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特開2023-176699位相差層付偏光板および画像表示装置
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  • 特開-位相差層付偏光板および画像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176699
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】位相差層付偏光板および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231206BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20231206BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20231206BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231206BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20231206BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20231206BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20231206BHJP
   B29C 63/02 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G02B5/30
H01L27/32
H05B33/02
H05B33/14 A
G09F9/00 313
G02F1/1335 510
G02F1/13363
B29C63/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089129
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150212
【弁理士】
【氏名又は名称】上野山 温子
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 裕太
(72)【発明者】
【氏名】徐 菁▲王番▼
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅人
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
3K107
4F211
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB11
2H149BA02
2H149BA12
2H149BA13
2H149CA02
2H149DA02
2H149DA12
2H149DA18
2H149DA27
2H149EA02
2H149EA06
2H149EA12
2H149EA19
2H149EA22
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA12Z
2H149FA13Y
2H149FA23Y
2H149FA26Y
2H149FA58Y
2H149FA66
2H149FA68
2H149FC04
2H149FD05
2H149FD33
2H149FD35
2H149FD47
2H291FA22X
2H291FA30X
2H291FA40X
2H291FA94X
2H291FA95
2H291FA95X
2H291FB02
2H291FB05
2H291FC07
2H291PA04
2H291PA07
2H291PA44
2H291PA53
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC21
3K107CC31
3K107CC45
3K107EE26
3K107FF02
3K107FF06
3K107FF15
4F211AA01
4F211AA10
4F211AA19
4F211AA24
4F211AA28
4F211AA29
4F211AA39
4F211AA44
4F211AB09
4F211AC03
4F211AD08
4F211AD11
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH33
4F211AR20
4F211TA03
4F211TC01
4F211TD11
4F211TH24
4F211TH27
4F211TN45
5G435AA12
5G435AA13
5G435AA14
5G435BB05
5G435BB12
5G435FF05
5G435GG42
5G435HH02
5G435HH18
(57)【要約】
【課題】高温高湿環境下での耐久性が向上された位相差層付偏光板を提供すること。
【解決手段】偏光子を含む偏光板と、第1接着層と、第1位相差層と、第2接着層と、第2位相差層と、粘着剤層と、をこの順に有し、該第1位相差層と該第2接着層との密着力が、0.5N/25mm以上であり、該第2接着層の23℃での引張弾性率が、1.0×10Pa以上であり、該粘着剤層の110℃での貯蔵弾性率が、5.0×10Pa以上である、位相差層付偏光板。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子を含む偏光板と、第1接着層と、第1位相差層と、第2接着層と、第2位相差層と、粘着剤層と、をこの順に有し、
該第1位相差層と該第2接着層との密着力が、0.5N/25mm以上であり、
該第2接着層の23℃での引張弾性率が、1.0×10Pa以上であり、
該粘着剤層の110℃での貯蔵弾性率が、5.0×10Pa以上である、
位相差層付偏光板。
【請求項2】
前記偏光板が、前記偏光子の少なくとも一方の側に配置された保護層をさらに含む、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項3】
前記第1接着層および前記第2接着層がそれぞれ独立して、接着剤層または粘着剤層である、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項4】
前記第1接着層の110℃での貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以上である、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項5】
前記第1位相差層が、樹脂フィルムの延伸フィルムであり、
前記第1位相差層の厚みが、40μm以下であり、
前記第1位相差層のRe(550)が、100nm~190nmであり、Re(450)/Re(550)が、0.8以上1未満であり、
前記第1位相差層の遅相軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度が、40°~50°である、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項6】
前記第2位相差層が、nz>nx=nyの屈折率特性を示す、請求項5に記載の位相差層付偏光板。
【請求項7】
帯電防止機能を有する層を含む、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の位相差層付偏光板を有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差層付偏光板および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。これらの画像表示装置には、一般に、光学補償、外光反射防止等の目的で、偏光板と位相差層とを一体化した位相差層付偏光板が広く用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、画像表示装置の使用環境の多様化に伴い、位相差層付偏光板に対しても高温高湿環境下での耐久性が要求される。このような高温高湿環境下での耐久性に関して、位相差層付偏光板では、位相差ムラ、クラック等の問題が生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-013705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主たる目的は、高温高湿環境下での耐久性が向上された位相差層付偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の[1]~[8]の位相差層付偏光板または画像表示装置が提供される。
[1]偏光子を含む偏光板と、第1接着層と、第1位相差層と、第2接着層と、第2位相差層と、粘着剤層と、をこの順に有し、該第1位相差層と該第2接着層との密着力が、0.5N/25mm以上であり、該第2接着層の23℃での引張弾性率が、1.0×10Pa以上であり、該粘着剤層の110℃での貯蔵弾性率が、5.0×10Pa以上である、位相差層付偏光板。
[2]上記偏光板が、上記偏光子の少なくとも一方の側に配置された保護層をさらに含む、[1]に記載の位相差層付偏光板。
[3]上記第1接着層および上記第2接着層がそれぞれ独立して、接着剤層または粘着剤層である、[1]または[2]に記載の位相差層付偏光板。
[4]上記第1接着層の110℃での貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の位相差層付偏光板。
[5]上記第1位相差層が、樹脂フィルムの延伸フィルムであり、上記第1位相差層の厚みが、40μm以下であり、上記第1位相差層のRe(550)が、100nm~190nmであり、Re(450)/Re(550)が、0.8以上1未満であり、上記第1位相差層の遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度が、40°~50°である、[1]~[4]のいずれかに記載の位相差層付偏光板。
[6]上記第2位相差層が、nz>nx=nyの屈折率特性を示す、[1]~[5]のいずれかに記載の位相差層付偏光板。
[7]帯電防止機能を有する層を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の位相差層付偏光板。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の位相差層付偏光板を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、第1位相差層と第2位相差層とを貼り合わせるための第2接着層が第1位相差層に対して高い密着力を有するとともに、高い弾性率を有し、かつ、第2位相差層の外側に高い弾性率を有する粘着剤層を設けることにより、高温高湿環境下での耐久性が向上された位相差層付偏光板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態における位相差層付偏光板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚み、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。
【0010】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば、「45°」は、時計回りに45°および反時計回りに45°を意味する。
【0011】
A.位相差層付偏光板
本発明の実施形態による位相差層付偏光板は、偏光子を含む偏光板と、第1接着層と、第1位相差層と、第2接着層と、第2位相差層と、粘着剤層と、をこの順に有し、該第1位相差層と該第2接着層との密着力が、0.5N/25mm以上であり、該第2接着層の23℃での引張弾性率が、1.0×10Pa以上であり、該粘着剤層の110℃での貯蔵弾性率が、5.0×10Pa以上である。
【0012】
A-1.位相差層付偏光板の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。位相差層付偏光板100は、偏光板10と、第1位相差層20と、第2位相差層30と、粘着剤層40と、をこの順に有する。偏光板10は、偏光子12と、偏光子12の第1位相差層20が配置された側と反対側に配置された第1保護層14aと、第1位相差層20が配置された側に配置された第2保護層14bと、を有する。偏光板10と第1位相差層20とは、第1接着層50を介して貼り合わせられている。また、第1位相差層20と第2位相差層30とは、第2接着層60を介して貼り合わせられている。
【0013】
本発明の実施形態による位相差層付偏光板は、図1に示す構成に限定されない。具体的には、第1保護層14aおよび第2保護層14bのいずれか一方、例えば第2保護層14bは、目的に応じて省略されてもよい。また、位相差層付偏光板100の粘着剤層40側表面には、はく離ライナー(図示せず)が仮着されていてもよい。はく離ライナーは、位相差層付偏光板100が使用に供されるまで粘着剤層40を保護し得る。実用的には、位相差層付偏光板100は、粘着剤層40により、有機ELパネル、液晶パネル等の画像表示パネルに貼り付け可能とされる。
【0014】
1つの実施形態において、位相差層付偏光板は、帯電防止機能を有する層を含む。帯電防止機能を有する層は、上記各層とは別の層として位相差層付偏光板に含まれてもよく、あるいは、上記各層の少なくとも1つに帯電防止性(代表的には、導電性)を持たせてもよい。位相差層付偏光板は、帯電防止機能を有する層を2以上含んでもよい。
【0015】
位相差層付偏光板は、長尺状であってもよいし、枚葉状であってもよい。ここで、「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状をいい、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状をいう。長尺状の位相差層付偏光板は、ロール状に巻回可能である。
【0016】
位相差層付偏光板の粘着剤層を除いた厚み(偏光板から第2位相差層までの厚み)は、例えば10μm~200μm、好ましくは30μm~150μm、より好ましく50μm~110μmである。
【0017】
A-2.偏光板
偏光板10は、代表的には偏光子とその片側または両側に配置された保護層とを含む。好ましくは、偏光板10は、偏光子12と偏光子12の第1位相差層20が配置された側と反対側に配置された第1保護層14aとを含む。偏光子12の第1位相差層20側に配置された第2保護層14bは目的に応じて省略され得る。1つの実施形態において、偏光子と保護層とは、接着層(代表的には、接着剤層)を介して貼り合わせられている。例えば、偏光子と保護層とは、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて貼り合わせられている。別の実施形態において、偏光子と保護層とは、接着層を介さずに密着して積層されている。
【0018】
A-2-1.偏光子
偏光子は、代表的には、二色性物質(例えば、ヨウ素)を含む樹脂フィルムである。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムが挙げられる。
【0019】
偏光子の厚みは、好ましくは18μm以下であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは12μm以下である。一方、偏光子の厚みは、好ましくは1μm以上である。
【0020】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、例えば41.5%~46.0%であり、好ましくは42.0%~46.0%であり、より好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0021】
偏光子は、任意の適切な方法で作製し得る。具体的には、偏光子は、単層の樹脂フィルムから作製してもよく、二層以上の積層体を用いて作製してもよい。
【0022】
上記単層の樹脂フィルムから偏光子を作製する方法は、代表的には、樹脂フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理と延伸処理とを施すことを含む。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムが用いられる。当該方法は、不溶化処理、膨潤処理、架橋処理等をさらに含んでいてもよい。このような製造方法は、当業界で周知慣用であるので、詳細な説明は省略する。
【0023】
上記積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、樹脂基材と樹脂フィルムまたは樹脂層(代表的には、PVA系樹脂層)との積層体を用いて作製され得る。具体的には、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とPVA系樹脂とを含むPVA系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成し得る。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解等の問題を防止することができ、高い光学特性を達成し得る。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、PVA分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得、高い光学特性を達成し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、高い光学特性を達成し得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に保護層を積層して偏光板が得られ得る。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0024】
A-2-2.第1保護層
第1保護層は、例えば、偏光子の保護層として使用できる任意の適切な樹脂フィルムで形成され得る。当該樹脂フィルムの主成分となる樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、アセテート系樹脂等が挙げられる。
【0025】
位相差層付偏光板は、代表的には、画像表示装置(例えば、有機EL表示装置)の視認側に配置され、第1保護層は視認側に配置される。したがって、第1保護層には、必要に応じて、ハードコート(HC)処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0026】
第1保護層の厚みは、好ましくは5μm~80μm、より好ましくは10μm~40μm、さらに好ましくは15μm~35μmである。なお、上記表面処理が施されている場合、第1保護層の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0027】
A-2-3.第2保護層
第2保護層は、例えば、偏光子の保護層として使用できる任意の適切な樹脂フィルムで形成され得る。樹脂フィルムで形成される場合の第2保護層については、第1保護層と同様の説明を適用することができる。また例えば、第2保護層は、樹脂を含む有機溶媒溶液の塗布膜の固化層または硬化層であり得る。第2保護層が樹脂を含む有機溶媒溶液の塗布膜の固化層または硬化層であることにより、偏光子との密着性が向上し得る。
【0028】
1つの実施形態において、固化層または硬化層を形成する樹脂(ベースポリマー)のガラス転移温度(Tg)が85℃以上であり、かつ、重量平均分子量Mwが25000以上であり得る。樹脂のTgおよびMwがこのような範囲であることにより、厚みが非常に薄いにもかかわらず、高温高湿環境下における優れた耐久性を実現することができる。樹脂のTgは、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。Tgは、例えば200℃以下であり得る。また、樹脂のMwは、好ましくは30000以上であり、より好ましくは35000以上であり、さらに好ましくは40000以上である。Mwは、例えば150000以下であり得る。
【0029】
樹脂としては、有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または硬化物(例えば、熱硬化物)を形成可能できる限りにおいて任意の適切な樹脂を用いることができる。上記のようなTgおよびMwを有する熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂がより好ましい。樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂とエポキシ系樹脂とを組み合わせて用いてもよい。
【0031】
アクリル系樹脂は、代表的には、直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体由来の繰り返し単位を主成分として含有する。アクリル系樹脂は、目的に応じた任意の適切な共重合単量体由来の繰り返し単位を含有し得る。共重合単量体(共重合モノマー)としては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有ビニル系モノマーが挙げられる。モノマー単位の種類、数、組み合わせおよび共重合比等を適切に設定することにより、上記所定のMwを有するアクリル系樹脂が得られ得る。アクリル系樹脂の具体例としては、特開2021-117484号公報の[0034]~[0056]に記載のホウ素含有アクリル系樹脂、ラクトン環等含有アクリル系樹脂が挙げられる。
【0032】
エポキシ樹脂としては、好ましくは芳香族環を有するエポキシ樹脂が用いられる。芳香族環を有するエポキシ樹脂をエポキシ樹脂として用いることにより、保護層と偏光子との密着性が向上し得る。さらに、保護層に隣接して粘着剤層を配置した場合に、粘着剤層の投錨力が向上し得る。芳香族環を有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノール等の多官能型のエポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が用いられる。エポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
第2保護層は、上記樹脂の有機溶媒溶液を塗布して塗布膜を形成し、当該塗布膜を固化または熱硬化させることにより形成され得る。有機溶媒としては、アクリル系樹脂またはエポキシ樹脂を溶解または均一に分散し得る任意の適切な有機溶媒を用いることができる。有機溶媒の具体例としては、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが挙げられる。溶液の樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部~20重量部である。このような樹脂濃度であれば、均一な塗布膜を形成することができる。
【0034】
溶液は、任意の適切な基材に塗布してもよく、偏光子に塗布してもよい。溶液を基材に塗布する場合には、基材上に形成された塗布膜の固化または硬化物(樹脂層)が偏光子に転写される。溶液を偏光子に塗布する場合には、塗布膜を乾燥(固化)または硬化させることにより、偏光子上に保護層が直接形成される。好ましくは、溶液は偏光子に塗布され、偏光子上に保護層が直接形成される。このような構成であれば、転写に必要とされる接着剤層または粘着剤層を省略することができるので、偏光板をさらに薄くすることができる。溶液の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。具体例としては、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)が挙げられる。
【0035】
溶液の塗布膜を固化または熱硬化させることにより、保護層が形成され得る。固化または熱硬化の加熱温度は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは50℃~70℃である。加熱温度がこのような範囲であれば、偏光子に対する悪影響を防止することができる。加熱時間は、加熱温度に応じて変化し得る。加熱時間は、例えば1分~10分であり得る。
【0036】
第2保護層(実質的には、上記樹脂の有機溶媒溶液)は、目的に応じて任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。添加剤の具体例としては、紫外線吸収剤;レベリング剤;ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーまたは無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;難燃剤等が挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、添加量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0037】
樹脂を含む有機溶媒溶液の塗布膜の固化層または硬化層である場合の第2保護層の厚みは、好ましくは0.05μm~10μmであり、より好ましくは0.08μm~5μmであり、さらに好ましくは0.1μm~1μmであり、特に好ましくは0.2μm~0.7μmである。
【0038】
A-3.第1位相差層
第1位相差層20は、目的に応じて任意の適切な光学的特性および/または機械的特性を有し得る。第1位相差層は、代表的には遅相軸を有する。1つの実施形態においては、第1位相差層20の遅相軸と偏光子12の吸収軸とのなす角度θは、例えば40°~50°であり、好ましくは42°~48°であり、より好ましくは約45°である。角度θがこのような範囲であれば、第1位相差層をλ/4板とすることにより、非常に優れた円偏光特性(結果として、非常に優れた反射防止特性)を有する位相差層付偏光板が得られ得る。
【0039】
第1位相差層は、好ましくは屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。1つの実施形態において、第1位相差層は、λ/4板として機能し得る。この場合、第1位相差層の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、好ましくは110nm~170nmであり、より好ましくは130nm~160nmである。なお、ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。
【0040】
第1位相差層のNz係数は、好ましくは0.9~3、より好ましくは0.9~2.5、さらに好ましくは0.9~1.5、特に好ましくは0.9~1.3である。このような関係を満たすことにより、得られる位相差層付偏光板を画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成し得る。
【0041】
第1位相差層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。1つの実施形態においては、第1位相差層は、逆分散波長特性を示す。この場合、位相差層のRe(450)/Re(550)は、例えば0.8以上1未満であり、好ましくは0.8以上0.95以下である。このような構成であれば、非常に優れた反射防止特性を実現することができる。
【0042】
第1位相差層は、光弾性係数の絶対値が好ましくは2×10-11/N以下、より好ましくは2.0×10-13/N~1.5×10-11/N、さらに好ましくは1.0×10-12/N~1.2×10-11/Nの樹脂を含む。光弾性係数の絶対値がこのような範囲であれば、加熱時の収縮応力が発生した場合に位相差変化が生じにくい。その結果、得られる画像表示装置の熱ムラが良好に防止され得る。
【0043】
第1位相差層は、代表的には、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成される。第1位相差層の厚みは、例えば70μm以下であり、好ましくは60μm以下であり、より好ましくは10μm~50μmであり、さらに好ましくは20μm~45μmである。第1位相差層の厚みがこのような範囲であれば、良好な曲げ性を確保でき、フレキシブル用途への適応が可能となる。
【0044】
第1位相差層は、上記の特性を満足し得る任意の適切な樹脂フィルムで構成され得る。そのような樹脂の代表例としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて(例えば、ブレンド、共重合)用いてもよい。第1位相差層が逆分散波長特性を示す樹脂フィルムで構成される場合、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)が好適に用いられ得る。
【0045】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、第1位相差層に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂および第1位相差層の形成方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0046】
1つの実施形態において、第1位相差層の第2接着層側表面に有機溶剤を接触させ、次いで、当該接触面に第2接着層を設けることにより、第1位相差層の第2接着層側に、第2接着層側に向かって組成が連続的に変化する相溶領域を形成することができる。第1位相差層の構成成分と第2接着層の構成成分とが相溶した相溶領域の形成により、第1位相差層と第2位相差層との接着性を向上し得る。一方で、第1位相差層への水分の浸入を厳しく抑制する観点からは、相溶領域を設けないことが好ましい。よって、相溶領域は、第1位相差層と第2位相差層との密着力、位相差層付き偏光板の用途または使用環境等を考慮し、必要に応じて形成されることが好ましい。相溶領域の形成方法の詳細については、特開2019-56820号公報に記載されており、その記載は本明細書に参考として援用される。
【0047】
A-4.第2位相差層
第2位相差層30は、代表的には、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す、いわゆるポジティブCプレートであり得る。第2位相差層としてポジティブCプレートを用いることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。
【0048】
第2位相差層の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-50nm~-300nm、より好ましくは-70nm~-250nm、さらに好ましくは-90nm~-200nm、特に好ましくは-100nm~-180nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。すなわち、第2位相差層の面内位相差Re(550)は10nm未満であり得る。
【0049】
nz>nx=nyの屈折率特性を有する第2位相差層は、任意の適切な材料で形成され得る。第2位相差層は、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムからなる。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであっても液晶ポリマーであってもよい。当該液晶化合物および当該位相差層の形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。この場合、第2位相差層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは0.5μm~8μmであり、さらに好ましくは0.5μm~5μmである。
【0050】
A-5.粘着剤層
粘着剤層40は、110℃での貯蔵弾性率が、代表的には5.0×10Pa以上であり、好ましくは5.0×10Pa~1.0×10Pa、より好ましくは5.0×10Pa~6.0×10Paである。このような貯蔵弾性率を有する粘着剤層を用いることにより、高温高湿下における第1位相差層の熱収縮、水分吸収による膨潤等を抑制することができ、結果として、本発明の効果が好適に得られ得る。
【0051】
粘着剤層は、23℃での貯蔵弾性率が、例えば0.9×10Pa以上であり、好ましくは1.0×10Pa~5.0×10Paで、より好ましくは1.0×10Pa~2.0×10Paである。このような貯蔵弾性率を有する粘着剤層を用いることにより、高温高湿下における第1位相差層の熱収縮、水分吸収による膨潤等を抑制することができ、結果として、本発明の効果がより好適に得られ得る。
【0052】
粘着剤層を構成する粘着剤は、代表的には、ベースポリマーとして、(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマーまたはゴム系ポリマーを含有し、好ましくは(メタ)アクリル系ポリマーを含有する。ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーが用いられる場合、粘着剤層は、例えば(メタ)アクリル系ポリマーを含有する粘着剤から形成される。
【0053】
(メタ)アクリル系ポリマーは、炭素数1~30のアルキル基を側鎖に有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有することが好ましい。アルキル基は、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、n-トリデシル(メタ)アクリレート、およびn-テトラデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、n-ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)等の長鎖アルキル基(例えば、炭素数6~30のアルキル基)を側鎖に有するアルキル(メタ)アクリレートを用いることもできる。アルキル(メタ)アクリレートは、1種または2種以上用いてもよい。
【0054】
(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマーにおけるアルキル(メタ)アクリレートの含有割合は、例えば50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。当該含有割合の上限は、例えば99.9重量%以下であり得る。
【0055】
(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位以外の構成単位を有していてもよい。当該構成単位は、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能なモノマー(共重合モノマー)に由来する。(メタ)アクリル系ポリマーは、共重合モノマーに由来する構成単位を1種または2種以上有していてもよい。
【0056】
共重合モノマーの例としては、芳香環含有モノマーが挙げられる。芳香環含有モノマーは、芳香環含有(メタ)アクリル系モノマーであってもよい。芳香環含有モノマーの具体例としては、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化β-ナフトール(メタ)アクリレート、およびビフェニル(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマーにおける芳香環含有モノマーの含有割合は、例えば0重量%~50重量%であり、1重量%~30重量%、5重量%~25重量%、8重量%~20重量%、10重量%~19重量%、さらには13重量%~18重量%であってもよい。
【0057】
共重合モノマーの別の例としては、水酸基含有モノマーが挙げられる。水酸基含有モノマーは、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーであってもよい。水酸基含有モノマーの具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、および12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ならびに(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレートが挙げられる。(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマーにおける水酸基含有モノマーの含有割合は、例えば5重量%以下であり、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、さらには0.1重量%以下であってよく、0重量%であってもよい。
【0058】
共重合モノマーの別の例としては、以下の化学式(1)に示す(メタ)アクリレートが挙げられる。式(1)のRは、アルキル基である。アルキル基は、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。Rは、好ましくは直鎖状のアルキル基である。Rの例は、メチル基およびエチル基である。式(1)のnは、1~15の整数である。
【0059】
【化1】
【0060】
式(1)に示す(メタ)アクリレートの具体例としては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、およびメトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。式(1)の(メタ)アクリレートを用いることにより、粘着剤層に帯電防止剤を配合した場合に、少ない配合量で表面抵抗値が小さい粘着剤層を実現することができる。(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマーにおける式(1)の(メタ)アクリレートの含有割合は、例えば5重量%~95重量%であり、10重量%~90重量%、20重量%~80重量%、または25重量%~75重量%であってよい。
【0061】
共重合モノマーは、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマーであってもよい。カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、およびクロトン酸が挙げられる。アミノ基含有モノマーの具体例としては、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、およびN,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。アミド基含有モノマーの具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトメチル(メタ)アクリルアミド、およびメルカプトエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、およびN-(メタ)アクリロイルピロリジン等のN-アクリロイル複素環モノマー;ならびにN-ビニルピロリドンおよびN-ビニル-ε-カプロラクタム等のN-ビニル基含有ラクタム系モノマーが挙げられる。
【0062】
共重合モノマーは、多官能性モノマーであってもよい。多官能性モノマーとしては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート)、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、およびウレタンアクリレート等の多官能アクリレート;ならびにジビニルベンゼンである。多官能アクリレートは、好ましくは1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0063】
(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマーにおけるカルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、および多官能性モノマーの合計含有割合は、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下である。当該合計含有割合の下限は、例えば0.01重量%以上であり、1重量%以上、2重量%以上、または3重量%以上であってもよい。(メタ)アクリル系ポリマーは、多官能性モノマーに由来する構成単位を含まなくてもよい。
【0064】
その他の共重合モノマーとしては、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のエポキシ基含有モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有モノマー;リン酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、および(メタ)アクリル酸イソボルニル等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、およびイソブチレン等のオレフィン類、またはジエン類;ビニルアルキルエーテル等のビニルエーテル類;ならびに塩化ビニルが挙げられる。
【0065】
(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマーにおける上記その他の共重合モノマーの合計含有割合は、例えば30重量%以下であり、好ましくは10重量%以下であり、0重量%であってもよい。
【0066】
(メタ)アクリル系ポリマーは、上述した1種または2種以上のモノマーを公知の方法により重合して形成できる。モノマーと、モノマーの部分重合物(オリゴマー)とを重合してもよい。
【0067】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、例えば、100万~280万であり、粘着剤層の耐久性および耐熱性の観点からは、好ましくは120万以上、より好ましくは140万以上である。重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)の測定に基づく値(ポリスチレン換算)として求められる。
【0068】
粘着剤における(メタ)アクリル系ポリマーの含有割合は、固形分比で、例えば50重量%以上であり、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。含有割合の上限は、例えば99.9重量%以下、好ましくは99.8重量%以下であり得る。
【0069】
粘着剤は、添加剤をさらに含有していてもよい。添加剤の具体例としては、シランカップリング剤、架橋剤、酸化防止剤、着色剤、顔料等の粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物が挙げられる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。添加剤の種類、数、組み合わせ、含有量等は、目的に応じて任意の適切な値に設定され得る。
【0070】
架橋剤としては、有機系架橋剤および多官能性金属キレートが挙げられる。有機系架橋剤の例は、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、およびイミン系架橋剤である。架橋剤は、好ましくは過酸化物系架橋剤、イソシアネート系架橋剤である。架橋剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、過酸化物系架橋剤とイソシアネート系架橋剤とを併用することができる。
【0071】
粘着剤における架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば0.01重量部~10重量部であり、好ましくは0.1重量部~5重量部、より好ましくは0.1重量部~3重量部である。
【0072】
シランカップリング剤としては、代表的には、官能基含有シランカップリング剤が挙げられる。官能基としては、例えば、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、スチリル基、アセトアセチル基、ウレイド基、チオウレア基、(メタ)アクリル基、複素環基、酸無水物基およびこれらの組み合わせが挙げられる。シランカップリング剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
粘着剤におけるシランカップリング剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば0.01重量部~5重量部であり、好ましくは0.01重量部~3重量部、より好ましくは0.01重量部~1重量部である。
【0074】
粘着剤層の厚みは、代表的には1μm~50μmであり、好ましくは5μm~40μm、より好ましくは10μm~30μmである。
【0075】
A-6.第1接着層
第1接着層50は、偏光板10と第1位相差層20とを貼り合わせるための接着層であり、代表的には、偏光板10および第1位相差層20と直接接している。
【0076】
第1接着層の110℃での貯蔵弾性率は、好ましくは1.0×10Pa以上であり、好ましくは2.0×10Pa~1.0×10Pa、より好ましくは1.0×10Pa~1.0×10Pa、さらに好ましくは2.0×10Pa~5.0×10Paである。このような貯蔵弾性率を有する第1接着層は、高温高湿下における第1位相差層の熱収縮、水分吸収による膨潤等の抑制に寄与することができ、結果として、本発明の効果がより好適に得られ得る。
【0077】
第1接着層の23℃での貯蔵弾性率は、好ましくは1.0×10Pa以上であり、好ましくは5.0×10Pa~1.0×10Paで、より好ましくは5.0×10Pa~5.0×10Pa、さらに好ましくは1.0×10Pa~2.0×10Paである。このような貯蔵弾性率を有する第1接着層は、高温高湿下における第1位相差層の熱収縮、水分吸収による膨潤等の抑制に寄与することができ、結果として、本発明の効果がより好適に得られ得る。
【0078】
第1接着層は、代表的には、接着剤層または粘着剤層である。寸法変化抑制の観点から、粘着剤層が好ましく用いられ得る。
【0079】
粘着剤層を構成する粘着剤としては、任意の適切な粘着剤が採用され得る。例えば、A-5項に記載の粘着剤層を構成する粘着剤と同様の説明を適用することができる。粘着剤層の貯蔵弾性率の調整方法としては、例えば、ベースポリマーの種類の選択(モノマーの種類および組成等)、分子量の調整、および配合量の調整;架橋剤、シランカップリング剤等のベースポリマー以外の成分の種類の選択および配合量の調整;等が挙げられる。
【0080】
粘着剤層である第1接着層の厚みは、代表的には1μm~50μmであり、好ましくは5μm~40μm、より好ましくは5μm~20μmである。
【0081】
接着剤層を構成する接着剤としては、任意の適切な接着剤が採用され得る。接着剤としては、代表的には活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤が挙げられる。また、硬化メカニズムの観点からは、活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、ラジカル硬化型、カチオン硬化型、アニオン硬化型、ラジカル硬化型とカチオン硬化型とのハイブリッドが挙げられる。代表的には、ラジカル硬化型の紫外線硬化型接着剤が用いられ得る。汎用性に優れ、および、特性の調整が容易だからである。
【0082】
接着剤は、代表的には、硬化成分と光重合開始剤とを含有する。硬化成分としては、代表的には、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基等の官能基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーが挙げられる。硬化成分の具体例としては、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート、γ-ブチロラクトンアクリレート、アクリロイルモルホリン、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン、N-メチルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミドが挙げられる。これらの硬化成分は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0083】
好ましくは、接着剤は、複素環を有する硬化成分を含む。複素環を有する硬化成分としては、例えば、アクリロイルモルホリン、γ-ブチロラクトンアクリレート、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン、N-メチルピロリドンが挙げられる。より好ましい硬化成分は、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトンおよびアクリロイルモルホリンであり、密着力を向上する観点で特に好ましい硬化成分は、アクリロイルモルホリンである。複素環を有する硬化成分は、硬化成分(後述のオリゴマー成分が存在する場合には硬化成分とオリゴマー成分との合計)100重量部に対して、好ましくは50重量部以上、より好ましくは60重量部以上、さらに好ましくは70重量部~95重量部の割合で接着剤に含有され得る。アクリロイルモルホリンは、硬化成分(オリゴマー成分が存在する場合には硬化成分とオリゴマー成分との合計)100重量部に対して、好ましくは5重量部~60重量部、より好ましくは10重量部~50重量部の割合で接着剤に含有され得る。
【0084】
接着剤は、上記の硬化成分に加えてオリゴマー成分をさらに含有してもよい。オリゴマー成分を用いることにより、硬化前の接着剤の粘度を低減し、操作性を高めることができる。オリゴマー成分の代表例としては、(メタ)アクリル系オリゴマーが挙げられる。(メタ)アクリル系オリゴマーを構成する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸(炭素数1~20)アルキルエステル類、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート等)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレート等)、多環式(メタ)アクリレート(例えば、2-イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5-ノルボルネン-2-イル-メチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート等)、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメチル-ブチル(メタ)メタクリレート等)、アルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等)、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等)、ハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート等)、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)が挙げられる。(メタ)アクリル酸(炭素数1~20)アルキルエステル類の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0085】
光重合開始剤は、業界で周知の光重合開始剤が業界に周知の配合量で用いられ得るので、詳細な説明は省略する。
【0086】
接着剤層である第1接着層の厚み(硬化後)は、代表的には0.1μm~5μmであり、好ましくは0.2μm~4μm、より好ましくは0.3μm~3μmである。
【0087】
A-7.第2接着層
第2接着層60は、第1位相差層20と第2位相差層30とを貼り合わせるための接着層であり、代表的には、第1位相差層20および第2位相差層30と直接接している。
【0088】
第2接着層の23℃での引張弾性率は、例えば1.0×10Pa以上、好ましくは1.0×10Pa~2.0×10Pa、より好ましくは1.2×10Pa~1.5×10Paである。このような引張弾性率を有する第2接着層は、高温高湿下における第1位相差層の熱収縮および水分吸収による膨潤の抑制に寄与することができ、また、クラックの伸展を防止し得る。その結果として、高温高湿環境下での耐久性が向上された位相差層付偏光板が得られ得る。
【0089】
第2接着層の110℃での引張弾性率は、例えば1.0×10Pa以上であり、好ましくは1.0×10Pa以上であり、より好ましくは2.0×10Pa以上、さらに好ましくは2.0×10Pa~1.0×1011Pa、さらにより好ましくは2.0×10Pa~1.0×1010Paである。このような引張弾性率を有する第2接着層は、高温高湿下における第1位相差層の熱収縮および水分吸収による膨潤の抑制に寄与することができ、また、クラックの伸展を防止し得る。
【0090】
第1位相差層と第2接着層との密着力は、代表的には0.1N/25mm以上、例えば0.5N/25mm以上、好ましくは0.5N/25mm以上~3.0N/25mm、より好ましくは0.8N/25mm以上~1.5N/25mmである。第1位相差層と第2接着層との密着力がこのような範囲内であれば、高温高湿下における第1位相差層の熱収縮および水分吸収による膨潤の抑制に寄与することができ、また、クラックの伸展を防止し得る。
【0091】
第2接着層は、代表的には、接着剤層または粘着剤層であり、上記引張弾性率を実現する観点から、好ましくは接着剤層である。
【0092】
接着剤層を構成する接着剤としては、任意の適切な接着剤が採用され得る。接着剤としては、代表的には活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤が挙げられる。また、硬化メカニズムの観点からは、活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、ラジカル硬化型、カチオン硬化型、アニオン硬化型、ラジカル硬化型とカチオン硬化型とのハイブリッドが挙げられる。代表的には、ラジカル硬化型の紫外線硬化型接着剤が用いられ得る。汎用性に優れ、および、特性の調整が容易だからである。
【0093】
接着剤は、代表的には、硬化成分と光重合開始剤とを含有する。硬化成分および光重合開始剤としては、第1接着層に関してA-6項に記載した通りであり、これらの種類および配合量を調整することによって、第2接着層の引張弾性率および第1位相差層との密着性を所望の範囲にすることができる。
【0094】
第2接着層の厚み(硬化後)は、代表的には0.1μm~5μmであり、好ましくは0.2μm~4μm、より好ましくは0.3μm~3μmである。
【0095】
A-8.帯電防止機能を有する層
上述の通り、帯電防止機能を有する層は、上記各層とは別の層として位相差層付偏光板に含まれてもよく、あるいは、上記各層の少なくとも1つに帯電防止機能(代表的には、導電性)を持たせて帯電防止機能を有する層としてもよい。位相差層付偏光板の薄型化の観点から、上記各層の少なくとも1つを帯電防止機能を有する層とすることが好ましく、例えば、粘着剤層、第1接着層、および第2接着層から選択される1つ以上を帯電防止機能を有する層とすることができる。なかでも、帯電による画像表示パネルの不具合、例えば、有機ELパネルの誤発光(緑色素子の誤発光(グリーンパネル)等)または液晶セルの配向ムラ、を好適に防止する観点からは、画像表示パネル近傍の層、例えば粘着剤層に帯電防止機能を持たせることがより好ましい。
【0096】
帯電防止機能を有する層の表面抵抗値は、好ましくは1.0×1010Ω/□~1.0×1012Ω/□、より好ましくは1.0×1010Ω/□~8.0×1011Ω/□、さらに好ましくは2.0×1010Ω/□~6.0×1011Ω/□である。
【0097】
帯電防止機能の付与は、目的の層に帯電防止剤を配合することによって行われ得る。帯電防止剤としては、例えば、塩等のイオン性化合物、導電性ポリマー等が挙げられる。帯電防止剤は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0098】
イオン性化合物としては、常温(25℃)で液体のイオン液体が例示できる。イオン性化合物は、粘着剤層に配合された場合に、ベースポリマー(代表的には、(メタ)アクリル系ポリマー)との相溶性が高く、光学的透明性を維持し得る。
【0099】
イオン性化合物を構成するカチオンとしては、金属イオンおよびオニウムイオンが挙げられる。金属イオンとしては、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンが挙げられる。アルカリ金属イオンは、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、およびカリウムイオンであり、リチウムイオンであってもよい。アルカリ土類金属イオンは、例えば、マグネシウムイオンおよびカルシウムイオンである。
【0100】
オニウムイオンとしては、窒素原子、リン原子、および硫黄原子から選ばれる少なくとも1つの原子がプラス(+)に帯電したイオンが挙げられる。オニウムイオンは有機イオンであってもよく、この場合、環状有機化合物のイオンであっても、鎖状有機化合物のイオンであってもよい。環状有機化合物は、芳香族であっても、脂肪族等の非芳香族であってもよい。オニウムイオンの具体例としては、N-エチル-N,N-ジメチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムイオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムイオン、N-エチル-N,N-ジメチル-N-プロピルアンモニウムイオン、N-メチル-N,N,N-トリオクチルアンモニウムイオン、N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、およびN-メチル-N,N,N-トリブチルアンモニウムイオン等の4級アンモニウムイオン;炭素数4~16のアルキル基により置換されたN-アルキルピリジニウム等のピリジニウムイオン;炭素数2~10のアルキル基(例えばエチル基)で置換された1,3-アルキルメチルイミダゾリウムイオン、炭素数2~10のアルキル基で置換された1,2-ジメチル-3-アルキルイミダゾリウム等のイミダゾリウムイオン;ホスホニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、チアゾリウムイオン、オキサゾリウムイオン、トリアゾリウムイオン、ならびにピペリジニウムイオンが挙げられる。
【0101】
イオン性化合物を構成するアニオンの具体例としては、フルオライド、クロライド、ブロマイド、ヨーダイド、ペルクロレート(ClO )、ヒドロキシド(OH)、カーボネート(CO 2-)、ニトレート(NO )、スルホネート(SO )、メチルベンゼンスルホネート(CH(C)SO )、p-トルエンスルホネート(CHSO )、カルボキシベンゼンスルホネート(COOH(C)SO )、トリフルオロメタンスルホネート(CFSO )、ベンゾエート(CCOO)、アセテート(CHCOO)、トリフルオロアセテート(CFCOO)、テトラフルオロボレート(BF )、テトラベンジルボレート(B(C )、ヘキサフルオロホスフェート(PF )、トリスペンタフルオロエチルトリフルオロホスフェート(P(C )、ビスフルオロスルホニルイミド(N(SOF) )、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド(N(SOCF )、ビスペンタフルオロエタンスルホニルイミド(N(SOC )、ビスペンタフルオロエタンカルボニルイミド(N(COC )、ビスペルフルオロブタンスルホニルイミド(N(SO )、ビスペルフルオロブタンカルボニルイミド(N(COC )、トリストリフルオロメタンスルホニルメチド(C(SOCF )、およびトリストリフルオロメタンカルボニルメチド(C(SOCF )が挙げられる。
【0102】
イオン性化合物は、硫黄原子を含むアニオンを含んでいてもよい。硫黄原子を含むアニオンの具体例としては、ビスフルオロスルホニルイミド(N(SOF) )およびビストリフルオロメタンスルホニルイミド(N(SOCF )が挙げられる。
【0103】
イオン性化合物は、有機塩であってもよい。また、イオン性化合物は、リチウム塩であってもよく、カチオンおよびアニオンとして、それぞれリチウムイオンおよび有機イオンを含むリチウム有機塩であってもよい。
【0104】
イオン性化合物の具体例としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSi)、エチルメチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMPTFSi)、およびトリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TBMATFSi)が挙げられる。
【0105】
イオン性化合物は、リン原子を含んでいなくてもよい。リン原子を含むイオン性化合物はタッチパネル(より具体的には、タッチパネルの導電層)を腐食しやすい傾向にある。
【0106】
導電性ポリマーとしては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリキノキサリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン、およびこれらの誘導体が挙げられる。導電性ポリマーは、好ましくはポリチオフェン、ポリアニリン、およびこれらの誘導体であり、より好ましくはポリチオフェン誘導体である。
【0107】
導電性ポリマーは、親水性官能基を有していてもよい。親水性官能基としては、スルホン基、アミノ基、アミド基、イミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ヒドラジノ基、カルボキシル基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、およびこれらの塩(例えば、4級アンモニウム塩基)が挙げられる。
【0108】
導電性および化学的安定性の観点から、導電性ポリマーは、好ましくは、ポリ(3,4-二置換チオフェン)である。ポリ(3,4-二置換チオフェン)としては、ポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)およびポリ(3,4-ジアルコキシチオフェン)が挙げられ、好ましくは、ポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)である。ポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)は、例えば、以下の式(2)で表される構造単位を有する。
【0109】
【化2】
【0110】
式(2)のRは、例えば、炭素数1~4のアルキレン基である。アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐を有していてもよい。アルキレン基は、例えば、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1-メチル-1,2-エチレン基、1-エチル-1,2-エチレン基、1-メチル-1,3-プロピレン基、および2-メチル-1,3-プロピレン基であり、好ましくはメチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基であり、より好ましくは1,2-エチレン基である。導電性ポリマーは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)であってもよい。
【0111】
ドーパントとしては、ポリアニオンが用いられ得る。導電性ポリマーがポリチオフェン(またはその誘導体)である場合、ポリアニオンは、ポリチオフェン(またはその誘導体)とイオン対を形成し得る。ポリアニオンは、特に限定されず、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸等のカルボン酸ポリマー類;ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホン酸ポリマー類である。ポリアニオンは、ビニルカルボン酸類またはビニルスルホン酸類と、他のモノマー類との共重合体であってもよい。他のモノマー類としては、(メタ)アクリレート化合物;スチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。ポリアニオンは、好ましくは、ポリスチレンスルホン酸(PSS)である。ドーパントとの複合体である導電性ポリマーは、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体(PEDOT/PSS)であり得る。
【0112】
帯電防止剤の配合量は、所望の表面抵抗値が得られるように設定され得る。例えば、帯電防止剤を粘着剤層に配合する場合、帯電防止剤の配合量は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.05重量部~8重量部、より好ましくは0.1重量部~6重量部、さらに好ましくは0.2重量部~4重量部、さらにより好ましくは0.3重量部~3重量部である。また、例えば、帯電防止剤を接着剤層に配合する場合、帯電防止剤の配合量は、硬化成分(オリゴマー成分が存在する場合には硬化成分とオリゴマー成分との合計)100重量部に対して、好ましくは0.05重量部~8重量部、より好ましくは0.1重量部~6重量部、さらに好ましくは0.2重量部~4重量部である。
【0113】
A-9.はく離ライナー
はく離ライナーとしては、例えば、可撓性を有するプラスチックフィルムが挙げられる。当該プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、およびポリエステルフィルムが挙げられる。はく離ライナーの厚みは、例えば3μm以上であり、また、例えば200μm以下である。はく離ライナーの表面は、剥離剤でコートされている。剥離剤の具体例としては、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤が挙げられる。
【0114】
B.位相差層付偏光板の製造方法
A項に記載の位相差層付偏光板は、(工程1)偏光板と第1位相差層とを第1接着層を介して貼り合わせること、(工程2)第1位相差層と第2位相差層とを第2接着層を介して貼り合わせること、および(工程3)第2位相差層の第1位相差層が設けられる側と反対側に粘着剤層を設けること、を含む製造方法によって製造され得る。工程1~3の順序は特に限定されず、例えば、第2接着層を介して第1位相差層と第2位相差層とを貼り合わせて積層体を作製し(工程2)、当該積層体を1接着層を介して偏光板に貼り合わせ(工程1)、これにより得られた位相差層付偏光板に粘着剤層を積層する(工程3)ことができる。接着層が接着剤層である場合、接着剤をいずれか一方の被着体に塗工し、他方の被着体を塗布層上に積層した後に活性エネルギー線照射を行う。照射条件は、接着剤の組成、目的等に応じて適切に設定され得る。
【0115】
C.画像表示装置
A項に記載の位相差層付偏光板は、画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明の実施形態は、そのような位相差層付偏光板を有する画像表示装置も包含する。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、有機EL表示装置が挙げられる。本発明の実施形態による画像表示装置は、代表的には、液晶パネル、有機ELパネル等の画像表示パネルの視認側にA項に記載の位相差層付偏光板を備える。
【実施例0116】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
【0117】
<厚み>
10μm以下の厚みは、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、製品名「JSM-7100F」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
<引張弾性率>
JIS K 7127に準拠して、23℃または110℃において引張試験を行い、これにより得られる応力-ひずみ曲線の線形回帰から引張弾性率を算出した。引張試験は、厚みが1mmとなるように形成した接着剤層を幅10mmの帯状に裁断して測定用サンプルを調製し、該測定用サンプルの両端の各20mmを万能引張試験機のチャックに挟んで、チャック間距離60mm、引張速度150mm/分の条件で行った。
<貯蔵弾性率>
粘着剤層を複数積層して厚み約1.5mmとしたものを測定用サンプルとして、Rheometric Scientific社製「Advanced Rheometric Expansion System (ARES)」を用い、以下の条件により、動的粘弾性測定を行い、測定結果から、23℃または110℃における貯蔵弾性率を読み取った。
(測定条件)
変形モード:ねじり
測定周波数:1Hz
昇温速度:5℃/分
測定温度:-50~150℃の範囲
形状:パラレルプレート 8.0mmφ
<密着力>
位相差層付偏光板を幅25mm、長さ150mmに切り出し、ガラス基板上に偏光板がガラス基板側になるように固定した。固定後の位相差層付偏光板から第2位相差層を剥離する180°剥離試験を下記条件で実施し、剥離に要する力(密着力)を測定した。
・引張試験機:テンシロン型引張試験機(品名「オートグラフAG-50NX plus」,島津製作所製)
・測定温度:23℃
・相対湿度:55%
・剥離角度:180°
・引張速度:300mm/分
【0118】
[製造例1:偏光板]
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に2.4倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み約5μmの偏光子を形成した。
得られた偏光子の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、保護層としてHC-TACフィルム(第1保護層)を、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合せた。具体的には、硬化型接着剤の厚みが1.0μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線を保護層側から照射して接着剤を硬化させた。なお、HC-TACフィルムは、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み25μm)にハードコート(HC)層(厚み7μm)が形成されたフィルムであり、TACフィルムが偏光子側となるようにして貼り合わせた。
メタクリル酸メチル(MMA、富士フイルム和光純薬社製、商品名「メタクリル酸メチルモノマー」)97.0部、下記式(1e)で表される共重合単量体3.0部、重合開始剤(富士フイルム和光純薬社製、商品名「2,2´-アゾビス(イソブチロニトリル)」)0.2部をトルエン200部に溶解した。次いで、窒素雰囲気下で70℃に加熱しながら5.5時間重合反応を行い、ホウ素含有アクリル系樹脂溶液(固形分濃度:33%)を得た。得られたホウ素含有アクリル系重合体のTgは110℃、Mwは80000であった。得られたホウ素含有アクリル系樹脂20部をメチルエチルケトン80部に溶解し、樹脂溶液(20%)を得た。
上記偏光子から樹脂基材を剥離し、剥離面にワイヤーバーを用いて樹脂溶液を塗布した後、塗布膜を60℃で5分間乾燥して、樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物として構成される第2保護層(厚み400nm)を形成した。これにより、[HC層付TACフィルム(第1保護層)/偏光子/ホウ素含有アクリル系樹脂の固化層(第2保護層)]の構成を有する偏光板を得た。
【化3】
【0119】
[製造例2:第1位相差層]
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置に、ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60重量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21重量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28重量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77重量部(0.298mol)、および、触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2重量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂100重量部に対してPMMAを0.7質量部溶融混錬した後、水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥した後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み105μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、所定の位相差が得られるように調整しながら138℃で、幅方向に2.8倍延伸し、厚み38μmの位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムのRe(550)は144nmであり、Re(450)/Re(550)は0.86であった。
【0120】
[製造例3:第2位相差層]
下記化学式(3)(式中の数字65および35はモノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロックポリマー体で表している:重量平均分子量5000)で示される側鎖型液晶ポリマー20重量部、ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名PaliocolorLC242)80重量部および光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:商品名イルガキュア907)5重量部をシクロペンタノン200重量部に溶解して液晶塗工液を調製した。そして、垂直配向処理を施したPET基材に当該塗工液をバーコーターにより塗工した後、80℃で4分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。この液晶層に紫外線を照射し、液晶層を硬化させることにより、nz>nx=nyの屈折率特性を示す液晶配向固化層(厚み3μm)を基材上に形成した。
【化4】
【0121】
[製造例4A:接着剤]
5重量部の2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM-303」)、35重量部の4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業社製)、24重量部のネオペンチルグリコールジアクリレート(共栄社化学社製、商品名「ライトアクリレートNP-A」)、10重量部のイソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(東亞合成社製、商品名「アロニックスM-315」)、5重量部のペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学社製、商品名「A-TMM-3LM-N」)、15重量部のポリウレタン系アクリルオリゴマー(三菱ケミカル社製、商品名「UV3000B」)、3重量部の光重合開始剤(IGM Resins社製、商品名「Omnirad 184」)、2重量部の光重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI-100P」)、および1重量部のホウ酸(富士フイルム和光純薬社製)を混合し、3時間撹拌することにより、活性エネルギー線硬化型接着剤4Aを得た。
【0122】
[製造例4B:接着剤]
20重量部のアクリロイルモルホリン(興人社製、商品名:ACMO)、50重量部の不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン(ダイセル社製、商品名:プラクセル FA1DDM)、10重量部のPEG400#ジアクリレート(共栄社化学社製、商品名:ライトアクリレート 9EG-A)、15重量部のブチルアクリレートとメタクリレートとの34/66モル比共重合オリゴマー(東亞合成社製、商品名:ARUFON UP-1190)、3重量部の2-methyl-1-[4-(methylthio)phenyl]-2-morpholinopropan-1-one(光重合開始剤)(IGM Resins社製、商品名「Omnirad 907」)、および2重量部のジエチルチオキサントン(光重合開始剤)(日本化薬社製、商品名:KAYACURE DETX-S)を混合し、3時間撹拌することにより、活性エネルギー線硬化型接着剤4Bを得た。
【0123】
[製造例5A-5E:粘着剤層]
1.(メタ)アクリル系ポリマーの合成
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、および冷却器を備えた4つ口フラスコに、表1に記載の組成となるようにモノマー成分を仕込み、次いで、重合開始剤を加え、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入してフラスコ内を窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って重合反応を7時間進行させた。次に、得られた反応液に酢酸エチルを加えて固形分濃度12重量%に調整して、(メタ)アクリル系ポリマー5A~5Eの溶液を得た。
【表1】
2.粘着剤の調製
(メタ)アクリル系ポリマーの固形分100重量部に対する配合量が表2に示す値となるように、(メタ)アクリル系ポリマー5A~5Eの溶液に、架橋剤と、必要に応じて、シランカップリング剤および/または帯電防止剤を混合して、粘着剤5A~5Eを得た。
【表2】
3.粘着剤層の形成
剥離面にシリコーン処理が施されたはく離ライナーである、厚さ38μmのPETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、MRF38)の剥離面に対して、粘着剤5A~5Eを塗布した後、所定の温度に設定した空気循環式恒温オーブンで乾燥させて、粘着剤層5A~5E(厚み5μm、10μm、15μm、または20μm)を形成した。
【0124】
[実施例1]
製造例1で得た偏光板の第2保護層表面に、製造例5Aで得た粘着剤層5A(厚み5μm)をはく離ライナーから転写し、当該粘着剤層5Aを介して製造例2で得た第1位相差層を偏光板に貼り合わせて積層体を得た。このとき、第1位相差層の遅相軸が、偏光子の吸収軸に対して45°の角度をなすように配置した。
製造例3で得た第2位相差層の片面に、MCDコーター(富士機械社製)を用いて、製造例4Aで得た活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化後の厚みが1μmになるように塗工し、上記積層体の第1位相差層表面にロール機で貼り合わせた。その後、第2位相差層側から、活性エネルギー線照射装置により紫外線を照射して接着剤を硬化させた後、70℃で3分間熱風乾燥した。
以上により得られた積層体の第2位相差層表面に、粘着剤層5D(厚み15μm)をはく離ライナーから転写して、[偏光板/第1接着層(粘着剤層5A)/第1位相差層/第2接着層(接着剤4Aの硬化層)/第2位相差層/粘着剤層(粘着剤層5D)]の構成を有する位相差層付偏光板を得た。
【0125】
[実施例2~7、比較例1~3]
実施例2~7および比較例3において、第1接着層および粘着剤層を表3に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
また、比較例1および2において、第1接着層、第2接着層、および粘着剤層を表3に示すように変えたこと、および、第1位相差層を偏光板に貼り合わせた後、製造例4Bに示す接着剤を第1位相差層表面に塗布してから第2位相差層を貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして、位相差層付偏光板を得た。得られた比較例1および2の位相差層付偏光板から超薄切片を作成し、TEM観察したところ、第1位相差層の第2接着層側に約30nm~800nmの厚みの相溶領域が形成されていた。
【0126】
実施例および比較例で得られた位相差層付偏光板に関して、下記特性を評価した。
1.湿熱試験における位相差ムラ
有機ELパネルを想定した評価用の試験体を作製した。具体的には、PET樹脂フィルム(厚み50μm)の片面にアルミニウム蒸着層(厚み0.05μm)が設けられたAl蒸着フィルム(東レ社製、製品番号「DMS-X42G」)を長さ70mm、幅150mmに切り出し、そのPET樹脂フィルム面をアクリル系粘着剤層を介してガラス板に貼り合せて、[アルミニウム蒸着層/樹脂フィルム/ガラス板]の構成を有するAl蒸着層付ガラス板を準備した。Al蒸着層付きガラス板のアルミニウム蒸着層面に、所定のサイズに切り出した位相差層付偏光板を、粘着剤層を介して貼り合せて評価用の試験体とした。
該試験体を60℃および相対湿度95%の雰囲気に500時間静置する湿熱試験に供した。
湿熱試験後の試験体に関して、幅方向において等間隔の3点で反射色相を測定し、中心の測定点の反射色相とその左右の測定点における反射色相のうち値の大きい方との差(Δa=√(a 中央-a 左右+(b 中央-b 左右)を求め、以下の基準で位相差ムラを評価した。反射色相は、評価用の試験体を、コニカミノルタ社製のCM-26dを用いて測定した。結果を表3に示す。
○○○:反射色相の変化がなく(Δaが2.0未満)、色ムラが視認されない
○○:反射色相は変化している(Δaが5.0以下)が、色ムラは視認されない
○:反射色相は変化しており(Δaが8.0以下)、わずかに色ムラが視認される
△:反射色相は変化しており(Δaが8.0より大きい)、色ムラが視認される
【0127】
2.湿熱試験におけるクラック
実施例および比較例で得られた位相差層付偏光板を幅70cm×長さ150cmのサイズに切り出した。切り出した位相差層付偏光板を粘着剤層を介してガラス板に貼り合わせるとともに、偏光板側にもアクリル系粘着剤を介してガラス板を貼り合せて、[ガラス板/位相差層付偏光板/ガラス板]の構成を有する被験サンプルを作製した。
被験サンプルを温度110℃および相対湿度85%の雰囲気に36時間静置する湿熱試験に供した。
湿熱試験後の被験サンプルを顕微鏡観察し、以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
○○○:クラックの発生なし
○○:クラックの発生はあるが微細であり、第1位相差層を厚み方向に貫通するクラックが発生していない
○:クラックの発生があり微細であるが、第1位相差層を厚み方向に貫通するクラックが発生している
×:クラックの発生がありサイズも大きく、第1位相差層を厚み方向に貫通するクラックが発生している
××:クラックの発生がありサイズも大きく、第1位相差層を厚み方向に貫通するクラックが発生し、剥がれもわずかに発生している
×××:クラックの発生がありサイズも大きく、第1位相差層を厚み方向に貫通するクラックが発生し、全面に剥がれも発生している
【0128】
3.Green Panel評価
有機ELディスプレイから有機ELパネルを取り出し、この有機ELパネルに貼り付けられている偏光フィルムを剥離した。実施例および比較例で得られた位相差層付偏光板を所定のサイズに切り出し、粘着剤層を介して有機ELパネルの当該剥離面に貼り合せて、評価用画像表示装置を得た。評価用画像表示装置に黒色を表示させた状態で、最表面の周縁を黄銅棒(直径7-8mmの円柱形状)により8時間こすり続けた。黄銅棒は、100gfの力をかけながら、速度100mm/秒にて、画像表示装置表面(偏光板の第1保護層表面)の周縁を繰り返し周回させた。8時間の経過後、評価用画像表示装置の表示部を目視により観察し、以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
○:緑色の発光部分の面積の合計が表示部の面積の10%未満であった
△:緑色の発光部分の面積の合計が表示部の面積の10%以上30%未満であった
×:緑色の発光部分の面積の合計が表示部の面積の30%以上であった
【0129】
【表3】
【0130】
表3に示されるとおり、実施例の位相差層付偏光板は、比較例の位相差層付偏光板よりも高温高湿下における耐久性に優れる。また、帯電防止機能を有する粘着剤層を含む位相差層付偏光板は、有機EL表示装置における帯電に起因する誤発光を好適に防止することができた。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の実施形態による積層体は、例えば、画像表示装置に用いられる位相差層付偏光板の製造に用いられ得る。画像表示装置としては、代表的には、液晶表示装置、有機EL表示装置、無機EL表示装置が挙げられる。
【符号の説明】
【0132】
10 偏光板
12 偏光子
14 保護層
20 第1位相差層
30 第2位相差層
40 粘着剤層
50 第1接着層
60 第2接着層
100 位相差層付偏光板
図1