(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176634
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】電動リール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/017 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
A01K89/017
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089022
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】森 成秀
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108GA12
2B108GA18
2B108GA24
2B108GA27
2B108GA29
(57)【要約】
【課題】ハンドル側のリール本体内に効率よくセンサと被検出部を配置することができ、リール本体の軸方向の大型化を抑制し、操作性を良好にできる。
【解決手段】フレーム11のハンドル側を覆う右カバー12を有する右側リール本体10Aと、一端をリール本体に回転可能に支持され、他端を右カバー12に回転可能に支持され、ハンドルによって回転されるドライブギア軸41と、リール本体10に設けられ、ドライブギア軸41の回転を補助するモータと、を備え、ドライブギア軸41に設けられ、スプールに回転を伝達するドライブギア42と、ドライブギア軸41の軸方向において、ドライブギア42と右固定板11Dの間に配置され、ドライブギア軸41と共に回転可能に設けられるマグネット71と、マグネット71に対応する位置に設けられ、ドライブギア軸41の回転を検出するセンサ72と、を備えた構成の電動リールを提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプールを回転可能に支持するフレーム、及び、前記フレームのハンドル側を覆うカバー部を有するリール本体と、
一端を前記リール本体に回転可能に支持され、他端を前記カバー部に回転可能に支持され、ハンドルによって回転されるドライブギア軸と、
前記リール本体に設けられ、前記ドライブギア軸の回転を補助するモータと、
を備えた補助モータ付き魚釣り用の電動リールであって、
前記ドライブギア軸に設けられ、前記スプールに回転を伝達するドライブギアと、
前記ドライブギア軸の軸方向において、前記ドライブギアと前記フレームとの間に配置され、前記ドライブギア軸と共に回転可能に設けられる被検出部と、
前記被検出部に対応する位置に設けられ、前記ドライブギア軸の回転を検出するセンサと、
を備えた電動リール。
【請求項2】
前記被検出部は、前記ドライブギア軸の周方向に間隔をあけて複数設けられる、請求項1に記載の電動リール。
【請求項3】
前記ドライブギアと前記フレームとの間の前記ドライブギア軸に設けられ、前記ドライブギア軸と共に回転するギア部を備え、
前記被検出部は、前記ギア部の前記フレームを向く一端面において周方向に間隔をあけて複数設けられ、
前記センサは、前記ギア部より前記フレーム側に配置されている、請求項1に記載の電動リール。
【請求項4】
前記ギア部は、前記ドライブギア軸の一方向の回転を規制する一方向クラッチである、請求項3に記載の電動リール。
【請求項5】
前記ハンドルから前記スプールへの回転を伝達する伝達状態と、前記ハンドルから前記スプールへの回転を断絶する断絶状態と、を切替えるクラッチを備え、
前記ギア部は、前記ドライブギア軸の回転に基づいて前記クラッチを前記断絶状態から前記伝達状態に切替える切替部である、請求項3に記載の電動リール。
【請求項6】
前記センサは、前記フレームに設けられる、請求項1から5のいずれか1項に記載の電動リール。
【請求項7】
前記被検出部は、前記ドライブギア軸の前記フレーム側の端部に配置され、
前記センサは、前記被検出部に対して対向する対向部に設けられている、請求項1に記載の電動リール。
【請求項8】
前記被検出部は、前記端部の軸方向の軸端面に配置され、
前記センサは、前記被検出部に対して対向する前記フレームの対向面部に設けられている、請求項7に記載の電動リール。
【請求項9】
前記センサは、前記被検出部の所定単位時間の回転角度を検出する、請求項6に記載の電動リール。
【請求項10】
前記センサによって検出された検出結果に応じて、前記モータの出力を制御する制御部を有する、請求項6に記載の電動リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣り用の電動リールとして、魚を誘う等の操作を行う際に好適な、ハンドルの回転量又は回転角度を検出し、検出した回転量又は回転角度をモータにフィードバックしてモータの動力でハンドルの操作をアシストするモータアシスト機能付きのリールが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すような電動リールでは、ハンドル回転検出用のセンサをリール本体のうちクラッチリターン機構を収容するハンドル側本体に取り付けると、ドライブギア軸の長さが増大してしまう。そのため、ハンドル側本体がハンドル側に膨れて大型化するという問題があった。ハンドル側本体が大型化すると、ハンドルの位置が釣り竿の固定位置から離れてしまい、両軸受リールの左右の重量バランスが崩れて操作性が低下するおそれがあることから、その点で改善の余地があった。
また、センサで検出するマグネット等の被検出部の位置についても、ドライブギア軸と共回りすることから、回転の分解能を確保できるように配置する必要がある。
【0005】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、ハンドル側のリール本体内に効率よくセンサと被検出部を配置することができ、リール本体の軸方向の大型化を抑制し、操作性を良好にできる電動リールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る電動リールの態様1は、スプールを回転可能に支持するフレーム、及び、前記フレームのハンドル側を覆うカバー部を有するリール本体と、一端を前記リール本体に回転可能に支持され、他端を前記カバー部に回転可能に支持され、ハンドルによって回転されるドライブギア軸と、前記リール本体に設けられ、前記ドライブギア軸の回転を補助するモータと、を備えた補助モータ付き魚釣り用の電動リールであって、前記ドライブギア軸に設けられ、前記スプールに回転を伝達するドライブギアと、前記ドライブギア軸の軸方向において、前記ドライブギアと前記フレームとの間に配置され、前記ドライブギア軸と共に回転可能に設けられる被検出部と、前記被検出部に対応する位置に設けられ、前記ドライブギア軸の回転を検出するセンサと、を備えたことを特徴としている。
【0007】
本発明に係る電動リールの態様1によれば、ハンドル側のリール本体内にドライブギア軸の回転を検出するためのセンサを設ける場合において、被検出部及びセンサをドライブギアとフレームとの間に配置させ、かつ被検出部をドライブギア軸とともに回転する部材に取り付けることで、ハンドル側のリール本体の軸方向の長さを小さく抑えることができる。これにより、従来の電動リールに比べてリール全体を小型化することができ、電動リールの左右の重量バランスが崩れて操作性が低下することを抑制できる。
また、本態様1では、センサで検出する被検出部の位置についても、軸方向でドライブギアよりフレーム側の位置でドライブギア軸と共に回転する部位に配置することができる。そのため、ドライブギアによって干渉されることなく、被検出部を回転の分解能を確保できる位置に配置することができる。
【0008】
(2)本発明の態様2は、態様1の電動リールにおいて、前記被検出部は、前記ドライブギア軸の周方向に間隔をあけて複数設けられることが好ましい。
【0009】
この場合には、複数の被検出部をドライブギア軸の周方向に間隔をあけて設けることで、センサによって検出される回転量又は回転角度等の検出精度をより高めることができる。
【0010】
(3)本発明の態様3は、態様1又は態様2の電動リールにおいて、前記ドライブギアと前記フレームとの間の前記ドライブギア軸に設けられ、前記ドライブギア軸と共に回転するギア部を備え、前記被検出部は、前記ギア部の前記フレームを向く一端面において周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記センサは、前記ギア部より前記フレーム側に配置されていることが好ましい。
【0011】
この場合には、被検出部をドライブギアとフレームとの間に位置するギア部に配置し、かつセンサがギア部よりフレーム側に配置されていることから、被検出部及びセンサをハンドル側のリール本体内に効果的に配置できる。これにより、ハンドル側のリール本体における軸方向の長さをより確実に小さく抑えることができ、従来の電動リールに比べてリール全体を小型化できる。
【0012】
(4)本発明の態様4は、態様1から態様3のいずれか一つの電動リールにおいて、前記ギア部は、前記ドライブギア軸の一方向の回転を規制する一方向クラッチであることを特徴としてもよい。
【0013】
この場合には、被検出部をドライブギアとフレームとの間に位置し、かつドライブギア軸と共に回転する一方向クラッチに取り付けることで、被検出部及びセンサをより効果的に配置できる。これにより、ハンドル側のリール本体における軸方向の長さをより確実に小さく抑えることができ、従来の電動リールに比べてリール全体を小型化できる。
【0014】
(5)本発明の態様5は、態様1から態様4のいずれか一つの電動リールにおいて、前記ハンドルから前記スプールへの回転を伝達する伝達状態と、前記ハンドルから前記スプールへの回転を断絶する断絶状態と、を切替えるクラッチを備え、前記ギア部は、前記ドライブギア軸の回転に基づいて前記クラッチを前記断絶状態から前記伝達状態に切替える切替部であることが好ましい。
【0015】
この場合には、被検出部をドライブギアとフレームとの間に位置し、かつドライブギア軸と共に回転する切替部に取り付けることで、被検出部及びセンサをより効果的に配置できる。これにより、ハンドル側のリール本体における軸方向の長さをより確実に小さく抑えることができ、従来の電動リールに比べてリール全体を小型化できる。
【0016】
(6)本発明の態様6は、態様1から態様5のいずれか一つの電動リールにおいて、前記センサは、前記フレームに設けられることが好ましい。
【0017】
この場合には、フレームにセンサの取り付けスペースが比較的広く確保できるので、フレームにおける被検出部に対応した位置にセンサが配置しやすくなる。
また、この場合には、センサがフレームに直接配置されることから、ハンドル側のリール本体における軸方向の長さをより確実に小さく抑えることができる。
【0018】
(7)本発明の態様7は、態様1から態様6のいずれか一つの電動リールにおいて、前記被検出部は、前記ドライブギア軸の前記フレーム側の端部に配置され、前記センサは、前記被検出部に対して対向する対向部に設けられていることが好ましい。
【0019】
この場合には、被検出部とセンサとが互いに軸方向に対向した状態で配置されているので、センサによって回転する被検出部をより高い精度で検出することができる。
【0020】
(8)本発明の態様8は、態様1から態様7のいずれか一つの電動リールにおいて、前記被検出部は、前記端部の軸方向の軸端面に配置され、前記センサは、前記被検出部に対して対向する前記フレームの対向面部に設けられていることが好ましい。
【0021】
この場合には、ドライブギア軸と共回りする部材に対して被検出部を取り付けることが困難な場合であっても、ドライブギア軸の軸端面に被検出部を配置し、この被検出部に対向するフレーム側の位置に設けたセンサによって回転量又は回転角度を精度よく検出することができる。
【0022】
(9)本発明の態様9は、態様1から態様8のいずれか一つの電動リールにおいて、前記センサは、前記被検出部の所定単位時間の回転角度を検出することが好ましい。
【0023】
この場合には、ドライブギア軸と共に回転する被検出部をセンサで検出した所定単位時間の回転角度をモータにフィードバックしてモータの動力でハンドルの操作をアシストすることができる。
【0024】
(10)本発明の態様10は、態様1から態様9のいずれか一つの電動リールにおいて、前記センサによって検出された検出結果に応じて、前記モータの出力を制御する制御部を有することが好ましい。
【0025】
この場合には、ドライブギア軸と共に回転する被検出部をセンサで検出した検出結果を制御部によってモータの出力を適宜制御し、モータにフィードバックしてモータの動力でハンドルの操作をアシストすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る電動リールによれば、ハンドル側のリール本体内に効率よくセンサと被検出部を配置することができ、リール本体の軸方向の大型化を抑制し、操作性を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態による電動リールの全体構成を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す回転伝達機構の要部拡大図である。
【
図4】リテーナ及びストッパギアを右固定板側から見た平面図である。
【
図5】ストッパギアを右固定板側から見た平面図である。
【
図6】変形例による電動リールの回転伝達機構の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る電動リールの実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において、各構成部材を視認可能な大きさとするために必要に応じて各構成部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0029】
図1及び
図2に示すように本実施形態の電動リール1は、補助モータ付きの釣り用の電動リールであって、両軸受リールが採用されている。
【0030】
<全体構成>
図1に示すように本実施形態の魚釣り用の電動リール1は、リール本体10と、リール本体10の側方に配置されたスプール回転用のハンドル20と、を備えている。リール本体10には、回転により釣り糸を繰り出し・巻き取るスプール30が回転自在に装着されている。リール本体10は、竿取付部18を介して釣り竿に装着される。ハンドル20のリール本体10側には、スタードラグ3が配置されている。
【0031】
図1及び
図2に示すように、リール本体10の内部には、モータ15、スプール30に連動して作動する往復移動機構(図示省略)、モータ15及びハンドル20の軸回転をスプール30に伝達する回転伝達機構40、ハンドル20からの回転をスプール30に伝達する伝達状態とハンドル20からスプール30への回転を断絶する断絶状態と、を切替えるクラッチ機構50、クラッチ機構50を制御するクラッチ制御機構(図示省略)等の機構が設けられている。
【0032】
ここで、以下の説明の「左右方向」とは、釣りを行う際に電動リール1を備えた釣り竿を持って釣り人から見た状態における左右方向とする。本実施形態では、ハンドル20がリール本体10の右側に位置している。
【0033】
<ハンドル>
ハンドル20は、リール本体10の右側方に突出するドライブギア軸41(後述する)の軸先端部41bに回転不能に装着されたクランクアーム21と、クランクアーム21の軸先端部41b側と反対側の端部にクランクアーム21と直交する方向の軸回りに回転自在に装着されたハンドル把手22と、を有している。
【0034】
<リール本体>
リール本体10は、スプール30を支持するフレーム11と、フレーム11の右側のハンドル側を覆う右カバー12と、フレーム11の左側を覆う左カバー13と、を有している。フレーム11は、左右方向に所定の間隔をあけて配置された右側板11A及び左側板11Bと、右側板11Aと左側板11Bを連結する複数の連結部材11Cと、を有している。
【0035】
右カバー12は、右側板11Aの外方を右側から覆うように右側板11Aに対して着脱可能に設けられている。左カバー13は、左側板11Bの外方を左側から覆うように左側板11Bに対して着脱可能に設けられている。右側板11Aと右カバー12との間には、それぞれ後述する各種機構を収納するための収納空間S1、S2が形成されている。右カバー12は、左側に開口する凹状をなしている。
ここで、リール本体10のうち収納空間S1を形成するハンドル20側の部分(右側板11A及び右カバー12)を右側リール本体10Aという。
【0036】
右側リール本体10Aは、側面から見て右側板11Aにおけるドライブギア軸41の装着部分を中心に軸方向外方にも膨出した略楕円形状をなしている。左側板11B及び左カバー13は、側面から見て円形をなしている。
【0037】
図1に示すように、複数の連結部材11Cは、左右方向に延び、右側板11A及び左側板11Bと一体で形成された板状の部材である。各連結部材11Cは、リール本体10の上部、下部及び後部の3箇所で右側板11Aと左側板11Bとを連結する。電動リール1は、連結部材11Cを設けることで、リール本体10に大きな荷重が作用しても撓み等の変形が生じがたく、巻上げ効率の低下が抑制される。下部の連結部材11Cには、竿取付部18が固定されている。竿取付部18は、釣り竿が装着される部分であり、右側板11Aと左側板11Bとの略中間位置において、前後方向に延びている。後部の連結部材11Cには、クラッチ操作部14が設けられている。
【0038】
図2及び
図3に示すように、右側板11Aには、収納空間S1内に配置される右固定板11Dが固定されている。右固定板11Dは、右側リール本体10Aの内部の収納空間S1に配置される各種の機構の一部が装着される。右固定板11Dは、本体板110と、ハンドル20が連結されるドライブギア軸41の軸基端部41a(第1端部)を回転自在に支持する軸支持凹部111と、を有する。軸支持凹部111は、本体板110から左右方向でハンドル側に向けて突出し、右側に開口する円筒状に形成されている。右固定板11Dには、軸支持凹部111の外側に間隔をあけて外周筒113が設けられている。
【0039】
図1及び
図2に示すように、糸巻用のスプール30は、右側板11A及び左側板11B間に配置され、右側板11A及び左側板11Bによって回転自在に支持されている。右側板11A及び左側板11B間には、スプール30に釣り糸を均一に巻き付けるためのレベルワインド機構(図示省略)と、上述したクラッチ操作部14と、が配置される。
【0040】
クラッチ操作部14は、上下に揺動してクラッチ機構50(
図3参照)をクラッチオン状態とクラッチオフ状態とに切り換え操作するために設けられている。
【0041】
モータ15は、リール本体10の内部に設けられ、ドライブギア軸41の回転を補助する。モータ15は、上述した制御部によって制御され、スプール30とともに糸巻き取り方向に回転駆動するように構成されている。
【0042】
図3に示すように、右側板11Aと右カバー12との間の収納空間S1には、ハンドル20のトルクをスプール30に伝えるための回転伝達機構40と、回転伝達機構40内に設けられたクラッチ機構50と、が配置されている。さらに、収納空間S1には、
図1に示すクラッチ操作部14の操作に応じてクラッチ機構50の制御を行うためのクラッチ制御機構(図示省略)と、ドラグ機構と、スプール30の回転時の抵抗力を調整するための制動機構であるキャスティングコントロール機構(図示省略)と、が配置されている。これらクラッチ制御機構、ドラグ機構、及びキャスティングコントロール機構は公知の構造であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0043】
図1に示すように、リール本体10の上部には、右側板11A及び左側板11Bに固定されたカウンタケース17が設けられている。カウンタケース17には、水深表示用の表示部171、電動リール1の各種設定をする際に使用される操作スイッチ172などが設けられている。また、カウンタケース17の内部には、電動リール1の各種の制御を行う図示しない制御部が収容されている。
【0044】
<スプール>
スプール30は、外周に釣り糸が巻き付けられる筒状の糸巻胴部301と、左右一対のフランジ部302と、を有する。フランジ部302は、糸巻胴部301の両端にそれぞれ径方向外方に一体的に突出して設けられる。スプール30は、フレーム11の左右両側の右側板11A及び左側板11Bに対して軸受を介して回転可能に支持されている。
【0045】
<クラッチ機構>
図3に示すように、クラッチ機構50は、不図示のクラッチツメやクラッチカムを備え、後述するドライブギア42を介して伝達されるハンドル20からの回転をスプール30に伝達及び遮断する。ハンドル20からの回転をスプール30に伝達可能な状態がクラッチオン状態であり、ハンドル20からの回転を遮断する状態がクラッチオフ状態である。クラッチオフ状態ではスプール30は自由回転状態となり、釣り糸の繰り出しが可能になる。
【0046】
<回転伝達機構>
次に、回転伝達機構40について、
図3に基づいて具体的に説明する。
回転伝達機構40は、スプール30からハンドル20側にトルクが逆に伝達された場合のトルクを規制する機能を含んでいる。回転伝達機構40は、軸先端部41b(第2端部)にハンドル20が固定されたドライブギア軸41と、ドライブギア軸41の軸基端部41aに連結されたドライブギア42と、ドライブギア42に噛み合うピニオンギア(図示省略)と、を有している。
【0047】
ドライブギア軸41は、右側リール本体10A内、すなわち右側板11Aの右側に配置されている。ドライブギア軸41は、左右方向に延び、右カバー12の天面121を軸方向に貫通し、その貫通した軸先端部41bにスタードラグ3やハンドル20が配置されている。ドライブギア軸41は、ハンドル軸に相当し、左右方向、すなわちスプール30の軸方向と平行に配置されている。ドライブギア軸41は、軸方向の中央部で右カバー12に固定される筒体44にローラクラッチ60を介して回転可能に挿通されている。
ここで、ドライブギア軸41の長手方向(左右方向に延在する方向)を、以下、軸方向とする。
【0048】
ドライブギア軸41には、軸基端部41aから軸先端部41bに向けて、リテーナ61、ストッパギア62、ドライブギア42、ローラクラッチ60がその順で配列されている。さらに、ドライブギア42より軸先端部41b側には、複数の金属薄板からなるドラグワッシャや板座金が軸方向に重ね合わせた状態で配置され、ドライブギア軸41に対して回転不能に設けられる。回転伝達機構40では、ドラグワッシャの摩擦力によってハンドル20からスプール30への回転動力が伝達され、ドラグ性能が発揮される。
【0049】
このように構成される電動リール1では、ハンドル20、ドライブギア軸41、ドラグワッシャ、ドライブギア42、不図示のピニオンギア、スプール30(クラッチがオン状態)の順でハンドル20からの動力が伝達される。なお、釣り糸が繰り出し方向に強く引かれた場合には、ドラグの圧着力(摩擦力)を上回る力がドライブギア42に掛かり、すなわちスプール30、ピニオンギア、ドライブギア42の順に力が作用する。このとき、ドライブギア42、ドラグワッシャ、板座金の間で滑りが発生し、釣り糸が繰り出すことになる。
【0050】
ドライブギア軸41の軸基端部41aは、右固定板11Dの凸部112に装着されている。ドライブギア軸41は、軸基端部41aが軸受63を介して右固定板11Dの軸支持凹部111に回転可能に支持され、さらに軸先端部41bがローラクラッチ60を介して右カバー12の天面121に回転可能に支持されている。軸先端部41bは、ハンドル20に連結されている。軸基端部41aの外径は、ドライブギア軸41における軸基端部41a以外の軸部の外径よりも大きい。
【0051】
ドライブギア42は、外周にギアを有し、このギアがピニオンギアに噛み合っている。ドライブギア42は、ドライブギア軸41の軸先端部41b側において、リテーナ61よりハンドル側に固定され、ドライブギア軸41の回転とともに一体的に回転するように連結されている。ピニオンギアは、回転伝達機構40を構成すると共にクラッチ機構50としても機能する。このような構成により、ドライブギア42は、クラッチオン状態において、ハンドル20の回転によるトルクをスプール30に伝達する。
【0052】
ここで、右固定板11Dに形成される軸支持凹部111には、ドライブギア軸41の軸基端部41aを回転可能に支持する軸受63が嵌め込まれている。ドライブギア軸41の軸基端部41aの端面中央には、軸支持凹部111の底面を向いて開口する円形断面の孔部41cが形成されている。軸支持凹部111の凹底中央には、凸部112が右側に延びている。凸部112には、ドライブギア軸41の孔部41cが係合している。
【0053】
ローラクラッチ60は、右カバー12の天面121に設けられる貫通穴121aに嵌め込まれ、ドライブギア軸41の一方向の回転を規制する。ローラクラッチ60は、ドライブギア軸41の糸巻き取り方向と反対方向の回転を規制する。ローラクラッチ60は、外輪と、複数の転動体と、を有している。外輪は、右カバー12の貫通穴121aに回転不能に装着されている。外輪は、図示しないカム面を内周面に有している。複数の転動体は、円柱状であり、外輪の内周面とドライブギア軸41の外周面の間に配置されている。複数の転動体は、ドライブギア軸41の糸巻き取り方向の回転を許容する。なお、ローラクラッチ60は、ドライブギア軸41の外周面に固定される内輪を有していてもよい。
【0054】
リテーナ61は、ドライブギア軸41を右側リール本体10Aに対して、ドライブギア軸41の軸方向への移動を規制する。リテーナ61は、右固定板11Dに対してねじ等で固定されている。
【0055】
ストッパギア62(ギア部、切替部、一方向クラッチ)は、ドライブギア軸41の軸基端部41aにおいてドライブギア42とリテーナ61との間に配置され、軸方向でハンドル20側への移動が規制された状態で設けられている。ストッパギア62は、ドライブギア軸41に対しては回転不能な状態で固定され、ドライブギア軸41と共に回転可能に設けられている。クラッチ機構50の不図示のクラッチツメやクラッチカムは、ドライブギア軸41の軸方向に直交する方向の側面視でストッパギア62と略同じ位置に配置される。
【0056】
図4及び
図5に示すように、ストッパギア62の外周縁には、周方向に間隔をあけて凸状の係止歯621が複数設けられている。複数の係止歯621には、クラッチ機構50のクラッチツメが噛み合い可能である。ストッパギア62は、ドライブギア軸41の回転に基づいてクラッチ機構50を断絶状態から伝達状態に切り替える。ストッパギア62は、ドライブギア軸41に回転不能に固定され、ドライブギア軸41とともに回転する。ストッパギア62は、クラッチ機構50のクラッチツメによって一方向の回転が規制されている。そのため、ストッパギア62は、ドライブギア軸41の一方向の回転を規制する。このように本実施形態のストッパギア62は、リターンギアとしての機能も有する。
【0057】
図3および
図5に示すように、ストッパギア62の右固定板11D(右側板11A)側を向く一端面62aには、複数のマグネット71(被検出部)がドライブギア軸41の軸線回りの周方向に間隔をあけて複数(ここでは6個)設けられている。複数のマグネット71の位置は、ドライブギア軸41の軸中心からの半径方向の距離が後述するセンサ72における前記軸中心からの距離とほぼ一致し、かつストッパギア62とともに回転するマグネット71がセンサ72に対して軸方向に対向可能な位置である。
【0058】
マグネット71は、ストッパギア62の回転、すなわちドライブギア軸41の回転とともに回転する。マグネット71は、軸方向において、ドライブギア42とフレーム11である右固定板11Dとの間に配置され、ドライブギア軸41と共に回転可能に設けられる。マグネット71は、ストッパギア62に対向する位置に設けられるセンサ72によって検出される。
【0059】
センサ72は、ストッパギア62より右固定板11D側でマグネット71に対応する位置に設けられている。センサ72は、フレーム11の右固定板11Dにおける軸支持凹部111と外周筒113との間の凹状部分に配置されている。センサ72は、マグネット71の所定単位時間の回転角度を検出し、すなわちドライブギア軸41の回転を検出する。そして、センサ72によって検出された検出結果に応じて、制御部(図示省略)によってモータ15の出力を制御する。
【0060】
次に、このように構成される電動リール1の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0061】
本実施形態による電動リール1では、
図3に示すように、右側リール本体10A内にドライブギア軸41の回転を検出するためのセンサ72を設ける場合において、マグネット71及びセンサ72をドライブギア42とフレーム11の右固定板11Dとの間に配置させ、かつマグネット71をドライブギア軸41とともに回転する部材に取り付けることで、右側リール本体10Aの軸方向の長さを小さく抑えることができる。これにより、従来の電動リールに比べてリール全体を小型化することができ、電動リール1の左右の重量バランスが崩れて操作性が低下することを抑制できる。
【0062】
また、本実施形態では、センサ72で検出するマグネット71の位置についても、軸方向でドライブギア42より右固定板11D側の位置でドライブギア軸41と共に回転する部位に配置することができる。そのため、ドライブギア42によって干渉されることなく、マグネット71を回転の分解能を確保できる位置に配置することができる。
【0063】
また、本実施形態の電動リール1では、マグネット71は、ドライブギア軸41の周方向に間隔をあけて複数設けられる。そのため、複数のマグネット71をドライブギア軸41の周方向に間隔をあけて設けることで、センサ72によって検出される回転量又は回転角度等の検出精度をより高めることができる。
【0064】
また、本実施形態では、ドライブギア42と右固定板11Dとの間のドライブギア軸41に設けられ、ドライブギア軸41と共に回転するストッパギア62を備えている。マグネット71は、ストッパギア62の右固定板11Dを向く一端面62aにおいて周方向に間隔をあけて複数設けられている。センサ72は、ストッパギア62より右固定板11D側に配置されている。
【0065】
これにより、マグネット71をドライブギア42と右固定板11Dとの間に位置するストッパギア62に配置し、かつセンサ72がギア部より右固定板11D側に配置されていることから、マグネット71及びセンサ72を右側リール本体10A内に効果的に配置できる。これにより、右側リール本体10Aにおける軸方向の長さをより確実に小さく抑えることができ、従来の電動リールに比べてリール全体を小型化できる。
【0066】
また、本実施形態では、ストッパギア62は、ドライブギア軸41の一方向の回転を規制する。これにより、マグネット71をドライブギア42と右固定板11Dとの間に位置し、かつドライブギア軸41と共に回転するストッパギア62に取り付けることで、マグネット71及びセンサ72をより効果的に配置できる。これにより、右側リール本体10Aにおける軸方向の長さをより確実に小さく抑えることができ、従来の電動リールに比べてリール全体を小型化できる。
【0067】
また、本実施形態では、ハンドル20からスプール30への回転を伝達する伝達状態と、ハンドル20からスプール30への回転を断絶する断絶状態と、を切替えるクラッチ機構50を備えている。ストッパギア62は、ドライブギア軸41の回転に基づいてクラッチ機構50を断絶状態から伝達状態に切替える切替部である。これにより、マグネット71をドライブギア42と右固定板11Dとの間に位置し、かつドライブギア軸41と共に回転する切替部に取り付けることで、マグネット71及びセンサ72をより効果的に配置できる。これにより、右側リール本体10Aにおける軸方向の長さをより確実に小さく抑えることができ、従来の電動リールに比べてリール全体を小型化できる。
【0068】
また、本実施形態では、センサ72は、右固定板11Dに設けられている。これにより、右固定板11Dにセンサ72の取り付けスペースが比較的広く確保できるので、右固定板11Dにおけるマグネット71に対応した位置にセンサ72が配置しやすくなる。また、この場合には、センサ72が右固定板11Dに直接配置されることから、右側リール本体10Aにおける軸方向の長さをより確実に小さく抑えることができる。
【0069】
また、本実施形態では、マグネット71は、ドライブギア軸41の右固定板11D側の端部に配置されている。センサ72は、マグネット71に対して対向する対向部に設けられている。これにより、マグネット71とセンサ72とが互いに軸方向に対向した状態で配置されているので、センサ72によって回転するマグネット71をより高い精度で検出することができる。
【0070】
また、本実施形態では、センサ72は、マグネット71の所定単位時間の回転角度を検出する。これにより、ドライブギア軸41と共に回転するマグネット71をセンサ72で検出した所定単位時間の回転角度をモータ15にフィードバックしてモータ15の動力でハンドル20の操作をアシストすることができる。
【0071】
また、本実施形態では、センサ72によって検出された検出結果に応じて、モータ15の出力を制御する制御部を有する。これにより、ドライブギア軸41と共に回転するマグネット71をセンサ72で検出した検出結果を制御部によってモータ15の出力を適宜制御し、モータ15にフィードバックしてモータ15の動力でハンドル20の操作をアシストすることができる。
【0072】
上述のように構成された本実施形態による電動リール1では、右側リール本体10A内に効率よくセンサ72とマグネット71を配置することができ、リール本体10の軸方向の大型化を抑制し、操作性を良好にできる。
【0073】
以上、本発明による電動リールの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0074】
例えば、本実施形態では、実施形態では、本発明を電動リールに適用していたが、電動リール以外の電動リールに本発明を適用してもよい。
【0075】
また、本実施形態では、センサ72がフレーム11(右固定板11D)に設けられているが、センサ72の位置はフレーム11に配置されることに限定されることはない。要は、ドライブギア42とフレーム11との間の位置でマグネット71(被検出部)を検出可能な位置にセンサ72が配置されていればよいのである。
【0076】
また、本実施形態では、マグネット71(被検出部)がドライブギア軸41と共回りするストッパギア62に設けられているが、この位置であることに限定されることはない。要は、ドライブギア42とフレーム11との間の位置で、かつドライブギア軸41と共に回転する例えばギア部、切替部、一方向クラッチ等の部位であればよい。すなわち、被検出部の配置される位置としてストッパギア62に代えてドライブギア軸41と共に回転するリターンギアのフレーム側に配置されていてもよい。
【0077】
また、被検出部とセンサとが配置される軸方向の範囲を規定するフレームとは、本実施形態のように右固定板11Dに限定されず、右側板11Aであってもよい。
【0078】
さらに、本実施形態では、ストッパギア62の右固定板11Dを向く一端面62aにおいて周方向に間隔をあけて6個のマグネット71が設けられているが、マグネット71の数量や周方向の配置間隔は、検出する被検出部の所定単位時間の回転角度等の検出結果に基づいて適宜設定することができる。
【0079】
また、被検出部とセンサとの位置関係も、本実施形態ではドライブギア軸41の軸方向に対向する位置に配置されているが、このような位置関係であることに限定されることはない。要は、センサによって被検出部を検出できる位置関係であれば軸方向に交差する方向に対向するように配置されていてもよい。あるいは、被検出部とセンサとが互いに対向していることに限定されることもない。
【0080】
他の電動リールの構成として、例えば、変形例による電動リール1Aを採用できる。変形例の電動リール1Aは、マグネット71がドライブギア軸41の軸基端部41aの軸方向の軸端面41dに配置され、センサ72がマグネット71に対して対向する右固定板11Dの対向面部である凹部114に設けられている。軸端面41dのマグネット71は、ドライブギア軸41と共に回転する。
この場合には、ドライブギア軸41と共回りする部材に対してマグネット71を取り付けることが困難な場合であっても、ドライブギア軸41の軸端面にマグネット71を配置し、このマグネット71に対向する右固定板11D側の位置に設けたセンサ72によって回転量又は回転角度を精度よく検出することができる。
【符号の説明】
【0081】
1、1A 電動リール
10 リール本体
10A 右側リール本体
11 フレーム
11A 右側板
11B 左側板
11D 右固定板
111 軸支持凹部
113 外周筒
12 右カバー(カバー部)
13 左カバー
14 クラッチ操作部
20 ハンドル
30 スプール
40 回転伝達機構
41 ドライブギア軸
42 ドライブギア
50 クラッチ機構(クラッチ)
60 ローラクラッチ
61 リテーナ
62 ストッパギア(ギア部、切替部、一方向クラッチ)
62a 一端面
71 マグネット(被検出部)
72 センサ
S1、S2 収納空間