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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176697
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】水素製造装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/02 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
C01B3/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089127
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 甫
(72)【発明者】
【氏名】和田 博文ジュニア
(57)【要約】
【課題】水素の生成効率が高い水素製造装置を提供する。
【解決手段】水素製造装置は、反応媒体と、容器と、水蒸気供給部と、排気管と、を備える。容器は、反応媒体を収容する。水蒸気供給部は、反応媒体に水蒸気供給路を通じて水蒸気を供給する。排気管は、加熱炉から加熱された排気ガスを排出する。また、容器は、排気管内に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応媒体と、
前記反応媒体を収容する容器と、
前記反応媒体に水蒸気供給路を通じて水蒸気を供給する水蒸気供給部と、
加熱炉から加熱された排気ガスを排出する排気管と、
を備え、
前記容器は、前記排気管内に位置する
水素製造装置。
【請求項2】
前記水蒸気供給部は、前記容器よりも前記排気管の上流側に位置する第1熱交換器を有する
請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項3】
前記水蒸気供給部は、前記容器よりも前記排気管の下流側に位置する第2熱交換器を有し、
前記水蒸気供給路において、前記第2熱交換器は前記第1熱交換器よりも上流側に位置する
請求項2に記載の水素製造装置。
【請求項4】
前記水蒸気供給部は、前記水蒸気供給路において前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間に位置する第3熱交換器を有し、
前記第3熱交換器は、前記容器から水素ガスを排出する水素排出路に位置する
請求項3に記載の水素製造装置。
【請求項5】
前記容器は、セラミックスからなる
請求項1~3のいずれか一つに記載の水素製造装置。
【請求項6】
前記容器は、前記反応媒体を加熱する加熱部を有する
請求項1~3のいずれか一つに記載の水素製造装置。
【請求項7】
前記水蒸気供給路からは、フローガスも供給され、
前記フローガスは、非酸化性ガスである
請求項1~3のいずれか一つに記載の水素製造装置。
【請求項8】
前記反応媒体に流体供給路を通じてフローガスを供給する流体供給部、を備え、
前記フローガスは、非酸化性ガスである
請求項1~3のいずれか一つに記載の水素製造装置。
【請求項9】
前記流体供給部は、前記容器よりも前記排気管の上流側に位置する第4熱交換器を有する
請求項8に記載の水素製造装置。
【請求項10】
前記流体供給部は、前記容器よりも前記排気管の下流側に位置する第5熱交換器を有し、
前記流体供給路において、前記第5熱交換器は前記第4熱交換器よりも上流側に位置する
請求項9に記載の水素製造装置。
【請求項11】
前記フローガスは、Arガス、Nガス、COガスの少なくとも一種を含有する
請求項7に記載の水素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高炉等の工業炉から放出される熱を利用して反応媒体を還元し、還元された反応媒体に水蒸気を接触させることで、水素を発生させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/141385号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、水素を効率よく生成する点について更なる改善の余地があった。
【0005】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、水素の生成効率が高い水素製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る水素製造装置は、反応媒体と、容器と、水蒸気供給部と、排気管と、を備える。容器は、前記反応媒体を収容する。水蒸気供給部は、前記反応媒体に水蒸気供給路を通じて水蒸気を供給する。排気管は、加熱炉から加熱された排気ガスを排出する。また、前記容器は、前記排気管内に位置する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、水素の生成効率が高い水素製造装置が提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る水素製造装置の構成および水素製造時の動作を模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態に係る水素製造装置における反応媒体の還元処理時の動作を模式的に示す図である。
図3図3は、実施形態に係る水素製造装置の容器の構成の一例を示す斜視図である。
図4図4は、実施形態に係る水素製造装置の容器の構成の一例を示す断面図である。
図5図5は、実施形態に係る水素製造装置の第1熱交換器の構成の一例を示す斜視図である。
図6図6は、実施形態に係る水素製造装置の第1熱交換器の構成の一例を示す断面図である。
図7図7は、実施形態の変形例1に係る水素製造装置の容器の構成の一例を示す断面図である。
図8図8は、実施形態の変形例1に係る水素製造装置の容器の構成の一例を示す平面図である。
図9図9は、実施形態の変形例2に係る水素製造装置の構成および水素製造時の動作を模式的に示す図である。
図10図10は、実施形態の変形例2に係る水素製造装置の反応媒体の還元処理時の動作を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水素製造装置の各実施形態について説明する。なお、以下に示す各実施形態により本開示が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0010】
<水素製造装置の構成>
最初に、実施形態に係る水素製造装置1の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る水素製造装置1の構成および水素製造時の動作を模式的に示す図である。図1に示すように、実施形態に係る水素製造装置1は、排気管10と、反応媒体20と、容器30と、水蒸気供給部40と、を備える。
【0011】
排気管10は、加熱された排気ガスGを加熱炉2から排出部EXHに排出する。加熱炉2は、さまざまな工業で用いられ、内部が高い温度となる各種の炉である。加熱炉2は、排気ガスGを発生させる。
【0012】
排気ガスGの温度は、たとえば、400℃以上であればよく、たとえば、1100℃程度であってもよい。加熱炉2は、たとえば、焼成炉、熱処理炉、発電所、ごみ焼却炉、高炉、電炉、産業ガス合成装置、ガス化装置およびセメントクリンカーの焼成炉などであってもよい。
【0013】
反応媒体20は、水蒸気Vと接触し、水蒸気Vから酸素を奪い、水蒸気Vを還元することで水素を生成する機能を有している。反応媒体20は、たとえば、熱により還元されて酸素欠陥が生じる酸化物であってもよい。
【0014】
反応媒体20としては、たとえば、ペロブスカイト型酸化物を用いることができる。特許文献1に記載のペロブスカイト酸化物ならば、400℃以上かつ1600℃以下の温度範囲で水素製造サイクルを行うことができる。反応媒体20は、たとえば、球状で微細な多孔体であってもよい。
【0015】
容器30は、水素の製造に用いられる反応媒体20を収容する。容器30は、排気管10の内部に位置する。かかる容器30の詳細な構成については後述する。
【0016】
水蒸気供給部40は、容器30に水蒸気Vを供給することで、かかる容器30内に収容される反応媒体20に水蒸気Vを供給する。水蒸気供給部40は、フローガス供給源41と、第2熱交換器42と、第3熱交換器43と、第1熱交換器44と、水蒸気供給路50とを有していてもよい。
【0017】
水蒸気供給部40には、フローガス供給源41を基準にして、水蒸気供給路50の上流側から順に、第2熱交換器42、第3熱交換器43および第1熱交換器44が位置していてもよい。また、水蒸気供給路50は、供給路51と、供給路52と、供給路53と、供給路54とを有していてもよい。
【0018】
供給路51は、たとえば、フローガス供給源41と第2熱交換器42との間を接続する配管である。供給路52は、たとえば、第2熱交換器42と第3熱交換器43との間を接続する配管である。供給路53は、たとえば、第3熱交換器43と第1熱交換器44との間を接続する配管である。供給路54は、たとえば、第1熱交換器44と容器30との間を接続する配管である。
【0019】
フローガス供給源41は、供給路51を通じて、水蒸気供給部40の第2熱交換器42に水Lを供給してもよい。なお、フローガス供給源41は、供給路51を通じて、水Lではなく水蒸気を供給してもよい。また、フローガス供給源41から供給される水蒸気は、水蒸気発生装置で生成されてもよいし、別の炉から供給される水蒸気であってもよい。
【0020】
また、フローガス供給源41から第2熱交換器42へは、フローガスF(図2参照)も供給されてもよい。かかるフローガスFは、たとえば、非酸化性ガスであってもよく、たとえば、Nガス、ArガスおよびCOガスなどであってもよい。
【0021】
第2熱交換器42は、排気管10において容器30よりも下流側に位置する。第2熱交換器42は、排気管10の内部を通流する排気ガスGの熱を利用して、フローガス供給源41から供給される各種フローガスを加熱する。
【0022】
第3熱交換器43は、後述する水素排出路60に位置する。第3熱交換器43は、水素排出路60の内部を通流するフローガスの熱を利用して、第2熱交換器42で加熱された各種フローガスをさらに加熱する。
【0023】
第1熱交換器44は、排気管10において容器30よりも上流側に位置する。第1熱交換器44は、排気管10の内部を通流する排気ガスGの熱を利用して、第3熱交換器43で加熱された各種フローガスをさらに加熱する。そして、第1熱交換器44で加熱された各種フローガスは、容器30に供給される。
【0024】
また、容器30には、内部の反応媒体20に供給された各種フローガスと、たとえば水蒸気Vから生成された水素ガスとを容器30の内部から排出する水素排出路60が接続される。かかる水素排出路60には、容器30を基準にして、上流側から順に、第3熱交換器43、冷却器71、気液分離器72および回収部73が位置していてもよい。
【0025】
また、水素排出路60は、排出路61と、排出路62と、排出路63と、排出路64とを有していてもよい。排出路61は、たとえば、容器30と第3熱交換器43との間を接続する配管である。排出路62は、たとえば、第3熱交換器43と冷却器71との間を接続する配管である。
【0026】
排出路63は、たとえば、冷却器71と気液分離器72との間を接続する配管である。排出路64は、たとえば、気液分離器72と回収部73との間を接続する配管である。
【0027】
第3熱交換器43は、水蒸気供給路50を通流する各種フローガスを利用して、容器30から排出された各種フローガスを冷却する。冷却器71は、第3熱交換器43で冷却された各種フローガスをさらに冷却する。かかる冷却器71には、たとえば、図示しない冷却媒体、たとえば冷却水が供給される。
【0028】
気液分離器72は、冷却器71で冷却された各種フローガスを、気体と液体とに分離する。回収部73は、気液分離器72で分離された気体を回収する。また、気液分離器72で分離された液体は、回収路74を通じてフローガス供給源41に戻される。
【0029】
<水素製造装置の動作>
つづいて、水素製造装置1の具体的な動作について、引き続き図1を参照しながら説明する。図1に示すように、水素製造時において、フローガス供給源41は、供給路51を通じて、水蒸気供給部40の第2熱交換器42に水Lを供給する。かかる水Lは、たとえば室温であるが、室温よりも高い温度に昇温されていてもよい。なお、フローガス供給源41は、供給路51を通じて、第2熱交換器42に水Lではなく水蒸気を供給してもよい。
【0030】
第2熱交換器42は、排気管10の内部を通流する排気ガスGの熱を利用して、フローガス供給源41から供給される水Lを加熱し、水蒸気Vを生成する。実施形態に係る水素製造処理において、第2熱交換器42の近傍を流れる排気ガスGの温度は、たとえば、350℃程度であってもよい。また、第2熱交換器42で生成される水蒸気Vの温度は、たとえば、250℃程度であってもよい。
【0031】
第3熱交換器43は、水素排出路60の内部を通流するフローガスの熱を利用して、第2熱交換器42から供給される水蒸気Vをさらに300℃程度に加熱する。水素排出路60の内部を通流する媒体の温度は、600℃程度であってもよい。
【0032】
第1熱交換器44は、排気管10の内部を通流する排気ガスGの熱を利用して、第3熱交換器43から供給される水蒸気Vをさらに加熱する。実施形態に係る水素製造処理において、第1熱交換器44の近傍を流れる排気ガスGの温度は、たとえば、1100℃程度であってもよい。また、第1熱交換器44で加熱された水蒸気Vの温度は、たとえば、600℃程度であってもよい。このように複数の熱交換器を連結することで、水蒸気Vの温度を徐々に高くできる。
【0033】
そして、第1熱交換器44は、水蒸気供給路50を通じて容器30内に加熱した水蒸気Vを供給する。容器30内に供給される水蒸気Vは、還元された反応媒体20と接触して酸素および水素に分解される。
【0034】
すなわち、実施形態では、容器30内で還元された反応媒体20と水蒸気Vとが接触することにより、水蒸気Vに含まれる酸素が反応媒体20の酸素欠陥に取り込まれるとともに、水素が発生する。
【0035】
ここで、実施形態では、容器30が排気管10の内部に位置していてもよい。これにより、容器30内部の反応媒体20を所望の反応温度まで効率よく昇温することができる。したがって、実施形態によれば、水素の生成効率が高い。
【0036】
なお、実施形態に係る水素製造処理において、容器30の近傍を流れる排気ガスGの温度は、たとえば、800℃程度であってもよい。
【0037】
また、実施形態では、水蒸気供給路50において最も下流側に位置する第1熱交換器44が、排気管10において容器30よりも上流側に位置していてもよい。これにより、反応媒体20に供給される水蒸気Vを、より高温の排気ガスGによって所望の反応温度まで効率よく昇温することができる。
【0038】
したがって、実施形態によれば、水素の生成効率が高い。
【0039】
また、実施形態では、水蒸気供給路50において上流側に位置する第2熱交換器42が、排気管10において容器30よりも下流側に位置していてもよい。
【0040】
これにより、排気管10において第1熱交換器44および容器30よりも下流側に位置しているものの、室温と比べて十分に高温な排気ガスGの熱を無駄にすることなく、かかる排気ガスGの熱で室温の水Lから水蒸気Vを生成することができる。したがって、実施形態によれば、水素の生成効率が高い。
【0041】
また、実施形態では、図1に示すように、反応媒体20内部での水蒸気Vの向きと、排気管10における排気ガスGの向きとが向かい合うように、すなわち水蒸気Vと排気ガスGとが向流になるように水蒸気Vおよび排気ガスGの向きが設定されてもよい。
【0042】
これにより、反応媒体20における温度差を小さくできるため、水素の生成効率がさらに高い。
【0043】
図1の説明を続ける。実施形態に係る水素製造処理において、容器30からは、反応媒体20によって生成された水素ガスと、反応に用いられなかった水蒸気Vとの混合ガスが排出される。なお、本開示の各図面では、水素ガスを「H」と記載する。
【0044】
そして、容器30から排出される混合ガスは、第3熱交換器43において、第2熱交換器42から供給される水蒸気Vと熱交換して冷却される。換言すると、第3熱交換器43において、第2熱交換器42から供給される水蒸気Vは、容器30から排出される混合ガスと熱交換して加熱される。
【0045】
このように、実施形態では、第3熱交換器43において、容器30から排出される混合ガスと、第2熱交換器42から供給される水蒸気Vとの間で熱交換することで、室温と比べて十分に高温な混合ガスの熱を無駄にすることなく、かかる混合ガスの熱で水蒸気Vを加熱することができる。さらに、実施形態では、第3熱交換器43において、容器30から排出される混合ガスを効率よく冷却することができる。
【0046】
冷却器71は、第3熱交換器43から供給される混合ガスをさらに冷却する。これにより、冷却器71からは水素ガスと水Lとの混合流体が排出される。
【0047】
気液分離器72は、冷却器71から供給される水素ガスと水Lとの混合流体の水素ガスと水Lとを分離する。そして、気液分離器72で分離された水素ガスは、回収部73で回収される。また、気液分離器72で分離された水Lは、回収路74を通じてフローガス供給源41に戻される。これにより、気液分離器72まで到達した水Lを再利用することができる。
【0048】
また、実施形態では、排気管10、水蒸気供給路50および水素排出路60を構成する配管の周囲に、断熱材が備わってもよい。これにより、これらの配管から熱が逃げることを抑制できるため、水素の生成効率がさらに高い。
【0049】
かかる断熱材としては、たとえば、レンガ、グラスウール、セラミックファイバー、ロックウールなどであり、接合には無機接着剤などを使用してもよい。
【0050】
図2は、実施形態に係る水素製造装置1における反応媒体20の還元処理時の動作を模式的に示す図である。図2に示すように、反応媒体20の還元処理時において、フローガス供給源41は、供給路51を通じて、水蒸気供給部40の第2熱交換器42にフローガスFを供給する。かかるフローガスFは、たとえば室温であるが、室温よりも高い温度に昇温されていてもよい。
【0051】
第2熱交換器42は、排気管10の内部を通流する排気ガスGの熱を利用して、フローガス供給源41から供給されるフローガスFを加熱する。実施形態に係る水素製造処理において、第2熱交換器42の近傍を流れる排気ガスGの温度は、たとえば、350℃程度であってもよい。また、第2熱交換器42で加熱されたフローガスFの温度は、たとえば、300℃程度であってもよい。
【0052】
第3熱交換器43は、水素排出路60の内部を通流するフローガスの熱を利用して、第2熱交換器42から供給されるフローガスFをさらに加熱する。
【0053】
第1熱交換器44は、排気管10の内部を通流する排気ガスGの熱を利用して、第3熱交換器43から供給されるフローガスFをさらに加熱する。実施形態に係る水素製造処理において、第1熱交換器44の近傍を流れる排気ガスGの温度は、たとえば、1100℃程度であってもよい。また、第1熱交換器44で加熱されたフローガスFの温度は、たとえば、1000℃程度であってもよい。
【0054】
そして、第1熱交換器44は、水蒸気供給路50を通じて容器30内に加熱したフローガスFを供給する。なお、本開示において、第3熱交換器43で加熱されたフローガスFは、図示しないバイパス路を通じて、第1熱交換器44を経由せずに容器30に直接供給されてもよい。
【0055】
容器30内に供給される高熱のフローガスFは、保持する熱によって反応媒体20を還元する。反応媒体20の還元反応は、たとえば、フローガスFで輸送される熱により、反応媒体20を約1000℃の温度まで加熱することによって実現される。なお、本開示において、反応媒体20を還元する温度は、1000℃より高くてもよいし、1000℃より低くてもよい。
【0056】
ここで、実施形態では、容器30が排気管10の内部に位置していてもよい。これにより、容器30内部の反応媒体20を所望の反応温度まで効率よく昇温することができる。したがって、実施形態によれば、反応媒体20の還元効率が高い。
【0057】
また、実施形態では、水蒸気供給路50において最も下流側に位置する第1熱交換器44が、排気管10において容器30よりも上流側に位置していてもよい。これにより、反応媒体20に供給されるフローガスFを、より高温の排気ガスGによって所望の反応温度まで効率よく昇温することができる。
【0058】
したがって、実施形態によれば、反応媒体20の還元効率が高い。
【0059】
また、実施形態では、水蒸気供給路50において上流側に位置する第2熱交換器42が、排気管10において容器30よりも下流側に位置していてもよい。
【0060】
これにより、排気管10において第1熱交換器44および容器30よりも下流側に位置しているものの、室温と比べて十分に高温な排気ガスGの熱を無駄にすることなく、かかる排気ガスGの熱でフローガスFを加熱することができる。したがって、実施形態によれば、反応媒体20の還元効率が高い。
【0061】
また、実施形態では、図2に示すように、反応媒体20内部でのフローガスFの向きと、排気管10における排気ガスGの向きとが向かい合うように、すなわちフローガスFと排気ガスGとが向流になるように水蒸気Vおよび排気ガスGの向きが設定されてもよい。
【0062】
これにより、反応媒体20における温度差を小さくできるため、反応媒体20の還元効率をさらに向上させることができる。
【0063】
図2の説明を続ける。実施形態に係る反応媒体20の還元処理において、容器30からは、反応媒体20の還元反応によって生成された酸素ガスと、フローガスFと、水素生成処理時に残っていた水蒸気Vとの混合ガスが排出される。なお、本開示の各図面では、酸素ガスを「O」と記載する。
【0064】
そして、容器30から排出される酸素ガスとフローガスFと水蒸気Vとの混合ガスは、第3熱交換器43において、第2熱交換器42から供給されるフローガスFと熱交換して冷却される。換言すると、第3熱交換器43において、第2熱交換器42から供給されるフローガスFは、容器30から排出される混合ガスと熱交換して加熱される。
【0065】
このように、実施形態では、第3熱交換器43において、容器30から排出される混合ガスと、第2熱交換器42から供給されるフローガスFとの間で熱交換することで、室温と比べて十分に高温な混合ガスの熱を無駄にすることなく、かかる混合ガスの熱でフローガスFを加熱することができる。さらに、実施形態では、第3熱交換器43において、容器30から排出される混合ガスを効率よく冷却することができる。
【0066】
冷却器71は、第3熱交換器43から供給される酸素ガスとフローガスFと水蒸気Vとの混合ガスをさらに冷却する。これにより、冷却器71からは酸素ガスとフローガスFと水Lとの混合流体が排出される。なお、この水Lは、反応媒体20から放出された酸素と、配管や容器に残っていた水素とが反応して発生したものであることから、発生しない場合もある。
【0067】
気液分離器72は、冷却器71から供給される酸素ガスとフローガスFと水Lとの混合流体の酸素ガスおよびフローガスFと、水Lとを分離する。そして、気液分離器72で分離された酸素ガスおよびフローガスFは、回収部73で回収される。また、気液分離器72で分離された水Lは、回収路74を通じてフローガス供給源41に戻される。これにより、気液分離器72まで到達した水Lを、次に実施される水素製造処理において再利用することができる。
【0068】
<容器の構成>
つづいて、実施形態に係る容器30の構成について、図3および図4を参照しながら説明する。図3は、実施形態に係る水素製造装置1の容器30の構成の一例を示す斜視図であり、図4は、実施形態に係る水素製造装置1の容器30の構成の一例を示す断面図である。
【0069】
図3および図4に示すように、実施形態に係る容器30は、複数のプレート31と、複数の連結部32と、複数の補強部33とを有していてもよい。プレート31は、たとえば平板状であってもよく、内部に流路31a(図7参照)を有していてもよい。
【0070】
連結部32は、たとえば筒状であってもよく、隣接するプレート31の流路31a同士を連結していてもよい。連結部32は、プレート31の長手方向における一方の端部近傍に位置していてもよく、隣接するプレート31同士の間を支持してもよい。
【0071】
補強部33は、図4に示すように、プレート31の長手方向において、連結部32が位置する側とは反対側の端部近傍に位置し、隣接するプレート31同士の間を支持する。
【0072】
また、実施形態では、図4に示すように、同じプレート31に接続されるとともに、かかるプレート31の反対面に接続される連結部32同士において、一方の連結部32が位置する側とは反対側の端部近傍に他方の連結部32が位置する。
【0073】
これにより、容器30の内部では、流路が蛇行するように位置する。また、かかる流路の上流側には、水蒸気供給路50の供給路54(図1参照)に繋がる導入部34が接続され、下流側には水素排出路60の排出路61(図1参照)に繋がる排出部35が接続される。
【0074】
また、容器30の内部で蛇行する流路に、複数の反応媒体20が充填されるように位置する。そして、隣接する反応媒体20同士の間の隙間を通り抜けるように、容器30の内部で蛇行する流路を水蒸気VやフローガスFなどの各種フローガスが通流する。さらに、容器30の外部では、隣接するプレート31同士の間の隙間を排気ガスGが通流する。
【0075】
ここまで説明したような構成にすることで、容器30では、内部の流路と隣り合う表面の面積が広い。したがって、実施形態によれば、容器30内に位置する複数の反応媒体20を、容器30の表面に接する排気ガスGによって効率よく加熱することができる。
【0076】
また、実施形態では、隣接するプレート31同士の間において、連結部32が位置しない側に補強部33を配置してもよく、このような構成を有すると、容器30の強度が高い。さらに、容器30に補強部33を設けてもよく、このような構成とすると、隣接するプレート31同士の間を通流する排気ガスGの流れをプレート31間に誘導できるため、容器30において排気ガスGの熱を受けやすくすることができる。
【0077】
また、実施形態では、プレート31の内部のみならず、連結部32の内部にも複数の反応媒体20が位置してもよい。これにより、容器30の内部に位置する反応媒体20の量を増えるため、水素の生成効率がさらに高い。
【0078】
また、実施形態では、図3に示すように、隣接するプレート31同士を同じ箇所で接続する連結部32が複数位置し、かかる複数の連結部32同士の間に隙間32aが形成されてもよい。これにより、隙間32aにも高温の排気ガスGが通流することから、連結部32内部での水素の生成効率がさらに高い。
【0079】
また、実施形態では、容器30および各種の熱交換器が金属およびセラミックスのうち少なくとも一方で構成されてもよい。そのような構造ならば、耐熱性が高いので信頼性を向上することができる。金属としては、ステンレス、インコネルを含むニッケル合金などが好ましい。セラミックスとしては、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどが好ましい。
【0080】
また、実施形態では、反応媒体20が多孔体であってもよい。これにより、反応媒体20の内部にまで水蒸気VやフローガスFを到達させることができるため、反応媒体20の酸化還元反応が起こりやすい。したがって、実施形態によれば、水素の生成効率がさらに高い。
【0081】
また、実施形態では、反応媒体20の大きさが小さいほどよい。これにより、反応媒体20を導入部34または排出部35から容易に流し込むことができる。また、実施形態では、反応媒体20は球状体であってもよい。これにより、隣接する反応媒体20同士の間に隙間が形成されるため、フローガスや水蒸気などの圧損を小さくすることができる。
【0082】
<熱交換器の構成>
つづいて、実施形態に係る熱交換器、たとえば第1熱交換器44の構成について、図5および図6を参照しながら説明する。図5は、実施形態に係る水素製造装置1の第1熱交換器44の構成の一例を示す斜視図であり、図6は、実施形態に係る水素製造装置1の第1熱交換器44の構成の一例を示す断面図である。
【0083】
なお、以下の説明では、第1熱交換器44の構成について示すが、本開示に記載のその他の熱交換器、たとえば第2熱交換器42なども同様の構成であってもよい。
【0084】
図5および図6に示すように、実施形態に係る第1熱交換器44は、複数のプレート45と、複数の連結部46と、複数の補強部47とを有していてもよい。プレート45は、たとえば平板状であってもよく、内部に流路を有していてもよい。
【0085】
連結部46は、たとえば筒状であってもよく、隣接するプレート45の流路同士を連結してもよい。連結部46は、プレート45の長手方向における一方の端部近傍に位置してもよく、隣接するプレート45同士の間を支持してもよい。
【0086】
補強部47は、図6に示すように、プレート45の長手方向において、連結部46が位置する側とは反対側の端部近傍に位置し、隣接するプレート45同士の間を支持する。
【0087】
また、実施形態では、図6に示すように、連結部46は、一つのプレート45の両面にそれぞれ接続されていてもよい。図6に示すように、一方の連結部46が一つのプレート45の上側端部に接続する場合、他方の連結部46は、一つのプレート45の下側端部に接続されていてもよい。
【0088】
このような構造とすることで、第1熱交換器44の内部では、流路が蛇行するように位置してもよい。また、かかる流路の上流側には、水蒸気供給路50の供給路53(図1参照)に繋がる導入部48が接続され、下流側には水蒸気供給路50の供給路54(図1参照)に繋がる排出部49が接続される。さらに、第1熱交換器44の外部では、隣接するプレート45同士の間の隙間を排気ガスGが通流する。
【0089】
ここまで説明したような構成にすることで、第1熱交換器44では、内部の流路と隣り合う表面の面積が広い。したがって、実施形態によれば、第1熱交換器44内を通流する各種フローガスを、第1熱交換器44の表面に接する排気ガスGによって効率よく加熱することができる。
【0090】
また、実施形態では、隣接するプレート45同士の間において、連結部46が位置しない側に補強部47を配置することで、第1熱交換器44の強度が高い。さらに、第1熱交換器44に補強部47を設けることで、隣接するプレート31同士の間を通流する排気ガスGの流れを阻害できるため、第1熱交換器44において排気ガスGの熱を受けやすくすることができる。
【0091】
また、実施形態では、図5に示すように、隣接するプレート45同士を同じ箇所で接続する連結部46が複数位置していてもよく、かかる複数の連結部46同士の間に隙間46aが形成されてもよい。これにより、隙間46aに高温の排気ガスGが通流することから、連結部46内部での各種フローガスの加熱効率がさらに高い。
【0092】
<変形例1>
つづいて、実施形態に係る水素製造装置1の各種変形例について、図7図10を参照しながら説明する。なお、以下に示す各種変形例では、実施形態と同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略することがある。
【0093】
図7は、実施形態の変形例1に係る水素製造装置1の容器30の構成の一例を示す断面図であり、図8は、実施形態の変形例1に係る水素製造装置1の容器30の構成の一例を示す平面図である。
【0094】
図7に示すように、変形例1に係る容器30は、上記の実施形態と同様に、複数のプレート31と、連結部32と、補強部33とを有する。
【0095】
また、変形例1では、プレート31、連結部32および補強部33が一体のセラミックスで構成されてもよい。プレート31、連結部32および補強部33を構成する一体のセラミックスは、たとえば、図7に示すように、所定の形状のグリーンシートを積層して積層体を形成し、かかる積層体を焼成することで形成されてもよい。
【0096】
このように、プレート31、連結部32および補強部33を一体のセラミックスで構成することで、容器30の強度が高い。
【0097】
また、変形例1では、連結部32および補強部33を構成する一体のセラミックスの内部に、加熱部36が位置してもよい。加熱部36は、たとえばヒータであり、タングステン、モリブデン、タンタル、タングステン炭化物、モリブデン炭化物、タンタル炭化物または窒化チタンなどの電熱部36aを有していてもよい。加熱部36は、この電熱部36aに電極取出部36bを介して電力が供給されることで加熱する。
【0098】
電熱部36aの両端と繋がる電極取出部36bは、たとえば、窒化チタンで構成されてもよい。なお、加熱部36は、ヒータでなくてもよく、たとえば加熱気体が供給されることで反応媒体20を加熱する機能を有するものでもよい。
【0099】
変形例1では、所望の酸化還元反応に対して排気ガスGが十分な温度でない場合でも、加熱部36を動作させて反応媒体20を追加熱することで、所望の酸化還元反応を良好に実施することができる。したがって、変形例1によれば、本開示の水素製造装置1を各種の加熱炉2に適用させることができる。
【0100】
また、変形例1では、たとえば、電熱部36aがプレート31の内部に埋め込まれるとともに、電極取出部36bが導入部34または排出部35の内部に埋め込まれてもよい。これにより、電熱部36aおよび電極取出部36bが排気ガスGに直接曝されなくなるため、電熱部36aおよび電極取出部36bの信頼性が高い。
【0101】
なお、電熱部36aおよび電極取出部36bを容器30の内部に埋め込む手法としては、所定の形状のグリーンシートを積層して積層体を形成する際に、グリーンシート上に金属ペーストを所定のパターンで塗布し、積層体を焼成することで形成することができる。
【0102】
また、変形例1では、複数の反応媒体20が、容器30の内部を流れる各種フローガスの流れに沿って配置されてもよい。これにより、水蒸気Vが複数の反応媒体20に効率よく接触するため、水素の生成効率がさらに高い。
【0103】
電熱部36aは、反応媒体20を加熱する機能を有するため、電熱部36aと反応媒体20間の距離は小さい方がよい。また、電熱部36aの熱を反応媒体20に効率よく伝えるために、電熱部36aの表面から垂直な方向から見た場合、変形例1のように、複数の反応媒体20は電熱部36aと重なっていてもよい。
【0104】
また、変形例1では、図8に示すように、加熱部36の電熱部36aにおいて、電極取出部36bに近い部位が遠い部位よりも幅広になっていてもよい。これにより、電極取出部36bに近い部位の電熱部36aの過剰な発熱を抑制できるため、電極取出部36bの温度上昇を抑制することができる。
【0105】
なお、本開示において、加熱部36の電熱部36aの平面配置は図8の例に限られず、たとえば、電熱部36aが平面視で蛇行して位置していてもよい。これにより、複数の反応媒体20を効率よく加熱することができる。
【0106】
<変形例2>
図1などに示した上記の実施形態では、水蒸気供給部40が水蒸気Vだけでなく、フローガスFも供給する例について示したが、本開示はかかる例に限られない。図9は、実施形態の変形例2に係る水素製造装置1の構成および水素製造時の動作を模式的に示す図である。
【0107】
図9に示すように、変形例2に係る水素製造装置1は、容器30に水蒸気Vを供給する水蒸気供給部40と、容器30にフローガスFを供給する流体供給部80とを備える。
【0108】
図9に示すように、水素製造時において、フローガス供給源41は、供給路51を通じて、水蒸気供給部40の第2熱交換器42に水Lを供給する。かかる水Lは、たとえば室温であるが、室温よりも高い温度に昇温されていてもよい。
【0109】
第2熱交換器42は、排気管10の内部を通流する排気ガスGの熱を利用して、フローガス供給源41から供給される水Lを加熱し、水蒸気Vを生成してもよい。変形例2に係る水素製造処理において、第2熱交換器42の近傍を流れる排気ガスGの温度は、たとえば、680℃程度であってもよい。また、第2熱交換器42で生成される水蒸気Vの温度は、たとえば、138℃程度であってもよい。
【0110】
第3熱交換器43は、水素排出路60の内部を通流するフローガスの熱を利用して、第2熱交換器42から供給される水蒸気Vをさらに加熱する。変形例2に係る水素製造処理において、第3熱交換器43の近傍を流れるフローガスの温度は、たとえば、600℃程度であってもよい。また、第3熱交換器43で加熱された水蒸気Vの温度は、たとえば、370℃程度であってもよい。
【0111】
第1熱交換器44は、排気管10の内部を通流する排気ガスGの熱を利用して、第3熱交換器43から供給される水蒸気Vをさらに加熱する。変形例2に係る水素製造処理において、第1熱交換器44の近傍を流れる排気ガスGの温度は、たとえば、1000℃程度であってもよい。また、第1熱交換器44で加熱された水蒸気Vの温度は、たとえば、600℃程度であってもよい。
【0112】
変形例2に係る流体供給部80は、流体供給源81と、第5熱交換器82と、第3熱交換器43と、第4熱交換器83と、流体供給路90とを有する。これらの部位のうち、第3熱交換器43は、水蒸気供給部40と共用されてもよい。
【0113】
流体供給部80には、流体供給源81を基準にして、流体供給路90の上流側から順に、第5熱交換器82、第3熱交換器43および第4熱交換器83が位置する。また、流体供給路90は、供給路91と、供給路92と、供給路93と、供給路94とを有する。
【0114】
供給路91は、たとえば、流体供給源81と第5熱交換器82との間を接続する配管である。供給路92は、たとえば、第5熱交換器82と第3熱交換器43との間を接続する配管である。供給路93は、たとえば、第3熱交換器43と第4熱交換器83との間を接続する配管である。供給路94は、たとえば、第4熱交換器83と容器30との間を接続する配管である。
【0115】
図9に示すように、水素製造時において、流体供給源81は、供給路91を通じて、流体供給部80の第5熱交換器82にフローガスFを供給する。かかるフローガスFは、たとえば室温であるが、室温よりも高い温度に昇温されていてもよい。
【0116】
第5熱交換器82は、排気管10において容器30よりも下流側に位置する。第5熱交換器82は、排気管10の内部を通流する排気ガスGの熱を利用して、流体供給源81から供給されるフローガスFを加熱する。
【0117】
流体供給部80における第3熱交換器43は、水素排出路60の内部を通流するフローガスの熱を利用して、第5熱交換器82から供給されるフローガスFをさらに加熱する。すなわち、変形例2の第3熱交換器43は、2系統vs1系統のマルチチャンネルの熱交換器である。
【0118】
第4熱交換器83は、排気管10において容器30よりも上流側に位置する。第4熱交換器83は、排気管10の内部を通流する排気ガスGの熱を利用して、第3熱交換器43で加熱されたフローガスFをさらに加熱する。そして、第4熱交換器83で加熱されたフローガスFは、容器30に供給される。
【0119】
変形例2に係る水素製造処理において、第4熱交換器83の近傍を流れる排気ガスGの温度は、たとえば、1000℃程度であってもよい。また、第4熱交換器83で加熱されたフローガスFの温度は、たとえば、600℃程度であってもよい。
【0120】
そして、変形例2では、第1熱交換器44が水蒸気供給路50を通じて容器30内に加熱された水蒸気Vを供給するとともに、第4熱交換器83が流体供給路90を通じて容器30内に加熱されたフローガスFを供給する。容器30内に供給される水蒸気Vは、還元された反応媒体20と接触して酸素および水素に分解される。
【0121】
すなわち、変形例2では、容器30内で還元された反応媒体20と水蒸気Vとが接触することにより、水蒸気Vに含まれる酸素が反応媒体20の酸素欠陥に取り込まれるとともに、水素が発生する。なお、変形例2に係る水素製造処理において、容器30の近傍を流れる排気ガスGの温度は、たとえば、804℃程度であってもよい。
【0122】
ここまで説明した変形例2では、容器30に水蒸気Vを供給する水蒸気供給部40と、容器30にフローガスFを供給する流体供給部80とを個別に設けることで、容器30に供給される水蒸気Vの温度とフローガスFの温度とをそれぞれ独立に調整することができる。
【0123】
したがって、変形例2によれば、反応媒体20に供給される水蒸気Vの温度とフローガスFの温度とをそれぞれ最適化できるため、水素の生成効率がさらに高い。
【0124】
また、変形例2では、容器30に水蒸気Vを供給する水蒸気供給部40と、容器30にフローガスFを供給する流体供給部80とを個別に設けることで、容器30に供給される水蒸気Vの分圧とフローガスFの分圧とをそれぞれ独立に調整することができる。
【0125】
したがって、変形例2によれば、反応媒体20に供給される水蒸気Vの分圧とフローガスFの分圧とをそれぞれ最適化できるため、水素の生成効率がさらに高い。
【0126】
また、変形例2では、水蒸気供給路50において最も下流側に位置する第1熱交換器44と、流体供給路90において最も下流側に位置する第4熱交換器83とが、排気管10において容器30よりも上流側に位置していてもよい。これにより、反応媒体20に供給される水蒸気VおよびフローガスFを、より高温の排気ガスGによって所望の反応温度まで効率よく昇温することができる。
【0127】
したがって、変形例2によれば、水素の生成効率が高い。なお、図9の例では、第4熱交換器83が第1熱交換器44よりも排気管10の上流側に位置しているが、第4熱交換器83は第1熱交換器44よりも排気管10の下流側に位置してもよい。
【0128】
また、変形例2では、水蒸気供給路50において上流側に位置する第2熱交換器42と、流体供給路90において上流側に位置する第5熱交換器82とが、排気管10において容器30よりも下流側に位置していてもよい。
【0129】
これにより、排気管10において第1熱交換器44および容器30よりも下流側に位置しているものの、室温と比べて十分に高温な排気ガスGの熱を無駄にすることなく、かかる排気ガスGの熱で室温の水Lから水蒸気Vを生成することができる。さらに、室温と比べて十分に高温な排気ガスGの熱を無駄にすることなく、かかる排気ガスGの熱でフローガスFを加熱することができる。
【0130】
したがって、変形例2によれば、水素の生成効率が高い。なお、図9の例では、第5熱交換器82が第2熱交換器42よりも排気管10の上流側に位置しているが、第5熱交換器82は第2熱交換器42よりも排気管10の下流側に位置してもよい。
【0131】
また、変形例2では、図9に示すように、反応媒体20内部での水蒸気VおよびフローガスFの向きと、排気管10における排気ガスGの向きとが向かい合うように、すなわち水蒸気VおよびフローガスFと、排気ガスGとが向流になるように向きが設定されてもよい。
【0132】
これにより、反応媒体20における温度差を小さくできるため、水素の生成効率がさらに高い。
【0133】
図9の説明を続ける。変形例2に係る水素製造処理において、容器30からは、反応媒体20によって生成された水素ガスと、反応に用いられなかった水蒸気Vと、フローガスFとの混合ガスが排出される。
【0134】
そして、容器30から排出される水素ガス、水蒸気VおよびフローガスFの混合ガスは、第3熱交換器43において、第2熱交換器42から供給される水蒸気Vおよび第5熱交換器82から供給されるフローガスFと熱交換して冷却される。
【0135】
換言すると、第3熱交換器43において、第2熱交換器42から供給される水蒸気Vと、第5熱交換器82から供給されるフローガスFとは、容器30から排出される混合ガスと熱交換して加熱される。
【0136】
このように、変形例2では、第3熱交換器43において、容器30から排出される混合ガスと、第2熱交換器42から供給される水蒸気Vおよび第5熱交換器82から供給されるフローガスFとの間で熱交換することで、室温と比べて十分に高温な混合ガスの熱を無駄にすることなく、かかる混合ガスの熱で水蒸気VおよびフローガスFを加熱することができる。
【0137】
さらに、変形例2では、第3熱交換器43において、容器30から排出される混合ガスを効率よく冷却することができる。
【0138】
冷却器71は、第3熱交換器43から供給される水素ガス、水蒸気VおよびフローガスFの混合ガスをさらに冷却する。これにより、冷却器71からは水素ガス、水LおよびフローガスFの混合流体が排出される。
【0139】
気液分離器72は、冷却器71から供給される水素ガス、水L、およびフローガスFの混合流体を分離する。そして、気液分離器72で分離された水素ガスおよびフローガスFは、回収部73で回収される。
【0140】
変形例2では、回収部73で回収されたフローガスFを流体供給源81に戻すことで、かかるフローガスFを再利用することができる。また、気液分離器72で分離された水Lは、回収路74を通じてフローガス供給源41に戻される。これにより、気液分離器72まで到達した水Lを再利用することができる。
【0141】
また、変形例2では、排気管10、水蒸気供給路50、水素排出路60および流体供給路90を構成する配管の周囲に、断熱材が備わってもよい。これにより、これらの配管から熱が逃げることを抑制できるため、水素の生成効率がさらに高い。
【0142】
図10は、実施形態の変形例2に係る水素製造装置1における反応媒体20の還元処理時の動作を模式的に示す図である。
【0143】
図10に示すように、反応媒体20の還元処理時において、流体供給部80は、上記の水素製造時と同様に、フローガスFを容器30に供給する。一方で、反応媒体20の還元処理時において、水蒸気供給部40は、水蒸気Vを容器30に供給しない。
【0144】
容器30内に供給される高熱のフローガスFは、保持する熱によって反応媒体20を還元する。反応媒体20の還元反応は、たとえば、フローガスFで輸送される熱により、反応媒体20を約1000℃の温度まで加熱することによって実現される。反応媒体20を還元する温度は、1000℃より高くてもよいし、1000℃より低くてもよい。
【0145】
変形例2に係る反応媒体20の還元処理において、容器30からは、反応媒体20の還元反応によって生成された酸素ガスと、フローガスFと、水素生成処理時に残っていた水蒸気Vとの混合ガスが排出される。
【0146】
そして、容器30から排出される酸素ガスとフローガスFと水蒸気Vとの混合ガスは、第3熱交換器43において、第5熱交換器82から供給されるフローガスFと熱交換して冷却される。換言すると、第3熱交換器43において、第5熱交換器82から供給されるフローガスFは、容器30から排出される混合ガスと熱交換して加熱される。
【0147】
冷却器71は、第3熱交換器43から供給される酸素ガスとフローガスFと水蒸気Vとの混合ガスをさらに冷却する。これにより、冷却器71からは酸素ガスとフローガスFと水Lとの混合流体が排出される。なお、この水Lは、反応媒体20から放出された酸素と、配管や容器に残っていた水素とが反応して発生したものであることから、発生しない場合もある。
【0148】
気液分離器72は、冷却器71から供給される酸素ガスとフローガスFと水Lとの混合流体を分離する。そして、気液分離器72で分離された酸素ガスおよびフローガスFは、回収部73で回収される。
【0149】
変形例2では、回収部73で回収されたフローガスFを流体供給源81に戻すことで、かかるフローガスFを再利用することができる。また、気液分離器72で分離された水Lは、回収路74を通じてフローガス供給源41に戻される。これにより、気液分離器72まで到達した水Lを、次に実施される水素製造処理において再利用することができる。
【0150】
実施形態に係る水素製造装置1は、反応媒体20と、容器30と、水蒸気供給部40と、排気管10と、を備える。容器30は、反応媒体20を収容する。水蒸気供給部40は、反応媒体20に水蒸気供給路50を通じて水蒸気Vを供給する。排気管10は、加熱炉2から加熱された排気ガスGを排出する。また、容器30は、排気管10内に位置する。これにより、水素の生成効率が高い。
【0151】
また、実施形態に係る水素製造装置1において、水蒸気供給部40は、容器30よりも排気管10の上流側に位置する第1熱交換器44を有する。これにより、水素の生成効率が高い。
【0152】
また、実施形態に係る水素製造装置1において、水蒸気供給部40は、容器30よりも排気管10の下流側に位置する第2熱交換器42を有し、水蒸気供給路50において、第2熱交換器42は第1熱交換器44よりも上流側に位置する。これにより、水素の生成効率が高い。
【0153】
また、実施形態に係る水素製造装置1において、水蒸気供給部40は、水蒸気供給路50において第1熱交換器44と第2熱交換器42との間に位置する第3熱交換器43を有する。また、第3熱交換器43は、容器30から水素ガスを排出する水素排出路60に位置する。これにより、水素の生成効率が高い。
【0154】
また、実施形態に係る水素製造装置1において、容器30は、セラミックスからなる。これにより、容器30の信頼性を向上させることができる。
【0155】
また、実施形態に係る水素製造装置1において、容器30は、反応媒体20を加熱する加熱部36を有する。これにより、各種の加熱炉2に本開示の水素製造装置1を適用させることができる。
【0156】
また、実施形態に係る水素製造装置1において、水蒸気供給路50からは、フローガスFも供給され、フローガスFは、非酸化性ガスである。これにより、水素の生成効率が高い。
【0157】
また、実施形態に係る水素製造装置1は、反応媒体20に流体供給路90を通じてフローガスFを供給する流体供給部80、を備える。また、フローガスFは、非酸化性ガスである。これにより、水素の生成効率がさらに高い。
【0158】
また、実施形態に係る水素製造装置1において、流体供給部80は、容器30よりも排気管10の上流側に位置する第4熱交換器83を有する。これにより、水素の生成効率が高い。
【0159】
また、実施形態に係る水素製造装置1において、流体供給部80は、容器30よりも排気管10の下流側に位置する第5熱交換器82を有する。また、流体供給路90において、第5熱交換器82は第4熱交換器83よりも上流側に位置する。これにより、水素の生成効率が高い。
【0160】
また、実施形態に係る水素製造装置1において、フローガスFは、Arガス、Nガス、COガスの少なくとも一種を含有する。これにより、水素の生成効率が高い。
【0161】
以上、本開示の各実施形態について説明したが、本開示は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0162】
今回開示された各実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した各実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の各実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0163】
1 水素製造装置
2 加熱炉
10 排気管
20 反応媒体
30 容器
36 加熱部
40 水蒸気供給部
42 第2熱交換器
43 第3熱交換器
44 第1熱交換器
50 水蒸気供給路
60 水素排出路
80 流体供給部
82 第5熱交換器
83 第4熱交換器
90 流体供給路
F フローガス
G 排気ガス
L 水
V 水蒸気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10