(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176685
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】コンクリート用粗骨材
(51)【国際特許分類】
C04B 20/00 20060101AFI20231206BHJP
C04B 14/34 20060101ALI20231206BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20231206BHJP
E04C 5/18 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C04B20/00 A
C04B14/34
C04B28/02
E04C5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089107
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】518068062
【氏名又は名称】株式会社I・B・H柴田
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 順一
【テーマコード(参考)】
2E164
4G112
【Fターム(参考)】
2E164AA02
4G112PA13
4G112PC12
(57)【要約】
【課題】安価に製造することができ、コンクリートの引張強度を顕著に向上させる粗骨材を提供する。
【解決手段】金属帯からなるコンクリート用粗骨材は、金属帯の少なくとも一方の端部に、金属帯の長手方向に沿って、少なくとも1つの切れ込みが形成され、切れ込みを挟んだ一対の細片がそれぞれ、それらの先端が互いに離間するように折り曲げられている。金属帯の両端部のそれぞれに、金属帯の長手方向に沿って切れ込みが形成されていることが好ましい。また、金属帯の両端部のそれぞれに、同数の切れ込みが形成されていることが好ましい。切れ込みは、少なくとも一方の端部において複数形成されていてもよい。金属帯の両端部の間の中央部が捻られていてもよい。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯からなる金属製のコンクリート用粗骨材であって、
金属帯の少なくとも一方の端部に、金属帯の長手方向に沿って、少なくとも1つの切れ込みを有し、該切れ込みを挟んだ一対の細片の先端が互いに離間するように折り曲げられているコンクリート用粗骨材。
【請求項2】
金属帯の両端部のそれぞれに、金属帯の長手方向に沿った切れ込みと、該切れ込みを挟んだ一対の細片を有し、それらの先端が互いに離間するように折り曲げられている請求項1記載のコンクリート用粗骨材。
【請求項3】
金属帯の両端部のそれぞれに、同数の切れ込みが形成されている請求項2記載のコンクリート用粗骨材。
【請求項4】
切れ込みが、少なくとも一方の端部において複数形成されている請求項2又は3記載のコンクリート用粗骨材。
【請求項5】
金属帯の長手方向の中央部が捻られている請求項2又は3記載のコンクリート用粗骨材。
【請求項6】
切れ込みの根本に穴を有する請求項1~3のいずれかに記載のコンクリート用粗骨材。
【請求項7】
一対の細片が、金属帯表面に対して垂直方向に折り曲げられている請求項1~3のいずれかに記載のコンクリート用粗骨材。
【請求項8】
一対の細片が、互いに反対方向にカールするように折り曲げられている請求項7記載のコンクリート用粗骨材。
【請求項9】
金属帯の幅方向の中央に長手方向に沿ってパンチ穴が所定のピッチで設けられている請求項1~3のいずれかに記載のコンクリート用粗骨材。
【請求項10】
フロア釘様線材で形成された金属製のコンクリート用粗骨材であって、該フロア釘様線材の胴部が湾曲しているコンクリート用粗骨材。
【請求項11】
フロア釘様線材の胴部表面が、スクリュー形状、リング形状、バーブ形状、又は複数方向から押し潰された凸凹形状を有する請求項10記載のコンクリート用粗骨材。
【請求項12】
U字型に湾曲した2つのフロア釘様線材同士が中央部で引っ掛かった形状を有し、互いに引っ掛かった部分が溶接されている請求項10又は11記載のコンクリート用粗骨材。
【請求項13】
フロア釘様線材の胴部が渦巻き状、スネーク状又は波形に湾曲している請求項10又は11記載のコンクリート用粗骨材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート用粗骨材に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、通常、セメント、水、粗骨材(砕石や砂利)及び細骨材(砂)を混合して得る所謂生コンクリートを、水とセメントとの水和反応に基づいて固化させたものであり、建築資材として広く使用されている。
【0003】
コンクリートは、圧縮強度に比して引張強度が1/10~1/13程度と非常に低いという欠点を有している。この欠点を補うため、コンクリート中に縦横にマトリックス状に組んだ鉄筋を配設することが一般的であるが、圧縮強度だけでなく引張強度も向上させることのできる新たな粗骨材として金属製の略四面体形状の粗骨材が提案されている(特許文献1)。この粗骨材は外形が略四面体形状であることによりモルタル中でアンカー効果を発揮するので、従前の粗骨材に比して引張強度や剪断強度を向上させることが可能となる。
【0004】
また、金属製の粗骨材とモルタルとの付着性を向上させるために、金属製の粗骨材本体に20番手以上の細いワイヤーを貫通させた粗骨材であって、粗骨材本体にワイヤーが容易に巻き付くようにしたものが提案されている(特許文献2)。この粗骨材によれば、生コンクリートの撹拌中に粗骨材本体にワイヤーが巻き付き、巻き付いたワイヤーにモルタルが捕捉され、粗骨材とモルタルが一体に移動するので生コンクリート中で粗骨材が沈降しにくく、粗骨材の分散性が良好になるというメリットを得られる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているような金属製の粗骨材では、粗骨材自体の引張強度がコンクリートのモルタル部分の強度に比して強すぎるため、粗骨材とモルタルとの界面が剥離してモルタル部分が破断し、粗骨材がコンクリートの引張強度の向上に寄与できない場合がある。
【0006】
特許文献2に記載されているようにワイヤーが金属製の粗骨材本体に巻き付くようにすると粗骨材とモルタルとの付着性を向上させることができるが、ワイヤーの粗骨材本体への巻き付き方は一定しないため、引張強度にばらつきが生じる虞がある。
【0007】
これに対し、モルタルと粗骨材との付着性をさらに向上させてモルタル部分の破断を防止し、コンクリートの引張強度を向上させるため、金属製メッシュ材料を中空の球形に成形した粗骨材が提案されている(特許文献3)。
【0008】
この金属製メッシュ材料からなる粗骨材をコンクリート製造の際に適用した場合、従前の砕石や砂利からなる粗骨材を使用する場合に比して圧縮強度や引張強度が大きく向上することが確認されている。即ち、モルタルとしてハイモルを使用した供試体において、圧縮強度試験(JIS A 1108)では従来の粗骨材を使用したコンクリート試験体が46.84N/mm2で剪断破壊が生じたのに対し、特許文献3に記載の金属製メッシュ材料を用いたコンクリート供試体は47.33N/mm2で僅かに塑性変形しただけで剪断破壊が生じず、コンクリートの圧縮に対する剪断破壊耐性が向上していた。また、割裂引張強度試験(JIS A 1113)では従来の粗骨材を使用したコンクリート供試体が3.24N/mm2で剪断破壊が生じたのに対し、特許文献3に記載の金属製メッシュ材料を用いたコンクリート供試体は5.90N/mm2でクラックが発生したに過ぎず、引張強度を従来の砕石や砂利を粗骨材として用いたコンクリートの引張強度の180%以上にすることが可能となり、しかもコンクリートに粘りがでるため、コンクリート建造物に過度の力がかかってもコンクリートが一気に崩壊せず、徐々に崩れるため、そのコンクリート建造物から避難することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許6485932号公報
【特許文献2】特許6532073号公報
【特許文献3】特許6667886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3に記載の粗骨材は、金属製メッシュ材料を加工して成形するため、材料費が高くつく。一方、粗骨材は、通常コンクリート中の体積の約7割を占める程に大量に使用されるため、より安価に入手できることが必要とされている。
【0011】
このような従来技術に対し、本発明は、特許文献3に記載の粗骨材のように、粗骨材として砕石や砂利を使用した従来のコンクリートと同等以上の圧縮強度と、圧縮に対する良好な剪断破壊耐性と、高い引張強度と、粘り強さとを付与できる粗骨材であって、しかもより安価に製造することのできる粗骨材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、短冊状の金属板(以下、金属帯と称する)の長手方向の端部、好ましくは両端部に切れ込みを設けることによりその切れ込みの両側に一対の細片を形成し、得られた一対の細片の先端が互いに離れるように折り曲げたものや、フロア釘様線材を湾曲させたものを、コンクリートを製造する際に金属製の粗骨材として使用すると、金属製の粗骨材がコンクリート中で互いに絡み合うので、コンクリートの圧縮に対する剪断破壊耐性を向上させ、引張強度も向上させることができ、しかもコンクリートに粘り強さを付与することができること、また、安価に入手できる砕石を粗骨材として共存させた場合には、粗骨材全体としてのコストを低下させ、かつ金属製粗骨材が砕石に引っ掛かり、砕石同士を繋ぎ合わせる機能をはたすので、この場合にもコンクリートの圧縮に対する剪断破壊耐性や引張強度が向上し、コンクリートに粘り強さを付与できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明は、金属帯からなる金属製のコンクリート用粗骨材であって、
金属帯の少なくとも一方の端部に、金属帯の長手方向に沿って、少なくとも1つの切れ込みを有し、切れ込みを挟んだ一対の細片の先端が互いに離間するように折り曲げられているコンクリート用粗骨材を提供する。
【0014】
また、本発明は、フロア釘様線材で形成された金属製のコンクリート用粗骨材であって、該フロア釘様線材の胴部が湾曲しているコンクリート用粗骨材を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の金属製のコンクリート用粗骨材は、金属帯の長手方向の端部、好ましくは両端部に切れ込みを有し、その切れ込みを挟んだ一対の細片の先端が互いに離れるように折り曲げられているものであるため、金属板の簡単なプレス加工により非常に安価に容易に製造できる。また、本発明の金属製のコンクリート粗骨材において、フロア釘様線材の胴部を湾曲させたものも、一般的なフロア釘またはフロア釘に類する線材の曲げ加工により非常に安価に容易に製造することができる。したがって、特許文献1~3の粗骨材や特願2022-028649号の粗骨材よりも安価に製造でき、量産に適したものとなる。また、コンクリートの粗骨材として本発明のコンクリート用粗骨材を単独で使用した場合には、コンクリート中で互いに絡み合うことができ、また、砕石や砂利を粗骨材として共存させた場合には砕石や砂利に引っ掛かり、砕石や砂利を繋ぎ合わせる機能を発揮するので、コンクリートの圧縮強度を従来のコンクリートと同等以上とし、圧縮に対する剪断破壊耐性を向上させ、引張強度を格段に向上させることができる。しかもコンクリートに粘り強さを付与することができる。従って、コンクリートの急激な破断や爆裂を防止することができ、従来のコンクリートであれば、最大圧縮荷重をかけると殆ど瞬時に爆裂したのが、本発明のコンクリート用粗骨材を使用すると、コンクリートに粘りが生じ、最大圧縮荷重又は最大引張荷重をかけてから、長時間経過しても(例えば30分経過しても)破断せず、圧縮に対する良好な剪断破壊耐性を示すことができる。したがって、例えば地震などにより建造物に大きな荷重がかかっても、人が避難する時間を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは、コンクリート用粗骨材10Aの斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、コンクリート用粗骨材10Bの斜視図である。
【
図1C】
図1Cは、コンクリート用粗骨材10A、10Bの上面図である。
【
図1D】
図1Dは、コンクリート用粗骨材10Aの側面図である。
【
図1E】
図1Eは、コンクリート用粗骨材10Bの側面図である。
【
図2】
図2は、コンクリート用粗骨材20の上面図である。
【
図3】
図3は、コンクリート用粗骨材30の斜視図である。
【
図4】
図4は、コンクリート用粗骨材40の斜視図である。
【
図5】
図5は、コンクリート用粗骨材50の斜視図である。
【
図6】
図6は、コンクリート用粗骨材の一方の端部の側面拡大図である。
【
図7】
図7は、コンクリート用粗骨材の一方の端部の上面図である。
【
図8】
図8は、コンクリート用粗骨材の一方の端部の側面拡大図である。
【
図9】
図9は、コンクリート用粗骨材の一方の端部の側面拡大図である。
【
図10】
図10は、コンクリート用粗骨材の一方の端部の側面拡大図である。
【
図11】
図11は、コンクリート用粗骨材60の斜視図である。
【
図12】
図12は、コンクリート用粗骨材と砕石との絡まり具合の説明図である。
【
図13】
図13は、コンクリート用粗骨材と砕石との絡まり具合の説明図である。
【
図15】
図15は、フロア釘から形成したコンクリート用粗骨材110の斜視図である。
【
図16】
図16は、フロア釘から形成したコンクリート用粗骨材111の斜視図である。
【
図17】
図17は、フロア釘から形成したコンクリート用粗骨材112の斜視図である。
【
図18】
図18は、コンクリート用粗骨材112と砂利とが絡んだ状態を示す斜視図である。
【
図19】
図19は、表面凹凸が形成された線材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のコンクリート用粗骨材を実施例により詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0018】
(コンクリート用粗骨材の説明)
図1A、1Bは、それぞれ金属帯1から形成される本発明の一実施例のコンクリート用粗骨材10A、10Bの斜視図であり、
図1Cは、コンクリート用粗骨材10A及び10Bの共通する上面図である。また、
図1Dは
図1Aの態様の側面図であり、
図1Eは
図1Bの態様の側面図である。本発明のコンクリート用粗骨材は、金属帯1の少なくとも一方の端部に、好ましくは両端部のそれぞれに、金属帯1の長手方向(
図1Cの矢印のX方向)に沿って、少なくとも1つの切れ込み2が形成されている。本発明のコンクリート用粗骨材では、金属帯の両端にそれぞれ1つの切れ込み2を有し、切れ込み2を挟んで隣合う一対の細片3a、3bが形成されており、一対の細片3a、3bがそれぞれ、それらの先端3aa、3bbが互いに離間するように折り曲げられている。折り曲げの際、一対の細片3aと3bとが成す角度は、特に限定されないが、アンカー効果を確実にするために、15°~120°である。
【0019】
なお、
図1Aでは、一方の端部の細片3bの先端3bbと他方の端部の細片3bの先端3bbとが互いに離間するように折り曲げられており、
図1Bでは、一方の端部の細片3bの先端3bbと他方の端部の細片3bの先端3bbとが接近するように折り曲げられている。
【0020】
本発明の金属帯から形成されるコンクリート用粗骨材は、一般的な建築材料である鉄やアルミニウム等の金属やステンレス等の合金の平板状材料又は帯状材料のカットにより形成される短冊状材料(金属帯)に切り込みを入れ、曲げ加工をすることにより得ることができるものである。金属帯としては、低コストで入手可能であり、しかも加工性にも優れており、更に、電磁石を利用してハンドリング可能な磁性材料である軟鉄製の金属帯を好ましく使用することができる。なお、金属帯1の材料として軟鉄を採用した場合の初期サイズ(折り曲げ前のサイズ)は、本発明のコンクリート用粗骨材が適用されるコンクリートの用途や併用される砕石や砂利のサイズ等により決められる。通常、長さ2~10cm、幅0.5~3cm、厚み0.1~1cmであるが、この範囲に限定されるものではない。
【0021】
切れ込み2の数は、
図1Cに示すように、金属帯1の各端部に通常1つであるが、
図2のように、複数の切れ込み2を設けてもよい。その場合、複数の切れ込み毎に一対の細片が形成される。例えば、
図2のコンクリート用粗骨材20の場合には、細片3bは、細片3aと一対の細片を形成すると共に、細片3cとも一対の細片を形成する。また、金属帯1の両端部において、切れ込み2の数は、
図1Cのように同数でもよく、
図2のように、異なっていてもよい。
【0022】
また、
図3に示すように、本発明の金属帯から形成されるコンクリート用粗骨材30は、金属帯1の両端部の間の中央部4が捻られていることが好ましい。捻られることにより、コンクリート用粗骨材のアンカー効果を高めることが可能となる。捻れの程度は、特に制限はないが、好ましくは30°~90°である。
【0023】
図4に示すように、本発明の金属帯から形成されるコンクリート用粗骨材40においては、切れ込み2の根本に穴5が形成されていてもよい。穴5が形成されていることにより、細片3a、3bの折り曲げを容易に行うことができる。また、
図5に示すように、本発明の金属帯から形成されるコンクリート用粗骨材50においては、金属帯1の幅方向の中央に長手方向に沿ってパンチ穴6が所定のピッチで設けられていることが好ましい。このパンチ穴6にモルタルが入り込み、コンクリート用粗骨材のアンカー効果を向上させることができる。
【0024】
前述したように、本発明の金属帯から形成されるコンクリート用粗骨材は、その少なくとも一方の端部に隣合う一対の細片3a、3bが形成されており、一対の細片3a、3bがそれぞれ、それらの先端3aa、3bbが互いに離間するように折り曲げられている。ここで、細片の先端が離間するように折り曲げられるとは、
図1Dや
図6(金属帯の端部の側面図)に示すように、一対の細片3a、3bが、金属帯1の表面に対して垂直方向Yに折り曲げられている場合だけでなく、
図7(金属帯の端部の上面図)に示すように、金属帯1の表面に沿った方向Zに拡げるように折り曲げてもよい。また、一対の細片の一方をY方向に、他方をZ方向に折り曲げてもよく、一方の端部と他方の端部とで、一対の細片の折り曲げパターンを変えてもよい。
【0025】
また、一対の細片3a、3bが、金属帯1の表面に対して垂直方向Yに折り曲げられている場合、
図6のように、金属帯1の表面に対して互いに反対方向に折り曲げられていてもよく、
図8(金属帯の端部の側面図)のように、金属帯1の表面に対して同じ方向へ、異なる折り曲げ程度で折り曲げられていてもよい。
【0026】
なお、細片は、
図6のように直線的に折り曲がっていてもよく、
図9(金属帯の端部の側面図)のように、カールしていてもよい。この場合も
図10(金属帯の端部の側面図)のように、同じ方向へカールしていてもよい。
【0027】
また、金属帯1の両端部にそれぞれ切れ込みを3つ形成した場合の細片の折り曲げ例を
図11に示す。この場合、細片3a、3b、3c、3dが形成され、細片3aと3b、細片3bと3c、細片3cと3dが、それぞれ一対の細片を形成する。
【0028】
一方、
図14は、本発明のフロア釘様線材で形成された金属製のコンクリート用粗骨材を形成するフロア釘100の一例である。このフロア釘100は、JIS A5508(1992)に規定されている、胴部101の表面がスクリュー形状で、頭部102がカップ形状を有し、鉄またはステンレスで形成されている。
図15は、フロア釘100から形成した本発明の一実施例のコンクリート用粗骨材110の斜視図である。この粗骨材110は、フロア釘100の胴部101を渦巻き状とし、かつその頭部102と胴部101と先端部103とが同一平面にならないように、頭部102と先端部103との位置が立体的にずれるように成形したものである。
【0029】
この粗骨材110は、フロア釘100の胴部101の表面のスクリュー形状を有するので、粗骨材110とモルタルとの付着性が向上する。また、渦巻き状に湾曲した立体的な形状を有するので、粗骨材同士がモルタル中で偏在することなく、粗骨材同士が絡まり合いつつ良好に分散する。さらに、釘の頭部102は、コンクリート中でアンカー効果を発揮する。したがって、フロア釘100から形成した粗骨材110によれば、コンクリートの圧縮強度や引張強度を向上させ、かつ、コンクリートに過剰に負荷がかかった場合でも爆裂はしない耐久力をもたせることができる。
【0030】
図16は、フロア釘100をスネーク状又は波形に湾曲させた実施例のコンクリート用粗骨材111の斜視図である。本発明者が丸棒状の線径1~2mmのワイヤーを
図16と同様のスクリュー形状に湾曲させて得た粗骨材について、圧縮強度試験(JIS A 1108 コンクリートの圧縮強度試験方法)と、引張強度試験(JIS A 1113 コンクリートの割裂引張強度試験方法)を一般財団法人建材試験センターで行ったところ、圧縮強度が87.4N/mm
2 、引張強度が9.36N/mm
2 、引張強度試験における最大荷重の耐久性が30分以上という、従来の砂利を粗骨材とした場合に対して2~3倍の引張強度が計測された。
図16に示した粗骨材111は、このワイヤーで形成した粗骨材に比して表面にスクリュー形状の凹凸が形成されている分、モルタルとの付着力が向上し、コンクリートの圧縮強度も、引張強度も、最大荷重において爆裂しないという耐久性も、さらに優れていること考えられる。
【0031】
図17に示した実施例のコンクリート用粗骨材112は、U字型に湾曲した2つのフロア釘様線材同士を中央部で引っ掛け、互いに引っ掛かった部分をスポット溶接により固定したものである。この粗骨材112によれば、これ単独を粗骨材として使用した場合に、互いに絡まり合ってコンクリートの耐久性が向上すると考えられるが、
図18に示したように、砂利80と併用した場合は、粗骨材112が砂利同士80を繋げ合わせるので、これによっても耐久性が向上すると考えられる。
【0032】
本発明のフロア釘様線材で形成された金属製のコンクリート様粗骨材は、胴部表面がスクリュー形状のフロア釘100を材料とするだけでなく、胴部表面がJISに規定されているリング状、バーブ状等の表面凹凸を有する線材であって、釘と同様に剛性を有するものを使用することができる。また、表面形状がスムースまたはスクウェアな線材を、複数方向から押し潰すことにより、
図19に示すように表面凹凸を有する線材120を形成し、この胴部121を湾曲させることにより本発明の粗骨材を形成してもよい。
【0033】
(コンクリート用粗骨材の製造)
金属帯から形成した本発明のコンクリート用粗骨材は、金属帯の長手方向端部に常法により切れ込みを入れ、それにより形成された一対の細片を折り曲げ加工することにより製造できる。この切れ込みの形成と曲げ加工とを同時に行ってもよい。金属帯の中央部に捻れを形成する場合、切れ込みを入れた後に、金属帯の両端部を把持しながら捻ることにより、中央部に捻れを形成し、その後に細片を折り曲げることで製造することができる。
【0034】
また、フロア釘様線材で形成された本発明の金属製のコンクリート用粗骨材は、釘の胴部表面が、スクリュー状、リング状、バーブ状などの公知の釘を湾曲させることにより容易に製造することができる。また、胴部がスムースやスクウェアの釘の胴部を複数方向から押し潰して表面凹凸を形成したものも、本発明においてフロア釘様線材として使用することができる。
【0035】
(コンクリート用粗骨材の適用例)
本発明のコンクリート用粗骨材は、従来のコンクリートの配合組成における粗骨材の一部又は全部に代替することができる。この場合、本発明のコンクリート用粗骨材は嵩高く、モルタルと混合すると、モルタル内でコンクリート用粗骨材同士が絡まり合うが密に重なり合うことはなく、モルタル内で偏在することはない。モルタルに混ぜた本発明のコンクリート用粗骨材の多くは、コンクリート用粗骨材の折り曲げられた細片同士が接触した状態で分散するか、あるいはコンクリート用粗骨材の細片によりコンクリート用粗骨材同士が絡まった状態で分散する。また、
図12、
図13、
図18に示すように、本発明のコンクリート用粗骨材70、112を、一般的な粗骨材である砕石又は砂利80と共存させると、本発明のコンクリート用粗骨材70、112が砕石や砂利80をホールドする効果も期待できる。よって、本発明のコンクリート用粗骨材を用いたコンクリートによれば、硬化後に強い荷重がかかっても、折り曲げられた細片とコンクリートのモルタル部分とが剥離することを防止でき、コンクリートの圧縮強度、引張強度、剪断強度、曲げ強度が、顕著に向上する。
【0036】
本発明のコンクリート用粗骨材と混ぜるモルタルは、一般的なポルトランドセメントと砂と水から形成することができる。高強度コンクリートの製造に使用される混和剤や特殊な繊維は不要である。従って、本発明のコンクリート用粗骨材を用いて製造したコンクリートは、リサイクルにも適したものとなる。一方、必要に応じて本発明のコンクリート用粗骨材を高強度コンクリート用のモルタルに混ぜても良い。従来の高強度コンクリートに粘り強さを付与し、爆裂を抑制することができる。
【0037】
また、本発明のコンクリート用粗骨材と混ぜるモルタルの砂としては、再生コンクリートから形成したものを使用することもでき、これによっても一般的な砂を用いた場合と同様のコンクリート強度を発揮させることができる。
【0038】
コンクリートの打設方法としては、常法に従いモルタル中に粗骨材を分散させて生コンクリートを調製し、生コンクリートを型に流し入れ、次いで加振してもよく、加振しつつ生コンクリートを型に流し入れてもよい。
【0039】
また、型内の捨てコンの上にコンクリート用粗骨材を入れ、又は型内に直接コンクリート用粗骨材を入れ、次いでモルタルをコンクリート用粗骨材の上から流し入れ、加振してもよい。この場合、粗骨材の充填層の内部にトレミー管を挿入し、トレミー管を用いてモルタルを粗骨材の充填層の内部に圧入することは不要である。この打設方法でも本発明の粗骨材は互いに絡まり合うのでコンクリートの強度を高めることができる。さらにこの打設方法によれば、所定量の粗骨材を正確かつ容易に型内に入れることができる。
【0040】
本発明のコンクリート用粗骨材の好ましい適用例としては、コンクリートプレキャスト製品において、引張や曲げに対して従前よりも強い軽量鉄筋コンクリート板を製造することができる。また、鉄筋を使用しないコンクリート構造物(例えば、ダム壁、地面に直に敷設される道路、建造物のベタ基礎、舗装広場等)にも好ましく適用できる。特殊な適用例としては、地面から離れた位置に設置される高速道路の鉄筋コンクリート床版等に好ましく適用できる。本発明のコンクリート用粗骨材であって金属帯を磁性材料から構成した場合には、コンクリートパネルを電磁石に引きつけて搬送、設置、撤去することが可能となり、作業性が向上する。
【符号の説明】
【0041】
1 金属帯
2 切れ込み
3a、3b、3c、3d 細片
3aa、3bb 細片の先端
4 金属帯の中央部
5 穴
6 パンチ穴
10A、10B、20、30、40、50、60、70 金属帯から形成されたコンクリート用粗骨材
80 砕石、砂利
100 フロア釘
101 胴部
102 頭部
103 先端部
110 フロア釘様線材で形成されたコンクリート用粗骨材
111 フロア釘様線材で形成されたコンクリート用粗骨材
112 フロア釘様線材で形成されたコンクリート用粗骨材
120 線材
121 胴部
X 金属帯の長手方向
Y 金属帯の表面に対して垂直方向
Z 金属帯の表面に沿った方向