(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176712
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】セラミックスヒータ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/74 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
H05B3/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089144
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】北林 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】下嶋 浩正
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP20
3K092QA05
3K092QB02
3K092QB26
3K092QB45
3K092QB74
3K092RF03
3K092RF11
3K092RF19
3K092RF27
3K092VV31
3K092VV34
(57)【要約】
【課題】セラミックス基材の下面と接合用凸部との境界の隅部において、熱応力によりクラックが発生することを抑制できるセラミックスヒータを提供する。
【解決手段】
セラミックスヒータ100は、円板状のセラミックス基材110と、セラミックス基材110に埋設された電極120(ヒータ電極122及び静電吸着用電極124)とを備えている。セラミックス基材110の下面113には、下方に突出する接合用凸部114が設けられている。接合用凸部114には、円筒状のシャフト130が接合されている。鏡面研磨領域Smの中心線平均粗さRaは0.1μm以下である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、前記上面と上下方向において対向する下面、及び、前記下面から下方に突出する凸部を有するセラミックス基材と、
前記セラミックス基材に埋設された発熱体と、
前記セラミックス基材の前記凸部に接合された円筒状のシャフトと、を備え、
前記凸部の側面の中心線平均粗さRa1と、前記セラミックス基材の前記下面の、前記凸部との境界から5mm以内の領域の中心線平均粗さRa2とがいずれも0.1μm以下であることを特徴とするセラミックスヒータ。
【請求項2】
前記凸部の前記側面には、幅3μmよりも大きいマイクロクラック及び幅3μmよりも大きいスクラッチ痕がないことを特徴とする請求項1に記載のセラミックスヒータ。
【請求項3】
前記セラミックス基材の前記下面の、前記凸部との前記境界のR面取り寸法又はC面取り寸法が1mm未満である請求項1に記載のセラミックスヒータ。
【請求項4】
前記セラミックス基材の前記下面の、前記凸部との前記境界のR面取り寸法又はC面取り寸法が1mm未満である請求項2に記載のセラミックスヒータ。
【請求項5】
前記凸部の下面には、前記凸部の下面から上方に向かって凹んだ凹部が設けられており、
前記凹部の中心線平均粗さが2.0μm以下である請求項1に記載のセラミックスヒータ。
【請求項6】
前記凸部の下面には、前記凸部の下面から上方に向かって凹んだ凹部が設けられており、
前記凹部の中心線平均粗さが2.0μm以下である請求項2に記載のセラミックスヒータ。
【請求項7】
前記凸部の下面には、前記凸部の下面から上方に向かって凹んだ凹部が設けられており、
前記凹部の中心線平均粗さが2.0μm以下である請求項3に記載のセラミックスヒータ。
【請求項8】
前記凸部の下面には、前記凸部の下面から上方に向かって凹んだ凹部が設けられており、
前記凹部の中心線平均粗さが2.0μm以下である請求項4に記載のセラミックスヒータ。
【請求項9】
前記シャフトは、前記凸部と同径であって、前記凸部と接合される接合部分を有し、
前記凸部の前記側面の前記中心線平均粗さRa1と、前記シャフトの前記接合部分の側面の中心線平均粗さRa3との比Ra1/Ra3が0.01以上0.9以下である請求項1~8のいずれか一項に記載のセラミックスヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェハ等の基板を保持して加熱するセラミックスヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウェハなどの基板を保持して加熱するセラミックスヒータが開示されている。特許文献1に記載のセラミックスヒータは、基板が載置されるセラミックス基材(板状セラミック体)と、セラミックス基材を支持するシャフト(セラミック筒状支持体)と、セラミックス基材の下面から突出してシャフトと接合される接合用凸部(凸状部)とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のセラミックスヒータにおいては、セラミックス基材に設けられた接合用凸部と、シャフト上部の接合部との外表面の表面粗さ(中心線平均粗さ)を2μm以下にすることにより、接合用凸部とシャフト上部の接合部との接合部分の剥離などが生じることを抑制している。しかしながら、本発明者らの知見によれば、セラミックスヒータの加熱冷却を繰り返したり、高い温度での加熱を行ったりした場合に、セラミックス基材の下面と接合用凸部との境界の隅部において、熱応力によりクラックが発生するおそれがあることが分かった。
【0005】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、基体の下面と接合用凸部との境界の隅部において、熱応力によりクラックが発生することを抑制できるセラミックスヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、上面、前記上面と上下方向において対向する下面、及び、前記下面から下方に突出する凸部を有するセラミックス基材と、
前記セラミックス基材に埋設された発熱体と、
前記セラミックス基材の前記凸部に接合された円筒状のシャフトと、を備え、
前記凸部の側面の中心線平均粗さRa1と、前記セラミックス基材の前記下面の、前記凸部との境界から5mm以内の領域の中心線平均粗さRa2とがいずれも0.1μm以下であることを特徴とするセラミックスヒータが提供される。
【発明の効果】
【0007】
凸部の側面の中心線平均粗さRa1と、セラミックス基材の下面の、凸部との境界から5mm以内の領域の中心線平均粗さRa2とを0.1μm以下としている。これにより、鏡面研磨領域(凸部の側面、及び、セラミックス基材の下面の、凸部との境界から5mm以内の領域)の表面が鏡面状になり、マイクロクラックが低減する。その結果、セラミックスヒータの発熱体に通電して昇温する際に、鏡面研磨領域にかかる熱応力に対して耐性が大きくなる。これにより、鏡面研磨領域におけるクラックの発生、特に、セラミックス基材の下面の、接合用凸部との境界を起点とするクラックの発生を抑制することができる。また、鏡面研磨領域において、表面の凹凸が小さくなるため、表面積を小さくすることができ、鏡面研磨領域からの熱放射を少なくすることができる。その結果、セラミックス基材の上面の、シャフトの直上に対応する部分の温度低下を抑制でき、加熱対象となる基板の均熱化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、セラミックスヒータ100の斜視図である。
【
図2】
図2は、セラミックスヒータ100の概略説明図である。
【
図4】
図4は、ヒータ電極122の概略説明図である。
【
図5】
図5は、セラミックスヒータ100の一部拡大図である。
【
図6】(a)~(e)は、セラミックス基材110の製造方法の流れを示す図である。
【
図7】(a)~(d)は、セラミックス基材110の別の製造方法の流れを示す図である。
【
図8】
図8は、R面取り加工が施されたセラミックスヒータ100の一部拡大図である。
【
図9】
図9は、C面取り加工が施されたセラミックスヒータ100の一部拡大図である。
【
図10】(a)は、端子孔142が設けられたセラミックスヒータ100の一部拡大図であり、(b)は、凹部145が設けられたセラミックスヒータ100の一部拡大図である。
【
図11】
図11は、実施例1~7及び比較例の結果をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<セラミックスヒータ100>
本発明の実施形態に係るセラミックスヒータ100について、
図1、2を参照しつつ説明する。本実施形態に係るセラミックスヒータ100は、シリコンウェハなどの半導体ウェハ(以下、単にウェハ10という)の加熱に用いられるセラミックスヒータである。なお、以下の説明においては、セラミックスヒータ100が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向5が定義される。
図1に示されるように、本実施形態に係るセラミックスヒータ100は、セラミックス基材110と、電極120(
図2参照)と、シャフト130と、給電線140、141(
図2参照)とを備える。
【0010】
セラミックス基材110は、直径12インチ(約300mm)の円形の板状の形状を有する部材であり、セラミックス基材110の上には加熱対象であるウェハ10が載置される。なお、
図1では図面を見やすくするためにウェハ10とセラミックス基材110とを離して図示している。
図1に示されるように、セラミックス基材110の上面111には、環状の凸部152(以下、単に環状凸部152という)と、複数の凸部156とが設けられている。なお、
図1においては、図面を見やすくするために、
図2と比べて複数の凸部156の数を減らして図示している。また、
図2に示されるように、セラミックス基材110の内部には、後述の第1ガス流路164が形成されている。セラミックス基材110は、例えば、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ケイ素等のセラミックス焼結体により形成することができる。
【0011】
図1、2に示されるように、環状凸部152は、セラミックス基材110の上面111の外周部(外縁部)に配置された円環状の凸部であり、上面111から上方に突出している。
図2に示されるように、ウェハ10がセラミックス基材110の上に載置されたとき、環状凸部152の上面152aはウェハ10の下面と当接する。つまり、環状凸部152は、ウェハ10がセラミックス基材110の上に載置されたときに、上下方向5においてウェハ10と重なる位置に配置されている。セラミックス基材110の上面111の、環状凸部152の内側には、複数の凸部156が設けられている。複数の凸部156はいずれも円柱形状を有している。複数の凸部156のうちの1つは、上面111の略中心に配置されている。残りの凸部156は、等間隔に並んだ4重の同心円の円周上に並んでいる。また、各同心円の円周上において、凸部156は等間隔で並んでいる。なお、凸部156が配置される位置及び/又は数は、用途、作用、機能に応じて適宜設定される。
【0012】
環状凸部152の高さは、5μm~2mmの範囲にすることができる。同様に、複数の凸部156の高さも、5μm~2mmの範囲にすることができる。本実施形態において、環状凸部152の高さ及び複数の凸部156の高さは同じである。なお、本明細書において、環状凸部152の高さ及び複数の凸部156の高さは、セラミックス基板110の上面111からの上下方向の長さとして定義される。なお、セラミックス基板110の上面111が平坦でなく、例えば段差を有している場合には、セラミックス基板110の上面111のうち、最も高い位置を基準にして、そこからの上下方向の長さとして定義される。
【0013】
環状凸部152の上面152aの幅は、一定の幅であることが望ましく、0.1mm~10mmにすることができる。環状凸部152の上面152aの中心線平均粗さRaは1.6μm以下にすることができる。なお、中心線平均粗さRaは、表面の凹凸を、その中心線からの偏差の絶対値の平均で表したものである。同様に、複数の凸部156の上面156aの中心線平均粗さRaは1.6μm以下にすることができる。なお、環状凸部152の上面152a、及び、複数の凸部156の上面156aの中心線平均粗さRaは0.4μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。
【0014】
複数の凸部156の上面156aは、直径0.1mm~5mmの円形であることが好ましい。また、複数の凸部156の、各凸部の離間距離は、1.5mm~30mmの範囲にすることができる。
【0015】
上述のように、セラミックス基板110の上面111において、複数の凸部156は4つの同心円の円周上に並んでいる。
図2に示されるように、上面111の、複数の凸部156が配置された最も内側の同心円と内側から2番目の同心円との間には、第1ガス流路164の開口164aが開口している。第1ガス流路164は、開口164aを備えるガス流路であり、セラミックス基材110の内部に形成されている。第1ガス流路164は、開口164aから下方に延びている。後述のように、第1ガス流路164の下端は、シャフト130の内部に形成された第2ガス流路168の上端に接合されている。
【0016】
第1ガス流路164は、セラミックス基材110の上面111とウェハ10の下面とによって画定される空間(間隙)にガスを供給するための流路として用いることができる。例えば、ウェハ10とセラミックス基材110との間の伝熱のための伝熱ガスを供給することができる。伝熱ガスとして、例えば、ヘリウム、アルゴンのような不活性ガスや、窒素ガスなどを用いることができる。伝熱ガスは、第1ガス流路164を通じて、100Pa~40000Paの範囲内で設定された圧力で供給される。また、環状凸部152の上面152aとウェハ10の下面との隙間から、環状凸部152の内側の間隙にプロセスガスが侵入してくる場合には、第1ガス流路164を介して、ガスを排気することができる。この際、排気圧を調整することによって間隙の外側の圧力と、間隙の内側の圧力の差圧を調節することができる。これにより、ウェハ10をセラミックス基材110の上面に向けて吸着させることができる。
【0017】
図2に示されるように、セラミックス基材110の内部には、電極120が埋設されている。電極120は、ヒータ電極122と、静電吸着用電極124とを含んでいる。静電吸着用電極124はヒータ電極122の上方に埋設されている。
【0018】
図3に示されるように、静電吸着用電極124は2つの半円形状の電極124a、124bが所定の間隔を隔てて向かい合うように配置されており、全体として略円形の形状を有している。本実施形態において、静電吸着用電極124の外径は292mmである。電極124a及び電極124bにそれぞれ所定の電圧(例えば、±500V)を印加することにより、ウェハ10を静電吸着することができる。
【0019】
図4に示されるように、ヒータ電極122は帯状に裁断された金属製のメッシュや箔である。ヒータ電極122の外径は298mmである。ヒータ電極120はセラミックス基材110の側面から露出しない。ヒータ電極120の略中央には、給電線140(
図1参照)と接続される端子部121が設けられている。ヒータ電極122はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、モリブデン及び/又はタングステンを含む合金のワイヤーを織ったメッシュや箔等の耐熱金属(高融点金属)により形成されている。タングステン、モリブデンの純度は99%以上であることが好ましい。ヒータ電極122の厚さは0.15mm以下である。なお、ヒータ電極122の抵抗値を高くして、セラミックスヒータ100の消費電流を低減させるという観点からは、ワイヤーの線径を0.1mm以下、ヒータ電極122の厚さを0.1mm以下にすることが好ましい。また、帯状に裁断されたヒータ電極122の幅は2.5mm~20mmであることが好ましく、5mm~15mmであることがさらに好ましい。本実施形態においては、ヒータ電極122は、
図4に示される形状に裁断されているがヒータ電極122の形状はこれには限られず、適宜変更しうる。なお、セラミックス基材110の内部にはヒータ電極122に加えて、あるいは、ヒータ電極122に代えて、セラミックス基材110の上方にプラズマを発生させるためのプラズマ電極が埋設されていてもよい。
【0020】
図1、2に示されるように、セラミックス基材110の下面113には、シャフト130が接続されている。シャフト130は中空の略円筒形状の円筒部131と、2つの大径部132、133とを有する。大径部132は円筒部131の上方に設けられており(
図2参照)、大径部133は円筒部131の下方に設けられている(
図1参照)。大径部132、133は、円筒部131の径よりも大きな径を有している。以下の説明において、円筒部131の長手方向をシャフト130の長手方向6として定義する。
図1に示されるように、セラミックスヒータ100の使用状態において、シャフト130の長手方向6は上下方向5と平行である。
【0021】
本実施形態において、シャフト130の大径部132の側面132Sの中心線平均粗さRaを2.0μm以下にしている。なお、以下の説明において、シャフト130の大径部132の側面132Sの中心線平均粗さRaを中心線平均粗さRa3と呼ぶ。なお、シャフト130の外表面の他の領域(円筒部131の側面、大径部133の側面など)の中心線平均粗さRaも2.0μm以下にすることができる。
【0022】
図2に示されるように、セラミックス基材110の下面113に、シャフト130との接合のための凸部114(以下、接合用凸部114と呼ぶ。本発明の凸部に対応する。)が設けられている。接合用凸部114の形状は、接合されるシャフト130の上面の形状と同じであることが好ましく、接合用凸部114の直径は100mm以下であることが好ましい。接合用凸部114の高さ(下面113からの高さ)は、2mm以上であればよく、5mm以上であることが好ましい。特に高さの上限に制限はないが、製作上の容易さを勘案すると、接合用凸部114の高さは20mm以下であることが好ましい。また、接合用凸部114の下面114Bは、セラミックス基材100の下面113に平行であることが好ましい。接合用凸部114の下面114Bの中心線平均粗さRaは1.6μm以下であればよい。なお、接合用凸部114の下面114Bの中心線平均粗さRaは0.4μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。
【0023】
本実施形態においては、接合用凸部114の側面SLの中心線平均粗さRaは0.1μm以下である。なお、
図8に示されるように、接合用凸部114とセラミックス基材100の下面113との間の隅部にR面取り加工(以下、単にR加工と呼ぶ)が施されている場合には、R加工された領域を含めて、接合用凸部114の側面114Sとして定義する。同様に、
図9に示されるように、接合用凸部114とセラミックス基材100の下面113との間の隅部にC面取り加工(以下、単にC加工と呼ぶ)が施されている場合には、C加工された領域を含めて、接合用凸部114の側面114Sとして定義する。この場合には、R加工(又はC加工)された領域の径方向外側の端部が、接合用凸部114とセラミックス基材100の下面113との境界となる。さらに、本実施形態においては、セラミックス基材100の下面113の、接合用凸部114との境界から5mm以内の領域S1の中心線平均粗さRaは0.1μm以下である。以下の説明において、接合用凸部114の側面SLと、セラミックス基材100の下面113の、接合用凸部114との境界から5mm以内の領域S1とを合わせた領域を、鏡面研磨領域Smと呼ぶ。
【0024】
本実施形態において、鏡面研磨領域Smには、幅3μmより広いスクラッチ痕及び幅3μmより広いマイクロクラックは存在しない。本実施形態では、後述のように、平均粒径3μmより細かい砥粒(例えば、8000番手)を用いて、鏡面研磨領域Smの研磨加工を行っている。これにより、少なくとも砥粒径(ここでは3μm)よりも大きなスクラッチ痕及びマイクロクラックが取り除かれている。なお、平均粒径1μmより細かい砥粒(例えば、14000番手)を用いて研磨加工を行うことにより、鏡面研磨領域Smのスクラッチ痕及びマイクロクロックの幅を1μm以下にすることができる。
【0025】
円筒部131の上面は、セラミックス基材110の接合用凸部114の下面114Bに固定されている。なお、シャフト130は、セラミックス基材110と同じように、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ケイ素等のセラミックス焼結体により形成されてもよい。あるいは、断熱性を高めるために、セラミックス基材110より熱伝導率の低い材料で形成されてもよい。
【0026】
図2に示されるように、シャフト130は中空の円筒形状を有しており、その内部(内径より内側の領域)には長手方向6(
図1参照)に延びる貫通孔が形成されている。シャフト130の中空の部分(貫通孔)には、ヒータ電極122に電力を供給するための給電線140と、静電吸着用電極124に電力を供給するための給電線141とが配置されている。なお、
図2においては、給電線140、141はそれぞれ1つずつしか図示されていないが、実際には複数の給電線140及び複数の給電線141が配置されている。給電線140の上端は、ヒータ電極122の中央に配置された端子部121(
図3参照)に電気的に接続されている。給電線140は、不図示のヒータ用電源に接続される。これにより、給電線140を介してヒータ電極122に電力が供給される。同様に、給電線141を介して、静電吸着用電極124に電力が供給される。
【0027】
また、
図2に示されるように、シャフト130の円筒部131には、上下方向5に延びる第2ガス流路168が形成されている。上述のように、第2ガス流路168の上端は第1ガス流路164の下端に接続されている。
【0028】
次に、セラミックスヒータ100の製造方法について説明する。以下では、セラミックス基材110及びシャフト130が窒化アルミニウムで形成される場合を例に挙げて説明する。
【0029】
まず、セラミックス基材110の製造方法について説明する。なお、説明を簡略化するために、セラミックス基材110の内部には、電極120としてヒータ電極122のみが埋設されているものとする。
図6(a)に示されるように、窒化アルミニウム(AlN)粉末を主成分とする造粒粉Pをカーボン製の有床型501に投入し、パンチ502で仮プレスする。なお、造粒粉Pには、5wt%以下の焼結助剤(例えば、Y
2O
3)が含まれることが好ましい。次に、
図6(b)に示されるように、仮プレスされた造粒粉Pの上に、所定形状に裁断されたヒータ電極122を配置する。なお、ヒータ電極122は、加圧方向に垂直な面(有床型501の底面)に平行になるように配置される。このとき、Wのペレット又はMoのペレットをヒータ電極122の端子121(
図4参照)の位置に埋設してもよい。
【0030】
図6(c)に示されるように、ヒータ電極122を覆うようにさらに造粒粉Pを有床型501に投入し、パンチ502でプレスして成形する。次に、
図6(d)に示されるように、ヒータ電極122が埋設された造粒粉Pをプレスした状態で焼成する。焼成の際に加える圧力は、1MPa以上であることが好ましい。また、1800℃以上の温度で焼成することが好ましい。次に、
図6(e)に示されるように、端子121を形成するために、ヒータ電極122までの止まり穴加工を行う。なお、ペレットを埋設した場合には、ペレットまでの止まり穴加工を行えばよい。さらに、第1ガス流路164の一部となる貫通孔を形成する。これにより、内部に第1ガス流路164が形成されたセラミックス基材110を作製することができる。この場合、ヒータ電極122が第1ガス流路164から露出しないように、予めヒータ電極122に所定の開口部を設けることが好ましい。
【0031】
なお、セラミックス基材110は以下の方法によっても製造することができる。
図7(a)に示されるように、窒化アルミニウムの造粒粉Pにバインダーを加えてCIP成型し、円板状に加工して、窒化アルミニウムの成形体510を作製する。次に、
図7(b)に示されるように、成形体510の脱脂処理を行い、バインダーを除去する。
【0032】
図7(c)に示されるように、脱脂された成形体510に、ヒータ電極122を埋設するための凹部511を形成する。成形体510の凹部511にヒータ電極122を配置し、別の成形体510を積層する。なお、凹部511は予め成形体510に形成しておいてもよい。次に、
図7(d)に示されるように、ヒータ電極122を挟むように積層された成形体510をプレスした状態で焼成し、焼成体を作製する。焼成の際に加える圧力は、1MPa以上であることが好ましい。また、1800℃以上の温度で焼成することが好ましい。焼成体を作製した後の工程は、上述の工程と同様であるので、説明を省略する。
【0033】
このようにして形成されたセラミックス基材110の上面111に対して研削を行い、ラップ加工を行う。さらに、上面111に対してサンドブラスト加工を行うことにより、上面111に複数の凸部156及び環状凸部152を形成する。このとき、複数の凸部156の高さは同じになるように加工される。また、環状凸部152の上面152aも所定の形状に加工される。なお、複数の凸部156、環状凸部152を形成するための加工方法は、サンドブラスト加工が好適であるが、他の加工方法を用いることもできる。さらに、セラミックス基材110の下面113に円筒加工を行い、下面113から突出した接合用の凸部114を形成する。
【0034】
さらに、上述の鏡面研磨領域Sm(接合用の凸部114の側面114Sと、セラミックス基材100の下面113の、接合用凸部114との境界から5mm以内の領域S1)に対して鏡面研磨加工を行った。具体的には、まず、粗加工として120番手から240番手の砥石を用いて研磨加工を行い、その後、さらに目の細かい砥石(1000番手以上)を用いて研磨加工を行った。これにより、鏡面研磨領域Smの中心線平均粗さRaを0.1μm以下にした。なお、1000番手以上の目の細かい砥石を用いて研磨加工を行うことに代えて、ラップ加工(鏡面研磨加工)を行うこともできる。あるいは、他の加工方法により研磨加工を行ってもよい。例えば、ハンドラップにより仕上げの研磨加工を行ってもよい。また、後述のように、接合用凸部114の上面114aに凹部115を形成する場合には、凹部115の表面にも研磨加工を行って、凹部115の表面の中心線平均粗さRaを0.1μm以下にすることができる。この場合には、例えばマシニングセンターを用いて砥石で研磨加工を行うことができる。
【0035】
次に、シャフト130の製造方法及びシャフト130とセラミックス基材110との接合方法について説明する。まず、バインダーを数wt%添加した窒化アルミニウムの造粒粉Pを静水圧(1MPa程度)で成形し、成形体を所定形状に加工する。このとき、成形体に第2ガス流路168となる貫通孔を形成する。なお、シャフト130の外径は、30mm~100mm程度である。シャフト130の円筒部131の端面には円筒部131の外径より大きい径を有するフランジ部133が設けられてもよい(
図5参照)。円筒部131の長さは例えば、50mm~500mmにすることができる。成形体を所定形状に加工した後、成形体を窒素雰囲気中で焼成する。例えば、1900℃の温度で2時間焼成する。そして、焼成後に焼結体を所定形状に加工することによりシャフト130が形成される。円筒部131の上面とセラミックス基材110の接合用凸部114とを、1600℃以上、1MPa以上の一軸圧力下で、拡散接合により固定することができる。この場合には、セラミックス基材110の接合用凸部114の下面114Bの中心線平均粗さRaは0.4μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。また、円筒部131の上面と接合用凸部114の下面114Bとを、接合剤を用いて接合することもできる。接合剤として、例えば、10wt%のY
2O
3を添加したAlN接合材ペーストを用いることができる。例えば、円筒部131の上面と接合用凸部114の下面114Bとの界面に上記のAlN接合剤ペーストを15μmの厚さで塗布し、上面111に垂直な方向(シャフト130の長手方向6)に5kPaの力を加えつつ、1700℃の温度で1時間加熱することにより、接合することができる。あるいは、円筒部131の上面と接合用凸部114の下面114Bとを、ねじ止め、ろう付け等によって固定することもできる。
【実施例0036】
以下、本発明について実施例1~7を用いて更に説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。なお、
図11には、実施例1~7及び比較例の結果をまとめた表が示されている。
【0037】
[実施例1]
実施例1のセラミックスヒータ100(
図2参照)について説明する。実施例1においては、5wt%の焼結助剤(Y
2O
3)を添加した窒化アルミニウム(AlN)を原料として、上述の作製方法により直径310mm、厚さ25mmのセラミックス基材110を作製した。なお、ヒータ電極122として、モリブデンメッシュ(線径0.1mm、メッシュサイズ#50、平織り)を
図4の形状に裁断したものを作製し、このようなヒータ電極122をセラミックス基材110に埋設した。同様に、
図3に示される形状の静電吸着用電極124をセラミックス基材110に埋設した。
【0038】
セラミックス基材110の上面111に、内径288mm、外径298mm、幅5mmの環状凸部152を形成した。さらに、セラミックス基材110の上面111に、直径1mm、上面111からの高さ30μmの円柱形状の複数の凸部156を形成した。上述のように、複数の凸部156は同心円状に配置されており、各凸部間の距離は10mm~20mmの範囲とした。
【0039】
第1ガス流路164の開口164aの直径は3mmである。開口164aの中心は、セラミックス基材110の中心から30mmの位置にある。
【0040】
以下の説明において、接合用凸部114の側面SLの中心線平均粗さRa1と、セラミックス基材100の下面113の、接合用凸部114との境界から5mm以内の領域S1の中心線平均粗さRa2とを総称して、鏡面研磨領域Smの中心線平均粗さRaと呼ぶ。実施例1では、鏡面研磨領域Smの中心線平均粗さRaを0.08μmとし、シャフト130の大径部132の側面132Sの中心線平均粗さRa3を1.6μmとした。同様に、シャフト130の外表面の他の領域(円筒部131の側面、大径部133の側面など)の中心線平均粗さRaも1.6μmとした。このとき、接合用凸部114の側面SLの中心線平均粗さRa1と、シャフト130の大径部132の側面132Sの中心線平均粗さRa3との比Ra1/Ra3は0.05である。また、接合用凸部114とセラミックス基材100の下面113との間の隅部にR加工が施されている。実施例1におけるR面取り寸法は0.8mmである。なお、以下の説明において、R面取り寸法が0.8mmであることを、単に、R0.8mmのように記載する。C面取り寸法を記載する場合も同様である。
【0041】
このような形状のセラミックスヒータ100をプロセスチャンバに設置し、以下の手順でセラミックスヒータ100の温度評価を行った。セラミックスヒータ100に温度評価用のシリコンウェハを載置し、セラミックスヒータ100のヒータ電極122に不図示の外部電源を接続した。プロセスチャンバ内の圧力を1Pa以下に減圧した後、プロセスチャンバ内の圧力が1000Paとなるようにアルゴンガスを流した。定常状態でシリコンウェハの上面の温度が約650℃となるように外部電源の出力電力を調整した。その後、温度評価用のシリコンウェハの、セラミックス基板110とシャフト130との接合部分及びその外縁の鏡面研磨領域Smの直上にあたる領域A(
図5参照)と、領域Aの外側に隣接した幅20mmの円環状の領域B(
図5参照)の温度分布を赤外線カメラで計測し、領域Aの平均温度と領域Bの平均温度との温度差Δを評価した。なお、温度評価用のシリコンウェハは、直径300mmのシリコンウェハの上面に厚さ30μmの黒体膜をコーティングしたものである。黒体膜とは、放射率(輻射率)が90%以上である膜であり、例えば、カーボンナノチューブを主原料とする黒体塗料をコーティングすることにより成膜することができる。
【0042】
その後、シリコンウェハの上面の温度が約200℃になるまで降温した後、再び650℃まで昇温し、さらに200℃まで降温した。このような200℃-650℃-200℃の温度サイクルを1サイクルとした。
【0043】
実施例1においては、上記の温度サイクルを100回以上繰り返した後にも、セラミックス基材110及びシャフト130にクラックの発生は認められなかった。温度評価用シリコンウェハを用いて測定した、上記の領域Aの平均温度と領域Bの平均温度との温度差Δは1.8℃であった。
【0044】
[実施例2]
実施例2のセラミックスヒータ100は、鏡面研磨領域Smの中心線平均粗さRaと、接合用凸部114とセラミックス基材100の下面113との間の隅部の形状が異なる点を除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様である。実施例2では、鏡面研磨領域Smの中心線平均粗さRaを0.03μmとした。このとき、中心線平均粗さRa1と中心線平均粗さRa3の比Ra1/Ra3は0.019であった。また、接合用凸部114とセラミックス基材100の下面113との間の隅部にR0.3mmでR加工を施した。
【0045】
このような形状のセラミックスヒータ100をプロセスチャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用シリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でセラミックスヒータ100の温度評価を行った。実施例2において、上記の温度サイクルを100回以上繰り返した後にも、セラミックス基材110及びシャフト130にクラックの発生は認められなかった。温度評価用シリコンウェハを用いて測定した、上記の領域Aの平均温度と領域Bの平均温度との温度差Δは2.2℃であった。
【0046】
[実施例3]
実施例3のセラミックスヒータ100は、鏡面研磨領域Smの中心線平均粗さRaと、接合用凸部114とセラミックス基材100の下面113との間の隅部の形状が異なる点を除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様である。実施例3では、実施例2と同様に、鏡面研磨領域Smの中心線平均粗さRaを0.03μmとした。このとき、中心線平均粗さRa1と中心線平均粗さRa3の比Ra1/Ra3は0.019であった。また、接合用凸部114とセラミックス基材100の下面113との間の隅部にC0.3mmでC加工を施した。
【0047】
このような形状のセラミックスヒータ100をプロセスチャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用シリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でセラミックスヒータ100の温度評価を行った。実施例2において、上記の温度サイクルを100回以上繰り返した後にも、セラミックス基材110及びシャフト130にクラックの発生は認められなかった。温度評価用シリコンウェハを用いて測定した、上記の領域Aの平均温度と領域Bの平均温度との温度差Δは2.4℃であった。
【0048】
[実施例4]
実施例4のセラミックスヒータ100は、シャフト130の大径部132の側面132Sの中心線平均粗さRa3と、接合用凸部114とセラミックス基材100の下面113との間の隅部の形状が異なる点を除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様である。実施例4では、シャフト130の大径部132の側面132Sの中心線平均粗さRa3を0.15μmとした。同様に、シャフト130の外表面の他の領域(円筒部131の側面、大径部133の側面など)の中心線平均粗さRaも0.15μmとした。このとき、中心線平均粗さRa1と中心線平均粗さRa3の比Ra1/Ra3は0.53であった。また、接合用凸部114とセラミックス基材100の下面113との間の隅部にR3mmでR加工を施した。
【0049】
このような形状のセラミックスヒータ100をプロセスチャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用シリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でセラミックスヒータ100の温度評価を行った。実施例2において、上記の温度サイクルを100回以上繰り返した後にも、セラミックス基材110及びシャフト130にクラックの発生は認められなかった。温度評価用シリコンウェハを用いて測定した、上記の領域Aの平均温度と領域Bの平均温度との温度差Δは2.8℃であった。
【0050】
[実施例5]
実施例5のセラミックスヒータ100は、シャフト130の大径部132の側面132Sの中心線平均粗さRa3と、接合用凸部114とセラミックス基材100の下面113との間の隅部の形状が異なる点を除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様である。実施例5では、シャフト130の大径部132の側面132Sの中心線平均粗さRa3を0.80μmとした。同様に、シャフト130の外表面の他の領域(円筒部131の側面、大径部133の側面など)の中心線平均粗さRaも0.80μmとした。このとき、中心線平均粗さRa1と中心線平均粗さRa3の比Ra1/Ra3は0.1であった。また、接合用凸部114とセラミックス基材100の下面113との間の隅部にR3mmでR加工を施した。
【0051】
このような形状のセラミックスヒータ100をプロセスチャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用シリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でセラミックスヒータ100の温度評価を行った。実施例2において、上記の温度サイクルを100回以上繰り返した後にも、セラミックス基材110及びシャフト130にクラックの発生は認められなかった。温度評価用シリコンウェハを用いて測定した、上記の領域Aの平均温度と領域Bの平均温度との温度差Δは3.0℃であった。
【0052】
[実施例6]
実施例6のセラミックスヒータ100は、シャフト130の大径部132の側面132Sの中心線平均粗さRa3と、接合用凸部114とセラミックス基材100の下面113との間の隅部の形状が異なる点を除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様である。実施例6では、シャフト130の大径部132の側面132Sの中心線平均粗さRa3を3.2μmとした。同様に、シャフト130の外表面の他の領域(円筒部131の側面、大径部133の側面など)の中心線平均粗さRaも3.2μmとした。このとき、中心線平均粗さRa1と中心線平均粗さRa3の比Ra1/Ra3は0.025であった。また、接合用凸部114とセラミックス基材100の下面113との間の隅部にR3mmでR加工を施した。
【0053】
このような形状のセラミックスヒータ100をプロセスチャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用シリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でセラミックスヒータ100の温度評価を行った。実施例2において、上記の温度サイクルを100回以上繰り返した後にも、セラミックス基材110及びシャフト130にクラックの発生は認められなかった。温度評価用シリコンウェハを用いて測定した、上記の領域Aの平均温度と領域Bの平均温度との温度差Δは4.4℃であった。
【0054】
[実施例7]
実施例7のセラミックスヒータ100は、シャフト130の大径部132の側面132Sの中心線平均粗さRa3が異なる点を除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様である。実施例7では、シャフト130の大径部132の側面132Sの中心線平均粗さRa3を0.08μmとした。同様に、シャフト130の外表面の他の領域(円筒部131の側面、大径部133の側面など)の中心線平均粗さRaも0.08μmとした。このとき、中心線平均粗さRa1と中心線平均粗さRa3の比Ra1/Ra3は1.0であった。
【0055】
このような形状のセラミックスヒータ100をプロセスチャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用シリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でセラミックスヒータ100の温度評価を行った。実施例2において、上記の温度サイクルを100回以上繰り返した後にも、セラミックス基材110及びシャフト130にクラックの発生は認められなかった。温度評価用シリコンウェハを用いて測定した、上記の領域Aの平均温度と領域Bの平均温度との温度差Δは2.8℃であった。
【0056】
[比較例]
比較例の基板保持部材は、鏡面研磨領域Smの中心線平均粗さRaが0.5μmである点を除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様である。比較例において、中心線平均粗さRa1と中心線平均粗さRa3の比Ra1/Ra3は0.31であった。
【0057】
このような形状の基板保持部材をプロセスチャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用シリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でセラミックスヒータ100の温度評価を行った。比較例においては、上記の温度サイクルを200回繰り返す前に、セラミックス基材110及びシャフト130にクラックが発生したことが認められた。温度評価用シリコンウェハを用いて測定した、上記の領域Aの平均温度と領域Bの平均温度との温度差Δは3.5℃であった。
【0058】
<実施形態の作用効果>
上記実施形態及び実施例1~7において、セラミックスヒータ100は、円板状のセラミックス基材110と、セラミックス基材110に埋設された電極120(ヒータ電極122及び静電吸着用電極124)とを備えている。セラミックス基材110の下面113には、下方に突出する接合用凸部114が設けられている。接合用凸部114には、円筒状のシャフト130が接合されている。鏡面研磨領域Smの中心線平均粗さRaは0.1μm以下である。言い換えると、接合用凸部114の側面SLの中心線平均粗さRa1は0.1μm以下であり、セラミックス基材100の下面113の、接合用凸部114との境界から5mm以内の領域S1の中心線平均粗さRa2は0.1μm以下である。
【0059】
実施例1~7と比較例とを比較すると、鏡面研磨領域Smの中心線平均粗さRaを0.1μm以下とすることにより、上記の温度サイクルを100回以上繰り返した後にも、セラミックス基材110及びシャフト130にクラックが発生しないセラミックスヒータを作製することができた。発明者らの知見によれば、その理由は以下の通りであると考えられる。実施例1~7のように、鏡面研磨領域Smの中心線平均粗さRaを0.1μm以下とすると、鏡面研磨領域Smの表面が鏡面状になり、マイクロクラックが低減する。その結果、セラミックスヒータ100のヒータ電極122に通電して昇温する際に、鏡面研磨領域Smにかかる熱応力に対して耐性が大きくなる。これにより、鏡面研磨領域Smにおけるクラックの発生、特に、セラミックス基材100の下面113の、接合用凸部114との境界を起点とするクラックの発生を抑制することができる。また、鏡面研磨領域Smにおいて、表面の凹凸が小さくなるため、表面積を小さくすることができ、鏡面研磨領域Smからの熱放射を少なくすることができる。その結果、セラミックス基材100の上面111の、シャフト130の直上に対応する部分の温度低下を抑制でき、加熱対象となるウェハ10の均熱化に寄与することができる。
【0060】
なお、一般に、セラミックスを研削、研磨加工した場合には、セラミックスの表面にスクラッチ痕が残り、スクラッチ痕を起点としたマイクロクラックが発生することが知られている。また、マイクロクラックに熱応力が働くと、マイクロクラックを起点としてさらに大きなクラックへと進展する場合がある。本実施形態においては、上述のように、鏡面研磨領域Smには、幅3μmより広いスクラッチ痕及び幅3μmより広いマイクロクロックは存在しない。そのため、スクラッチ痕を起点としてマイクロクラックが発生することや、マイクロクラックがさらに大きなクラックへと進展することを抑制することができる。
【0061】
実施例1~3、7において、接合用凸部114とセラミックス基材100の下面113との境界におけるR面取り寸法又はC面取り寸法は、いずれも1mm未満である。この場合には、従来のような、接合用凸部114とセラミックス基材100の下面113との境界の隅部のR面取り寸法(又はC面取り寸法)が5mm程度である場合と比較して、セラミックス基体110とシャフト130との接合部分近傍での伝熱が抑制される。これにより、特に、セラミックス基材100の上面111の、シャフト130の大径部132の外縁部分の直上に対応する部分の均熱化に寄与することができる。
【0062】
上記実施形態及び実施例1~7において、シャフト130は、接合用凸部114と同径であって、接合用凸部114に接合される大径部132を備えている。ここで、実施例1~5に示されるように、接合用凸部114の側面SLの中心線平均粗さRa1とシャフト130の大径部132の側面132Sの中心線平均粗さRa3との比Ra1/Ra3を0.01以上0.9以下にすることができる。
【0063】
なお、シャフト130の下端には、チャンバとの気密のために用いられるOリングなどの比較的熱に弱い部材が用いられている。そのため、シャフト130の下端まで伝わる熱量が大きくなると、Oリングなどが破損するおそれがある。実施例1-5のように、シャフト130の大径部132の側面132Sの中心線平均粗さRa3が、接合用凸部114の側面114Sの中心線平均粗さRa1よりも大きい場合には、シャフト130の大径部132の側面132Sでの熱放射を高めることができる。シャフト130の大径部132は、シャフト130の上端に位置しているので、この部分での熱放射を高めることにより、熱がシャフト130の下端に向かって伝わることを抑制することができる。これにより、シャフト130の下端に設けられているOリングなどの熱に弱い部材の破損を抑制し、寿命を延ばすことに寄与することができる。なお、シャフト130の大径部132の側面132Sの中心線平均粗さRa3は2.0μm以下であることが好ましい。そのため、上述の比Ra1/Ra3を0.01未満にしようとすると、接合用凸部114の側面114Sの中心線平均粗さRa1を0.02μm以下にしなければならず、加工が困難となる。また、上述の比Ra1/Ra3を0.9より大きくした場合には、接合用凸部114の側面114Sの中心線平均粗さRa1が、シャフト130の大径部132の側面132Sの中心線平均粗さRa3と比べて同程度以上に大きくなる。そのため、特に、接合用凸部114の側面114Sにおける熱放射が大きくなるため、セラミックス基材100の上面111の、接合用凸部114の側面114Sの直上に対応する部分の温度分布の均熱性が悪くなってしまう。
【0064】
<変更形態>
上述の実施形態は、あくまで例示に過ぎず、適宜変更しうる。例えば、セラミックス基材110、シャフト130の形状、寸法は上記実施形態のものには限られず、適宜変更しうる。環状凸部152の高さ、幅等の寸法、環状凸部152の上面152aの断面形状、上面152aの中心線平均粗さRaの大きさは適宜変更しうる。
【0065】
複数の凸部156の高さ、上面156aの形状、上面156aの中心線平均粗さRaの大きさは適宜変更しうる。例えば、複数の凸部156の上面156aの形状は必ずしも円形でなくてもよく、任意の形状にすることができる。なお、その場合においても、直径0.1mm~5mmの円と同程度の面積を有することが好ましい。また、上記説明において、複数の凸部156は同心円状に分布するように配置されていたが、本発明はそのような態様には限られない。例えば、複数の凸部156が、正三角形、正四角形の各頂点の位置に分布するように、格子状に連続的に配列されてもよく、複数の凸部156がランダムな位置に分布するように配置されていてもよい。その場合であっても、複数の凸部156の、各凸部の離間距離は、1.5mm~30mmの範囲にあることが好ましい。
【0066】
上記実施形態及び上記実施例1~7において、接合用凸部114の側面SLの中心線平均粗さRa1と、セラミックス基材100の下面113の、接合用凸部114との境界から5μm以内の領域S1の中心線平均粗さRa2はとは、同じであった。しかしながら本発明はそのような態様には限られない。中心線平均粗さRa1が0.1μm以下であり、中心線平均粗さRa2が0.1μm以下である限りにおいて、中心線平均粗さRa1及び中心線平均粗さRa2をそれぞれ適宜の値に調整しうる。
【0067】
図10(a)に示されるように、接合用凸部114の下面114Bの、シャフト130の大径部132の内側の領域には、ヒータ電極122に給電するための給電線140や静電吸着用電極124に給電するための給電線141を配置するための端子孔142が設けられる。この端子孔142においてもクラックが発生するおそれがある。そこで、端子孔142の内壁の表面の中心線平均粗さを0.1μm以下にすることにより、端子孔142においてクラックが発生することを抑制することができる。また、端子孔142の内壁の表面の中心線平均粗さを0.1μm以下にすることにより、端子孔142においてクラックが発生することをさらに抑制することができる。なお、端子孔142の内壁の、側壁と底壁との隅部において、クラックが発生するおそれが高いと考えられる。そこで、端子孔142の側壁の中心線平均粗さRaと、底壁の、側壁と底壁との境界から5mm以内の領域の中心線平均粗さRaとを2.0μm以下にすることにより、端子孔142の内壁の、側壁と底壁との隅部にクラックが発生することを抑制することができる。なお、端子孔142の側壁の中心線平均粗さRaと、底壁の、側壁と底壁との境界から5mm以内の領域の中心線平均粗さRaとを0.1μm以下にすることにより、端子孔142の内壁の、側壁と底壁との隅部にクラックが発生することをさらに抑制することができる。
【0068】
図10(b)に示されるように、接合用凸部114の下面114Bの、シャフト130の大径部132の内側の領域に、凹部145を設けることができる。凹部145を設けることにより、接合用凸部114の下面114Bの、シャフト130の大径部132の上面と接合される円環状の部分を、他の部分よりも下方に突出させることができる。これにより、接合用凸部114の接合面である下面114Bに対して行われる鏡面研磨加工の面積を抑制して、生産性を向上させることができる。しかしながら、凹部145においてもクラックが発生するおそれがある。そこで、凹部145の内壁の表面の中心線平均粗さを2.0μm以下にすることにより、凹部145においてクラックが発生することを抑制することができる。また、凹部145の内壁の表面の中心線平均粗さを0.1μm以下にすることにより、凹部145においてクラックが発生することをさらに抑制することができる。なお、凹部145の内壁の、側壁と底壁との隅部において、クラックが発生するおそれが高いと考えられる。そこで、凹部145の側壁の中心線平均粗さRaと、底壁の、側壁と底壁との境界から5mm以内の領域の中心線平均粗さRaとを2.0μm以下にすることにより、凹部145の内壁の、側壁と底壁との隅部にクラックが発生することを抑制することができる。なお、凹部145の側壁の中心線平均粗さRaと、底壁の、側壁と底壁との境界から5mm以内の領域の中心線平均粗さRaとを0.1μm以下にすることにより、凹部145の内壁の、側壁と底壁との隅部にクラックが発生することをさらに抑制することができる。
【0069】
上記実施形態においては、ヒータ電極122として、モリブデン、タングステン、モリブデン及び/又はタングステンを含む合金を用いていたが、本発明はそのような態様には限られない。例えば、モリブデン、タングステン以外の金属又は合金を用いることもできる。また、電極120は発熱体としてのヒータ電極122を含んでいた。しかしながら、電極120は必ずしも発熱体としてのヒータ電極122を含む必要は無く、例えば、発熱体として高周波電極を含んでいてもよい。
【0070】
上記実施形態においては、セラミックスヒータ100はセラミックス基材110に埋設された電極120(ヒータ電極122及び静電吸着用電極124)を備えていたが、本発明はそのような態様には限られず、電極120はセラミックスヒータ100のセラミックス基材110に埋設されていなくてもよい。例えば、電極120としてのヒータ電極122又は高周波電極がセラミックス基材110の裏面113に貼付されていてもよい。
【0071】
上記実施形態においては、シャフト130は大径部132、133を備えていたが、本発明はそのような態様には限られず、必ずしもシャフト130は大径部132、133を備えていなくてもよい。また、シャフト130の円筒部131に、上下方向5に延びる第2ガス流路168が形成されていなくてもよい。例えば、第2ガス流路168に代えて、円筒部131の中空の領域(給電線140が設けられている領域)に、別途ガスの配管を設けることもできる。
【0072】
以上、発明の実施形態及びその変更形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることが当業者に明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが請求の範囲の記載からも明らかである。
【0073】
明細書、及び図面中において示した製造方法における各処理の実行順序は、特段に順序が明記されておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるので無い限り、任意の順序で実行しうる。便宜上、「まず、」「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するわけではない。