(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176628
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】糸継装置
(51)【国際特許分類】
B65H 67/08 20060101AFI20231206BHJP
B65H 69/06 20060101ALI20231206BHJP
D01H 15/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B65H67/08 Z
B65H69/06
D01H15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089012
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】澤田 映
【テーマコード(参考)】
3F112
4L056
【Fターム(参考)】
3F112AA06
3F112JA08
3F112JB10
4L056CB04
4L056CB07
4L056FA01
4L056FA13
4L056FA15
4L056FA17
(57)【要約】
【課題】ノズルが金属から形成される場合でも、ノズルの耐摩耗性を向上させることができる糸継装置を提供する。
【解決手段】糸継装置26は、第1金属により形成される糸継ノズル70を備える。糸継ノズル70は、糸継ノズル70を第1方向に貫通するように形成された糸継空間72と、第1方向に直交する第2方向において糸継空間72に接続され、第2方向において糸継ノズル70の内外を連通させる糸挿入隙間73と、を有する。糸継空間72を画成する糸継ノズルの少なくとも一部分の表面粗度(Ra)は、0より大きく1.5以下である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属により形成される糸継ノズルを備え、
前記糸継ノズルは、
前記糸継ノズルを第1方向に貫通するように形成された糸継空間と、
前記第1方向に直交する第2方向において前記糸継空間に接続され、前記第2方向において前記糸継ノズルの内外を連通させる糸挿入隙間と、を有し、
前記糸継空間を画成する前記糸継ノズルの少なくとも一部分の表面粗度(Ra)は、0より大きく1.5以下である、糸継装置。
【請求項2】
前記糸継空間を画成する前記糸継ノズルの少なくとも一部分の表面粗度(Ra)は、0.5以上である、請求項1に記載の糸継装置。
【請求項3】
前記糸継ノズルは、前記第1金属の表面において、前記第1金属とは異なる金属により形成されるめっき部を有する、請求項1又は2に記載の糸継装置。
【請求項4】
前記糸継空間は、
圧縮空気を噴射する1つ又は複数の第1噴射孔を含む第1糸継空間と、
前記第1方向において前記第1糸継空間と隣接し且つ互いに連通し、前記圧縮空気を噴射する1つ又は複数の第2噴射孔を含む第2糸継空間と、を有し、
前記めっき部は、無電解ニッケルめっき皮膜である、請求項3に記載の糸継装置。
【請求項5】
前記めっき部の厚みは、5μm以上20μm以下である、請求項3又は4に記載の糸継装置。
【請求項6】
前記糸継ノズルには、ベーキング処理が施されている、請求項1~5の何れか一項に記載の糸継装置。
【請求項7】
前記糸継ノズルは、前記第1金属と結合剤とが混錬された混錬物が射出され、焼結されることにより成形される、請求項1~6の何れか一項に記載の糸継装置。
【請求項8】
前記糸継ノズルの前記第1金属の表面はショットブラスト処理により研磨されている、請求項1~7の何れか一項に記載の糸継装置。
【請求項9】
前記糸継ノズルを収容する支持ブロックを備え、
前記糸継ノズルと前記支持ブロックとはエポキシ樹脂の熱硬化性の接着剤により接着され、
前記支持ブロックは、前記第1金属とは異なる第2金属からなる、請求項1~8の何れか一項に記載の糸継装置。
【請求項10】
液体が付加された圧縮空気を噴出することにより2本の糸の糸端同士を撚掛けする撚掛け流路を備える、請求項9に記載の糸継装置。
【請求項11】
前記糸継ノズルは、前記糸継装置の外部の空気供給路に接続される空気導入路と、前記空気導入路の下流側に接続された空間であるチャンバと、前記チャンバに接続されて圧縮空気を前記糸継空間に噴射する噴射孔とを有し、前記空気導入路、前記チャンバ、前記噴射孔、前記糸継空間及び前記糸挿入隙間が、前記第1金属により一体物として形成された前記糸継ノズルに設けられている、請求項1に記載の糸継装置。
【請求項12】
前記糸継ノズルは、前記第1金属の表面において、前記第1金属とは異なる金属により形成されるめっき部を有する、請求項11に記載の糸継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮空気の作用によって糸継が行われる空間である糸継室を有する糸継部(糸継装置)が知られている。例えば、ノズルに糸継室が形成されており、ノズルの通路及び噴射孔を通じて、糸継室に圧縮空気が噴射される。解撚された第1糸端と第2糸端とが圧縮空気の作用によって撚り合わされる。ノズルは、例えばセラミックで形成されている。ノズルは支持ブロックの開口部に収容されて固定される。支持ブロックは、例えばアルミニウム等の金属、又は樹脂で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の糸継装置におけるセラミック製ノズルは、糸に対する耐摩耗性の観点において優れている。しかしノズルに衝撃又は応力が加わった際には、セラミック製ノズルは破損しやすいという問題点が挙げられる。
【0005】
本発明は、ノズルの破損を防止するために金属製のノズルとし強度を向上させつつ、糸品質を向上させる糸継装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る糸継装置は、第1金属により形成される糸継ノズルを備える。糸継ノズルは、糸継ノズルを第1方向に貫通するように形成された糸継空間と、第1方向に直交する第2方向において糸継空間に接続され、第2方向において糸継ノズルの内外を連通させる糸挿入隙間と、を有する。糸継空間を画成する糸継ノズルの少なくとも一部分の表面粗度(Ra)は、0より大きく1.5以下である。
【0007】
この糸継装置によれば、金属製の糸継ノズルにより強度が向上しているため、糸継ノズルの破損が防止されている。糸継空間を画成する糸継ノズルの少なくとも一部分において、表面粗度(Ra)が0より大きく1.5以下であるので、糸継ぎ時において糸がひっかかることが低減されるため、糸品質が向上する。
【0008】
糸継空間を画成する糸継ノズルの少なくとも一部分の表面粗度(Ra)は、0.5以上であってもよい。表面粗度(Ra)が0.5より小さくしていっても糸継ぎ時における糸のひっかかりは大きく変わらない。そのため、糸継ノズルの表面粗度(Ra)を0.5以上1.5以下とすることで、十分な糸品質を得つつ糸継ノズルの製造コストを抑えることができる。
【0009】
糸継ノズルは、第1金属の表面において、第1金属とは異なる金属により形成されるめっき部を有してもよい。この場合、基材としての第1金属の表面がめっき部によって被覆される。2種類の金属によって硬度が高められる。まためっき部の表面粗度を上記範囲に調整することで、糸品質に優れた糸継ノズルを容易に実現できる。
【0010】
糸継空間は、圧縮空気を噴射する1つ又は複数の第1噴射孔を含む第1糸継空間と、第1方向において第1糸継空間と隣接し且つ互いに連通し、圧縮空気を噴射する1つ又は複数の第2噴射孔を含む第2糸継空間と、を有してもよい。めっき部は、無電解ニッケルめっき皮膜であってもよい。糸継ノズルが複雑な形状を有する場合でも、無電解ニッケルめっき皮膜で第1金属の表面を均一に被覆することができる。
【0011】
めっき部の厚みは、5μm以上20μm以下であってもよい。めっき部の厚みが小さい方が、糸継ノズルの寸法が母材(第1金属)の寸法と略同一になり、完成品としての糸継ノズルの寸法精度が安定する。
【0012】
糸継ノズルには、ベーキング処理が施されていてもよい。ベーキング処理によれば、高い硬度が実現される。また通常の装飾めっき又は防錆用めっきに比して、耐摩耗性に優れる。
【0013】
糸継ノズルは、第1金属と結合剤とが混錬された混錬物が射出され、焼結されることにより成形されてもよい。糸継ノズルは射出成型により成形されるため、機械加工をする必要がない。また鋳造よりも高精度で製造することができる。
【0014】
糸継ノズルの第1金属の表面はショットブラスト処理により研磨されていてもよい。ショットブラスト処理により、第1金属の表面の細かい部分に対しても、研磨による表面粗度の調整(低減)が可能である。
【0015】
糸継装置は、糸継ノズルを収容する支持ブロックを備えてもよい。糸継ノズルと支持ブロックとはエポキシ樹脂の熱硬化性の接着剤により接着され、支持ブロックは、第1金属とは異なる第2金属からなってもよい。熱硬化性の接着剤による接着は、高温条件下での処理(加熱処理)が必要となる。熱硬化性の接着剤は接着強度の面で優れているが、従来のセラミック製ノズル等では、熱膨張に基づく応力が生じてノズルが破損する等、高温条件に耐えられなかった。糸継ノズルが第1金属からなり、支持ブロックが第2金属からなることで、高温条件下における熱膨張による破損の可能性を軽減することができる。
【0016】
糸継装置は、液体が付加された圧縮空気を噴出することにより2本の糸の糸端同士を撚掛けする撚掛け流路を備えてもよい。この場合、液体が、空気とともに撚掛け流路を通じて糸継ノズルの糸継空間内に噴出される。糸継ノズルと支持ブロックとがエポキシ樹脂の熱硬化性の接着剤で接着されているので、液体成分の存在に関わらず、接着強度が維持される。硬化剤を必要とする接着剤では、接着剤中における硬化剤の濃度ばらつきに基づく接着強度のばらつきが生じる可能性がある。その状況下で液体成分が存在すると接着強度が維持されない可能性がある。
【0017】
糸継ノズルは、糸継装置の外部の空気供給路に接続される空気導入路と、空気導入路の下流側に接続された空間であるチャンバと、チャンバに接続されて圧縮空気を糸継空間に噴射する噴射孔とを有してもよい。空気導入路、チャンバ、噴射孔、糸継空間及び糸挿入隙間が、第1金属により一体物として形成された糸継ノズルに設けられていてもよい。このような一体物は、例えば、金属3Dプリンタによって造形される。この造形方法によれば、複雑な形状の糸継ノズルを容易に製造することが可能となる。
【0018】
糸継ノズルは、第1金属の表面において、第1金属とは異なる金属により形成されるめっき部を有してもよい。この場合、基材としての第1金属の表面がめっき部によって被覆される。2種類の金属によって硬度が高められる。まためっき部の表面粗度を上記範囲に調整することで、糸品質に優れた糸継ノズルを容易に実現できる。さらに、金属3Dプリンタによって糸継ノズルが造形される場合には、めっき部により、所望の表面粗度を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、金属製の糸継ノズルにより強度が向上する。また糸継ぎ時において糸がひっかかることが低減され、糸品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】
図3は、一実施形態に係る糸継装置を示す正面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る糸継装置の糸継ノズル組立体を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4の糸継ノズル組立体の流路構造を示す平面図である。
【
図6】
図6(a)は
図4中の糸継ノズルを後側から見て示す斜視図であり、
図6(b)はその糸継ノズルを斜め上方から見て示す斜視図である。
【
図7】
図7は
図6(b)のVII-VII線に沿って切断した断面図である。
【
図8】
図8(a)は変形例に係る糸継ノズルを後側から見て示す斜視図であり、
図8(b)はその糸継ノズルの第1方向に延びる軸線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
図1に示されるように、自動ワインダ1は、並べて配置された複数のワインダユニット3と、機台制御装置5と、玉揚装置7と、を備える。機台制御装置5は、複数のワインダユニット(巻取装置)3のそれぞれと通信可能である。自動ワインダ1のオペレータは、機台制御装置5を適宜操作することにより、複数のワインダユニット3を一括して管理できる。各ワインダユニット3は、給糸ボビンSBから糸Yを解舒しつつ、糸Yを綾振りしながら巻取ボビンWBに巻き取ることにより、パッケージPを形成する。玉揚装置7は、各ワインダユニット3においてパッケージPが満巻(規定量の糸が巻き取られた状態)となった際に、当該ワインダユニット3の位置まで走行し、満巻パッケージを取り外すと共に、空の巻取ボビンWBをセットする。
【0023】
図2に示されるように、ワインダユニット3は、ユニット制御部10と、給糸装置12と、巻取装置14と、を備えている。ユニット制御部10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びROM(Read Only Memory)を備える。ROMには、ワインダユニット3の各構成を制御するためのプログラムが記憶される。CPUは、ROMに記憶されたプログラムを実行する。ユニット制御部10は、ワインダユニット3における各部の動作を制御するが、その制御の一部として、後述する糸継部50における圧縮空気の噴射を制御する。
【0024】
給糸装置12は、図略の搬送トレイに載せられた給糸ボビンSBを所定の位置で支持する。給糸装置12は、給糸ボビンSBから糸Yを解舒し、給糸ボビンSBから糸Yを引き出す。給糸装置12は、糸Yを供給する。給糸装置12は、搬送トレイ式の装置に限られず、例えばマガジン式の装置であってもよい。
【0025】
巻取装置14は、クレードル16及び巻取ドラム18を備える。クレードル16は、巻取ボビンWBを挟み込むことにより、当該巻取ボビンWB(又はパッケージP)を回転可能に支持する。巻取ドラム18は、パッケージPの表面で糸Yをトラバースさせると共にパッケージPを回転させる。巻取ドラム18は、不図示のドラム駆動モータによって回転駆動される。パッケージPの外周を巻取ドラム18に接触させた状態で、当該巻取ドラム18を回転駆動することにより、パッケージPを従動回転させる。巻取ドラム18の外周面には、螺旋状の綾振溝が形成されている。給糸ボビンSBから解舒された糸Yは、綾振溝によって一定の幅でトラバースされながらパッケージPの表面に巻き取られる。これにより、一定の巻幅を有するパッケージPを形成できる。
【0026】
各ワインダユニット3は、給糸装置12と巻取装置14との間の糸道中に、給糸装置12側から順に、解舒補助装置20と、テンション付与装置22と、テンション検出装置24と、糸継装置26と、糸監視装置28と、を備える。糸継装置26の近傍には、第1捕捉案内装置30及び第2捕捉案内装置32が配置されている。
【0027】
解舒補助装置20は、給糸ボビンSBから解舒される糸Yが遠心力で過度に振り回されることを防止し、糸Yを給糸ボビンSBから適切に解舒する。テンション付与装置22は、走行する糸Yに所定のテンションを付与する。本実施形態では、テンション付与装置22は、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式の装置である。
【0028】
テンション検出装置24は、給糸装置12と巻取装置14との間において、走行する糸Yのテンションを検出する。糸継装置26は、給糸装置12と巻取装置14との間で糸Yが何らかの理由により分断状態となったときに、給糸装置12側の糸Yと巻取装置14側の糸Yとを糸継ぎする。
【0029】
糸監視装置28は、糸道を走行する糸Yの状態を監視し、監視した情報に基づいて糸欠陥の有無を検出する。糸欠陥としては、例えば、糸Yの太さ異常、糸Yに含有されている異物、及び、糸切れ等の少なくとも何れかである。
【0030】
第1捕捉案内装置30は、給糸装置12側の待機位置から巻取装置14側の捕捉位置まで旋回可能である。第1捕捉案内装置30は、当該捕捉位置で糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。第2捕捉案内装置32は、給糸装置12側の待機位置から巻取装置14側の捕捉位置まで旋回可能である。第2捕捉案内装置32は、当該補足位置で糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。
【0031】
次に、上述した糸継装置26について、より詳細に説明する。
【0032】
図3は、糸継装置26を示す正面図である。以下の説明では、便宜上、巻取装置14側を下流側、給糸装置12側を上流側といい、糸継装置26に対して糸Yの走行経路(糸道)側を前側といい、その反対側を後側という。上下方向及び前後方向に直交する方向を左右方向という。また、巻取装置14側の糸Yの糸端を第1糸端といい、給糸装置12側の糸Yの糸端を第2糸端という。
【0033】
図3に示されるように、糸継装置26は、フロントプレート(当接部材)90と、第1解撚パイプ部材41A及び第2解撚パイプ部材41Bを含む解撚部40と、圧縮空気の噴射により糸継ぎを行う糸継部50と、解撚部40を挟むように旋回することが可能な一対の糸寄せレバー(不図示)と、糸継部50を挟むように旋回することが可能な第1及び第2糸押さえレバー82,83を含む糸押さえ部材80と、エアーガイド94と、を備える。
【0034】
フロントプレート90は、前後方向を厚さ方向とする板状を呈する。フロントプレート90の前面(当接面)90aは、糸走行方向に沿った平面状を成す。フロントプレート90の前面90aには、糸継部50が設けられている。フロントプレート90の前面90aにおいて、糸継部50の下流側には第1解撚パイプ部材41Aの開口である第1糸端導入口が設けられ、糸継部50の上流側には第2解撚パイプ部材41Bの開口である第2糸端導入口が設けられている。
【0035】
フロントプレート90の前面90aにおいて、第1解撚パイプ部材41Aの下流側には第1ガイド部45Aが設けられ、第2解撚パイプ部材41Bの上流側には第2ガイド部45Bが設けられている。第1及び第2ガイド部45A,45Bは、糸継部50を挟んで対向するように配置されている。第1及び第2ガイド部45A,45Bのそれぞれは、第1及び第2捕捉案内装置30,32のそれぞれで案内された糸Yをガイドする。
【0036】
第1解撚パイプ部材41Aは、圧縮空気の作用によって第1糸端を取り込んで解撚する。第2解撚パイプ部材41Bは、圧縮空気の作用によって第2糸端を取り込んで解撚する。糸継部50は、圧縮空気の作用によって、第1解撚パイプ部材41Aで解撚された第1糸端と第2解撚パイプ部材41Bで解撚された第2糸端とを撚り合わせて継ぐ。糸継部50において糸端同士を撚り合わせる際には、第1及び第2糸端は、クランプ(不図示)によって保持されながら、糸寄せレバー(不図示)によって第1及び第2解撚パイプ部材41A,41Bから引き出され、第1及び第2糸押さえレバー82,83によって糸継部50の近傍において押さえられる。
【0037】
糸押さえ部材80は、カムリンク機構95を介して例えばステッピングモータ等の駆動源(不図示)に接続されている。糸押さえ部材80は、駆動源の駆動力により、フロントプレート90の前面90aに接近及び離間する方向に移動可能に設けられている。すなわち、糸押さえ部材80の第1及び第2糸押さえレバー82,83は、駆動源の駆動力により、先端側がフロントプレート90の前面90aに接近及び離間するように旋回(回動)する。糸押さえ部材80は、フロントプレート90の前面90aに当接することで、第1及び第2糸端を前面90aと協働して押さえる。第1及び第2糸押さえレバー82,83は、例えばねじりコイルばね(不図示)によって、先端側がフロントプレート90に接近する側に付勢されていてもよい。エアーガイド94は、糸継部50において噴射された圧縮空気をガイドする部材であり、糸継部50において第1及び第2糸端が導入される糸継室113の上側及び下側の開口の一部を塞ぐように設けられている。
【0038】
このように構成された糸継装置26では、まず、第1及び第2糸寄せレバー(不図示)及び第1及び第2糸押さえレバー82が、フロントプレート90側に旋回する。これにより、第1及び第2捕捉案内装置30,32で案内された下流側の糸Y及び上流側の糸Yが、解撚部40側に引き寄せられる。そして、上側の糸Y及び下側の糸Yが、クランプによって保持され、この状態でカッターによって切断される。第1糸端が第1解撚パイプ部材41Aの内部に送り込まれると共に、第2糸端が第2解撚パイプ部材41Bの内部に送り込まれる。第1及び第2解撚パイプ部材41A,41Bにおいて圧縮空気の噴射が開始され、第1及び第2糸端が圧縮空気の作用により解撚される。
【0039】
続いて、第1及び第2糸寄せレバー(不図示)が更に旋回する。これにより、第1糸端及び第2糸端が第1及び第2解撚パイプ部材41A,41Bのそれぞれから引き出されながら、第1及び第2糸押さえレバー82,83によって糸継部50近傍で押さえられる。糸継部50において圧縮空気の噴射が開始され、解撚された第1糸端と第2糸端とが圧縮空気の作用により撚り合わされる。続いて、第1及び第2糸寄せレバー(不図示)並びに第1及び第2糸押さえレバー82,83が、逆方向に旋回する。そして、クランプによる上側の糸Y及び下側の糸Yの保持を解放する。その結果、繋がれた糸Yが、糸継装置26の前側の走行経路上に復帰する。
【0040】
図4~
図7を参照して、糸継部50について詳細に説明する。
図4及び
図5に示されるように、糸継部50は、それぞれ解撚された第1糸端と第2糸端とが導入され、これらの糸継が行われる糸継ノズル組立体100を有する。直方体のブロック状に形成された糸継ノズル組立体100は、ワインダユニット3において前方を向くように固定されている(
図2参照)。糸継ノズル組立体100は、例えば、糸継ノズル70と、糸継ノズル70を収容すると共に支持する支持ブロック60とを備える。
【0041】
糸継ノズル70及び支持ブロック60は、何れも金属製である。糸継ノズル70は、例えば鉄、ステンレス鋼(SUS)、又は真鍮(黄銅)等の金属からなる。支持ブロック60は、例えば、亜鉛又はアルミニウム等の金属からなる。糸継ノズル70を形成する金属(第1金属)と、糸継部50を形成する金属(第2金属)とは異なっている。
【0042】
支持ブロック60は、糸継ノズル70を収容する中央部63と、中央部63の両側に配置された第1側部61及び第2側部62とを含む。第1側部61、第2側部62及び中央部63は、ダイキャスト等の鋳造により一体成型(一体成形)されている。支持ブロック60の表面には塗装は施されておらず、支持ブロック60をなす材料が露出する。中央部63には、前方に向けて拡がる一対の傾斜面である糸導入面63fが形成されている。中央部63には、糸導入面63fに連続する矩形の窪み部であるノズル収容部64が形成されている。ノズル収容部64は、互いに対向する平行な第1側壁面63a及び第2側壁面63bと、第1側壁面63a及び第2側壁面63bの後端部を接続する後壁面63cとによって画成されている。ノズル収容部64の大きさ及び形状は、糸継ノズル70をちょうど収容可能に形成されている。
【0043】
糸継ノズル70は、支持ブロック60のノズル収容部64に嵌り込んで(収容されて)、支持ブロック60に対して接着されている。糸継ノズル70と支持ブロック60とが接着剤により固定され、一体化されているので、糸継ノズル組立体100の強度が高められている。
【0044】
図5、
図6(a)及び
図6(b)に示されるように、糸継ノズル70は、支持ブロック60の第1側壁面63aに対面する第1側面75と、支持ブロック60の第2側壁面63bに対面する第2側面76と、支持ブロック60の後壁面63cに対面する背面77とを含む。第1側面75、第2側面76及び背面77は何れも長方形状の領域であるが、糸継ノズル70には後述するチャンバ形成部74が設けられている。チャンバ形成部74は第1側面75、第2側面76及び背面77の各面から窪んだ空間であるため、第1側面75、第2側面76及び背面77の各面には、実質的に周縁部分のみが残されている。第1側面75の第1側面縁部75a及び第2側面76の第2側面縁部76aは、いずれも後方に向けて開放されたU字状をなしている。第1側面縁部75a及び第2側面縁部76aは、側方に向けられた平坦面をなしており、例えば同一の大きさ及び形状を有する。背面77の背面縁部77aは、後方に向けられた平行な2つの平坦面をなしている。
【0045】
第1側壁面63aに対しては第1側面縁部75aの領域が、接着面(接合面)となっている。第2側壁面63bに対しては第2側面縁部76aの領域が、接着面(接合面)となっている。後壁面63cに対しては背面縁部77aの領域が接着面(接合面)となっている。一方、糸継ノズル70のノズル本体71は、略円筒状の中央ブロック部71aと、中央ブロック部71aの両側面及び後面に連続して形成され、U字状に延びるチャンバ壁面71bとを含む。支持ブロック60に糸継ノズル70が接着された状態で、第1側壁面63a、第2側壁面63b及び後壁面63cの3面と、チャンバ壁面71bとの間にU字状に延びるチャンバC(
図5参照)が形成されている。
【0046】
糸継ノズル70と支持ブロック60とは、例えば、エポキシ樹脂の熱硬化性の接着剤により接着されている。
【0047】
続いて、
図5、
図6(a)、
図6(b)及び
図7を参照して、糸継ノズル70の詳細について説明する。糸継ノズル70は、上記した金属(第1金属)により成形された焼結体である。糸継ノズル70は、
図7に示されるように、第1方向に貫通するように形成された糸継空間72と、糸継空間72に接続されて糸継ノズル70の内外を連通させる糸挿入隙間73とを有する。第1方向は、
図7に示される糸走行経路L(すなわち糸Yの走行方向)に平行な方向である。糸挿入隙間73は、第1方向に直交する前後方向(第2方向であり水平方向)において糸継空間72に接続され、前後方向において糸継ノズル70の内外を連通している。
【0048】
ノズル本体71は、支持ブロック60の一対の糸導入面63fに対して接着剤を介して連続するように配置されて平面視でV字状に傾斜する一対の糸導入面71fを含む。糸挿入隙間73は、糸導入面71fに接続されており、前方から(第2方向から)糸継空間72に糸Yを挿入するための隙間である。
【0049】
糸継空間72は、圧縮空気を噴射する例えば2つの上流側噴射孔(第1噴射孔)79bを含む上流側糸継空間(第1糸継空間)72bと、圧縮空気を噴射する例えば2つの下流側噴射孔(第2噴射孔)79aを含む下流側糸継空間(第2糸継空間)72aとを有する。中央ブロック部71aには、チャンバC及び上流側糸継空間72bを接続する2つの上流側噴射流路78bと、チャンバC及び下流側糸継空間72aを接続する2つの下流側噴射流路78aとが形成されている。上流側噴射流路78bは上流側糸継空間72bに開口しており、その開口が、上流側噴射孔79bである。下流側噴射流路78aは下流側糸継空間72aに開口しており、その開口が、下流側噴射孔79aである。上流側噴射流路78bは、第1側面75側から糸走行経路L側に向けて、かつ前方から後方に向けて形成される。また下流側噴射流路78aは、第2側面76側から糸走行経路L側に向けて、かつ前方から後方に向けて形成される。
【0050】
糸継装置26は、圧縮空気の流路に、水などの液体を噴射するウォータースプライサである。上流側噴射流路78b及び下流側噴射流路78aは、例えば水(液体)が付加された圧縮空気を噴出することにより2本の糸の糸端同士を撚掛けする撚掛け流路である。なお、第1解撚パイプ部材41A及び第2解撚パイプ部材41B内においても、例えば水(液体)が付加された圧縮空気が噴出される。
【0051】
下流側糸継空間72aは、第1方向において上流側糸継空間72bと隣接し、且つ互いに連通している。上流側糸継空間72b及び下流側糸継空間72aは、同一の大きさ及び形状を有する円筒状をなす。本実施形態では、上流側糸継空間72b及び下流側糸継空間72aは、糸走行経路Lに対して、第1方向及び第2方向の両方に直交する第3方向にずれている(オフセットしている)。上流側糸継空間72bの中心軸線は第1方向に延び、糸走行経路Lに対して第3方向の一方にずれている。下流側糸継空間72aの中心軸線も第1方向に延びるが、糸走行経路Lに対して第3方向の他方にずれている。これにより、上流側糸継空間72b及び下流側糸継空間72aは、糸走行経路Lに対して第3方向の一方側及び他方側に偏心している。上流側糸継空間72b及び下流側糸継空間72aは、平面視において、糸走行経路Lを含む領域で重なっている。
【0052】
図5に示されるように、支持ブロック60の第1側部61及び中央部63には、入口66aから出口66bに向けてV字状に延びる空気導入路66が形成されている。入口66aは支持ブロック60の後面に形成されており、出口66bは中央部63の第1側壁面63aに形成されている。空気導入路66は、例えば、入口66aを含む第1直線部66Aと、出口66bを含む第2直線部66Bとからなる。出口66bと上流側噴射流路78bは第2方向においてずれている方が、この構成は、上流側噴射流路78bと下流側噴射流路78aから噴出される圧縮空気の差を小さくするという観点で好ましい。なお、空気導入路66の形状はこの形態に限られない。例えば第2直線部66Bが延在して支持ブロック60の側面に空気導入路66の出口が形成されてもよい。
【0053】
糸継ノズル組立体100において、空気導入路66、チャンバC、下流側噴射流路78a(下流側噴射孔79a)及び上流側噴射流路78b(上流側噴射孔79b)により、圧縮空気の通路が形成されている。上流側噴射流路78b(上流側噴射孔79b)を通じて上流側糸継空間72b内に噴出する圧縮空気と、下流側噴射流路78a(下流側噴射孔79a)を通じて下流側糸継空間72a内に噴出する圧縮空気とによって、第1糸端及び第2糸端の糸継が行われる。
【0054】
糸継ノズル70には、糸継ノズル70を形成する金属及び支持ブロック60を形成する金属の何れとも異なる金属によって、めっき処理が施されている。すなわち、糸継ノズル70は、第1金属の表面において、第1金属とは異なる金属により形成されるめっき部を有する。より詳細には、糸継ノズル70に対するめっき処理は、無電解ニッケルめっき処理である。めっき部は、無電解ニッケルめっき皮膜である。めっき部は、糸継ノズル70の本体を成す第1金属の表面の全体にわたって均一に形成された、非結晶性のニッケル皮膜である。糸継ノズル70の全体の表面粗度(Ra)は、例えば、0より大きく1.5以下である。または、糸継ノズル70の全体の表面粗度(Ra)は、0.5以上としてもよい。糸継ノズル70の表面粗度(Ra)を0.5より小さくしていっても、糸継ぎ時における糸のひっかかりはあまり変わらない。そのため糸品質もあまり変化しない。そのため、糸継ノズル70の表面粗度(Ra)を0.5以上1.5以下とすることで、十分な糸品質も得つつ、糸継ノズル70の製造コストを抑えることができる。めっき部の厚みは、例えば5μm以上20μm以下である。無電解ニッケルめっき皮膜の硬度は、ビッカース硬さで表すと、例えば450HV以上である。めっき部の厚さが小さいため、めっき部は表面粗度に大きく影響しない。その代わり、めっき部は硬度に影響する。
【0055】
なお、無電解ニッケルめっき皮膜によって表面粗度及び硬度が上記の数値範囲に調整される範囲は、糸継ノズル70の表面全体でもよいし、糸継ノズル70の表面の一部分だけでもよい。例えば、
図5及び
図7に示されるように、上流側糸継空間72bにおける外周側の周面である第1領域M1b、及び、上流側糸継空間72bにおける糸走行経路L寄りの第2領域M2bのみに、めっき処理(表面処理)が施されてもよい。下流側糸継空間72aにおける外周側の周面である第1領域M1a、及び、下流側糸継空間72aにおける糸走行経路L寄りの第2領域M2aのみに、めっき処理(表面処理)が施されてもよい。つまり、これらの第1領域M1b、第2領域M2b、第1領域M1a及び第2領域M2aからなる最小限領域にのみ、めっき処理(表面処理)が施されてもよい。
図5及び
図7において、第1領域M1b、第2領域M2b、第1領域M1a及び第2領域M2aは太線で示される。
【0056】
続いて、糸継ノズル70の製造方法について説明すると、まず、糸継ノズル70を形成する例えば粉末状の金属材料と結合剤とが混錬された混錬物が糸継ノズル70を形成するための金型に射出される。さらに混錬物を加熱することにより結合剤が除去される。結合剤が除去された混錬物を焼結することにより糸継ノズル70の中間体が成形される。焼結により、糸継ノズル70において高い硬化性を得ることができる。続いて、糸継ノズル70の表面全体が、ショットブラスト処理によって研磨される。ショットブラスト処理は、めっき部を形成するための下処理(下地処理)としての意義を持つ。そして、糸継ノズル70の表面全体又は一部のみに、無電解ニッケルめっき処理が施される。その後、糸継ノズル70は、支持ブロック60に接着され、固定される。
【0057】
本実施形態の糸継装置26によれば、金属製の糸継ノズル70により強度が向上しているため、糸継ノズル70の破損が防止されている。糸継空間72を画成する糸継ノズル70の少なくとも一部分において、表面粗度(Ra)が0より大きく1.5以下であるので、糸継ぎ時において糸Yがひっかかることが低減されるため、糸品質が向上する。
【0058】
本実施形態の糸継装置26によれば、糸継ノズル70の少なくとも一部分において、表面粗度(Ra)が、0.5以上1.5以下であるので、所定の糸品質も得つつ、糸継ノズル70の製造コストを抑えることができる。
【0059】
糸継ノズルは、第1金属の表面において、第1金属とは異なる金属により形成されるめっき部を有する。この場合、基材としての第1金属の表面がめっき部によって被覆される。2種類の金属によって硬度が高められる。まためっき部の表面粗度を上記範囲に調整することで、糸品質に優れた糸継ノズル70を容易に実現できる。
【0060】
支持ブロック60は、第1金属とは異なる第2金属からなる。熱硬化性の接着剤による接着は、高温条件下での処理(加熱処理)が必要となる。熱硬化性の接着剤は接着強度の面で優れているが、従来のセラミック製ノズルでは、セラミック製ノズルと金属製の支持ブロックの熱膨張の差に基づく応力が生じてノズルが破損する等、高温条件に耐えられなかった。糸継ノズルが第1金属からなり、支持ブロックが第2金属からなることで、高温条件下における熱膨張に基づく応力によって糸継ノズル70が破損する可能性を軽減できる。
【0061】
糸継装置26は、圧縮空気の流路に水などの液体を噴射するウォータースプライサである。上流側噴射流路78b及び下流側噴射流路78aは、水(液体)が付加された圧縮空気を噴出することにより2本の糸の糸端同士を撚掛けする撚掛け流路である。水が、空気とともに上流側噴射流路78b及び下流側噴射流路78aを通じて糸継ノズル70の糸継空間72内に噴出される。糸継ノズル70と支持ブロック60とがエポキシ樹脂の接着剤で接着されているので、液体成分の存在にも関わらず、接着強度が維持される。また第1解撚パイプ部材41A及び第2解撚パイプ部材41B内において、水が付加された圧縮空気が噴出された場合でも、その水分(液体)が糸継ノズル70に付着し得る。しかし本実施形態のように糸継ノズル70と支持ブロック60とがエポキシ樹脂の接着剤で接着されているので、接着強度への影響は小さい(ほとんどない)。
【0062】
めっき部は、無電解ニッケルめっき皮膜である。糸継ノズル70に上流側噴射孔79bを有する上流側糸継空間72b及び上流側噴射孔79bを有する下流側糸継空間72aが設けられることにより複雑な形状となる場合でも、無電解ニッケルめっき皮膜で第1金属の表面を均一に被覆し、めっき部(めっき層)を均一に形成することができる。電気めっきが採用される場合、場所によってめっき部の厚さが異なり、厚さのばらつきが生じやすいが、そのような不均一性は回避される。また無電解ニッケルめっきは、溶液に浸して行われる。そのため、糸継ノズル70の形状が複雑であってもめっき処理が行える。めっき部が必要とされる部分は、糸に接触する一部分のみであるが、製造上の簡易さを考慮すると、めっき部は糸継ノズル70(第1金属)の表面全体に形成される。
【0063】
めっき部の厚みは、5μm以上20μm以下である。めっき部の厚みが小さい方が、糸継ノズル70の寸法が母材(第1金属)の寸法と略同一になり、完成品としての糸継ノズル70の寸法精度が安定する。
【0064】
糸継ノズルは、第1金属と結合剤とが混錬された混錬物が金型に射出され、加熱により結合剤を除去した後、混錬物を焼結することにより成形される。焼結により、糸継ノズル70において高い硬化性が得られる。糸継ノズル70が射出成型により成形されるため、機械加工をする必要がない。また鋳造よりも高精度で製造することができる。
【0065】
また本実施形態の糸継ノズル70の製造方法によれば、糸継ノズル70が金型により形成されるので、機械加工無しで糸継ノズル70を形成することができ、工数が削減できる。また機械加工を行うとバリなどが生じ得るが、射出成型だと成形品に対して不要な部分が生じにくい。また鋳造では金属を流し込んだときに、空気孔ができてしまう可能性がある。上記製造方法によれば、寸法精度が高められる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、糸継装置26は、圧縮空気の流路に、圧縮空気のみを噴射するエアスプライサであってもよい。
【0067】
糸継ノズルに形成される噴射孔の本数は、糸継空間全体に対して1本であってもよい。或いは、第1糸継空間及び第2糸継空間のそれぞれに対して1本ずつであってもよい。
また
図8に示されるように、上流側糸継空間72b及び下流側糸継空間72aが、糸走行経路Lに対して同軸状に設けられた糸継ノズル70Aが提供されてもよい。上流側糸継空間72b及び下流側糸継空間72aの断面形状は、それぞれ平面視で(糸走行経路Lに垂直な断面で)半円状であってもよい。上流側糸継空間72b及び下流側糸継空間72aの断面形状は、それぞれ平面視で多角形状(例えば三角形、四角形(ひし形及び台形を含む)、五角形等)であってもよい。
【0068】
めっき処理が施されず、無垢の金属材料から糸継ノズル70が形成されてもよい。その場合には、例えばベーキング処理が施されることにより、糸継ノズル70の表面硬度は、ビッカース硬さで表すと、例えば700HV以上となる。ベーキング処理によれば、高い硬度が実現される。また通常の装飾めっき又は防錆用めっきに比して、耐摩耗性に優れる。この場合でも糸継ノズル70の表面全体又は一部において、表面粗度(Ra)が0より大きく1.5以下とされる。または、糸継ノズル70の表面全体又は一部において、表面粗度(Ra)が0.5以上1.5以下とされる。なお、ベーキング処理が施された糸継ノズルは、外見上、めっき処理が施された糸継ノズルと区別できる。
【0069】
なお、ショットブラスト処理、めっき処理、及びベーキング処理の順に、各処理が施されてもよい。めっき後にベーキング処理を行うことにより、上記したのと同様の高硬度(例えば700HV以上)が実現される。
【0070】
上記実施形態では、本発明の一態様に係る糸継装置をワインダユニット3に適用したが、本発明の一態様に係る糸継装置は、紡績機の巻取ユニット、又は、複数の巻取ユニット間を移動する作業台車等に適用されてもよい。
【0071】
糸継ノズル70と支持ブロック60とを接合するための接着剤が、硬化剤入りの接着剤であってもよい。
【0072】
支持ブロック60は樹脂製であってもよい。糸継ノズルに対して支持ブロックの方が大きいため、金属製の糸継ノズルに対して樹脂製の支持ブロックを適用した場合、高温化で糸継ノズルが膨張しても支持ブロックに及ぼす影響は少ない。仮に金属製の支持ブロックに対して樹脂製の糸継ノズルを適用した場合には、糸継ノズルが破損する可能性があるが、上記の場合には、支持ブロックが破損する可能性は低い。
【0073】
また、上記実施形態では、糸継ノズル70と支持ブロック60を別体として構成したが、これらを一体として構成しても良い。糸継ノズル70は、糸継装置26の外部の空気供給路に接続される空気導入路と、空気導入路の下流側に接続された空間であるチャンバと、チャンバに接続されて圧縮空気を糸継空間に噴射する噴射孔とを有する。空気導入路、チャンバ、噴射孔、糸継空間及び糸挿入隙間が、第1金属により一体物として形成された糸継ノズルに設けられる。例えば、金属3Dプリンタにより糸継ノズル70と支持ブロック60の一体物を造形することができる。この造形方法によれば、素材となる金属粉末を敷き詰め、造形する部分にレーザーや電子ビームを照射して、溶かし固めることができる。これにより、糸継ノズル70と支持ブロック60を一体化した複雑な形状のノズルも容易に製造することが可能となる。また、金属3Dプリンタにより造形したノズルに対してめっき処理を施すことにより、上記実施形態同様の表面硬度および表面粗度を得ることもできる。この方法によれば糸継ノズル70と支持ブロック60を継ぎ目のない一体物として構成することが出来るので接着が不要となる。よって接着ミスによる空気漏れが発生することがない。さらにノズル製造時の工数削減となる。
【0074】
機械加工又は鋳造によって、糸継ノズル70が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0075】
26…糸継装置、50…糸継部、60…支持ブロック、70…糸継ノズル、72…糸継空間、72a…下流側糸継空間(第2糸継空間)、72b…上流側糸継空間(第1糸継空間)、73…糸挿入隙間、78a…下流側噴射流路(撚掛け流路)、78b…上流側噴射流路(撚掛け流路)、79a…下流側噴射孔(第2噴射孔)、79b…上流側噴射孔(第1噴射孔)、100…糸継ノズル組立体。