(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176678
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ピッキングロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 18/02 20060101AFI20231206BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B25J18/02
B25J5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089099
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS32
3C707CS08
3C707CT05
3C707CU03
3C707HS27
3C707HT03
3C707HT22
3C707HT33
3C707HT40
3C707KS03
3C707KS10
3C707KT01
3C707KT05
3C707WA16
3C707WA17
(57)【要約】
【課題】ピッキングロボットのコンパクト化を図ること。
【解決手段】ロボットアーム(28)は、入れ子状に重なり合う複数のアーム管(32)を有し、ロボットアーム(28)の内側にプッシュチェーン(44)が挿入され、プッシュチェーン(44)の一端部が先頭のアーム管(32)に連結され、支柱(22)にスプロケット(46)が回転可能に設けられ、スプロケット(46)にプッシュチェーン(44)が掛け回されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱の上端部側に上下方向へ揺動可能に設けられ、入れ子状に重なり合う複数のアーム管を有したテレスコピック型のロボットアームと、
前記ロボットアームの先端部に設けられ、物品を把持するロボットハンドと、
前記ロボットアームの内側に挿入され、一端部が前記複数のアーム管のうちの先頭のアーム管に連結されたプッシュチェーンと、
前記支柱に回転可能に設けられ、前記プッシュチェーンが掛け回されたスプロケットと、
前記スプロケットを回転させる回転モータと、を備える、ピッキングロボット。
【請求項2】
各重なり合う一対のアーム管のうち内側のアーム管の基端部側に、外フランジが外方向に突出して設けられ、各重なり合う一対のアーム管のうち外側のアーム管の先端部側に、前記外フランジに当接可能な内フランジが内方向に突出して設けられている、請求項1に記載のピッキングロボット。
【請求項3】
各重なり合う一対のアーム管のうち内側のアーム管の基端部側に、外側のアーム管の内周面を転動する複数の第1転動子が周方向に間隔を置いて設けられ、各重なり合う一対のアーム管のうちの外側のアーム管の先端部側に、内側のアーム管の外周面を転動する複数の第2転動子が周方向に間隔を置いて設けられている、請求項1又は2に記載のピッキングロボット。
【請求項4】
前記支柱における前記スプロケットの下側に設けられ、前記プッシュチェーンを上下方向に誘導するチェーンガイドを有し、前記プッシュチェーンを収納するチェーンラックを備える、請求項1又は2に記載のピッキングロボット。
【請求項5】
前記回転モータの回転を制動する電磁ブレーキを備える、請求項1又は2に記載のピッキングロボット。
【請求項6】
少なくともいずれかの重なり合う一対のアーム管のうち、外側のアーム管に対する内側のアーム管の軸方向の移動を規制する移動規制機構を備える、請求項1又は2に記載のピッキングロボット。
【請求項7】
物品の周辺状況を撮像する撮像部を備える、請求項1又は2に記載のピッキングロボット。
【請求項8】
走行可能な走行体を備え、
前記支柱は、前記走行体に立設されている、請求項1又は2に記載のピッキングロボット。
【請求項9】
前記走行体は、
前記支柱が立設された走行台と、
前記走行台の下側に設けられたクローラと、を有する、請求項8に記載のピッキングロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品のピッキングを行うピッキングロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
物品の一例としての瓦礫のピッキングを行うピッキングロボットとして特許文献1に示すものがあり、そのピッキングロボットの概略は、次の通りである。先行技術に係るピッキングロボット(特許文献1では複腕移動ロボットと称される)は、地面を走行可能な走行体を備えている。走行体には、支柱(特許文献1では胴体部と称される)が立設されている。支柱の上端部側には、多関節型のロボットアーム(特許文献1では腕部と称される)が設けられている。ロボットアームの先端部には、瓦礫を把持するロボットハンド(特許文献1ではクラブと称される)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、先行技術に係るピッキングロボットのロボットアームが多関節型に構成されているため、ピッキングロボットの大型化する傾向にある。そのため、ピッキングロボットを例えば被災地等の所定の場所に短時間で移送することが難しく、ピッキングロボットの移送作業が煩雑化するという問題がある。また、ピッキングロボットの使用前又は使用後において、ピッキングロボットを保管する保管スペースが拡大するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の一態様は、ピッキングロボットのコンパクト化を図ることで、ピッキングロボットの移送作業の作業性を高めると共に、ピッキングロボットの保管スペースを削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するため、本発明の一態様に係るピッキングロボットは、ロボットアームと、ロボットハンドと、プッシュチェーンと、スプロケットと、回転モータと、を備える。ロボットアームは、入れ子状に重なり合う複数のアーム管を有したテレスコピック型であり、支柱の上端部側に上下方向へ揺動可能に設けられる。ロボットハンドは、ロボットアームの先端部に設けられ、物品を把持する。プッシュチェーンは、ロボットアームの内側に挿入され、一端部が複数のアーム管のうちの先頭のアーム管に連結される。スプロケットは、支柱に回転可能に設けられ、前記プッシュチェーンが掛け回される。回転モータは、スプロケットを回転させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、ピッキングロボットのコンパクト化を図ることで、ピッキングロボットの移送作業の作業性を高めると共に、ピッキングロボットの保管スペースを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るピッキングロボットの模式的な斜視図である。
【
図2】
図1に示すピッキングロボットの模式的な側面図であり、ロボットアームを伸ばした状態を示している。
【
図3】
図1に示すピッキングロボットの模式的な側面図であり、ロボットアームを縮めた状態を示している。
【
図4】
図1に示すピッキングロボットの一部の模式的な断面図であり、ロボットアームを伸ばした状態を示している。
【
図5】
図1に示すピッキングロボットの一部の模式的な断面図であり、ロボットアームを縮めた状態を示している。
【
図6】本実施形態に係るピッキングシステムのブロック図である。
【
図7】本実施形態の他の態様に係る移動規制機構の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態及び本実施形態の他の態様について図面を参照して説明する。図面中に、「U」は上方向、「D」は下方向をそれぞれ指している。
【0010】
(ピッキングロボット10の概要)
図1に示すように、本実施形態に係るピッキングロボット10は、物品の一例としての瓦礫のピッキングを行う自走式のロボットであり、被災地における瓦礫除去処理に用いられる。ピッキングとは、物品を取出す(ピックアップ)することの他に、取出した物品を搬送又は運搬することを含む意である。なお、ピッキングロボット10は、瓦礫以外の物品のピッキングを行ってもよい。
【0011】
(走行体12)
図1から
図3に示すように、ピッキングロボット10は、地面を走行可能な走行体12を備えている。走行体12は、走行台14と、走行台14の下側に設けられた2つのクローラ16とを有している。各クローラ16は、無端状の走行ベルト18と、走行ベルト18と、走行ベルト18を循環走行させる電動式の走行モータ20(
図6参照)とを有している。走行体12は、その走行方向を切り替える方向切替機構(不図示)を有している。なお、走行体12は、クローラ16を有するものに限定されるものではなく、例えば、クローラ16の代わりに、走行台14に回転可能に設けられた複数の車輪(不図示)を有してもよい。前記複数の車輪は、前輪駆動方式、後輪駆動方式、又は全輪駆動方式のいずれであってもよい。前記複数の車輪は、それぞれ独立して駆動するようになっていてもよい。
【0012】
(支柱22)
図1から
図3に示すように、走行台14には、支柱22が立設されており、支柱22は、その軸心周りに回転可能である。走行台14の適宜位置には、支柱22をその軸心周りに回転させる電動式の第1回転モータ24が設けられている。また、支柱22は、その上端部側に、U字状のアーム支持部26を有している。
【0013】
(ロボットアーム28)
図2から
図5に示すように、支柱22のアーム支持部26には、テレスコピック型のロボットアーム28が上下方向へ揺動可能に設けられている。支柱22のアーム支持部26の適宜位置には、ロボットアーム28を上下方向へ揺動させる電動式の揺動モータ30が設けられている。ロボットアーム28は、入れ子状に重なり合う複数のアーム管32を有している。各アーム管32は、円管状に形成されている。なお、各アーム管32を円管状に形成する代わりに、角管状に形成してもよい。
【0014】
(外フランジ34、内フランジ36)
図4及び
図5に示すように、各重なり合う一対のアーム管32のうち内側のアーム管32の基端部側には、環状の外フランジ34が外方向に突出して設けられている。各重なり合う一対のアーム管32のうち外側のアーム管32の先端部側には、外フランジ34に当接可能な環状の内フランジ36が内方向に突出して設けられている。ここで、外方向とは、アーム管32の外側に向かう方向のことをいい、内方向とは、アーム管32の内側に向かう方向のことをいう。
【0015】
(第1カムフォロア38、第2カムフォロア40)
図4及び
図5に示すように、各重なり合う一対のアーム管32のうち内側のアーム管32の基端部側には、外側のアーム管32の内周面を転動する複数の第1転動子としての複数の第1カムフォロア38が設けられている。複数の第1カムフォロア38は、内側のアーム管32の周方向に間隔を置いて配置されている。各重なり合う一対のアーム管32のうちの外側のアーム管32の先端部側には、内側のアーム管32の外周面を転動する複数の第2転動子としての複数の第2カムフォロア40が設けられている。複数の第2カムフォロア40は、外側のアーム管32の周方向に間隔を置いて配置されている。
【0016】
(ロボットハンド42)
図1及び
図3に示すように、ロボットアーム28の先端部である先頭のアーム管32の先端部には、瓦礫等の物品を把持するロボットハンド42が設けられている。ロボットハンド42は、公知の構成からなるものであり、ロボットアーム28の先端部にその軸心周りに回転可能に設けられてもよい。
【0017】
(プッシュチェーン44)
図2から
図5に示すように、ロボットアーム28内には、ロボットアーム28を伸縮させるためのプッシュチェーン44が挿入されている。プッシュチェーン44の先端部は、複数のアーム管32のうちの先頭のアーム管32の基端部に連結されている。プッシュチェーン44は、公知の構成からなり、一方向に屈曲しかつ他方向に屈曲しないように構成されている。
【0018】
(スプロケット46、第2回転モータ50、電磁ブレーキ52)
図1から
図3に示すように、支柱22のアーム支持部26には、スプロケット46がブラケット48を介して水平な回転軸心周りに回転可能に設けられている。スプロケット46には、プッシュチェーン44の一部が掛け回されている。また、支柱22のアーム支持部26には、スプロケット46を回転させる電動式の第2回転モータ50がブラケット48を介して設けられている。スプロケット46と第2回転モータ50との間には、第2回転モータ50の回転を制動する電磁ブレーキ52が設けられている。なお、前述のように電磁ブレーキ52を設ける代わりに、第2回転モータ50自体が電磁ブレーキを有してもよい。
【0019】
(チェーンラック54)
図1から
図3に示すように、支柱22のアーム支持部26には、プッシュチェーン44の一部を収納するチェーンラック54が設けられている。チェーンラック54は、プッシュチェーン44の一部を上下方向に誘導するチェーンガイド56(
図2及び
図3参照)を有している。なお、
図1において、チェーンガイド56の図示を省略している。
【0020】
(カメラ58)
図1及び
図2に示すように、ロボットアーム28の基端部側には、瓦礫等の物品を含む物品の周辺状況を撮像する撮像部としてのカメラ58が設けられている。カメラ58は、撮像素子としてCCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(complementary metal oxide semiconductor)を有している。なお、カメラ58をロボットアーム28の基端部側に設ける代わりに、支柱22のアーム支持部26に設けてもよい。
【0021】
(ピッキングロボット10の動作)
図1から
図3に示すように、各走行モータ20の駆動により各走行ベルト18を走行させることにより、ピッキングロボット10を適宜に走行させることができる。また、第1回転モータ24の駆動により支柱22をその軸心周りに回転させることにより、ロボットアーム28を支柱22の軸心周りに回転させることができる。
【0022】
図2及び
図4に示すように、第2回転モータ50の駆動によりスプロケット46を正方向(
図2及び
図4において反時計回り方向)に回転させることにより、プッシュチェーン44がチェーンラック54側から引出される。すると、ロボットアーム28の内側においてプッシュチェーン44がスプロケット46から遠ざかる方向に走行して、ロボットアーム28の伸び動作を行うことができる。
【0023】
図3及び
図5に示すように、第2回転モータ50の駆動によりスプロケット46を逆方向(
図3及び
図5において時計回り方向)に回転させることにより、プッシュチェーン44がチェーンラック54側に送出される。すると、ロボットアーム28の内側においてプッシュチェーン44がスプロケット46に近づく方向に走行して、ロボットアーム28を縮み動作を行うことができる。
【0024】
(ピッキングシステム60、ロボットコントローラ62)
図6に示すように、本実施形態に係るピッキングシステム60は、物品の一例としての瓦礫のピッキングを行うためのシステムである。ピッキングシステム60は、ピッキングロボット10と、ピッキングロボット10の動作を制御するロボットコントローラ62と、ピッキングロボット10を遠隔操作するための操作装置64とを備えている。ロボットコントローラ62は、ピッキングロボット10の動作を制御するための制御プログラム等を記憶するメモリ(不図示)と、制御プログラムを解釈して実行するマイクロプロプロセッサ(不図示)とを有している。ロボットコントローラ62は、操作装置64からの操作指令に基づいて、ピッキングロボット10の動作を制御する。操作装置64は、カメラ58からの撮像結果(撮像画像)を表示する表示部を有している。なお、ピッキングシステム60は、瓦礫以外の物品のピッキングを行うために用いてもよい。
【0025】
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。
【0026】
(物品のピッキングに関する作用)
ロボットコントローラ62が各走行モータ20を制御して、ピッキングロボット10を瓦礫の近傍まで走行させる。必要に応じて、ロボットコントローラ62が第1回転モータ24を制御して、ロボットアーム28を支柱22の軸心周りに回転させる。また、必要に応じて、ロボットコントローラ62が第2回転モータ50を制御して、ロボットアーム28を伸縮動作(伸び動作又は縮み動作)させる。そして、ロボットコントローラ62が揺動モータ30及びロボットハンド42を制御して、ロボットアーム28を下方向へ揺動させて、ロボットハンド42によって瓦礫を把持する。更に、ロボットコントローラ62が揺動モータ30を制御して、ロボットアーム28を上方向へ揺動させる。これにより、ピッキングロボット10によって瓦礫を取出すことができる。
【0027】
その後、ロボットコントローラ62が各走行モータ20を制御して、ピッキングロボット10を所定の載置場所の近傍まで走行させる。必要に応じて、ロボットコントローラ62が第1回転モータ24を制御して、ロボットアーム28を支柱22の軸心周りに回転させる。また、必要に応じて、ロボットコントローラ62が第2回転モータ50を制御して、ロボットアーム28を伸縮動作させる。そして、ロボットコントローラ62が揺動モータ30を制御して、ロボットアーム28を下方向へ揺動させて、ロボットハンド42を所定の載置場所の上側に位置させる。更に、ロボットコントローラ62がロボットハンド42を制御して、ロボットハンド42による把持状態を解除する。これにより、瓦礫を所定の載置場所まで搬送又は運搬することができる。
【0028】
なお、ロボットアーム28を伸縮動作させた後に、ロボットコントローラ62が電磁ブレーキ52を制御して第2回転モータ50の回転を制動する。これにより、ロボットアーム28の基端部に対するロボットハンド42の相対位置を固定することができる。
【0029】
(ピッキングロボット10の特有の作用効果)
ロボットアーム28は、前述のように、入れ子状に重なり合う複数のアーム管32を有したテレスコピック型に構成されている。そのため、ロボットアーム28を伸縮動作させることができ、ロボットアーム28を縮ませた状態において、ピッキングロボット10のコンパクト化を図ることができる。これにより、本実施形態によれば、ピッキングロボット10を被災地等の所定の場所に短時間で容易に移送することができ、ピッキングロボット10の移送作業の作業性を高めることができる。また、ピッキングロボット10の使用前又は使用後において、ピッキングロボット10を保管する保管スペースを削減することができる。特に、走行体12を備えた自走式のピッキングロボット10においては、ロボットアーム28を縮ませた状態にすることにより、ロボットアーム28と障害物との干渉を回避しつつ、重心バランスの不安定さくるピッキングロボット10の転倒を防いで、ピッキングロボット10を安定して走行させることができる。
【0030】
更に、ロボットアーム28がテレスコピック型に構成されているため、多関節型のロボットアームを備えたピッキングロボットよりも、ピッキングロボット10の動作を簡単にすることができる。これにより、ピッキングロボット10の動作を制御するための制御プログラムの作成が容易になる。
【0031】
また、前述のように、各重なり合う一対のアーム管32のうち内側のアーム管32の基端部側に外フランジ34が設けられ、外側のアーム管32の先端部側に外フランジ34に当接可能な内フランジ36が設けられている。そのため、本実施形態によれば、ロボットアーム28の伸縮動作中に、外側のアーム管32から内側のアーム管32の離脱することを防止することができる。
【0032】
更に、前述のように、各重なり合う一対のアーム管32のうち内側のアーム管32の基端部側に複数の第1カムフォロア38が設けられ、外側のアーム管32の先端部側に複数の第2カムフォロア40が設けられている。そのため、本実施形態によれば、複数の第1カムフォロア38及び複数の第2カムフォロア40によってロボットアーム28の伸縮動作を安定させることができる。また、ロボットアーム28の伸び動作中におけるプッシュチェーン44の座屈を抑えて、ピッキングロボット10による物品のピッキングを高精度に行うことができる。
【0033】
また、前述のように、ピッキングロボット10は、物品の周辺状況を撮像する撮像部としてのカメラ58を備えている。そのため、本実施形態によれば、作業者がカメラ58からの撮像結果を確認しながら、操作装置64を用いてピッキングロボット10を遠隔操作することができる。
【0034】
更に、前述のように、走行体12は、走行台14の下側に設けられた2つのクローラ16を有している。そのため、本実施形態によれば、被災によって生じた様々な不整地においても、ピッキングロボット10を安定的に走行させることができる。
【0035】
続いて、
図5及び
図7を参照して、本実施形態の他の態様について説明する。
【0036】
(移動規制機構66)
図7のVIIA及びVIIBに示すように、ピッキングロボット10は、少なくともいずれかの重なり合う一対のアーム管32のうち、外側のアーム管32に対する内側のアーム管32の軸方向の移動を規制する移動規制機構66を備えている。そして、移動規制機構66の具体的な構成は、次の通りである。
【0037】
内側のアーム管32の基端側の内部には、一対の回動軸68が回動可能に設けられており、各回動軸68は、内側のアーム管32の軸方向に直交する方向に延びている。一対の回動軸68を同期して回動させるため、各回動軸68には、ピニオン70が一体的に設けられている。内側のアーム管32の基端側の内部には、ピニオン70に噛合したラック部材72が設けられている。ラック部材72は、内側のアーム管32の軸方向に延びており、電動アクチュエータ(不図示)の駆動により内側のアーム管32の軸方向へ移動する。
【0038】
各回動軸68には、第1揺動リンク74の一端部が一体的に連結されており、一対の第1揺動リンク74は、一対の回動軸68の回動に連動して揺動する。一対の第1揺動リンク74の他端部の間には、内側のアーム管32の軸方向に延びた第1係合部材76が連結されており、第1係合部材76は、鋸刃状の係合歯76aを有している。また、各回動軸68には、第2揺動リンク78の一端部が一体的に連結されており、一対の第2揺動リンク78は、一対の回動軸68の回動に連動して揺動する。一対の第2揺動リンク78の他端部の間には、内側のアーム管32の軸方向に延びた第2係合部材80が連結されており、第2係合部材80は、鋸刃状の係合歯80aを有している。第2係合部材80は、第1係合部材76の反対側に配置されている。
【0039】
第1係合部材76及び第2係合部材80は、一対の回動軸68の回動に連動して、内側のアーム管32の外周面に対して出没するように構成されている。第1係合部材76及び第2係合部材80のうちの一方の係合部材が内側のアーム管32の外周面に対して突出すると、他方の係合部材が内側のアーム管32の外周面に対して没入するように構成されている。内側のアーム管32の基端側には、第1係合部材76を内側のアーム管32の外周面に対して突出させるための第1長孔32hが形成されている。内側のアーム管32の基端側には、第2係合部材80を内側のアーム管32の外周面に対して突出させるための第2長孔32vが形成されている。第1係合部材76及び第2係合部材80は、それぞれ、内側のアーム管32の基端側の内部に設けられたスプリング82,84によって、内側のアーム管32の外周面に対して突出する方向に付勢されている。
【0040】
図7のVIIAに示すように、第1係合部材76は、内側のアーム管32の外周面に対して突出すると、外側のアーム管32の先端側に設けられた第1ストッパ爪86に係合する。第1係合部材76の係合歯76aと第1ストッパ爪86が係合すると、外側のアーム管32に対する内側のアーム管32の軸方向の一方側(縮み方向)の移動を許容しつつ、外側のアーム管32に対する内側のアーム管32の軸方向の他方側(伸び方向)の移動が規制される。
【0041】
図7のVIIBに示すように、第2係合部材80は、内側のアーム管32の外周面に対して突出すると、外側のアーム管32の先端側に設けられた第2ストッパ爪88に係合する。第2係合部材80と第2ストッパ爪88が係合すると、外側のアーム管32に対する内側のアーム管32の軸方向の他方側(伸び方向)の移動を許容しつつ、外側のアーム管32に対する内側のアーム管32の軸方向の一方側(縮み方向)の移動が規制される。
【0042】
なお、
図7においては、プッシュチェーン44の図示を省略しているが、移動規制機構66は、プッシュチェーン44と干渉しないように配置されている。
【0043】
前記の構成により、ロボットハンド42(
図1参照)によって物品を把持した状態で、ロボットアーム28を上方向へ揺動させる際に、電動アクチュエータの駆動によりラック部材72をアーム管32の軸方向の一方側へ移動させる。すると、一対の回動軸68が正方向(
図7において反時計回り方向)に回動し、第1係合部材76が内側のアーム管32の外周面に対して突出すると共に、第2係合部材80が内側のアーム管32の外周面に対して没入する。その結果、
図7のVIIAに示すように、第1係合部材76が第1ストッパ爪86に係合して、外側のアーム管32に対する内側のアーム管32の軸方向の他方側(伸び方向)の移動が規制される。
【0044】
ロボットハンド42によって物品を把持した状態で、ロボットアーム28を下方向へ揺動させる際に、電動アクチュエータの駆動によりラック部材72をアーム管32の軸方向の他方側へ移動させる。すると、一対の回動軸68が逆方向(
図7において時計回り方向)に回動し、第2係合部材80が内側のアーム管32の外周面に対して突出すると共に、第1係合部材76が内側のアーム管32の外周面に対して没入する。その結果、
図7のVIIBに示すように、第2係合部材80が第2ストッパ爪88に係合して、外側のアーム管32に対する内側のアーム管32の軸方向の一方側(縮み方向)の移動が規制される。また、プッシュチェーン44(
図1参照)の座屈を抑えることができる。
【0045】
そのため、本実施形態の他の態様によれば、ピッキングロボット10によって瓦礫を安定的に搬送又は運搬することができる。
【0046】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るピッキングロボットは、支柱の上端部側に上下方向へ揺動可能に設けられ、入れ子状に重なり合う複数のアーム管を有したテレスコピック型のロボットアームと、前記ロボットアームの先端部に設けられ、物品を把持するロボットハンドと、前記ロボットアームの内側に挿入され、一端部が前記複数のアーム管のうちの先頭のアーム管に連結されたプッシュチェーンと、前記支柱に回転可能に設けられ、前記プッシュチェーンが掛け回されたスプロケットと、前記スプロケットを回転させる回転モータと、を備える。
【0047】
前記の構成によれば、前記ロボットアームは、前述のように、入れ子状に重なり合う前記複数のアーム管を有したテレスコピック型に構成されている。そのため、前記ロボットアームを伸縮させることができ、前記ロボットアームを縮ませた状態において、前記ピッキングロボットのコンパクト化を図ることができる。これにより、前記ピッキングロボットを所定の場所に短時間で容易に移送することができ、前記ピッキングロボットの移送作業の作業性を高めることができる。また、前記ピッキングロボットの使用前又は使用後において、前記ピッキングロボットを保管する保管スペースを削減することができる。
【0048】
本発明の態様2に係るピッキングロボットは、前記態様1において、各重なり合う一対のアーム管のうち内側のアーム管の基端部側に、外フランジが外方向に突出して設けられ、各重なり合う一対のアーム管のうち外側のアーム管の先端部側に、前記外フランジに当接可能な内フランジが内方向に突出して設けられてもよい。
【0049】
前記の構成によれば、前記ロボットアームの伸縮動作中に、前記外側のアーム管から前記内側のアーム管の離脱することを防止することができる。
【0050】
本発明の態様3に係るピッキングロボットは、前記態様1又は2において、各重なり合う一対のアーム管のうち内側のアーム管の基端部側に、外側のアーム管の内周面を転動する複数の第1転動子が周方向に間隔を置いて設けられ、各重なり合う一対のアーム管のうちの外側のアーム管の先端部側に、内側のアーム管の外周面を転動する複数の第2転動子が周方向に間隔を置いて設けられてもよい。
【0051】
前記の構成によれば、前記複数の第1転動子及び前記複数の第2転動子によって前記ロボットアームの伸縮動作を安定させることができる。
【0052】
本発明の態様4に係るピッキングロボットは、前記態様1から3のいずれかにおいて、前記支柱における前記スプロケットの下側に設けられ、前記プッシュチェーンを誘導するチェーンガイドを有し、前記プッシュチェーンを収納するチェーンラックを備えてもよい。
【0053】
前記の構成によれば、前記スプロケットを正方向に回転させると、前記プッシュチェーンが前記チェーンラック側から引出される。また、前記スプロケットを逆方向に回転させると、前記プッシュチェーンが前記チェーンラック側に送出される。
【0054】
本発明の態様5に係るピッキングロボットは、前記態様1から4のいずれかにおいて、前記回転モータの回転を制動する電磁ブレーキを備えもよい。
【0055】
前記の構成によれば、前記ロボットアームを伸縮動作させた後に、前記電磁ブレーキによって前記回転モータの回転を制動する。これにより、前記ロボットアームの基端部に対する前記ロボットハンドの相対位置を固定することができる。
【0056】
本発明の態様6に係るピッキングロボットは、前記態様1から5のいずれかにおいて、少なくともいずれかの重なり合う一対のアーム管のうち、外側のアーム管に対する内側のアーム管の軸方向(アーム管の軸方向)の移動を規制する移動規制機構を備えてもよい。
【0057】
前記の構成によれば、前記ロボットハンドによって物品を把持した状態で、前記ロボットアームを上下方向へ揺動させる際に、前記移動規制機構によって前記外側のアーム管に対する前記内側のアーム管の軸方向の移動を規制する。これにより、前記ピッキングロボットによって前記物品を安定的に搬送又は運搬することができる。
【0058】
本発明の態様7に係るピッキングロボットは、前記態様1から6のいずれかにおいて、物品の周辺状況を撮像する撮像部を備えてもよい。
【0059】
前記の構成によれば、作業者が前記撮像部からの撮像結果を確認しながら、前記ピッキングロボットを遠隔操作することができる。
【0060】
本発明の態様8に係るピッキングロボットは、前記態様1から7のいずれかにおいて、走行可能な走行体を備え、前記支柱は、前記走行体に立設されてもよい。
【0061】
前記の構成によれば、前記ピッキングロボットを走行させることができる。
【0062】
本発明の態様9に係るピッキングロボットは、前記態様8において、前記走行体は、前記支柱が立設された走行台と、前記走行台に設けられたクローラと、を有してもよい。
【0063】
前記の構成によれば、不整地においても、前記ピッキングロボットを安定的に走行させることができる。
【0064】
〔付記事項〕
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
10 ピッキングロボット
12 走行体
14 走行台
16 クローラ
22 支柱
24 第1回転モータ
26 アーム支持部
28 ロボットアーム
30 揺動モータ
32 アーム管
34 外フランジ
36 内フランジ
38 第1カムフォロア(第1転動子)
40 第2カムフォロア(第2転動子)
42 ロボットハンド
44 プッシュチェーン
46 スプロケット
50 第2回転モータ(回転モータ)
52 電磁ブレーキ
54 チェーンラック
56 チェーンガイド
58 カメラ(撮像部)
60 ピッキングシステム
62 ロボットコントローラ
64 操作装置
66 移動規制機構
68 回動軸
70 ピニオン
72 ラック部材
74 第1揺動リンク
76 第1係合部材
78 第2揺動リンク
80 第2係合部材
86 第1ストッパ爪
88 第2ストッパ爪