることができる。
【0036】
図4(a)は、気泡Bを供給していない掘削土Sの状態を模式的に示す図である。図4(b)は、気泡Bを供給して気泡Bと共に掘削土Sを混合撹拌した状態を模式的に示す図である。図4(a)及び図4(b)に示されるように、掘削土Sは、気泡Bが供給されて混合撹拌されると、流動性が高まって変形しやすくなる。
【0037】
具体的には、筒状部材Cに掘削土Sを入れ、その後筒状部材Cを外した場合、気泡Bを入れなかった掘削土Sは殆ど変形しなかった。これに対し、気泡Bが供給されて気泡Bと共に混合撹拌された掘削土Sの場合、筒状部材Cを外したときに掘削土Sの底部が広がり掘削土Sの形状が下方に向かうに従って広がる形状に遷移した。一例として、このような挙動を示す掘削土Sの液性指数は0.5以上であり、当該掘削土Sの鋭敏比は2.0以上である。
【0038】
本実施形態において、吸引装置20で吸引可能、且つ搬送設備2において搬送可能な掘削土Sの粘度は、例えば、2000cst以下である。例えば、液性指数が0.8以上且つ1.0以下である掘削土Sの粘度は1000cst以上である。本実施形態に係る搬送システム1では、液性指数が0.8以上且つ1.0以下であって粘度が1000cst以上である掘削土Sも圧送可能である。但し、一層効率よく掘削土Sを搬送する観点では、掘削土Sの粘度が1000cst以下であることがより好ましい。
【0039】
図1(b)及び図5に示されるように、例えば、吸引装置20は地上Tに配置される。図5は、吸引装置20を模式的に示す側面図である。一例として、吸引装置20はダンプトラックDに積載されている。吸引装置20は、配管2bの内部の掘削土Sを吸引して掘削土Sを地上Tに搬送する。一例として、吸引装置20はスクイーズポンプである。
【0040】
例えば、吸引装置20は、本体部21と、本体部21に掘削土Sを吸引する吸引部22と、吸引された掘削土Sを本体部21から排出する排出部23とを備える。吸引部22には搬送設備2の配管2bが接続され、排出部23からは掘削土Sの排出管24が接続されている。例えば、排出管24からダンプトラックDの荷台に掘削土Sが排出される。
【0041】
例えば、本体部21にはポンピングチューブと回転体が内蔵されており、吸引部22及び排出部23は当該ポンピングチューブが突出した部分であってもよい。一例として、吸引装置20では、当該回転体が当該ポンピングチューブを圧縮しながら回転することにより、当該ポンピングチューブ及び配管2bの内圧を高めて掘削土Sを吸引部22から排出部23に搬送する。
【0042】
吸引装置20は、例えば、吸引装置20の下端に複数の車輪25を有する。この場合、吸引装置20を手軽に移動させることが可能となる。以上、吸引装置20の構成の例について説明した。しかしながら、吸引装置の構成は、上記の吸引装置20の例に限られず後述するように適宜変更可能である。
【0043】
次に、本実施形態に係る掘削搬送方法の例について説明する。以下では、現場Aにおいて掘削して得られた掘削土Sを搬送設備2を介して搬送する。まず、図6(a)に示されるように、現場Aに搬送対象の掘削土Sの範囲E1を設定する(範囲を定める工程)。そして、範囲E1の掘削土Sに探査棒を挿入し、掘削土S中の障害物Xへの当該探査棒の接触によって障害物Xの有無を確認する(障害物の有無を確認する工程)。
【0044】
障害物Xは、掘削土Sに埋設された埋設物を示しており、例えば、埋設管である。掘削は、障害物Xを避けて行う必要があるので、事前に障害物Xの位置を把握することは重要である。障害物Xは、例えば、電力ケーブル若しくは光ファイバケーブルが収容された管、又は水道管であってもよい。
【0045】
障害物Xを探索する探査棒としては、例えば、前述した気泡注入管11fを用いることが可能である。この場合、掘削土Sに気泡注入管11fを挿入し、掘削土S中の障害物Xへの気泡注入管11fの接触によって障害物Xの有無を確認する。探査棒として気泡注入管11fを用いる場合、障害物Xの有無を確認した後に、気泡注入管11fを介して掘削土Sに気泡Bを注入できるので、障害物Xの探索、及び気泡Bの供給(注入)を効率的に行うことができる。
【0046】
例えば、気泡Bを供給する前に掘削土Sに供給する気泡Bの供給量を定める。気泡Bの供給量は、一例として、掘削土Sに対する気泡Bの添加率を示している。例えば、掘削土Sの粒径が小さいほど気泡Bの供給量が大きくなるように供給量が定められる。掘削土Sの粒径は、掘削土Sの比表面積、及び掘削土Sの空隙量と相関がある。従って、掘削土Sの比表面積が大きいほど、又は掘削土Sの空隙量が大きいほど、気泡Bの供給量が大きくなるように供給量が定められてもよい。
【0047】
例えば、掘削土Sが砂である場合には、掘削土Sがシルト又は粘性土である場合と比較して、より少ない気泡Bで掘削土Sの流動化が可能となる。従って、掘削土Sが砂である場合には、掘削土Sがシルト又は粘性土である場合よりも気泡Bの供給量を少なくしてもよい。また、掘削土Sが砂礫である場合には、掘削土Sが砂である場合と比較して、より多く気泡Bを供給しなければ掘削土Sが流動化しない。従って、掘削土Sが砂礫である場合には、掘削土Sが砂である場合よりも気泡Bの供給量を多くしてもよい。
【0048】
例えば、気泡Bを供給する前に、界面活性剤を含む溶液に対する気泡Bの体積の倍率である発泡倍率を定めてもよい。一例として、発泡倍率は2倍以上且つ200倍以下の範囲となるように定められる。また、発泡倍率は、8倍以上であってもよいし、20倍以下、50倍以下、又は100倍以下であってもよい。
【0049】
更に、気泡Bを供給する前に、搬送する対象の掘削土Sの体積(地山体積)に対する気泡Bの体積の比率を定めてもよい。一例として、当該比率は10%以上且つ300%以下となるように定められる。また、当該比率は、30%以上、50%以上、又は100%以上であってもよいし、200%以下、又は140%以下であってもよい。
【0050】
図6(b)及び図7(a)に示されるように、障害物Xの探索と、掘削深さの決定の後に気泡Bの供給(気泡を供給する工程)を行ってもよい。掘削深さの決定では、探索した障害物Xが傷つかないように、掘削深さHが定められる。掘削深さHは、例えば、平面視における障害物Xがない箇所では一定深さとなり、平面視における障害物Xがある箇所では障害物Xの上端までの深さとなる。
【0051】
気泡Bの供給は、例えば、掘削土Sの表面への気泡Bの散布によって行われる(気泡を散布する工程)。具体的には、気泡供給装置11の装置本体11bを起動して装置本体11bにおいて界面活性剤、水及び空気から気泡Bを生成し、生成した気泡Bを気泡注入管11fから掘削土Sの表面に散布する。この場合、掘削土Sへの気泡Bの供給を容易に行うことができる。
【0052】
また、気泡Bの供給は、掘削土Sの内部への気泡Bの注入によって行われてもよい(気泡を注入する工程)。この場合、掘削土Sの表面から掘削土Sに気泡注入管11fを挿入し、挿入した気泡注入管11fの複数の開口11gのそれぞれから気泡Bが掘削土Sに注入される。この場合、掘削土Sの内部にまで気泡Bをより確実に供給することができる。
【0053】
掘削土Sに気泡Bを供給した後には、気泡Bと共に掘削土Sを撹拌する(撹拌する工程)。この撹拌は、例えば、前述した撹拌装置12によって行われてもよいし、スコップによって行われてもよい。また、図7(b)に示されるように、掘削土Sに挿入される回転体32を備えた撹拌装置30によって撹拌が行われてもよい。
【0054】
例えば、撹拌装置30は、掘削土Sに挿入される棒状部31と、棒状部31の端部において回転可能とされた複数の回転体32とを備える。複数の回転体32及び棒状部31を気泡Bが供給された掘削土Sに挿入し、複数の回転体32を回転させながら棒状部31を水平方向に移動させることにより、撹拌装置30によって撹拌を行うことが可能である。
【0055】
以上のように、掘削土Sの撹拌を行う撹拌装置としては種々の構成のものを採用することが可能である。撹拌装置によって気泡Bが供給された掘削土Sを十分に撹拌することによって、前述したように掘削土Sを流動化させる。そして、流動化させた掘削土Sを搬送する(掘削土を搬送する工程)。
【0056】
掘削土Sの搬送は、例えば、流動化した掘削土Sが搬送設備2の配管2bに導入され、配管2bに導入された掘削土Sを吸引装置20が吸引することによって行われる。しかしながら、図8(a)に示されるように、サンドポンプ40によって掘削土Sを吸引及び搬送してもよい。この場合、サンドポンプ40が吸引装置として機能する。
【0057】
サンドポンプ40は、流動化した掘削土Sに浸漬され、掘削土Sに浸漬された状態で流動化した掘削土Sを吸い上げる。サンドポンプ40は、吸い上げた掘削土Sを配管2bを介して搬送し、搬送された掘削土Sは例えばダンプトラックDに積載される。なお、吸引装置としては、前述したスクイーズポンプ又はサンドポンプのほか、例えば、遠心力ポンプ又はピストンポンプを用いることが可能である。以上の工程を経て、図8(b)に示されるように掘削土Sの搬送が完了する。
【0058】
掘削土Sは、例えば、元の場所、又は元の場所とは別の場所に埋め戻される埋め戻し土である。このように、掘削土Sは、埋め戻し材として再利用することが可能な埋め戻し土である。埋め戻しのときには、掘削土Sに含まれる気泡Bを消す作業が行われる。気泡Bを消すときに、例えば、消泡剤が掘削土Sに添加されてもよい。この場合、気泡Bを速やかに消滅させることができる。
【0059】
また、気泡Bを消すときに、例えば、温風を掘削土Sに吹き付けてもよい。この場合、気泡Bを速やかに消滅させることができると共に掘削土Sの水分を低減させることができる。温風は、ドライヤーから供給される温風であってもよいし、排気ガスであってもよい。温風が排気ガスである場合、排気ガスを気泡Bを消滅させる用途として有効利用できる。更に、気泡Bを消すときに、掘削土Sを一定期間放置してもよい。この場合、一日程度で気泡Bを掘削土Sから消滅させることができる。以上のように気泡Bを消滅させることにより、掘削土Sを埋め戻し土として再利用できる。すなわち、本実施形態では、掘削土Sを、気泡Bが含まれる状態、及び気泡Bが含まれない状態に可逆的に変化させることが可能であり、気泡Bが含まれない状態にすることで掘削土Sを埋め戻すことが可能となる。
【0060】
次に、本実施形態に係る掘削搬送方法から得られる作用効果について詳細に説明する。本実施形態に係る掘削搬送方法では、予め範囲E1を設定し、予め設定した範囲E1の掘削土Sに気泡Bを供給する。そして、当該範囲E1において掘削土Sを気泡Bと共に撹拌及び流動化する。よって、予め範囲E1を設定し、設定した範囲E1において掘削土Sを気泡Bと共に撹拌するので、吸引及び搬送を行う前に掘削土Sを十分に流動化させることができる。
【0061】
設定された範囲E1内で十分に流動化された掘削土Sが吸引装置20(又はサンドポンプ40)に吸引されて掘削土Sが搬送されるので、掘削土Sの吸引及び搬送を効率よく行うことができる。また、この掘削搬送方法では、撹拌装置(例えば、撹拌装置12又は撹拌装置30)を配置すればよく、バックホウ等の大型機器を配置する必要がない。従って、狭隘領域Nにも掘削土Sの搬送に関する機器を容易に配置することができる。その結果、掘削土Sの搬送に関する機器を狭隘領域Nに容易に配置して、流動化された掘削土Sを吸引装置20等の吸引によって効率よく搬送することができる。
【0062】
本実施形態において、気泡を供給する工程では、図7(a)に示されるように、掘削土Sの表面に気泡Bを散布する工程、及び掘削土Sに気泡注入管11fを挿入して気泡注入管11fを介して掘削土Sに気泡Bを注入する工程、のいずれかを行う。掘削土Sの表面に気泡Bを散布する場合、掘削土Sに気泡Bを散布すればよいので、掘削土Sへの気泡Bの供給を効率よく行うことができる。気泡注入管11fを介して掘削土Sに気泡Bを注入する場合、掘削土Sの深い位置にも気泡Bを供給できるので、掘削土Sへの気泡Bの供給をより十分に行うことができる。
【0063】
本実施形態では、気泡を供給する工程の前に、掘削土Sに供給する気泡Bの供給量を定める工程が実行される。気泡Bの供給量を定める工程では、掘削土Sの粒径が小さいほど気泡Bの供給量が大きくなるように供給量が定められる。掘削土Sの粒径が大きいほど気泡Bの供給量が少なくても掘削土Sを十分に流動化でき、掘削土Sの粒径が小さいほどより多くの気泡Bを供給しなければ掘削土Sを流動化できないことが知られている。前述したように掘削土Sの粒径が小さいほど気泡Bの供給量が大きくなるように気泡Bの供給量が定められることにより、掘削土Sの粒径にかかわらず掘削土Sを十分に流動化させることができる。その結果、掘削土Sの搬送を更に効率よく行うことができる。
【0064】
本実施形態では、気泡を供給する工程の前に、界面活性剤を含む溶液に対する気泡Bの体積の倍率である発泡倍率を定める工程が実行される。発泡倍率を定める工程では、発泡倍率が2倍以上且つ200倍以下となるように発泡倍率が定められてもよい。この場合、発泡倍率が2倍以上であることによって気泡Bによる掘削土Sの流動化を確実に行うことができる。発泡倍率が200倍以下であることにより、掘削土Sの流動化と共に気泡Bの生成を容易に行うことができる。
【0065】
本実施形態では、気泡を供給する工程の前に、搬送する対象の掘削土Sの体積に対する気泡Bの体積の比率を定める工程が実行される。当該比率を定める工程では、当該比率が10%以上且つ300%以下となるように比率が定められる。当該比率が10%以上であることにより、気泡Bによって掘削土Sを十分に流動化させることができる。当該比率が300%以下であることにより、掘削土Sの体積に対する気泡Bの体積が多くなりすぎないようにできるので、単位時間あたりに搬送する掘削土Sの体積を多くすることができる。従って、掘削土Sの搬送性の更なる向上に寄与する。
【0066】
本実施形態において、吸引装置は、スクイーズポンプである吸引装置20、サンドポンプ40、遠心力ポンプ及びピストンポンプのいずれかであってもよい。この場合、高い吸引性能を有する吸引装置を用いることができるので、掘削土Sの搬送を一層効率よく行うことができる。
【0067】
本実施形態に係る掘削搬送方法は、掘削土を搬送する工程の後に、掘削土に含まれる気泡を消す工程を備える。気泡を消す工程では、掘削土Sに消泡剤を供給する工程、及び掘削土に温風を吹き付ける工程、のいずれかが実行される。掘削土に含まれる気泡を消す工程を備えることにより、掘削土Sの気泡Bを消して掘削土Sを埋め戻すことができる。従って、掘削土Sを埋め戻すことにより掘削土Sを再利用することができる。
【0068】
掘削土に消泡剤を供給する工程が行われる場合、消泡剤によって速やかに気泡Bを消すことができるので、掘削土Sの埋め戻しを効率よく行うことができる。また、掘削土に温風を吹き付ける工程が行われる場合、温風によって速やかに気泡Bを消すことができると共に掘削土Sの水分を低減させることができる。従って、掘削土Sをより確実に元の状態に戻すことができる。
【0069】
本実施形態において、気泡を供給する工程では、掘削土Sに気泡注入管11fを挿入し、掘削土S中の障害物Xへの気泡注入管11fの接触によって障害物Xの有無を確認する工程と、障害物Xの有無を確認した後に、気泡注入管11fを介して掘削土Sに気泡Bを注入する工程と、を行ってもよい。この場合、掘削土Sに気泡Bを注入する気泡注入管11fの障害物Xへの接触有無によって掘削土S中の障害物Xの有無が確認される。従って、気泡注入管11fを障害物Xの探索用として兼用することができる。また、気泡注入管11fによる障害物Xの有無確認と共に掘削土Sへの気泡Bの注入を行うことができるので、障害物Xの有無確認と気泡Bの注入を効率よく行うことができる。
【0070】
以上、本開示に係る掘削搬送方法の実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る掘削搬送方法は、前述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更可能である。すなわち、掘削搬送方法の工程の内容及び順序、並びに、搬送システムの各部の構成、形状、大きさ、数、重量、材料及び配置態様は、上記の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0071】
例えば、前述の実施形態では、気泡供給装置11及び撹拌装置12を備える搬送システム1について説明した。しかしながら、図9(a)に示されるように、気泡供給装置11及び撹拌装置12に代えて、気泡供給撹拌ユニット50を備える搬送システムであってもよい。
【0072】
気泡供給撹拌ユニット50は、気泡供給部51及び撹拌部52を備える。撹拌部52は、前述した撹拌装置12と同様、把持部12b、駆動部12c、棒状部12d及び回転部12fを備え、更に、気泡Bが通るパイプ51bを保持するパイプ保持部52bと、パイプ保持部52bを回転しないように固定する固定具52eとを備える。パイプ保持部52bは、例えば、固定具52eに取り付けられた拡径部52cと、拡径部52cにパイプ51bを保持する保持部52dとを有する。拡径部52cの内部には、棒状部12dが駆動部12cの駆動によって回転可能に挿通されている。撹拌部52は、例えば、複数(一例として2つ)のパイプ保持部52bを有し、複数のパイプ保持部52bが棒状部12dに沿って並んだ状態で固定具52eに固定されている。例えば、固定具52eの一端は駆動部12cに固定されており、固定具52eの他端は下側に位置する拡径部52cに固定されている。
【0073】
気泡供給部51は、例えば、パイプ51bと、気泡Bを生成する気泡生成部51cと、気泡生成部51cにおいて生成された気泡Bをパイプ51bに供給する供給ポンプ51dと、供給ポンプ51dを制御する制御部51fとを備える。パイプ51bは、供給ポンプ51dから延び出している。気泡生成部51cの機能は、例えば、気泡供給装置11の装置本体11bの機能と同一である。
【0074】
パイプ51bは、例えば、撹拌部52の棒状部12dに沿って延びており、パイプ51bの先端は羽根部12gの回転軌道の内側に位置している。従って、羽根部12gの回転軌道の内側から掘削土Sに気泡Bを供給すると共に羽根部12gによって掘削土Sを撹拌することが可能となる。
【0075】
供給ポンプ51dが制御部51fの制御を受けることにより、供給ポンプ51dからパイプ51bを介して掘削土Sに供給される気泡Bの量が調整される。制御部51fは、例えば、供給ポンプ51dをインバータ制御する。供給ポンプ51dは、例えば、制御部51fによってインバータ制御されることにより、掘削土Sに気泡Bを定量供給する。制御部51fは、例えば、掘削土Sの粘度に応じて供給ポンプ51dから吐出される気泡Bの量を制御してもよい。
【0076】
また、前述の実施形態では、スクイーズポンプである吸引装置20によって流動化された掘削土Sを吸引する例について説明した。しかしながら、吸引装置としては、図9(b)に示されるように、遠心力ポンプである泥土ポンプ60を用いることも可能である。この場合、掘削土Sに対する気泡Bの供給、及び掘削土Sと気泡Bの撹拌は、有底筒状の容器E21で行われる。
【0077】
容器E21及び泥土ポンプ60の重量は、例えば、10kg以下である。このように容器E21及び泥土ポンプ60は、軽量であるため、例えば作業者が1人で片手で持ち運ぶことが可能である。泥土ポンプ60は、例えば、ケーブル60bから電力供給を受けて動作する。
【0078】
遠心力ポンプである泥土ポンプ60には、インペラが内蔵されており、泥土ポンプ60に取り込まれた掘削土S及び気泡Bが当該インペラで混合撹拌される。泥土ポンプ60は、例えば、鉛直下方に向けられる掘削土Sの取り込み口を有する。泥土ポンプ60は、容器E21の外部にまで上方に延在するホース60cを備える。ホース60cは、例えば、搬送設備2に接続されている。泥土ポンプ60は、泥土ポンプ60のインペラによって混合撹拌された掘削土S及び気泡Bを吸引し、吸引された掘削土Sは、ホース60cを通って泥土ポンプ60から搬送設備2に搬送される。
【0079】
図10(a)は、別の変形例に係る吸引装置70を示している。吸引装置70は、例えば、横置き型の遠心力ポンプである。吸引装置70の高さH2は、例えば、0.3m以上且つ0.5m以下(一例として0.4m)であり、吸引装置70の長手方向の長さN1は、0.8m以上且つ1.0m以下(一例として0.9m)である。一例として、吸引装置70は、ワイヤ等によって移動する。
【0080】
例えば、吸引装置70は、範囲E1を画成する枠部材E11の内側に配置され、枠部材E11の内側の掘削土S及び気泡Bを撹拌及び吸引する。吸引装置70は、例えば、吸引装置70の側方から掘削土S及び気泡Bを吸引する吸引部71と、吸引部71に吸引された掘削土S及び気泡Bを撹拌するインペラ72と、インペラ72を回転駆動するモータ73と、モータ73に電力を供給する電力ケーブル74と、インペラ72によって撹拌された掘削土Sを搬送設備2に導く搬送経路75とを備える。
【0081】
吸引装置70では、例えば、吸引部71、インペラ72及びモータ73が水平方向に並ぶように配置されるので、吸引装置70の高さH2を抑えることが可能である。インペラ72は、例えば、モータ73から駆動力を受けて水平方向に延びる軸線L3を中心として回転し、掘削土S及び気泡Bを撹拌する。インペラ72によって撹拌された掘削土S及び気泡Bは、インペラ72の回転軌道の径方向外側に弾き出されて搬送経路75を介して搬送設備2(例えば配管2b)に圧送される。
【0082】
図10(b)は、吸引装置70の変形例に係る吸引装置80を示す側面図である。図10(b)に示されるように、吸引装置80は、吸引装置70と同様、インペラ72、モータ73、電力ケーブル74及び搬送経路75を備えるが、吸引部81の構成が前述した吸引部71とは異なっている。
【0083】
吸引装置80は、横置き型兼縦置き型の遠心力ポンプである。すなわち、吸引装置80は、吸引部81及びインペラ72が鉛直方向に並ぶように縦置きすることが可能であり、且つ吸引部81及びインペラ72が水平方向に並ぶように横置きすることが可能である。吸引部81は、インペラ72から延びる筒状部81bと、筒状部81bの内側に位置するスクリューコンベヤ81cと、筒状部81bの内側においてスクリューコンベヤ81cの一部を被覆する被覆部81dとを有する。筒状部81bは、縦置きされた吸引装置80を支持する台として機能する。
【0084】
筒状部81bは、例えば、スクリューコンベヤ81cの軸線L4が延びる方向に延在する複数の柱部81fと、複数の柱部81fの間において筒状部81bの周方向に延びる複数の環状部81gとを有する。複数の柱部81f、及び複数の環状部81gの間には、枠状の空間81hが形成されており、空間81hからスクリューコンベヤ81c及び被覆部81dを視認可能とされている。
【0085】
スクリューコンベヤ81cは、例えば、気泡Bが供給された掘削土Sに埋没され、掘削土Sに埋没された状態で掘削土Sをインペラ72に導く。スクリューコンベヤ81cは、例えば、モータ73から駆動力を受けて回転し、掘削土S及び気泡Bを撹拌しながらインペラ72に搬送する。インペラ72に搬送された掘削土S及び気泡Bは、インペラ72によって更に撹拌され、搬送経路75を介して搬送設備2(例えば配管2b)に搬送される。
【0086】
以上のように吸引装置としては種々の構成のものを採用することが可能である。更に、吸引装置は、上記の各例以外のものであってもよく、例えば、ジェクタ又は真空ポンプであってもよい。ジェクタ又は真空ポンプであっても気泡Bとの撹拌によって流動化された掘削土Sを効率よく吸引及び搬送できる。
【0087】
前述した実施形態では、搬送設備2から地上Tに出された掘削土SをダンプトラックDに積載する例について説明した。ここで、搬送設備2から出された掘削土Sに対して改質剤が供給されてもよい。この場合、改質された掘削土SをダンプトラックDによって移送することができる。更に、本開示に係る現場は、前述した現場Aに限られず、本開示に係る掘削搬送方法は種々の現場に適用させることができる。
【0088】
更に、本開示に係る掘削圧送方法では、掘削土に気泡と共に分散剤が供給されてもよい。分散剤は、掘削土を流動化させるための薬剤であって、例えば、ポリカルボン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、又はアニオンポリマーを含んでもよい。この場合、掘削圧送方法は、例えば図7(a)及び図7(b)に示されるように、予め定めた範囲にある掘削土Sに気泡Bと共に分散剤を供給する工程と、当該範囲において掘削土S、気泡B及び分散剤を撹拌する工程とを備える。すなわち、気泡を供給する工程では、気泡B及び分散剤が掘削土に供給される。
【0089】
例えば、分散剤を供給する工程では、分散剤を供給する供給ポンプをインバータ制御してもよい。この場合、分散剤を供給する供給ポンプがインバータ制御されることにより、掘削土Sに分散剤を定量供給することが可能となる。従って、掘削土Sに対する分散剤の量を適切にすることができるので、掘削土Sを流動化させると共に分散剤にかかるコストを抑えることができる。
【0090】
例えば、分散剤を供給する工程では、分散剤と共に、掘削土Sに含まれるイオンを中和するイオン強度調整剤、及び掘削土SのpHを調整するpH調整剤、の少なくともいずれかを含む助剤を供給してもよい。この場合、イオン強度調整剤による掘削土Sに含まれるイオンの中和、又はpH調整剤による掘削土SのpHの調整が可能となるので、分散剤と共に掘削土Sをより確実に流動化させることができる。従って、掘削土を更に効率よく圧送することができる。
【0091】
次に、分散剤を用いた実証実験について説明する。本実験では、分散剤が界面活性剤水溶液に添加され、当該界面活性剤水溶液を発泡させた。1Lの界面活性剤水溶液あたり5gの分散剤を添加した。そして、図11に示されるように、分散剤及び気泡が供給された掘削土Sを実施例1及び実施例3、気泡のみが供給された掘削土Sを実施例2及び実施例4として、掘削土Sに対する気泡又は分散剤の添加率とJHフロー(単位:mm)との関係を測定した。JHフロー(フロー値)は掘削土Sの流動性を示す指標であり、JHフローが高いほど掘削土Sの流動性が高いことを示している。
【0092】
図11に示されるように、気泡のみの実施例2,4と比較して、気泡と共に分散剤が供給された実施例1,3では、確実に掘削土Sの流動性を高められることが分かった。従って、掘削土Sの搬送性を高める観点では、気泡と共に分散剤を掘削土Sに供給することがより望ましいことが分かった。更に、細粒分が主体である粘土又はシルトに対しては、気泡のみを供給しても、気泡が消えることによって掘削土Sの流動性を十分に高められないことがあった。しかしながら、粘土又はシルトに気泡と共に分散剤が供給される場合、掘削土Sの流動性をより高められることが分かった。また、気泡と分散剤が掘削土Sに供給される場合、気泡及び分散剤のそれぞれの添加量を多くしなくても掘削土Sの流動性を十分に高められることが分かった。
【符号の説明】
【0093】
1…搬送システム、2…搬送設備、2b…配管、11…気泡供給装置、11c…管状部材、11d…パイプ部材、11f…気泡注入管、11g…開口、12…撹拌装置、12b…把持部、12c…駆動部、12d…棒状部、12f…回転部、12g…羽根部、20…吸引装置、21…本体部、22…吸引部、23…排出部、24…排出管、25…車輪、30…撹拌装置、31…棒状部、32…回転体、40…サンドポンプ(吸引装置)、50…気泡供給撹拌ユニット、51…気泡供給部、51b…パイプ、51c…気泡生成部、51d…供給ポンプ、51f…制御部、52…撹拌部、52b…パイプ保持部、52c…拡径部、52d…保持部、60…泥土ポンプ(吸引装置)、60b…ケーブル、60c…ホース、70…吸引装置、71…吸引部、72…インペラ、73…モータ、74…電力ケーブル、75…搬送経路、80…吸引装置、81…吸引部、81b…筒状部、81c…スクリューコンベヤ、81d…被覆部、81f…柱部、81g…環状部、81h…空間、A…現場、A1…工事ヤード、A11…山留め壁、A12…梁、A13…先行床、A14…シールドトンネル、B…気泡、C…筒状部材、D…ダンプトラック、E1…範囲、E11…枠部材、E21…容器、G…地盤、L3…軸線、L4…軸線、N…狭隘領域、R…道路、R1…自動車、S…掘削土、T…地上、X…障害物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11