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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176657
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】車両用ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20231206BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B60T13/74 G
F16D65/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089069
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 知彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕紀
【テーマコード(参考)】
3D048
3J058
【Fターム(参考)】
3D048BB41
3D048CC49
3D048HH51
3D048HH58
3D048LL06
3D048PP00
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA63
3J058AA69
3J058AA73
3J058AA78
3J058AA83
3J058AA87
3J058BA36
3J058CC15
3J058CC17
3J058CC22
3J058CD33
3J058DD03
3J058EA02
3J058EA13
(57)【要約】
【課題】部品間の熱の伝達を抑制しつつ部品の放熱性を確保可能な車両用ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】直動変換部40は、パッド4を保持するキャリパ5に保持され、減速機30からの回転を直動に変換し、パッド4をディスク3に押し付け可能である。電子回路50は、電動モータ20の回転を制御可能である。キャリパ側減速機筐体60は、減速機30の一部を収容し、キャリパ5に接続するよう設けられている。モータ側減速機筐体70は、減速機30の一部を収容し、キャリパ側減速機筐体60に接続するよう設けられている。電動モータ20は、モータ側減速機筐体70に対しキャリパ側減速機筐体60側に設けられている。電子回路50は、モータ側減速機筐体70に対しキャリパ側減速機筐体60とは反対側に設けられている。キャリパ側減速機筐体の熱伝導率は、モータ側減速機筐体の熱伝導率よりも低い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪(2)とともに回転可能に設けられたディスク(3)にパッド(4)を押し付けることで前記車輪の回転を規制可能な車両用ブレーキ装置であって、
通電により回転する電動モータ(20)と、
前記電動モータからの回転を減速し出力する減速機(30)と、
前記パッドを保持するキャリパ(5)に保持され、前記減速機からの回転を直動に変換し、前記パッドを前記ディスクに押し付け可能な直動変換部(40)と、
前記電動モータの回転を制御可能な電子回路(50)と、
前記減速機の一部を収容し、前記キャリパに接続するよう設けられたキャリパ側減速機筐体(60)と、
前記減速機の一部を収容し、前記キャリパ側減速機筐体に接続するよう設けられたモータ側減速機筐体(70)と、を備え、
前記電動モータは、前記モータ側減速機筐体に対し前記キャリパ側減速機筐体側または前記キャリパ側減速機筐体とは反対側の一方に設けられ、
前記電子回路は、前記モータ側減速機筐体に対し前記キャリパ側減速機筐体側または前記キャリパ側減速機筐体とは反対側の他方に設けられ、
前記キャリパ側減速機筐体の熱伝導率は、前記モータ側減速機筐体の熱伝導率よりも低い車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記電動モータを収容し、前記モータ側減速機筐体に接続するよう設けられたモータ筐体(72)と、
前記電子回路を収容し、前記モータ側減速機筐体に接続するよう設けられた電子回路筐体(74)と、をさらに備え、
前記モータ筐体および前記電子回路筐体の熱伝導率は、前記キャリパ側減速機筐体の熱伝導率よりも高い請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項3】
前記モータ側減速機筐体を介して前記モータ筐体と前記電子回路筐体とを一体に締結する1つ以上の締結部材(80)をさらに備える請求項2に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項4】
前記減速機を構成する部材の一部(33、34、37)の熱伝導率は、前記モータ側減速機筐体の熱伝導率よりも低い請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項5】
前記減速機は、2段以上の減速機構を有し、
前記キャリパ側減速機筐体は、前記減速機構のうち前記キャリパ側から数えて1段以上の前記減速機構を収容し、
前記モータ側減速機筐体は、前記減速機構のうち前記電動モータ側から数えて1段以上の前記減速機構を収容する請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項6】
前記キャリパ側減速機筐体の熱伝導率よりも熱伝導率が低い材料からなり、前記キャリパと前記電動モータとの間の熱抵抗が前記電動モータと前記電子回路との間の熱抵抗よりも大きくなるように、前記キャリパと前記キャリパ側減速機筐体との間、または、前記キャリパ側減速機筐体と前記モータ側減速機筐体との間に設けられた断熱部材(90、92)をさらに備える請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項7】
前記キャリパ側減速機筐体の熱伝導率よりも熱伝導率が高い材料からなり、前記キャリパと前記電動モータとの間の熱抵抗が前記電動モータと前記電子回路との間の熱抵抗よりも大きくなるように、前記電動モータと前記電子回路との間に設けられた伝熱部材(94)をさらに備える請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、減速機により減速された電動モータからの回転を直動に変換し、パッドを車輪のディスクに押し付ける電動の車両用ブレーキ装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の車両用ブレーキ装置は、電動モータと減速機と直動変換部と電動モータの回転を制御可能な電子回路とを一体に備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-278311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車両用ブレーキ装置では、電子回路のパワーモジュールの放熱面を金属製ケースに対向させて配置し、パワーモジュールの放熱性の向上を図っている。また、金属製ケースの熱伝導率よりも熱伝導率が低い樹脂製ケース等を、パワーモジュールと減速機、電動モータおよび直動変換部との間に配置し、パワーモジュールと減速機、電動モータおよび直動変換部との間における熱の伝達を抑制している。
【0006】
しかしながら、特許文献1の車両用ブレーキ装置では、減速機、電動モータおよび直動変換部は、同一の筐体内に近接して配置されており、減速機と電動モータと直動変換部との間における熱の伝達の抑制に関し何ら考慮されていない。そのため、パッドとディスクとの摩擦熱が、直動変換部を経由し電動モータおよび減速機に伝達するおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、部品間の熱の伝達を抑制しつつ部品の放熱性を確保可能な車両用ブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車輪(2)とともに回転可能に設けられたディスク(3)にパッド(4)を押し付けることで前記車輪の回転を規制可能な車両用ブレーキ装置であって、電動モータ(20)と減速機(30)と直動変換部(40)と電子回路(50)とキャリパ側減速機筐体(60)とモータ側減速機筐体(70)とを備える。電動モータは、通電により回転する。減速機は、電動モータからの回転を減速し出力する。直動変換部は、パッドを保持するキャリパに保持され、減速機からの回転を直動に変換し、パッドをディスクに押し付け可能である。
【0009】
電子回路は、電動モータの回転を制御可能である。キャリパ側減速機筐体は、減速機の一部を収容し、キャリパに接続するよう設けられている。モータ側減速機筐体は、減速機の一部を収容し、キャリパ側減速機筐体に接続するよう設けられている。電動モータは、モータ側減速機筐体に対しキャリパ側減速機筐体側またはキャリパ側減速機筐体とは反対側の一方に設けられている。電子回路は、モータ側減速機筐体に対しキャリパ側減速機筐体側またはキャリパ側減速機筐体とは反対側の他方に設けられている。
【0010】
キャリパ側減速機筐体の熱伝導率は、モータ側減速機筐体の熱伝導率よりも低い。そのため、キャリパ側減速機筐体に接続するキャリパと、キャリパ側減速機筐体に接続するモータ側減速機筐体の両側に設けられる電動モータおよび電子回路との間における熱の伝達を抑制できる。これにより、パッドとディスクとの摩擦熱が、減速機、電動モータおよび電子回路に伝達するのを抑制できる。したがって、車両用ブレーキ装置作動時の減速機、電動モータおよび電子回路の温度上昇を抑制できる。
【0011】
また、電動モータおよび電子回路は、キャリパ側減速機筐体の熱伝導率よりも熱伝導率が高いモータ側減速機筐体の両側に設けられている。そのため、電動モータおよび電子回路の発熱部品等の部品の放熱性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態による車両用ブレーキ装置を示す断面図。
図2】一実施形態による車両用ブレーキ装置を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態による車両用ブレーキ装置を図面に基づき説明する。なお、実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0014】
(一実施形態)
一実施形態の車両用ブレーキ装置を図1、2に示す。車両用ブレーキ装置10は、例えば車両1に設けられる。車両用ブレーキ装置10は、車輪2とともに回転可能に設けられたディスク3にパッド4を押し付けることで車輪2の回転を規制可能である。これにより、停車中の車両1の停車状態を維持したり、走行中の車両1を減速または停止させたりできる。
【0015】
車両1には、キャリパ5が設けられている。キャリパ5は、例えば金属により形成され、パッド4の摩耗に応じて移動可能な形で車両1に固定されている。キャリパ5は、2つのパッド4を保持している。2つのパッド4の間には、ディスク3が位置する。
【0016】
<1>車両用ブレーキ装置10は、電動モータ20、減速機30、直動変換部40、電子回路50、キャリパ側減速機筐体60、モータ側減速機筐体70、モータ筐体72、電子回路筐体74、締結部材80、断熱部材90、断熱部材92、伝熱部材94等を備える。電動モータ20は、通電により回転する。減速機30は、電動モータ20からの回転を減速し出力する。直動変換部40は、パッド4を保持するキャリパ5に保持され、減速機30からの回転を直動に変換し、パッド4をディスク3に押し付け可能である。
【0017】
より詳細には、電動モータ20は、例えば3相ブラシレスモータであり、ステータ21、ロータ22を有している。ステータ21は、後述するモータ筐体72に固定されている。ロータ22は、ステータ21に対し相対回転可能に設けられている。ロータ22の中心には、シャフト23が設けられている。シャフト23は、ロータ22とともに回転しトルクを出力する。
【0018】
減速機30は、第1ピニオンギヤ31、第1ホイールギヤ32、第2ピニオンギヤ33、第2ホイールギヤ34、ギヤシャフト35、ギヤシャフト36、接続部材37等を有している。第1ピニオンギヤ31は、例えば金属により形成されている。第1ホイールギヤ32は、例えば金属により形成され、第1ピニオンギヤ31より外径が大きく設定され、第1ピニオンギヤ31と噛み合う。
【0019】
第2ピニオンギヤ33は、例えば樹脂により形成され、第1ホイールギヤ32より外径が小さく設定され、第1ホイールギヤ32とともに回転可能なよう第1ホイールギヤ32と同軸に設けられている。第2ホイールギヤ34は、例えば樹脂により形成され、第2ピニオンギヤ33より外径が大きく設定され、第2ピニオンギヤ33と噛み合う。
【0020】
ギヤシャフト35は、例えば金属により形成され、後述するモータ側減速機筐体70に回転可能に支持されている。ギヤシャフト36は、例えば金属により形成され、後述するキャリパ側減速機筐体60に回転可能に支持されている。接続部材37は、例えば樹脂により形成され、後述する直動変換部40の回転部材41とギヤシャフト36とを接続し、ギヤシャフト36と回転部材41との間で回転を伝達可能なよう設けられている。
【0021】
第1ピニオンギヤ31は、シャフト23とともに回転するようシャフト23のロータ22とは反対側に設けられている。第1ホイールギヤ32は、第1ピニオンギヤ31と噛み合いつつ、ギヤシャフト35とともに回転可能なようギヤシャフト35と同軸に設けられている。第2ピニオンギヤ33は、第1ホイールギヤ32とギヤシャフト35とともに回転可能なようギヤシャフト35と同軸に設けられている。第2ホイールギヤ34は、第2ピニオンギヤ33と噛み合いつつ、ギヤシャフト36とともに回転可能なようギヤシャフト36と同軸に設けられている。
【0022】
上記構成により、電動モータ20のロータ22が回転し、シャフト23が回転すると、第1ピニオンギヤ31が回転し、第1ピニオンギヤ31に噛み合う第1ホイールギヤ32および第2ピニオンギヤ33が回転し、第2ピニオンギヤ33に噛み合う第2ホイールギヤ34が回転する。これにより、電動モータ20からの回転が減速されて、ギヤシャフト36から出力される。
【0023】
直動変換部40は、回転部材41、直動部材42、ピストン43を有している。回転部材41は、例えば金属により略円柱状に形成され、キャリパ5に回転可能に支持されている。回転部材41の一方の端部は、接続部材37を介してギヤシャフト36に接続している。
【0024】
直動部材42は、例えば金属により形成され、回転部材41の他端側に設けられている。直動部材42は、回転部材41が回転すると、キャリパ5に対し軸方向に相対移動可能に設けられている。このように、回転部材41は、入力された回転を直動に変換可能である。
【0025】
ピストン43は、例えば有底筒状に形成されている。ピストン43は、底部の内壁が直動部材42に当接可能に設けられている。ピストン43は、キャリパ5に対し軸方向に相対移動可能に設けられている。
【0026】
車両用ブレーキ装置10は、ピストン43の直動部材42とは反対側がパッド4に当接可能なよう車両1に設けられる。通電により電動モータ20が正転方向に回転すると、減速された回転が減速機30のギヤシャフト36から出力される。これにより、回転部材41がキャリパ5に対し相対回転する。これにより、直動部材42がパッド4側に移動し、ピストン43がパッド4に押し付けられる。その結果、パッド4がディスク3に押し付けられ、車輪2の回転が規制される。
【0027】
一方、電動モータ20が逆転方向に回転すると、減速された回転が減速機30のギヤシャフト36から出力される。これにより、回転部材41がキャリパ5に対し、上記とは反対方向に相対回転する。これにより、直動部材42がパッド4とは反対側に移動する。その結果、ピストン43のパッド4への押し付け、および、パッド4のディスク3への押し付けが解除され、車輪2の回転が許容される。
【0028】
電子回路50は、電動モータ20の回転を制御可能である。キャリパ側減速機筐体60は、減速機30の一部を収容し、キャリパ5に接続するよう設けられている。モータ側減速機筐体70は、減速機30の一部を収容し、キャリパ側減速機筐体60に接続するよう設けられている。電動モータ20は、モータ側減速機筐体70に対しキャリパ側減速機筐体60側に設けられている。電子回路50は、モータ側減速機筐体70に対しキャリパ側減速機筐体60とは反対側に設けられている。
【0029】
より詳細には、電子回路50は、基板51、マイコン52、スイッチング素子53等を有している。基板51は、例えば樹脂により板状に形成されている。マイコン52は、例えば基板51の一方の面に実装されている。スイッチング素子53は、例えば基板51の一方の面に複数実装されている。マイコン52は、CPU、メモリ、入出力部等を有する小型のコンピュータであり、車両1に取り付けられた各種センサからの信号等に基づき、スイッチング素子53の作動を制御することで、電動モータ20への通電を制御可能である。
【0030】
キャリパ側減速機筐体60は、例えば樹脂により、扁平の箱状に形成されている。キャリパ側減速機筐体60は、内側に空間600を形成している。キャリパ側減速機筐体60は、減速機30を構成する部品のうち、第2ピニオンギヤ33、第2ホイールギヤ34、ギヤシャフト36、接続部材37を空間600に収容している。なお、空間600には、ギヤシャフト35の一部が位置している。
【0031】
キャリパ側減速機筐体60は、一方の端面が、キャリパ5のピストン43とは反対側の端面に接続するよう設けられている。ここで、「接続する」とは、2つの部材が直接接するようにして接続する状態のみならず、間に他の部材を挟んだ状態で間接的に接続する状態も含むことを意味する(以下同じ)。
【0032】
モータ側減速機筐体70は、例えば金属により、扁平の箱状に形成されている。モータ側減速機筐体70は、内側に空間700を形成している。モータ側減速機筐体70は、減速機30を構成する部品のうち、第1ピニオンギヤ31、第1ホイールギヤ32を空間700に収容している。なお、空間700には、シャフト23の一部、および、ギヤシャフト35の一部が位置している。
【0033】
モータ側減速機筐体70は、一方の端面の一部が、キャリパ側減速機筐体60のキャリパ5とは反対側の端面に接続するよう設けられている。
【0034】
電動モータ20は、モータ側減速機筐体70のキャリパ側減速機筐体60に接続する端面に対しキャリパ側減速機筐体60側に設けられている。電子回路50は、モータ側減速機筐体70のキャリパ側減速機筐体60に接続する端面とは反対側の端面に対しキャリパ側減速機筐体60とは反対側に設けられている。
【0035】
キャリパ側減速機筐体の熱伝導率は、モータ側減速機筐体の熱伝導率よりも低い。
【0036】
より詳細には、キャリパ側減速機筐体60は、樹脂により形成されており、金属により形成されているモータ側減速機筐体70の熱伝導率よりも熱伝導率が低い。
【0037】
<2>モータ筐体72は、電動モータ20を収容し、モータ側減速機筐体70に接続するよう設けられている。電子回路筐体74は、電子回路50を収容し、モータ側減速機筐体70に接続するよう設けられている。モータ筐体72および電子回路筐体74の熱伝導率は、キャリパ側減速機筐体60の熱伝導率よりも高い。
【0038】
より詳細には、モータ筐体72は、例えば金属により、箱状に形成されている。モータ筐体72は、内側に空間720を形成している。モータ筐体72は、電動モータ20のステータ21、ロータ22を空間720に収容している。ステータ21は、モータ筐体72の内壁に固定されている。なお、空間720には、シャフト23の一部が位置している。
【0039】
モータ筐体72は、一方の端面が、モータ側減速機筐体70のキャリパ側減速機筐体60側の端面に接続するよう設けられている。ここで、モータ筐体72とモータ側減速機筐体70とは直接接するようにして接続している。
【0040】
電子回路筐体74は、例えば金属により、扁平の箱状に形成されている。電子回路筐体74は、内側に空間740を形成している。電子回路筐体74は、電子回路50の基板51、マイコン52、スイッチング素子53を空間740に収容している。
【0041】
電子回路筐体74は、一方の端面が、モータ側減速機筐体70のキャリパ側減速機筐体60とは反対側の端面に接続するよう設けられている。ここで、電子回路筐体74とモータ側減速機筐体70とは直接接するようにして接続している。
【0042】
モータ筐体72および電子回路筐体74は、金属により形成されており、樹脂により形成されているキャリパ側減速機筐体60の熱伝導率よりも熱伝導率が高い。
【0043】
電動モータ20のステータ21に巻き回された図示しないコイルと、電子回路50のスイッチング素子53とは、導線24により電気的に接続されている。導線24は、例えば金属により線状に形成され、空間600から空間700を通って空間740まで延びている。
【0044】
<3>締結部材80は、1つ以上設けられ、モータ側減速機筐体70を介してモータ筐体72と電子回路筐体74とを一体に締結する。
【0045】
より詳細には、締結部材80は、例えば金属により、長尺のねじ状に形成されている。締結部材80は、モータ筐体72と電子回路筐体74との間にモータ側減速機筐体70を挟んだ状態で電子回路筐体74およびモータ側減速機筐体70を貫くようにしてモータ筐体72に螺合している。このように、モータ筐体72と電子回路筐体74とは、モータ側減速機筐体70を介して1つ以上の締結部材80により一体に締結されている。締結部材80の熱伝導率は、キャリパ側減速機筐体60の熱伝導率よりも高い。
【0046】
<4>減速機30を構成する部材の一部の熱伝導率は、モータ側減速機筐体70の熱伝導率よりも低い。
【0047】
より詳細には、減速機30を構成する部材のうち、第2ピニオンギヤ33、第2ホイールギヤ34、接続部材37は、樹脂により形成されており、金属により形成されているモータ側減速機筐体70の熱伝導率よりも熱伝導率が低い。
【0048】
<5>減速機30は、2段以上の減速機構を有する。キャリパ側減速機筐体60は、減速機構のうちキャリパ5側から数えて1段以上の減速機構を収容する。モータ側減速機筐体70は、減速機構のうち電動モータ20側から数えて1段以上の減速機構を収容する。
【0049】
より詳細には、減速機30は、第1ピニオンギヤ31と第1ホイールギヤ32とからなる減速機構と、第2ピニオンギヤ33と第2ホイールギヤ34とからなる減速機構と、の2段の減速機構を有している。キャリパ側減速機筐体60は、2つの減速機構のうちキャリパ5側から数えて1段目の減速機構である第2ピニオンギヤ33と第2ホイールギヤ34とを収容する。モータ側減速機筐体70は、2つの減速機構のうち電動モータ20側から数えて1段目の減速機構である第1ピニオンギヤ31と第1ホイールギヤ32とを収容する。
【0050】
<6>断熱部材90、断熱部材92は、キャリパ側減速機筐体60の熱伝導率よりも熱伝導率が低い材料からなり、キャリパ5と電動モータ20との間の熱抵抗が電動モータ20と電子回路50との間の熱抵抗よりも大きくなるように、キャリパ5とキャリパ側減速機筐体60との間、または、キャリパ側減速機筐体60とモータ側減速機筐体70との間に設けられている。
【0051】
より詳細には、断熱部材90、断熱部材92は、例えば樹脂により、板状に形成されている。断熱部材90、断熱部材92は、樹脂により形成されているキャリパ側減速機筐体60の熱伝導率よりも熱伝導率が低い。断熱部材90は、キャリパ5のキャリパ側減速機筐体60側の端面とキャリパ側減速機筐体60のキャリパ5側の端面との間に設けられている。これにより、キャリパ5と電動モータ20との間の熱抵抗が、電動モータ20と電子回路50との間の熱抵抗よりも大きくなる。
【0052】
<7>伝熱部材94は、キャリパ側減速機筐体60の熱伝導率よりも熱伝導率が高い材料からなり、キャリパ5と電動モータ20との間の熱抵抗が電動モータ20と電子回路50との間の熱抵抗よりも大きくなるように、電動モータ20と電子回路50との間に設けられている。
【0053】
より詳細には、伝熱部材94は、例えば金属により、棒状に形成されている。伝熱部材94は、金属により形成されており、金属により形成されているキャリパ側減速機筐体60の熱伝導率よりも熱伝導率が高い。伝熱部材94は、電動モータ20と電子回路50との間において、モータ筐体72と電子回路筐体74とを接続するようにして設けられている。これにより、キャリパ5と電動モータ20との間の熱抵抗が、電動モータ20と電子回路50との間の熱抵抗よりも大きくなる。
【0054】
以上説明したように、<1>本実施形態では、直動変換部40は、パッド4を保持するキャリパ5に保持され、減速機30からの回転を直動に変換し、パッド4をディスク3に押し付け可能である。電子回路50は、電動モータ20の回転を制御可能である。キャリパ側減速機筐体60は、減速機30の一部を収容し、キャリパ5に接続するよう設けられている。モータ側減速機筐体70は、減速機30の一部を収容し、キャリパ側減速機筐体60に接続するよう設けられている。電動モータ20は、モータ側減速機筐体70に対しキャリパ側減速機筐体60側に設けられている。電子回路50は、モータ側減速機筐体70に対しキャリパ側減速機筐体60とは反対側に設けられている。キャリパ側減速機筐体の熱伝導率は、モータ側減速機筐体の熱伝導率よりも低い。
【0055】
そのため、キャリパ側減速機筐体60に接続するキャリパ5と、キャリパ側減速機筐体60に接続するモータ側減速機筐体70の両側に設けられる電動モータ20および電子回路50との間における熱の伝達を抑制できる。これにより、パッド4とディスク3との摩擦熱が、減速機30、電動モータ20および電子回路50に伝達するのを抑制できる。したがって、車両用ブレーキ装置10作動時の減速機30、電動モータ20および電子回路50の温度上昇を抑制できる。
【0056】
また、電動モータ20および電子回路50は、キャリパ側減速機筐体60の熱伝導率よりも熱伝導率が高いモータ側減速機筐体70の両側に設けられている。そのため、電動モータ20および電子回路50の発熱部品であるスイッチング素子53等の放熱性を確保できる。
【0057】
<2>モータ筐体72は、電動モータ20を収容し、モータ側減速機筐体70に接続するよう設けられている。電子回路筐体74は、電子回路50を収容し、モータ側減速機筐体70に接続するよう設けられている。モータ筐体72および電子回路筐体74の熱伝導率は、キャリパ側減速機筐体60の熱伝導率よりも高い。
【0058】
そのため、電動モータ20および電子回路50の放熱を促進させることができる。
【0059】
<3>締結部材80は、1つ以上設けられ、モータ側減速機筐体70を介してモータ筐体72と電子回路筐体74とを一体に締結する。
【0060】
そのため、モータ筐体72と電子回路筐体74との間の伝熱を促進でき、電動モータ20と電子回路50との間に温度差があった場合は、温度の低い側へ伝熱させることにより、温度上昇を抑制できる。
【0061】
なお、本実施形態では、締結部材80の熱伝導率は、キャリパ側減速機筐体60の熱伝導率よりも高い。そのため、締結部材80により、モータ筐体72と電子回路筐体74との間の伝熱を効果的に促進できる。
【0062】
<4>減速機30を構成する部材の一部の熱伝導率は、モータ側減速機筐体70の熱伝導率よりも低い。
【0063】
そのため、パッド4とディスク3との摩擦熱が、減速機30を経由して、電動モータ20および電子回路50に伝達するのを効果的に抑制できる。
【0064】
<5>減速機30は、2段以上の減速機構を有する。キャリパ側減速機筐体60は、減速機構のうちキャリパ5側から数えて1段以上の減速機構を収容する。モータ側減速機筐体70は、減速機構のうち電動モータ20側から数えて1段以上の減速機構を収容する。
【0065】
このように、キャリパ5との間にキャリパ側減速機筐体60を配置し、キャリパ5側からの伝熱の影響が少ない位置にモータ側減速機筐体70を配置することで、キャリパ5と電動モータ20および電子回路50との伝熱を効果的に抑制できる。
【0066】
<6>断熱部材90、断熱部材92は、キャリパ側減速機筐体60の熱伝導率よりも熱伝導率が低い材料からなり、キャリパ5と電動モータ20との間の熱抵抗が電動モータ20と電子回路50との間の熱抵抗よりも大きくなるように、キャリパ5とキャリパ側減速機筐体60との間、または、キャリパ側減速機筐体60とモータ側減速機筐体70との間に設けられている。
【0067】
<7>伝熱部材94は、キャリパ側減速機筐体60の熱伝導率よりも熱伝導率が高い材料からなり、キャリパ5と電動モータ20との間の熱抵抗が電動モータ20と電子回路50との間の熱抵抗よりも大きくなるように、電動モータ20と電子回路50との間に設けられている。
【0068】
そのため、電動モータ20と電子回路50との間に温度差があった場合は、温度の低い側へ伝熱させることにより、温度上昇を抑制できる。
【0069】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、電動モータが、モータ側減速機筐体に対しキャリパ側減速機筐体側に設けられ、電子回路が、モータ側減速機筐体に対しキャリパ側減速機筐体とは反対側に設けられる例を示した。これに対し、他の実施形態では、電動モータが、モータ側減速機筐体に対しキャリパ側減速機筐体とは反対側に設けられ、電子回路が、モータ側減速機筐体に対しキャリパ側減速機筐体側に設けられることとしてもよい。
【0070】
また、他の実施形態では、キャリパ側減速機筐体の熱伝導率が、モータ側減速機筐体の熱伝導率よりも低いのであれば、キャリパ側減速機筐体およびモータ側減速機筐体は、金属または樹脂等、どのような材料により形成されていてもよい。
【0071】
また、他の実施形態では、モータ筐体および電子回路筐体の熱伝導率は、キャリパ側減速機筐体の熱伝導率以下でもよい。
【0072】
また、他の実施形態では、締結部材を1つのみ備えることとしてもよい。また、他の実施形態では、締結部材を備えていなくてもよい。
【0073】
また、他の実施形態では、減速機を構成する全ての部材は、熱伝導率が、モータ側減速機筐体の熱伝導率以上であってもよい。
【0074】
また、他の実施形態では、減速機は、3段以上の減速機構を有していてもよい。この場合、キャリパ側減速機筐体は、少なくとも1つの減速機構を収容する。
【0075】
また、他の実施形態では、断熱部材は、キャリパとキャリパ側減速機筐体との間、または、キャリパ側減速機筐体とモータ側減速機筐体との間のいずれか一方にのみ設けられていてもよい。また、他の実施形態では、断熱部材を備えていなくてもよい。
【0076】
また、他の実施形態では、伝熱部材を複数備えていてもよい。また、他の実施形態では、伝熱部材94は、モータ側減速機筐体70と一体に形成されていてもよい。また、他の実施形態では、伝熱部材を備えていなくてもよい。
【0077】
また、他の実施形態では、電動モータは、3相ブラシレスモータ以外のモータであってもよい。
【0078】
また、他の実施形態では、直動変換部は、減速機からの回転を直動に変換し、パッドをディスクに押し付け可能であれば、どのような構成であってもよい。
【0079】
本発明の車両用ブレーキ装置は、車両の複数の車輪のうちすべての車輪に適用してもよいし、一部の車輪のみに適用してもよい。
【0080】
本発明の車両用ブレーキ装置は、パーキングブレーキとして用いることができる他、走行中の車両を減速または停止させる制動用ブレーキとして用いることができる。
【0081】
このように、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【0082】
本発明の特徴を以下の通り示す。
「請求項1」
車輪(2)とともに回転可能に設けられたディスク(3)にパッド(4)を押し付けることで前記車輪の回転を規制可能な車両用ブレーキ装置であって、
通電により回転する電動モータ(20)と、
前記電動モータからの回転を減速し出力する減速機(30)と、
前記パッドを保持するキャリパ(5)に保持され、前記減速機からの回転を直動に変換し、前記パッドを前記ディスクに押し付け可能な直動変換部(40)と、
前記電動モータの回転を制御可能な電子回路(50)と、
前記減速機の一部を収容し、前記キャリパに接続するよう設けられたキャリパ側減速機筐体(60)と、
前記減速機の一部を収容し、前記キャリパ側減速機筐体に接続するよう設けられたモータ側減速機筐体(70)と、を備え、
前記電動モータは、前記モータ側減速機筐体に対し前記キャリパ側減速機筐体側または前記キャリパ側減速機筐体とは反対側の一方に設けられ、
前記電子回路は、前記モータ側減速機筐体に対し前記キャリパ側減速機筐体側または前記キャリパ側減速機筐体とは反対側の他方に設けられ、
前記キャリパ側減速機筐体の熱伝導率は、前記モータ側減速機筐体の熱伝導率よりも低い車両用ブレーキ装置。
「請求項2」
前記電動モータを収容し、前記モータ側減速機筐体に接続するよう設けられたモータ筐体(72)と、
前記電子回路を収容し、前記モータ側減速機筐体に接続するよう設けられた電子回路筐体(74)と、をさらに備え、
前記モータ筐体および前記電子回路筐体の熱伝導率は、前記キャリパ側減速機筐体の熱伝導率よりも高い請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
「請求項3」
前記モータ側減速機筐体を介して前記モータ筐体と前記電子回路筐体とを一体に締結する1つ以上の締結部材(80)をさらに備える請求項2に記載の車両用ブレーキ装置。
「請求項4」
前記減速機を構成する部材の一部(33、34、37)の熱伝導率は、前記モータ側減速機筐体の熱伝導率よりも低い請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ装置。
「請求項5」
前記減速機は、2段以上の減速機構を有し、
前記キャリパ側減速機筐体は、前記減速機構のうち前記キャリパ側から数えて1段以上の前記減速機構を収容し、
前記モータ側減速機筐体は、前記減速機構のうち前記電動モータ側から数えて1段以上の前記減速機構を収容する請求項1~4のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ装置。
「請求項6」
前記キャリパ側減速機筐体の熱伝導率よりも熱伝導率が低い材料からなり、前記キャリパと前記電動モータとの間の熱抵抗が前記電動モータと前記電子回路との間の熱抵抗よりも大きくなるように、前記キャリパと前記キャリパ側減速機筐体との間、または、前記キャリパ側減速機筐体と前記モータ側減速機筐体との間に設けられた断熱部材(90、92)をさらに備える請求項1~5のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ装置。
「請求項7」
前記キャリパ側減速機筐体の熱伝導率よりも熱伝導率が高い材料からなり、前記キャリパと前記電動モータとの間の熱抵抗が前記電動モータと前記電子回路との間の熱抵抗よりも大きくなるように、前記電動モータと前記電子回路との間に設けられた伝熱部材(94)をさらに備える請求項1~6のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ装置。
【符号の説明】
【0083】
10 車両用ブレーキ装置、2 車輪、3 ディスク、4 パッド、5 キャリパ、20 電動モータ、30 減速機、40 直動変換部、50 電子回路、60 キャリパ側減速機筐体、70 モータ側減速機筐体
図1
図2