(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176710
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】熱間加工再現試験装置および熱間加工再現試験システム
(51)【国際特許分類】
G01N 3/18 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
G01N3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089142
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100198247
【弁理士】
【氏名又は名称】並河 伊佐夫
(72)【発明者】
【氏名】大竹 拓至
(72)【発明者】
【氏名】西本 孝志
(72)【発明者】
【氏名】木全 孝充
(72)【発明者】
【氏名】中川 史章
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA17
2G061AB04
2G061AC03
2G061BA11
2G061BA18
2G061CA02
2G061CB02
2G061DA01
(57)【要約】
【課題】試験片を迅速に試験装置にセットすることが可能で、予め加熱処理された試験片に対して所定の鍛造加工を施すのに好適な熱間加工再現試験装置を提供する。
【解決手段】熱間加工再現試験装置1は、試験片を圧縮する上型5および下型6を含む加工手段と、水平方向に延びる試験片Wの両端を把持する把持具3,4と、試験片Wを水平方向に延びる中心軸P1周りに回転させる回転手段と、試験片Wの鍛伸に伴なう軸方向の伸びを可能とする伸縮スライド手段と、試験片Wを加熱する加熱コイル10と、を有する。加熱コイル10は、試験片Wの中心軸P1と直交する方向に試験片Wが通過可能な開口部45を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片を圧縮する上型および下型を含む加工手段と、
水平方向に延びる前記試験片の両端を把持する把持具と、
前記試験片を水平方向に延びる中心軸周りに回転させる回転手段と、
前記試験片の鍛伸に伴なう軸方向の伸びを可能とする伸縮スライド手段と、
前記試験片を加熱する加熱コイルと、を有し、
前記加熱コイルは、前記試験片の中心軸と直交する方向に前記試験片が通過可能な開口部を備えている、熱間加工再現試験装置。
【請求項2】
前記試験片の中心軸と直交する方向に前記加熱コイルを移動させる加熱コイル移動手段を更に備えている、請求項1に記載の熱間加工再現試験装置。
【請求項3】
前記加熱コイルは、鞍型コイルであり、前記上型の通過を許容する上開口部と、前記下型の通過を許容する下開口部と、が形成されている、請求項1に記載の熱間加工再現試験装置。
【請求項4】
前記伸縮スライド手段は、水平方向に延びるガイドレールと、前記把持具を保持し前記ガイドレールに沿ってスライド移動可能な把持具保持板と、を含んで構成されている、請求項1に記載の熱間加工再現試験装置。
【請求項5】
前記ガイドレールを支持するベース板は上下方向に移動可能に支持されており、前記上型が前記試験片を押圧した際の下向きの押圧力に基づいて、前記把持具、前記回転手段および前記伸縮スライド手段が前記試験片とともに一体的に下向き移動するように構成されている、請求項1に記載の熱間加工再現試験装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の熱間加工再現試験装置と、該熱間加工再現試験装置とは別途に設けられた加熱炉と、を備えた、熱間加工再現試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は量産時の条件を模擬した熱間加工を試験片に施す場合に用いて好適な熱間加工再現試験装置および熱間加工再現試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材の熱間加工の条件を検討するにあたって、実際の量産に対応するサイズで評価試験を行なおうとすれば試験の規模が大きくなって費用がかかってしまう。このため、量産サイズよりも小さな試験片に、量産時の条件を模擬した熱間加工を施す熱間加工再現試験装置を用いられていた。
【0003】
このような熱間加工再現試験装置(以下、単に試験装置を称する場合がある)としては、例えば下記特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載の試験装置は、試験片を所定温度に加熱する加熱コイルと、熱間状態の試験片を圧縮するためのハンマと、を備えて、熱間状態での鍛造加工を可能とするものである。しかしながらこの特許文献1に記載の試験装置は、試験片を装置にセットしてからでないと、加熱処理を含む一連の加工プロセスが開始できないため、長時間の加熱処理を含む一連の加工プロセスを再現しようとすると、長時間に亘って試験装置が占有され、試験の効率が悪くなってしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような事情を背景とし、試験片を迅速に試験装置にセットすることが可能で、予め加熱処理された試験片に対して所定の鍛造加工を施すのに好適な熱間加工再現試験装置および熱間加工再現試験システムを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
而して本発明の熱間加工再現試験装置は、
試験片を圧縮する上型および下型を含む加工手段と、
水平方向に延びる前記試験片の両端を把持する把持具と、
前記試験片を水平方向に延びる中心軸周りに回転させる回転手段と、
前記試験片の鍛伸に伴なう軸方向の伸びを可能とする伸縮スライド手段と、
前記試験片を加熱する加熱コイルと、を有し、
前記加熱コイルは、前記試験片の中心軸と直交する方向に前記試験片が通過可能な開口部を備えていることを特徴とする。
【0007】
このように規定された本発明の熱間加工再現試験装置は、試験片を、試験片の中心軸と直交する方向(即ち、径方向)に相対移動させて加熱コイルの開口部を通過させ、試験片を加熱コイルの内側に配設できるようになしたものである。ソレノイド型の加熱コイルを用い、試験片を軸方向に相対移動させないと加熱コイルの内側に配設できない従来の熱間加工再現試験装置に比べて、試験片を迅速に試験装置にセットすることができる。
本発明の熱間加工再現試験装置によれば、長時間の加熱処理とそれに続く鍛造加工を含む一連の加工プロセスを再現する場合に、試験片に対する加熱処理を別の加熱炉で行い、加熱炉から取り出された(加熱された)試験片を迅速に試験装置にセットすることで、長時間に亘って熱間加工再現試験装置が占有され試験効率が悪くなってしまう問題を解決することができる。
【0008】
ここで、本発明の熱間加工再現試験装置では、前記試験片の中心軸と直交する方向に前記加熱コイルを移動させる加熱コイル移動手段を更に備えるように構成することができる。
試験片の両端を把持具に固定するにあたって、加熱コイルを一旦退避させておいて、把持具への固定が完了した後、加熱コイルを試験片に近接した所定の加熱可能位置に戻すことで、試験片をより迅速に試験装置にセットすることができる。
【0009】
また本発明の熱間加工再現試験装置は、前記加熱コイルを鞍型コイルで構成することができる。この場合、前記加熱コイルに、前記上型の通過を許容する上開口部と、前記下型の通過を許容する下開口部と、を形成することができる。
【0010】
また本発明の熱間加工再現試験装置は、前記伸縮スライド手段を、水平方向に延びるガイドレールと、前記把持具を保持し前記ガイドレールに沿ってスライド移動可能な把持具保持板と、を含んで構成することができる。このようにすることで、鍛造加工時の試験片の伸びを水平方向に案内するとともに、かかる試験片の伸びを把持具保持板のスライド移動により吸収することができる。
【0011】
また本発明の熱間加工再現試験装置は、前記ガイドレールを支持するベース板を上下方向に移動可能に支持し、前記上型が前記試験片を押圧した際の下向きの押圧力に基づいて、前記把持具、前記回転手段および前記伸縮スライド手段が前記試験片とともに一体的に下向き移動するように構成することができる。このようにすることで、鍛造加工時、試験片に意図しない曲げ応力が発生するのを抑制することができる。
【0012】
また本発明の熱間加工再現試験システムは、上記の熱間加工再現試験装置と、該熱間加工再現試験装置とは別途に設けられた加熱炉と、を備えていることを特徴とする。
本発明の熱間加工再現試験システムによれば、長時間の加熱処理とそれに続く鍛造加工を含む一連の加工プロセスを再現する場合に、試験片に対する加熱処理を別途に設けられた加熱炉で行い、加熱炉から取り出された(加熱された)試験片を迅速に試験装置にセットすることで、長時間に亘って熱間加工再現試験装置が占有され試験効率が悪くなってしまう問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態の熱間加工再現試験装置の概略構成を示した図である。
【
図3】
図1の熱間加工再現試験装置の把持具を示した図である。
【
図4】本発明の一実施形態の熱間加工再現試験装置の加熱コイルを示した図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【
図5】
図1の熱間加工再現試験装置を用いて行う熱間加工の説明図である。
【
図8】加熱コイルの形態が異なる変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、1は試験片Wに所定の熱間加工を施す熱間加工再現試験装置である。同図において、3,4は試験片Wの両端を把持する把持具、5および6は試験片Wを圧縮する加工手段としての上型および下型、10は試験片Wを加熱するための加熱コイルである。
【0015】
試験片Wは、
図2で示すように棒状をなしており、その軸方向中央部は、上型5および下型6により押圧加工される大径の被加工部12とされている。被加工部12の軸方向端部からは被加工部12と同心の軸端部13,14がそれぞれ反対方向に延び出している。なお、
図2において、P1はこの試験片Wにおける中心軸を示している。
【0016】
把持具3,4は、
図3で示すように、左右方向に離間して対向配置されており、水平方向に延びる状態の試験片Wの軸端部13,14を把持する。
把持具3,4は、試験片Wの軸端部13,14を収容する凹状の受け部20と、受け部20の開口を開閉可能にスライド移動するストッパ部22と、を備えている。
図3において、図中左側の把持具3は受け部20の開口が開放された状態を示しており、図中右側の把持具4は受け部20の開口がストッパ部22で閉じられた状態を示している。
ストッパ部22には板厚方向にねじ送りされる押しねじ24が設けられ、受け部20に収容された試験片Wの軸端部13,14に対し、押しねじ24をねじ込むことで試験片Wの軸端部13,14がそれぞれ把持具3,4に固定される。このとき試験片Wの中心軸P1と把持具3,4の中心軸P2とが略一致した状態で、試験片Wが把持具3,4に固定される。
【0017】
この把持具3,4は、それぞれ把持具保持板27,28(
図1参照)に保持され、把持具保持板27,28とともに、水平方向にスライド移動可能とされている。
熱間加工再現試験装置1には、
図1で示すように、左右方向に離間して対向配置された一対のベース板31,32と、両端がこのベース板31,32に固定され水平方向に延びる4本のガイドレール33と、が設けられている。把持具保持板27,28は、正面視四角板状をなしており、その四隅の角部近傍においてそれぞれガイドレール33を板厚方向に貫通させた状態で、ガイドレール33に保持されており、把持具保持板27,28および把持具3,4は、ガイドレール33に沿って水平方向にスライド移動可能とされている。
【0018】
本例においては、一対の把持具保持板27,28がそれぞれガイドレール33に沿って試験片Wから離間する方向(水平方向外側)に移動することで、鍛造加工時の試験片Wの伸びを水平方向に案内するとともに、かかる試験片Wの伸びを把持具保持板27,28のスライド移動により吸収するように構成されている。即ち本例では、ガイドレール33および把持具保持板27,28が、本発明における伸縮スライド手段を構成する。
【0019】
なお、ガイドレール33の、ベース板31と把持具保持板27との間の部分、および、ベース板32と把持具保持板28との間の部分には、それぞればね部材34が装着されている。これら左右一対のばね部材34による付勢力に基づいて、試験装置にセットされた試験片Wの左右方向のセンタリングが行なわれ、試験片Wと加工型5,6との位置合わせがなされている。
【0020】
また、把持具保持板27,28にて保持された把持具3,4は、それぞれその中心軸P2(
図3参照)周りに回転可能とされている。
図1で示すように、右側の把持具4には、動力伝達軸37の一端が連結されている。動力伝達軸37の他端は、ギア38,39を介してベース板32に取り付け固定された駆動モータ40と連結されている。よって、把持具4は駆動モータ40からの回転駆動力に基づいて、中心軸P2周りに回転せしめられる。なお把持具4と動力伝達軸37は、一方の部材に形成されたキーと他方の部材に形成されたキー溝との係合により、その回転駆動力が伝達される。ここで本例では、キー溝が軸方向に長く形成されており、把持具4が水平方向にスライド移動した際の、キーとキー溝との間での相対移動が許容されるように構成されている。
【0021】
そして、試験片Wが把持された状態において、回転駆動力は試験片Wおよび図中左側の把持具3にも伝達されて、これらが一体に回転することとなる。即ち、本実施形態では、把持具保持板27,28に回転可能に取り付けられた把持具3,4、駆動モータ40、動力伝達軸37およびギア38,39が、本発明における回転手段を構成する。
回転手段を備えた本例の熱間加工再現試験装置1においては、試験片Wを任意の回転角度で回転させることが可能であり、例えば、90°回転鍛伸を実現させることができ、また途中加熱時の均熱性を向上させることができる。
【0022】
次に、上型5及び下型6は、
図1で示すように、試験片Wを挟んで上下に配置され、協働して試験片Wを押圧する。本例では下型6が昇降しない固定型、上型5が図示しないサーボ制御されたアクチュエータにより昇降する可動型で、押圧加工時の加工量および加工速度が制御可能とされている。
【0023】
加熱コイル10は、一本の導体10aを曲げ形成して作製されたもので、
図4(B)で示すように、導体10a端部のリード部41を介して高周波電源42に接続されている。加熱コイル10は、加熱対象の試験片Wに近接して配置され、高周波電流の供給下、試験片W上に誘導電流を生じさせ、この誘導電流による発熱を利用して試験片Wを加熱する。
【0024】
本例の加熱コイル10は半開放鞍型コイルであり、
図4(B)で示すように、試験片Wに近接配置された状態で試験片Wの上方及び図中左右の側方の3方を導体10aで覆う、側面視略逆U字状とされている。加熱コイル10の下部には、試験片Wの中心軸P1と直交する方向に試験片Wが通過可能な下開口部45が設けられている。この下開口部45の開口幅L1は、試験片Wおよび下型6が通過可能となるように決定されている。一方、
図4(A)で示すように、加熱コイル10の上部には、上型5の通過を許容する開口幅L2の上開口部46が設けられている。なお本例では、上開口部46を通じて試験片Wの温度が測定できるように、上開口部46を臨む位置に二色温度計(図示省略)が取り付けられている。
加熱コイル10の形状は、上記の例に限定されるものではなく、試験片Wの被加工部12を加熱することが可能で、加工型5,6および試験片Wが通過可能な開口を備えたコイル形状を適宜採用することができる。
【0025】
本例では、
図4(B)で示すように、加熱コイル移動手段としての昇降装置43が設けられており、昇降装置43によって、加熱コイル10および高周波電源42が一体で昇降するように構成されている。
【0026】
また、
図1で示すように、ガイドレール33の両端部が固定されている一対のベース板31,32は、基台8から鉛直方向上向きに延びるロッド51に沿って上下方向に移動可能とされている。ロッド51の、ベース板31,32と基台8との間の部分には、ベース板31,32に対して上向きの付勢力を付与するばね部材52が装着されており、試験片Wに押圧力が加えられていない非加工時、ベース板31,32は、ばね部材52からの付勢力により、ロッド51に設けられたストッパ部53との当接によって規定された上端位置に位置保持されている。一方、上型5が下降して試験片Wに下向きの押圧力が作用した際には、付勢力に抗してベース板31,32が押し下げられ、このとき把持具3,4、回転手段および伸縮スライド手段が試験片Wとともに一体的に下向き移動するように構成されている。
【0027】
このように構成された熱間加工再現試験装置1と、別途に設けられた加熱炉(図示省略)とを用いて、熱間加工再現試験システムを構成すれば、長時間の加熱処理とそれに続く鍛造加工を含む一連の加工プロセスを効率よく再現することができる。以下では、この熱間加工再現試験システムを用い、量産時の条件を模擬した熱間加工を行った場合の手順および動作について説明する。
【0028】
先ず、丸棒形状の試験片Wが図示を省略した加熱炉にて所定の温度(例えば800~1200℃の何れかの温度)にまで加熱された後、加熱された試験片Wを加熱炉から取り出し、以下のように待機状態の熱間加工再現試験装置1にセットする。
熱間加工再現試験装置1は、
図5で示すように、把持具3,4の受け部20が装置の正面方向に開放され、また加熱コイル10は、試験片Wとの干渉を回避可能な待機位置に移動した状態とされている。作業者は、治具を用いて加熱された試験片Wを略水平状態に保持し、熱間加工再現試験装置1の正面側から(
図5で示されている側から)試験片Wの軸端部13,14を把持具3,4のそれぞれの受け部20に収容する。
【0029】
続いて
図6で示すように、把持具3,4におけるストッパ部22を試験片Wの軸端部13,14と重複する位置までスライド移動させ、押しねじ24をねじ込むことで、試験片Wの軸端部13,14をそれぞれ把持具3,4に固定する。このとき試験片Wの被加工部12は、上型5と下型6との間に位置することとなる。またこのとき、
図6で示すように、試験片Wの被加工部12は下型6の上面と接触しておらず、下型6との接触による試験片Wの失熱は回避されている。
【0030】
続いて、上方に退避させていた加熱コイル10を下降させ、加熱コイル10の下開口部45を通じて、試験片Wを加熱コイル10の内部に配設する(
図1参照)。これで試験片Wの熱間加工再現試験装置1へのセットが完了する。
【0031】
次に、
図7で示すように、上型5を下降させ、下型6と協働して試験片Wを押圧(圧下)し、予め設定された条件に基づいて鍛造加工(鍛伸加工)が行なわれる。また必要に応じて加熱コイル10による途中加熱が行なわれる。なお、この
図7では試験片Wを覆う加熱コイル10を省略して示している。
【0032】
そして所定の加工が終了した後は、試験片Wを試験装置1にセットしたときとは逆の手順で、加熱コイル10を上昇させ、押しねじ24を緩め、受け部20を開放するようにストッパ部22をスライド移動させれば、所定の加工が終了した試験片Wを試験装置1から取り出すことができる。取り出された試験片Wは、再度加熱炉で加熱され、その後、熱間加工試験を行うことが可能である。
【0033】
以上のように、本実施形態の熱間加工再現試験装置1によれば、試験片Wを、試験片Wの中心軸P1と直交する方向(径方向)に相対移動させて加熱コイル10の開口部45を通過させ、試験片Wを加熱コイル10の内側に配設できるため、従来のソレノイド型の加熱コイルを用いた試験装置に比べて、試験片Wを迅速に試験装置にセットすることができる。
【0034】
本実施形態の熱間加工再現試験装置1では、試験片Wの中心軸P1と直交する方向(ここでは上下方向)に加熱コイル10を移動させる加熱コイル移動手段(昇降装置43)を更に備えており、試験片Wの両端を把持具3,4に固定するにあたって、加熱コイル10を一旦上方に退避させておいて、把持具3,4への固定が完了した後、加熱コイル10を試験片Wに近接した所定の加熱可能位置に戻すことができ、試験片Wをより迅速に試験装置1にセットすることができる。
【0035】
本実施形態の熱間加工再現試験装置1は、水平方向に延びるガイドレール33と、把持具3,4を保持しガイドレール33に沿ってスライド移動可能な把持具保持板27,28と、を含んで伸縮スライド手段を構成しており。鍛造加工時(鍛伸加工時)の試験片Wの伸びを水平方向に案内するとともに、かかる試験片Wの伸びを把持具保持板27,28のスライド移動により吸収することができる。
【0036】
また本実施形態の熱間加工再現試験装置1は、ガイドレール33を支持するベース板31,32を上下方向に移動可能に支持し、上型5が試験片Wを押圧した際の下向きの押圧力に基づいて、把持具3,4、回転手段および伸縮スライド手段が、試験片Wとともに一体的に下向き移動するように構成されているため、鍛造加工時、試験片Wに意図しない曲げ応力が発生するのを抑制することができる。
【0037】
本実施形態の熱間加工再現試験システムは、熱間加工再現試験装置1と、熱間加工再現試験装置1とは別途に設けられた加熱炉と、を備えている。
この熱間加工再現試験システムによれば、長時間の加熱処理とそれに続く鍛造加工を含む一連の加工プロセスを再現する場合に、試験片Wに対する加熱処理を別途に設けられた加熱炉で行い、加熱炉から取り出された(加熱された)試験片Wを迅速に試験装置1にセットすることで、長時間に亘って熱間加工再現試験装置1が占有され、試験効率が悪くなってしまう問題を解決することができる。
【0038】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまでも一例示である。本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々変更を加えた形態で構成可能である。
例えば、上記実施形態は加熱コイル10における試験片Wが通過可能な開口部45を下向きに開放する態様で設けているが、
図8で示すように試験片Wが通過可能な開口部45Bを水平方向前側に向けて開放する態様で設けることも可能である。このようにすれば、加熱コイル10を移動させなくても試験片Wを加熱コイル10の内側に配設することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 熱間加工再現試験装置
3,4 把持具(回転手段)
5 上型
6 下型
10 加熱コイル
27,28 把持具保持板(伸縮スライド手段)
31,32 ベース板
33 ガイドレール(伸縮スライド手段)
37 動力伝達軸(回転手段)
38,39 ギア(回転手段)
40 駆動モータ(回転手段)
43 昇降装置(加熱コイル移動手段)
45 下開口部(開口部)
46 上開口部
P1 中心軸
W 試験片