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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176637
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】電気音響変換器及びその取付構造
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20231206BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20231206BHJP
   H04R 1/06 20060101ALI20231206BHJP
   H04R 9/04 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H04R1/02 102B
B60R11/02 S
H04R1/06 310
H04R9/04 103
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089027
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】町田 賢太郎
【テーマコード(参考)】
3D020
5D012
5D017
【Fターム(参考)】
3D020BA10
3D020BB01
3D020BC06
3D020BD05
5D012AA03
5D012BA06
5D012BA08
5D012BA09
5D012BB01
5D012BB02
5D012BB03
5D012CA05
5D012GA01
5D017AE14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】駆動回路の信頼性と音質とを向上する電気音響変換器及びその取付構造を提供する。
【解決手段】車両のサイドドア20において、電気音響変換器1(スピーカユニット10)は、車両の車室空間(車室側空間車Sdry)を規定する隔壁210の一部を構成する振動部120と、車室外に配置される磁気回路130と、前記振動部120を振動させるための電気信号を処理する電気素子(コイル152と、コイル152と電気的に並列なコンデンサと、コイル152と電気的に直列なインダクタ)を有する電気回路140と、を備える。電気素子は、前記車室空間に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室空間を規定する隔壁の一部を構成する振動部と、
車室外に配置される磁気回路と、
前記振動部を振動させるための電気信号を処理する電気素子と、
を備える電気音響変換器であって、
前記電気素子は前記車室空間に配置される、
ことを特徴とする電気音響変換器。
【請求項2】
前記隔壁と前記振動部の間を接続するフレームと、
前記電気素子に接続される導通部材と、
をさらに備え、
前記導通部材は前記フレームを貫通する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項3】
前記電気素子は、前記フレームに固定される、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気音響変換器。
【請求項4】
前記フレームは、前記電気素子を支持する支持部を有する。
ことを特徴とする請求項2に記載の電気音響変換器。
【請求項5】
前記電気素子は、前記フレームの外縁を前記振動部の振動方向に延長した仮想境界と交差しない、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気音響変換器。
【請求項6】
前記電気素子は、前記フレームに設けられるコネクタの近傍に配置される、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気音響変換器。
【請求項7】
前記電気素子はフィルタとして機能する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項8】
前記電気素子はコンデンサである、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項9】
前記導通部材は、前記フレームと一体形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気音響変換器。
【請求項10】
前記フレームは、前記隔壁と接続する外周円筒部を有し
前記電気素子は、前記外周円筒部の外周面側に配置される、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気音響変換器。
【請求項11】
前記電気信号は前記車室空間と前記車室外の両方を通過する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項12】
請求項1に記載の電気音響変換器を、
前記隔壁に設けられた孔に挿通して、
前記隔壁と水密に接続する、
電気音響変換器の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用の電気音響変換器及びその取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
振動板を振動させて音を再生する電気音響変換器、いわゆるスピーカは、車両、例えば、自動車の車室内において、音楽や音声等の音響再生を行うために、広く使用されている。特許文献1には、車両のドアの室内壁にスピーカを設けることが記載されている。
【0003】
また、車両にスピーカを搭載する場合、高音域再生用のツイータや低音域再生用のウーファ等を組合せて、複数のスピーカを搭載することが広く行われている(特許文献1参照)。そして、1つのアンプ(チャネル)に対し複数のスピーカを接続する2WAYや3WAYの方式では、アンプと各スピーカの間にローパスフィルタやハイパスフィルタをそれぞれ設けてスピーカの合成インピーダンスを変更することで、音場を調整する。フィルタはコイル、コンデンサ、抵抗を組合せて構成される。特許文献2には、スピーカのフレームに取付部を一体成形し、フィルタ用のコンデンサを取付部に嵌着することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-37371号公報
【特許文献2】特開2000-152395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、可動窓を有する車両ドアではドアフレームの内側に雨水等が侵入するため、車両ドアに搭載されるスピーカの駆動回路にフィルタとしてコンデンサを設けると、コンデンサが被水することで、スピーカの振動部を振動させる電気回路の信頼性が低下するという課題があった。
【0006】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、駆動部の電気回路の信頼性と音質とを向上することができる電気音響変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様として実現することができる。
【0008】
本態様に係る電気音響変換器は、車両の車室空間を規定する隔壁の一部を構成する振動部と、車室外に配置される磁気回路と、前記振動部を振動させるための電気信号を処理する電気素子と、を備える電気音響変換器であって、前記電気素子は前記車室空間に配置される。
【0009】
上記電気音響変換器は、前記隔壁と前記振動部の間を接続するフレームと、前記電気素子に接続される導通部材をさらに備え、前記導通部材は前記フレームを貫通してもよい。
【0010】
上記電気音響変換器の前記電気素子は、前記フレームに固定されてもよい。
【0011】
上記電気音響変換器の前記フレームは、前記電気素子を支持する支持部を有してもよい。
【0012】
上記電気音響変換器の前記電気素子は、前記フレームの外縁を前記振動板の振動方向に延長した仮想境界と交差しなくてもよい。
【0013】
上記電気音響変換器の前記電気素子は、前記フレームに設けられるコネクタの近傍に配置されていてもよい。
【0014】
上記電気音響変換器の前記電気素子はフィルタとして機能してもよい。
【0015】
上記電気音響変換器の前記電気素子はコンデンサでもよい。
【0016】
上記電気音響変換器の前記導通部材は、前記フレームと一体形成されていてもよい。
【0017】
上記電気音響変換器の前記フレームは、前記隔壁と接続する外周円筒部を有し、前記電気素子は、前記外周円筒部の外周面側に配置されてもよい。
【0018】
上記電気音響変換器の前記電気信号は前記車室空間と前記車室外の両方を通過してもよい。
【0019】
本態様に係る電気音響変換器の取付構造は、前記電気音響変換器を、前記隔壁に設けられた孔に挿通して、前記隔壁と水密に接続する。
【発明の効果】
【0020】
上記手段を用いる本開示に係る電気音響変換器によれば、駆動部の電気回路の信頼性と音質とを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の電気音響変換器を適用した車両ドアの垂直断面概略図である。
図2】電気音響変換器の電気回路の回路図である。
図3】電気音響変換器の電気回路の電気素子の構成と配置を示す概略図である。
図4】電気音響変換器の電気素子の位置関係を示す背面斜視図である。
図5】電気音響変換器の電気素子と導通部材の位置関係を示す背面図である。
図6】電気音響変換器のコネクタとコンデンサ支持部の配置を示す前面斜視図である。
図7】電気音響変換器のコネクタとコンデンサ支持部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態を図面に基づき説明する。
【0023】
図1は、本開示の電気音響変換器を適用した車両ドアの垂直断面概略図である。具体的には、図1は、電気音響変換器1としてスピーカ10が取り付けられた車両のサイドドア20をスピーカ10の中心軸線O1を通る垂直面で見た断面である。
【0024】
本実施形態の電気音響変換器1は、例えば車両のサイドドア20(以下単にドア20という)等に搭載されるスピーカユニット10(以下単にスピーカ10という)である。図1には、スピーカ10の一例が示されており、スピーカ10の主要部品は、車幅方向に延在するスピーカ10の中心軸線O1に対して軸対称である。
【0025】
ドア20は、図1に示すように、主に、隔壁(インナーパネル)210と、内張(ドアトリム)220と、外張(アウターパネル)230と、窓ガラス240と、から構成される。垂直方向に延在する隔壁210と、隔壁210より車室側に設けられる内張220は、車室側空間(車室空間)Sdryを形成する。また、隔壁210と、隔壁210より車外側に設けられる外張230とは、車外側空間Swetを形成する。窓ガラス240は、車外側空間Swet内で隔壁210に沿って略上下方向にスライド可能に配置されている。隔壁210の上端と内張220の上端は水密に接続されており、車室側空間Sdryは上側から雨などの水分が侵入しないドライエリアとなっている。一方、隔壁210の上端と外張230の上端には、窓ガラス240がスライドできるように隙間があり、車外側空間Swetは、雨などの水分が上から侵入するウェットエリアとなっている。また、隔壁210の下端と外張230の下端との間には隙間があり、上部の隙間から侵入した水分が下部の隙間から排出されるようになっている。
【0026】
スピーカ10は、隔壁210に接続されるフレーム110と、フレーム110に接続される振動部120と、振動部120を駆動させる電気信号を伝達する電気回路140と、磁性体及び磁石を有する磁気回路130を有している。フレーム110は、後述する取付座118(図1には図示せず)を介してビス等の締結部材で隔壁210に取り付けられる。以下の説明において、中心軸線O1に平行な方向を軸方向といい、軸方向のうち、振動部120から車室側へ向かう方向を前方向、振動部120から車外側へ向かう方向を後方向とする。また、中心軸線O1から垂直に外側に放射する方向を径方向という。さらに、図面においては、径方向のうち、スピーカ10が車両の右のドア20に取り付けられた状態で、車両の前後方向に該当する方向をスピーカ10の左右方向と、車両の上下方向に該当する方向をスピーカ10の上下方向として表示する。
【0027】
スピーカ10は、振動部120から前方、すなわち車室側に向かって音が放射される。なお、内張220は樹脂で形成され、スピーカ10の前方に当たる部分に孔が設けられ、その孔がメッシュ部材221で覆われている。また、スピーカ10は、例えばウーファ又はサブウーファであり、大入力での低音再生が可能である。
【0028】
フレーム110は、円筒状の外周円筒部111と、外周円筒部111の外周面から径外側方向にフランジ状に延出する外周フランジ部112aと、外周円筒部111の内周面から径内側方向にフランジ状に延出する内周フランジ部112bと、を有する。また、フレーム110は、上部にコネクタ114を有する。外周フランジ部112a、外周円筒部111、及び内周フランジ部112bは、中実かつ一体に形成されている。なお、外周円筒部111は、車外側空間Swetにおいて、図1に示すように下側の一部が切り欠かれていてもよい。フレーム110は、内周フランジ部112bの内周端から後方に向かって断面において段階的に径が縮小する本体部113を有する。本体部113は、中心軸線O1と同軸の環状底部113aと、環状底部113aと外周円筒部111の内周面前側との間に放射状に形成される複数の支柱(ビーム)113bとから形成される。環状底部113aの後面は磁気回路130に接続されている。フレーム110は、樹脂で成形されても、金属で成形されても、樹脂と金属で成形されてもよい。
【0029】
外周フランジ部112aは、車室側に面する外周フランジ部第1面1121と車外側に面する外周フランジ部第2面1122とを有する。隔壁210は、スピーカ10の外周円筒部111が挿通される隔壁孔211を有する。外周フランジ部112aの外径は、隔壁孔211の径より大きい。そして、外周フランジ部第2面1122は、円環状のシール部材212を介して車室側かつ隔壁孔211の径方向外側の隔壁210に水密に接続されている。すなわち、外周フランジ部112aは、隔壁210と水密に接続されている。
【0030】
振動部120は、振動板121と、エッジ122と、センターキャップ123と、ダンパ124と、ボイスコイル150と、を備えている。ボイスコイル150の振動方向は軸方向と同じである。即ち、振動部120の振動方向は軸方向と同じである。振動板121と、エッジ122と、センターキャップ123は防水性能を有する素材で製造される。
【0031】
振動板121は、中央に中心軸線O1と同軸の円孔を有し、円孔の内周縁から径方向外側かつ前方向に延びるコーン形状をなす放音部材である。また振動板121は、ボイスコイル150に接続されている。エッジ122は、例えば断面逆U字型の窪みを形成する環状をなし、その内周縁は振動板121の外周縁に、その外周縁はフレーム110の内周フランジ部112bの前面に、それぞれ接続されている。センターキャップ123は、放音部材であり、その外周縁は、振動板121の円孔を覆うように振動板121の頂面(前面)の一部と接続している。すなわち、振動部120は、フレーム110と水密に接続されている。これにより、振動部120は、車室側空間Sdryと車外側空間Swetを水密に隔てる上で、隔壁210の一部を構成していることになる。ダンパ124は、ボイスコイル150とフレーム110との間を連結して、ボイスコイル150を中心軸線O1方向に振動可能に支持している。
【0032】
磁気回路130は、トッププレート132と、マグネット133と、ボトムプレート(ヨーク)134と、を備え、スピーカ10の中央かつ振動部120の後方位置に配置されている。即ち、磁気回路130は、車外側空間Swet(車室外)に配置されている。トッププレート132及びボトムプレート134は、磁性部材であり、マグネット133は、例えば、軸方向に着磁された永久磁石である。ボトムプレート134の前面の外周縁には、リング状のマグネット133、及び、リング状のトッププレート132が積層されている。また、ボトムプレート134は、前面中央に前方に延出する中央円柱部を有する。トッププレート132とボトムプレート134の中央円柱部との空隙は、磁気ギャップGを形成している。
【0033】
ボイスコイル150は中心軸線O1と同軸の円筒形状をなすボビン151と、ボビン151の外周面に巻回されたコイル152とから構成される。コイル152は、磁気ギャップGに配置されている。また、コイル152は、ボイスコイル150を軸方向に駆動させる(振動させる)電気信号が印加される電気回路140の一部を構成する。電気回路140の詳細は後述する。
【0034】
図2は、電気音響変換器の駆動回路を示す回路図である。具体的には、ボイスコイル150を振動させる電気信号が印加される電気回路140の回路図である。図3は、電気音響変換器の電気回路の実際の電気素子の構成と配置を示す概略図である。
【0035】
図2に示すように、電気回路140には、電気素子として、コイル152と、コイル152と電気的に並列なコンデンサ141と、コイル152と電気的に直列なインダクタ142と、が接続されている。また、電気回路140は、一対の端子144a、144bを有し、端子144a、144bからボイスコイル150を振動させる電気信号が入力される。コンデンサ141とインダクタ142は、入力された電気信号を処理するフィルタとして機能するフィルタ143を構成している。
【0036】
次に電気回路140の実際の構成、配置、及び接続関係を図3を参照しながら説明する。電気回路140においてコンデンサ141、インダクタ142、及び、コイル152は、電気を通す導通部材であるラグ板161、162、163、164及び、錦糸線165、166、167により電気的に接続されている。
【0037】
具体的には、図2に示すコイル152のプラス(+)側は、錦糸線165の一端に接続し、コイル152のマイナス(-)側は、錦糸線166の一端に接続している。錦糸線165の他端はラグ板164の一方の端部164bに接続し、錦糸線166の他端は、ラグ板162の一方の端部162aに接続している。ラグ板164の他方の端部164aはインダクタ142の一対の引き出し線の一方に接続され、インダクタ142の一対の引き出し線の他方は、ラグ板161の一方の端部161bに接続されている。ラグ板161の他方の端部161aは、図2に示した端子144aを形成している。同様にラグ板162の他方の端部162bは、図2に示した端子144bを形成している。
【0038】
そして、ラグ板164の端部164bには、さらに錦糸線167の一端が接続され、錦糸線167の他端は、ラグ板163の一方の端部163aに接続されている。ラグ板163の他方の端部163bは、コンデンサ141の一対の引き出し線の一方に接続され、コンデンサ141の一対の引き出し線の他方は、ラグ板162の中間に設けられた引出部162cに接続されている。
【0039】
図4は、電気音響変換器の電気素子の位置関係を示す背面斜視図である。図5は、電気音響変換器の電気素子と導通部材の位置関係を示す背面図である。
【0040】
図4及び図5に示すように、コネクタ114及びコンデンサ141は外周フランジ部112aより前方において、外周円筒部111の外周面上に配置されている。また、インダクタ142、コイル152、ラグ板164、及び3本の錦糸線165、166、167は、外周円筒部111より径方向内側において、振動部120の後方に配置されている。本実施形態では、図4に示すように、フレーム110の支柱113b(図4においては代表で1つのみ符号を表示)は、外周円筒部111と環状底部113aの間に放射状に配置され外周円筒部111の内側を面状に密閉するものではないため、外周円筒部111の径方向内側では、振動部120より後方が車外側空間Swetとなる。すなわち、振動部120が車室側空間Sdryと車外側空間Swetを規定する境界の一部となっている。そして、コネクタ114及びコンデンサ141は車室側空間Sdryに、インダクタ142、コイル152、ラグ板164、及び錦糸線165、166、167は車外側空間Swetに配置されている。
【0041】
そして、図5を参照すると、フレーム110は、外周円筒部111の内周側に凸部115が一体に形成されている。ラグ板161、162、163は、それぞれの端部161a、161b、162a、162b、163a、163b及び引出部162cを除き、凸部115にインサート成形により埋め込まれ、フレーム110を車室側空間Sdryと車外側空間Swetとの間で貫通している(図5において破線で表示)。端部161a、162b、163b及び引出部162cは、外周フランジ部112aより前方において、外周円筒部111の外周面上に配置されている。即ち、端部161a、162b、163b及び引出部162cは、車室側空間Sdryに配置されている。一方、端部161b、162a、163aは、外周円筒部111より径方向内側において、振動部120の後方に配置されている。即ち、端部161b、162a、163aは、車外側空間Swetに配置されている。なお、ラグ板164は車外側空間Swetに配置されている。これにより、端子144a、144bに印加された電気信号は、車室側空間Sdryと車外側空間Swetの両方を通過する。
【0042】
図6は、電気音響変換器のコネクタとコンデンサ支持部の配置を示す前面斜視図である。図7は、電気音響変換器のコネクタとコンデンサ支持部の拡大図である。
【0043】
図6及び図7に示すように、フレーム110は、外周フランジ部112aより前方において、外周円筒部111の外周面から断面略矩形の筒状に延出するコネクタ114が形成されている。また、フレーム110は、外周フランジ部112aより前方かつコネクタ114の近傍において、コンデンサ141を支持する支持部の一例として、前側支持部116a、116b、及び後側支持部117a、117bが形成されている。前側支持部116a、116bは、外周円筒部111の外周面から径方向外側にリブ状に延出している。また、後側支持部117a、117bは、外周フランジ部112aの前面からリブ状に前方に延出している。コネクタ114、前側支持部116a、116b、及び後側支持部117a、117bは、同一の型抜き方向に延在するように形成されている。コンデンサ141は、前側支持部116a、116bと後側支持部117a、117bとに挟持されている。また、コンデンサ141は、前後方向からスピーカ10を見たときに、外周フランジ部112aの外周縁より内側に配置されている。すなわち、コンデンサ141は、フレーム110の外縁を前後方向(振動方向)に延長した仮想境界と交差しないように配置されている。また、フレーム110は、外周円筒部111から径方向外側に延出しする複数の取付座118を有する。
【0044】
このように構成されたスピーカ10は、ラグ板161、162、163がフレーム110を貫通してフレーム110と一体に設けられることで、ボイスコイル150が車外側空間Swetに配置されていても、ボイスコイル150を振動させる電気回路140の一部を車室側空間Sdryに配置できる。例えば、本実施形態のように、被水による性能への影響が懸念されるコンデンサ141のみを車室側空間Sdryに配置できる。すなわち電気素子を、電気素子の性能発揮により適した環境に配置できるため、環境から電気素子が受けるダメージを減少させることができ、電気回路140の信頼性が向上する。
【0045】
また、コンデンサ141は、フレーム110に形成された前側支持部116a、116bと後側支持部117a、117bに挟持されて固定されるため、車両の走行振動によりコンデンサ141がフレーム110に対して動くことがなく、ラグ板162、163との接続が外れるのを防止することができる。すなわち電気回路140の信頼性が向上する。また、コンデンサ141がフレーム110の外縁から飛び出さないように配置されるので、スピーカ10をドア20に取り付ける場合にコンデンサ141に不用意に触れることがなく、また、スピーカ10やドア20への他の取付部品との干渉を防ぐことができる。さらに、コンデンサ141が開放空間に設けられる(密閉容器等の閉空間に閉じ込められることがない)ため、コンデンサ141の防爆弁の作動を妨げることがない。
【0046】
また、コンデンサ141はコネクタ114の近傍に設けられるため、ラグ板162の端部162bと引出部163cの長さを小さくできる。また、ラグ板161、162、163を集中して配置できる。これにより、製造コストを抑えることができる。
【0047】
また、電気回路140に設けられたコンデンサ141及びインダクタ142からなるフィルタ143によって、ボイスコイル150を振動させる電気信号を処理することで、音場を調整しスピーカ10の音質の向上を図ることができる。
【0048】
このように本実施形態のスピーカ10は、振動部120を振動させる電気回路140の信頼性とスピーカ10の音質とを向上することができる。
【0049】
以上で本開示に係る実施形態の説明を終えるが、本開示の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0050】
例えば、電気音響変換器の搭載場所は、車両に限られず、ドライサイドとウェットサイドを規定する隔壁を有するその他の移動体でもよい。
【0051】
上記実施形態において、フレーム110は、外周フランジ部112aの後面がシール部材212を介して隔壁210の前面と接続されていたが、外周フランジ部112aの前面がシール部材212を介して隔壁210の後面と接続されていてもよい。
【0052】
また、上記実施形態において、スピーカ10は車両のサイドドア20に搭載されていたが、バックドア等に搭載されてもよい。
【0053】
また、上記実施形態において、フィルタ143を1つ設ける例を示したが、フィルタは、複数設けられてもよい。上記実施形態において、フィルタ143のコンデンサ141はコイル152に並列に接続されていたが、スピーカの種類やフィルタ性能に応じて直列に接続してもよい。
【0054】
また、上記実施形態において、フィルタ143は、コンデンサ141とコイル152とをそれぞれ1つずつ有していたが、それぞれ複数でもよく、また抵抗等のその他の受動素子や能動素子を有していてもよい。
【0055】
また、上記実施形態において、コンデンサ141は円柱形状であり、その中心軸がスピーカ10の周方向に沿って配置されていたが、それ以外の形状や配置、例えば振動方向に沿って配置されてもよい。
【0056】
また、上記実施形態において、インダクタ142は車外側空間Swetに配置されていたが、車室側空間Sdryに配置されてもよい。さらに、フィルタ143全体が車室側空間Sdryに配置されてもよい。
【0057】
また、上記実施形態において、車室側空間Sdryは振動部120によって規定されていたが、フレーム110の本体部113の環状底部113aと外周円筒部111との間を面状に接続することにより水密接続を確保し、フレーム110により車室側空間Sdryを規定するように構成してもよい。この場合において、コンデンサ141は、外周円筒部111の内周面より径方向内側であって、本体部113の内周面より径方向内側に配置してもよい。
【0058】
また、上記実施形態において、スピーカ10は外磁型である例を示したが、スピーカ10は内磁型であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 :電気音響変換器
10 :スピーカユニット
20 :サイドドア
110 :フレーム
111 :外周円筒部
112a :外周フランジ部
112b :内周フランジ部
113 :本体部
114 :コネクタ
115 :凸部
116a、116b :前側支持部
117a、117b :後側支持部
120 :振動部
121 :振動板
122 :エッジ
123 :センターキャップ
124 :ダンパ
130 :磁気回路
140 :電気回路
141 :コンデンサ
142 :インダクタ
150 :ボイスコイル
151 :ボビン
152 :コイル
161、162、163、164 :ラグ板
210 :隔壁
220 :内張
230 :外張
240 :窓ガラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水の侵入しない車室側空間と雨水の侵入する車外側空間とに隔てる隔壁を備える車両に搭載される電気音響変換器であって、
前記隔壁の一部を構成する振動部と、
前記車外側空間に配置される磁気回路と、
前記振動部を振動させるための電気信号を処理する電気素子と、
前記隔壁と前記振動部の間を接続するフレームと、
前記電気素子に接続される導通部材と、
を備え、
前記電気素子は前記車室側空間に配置され
前記導通部材は前記フレームを貫通し、
前記電気素子は前記フレームに固定される、
ことを特徴とする電気音響変換器。
【請求項2】
前記フレームは、前記電気素子を支持する支持部を有する。
ことを特徴とする請求項に記載の電気音響変換器。
【請求項3】
前記電気素子は、前記フレームの外縁を前記振動部の振動方向に延長した仮想境界と交差しない、
ことを特徴とする請求項に記載の電気音響変換器。
【請求項4】
前記電気素子は、前記フレームに設けられるコネクタの近傍に配置される、
ことを特徴とする請求項に記載の電気音響変換器。
【請求項5】
前記電気素子はフィルタとして機能する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項6】
前記電気素子はコンデンサである、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項7】
前記導通部材は、前記フレームと一体形成されている、
ことを特徴とする請求項に記載の電気音響変換器。
【請求項8】
前記フレームは、前記隔壁と接続する外周円筒部を有し
前記電気素子は、前記外周円筒部の外周面側に配置される、
ことを特徴とする請求項に記載の電気音響変換器。
【請求項9】
前記電気信号は前記車室側空間と前記車外側空間の両方を通過する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項10】
請求項1に記載の電気音響変換器を、
前記隔壁に設けられた孔に挿通して、
前記隔壁と水密に接続する、
電気音響変換器の取付構造。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本態様に係る電気音響変換器は、雨水の侵入しない車室側空間と雨水の侵入する車外側空間とに隔てる隔壁を備える車両に搭載される電気音響変換器であって、
前記隔壁の一部を構成する振動部と、前記車外側空間に配置される磁気回路と、前記振動部を振動させるための電気信号を処理する電気素子と、前記隔壁と前記振動部の間を接続するフレームと、前記電気素子に接続される導通部材と、を備え、前記電気素子は前記車外側空間に配置され、前記導通部材は前記フレームを貫通し、前記電気素子は前記フレームに固定される
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
上記電気音響変換器の前記電気信号は前記車室側空間と前記車外側空間の両方を通過してもよい。