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特開2023-176648固定子の組み付け方法、および、固定子の組み付け装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176648
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】固定子の組み付け方法、および、固定子の組み付け装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
H02K15/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089045
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】祖 昌鵬
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615BB16
5H615PP01
5H615SS10
(57)【要約】
【課題】部材の損傷を抑制しつつ、組み付けの効率を向上可能な固定子の組み付け装置を提供する。
【解決手段】環状に配置された複数の固定子コア102を有する固定子100の組み付け装置1であって、保持部70を備える。固定子100は、組み付け後の状態において、渡線105で接続されたコイル線104を一対の固定子コア102のそれぞれに巻き回して形成された固定子コア対101を複数組有する。保持部70は、固定子コア対101を基準円Cr1上に保持可能である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に配置された複数の固定子コア(102)を有する固定子(100)の組み付け方法であって、
前記固定子は、組み付け後の状態において、渡線(105)で接続されたコイル線(104)を一対の前記固定子コアのそれぞれに巻き回して形成された固定子コア対(101)を複数組有し、
複数の前記固定子コア対を、基準円(Cr1)の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて前記基準円上に配置し、前記固定子コアを環状に組み付ける組み付け工程を含む固定子の組み付け方法。
【請求項2】
前記組み付け工程では、一の前記固定子コア対を、前記基準円の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて前記基準円上に配置した後、前記基準円の周方向に回転させ、別の前記固定子コア対を前記基準円の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて前記基準円上に配置する請求項1に記載の固定子の組み付け方法。
【請求項3】
前記組み付け工程では、一の前記固定子コア対を、前記基準円の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて前記基準円上に配置した後、別の前記固定子コア対の前記渡線が前記一の固定子コア対の前記渡線に対し前記固定子コアとは反対側に位置するよう、前記別の固定子コア対を前記基準円の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて前記基準円上に配置する請求項1または2に記載の固定子の組み付け方法。
【請求項4】
環状に配置された複数の固定子コア(102)を有する固定子(100)の組み付け装置であって、
前記固定子は、組み付け後の状態において、渡線(105)で接続されたコイル線(104)を一対の前記固定子コアのそれぞれに巻き回して形成された固定子コア対(101)を複数組有し、
前記固定子コア対を基準円(Cr1)上に保持可能な保持部(70)を備える固定子の組み付け装置。
【請求項5】
前記保持部を前記基準円の周方向に回転可能に支持する回転支持部(80)をさらに備える請求項4に記載の固定子の組み付け装置。
【請求項6】
前記保持部は、前記固定子コア対を吸引可能な磁石(702)を有する請求項4または5に記載の固定子の組み付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子の組み付け方法、および、固定子の組み付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の固定子コアを環状に配置した固定子が知られている。例えば、特許文献1には、このような固定子の組み付け方法が開示されている。特許文献1の方法では、渡線で連続的に接続された複数の固定子コアを直線状に配置した状態で、渡線迂回手段により渡線を迂回させながら環状に丸め、固定子コアを組み付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-172430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、渡線で接続された複数の固定子コアを環状に丸める際、渡線迂回手段により渡線を迂回させる必要がある。そのため、渡線にストレスがかかり、渡線が損傷するおそれがあるとともに、組み付けの効率が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、部材の損傷を抑制しつつ、組み付けの効率を向上可能な固定子の組み付け方法、および、固定子の組み付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、環状に配置された複数の固定子コア(102)を有する固定子(100)の組み付け方法であって、組み付け工程を含む。固定子は、組み付け後の状態において、渡線(105)で接続されたコイル線(104)を一対の固定子コアのそれぞれに巻き回して形成された固定子コア対(101)を複数組有する。
【0007】
組み付け工程では、複数の固定子コア対を、基準円(Cr1)の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円上に配置し、固定子コアを環状に組み付ける。そのため、固定子の組み付けの際、従来技術(特許文献1)のように、渡線迂回手段により渡線を迂回させながら複数の固定子コアを環状に丸める必要はなく、渡線にストレスがかかること、および、組み付けの作業効率が低下することを抑制できる。これにより、渡線の損傷を抑制しつつ、固定子の組み付けの効率を向上できる。
【0008】
本発明の第2の態様は、環状に配置された複数の固定子コア(102)を有する固定子(100)の組み付け装置であって、保持部を備える。固定子は、組み付け後の状態において、渡線(105)で接続されたコイル線(104)を一対の固定子コアのそれぞれに巻き回して形成された固定子コア対(101)を複数組有する。
【0009】
保持部は、固定子コア対を基準円(Cr1)上に保持可能である。
【0010】
本態様では、複数の固定子コア対を、基準円の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円上に配置し保持部に保持させ、固定子コアを環状に組み付けることができる。そのため、固定子の組み付けの際、従来技術(特許文献1)のように、渡線迂回手段により渡線を迂回させながら複数の固定子コアを環状に丸める必要はなく、渡線にストレスがかかること、および、組み付けの作業効率が低下することを抑制できる。これにより、渡線の損傷を抑制しつつ、固定子の組み付けの効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A)は固定子コア対を示す斜視図、(B)は固定子を示す斜視図。
図2】一実施形態による組み付け装置を示す断面図。
図3】一実施形態による組み付け装置を示す断面図。
図4】一実施形態による組み付け装置を示す斜視図。
図5】一実施形態による組み付け装置および固定子を示す断面図。
図6】一実施形態による固定子の組み付け工程を示す図であって、(A)は1組目の固定子コア対を基準円上に配置した状態を示す図、(B)は2組目の固定子コア対を基準円上に配置した状態を示す図。
図7】一実施形態による固定子の組み付け工程を示す図であって、(A)は3組目の固定子コア対を基準円上に配置した状態を示す図、(B)は4組目の固定子コア対を基準円上に配置した状態を示す図。
図8】一実施形態による固定子の組み付け工程を示す図であって、(A)は5組目の固定子コア対を基準円上に配置した状態を示す図、(B)は6組目の固定子コア対を基準円上に配置した状態を示す図。
図9】比較形態による固定子の組み付け治具および固定子コア対を示す図。
図10】比較形態による固定子の組み付け工程を示す図であって、(A)は3組の固定子コア対を組み付け治具内に配置した状態を示す図、(B)は組み付け治具内に配置した3組の固定子コア対の渡線を径方向内側に移動させた状態を示す図。
図11】比較形態による固定子の組み付け工程を示す図であって、(A)は別の3組の固定子コア対を組み付け治具内に配置した状態を示す図、(B)は組み付け治具内に配置した別の3組の固定子コア対の渡線を径方向外側に移動させた状態を示す図。
図12】比較形態による固定子の組み付け工程で生じ得る問題を説明するための図であって、渡線がコイル線の巻き終わりの箇所から外れる様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態による固定子の組み付け方法、および、固定子の組み付け装置を図面に基づき説明する。
【0013】
(一実施形態)
一実施形態による固定子の組み付け装置を図2~4に示す。
【0014】
組み付け装置1は、固定子100を組み付けるための装置である。ここで、固定子100は、例えば3相ブラシレスモータの固定子として用いられる。固定子100は、環状に配置された複数の固定子コア102を有する(図1(B)参照)。本実施形態では、固定子100は、12個の固定子コア102を有する。
【0015】
固定子100は、組み付け後の状態において、渡線105で接続されたコイル線104を一対の固定子コア102のそれぞれに巻き回して形成された固定子コア対101を複数組有する(図1(B)参照)。本実施形態では、固定子100は、固定子コア対101を6組(6つ)有する。
【0016】
図1(A)に示すように、1組(1つ)の固定子コア対101は、一対(2つ)の固定子コア102、2つのインシュレータ103、2つのコイル線104、1つの渡線105を有している。固定子コア102は、例えば積層鋼板により断面略T字状に形成されている。インシュレータ103は、例えば樹脂により形成され、固定子コア102の一部を覆うようにして設けられている。コイル線104は、例えば伝導材により線状に形成され、インシュレータ103に巻き回されるようにして固定子コア102に設けられている。渡線105は、例えば伝導材により線状に形成され、一対の固定子コア102の一方のコイル線104の巻き終わりと、一対の固定子コア102の他方のコイル線104の巻き始めとを接続している。ここで、2つのコイル線104と渡線105とは、1つの材料により一体に形成されている。
【0017】
本実施形態では、図1(A)に示す固定子コア対101を環状に配置することにより、固定子100を組み付ける(図1(B)参照)。
【0018】
図2~4に示すように、固定子100の組み付け装置1は、保持部70、回転支持部80、支持柱81等を備えている。
【0019】
保持部70は、保持部本体700、磁石保持穴701、磁石702、固定穴703、固定部材704、ラフガイド705、支持台部71、支持台部72等を有している。保持部本体700は、例えば金属により略円筒状に形成されている。磁石保持穴701は、保持部本体700の内周壁と外周壁とを接続するよう形成されている。磁石保持穴701は、保持部本体700の周方向に等間隔で12個形成されている。磁石702は、略円柱状に形成され、磁石保持穴701に挿入されるようにして設けられている。磁石702は、磁石保持穴701の数に対応し、12個設けられている。固定穴703は、保持部本体700の軸方向の一端から他端に向かって延び、磁石保持穴701と略垂直に交差するよう形成されている(図3参照)。固定穴703は、磁石保持穴701の数に対応し、12個形成されている。
【0020】
固定部材704は、固定穴703に挿入されている。固定部材704は、磁石702を固定穴703の軸方向に押圧するようにして設けられている。これにより、磁石702は、磁石保持穴701に対する軸方向の相対移動が規制されている。磁石702は、磁石保持穴701に対する軸方向の相対位置が調整された状態で磁石保持穴701に設けられている。
【0021】
ラフガイド705は、保持部本体700の外周壁の磁石保持穴701間において保持部本体700の径方向外側へ突出するとともに、保持部本体700の一方の端面から他方の端面まで延びるよう形成されている。ラフガイド705は、保持部本体700の周方向に等間隔で12個形成されている。
【0022】
支持台部71は、支持台部本体710、支持台部突出部711を有している。支持台部本体710は、略円環状に形成されている。支持台部突出部711は、支持台部本体710の外縁部から支持台部本体710の径方向外側へ突出するようにして形成されている。支持台部突出部711は、支持台部本体710の周方向に等間隔で6つ形成されている。
【0023】
支持台部72は、支持台部本体720、支持台部突出部721を有している。支持台部本体720は、略円環状に形成されている。支持台部突出部721は、支持台部本体720の外縁部から支持台部本体720の径方向外側へ突出するようにして形成されている。支持台部突出部721は、支持台部本体720の周方向に等間隔で6つ形成されている。
【0024】
保持部70と支持台部71とは、固定ボルト91により、略同軸に固定されている(図2~4参照)。支持台部71と支持台部72とは、固定ボルト92により、略同軸に固定されている(図2、3参照)。
【0025】
支持柱81は、略円柱状に形成されている。支持柱81は、軸方向の一端に形成されたフランジ部811を固定ボルト93により床2に固定することで床2に固定することができる。
【0026】
回転支持部80は、例えばボールベアリングである。回転支持部80は、内輪801、外輪802、ボール803を有している。内輪801、外輪802は、略円筒状に形成されている。ボール803は、内輪801と外輪802との間で転動可能に設けられている。内輪801と外輪802とは、ボール803により、軸方向の相対移動が規制されつつ、周方向に滑らかに相対回転可能である。
【0027】
回転支持部80は、内輪801が、支持柱81の他端の段差部812に係止されることで、支持柱81に設けられている。これにより、回転支持部80は、支持柱81に指示され、支持柱81に対する軸方向(鉛直方向)の位置が規定される。
【0028】
固定ボルト91および固定ボルト92により一体に組み付けられた保持部70、支持台部71および支持台部72は、支持台部71の支持台部本体710の内縁部が、回転支持部80の外輪802に係止されている。これにより、保持部70、支持台部71および支持台部72は、回転支持部80を介し、支持柱81に対し相対回転可能なよう支持柱81に支持されている。このように、回転支持部80は、保持部70を周方向に回転可能に支持する。
【0029】
回転支持部80の内輪801に対しフランジ部811とは反対側には、固定板部82が設けられている。固定板部82は、支持柱81の段差部812との間に内輪801を挟むようにして、固定ボルト94により支持柱81のフランジ部811とは反対側の端部に固定されている。これにより、回転支持部80、保持部70、支持台部71および支持台部72は、支持柱81からの抜けが抑制されている。
【0030】
支持柱81には、プランジャ支持部83、プランジャ84が設けられている。プランジャ支持部83は、支持台部72に対し支持台部71とは反対側に位置するよう支持柱81の径方向外側に設けられている。プランジャ84は、略円柱状に形成され、プランジャ支持部83に対し支持柱81の軸方向に相対移動可能なようプランジャ支持部83に設けられている。プランジャ84の先端部は、支持台部72の支持台部71とは反対側の面に形成された窪みに嵌合可能である。当該窪みは、例えば支持台部72の周方向に等間隔で複数形成されている。当該窪みとプランジャ84との嵌合により、保持部70を支持柱81に対し所定角度毎に位置決めすることができる。
【0031】
<6>図5に示すように、保持部70の磁石702は、固定子コア対101の固定子コア102を吸引可能である。これにより、固定子コア102は、保持部本体700の外周壁に吸着された状態で保持される。
【0032】
<4>保持部70は、固定子コア対101の固定子コア102を基準円Cr1上に保持可能である。ここで、基準円Cr1は、保持部70の保持部本体700の軸Ax1上の一点を中心C1とする仮想的な円である。保持部70の支持台部71は、固定子コア対101の固定子コア102を鉛直方向下側から保持可能である。
【0033】
<5>回転支持部80は、保持部70を基準円Cr1の周方向に回転可能に支持する。
【0034】
ラフガイド705は、固定子コア102が保持部本体700の外周壁に吸着された状態において、固定子コア102に対し保持部本体700の周方向の両側に位置するよう形成されている。これにより、固定子コア102の周方向のずれを抑制できる。
【0035】
保持部本体700の外径は、組み付け後の固定子100の内径より大きく設定されている。そのため、固定子コア102を保持部本体700の外周壁に確実に接触させ、固定子100の組み付け時における固定子コア102の位置をより安定させることができる。
【0036】
次に、組み付け装置1を用いた固定子100の組み付け方法について、図6~8に基づき説明する。図6~8において、便宜上、6組の固定子コア対101をそれぞれ固定子コア対10、20、30、40、50、60とする。また、固定子コア対10、20、30、40、50、60の2つの固定子コア102のうち一方の固定子コア102をそれぞれ固定子コア11、21、31、41、51、61とし、他方の固定子コア102をそれぞれ固定子コア12、22、32、42、52、62とする。また、固定子コア対10、20、30、40、50、60の渡線105をそれぞれ渡線17、27、37、47、57、67とする。
【0037】
まず、作業者が、固定子コア対10を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて、固定子コア11および固定子コア12を保持部本体700の外周壁に吸着させ、基準円Cr1上に配置する(図6(A)参照)。ここで、特に固定子コア11が基準円Cr1の径方向上の矢印d1に沿って移動するよう、固定子コア対10を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させる。
【0038】
その後、作業者が、固定子コア対10とともに保持部70を基準円Cr1の周方向の一方に回転させる(図6(A)、(B)参照)。
【0039】
その後、作業者が、固定子コア対20を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて、固定子コア21および固定子コア22を保持部本体700の外周壁に吸着させ、基準円Cr1上に配置する(図6(B)参照)。ここで、特に固定子コア21が基準円Cr1の径方向上の矢印d2に沿って移動するよう、固定子コア対20を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させる。
【0040】
より詳細には、固定子コア対20の渡線27が固定子コア対10の渡線17に対し固定子コア12とは反対側に位置するよう、固定子コア対20を基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円Cr1上に配置する(図6(B)参照)。
【0041】
その後、作業者が、固定子コア対10、20とともに保持部70を基準円Cr1の周方向の一方に回転させる(図6(B)、図7(A)参照)。
【0042】
その後、作業者が、固定子コア対30を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて、固定子コア31および固定子コア32を保持部本体700の外周壁に吸着させ、基準円Cr1上に配置する(図7(A)参照)。ここで、特に固定子コア31が基準円Cr1の径方向上の矢印d3に沿って移動するよう、固定子コア対30を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させる。
【0043】
より詳細には、固定子コア対30の渡線37が固定子コア対20の渡線27に対し固定子コア22とは反対側に位置するよう、固定子コア対30を基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円Cr1上に配置する(図7(A)参照)。
【0044】
その後、作業者が、固定子コア対10、20、30とともに保持部70を基準円Cr1の周方向の一方に回転させる(図7(A)、(B)参照)。
【0045】
その後、作業者が、固定子コア対40を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて、固定子コア41および固定子コア42を保持部本体700の外周壁に吸着させ、基準円Cr1上に配置する(図7(B)参照)。ここで、特に固定子コア41が基準円Cr1の径方向上の矢印d4に沿って移動するよう、固定子コア対40を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させる。
【0046】
より詳細には、固定子コア対40の渡線47が固定子コア対30の渡線37に対し固定子コア32とは反対側に位置するよう、固定子コア対40を基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円Cr1上に配置する(図7(B)参照)。
【0047】
その後、作業者が、固定子コア対10、20、30、40とともに保持部70を基準円Cr1の周方向の一方に回転させる(図7(B)、図8(A)参照)。
【0048】
その後、作業者が、固定子コア対50を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて、固定子コア51および固定子コア52を保持部本体700の外周壁に吸着させ、基準円Cr1上に配置する(図8(A)参照)。ここで、特に固定子コア51が基準円Cr1の径方向上の矢印d5に沿って移動するよう、固定子コア対50を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させる。
【0049】
より詳細には、固定子コア対50の渡線57が固定子コア対40の渡線47に対し固定子コア42とは反対側に位置するよう、固定子コア対50を基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円Cr1上に配置する(図8(A)参照)。
【0050】
その後、作業者が、固定子コア対10、20、30、40、50とともに保持部70を基準円Cr1の周方向の一方に回転させる(図8(A)、(B)参照)。
【0051】
その後、作業者が、固定子コア対60を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて、固定子コア61および固定子コア62を保持部本体700の外周壁に吸着させ、基準円Cr1上に配置する(図8(B)参照)。ここで、特に固定子コア61が基準円Cr1の径方向上の矢印d6に沿って移動するよう、固定子コア対60を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させる。なお、このとき、固定子コア62を基準円Cr1の径方向上の矢印d7に沿って移動させ、保持部本体700の外周壁に吸着させる。
【0052】
より詳細には、固定子コア対60の渡線67が固定子コア対50の渡線57に対し固定子コア52とは反対側、かつ、固定子コア対10の渡線17に対し固定子コア11とは反対側に位置するよう、固定子コア対60を基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円Cr1上に配置する(図8(B)参照)。
【0053】
この状態において、渡線27は、渡線17に対し固定子コア12、21とは反対側に位置している。渡線37は、渡線27に対し固定子コア22、31とは反対側に位置している。渡線47は、渡線37に対し固定子コア32、41とは反対側に位置している。渡線57は、渡線47に対し固定子コア42、51とは反対側に位置している。渡線67は、渡線57に対し固定子コア52、61とは反対側、かつ、渡線17に対し固定子コア62、11とは反対側に位置している(図8(B)参照)。
【0054】
以上の工程により、6組の固定子コア対101、すなわち12個の固定子コア102を環状に配置し、固定子100を組み付ける、すなわち製造することができる。
【0055】
なお、図5において、各固定子コア102から鉛直方向下側に垂れ下がるコイル線104は、余分な箇所を切断し、例えば溶接により互いに電気的に接続される。
【0056】
上述したように、<1>本実施形態による固定子の組み付け方法は、環状に配置された複数の固定子コア102を有する固定子100の組み付け方法であって、組み付け工程を含む。
【0057】
組み付け工程では、複数の固定子コア対101を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円Cr1上に配置し、固定子コア102を環状に組み付ける。
【0058】
また、<2>組み付け工程では、一の固定子コア対101を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円Cr1上に配置した後、基準円Cr1の周方向に回転させ、別の固定子コア対101を基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円Cr1上に配置する。
【0059】
また、<3>組み付け工程では、一の固定子コア対101を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円Cr1上に配置した後、別の固定子コア対101の渡線105が前記一の固定子コア対101の渡線105に対し固定子コア102とは反対側に位置するよう、前記別の固定子コア対101を基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円Cr1上に配置する。
【0060】
次に、比較形態による固定子の組み付け方法を説明する。
【0061】
比較形態では、組み付け治具3を用いて固定子100を組み付ける。組み付け治具3は、筒部4、底部5、円柱部6を有している(図9参照)。筒部4は、円筒状に形成されている。底部5は、筒部4の一方の端部を塞ぐよう形成されている。円柱部6は、底部5の中央から円柱状に突出するよう形成されている。
【0062】
まず、作業者が、3組の固定子コア対101、すなわち固定子コア対10、20、30を組み付け治具3の筒部4と円柱部6との間の環状の空間に配置する。このとき、固定子コア12と固定子コア21とが隣り合うよう、固定子コア22と固定子コア31とが隣り合うよう、固定子コア32と固定子コア11とが隣り合うようにして、固定子コア対10、20、30を組み付け治具3に配置する(図10(A)参照)。
【0063】
その後、作業者が、渡線17、27、37を、組み付け治具3の径方向内側に移動させる(図10(B)参照)。
【0064】
その後、作業者が、残りの3組の固定子コア対101、すなわち固定子コア対40、50、60を組み付け治具3の筒部4と円柱部6との間の環状の空間に配置する。このとき、固定子コア62と固定子コア41とを隣り合わせた状態で固定子コア11と固定子コア12との間に配置し、固定子コア42と固定子コア51とを隣り合わせた状態で固定子コア21と固定子コア22との間に配置し、固定子コア52と固定子コア61とを隣り合わせた状態で固定子コア31と固定子コア32との間に配置する(図11(A)参照)。
【0065】
その後、作業者が、渡線17、27、37を、組み付け治具3の径方向外側に移動させる(図11(D)参照)。
【0066】
以上の工程により、固定子100の組み付けが完了する。
【0067】
比較形態では、固定子100の組み付け工程において、先に配置した固定子コア対101の渡線105が、後に配置する固定子コア対101の固定子コア102の移動方向に存在するため(図10(A)参照)、先に配置した固定子コア対101の渡線105を組み付け治具3の径方向内側に移動させる必要がある(図10(B)参照)。また、組み付け完了前には、組み付け治具3の径方向内側に移動させた渡線105を径方向外側に移動させる(戻す)必要がある(図11(B)参照)。
【0068】
比較形態では、固定子100の組み付け工程において、作業者が、渡線105(17、27、37)を、組み付け治具3の径方向内側に移動させるとき(図10(B)参照)、渡線105がコイル線104の巻き始めの箇所、または、巻き終わりの箇所から外れるおそれがある(図12参照)。
【0069】
また、比較形態では、作業者が、渡線105(17、27、37)を、組み付け治具3の径方向内側に移動させるとき(図10(B)参照)、または、組み付け治具3の径方向外側に移動させるとき(図11(B)参照)、渡線105にストレスがかかり、渡線105が損傷するおそれがある。
【0070】
一方、本実施形態では、図6~8に示すように、固定子100の組み付け工程において、先に配置した固定子コア対101の渡線105が、後に配置する固定子コア対101の固定子コア102の移動方向に存在しないため、比較形態のように、先に配置した固定子コア対101の渡線105を所定の方向に移動させる必要はない。そのため、組み付け完了前に、移動させた渡線105を戻す必要もない。
【0071】
本実施形態では、固定子100の組み付け工程において、比較形態のように渡線105を、組み付け治具3の径方向内側に移動させたり(図10(B)参照)、組み付け治具3の径方向外側に移動させたり(図11(B)参照)することがないため、渡線105がコイル線104の巻き始めの箇所、または、巻き終わりの箇所から外れたり、渡線105が損傷したりするのを抑制できる。
【0072】
以上説明したように、<1>本実施形態の固定子の組み付け方法は、組み付け工程を含む。組み付け工程では、複数の固定子コア対101を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円Cr1上に配置し、固定子コア102を環状に組み付ける。そのため、固定子100の組み付けの際、従来技術(特許文献1:特開2011-172430号公報)のように、渡線迂回手段により渡線を迂回させながら複数の固定子コアを環状に丸める必要はなく、渡線105にストレスがかかること、および、組み付けの作業効率が低下することを抑制できる。これにより、渡線105の損傷を抑制しつつ、固定子100の組み付けの効率を向上できる。
【0073】
また、<2>本実施形態の組み付け工程では、一の固定子コア対101を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円Cr1上に配置した後、基準円Cr1の周方向に回転させ、別の固定子コア対101を基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円Cr1上に配置する。
【0074】
これにより、別の固定子コア対101を基準円Cr1上に配置する際、作業者自身が基準円Cr1の周方向に移動する必要はなく、組み付けの作業効率をより向上できる。
【0075】
また、<3>本実施形態の組み付け工程では、一の固定子コア対101を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円Cr1上に配置した後、別の固定子コア対101の渡線105が前記一の固定子コア対101の渡線105に対し固定子コア102とは反対側に位置するよう、前記別の固定子コア対101を基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円Cr1上に配置する。
【0076】
そのため、比較形態のように組み付け途中で渡線105を基準円Cr1の径方向内側または径方向外側に移動させる必要がなく、渡線105がコイル線104の巻き始めの箇所、または、巻き終わりの箇所から外れたり、渡線105が損傷したりするのを抑制できる。
【0077】
また、<4>本実施形態の固定子の組み付け装置1は、保持部70を備える。保持部70は、固定子コア対101を基準円Cr1上に保持可能である。
【0078】
本実施形態では、複数の固定子コア対101を、基準円Cr1の径方向外側から径方向内側に向かって移動させて基準円Cr1上に配置し保持部70に保持させ、固定子コア102を環状に組み付けることができる。そのため、固定子100の組み付けの際、従来技術(特許文献1:特開2011-172430号公報)のように、渡線迂回手段により渡線を迂回させながら複数の固定子コアを環状に丸める必要はなく、渡線105にストレスがかかること、および、組み付けの作業効率が低下することを抑制できる。これにより、渡線105の損傷を抑制しつつ、固定子100の組み付けの効率を向上できる。
【0079】
また、<5>本実施形態は、保持部70を基準円Cr1の周方向に回転可能に支持する回転支持部80をさらに備える。そのため、複数の固定子コア対101を基準円Cr1上に配置する際、作業者自身が基準円Cr1の周方向に移動する必要はなく、組み付けの作業効率をより向上できる。
【0080】
また、<6>本実施形態では、保持部70は、固定子コア対101を吸引可能な磁石702を有する。そのため、固定子100の組み付けの際、確実かつ容易に固定子コア対101を保持部70に保持させることができる。
【0081】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、複数の固定子コア対を基準円の周方向に沿って順番に配置し、環状に組み付ける例を示した。これに対し、他の実施形態では、複数の固定子コア対を、基準円の周方向に沿って順番に配置するのではなく、基準円の周方向の任意の位置に配置し、環状に組み付けてもよい。
【0082】
また、他の実施形態では、組み付け装置は回転支持部を備えていなくてもよい。
【0083】
また、他の実施形態では、保持部は磁石を有していなくてもよい。この場合、保持部は、支持台部71により固定子コア対を保持可能である。
【0084】
また、本発明は、固定子コア対を6組有する固定子に限らず、固定子コア対を7組以上、または、5組以下有する固定子を組み付けるのに適用することもできる。
【0085】
このように、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 組み付け装置、70 保持部、100 固定子、101 固定子コア対、102 固定子コア、104 コイル線、105 渡線、Cr1 基準円
図1
図2
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図5
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図10
図11
図12