(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176717
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/02 20060101AFI20231206BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G03G15/02 102
G03G21/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089152
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】古川 利郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 光二
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200FA18
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA33
2H200GA44
2H200HA04
2H200HA12
2H200HA29
2H200HA30
2H200HB03
2H200HB48
2H200NA02
2H200NA11
2H200PA03
2H200PA04
2H200PA05
2H200PA06
2H200PB02
2H200PB05
2H200PB22
2H270LA04
2H270LA64
2H270MA01
2H270MB32
2H270MB43
2H270MG01
2H270MH09
2H270QB07
2H270QB09
2H270RC17
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】複数の帯電部材を有する画像形成装置において、全ての帯電部材に対してクリーニングが完了したことを少ない回数で判断することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】制御装置10は、少なくとも1つの帯電ワイヤ521において、異常を検出する直前のワイヤ電圧と異常を検出した後のワイヤ電圧との電圧差が閾値よりも大きいと判断すると、グリッド電流検出信号に基づいて、複数のグリッドそれぞれに流れるグリッド電流の最大値と最小値との差が所定範囲内であるか否かを判断する。制御装置10は、グリッド電流の最大値と最小値との差が所定範囲内であれば、複数の帯電ワイヤ521の全てに対してクリーニングされた状態であると判断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の感光体と、
帯電ワイヤと、前記帯電ワイヤと前記感光体との間に位置するグリッドとを有し、前記複数の感光体を帯電させる複数の帯電器と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記帯電ワイヤと前記感光体との間にコロナ放電を発生させる電圧を前記帯電ワイヤに出力し、前記コロナ放電に伴い前記グリッドに電圧を発生させる電圧出力回路と、
前記帯電ワイヤへの印加電圧であるワイヤ電圧の大きさに応じたワイヤ電圧検出信号を出力するワイヤ電圧検出回路と、
前記グリッドに流れる電流であるグリッド電流に応じたグリッド電流検出信号を出力するグリッド電流検出回路と、
を備え、
前記制御部は、
前記帯電器の異常を検出した場合に、前記帯電ワイヤに対するクリーニングを促す通知をし、その後に、前記複数の帯電ワイヤに対するクリーニングが実行されたか否かを判断するクリーニング確認処理を実行し、
前記クリーニング確認処理では、
複数の前記グリッドに各設定電圧が印加されるように前記複数の帯電ワイヤにワイヤ電圧を出力し、
複数の前記帯電ワイヤの前記ワイヤ電圧に応じた前記ワイヤ電圧検出信号に基づいて、前記帯電器の異常を検出する直前の前記ワイヤ電圧と、前記帯電器の異常を検出した後の前記ワイヤ電圧との電圧差が所定の閾値よりも大きいか否かを判断し、
少なくとも1つの前記帯電ワイヤにおいて前記電圧差が前記閾値よりも大きいと判断すると、前記グリッド電流検出信号に基づいて、前記複数のグリッドそれぞれに流れるグリッド電流の最大値と最小値との差が所定範囲内であるか否かを判断し、
前記グリッド電流の最大値と最小値との差が前記所定範囲内であれば、前記複数の帯電ワイヤの全てに対してクリーニングされた状態であると判断する、
画像形成装置。
【請求項2】
複数の感光体と、
帯電ワイヤと、前記帯電ワイヤと前記感光体との間に位置するグリッドとを有し、前記複数の感光体を帯電させる複数の帯電器と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記帯電ワイヤと前記感光体との間にコロナ放電を発生させる電圧を前記帯電ワイヤに出力し、前記コロナ放電に伴い前記グリッドに電圧を生じさせる電圧出力回路と、
前記帯電ワイヤへの印加電圧であるワイヤ電圧の大きさに応じたワイヤ電圧検出信号を出力するワイヤ電圧検出回路と、
前記グリッドに流れる電流であるグリッド電流に応じたグリッド電流検出信号を出力するグリッド電流検出回路と、
を備え、
前記制御部は、
前記帯電器の異常を検出した場合に、前記帯電ワイヤに対するクリーニングを促す通知をし、その後に、前記複数の帯電ワイヤに対するクリーニングが実行されたか否かを判断するクリーニング確認処理を実行し、
前記クリーニング確認処理では、
前記ワイヤ電圧が目標電圧に近づくように前記複数の帯電ワイヤに電圧を出力し、
複数の前記グリッドの前記グリッド電流に応じた前記グリッド電流検出信号に基づいて、前記帯電器の異常を検出する直前の前記グリッド電流と、前記帯電器の異常を検出した後の前記グリッド電流との電流差が所定の閾値よりも大きいか否かを判断し、
少なくとも1つの前記グリッドにおいて前記グリッド電流の差が前記閾値よりも大きいと判断すると、前記グリッド電流検出信号に基づいて、前記複数のグリッドそれぞれに流れるグリッド電流の最大値と最小値との差が所定範囲内であるか否かを判断し、
前記グリッド電流の最大値と最小値との差が前記所定範囲内であれば、前記複数の帯電ワイヤの全てに対してクリーニングされた状態であると判断する、
画像形成装置。
【請求項3】
前記複数の帯電器のうち、2つ以上の前記帯電器は、前記電圧出力回路に対して並列に接続されている請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記グリッドに印加される電圧であるグリッド電圧を調整する、複数のグリッド電圧調整回路を備える、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記グリッド電流検出信号に基づいて、前記グリッドに流れるグリッド電流が目標電流に近づくように、前記電圧出力回路に前記帯電ワイヤへの出力を制御させる定電流制御を実行可能であり、
前記クリーニング確認処理では、前記帯電器の異常を検出した後において、前記ワイヤ電圧検出信号を取得するときに、前記電圧出力回路を前記定電流制御する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ワイヤ電圧検出信号に基づいて、前記帯電ワイヤへの印加電圧であるワイヤ電圧が目標電圧に近づくように、前記電圧出力回路に、前記帯電ワイヤへの出力を制御させる定電圧制御を実行可能であり、
前記クリーニング確認処理では、前記帯電器の異常を検出した後において、前記グリッド電流検出信号を取得するときに、前記電圧出力回路を前記定電圧制御する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記グリッドに生じるグリッド電圧の大きさに応じたグリッド電圧検出信号を出力するグリッド電圧検出回路を備え、
前記クリーニング確認処理では、
前記帯電器の異常を検出する直前に出力された前記ワイヤ電圧検出信号、前記グリッド電圧検出信号、及び前記グリッド電流検出信号に基づいて、前記グリッド電流に対する、前記帯電ワイヤから前記グリッド間の電圧差との関係を示す第1関係式を決定し、決定された前記第1関係式において、特定グリッド電流に対応する、前記帯電ワイヤから前記グリッド間の電圧差を示す第1電圧予測値を取得し、
前記帯電器の異常を検出した後に取得された前記ワイヤ電圧検出信号、前記グリッド電圧検出信号、及び前記グリッド電流検出信号に基づいて、前記グリッド電流に対する、前記帯電ワイヤから前記グリッド間の電圧差との関係を示す第2関係式を決定し、決定された前記第2関係式において、前記特定グリッド電流に対応する、前記帯電ワイヤから前記グリッド間の電圧差である第2電圧予測値を取得し、
前記第1電圧予測値と、前記第2電圧予測値との差が所定の閾値よりも大きければ、前記電圧差が所定の閾値よりも大きいと判断する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記クリーニング確認処理では、
少なくとも1つの前記帯電ワイヤにおいて前記電圧差が前記閾値よりも大きいと判断すると、
前記複数のグリッドそれぞれ前記第2電圧予測値のうち、最大値と、最小値とを取得し、
取得された前記第2電圧予測値の最大値と、前記第2電圧予測値の最小値との差が前記所定範囲内であれば、前記複数の帯電ワイヤの全てに対してクリーニングされた状態であると判断する請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記グリッドに生じるグリッド電圧の大きさに応じたグリッド電圧検出信号を出力するグリッド電圧検出回路を備え、
前記クリーニング確認処理では、
前記帯電器の異常を検出した直前に出力された前記ワイヤ電圧検出信号、前記グリッド電圧検出信号、及び前記グリッド電流検出信号に基づいて、前記グリッド電流に対する、前記帯電ワイヤから前記グリッド間の電圧差との第1関係式を決定し、決定された前記第1関係式において、特定の電圧差に対応するグリッド電流を第1電流予測値として取得し、
前記帯電器の異常を検出した後に取得された前記ワイヤ電圧検出信号、前記グリッド電圧検出信号、及び前記グリッド電流検出信号に基づいて、前記グリッド電流に対する、前記帯電ワイヤから前記グリッド間の電圧差との第2関係式を決定し、決定された前記第2関係式において、前記特定の前記電圧差に対応する前記グリッド電流を第2電流予測値として取得し、
前記第1電流予測値と、前記第2電流予測値との差が所定の閾値よりも大きければ、前記グリッド電流の差が所定の閾値よりも大きいと判断する請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記クリーニング確認処理では、
少なくとも1つの前記グリッドにおいて前記電圧差が前記閾値よりも大きいと判断すると、
前記複数のグリッドそれぞれの前記第2電流予測値のうち、最大値と、最小値とを取得し、
取得された前記第2電流予測値の最大値と、前記第2電流予測値の最小値との差が前記所定範囲内であれば、前記複数の帯電ワイヤの全てに対してクリーニングされた状態であると判断する請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記クリーニング確認処理では、
前記グリッド電流をIgとし、ワイヤ電圧をVw、グリッド電圧をVgとし、前記帯電ワイヤの帯電開始時における前記帯電ワイヤからグリッド間の前記電圧差をVthとし、比例係数をkとすると、
前記第1関係式及び前記第2関係式は、
Vw-Vg=Ig×k+Vth
として決定される請求項7~10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
開口を有する筐体と、
前記筐体に対して前記開口を開閉可能に取り付けられたカバーと、
前記カバーが閉位置から開位置へ変化したことを検出する開閉センサと、
を備え、
前記感光体及び前記帯電器は、前記開口を通して前記筐体内に装着可能であり、
前記制御部は、前記開閉センサにより前記カバーが開位置から閉位置に変化したことが検出された場合に、前記クリーニング確認処理を開始する、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材により感光体を帯電させて画像を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の帯電部材を有する画像形成装置において、異常放電の発生に伴い、ユーザに帯電部材のクリーニングを促す装置が記載されている。画像形成装置は、帯電部材のクリーニングが行われると、帯電部材を構成する帯電ワイヤに生じる電圧を維持した状態で、グリッドに流れる電流を目標電流で安定させることができた場合、帯電ワイヤがクリーニングされたことを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置が複数の帯電部材を備える構成では、1つの帯電部材に対してクリーニングが完了された場合でも、他の帯電部材に対してクリーニングが行われていない場合がある。この場合、画像形成装置を駆動させることで、クリーニングが完了されていない帯電部材により異常放電が再発する場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みたものであり、複数の帯電部材を有する画像形成装置において、対象となる全ての帯電部材に対してクリーニングが完了したことを少ない回数で判断することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本明細書に開示された画像形成装置では、複数の感光体と、帯電ワイヤと、帯電ワイヤと感光体との間に位置するグリッドとを有し、複数の感光体を帯電させる複数の帯電器と、帯電ワイヤと感光体との間にコロナ放電を発生させる電圧を帯電ワイヤに出力し、コロナ放電に伴いグリッドに電圧を発生させる電圧出力回路と、帯電ワイヤへの印加電圧であるワイヤ電圧の大きさに応じたワイヤ電圧検出信号を出力するワイヤ電圧検出回路と、グリッドに流れる電流であるグリッド電流に応じたグリッド電流検出信号を出力するグリッド電流検出回路と、制御部と、を備えている。制御部は、帯電器の異常を検出した場合に、前記帯電ワイヤに対するクリーニングを促す通知をし、その後に、複数の帯電ワイヤに対するクリーニングが実行されたか否かを判断するクリーニング確認処理を実行する。クリーニング確認処理では、複数のグリッドに各設定電圧が印加されるように複数の帯電ワイヤにワイヤ電圧を出力し、複数の帯電ワイヤのワイヤ電圧に応じたワイヤ電圧検出信号に基づいて、帯電器の異常を検出する直前のワイヤ電圧と、帯電器の異常を検出した後のワイヤ電圧との電圧差が所定の閾値よりも大きいか否かを判断し、少なくとも1つの帯電ワイヤにおいてワイヤ電圧の差が閾値よりも大きいと判断すると、グリッド電流検出信号に基づいて、複数のグリッドそれぞれに流れるグリッド電流の最大値と最小値との差が所定範囲内であるか否かを判断し、グリッド電流の最大値と最小値との差が所定範囲内であれば、複数の帯電ワイヤの全てに対してクリーニングされた状態であると判断する。
【0007】
上記構成では、ワイヤ電圧検出信号に基づいて、帯電器の異常が検出された直前のワイヤ電圧と、帯電器の異常が検出された後のワイヤ電圧との差が所定の閾値よりも大きいか否かが判断される。帯電ワイヤへの印加電圧であるワイヤ電圧が目標電圧に近づくように複数の帯電ワイヤに電圧を出力し、少なくとも1つ帯電ワイヤにおいて、ワイヤ電圧の差が閾値よりも大きいと判断されると、グリッド電流検出信号に基づいて、複数のグリッド電流のうち最大値と最小値との差が所定範囲内であるか否かが判断される。複数のグリッド電流の最大値と最小値との差が所定範囲内であれば、複数の帯電ワイヤの全てに対してクリーンニングされた状態であると判断される。これにより、複数の帯電ワイヤを有する画像形成装置において、全ての帯電ワイヤに対してクリーニングが完了したことを少ない回数で判断することができる。
【0008】
画像形成装置の制御部は、クリーニング確認処理において、複数のグリッドのグリッド電流に応じたグリッド電流検出信号に基づいて、帯電器の異常を検出する直前のグリッド電流と、帯電器の異常を検出した後のグリッド電流との電流差が所定の閾値よりも大きいか否かを判断し、少なくとも1つのグリッドにおいてグリッド電流の差が閾値よりも大きいと判断すると、グリッド電流検出信号に基づいて、複数のグリッドそれぞれに流れるグリッド電流の最大値と最小値との差が所定範囲内であるか否かを判断し、グリッド電流の最大値と最小値との差が所定範囲内であれば、複数の帯電ワイヤの全てに対してクリーニングされた状態であると判断してもよい。
【0009】
複数の帯電器のうち、2つ以上の帯電器は、電圧出力回路に対して並列に接続されている。2つ以上の帯電器が、電圧出力回路に対して並列に接続されている構成では、付着する付着物の量によって各帯電器の内部抵抗が異なり、帯電器の異常の前後での電流又は電圧の変化のみでは全ての帯電器に対してクリーニングが完了したことを判断できない場合がある。このような場合においても、判断対象となる全ての帯電器に対してクリーニングが完了したか否かを判断することが可能となる。
【0010】
制御部は、グリッドに印加される電圧であるグリッド電圧を調整する複数のグリッド電圧調整回路を備える。このような構成においても、判断対象となる全ての帯電器に対してクリーニングが完了したか否かを判断することが可能となる。
【0011】
制御部は、グリッド電流検出信号に基づいて、グリッドに流れるグリッド電流が目標電流に近づくように、電圧出力回路に帯電ワイヤへの出力を制御させる定電流制御を実行可能であり、クリーニング確認処理では、帯電器の異常を検出した後において、ワイヤ電圧検出信号を取得するときに、電圧出力回路を定電流制御する。上記構成では、クリーニング確認処理において、グリッド電流が一定の値に制御された状態で、帯電器の異常を検出した後のワイヤ電圧の変化を判断することができるため、クリーニングが実行された否かの判断精度を高めることができる。
【0012】
制御部は、ワイヤ電圧検出信号に基づいて、帯電ワイヤへの印加電圧であるワイヤ電圧が目標電圧に近づくように、電圧出力回路に、帯電ワイヤへの出力を制御させる定電圧制御を実行可能であり、クリーニング確認処理では、帯電器の異常を検出した後において、グリッド電流検出信号を取得するときに、電圧出力回路を定電圧制御する。上記構成では、クリーニング確認処理では、ワイヤ電圧が一定の値に制御された状態で、帯電器の異常を検出した後のグリッド電流の変化を判断することができるため、クリーニングが実行されたか否かの判断精度を高めることができる。
【0013】
グリッドに生じるグリッド電圧の大きさに応じたグリッド電圧検出信号を出力するグリッド電圧検出回路を備え、クリーニング確認処理では、帯電器の異常を検出する直前に出力されたワイヤ電圧検出信号、グリッド電圧検出信号、及びグリッド電流検出信号に基づいて、グリッド電流に対する、帯電ワイヤからグリッド間の電圧差との関係を示す第1関係式を決定し、決定された第1関係式において、特定グリッド電流に対応する、帯電ワイヤからグリッド間の電圧差を示す第1電圧予測値を取得し、帯電器の異常を検出した後に取得されたワイヤ電圧検出信号、グリッド電圧検出信号、及びグリッド電流検出信号に基づいて、グリッド電流に対する、帯電ワイヤからグリッド間の電圧差との関係を示す第2関係式を決定し、決定された第2関係式において、特定グリッド電流に対応する、帯電ワイヤからグリッド間の電圧差である第2電圧予測値を取得し、第1電圧予測値と、第2電圧予測値との差が所定の閾値よりも大きければ、ワイヤ電圧の差が所定の閾値よりも大きいと判断する。上記構成では、複数の帯電ワイヤ間で、電圧にばらつきが生じる場合でも、平準化された比較対象である電圧予測値により判断を行うことができるため、全ての帯電器に対してクリーニングが実行されているか否かの判断精度を高めることができる。
【0014】
クリーニング確認処理では、少なくとも1つの帯電ワイヤにおいてワイヤ電圧の差が閾値よりも大きいと判断すると、複数のグリッドそれぞれの第2電圧予測値のうち、最大値と、最小値とを取得し、取得された第2電圧予測値の最大値と、第2電圧予測値の最小値との差が所定範囲内であれば、複数の帯電ワイヤの全てに対してクリーニングされた状態であると判断する。上記構成では、全ての帯電器に対してクリーニングが実行されているか否かの判断精度を高めることができる。
【0015】
グリッドに生じるグリッド電圧の大きさに応じたグリッド電圧検出信号を出力するグリッド電圧検出回路を備え、クリーニング確認処理では、帯電器の異常を検出した直前に出力されたワイヤ電圧検出信号、グリッド電圧検出信号、及びグリッド電流検出信号に基づいて、グリッド電流に対する、帯電ワイヤからグリッド間の電圧差との第1関係式を決定し、決定された第1関係式において、特定の電圧差に対応するグリッド電流を第1電流予測値として取得し、帯電器の異常を検出した後に取得されたワイヤ電圧検出信号、グリッド電圧検出信号、及びグリッド電流検出信号に基づいて、グリッド電流に対する、帯電ワイヤからグリッド間の電圧差との第2関係式を決定し、決定された第2関係式において、特定の電圧差に対応するグリッド電流を第2電流予測値として取得し、第1電流予測値と、第2電流予測値との差が所定の閾値よりも大きければ、グリッド電流の差が所定の閾値よりも大きいと判断する。上記構成では、複数のグリッド間でグリッド電流にばらつきが生じる場合でも、平準化された比較対象である電流予測値により判断を行うことができるため、全ての帯電器に対してクリーニングが実行されているか否かの判断を、精度よく行うことができる。
【0016】
クリーニング確認処理では、少なくとも1つのグリッドにおいてワイヤ電圧の差が閾値よりも大きいと判断すると、複数のグリッドそれぞれの第2電流予測値のうち、最大値と、最小値とを取得し、取得された第2電流予測値の最大値と、第2電流予測値の最小値との差が所定範囲内であれば、複数の帯電ワイヤの全てに対してクリーニングされた状態であると判断する。上記構成では、全ての帯電器に対してクリーニングが実行されているか否かの判断精度を高めることができる。
【0017】
クリーニング確認処理では、グリッド電流をIgとし、ワイヤ電圧をVw、グリッド電圧をVgとし、帯電ワイヤの帯電開始時における帯電ワイヤからグリッド間の電圧差をVthとし、比例係数をkとすると、第1関係式及び第2関係式は、Vw-Vg=Ig×k+Vthとして決定される。
【0018】
開口を有する筐体と、筐体に対して開口を開閉可能に取り付けられたカバーと、カバーが閉位置から開位置へ変化したことを検出する開閉センサと、を備え、感光体及び帯電器は、開口を通して筐体内に装着可能であり、制御部は、開閉センサによりカバーが開位置から閉位置に変化したことが検出された場合に、クリーニング確認処理を開始する。これにより、ユーザによりカバーが開位置から閉位置になり、帯電器に対するクリーニングが実行された後に、クリーニングが実行されているか否かの判断を開始することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の帯電ワイヤを有する画像形成装置において、全ての帯電ワイヤに対してクリーニングが完了したことを少ない回数で判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】制御装置により実行される処理の手順を説明するフローチャートである。
【
図4】クリーニング確認処理の手順を説明するフローチャートである。
【
図6】各帯電部材の電流のバラツキを説明するグラフである。
【
図7】第2実施形態に係るクリーニング確認処理の手順を説明するフローチャートである。
【
図8】第3実施形態に係るクリーニング確認処理の手順を説明するフローチャートである。
【
図9】第4実施形態に係る処理の手順を説明するフローチャートである。
【
図10】クリーニング確認処理の手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
本実施形態に係る画像形成装置を、
図1に示されるプリンタ100を例に説明する。プリンタ100は、電子写真方式により用紙等にカラー画像を形成するカラーレーザプリンタであり、4色のトナーを用いる所謂タンデム方式のレーザプリンタである。
【0022】
図1に示すように、プリンタ100は、筐体90と、アッパーカバー91と、表示装置80と、開閉センサ81と、不図示の給紙部と、画像形成部60と、制御部の一例である制御装置10と、不図示の排紙部とを主に備えている。
【0023】
筐体90の上面には、筐体90の内部に収容された部材をメンテナンスするための開口90Aが形成されている。部材のメンテナンスの具体例としては、後述する帯電器52などを新しいものに交換することや、帯電器52をクリーニングすることなどである。帯電器52をクリーニングするための具体的な方法や構成などは公知であるので、本明細書においては詳細な説明を省略する。アッパーカバー91は、筐体90の上部に設けられており、回転軸を中心に回動することで、開口90Aを遮蔽する閉位置と、開口90Aを露出させる開位置との間で変化する。
【0024】
開閉センサ81は、アッパーカバー91が閉位置から開位置へ変化したこと、及び開位置から閉位置へ変化したことを検知すると、検知信号を制御装置10に出力する。開閉センサ81は、例えば光センサなどを用いることができる。表示装置80は、液晶ディスプレイ等の文字を表示することが可能な装置であり、例えば、プリンタ100の前側上部に設けられている。表示装置80は、制御装置10による制御により、文字やアイコンを表示することができる。
【0025】
制御装置10は、
図2に示されるように、ASIC20(Application specific integrated circuitの略称)と、第1帯電電圧出力回路30と、第2帯電電圧出力回路35と、グリッド電圧調整回路40Y,40M,40Cを主に備えている。ASIC20は、図示しないCPUや、RAM、ROM等により構成されたメモリ、更には入出力インターフェースなどを備えて構成されており、予め設定されたプログラムなどに従ってプリンタ100の各部を制御する。なお、制御装置10を構成するASIC20以外の構成については後述する。
【0026】
画像形成部60は、各色に応じたLEDユニット(不図示)と、4つのプロセスユニット50C,50M,50Y,50Kと、転写ユニット70とを主に備えて構成されている。LEDユニットは、例えば、アッパーカバー91に対して揺動可能に支持されており、アッパーカバー91が閉位置である状態において感光体ドラム51の上方に対向して配置されている。
【0027】
プロセスユニット50は、感光体ドラム51と、帯電器52と、現像ローラ53と、供給ローラ54と、トナー収容部55とを主に備えている。プロセスユニット50は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のトナーが入った各ユニットが用紙の搬送方経路の上流から下流にかけて、この順で並んで配置されている。トナーの各色に対応した部材を特定する場合には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれに対応させて、Y、M、C、Kの記号を付することとする。
【0028】
帯電器52は、感光体ドラム51に対応して設けられており、帯電部材の一例としての帯電ワイヤ521と、グリッド522とを主に有している。帯電器52は、帯電ワイヤ521がコロナ放電することで、対応する感光体ドラム51の表面を現像ローラ53に印加される現像バイアスよりも大きい正の電位に帯電させる。グリッド522は、帯電ワイヤ521と感光体ドラム51との間に設けられている。
【0029】
現像ローラ53は、各感光体ドラム51に対応して設けられており、トナー収容部55から供給されたトナーを、表面に担持する。現像ローラ53は、正の現像バイアスが印加された状態で感光体ドラム51と摺接したときに、対応する感光体ドラム51に担持したトナーを供給する。トナー収容部55は、内部に、記録剤としてのトナーを収容している。本実施形態では、トナーは正帯電性であるが、これに限定されない。転写ユニット70は、給紙トレイとプロセスユニット50との間に設けられ、各色に応じた転写ローラにより構成されている。
【0030】
画像形成部60では、感光体ドラム51の表面が、帯電器52により一様に帯電された後、LEDユニットにより露光されることで、感光体ドラム51上に画像データに基づく静電潜像が形成される。トナー収容部55内のトナーは、供給ローラ54を介して現像ローラ53に供給され、現像ローラ53上に担持されたトナーが感光体ドラム51の露光部分に供給されることで、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム51上にトナー像が形成される。その後、不図示の給紙部から供給された用紙が搬送されることで、感光体ドラム51上に形成されたトナー像が用紙上に転写される。トナー像が転写された用紙は、不図示の定着部によりトナー像が熱定着される。トナー像が熱定着された用紙は、搬送ローラによって排紙経路を搬送され、筐体90の外部に排出されて排紙トレイ上に載置される。
【0031】
次に、プリンタ100の電気的構成を、
図2を用いて説明する。制御装置10が備える第1帯電電圧出力回路30は、3つの帯電ワイヤ521Y,521M,521Cに並列接続されており、各帯電ワイヤ521C,521M,521Yに共通のワイヤ電圧Vwymcを印加する回路である。また、第2帯電電圧出力回路35は、ブラック用の帯電ワイヤ521Kに接続されており、この帯電ワイヤ521Kにワイヤ電圧Vwkを印加する回路である。
【0032】
図2に示されるように第1帯電電圧出力回路30は、異常放電検出回路31と、ワイヤ電圧検出回路32と、を備えている。異常放電検出回路31は、帯電器52やグランドを瞬間的に流れる異常放電電流に基づいて、異常放電の発生の有無を検出する。ここで、異常放電とは、例えば、コロナ放電とは異なり、トナーや紙粉による帯電ワイヤの汚れ等によって生じる火花放電やアーク放電である。第1帯電電圧出力回路30のワイヤ電圧検出回路32は、帯電ワイヤ521C,521M,521Yに生じるワイヤ電圧Vwymcを検出する。第2帯電電圧出力回路35のワイヤ電圧検出回路32は、帯電ワイヤ521Kに生じるワイヤ電圧Vwkを検出する。異常放電検出回路31により検出された異常放電や、各ワイヤ電圧検出回路32により検出されたワイヤ電圧Vwは、ASIC20のポートA/D1に入力される。
【0033】
第1帯電電圧出力回路30は、ASIC20からポートPWM1を介してPWM(Pulse Width Modulation;パルス幅変調)信号Sp1が供給され、PWM信号Sp1のデューティ比に応じて、各帯電ワイヤ521C,521M,521Yにワイヤ電圧Vwymcを印加する。第2帯電電圧出力回路35は、ASIC20からポートPWM2を介してPWM信号Sp2が供給され、PWM信号Sp2のデューティ比に応じて、帯電ワイヤ521Kにワイヤ電圧Vwkを印加する。例えば、各PWM信号Sp1,Sp2のデューティ比を高くする程、ワイヤ電圧Vwの値は大きくなり、デューティ比を低くする程、ワイヤ電圧Vwの値は小さくなる。
【0034】
グリッド電圧調整回路40は、グリッド522に生じるグリッド電圧Vgを調整する回路である。4つのグリッド電圧調整回路40Y~40Cのうち、グリッド電圧調整回路40Cは、シアンのグリッド522Cに接続され、グリッド電圧調整回路40Mは、マゼンタのグリッド522Mに接続され、グリッド電圧調整回路40Yは、イエローのグリッド522Yに接続されている。グリッド電圧調整回路40C,40M,40Yの各々の回路構成は同様であるため、以下の説明では、イエロー(Y)に対応するグリッド電圧調整回路40Yについて説明し、他のグリッド電圧調整回路40C,40Mについての説明を適宜省略する。
【0035】
図2に示されるように、グリッド電圧調整回路40Yは、一端がグリッド522Yに接続された入力ラインL1を有している。入力ラインL1には、接続点P1によりトランジスタQ1のコレクタが接続されている。トランジスタQ1は、例えば、NPNトランジスタであるが、これ以外にも、FET(電界効果トランジスタ)であってもよい。トランジスタQ1のエミッタは、グリッド電流検出回路403Yを介してグランドに接続されている。トランジスタQ1のベースは、抵抗R1及びコンデンサC1を含む平滑回路を介して演算増幅器OP1の出力端子に接続されている。トランジスタQ1のエミッタとグリッド電流検出回路403Yとの間の接続点P2は、検出ラインL2の一端に接続されている。検出ラインL2の他端は、ASIC20のポートA/D3に接続されている。演算増幅器OP1の入力端子には、出力抵抗R2及びコンデンサC2を含む平滑回路を介してASIC20のポートPWM3が接続されている。
【0036】
入力ラインL1の他端は、グリッド電圧検出回路402Yに接続されている。グリッド電圧検出回路402Yは、抵抗R3,R4が直列接続して構成された分圧回路と、コンデンサC3とを有している。コンデンサC3は、分圧回路における各抵抗R3,R4の接続点に一端が接続され、他端がグランドに接続されており、RCフィルタを構成している。また、分圧回路における各抵抗R3,R4の接続点P3は、ASIC20のポートA/D2に接続されている。これにより、入力ラインL1に帯電ワイヤ521Yのワイヤ電圧Vwyに応じたグリッド電圧Vgyが印加されると、ASIC20のポートA/D2には、分圧回路における抵抗R3,R4の分圧比に応じたグリッド電圧検出信号Vgr1が入力される。また、グリッド電圧検出回路402Yは、グリッド電圧検出信号Vgr1を、出力抵抗R5を介して分圧検出信号Sid1として演算増幅器OP1に供給する。
【0037】
ASIC20は、ポートA/D2を介して入力されたグリッド電圧検出信号Vgr1に応じて、ポートPWM3から出力されるPWM信号Spp1を調整し、調整後のPWM信号Spp1を演算増幅器OP1に供給する。これにより、トランジスタQ1のスイッチング周期が制御され、グリッド522Yのグリッド電圧Vgyが調整される。ワイヤ電圧Vwyは、例えば、約5.5kV~7kVの間で制御される。また、グリッド電圧Vgyは、例えば、約700V付近に制御される。
【0038】
K色のグリッド522Kには、グリッド電圧検出回路402K、及びグリッド電流検出回路403Kが接続されている。グリッド電圧検出回路402Kは、グリッド522Kに生じるグリッド電圧Vwに応じた、グリッド電圧検出信号Vgr4を、ASIC20のポートA/D8に出力する。グリッド電流検出回路403は、グリッド522Kに生じるグリッド電流Igkに応じた、グリッド電流検出信号Sir4を、ASIC20のポートA/D9に出力する。言い換えると、K色のグリッド522Kには、YMC各色のグリッド522Y,M,Cと異なり、グリッド電圧調整回路によるグリッド電圧の調整を受けない。
【0039】
次に、ASIC20により実行される、印刷処理の手順を、
図3を用いて説明する。
図3に示される処理は、ASIC20が、PC等の外部装置から印刷ジョブデータを受信したことで、印字命令を受けたことを契機に実行される。これ以外にも、プリンタ100が印刷ジョブデータをメモリに蓄積している状態で、ASIC20が不図示のユーザIFを介した操作により印刷ジョブデータの印字命令を受けたことを契機に実行されてもよい。
【0040】
ステップ10(以下では、ステップを「S」と記載する。)では、印刷命令従い、印刷ジョブデータを用いた印刷処理を行う。ASIC20は、第1,第2帯電電圧出力回路30,35及びグリッド電圧調整回路40Y~40Cの動作を開始させるため、PWM信号Sp1,Sp2及びPWM信号Spp1,Spp2の出力を開始する。ASIC20は、グリッド電流検出信号Sir1~Sir4の値に基づいてPWM信号Sp1,Sp2のデューティ比を調整し第1,第2帯電電圧出力回路30,35から出力されるワイヤ電圧Vwymc,Vwkを制御する。例えば、ASIC20は、YMC各色のグリッド電流Igの電流値のうち最小の電流値が所定以上となるように制御を行い、K色のグリッド電流Igの電流値が所定以上となるように制御を行う。また、ASIC20は、PWM信号Sppのデューティ比を調整し、グリッド電圧調整回路40Y,40M,40Cを制御して、グリッド電圧Vgを所望の設定電圧に一致させる制御を行う。ASIC20は、例えば、印刷命令を受け付けてチャージ動作を開始した場合に、グリッド電流Igやグリッド電圧Vgが所望の目標値に到達すると、受け付けた印刷命令を実行する。また、ASIC20は、例えば、ウォーミングアップ動作に伴ってチャージ動作を開始した場合、グリッド電流Igやグリッド電圧Vgが所望の目標値に到達すると、ウォーミングアップ動作を終了するものであってもよい。
【0041】
S11では、第1帯電電圧出力回路30のワイヤ電圧検出回路32から出力されたワイヤ電圧検出信号Vwrに応じたワイヤ電圧Vwを取得し、YMC各色のグリッド電流検出回路403Y~403Cから出力されたグリッド電流検出信号Sir1~Sir3によりYMC各色のグリッド電流Igy,Igm,Igcを取得する。以下では、S11で取得されるワイヤ電圧Vw及びグリッド電流Igの末尾に「b」を付す。即ち、ワイヤ電圧Vwbは、後述する、S12で帯電器52の異常が検出されたときよりも前に検出された電圧であり、グリッド電流Igbは、後述する、S12で帯電器52の異常が検出されたときよりも前に検出された電流である。本実施形態では、K色の帯電ワイヤ521Kに対しては、グリッド電圧調整回路によるグリッド電圧の調整が行われないため、YMC各色の帯電器52と一緒にクリーニングの実行の有無を判断しない。そのため、S11では、グリッド電流Igkを取得しない。
【0042】
S12では、帯電器52に異常が生じているか否かを判断する。ここでは、第1帯電電圧出力回路30における、ワイヤ電圧検出回路32により検出されたワイヤ電圧Vwymcが上限電圧を超えたか否かを判断する。例えば、帯電ワイヤ521にトナーや紙粉が付着すると、帯電ワイヤ521の抵抗値が増大する。帯電ワイヤ521の抵抗値の増大に伴って、グリッド電圧Vgや、グリッド電流Igが目標値に達しないため、ASIC20は、ワイヤ電圧Vwymcを増大させるように第1帯電電圧出力回路30の駆動を制御する。その結果、ワイヤ電圧Vwymcの過剰な増大や異常放電など、帯電器52の異常が発生する。ここで、上限電圧は、帯電器52の放電に異常が生じている場合に想定されるワイヤ電圧Vwの下限値である。これ以外にも、S12において、異常放電検出回路31が、帯電ワイヤ521に流れるワイヤ電流の値から、異常放電が生じていることを検出した場合に、S12を肯定判断してもよい。また、S12において、第2帯電電圧出力回路35における、ワイヤ電圧検出回路32により検出されたワイヤ電圧Vwkが上限電圧を超えたか否かを判断するものであってもよい。
【0043】
S12を否定判断する場合、
図3の処理を終了する。一方、帯電器52に異常が生じていることを検出した場合(S12:YES)、S13に進み、プリンタ100の状態を示す状態フラグを「エラー状態」に設定する。状態フラグを「エラー状態」に設定した場合、プリンタ100における印刷処理の実行を禁止する。S14では、表示装置80により、帯電ワイヤ521に対するクリーニングを促す通知を行う。例えば、表示装置80に、全ての帯電ワイヤ521に対してワイヤクリーニングを実行することを促すテキストを表示させる。
【0044】
S15では、開閉センサ81によりアッパーカバー91の開閉が検出されたか否かを判断する。S14での通知により、ユーザは、ワイヤクリーニングを開始するため、アッパーカバー91を閉位置から開位置へ変化させ、開口90Aからプロセスユニット50を取り出す。そして、ユーザは、ワイヤクリーニングが終了すると、プロセスユニット50をプリンタ100に装着し、アッパーカバー91を、開位置から閉位置へ変化させる。そのため、開閉センサ81からの信号により、アッパーカバー91が閉位置から開位置に変化した後、再び、開位置から閉位置へ変化したことを判断すると(S15:YES)、S16に進む。なお、本実施形態では、開閉センサ81によりアッパーカバー91の開閉が検出されない場合は(S15:NO)、待機する。
【0045】
S16では、全ての帯電ワイヤ521に対してクリーニングが行われたか否かを判断するためのクリーニング確認処理を実行する。
図4は、
図3のS16で実行される処理を説明するフローチャートである。まず、S20では、帯電器52Y,52M,52Yを動作させる。本実施形態では、YMC各色におけるグリッド電流Igに対して最小値が設定されている。ASIC20は、PWM信号Sp1,Sp2のデューティ比を調整して、YMC各色のグリッド電流の全てがグリッド電流Igの最小値以上となるように、第1帯電電圧出力回路30の駆動を制御する。これにより、YMC各色のワイヤ電圧Vwや、グリッド電流Igは一定の値になる。上述のように、K色の帯電器52に対しては、グリッド電圧調整回路によるグリッド電圧Vgkの調整が行われないため、S20では、第2帯電電圧出力回路35の駆動は制御しない。
【0046】
S21では、YMC各色のグリッド電流検出回路403から出力されたグリッド電流検出信号Sir1,Sir2,Sir3により、グリッド電流Igを取得する。また、第1帯電電圧出力回路30のワイヤ電圧検出回路32から出力されたワイヤ電圧検出信号Vwrにより、ワイヤ電圧Vwymcを取得する。以下では、S21で取得されたグリッド電流Ig及びワイヤ電圧Vwを、「Igt」,「Vwt」と記載することで、S11で取得されたグリッド電流Igb、ワイヤ電圧Vwbと区別する。
【0047】
S22では、S21で取得された、クリーニング確認処理中での各色のグリッド電流Igtのうち、最大値Igmaxと、最小値Igminとを取得する。S23では、S21で取得されたワイヤ電圧Vwtと、S22で取得されたグリッド電流Igtの最大値Igmax及び最小値Igminとをメモリに保存する。
【0048】
S24では、S11で取得されたワイヤ電圧Vwbと、電圧差閾値Vosと、電流差判定値ΔIgtをメモリから読み出す。電圧差閾値Vosは、後述するS25での判断で用いられる閾値であり、具体的には、帯電器52に対してクリーニングが行われた後のワイヤ電圧Vwの低下量を想定した値である。電流差判定値ΔIgtは後述するS26で用いられる値であり、帯電器52に対してクリーニングが行われた後の各色のグリッド電流Igにおけるばらつき幅の最大値を示す値である。
【0049】
S25では、S24で読み出されたワイヤ電圧Vwbから電圧差閾値Vosを引いた値が、S23で保存されたワイヤ電圧Vwt(即ち、グリーニング確認処理中のワイヤ電圧Vwymc)よりも大きいか否かを判断する。言い換えると、S25では、帯電器52の異常を判断した前後で取得されたワイヤ電圧Vwb,Vwtの差が、電圧差閾値Vosよりも大きいか否かを判断する。
【0050】
図5は、横軸をグリッド電流Igとし、縦軸をワイヤ電圧Vwとした場合の、電流/電圧特性を示すグラフである。トナーや紙粉による帯電ワイヤ521の汚れにより、帯電ワイヤ521の内部抵抗が大きくなり、第1帯電電圧出力回路30から出力されるワイヤ電圧Vwymcの値が高くなる。このとき、帯電器52の異常が検出される直前でのワイヤ電圧Vwbは、通常の動作状態よりも高い値となることが想定される。帯電ワイヤ521に対してクリーニングや、帯電ワイヤ521の交換がされることで、図中矢印で示すように、ワイヤ電圧Vwtの値は、クリーニング前のワイヤ電圧Vwbよりも低下する。そのため、S12での帯電器52の異常が検出された後に、帯電ワイヤ521に対してクリーニングがされていれば、ワイヤ電圧Vwは、帯電器52の異常が検出されたときよりも値が低下する。
【0051】
S26では、S23で取得されたグリッド電流の最大値Igmaxと最小値Igminとの差(Igmax-Igmin)が、電流差判定値ΔIgtよりも小さいか否かを判断する。
図6は、帯電ワイヤ521とグリッド522との間の電圧差(=Vw-Vg)と、各色のグリッド522に流れるグリッド電流Igのばらつき幅を説明する図であり、縦軸を帯電ワイヤ521とグリッド522との間の電圧差(Vw―Vg)とし、横軸をグリッド電流Igとするグラフである。
図6では、YMC各色のグリッド電流Igtを示している。図において、YMC各色のグリッド電流Igc,Igm,Igyのうち、所定の電圧差Vwt-Vgtでの最大値がグリッド電流の最大値Igmaxであり、所定の電圧差Vw―Vgでの最小値がグリッド電流の最小値Igminである。なお、「Vwt」は、
図4のS23で取得されたクリーニング確認処理中のワイヤ電圧Vwymcであり、「Vgt」は、クリーニング確認処理中のグリッド電圧Vgである。全ての帯電ワイヤ521に対してクリーニングが行われることで、各色の帯電ワイヤ521における抵抗値の差も小さくなるため、YMC各色のグリッド電流Igc,Igm,Igyのバラツキも小さくなる。そのため、各色のグリッド電流Igc,Igm,Igyのうち、最大値Igmaxと最小値Igminとの差は、電流差判定値ΔIgtの範囲に収まる。一方で、全ての帯電ワイヤ521のうち、一つでもクリーニングが行われていなければ、定格電圧範囲において、グリッド電流Igc,Igm,Igyのバラツキ範囲が大きくなり、最大値Igmaxと最小値Igminとの差が電流差判定値ΔIgtの範囲に収まらない。
【0052】
そのため、クリーニング確認処理中でのYMC各色のグリッド電流Igbのうち、最大値Igmaxと最小値Igminとの差が電流差判定値ΔIgt未満であれば(S26:YES)、
図3のS17に進む。S17では、状態フラグの値を「エラー状態」から「通常状態」に変更する。即ち、全ての帯電ワイヤ521に対してクリーニングが行われたとして、プリンタ100のエラー状態を解除する。そして、
図3の処理を終了する。
【0053】
一方、
図4のS25を否定判断した場合(S25:NO)、S27に進み、表示装置80により、クリーニングの実行を再通知させる。例えば、S27で、表示装置80に表示される画面は、
図3のS14で表示される画面と同様である。
【0054】
S25を肯定判断した場合でも、S26で、グリッド電流Igtの最大値Igmaxと最小値Igminとの差が電流差判定値ΔIgt以上であれば、S27に進み、表示装置80によるクリーニングの再通知を行う。本実施形態では、YMC各色の帯電ワイヤ521Y~521Cが、第1帯電電圧出力回路30に対して並列に接続されているため、全ての帯電ワイヤ521に対してクリーニングが実行されていなくとも、S26に進む可能性があるためである。
【0055】
S28では、アッパーカバー91の開閉が検出されているか否かを判断する。アッパーカバー91の開閉が検出されることで(S28:YES)、S20に戻り、S20~S24の一連の動作を再度実行する。言い換えると、S27での再通知後に、ユーザにより全ての帯電ワイヤ521に対してクリーニングが実行されることで、S23で新たに取得されたワイヤ電圧Vwtと、グリッド電流Igtの最大値Igmax及び最小値Igminを取得し、S25,S26の各判断を再び行う。その後、S26を肯定判断すると、S17に進み、プリンタ100の状態フラグをエラー状態から通常状態に変更し、
図3の処理を終了する。
【0056】
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏することができる。
制御装置10は、クリーニング確認処理において、ワイヤ電圧検出信号Vwrに基づいて、帯電器52の異常が検出された前後でのワイヤ電圧Vwの差が所定の閾値よりも大きいか否かを判断する。ワイヤ電圧Vwの差が電圧差閾値Vosよりも大きいと判断されると、グリッド電流検出信号に基づいて、複数のグリッド電流Igtのうち最大値Igmaxと最小値Igminとの差が所定範囲内であるか否かが判断される。これにより、各色の帯電ワイヤ521を有するプリンタ100において、全ての帯電ワイヤ521に対してクリーニングが完了したことを少ない回数で判断することができる。
【0057】
2つ以上の帯電器52が、第1帯電電圧出力回路30に対して並列に接続されている構成では、付着する付着物の量によって各帯電器52の内部抵抗が異なり、帯電器の異常が検出された前後での電流又は電圧の変化のみでは全ての帯電器に対してクリーニングが完了したことを判断できない場合がある。このような場合においても、全ての帯電ワイヤ521に対してクリーニングが完了したか否かを判断することが可能となる。
【0058】
制御装置10は、グリッドに印加される電圧であるグリッド電圧Vgを調整する複数のグリッド電圧調整回路40Y~40Cを備える。このような構成においても、YMC各色の帯電器52に対してクリーニングが完了したか否かを判断することが可能となる。
【0059】
制御装置10は、開閉センサ81によりアッパーカバー91が開位置と閉位置との間で変化したことが検出された場合に、クリーニング確認処理を開始する。これにより、ユーザによりアッパーカバー91が操作され、帯電器52に対するクリーニングが実行された後に、クリーニングが実行されているか否かの判断を開始することができる。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明を行う。第2実施形態において第1実施形態と同一の箇所については同じ符号を付し、その説明を繰り返さない。本実施形態では、第1実施形態と比べて、制御装置10のASIC20は、クリーニング確認処理において、帯電器52に流れる電流を定電流制御する構成が異なる。
【0061】
図7は、第2実施形態において、
図3のS16で実行される処理の手順を説明するフローチャートである。S30では、クリーニング確認処理における、グリッド電流Igtの目標電流Tiを設定する。目標電流Tiは、クリーニング確認処理中での帯電器52に流れるグリッド電流Igtの目標値である。本実施形態では、目標電流Tiは、S10での印刷処理中にグリッド522に流れる電流よりも低い値に定められている。
【0062】
S31では、クリーニング確認処理中のグリッド電流Igtが、S30で設定された目標電流Tiに近づくように、第1帯電電圧出力回路30の出力を定電流制御する。本実施形態においても、K色の帯電ワイヤ521Kは、YMC各色の帯電ワイヤ521YMCと一緒にクリーニングの実行の有無を確認しないため、第2帯電電圧出力回路35に対しては定電流制御を行わない。ASIC20は、定電流制御において、まず、目標電流Tiと、ポートA/D3,5,7を通じて入力されたYMC各色のグリッド電流Igtとの電流偏差を取得する。そして、ASIC20は、取得されたYMC各色の電流偏差が0に近づくように、ポートPWM1から出力するPWM信号Sp1のデューティ比を調整する。このとき、ASIC20は、各色の電流偏差に基づいて、ポートPWM3~PWM5からPWM信号Spp1~Spp3を出力することで、YMC各色のグリッド電圧調整回路40C~40Yにグリッド電圧Vgtを調整させるものであってもよい。
【0063】
S22では、YMC各色のグリッド電流Igtの最大値Igmax、及び最小値Igminを取得する。本実施形態では、S31において、グリッド電流Igtが、印刷処理中に流れるグリッド電流Igよりも低い値に制御されているため、最大値Igmax及び最小値Igminも、第1実施形態での値よりも低い値に制限されている。
【0064】
S23,S24を経由した後、S25では、S11で取得されたワイヤ電圧Vwbから電圧差閾値Vosを引いた値が、現在のワイヤ電圧Vwtよりも大きいか否かを判断する。このとき、定電流制御により、グリッド電流Igtが目標電流Tiに制御されているため、クリーニング後であれば、ワイヤ電圧Vwtも第1実施形態と比べて低い値となる。更に、定電流制御を実行することで、第1帯電電圧出力回路30からYMC各色の帯電ワイヤ521へのワイヤ電圧Vwtの出力差や、グリッド電流Igtのバラツキを抑えることができる。そのため、クリーニングの前後で、各ワイヤ電圧Vwb,Vwtの差が第1実施形態と比べて大きくなることや、各色のワイヤ電圧Vwtや、グリッド電流Igtのバラツキを抑えることができ、クリーニングが実行された否かの判断精度を高めることができる。
【0065】
S25を肯定判断すると、S26に進み、グリッド電流Igtの最大値Igmaxと最小値Igminとの差(Igmax-Igmin)が、電流差判定値ΔIgtよりも小さければ(S26:YES)、
図3のS17に進む。本実施形態では、定電流制御により、グリッド電流Igtが制限されているため、S26で用いられる電流差判定値ΔIgtは、第1実施形態で用いられる電流差判定値ΔIgtよりも異なる値を用いている。S17では、状態フラグの値を「エラー状態」から「通常状態」に変更する。一方、S25又はS26を否定判断した場合、S27に進み、表示装置80により、クリーニングの実行を再通知させる。
【0066】
以上説明した本実施形態では、クリーニング確認処理において、グリッド電流Igtが一定の値に制御された状態で、帯電器52の異常を検出した後のワイヤ電圧Vwtの変化を判断することができるため、帯電ワイヤ521に対してクリーニングが実行された否かの判断精度を高めることができる。
【0067】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明を行う。第3実施形態において第1実施形態と同一の箇所については同じ符号を付し、その説明を繰り返さない。本実施形態では、第1実施形態と比べて、ASIC20は、クリーニング確認処理において、帯電器52に印加される電圧を定電圧制御する構成が異なる。
【0068】
図8は、第3実施形態において、
図3のS16で実行される処理の手順を悦明するフローチャートである。S40では、クリーニング確認処理における帯電器52の目標電圧Tvを取得する。目標電圧Tvは、クリーニング確認処理の実行中でのワイヤ電圧Vwtの目標値である。本実施形態では、目標電圧Tvは、S10での印刷処理中に帯電ワイヤ521に生じる電圧よりも低い値に定められている。
【0069】
S41では、クリーニング確認処理中のワイヤ電圧Vwtが、S40で取得された目標電圧Tvに近づくように、第1帯電電圧出力回路30を定電圧制御する。ASIC20は、定電圧制御において、まず、目標電圧Tvと現在のワイヤ電圧Vwtとの電圧偏差を取得する。そして、ASIC20は、取得された電圧偏差が0に近づくように、ポートPWM1から出力するPWM信号Sp1のデューティ比を調整する。
【0070】
S42では、S11で取得されたグリッド電流Igbと、電流差閾値Iosと、電流差判定値ΔIgtをメモリから読み出す。S42で読み出されるグリッド電流Igbは、S12で帯電器52の異常が検出される直前で取得されたグリッド電流Igbである。
【0071】
S43では、YMC各色における、S42で取得されたグリッド電流Igbから電流差閾値Iosを引いた値が、S21で取得された現在のグリッド電流Igtよりも大きいか否かを判断する。即ち、本実施形態では、帯電器52の異常が検出された前後でのYMC各色のグリッド電流Igb,Igtの差が、電流差閾値Iosよりも大きいか否かを判断している。本実施形態では、YMC各色のグリッド電流Igb,Igtのうち、一つでもS43を肯定判断する場合に、S26に進む。S26では、YMC各色におけるグリッド電流Igtの最大値Igmaxと最小値Igminとの差(Igmax-Igmin)が、電流差判定値ΔIgtよりも小さければ(S26:YES)、
図2のS17に進み、状態フラグの値を「エラー状態」から「通常状態」に変更する。本実施形態では、YMC各色のワイヤ電圧Vwtが定電圧制御されているため、S26で用いられる電流差判定値ΔIgtは、第1実施形態で用いられる電流差判定値ΔIgtと異なる値を用いることになる。
【0072】
以上説明した本実施形態では、帯電器52の異常を検出する前後でのグリッド電流Igb,Igtの電流差が所定の電流差閾値Iosよりも大きいと判断すると、グリッド電流検出信号に基づいて、グリッド電流の最大値Igmaxと最小値Igminとの差が所定範囲内であるか否かを判断する。最大値Igmaxと最小値Igminとの差が所定範囲内であれば、YMC各色の帯電ワイヤ521に対してクリーニングされた状態であると判断する。これにより、グリッド電流Igの変化により、YMC各色の帯電ワイヤ512に対してクリーニングが実行されたか否かを判断することができる。
【0073】
クリーニング確認処理では、ワイヤ電圧Vwtが一定の値に制御された状態で、帯電器52の異常を検出した後のグリッド電流Igtの変化を判断することができるため、クリーニングが実行されたか否かの判断精度を高めることができる。
【0074】
(第4実施形態)
第4実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明を行う。第4実施形態において第1実施形態と同一の箇所については同じ符号を付し、その説明を繰り返さない。本実施形態では、第1実施形態と比べて、制御装置10は、クリーニング確認処理において、クリーニングが実行されたか否かの判断に用いる値として、電圧予測値を用いる構成が異なる。
【0075】
図9の処理は、ASIC20が、PC等の外部装置から印刷ジョブデータを受信し、印字命令を受けたことを契機に実行される処理である。S10での印刷処理を実行した後、S51では、第1帯電電圧出力回路30におけるワイヤ電圧検出回路32から出力されたワイヤ電圧検出信号Vwrによりワイヤ電圧Vwymcを取得し、YMC各色のグリッド電圧検出回路402により出力されたグリッド電圧検出信号Vgr1~Vgr3により、取得されたワイヤ電圧Vwymcに対応するグリッド電圧Vgy~Vgcを取得する。また、YMC各色のグリッド電流検出回路403により出力されたグリッド電流検出信号により、取得されたワイヤ電圧Vwymcに対応するグリッド電流Igy~Igcを取得する。本実施形態においても、S51で取得された電圧及び電流の末尾に「b」を付す。
【0076】
S12で、帯電器52の異常を検出していれば(S12:YES)、S13に進み、プリンタ100の状態を示す状態フラグを「エラー状態」に設定する。S14では、表示装置80により、ワイヤクリーニングを促す通知を行う。S15では、開閉センサ81によりアッパーカバー91の開閉が検出されれば(S15:YES)、S52に進み、クリーニング確認処理を実行する。
【0077】
図10は、
図9のS52で実行される処理を説明するフローチャートである。S70では、クリーニング確認処理における、YMC各色におけるグリッド電圧の目標電圧Vgt’を複数決定する。
【0078】
S71では、クリーニング確認処理における、YMC各色における、ワイヤ電圧Vwtの目標電圧Vwt’を複数決定する。例えば、目標電圧Vwt’は、下記(式1)を用いて決定することができる。
Vwt’=Vwb-ΔV-(Vgb―Vgt) … (式1)
なお、「ΔV」は、帯電器52の異常が検出された前後での、YMC各色におけるワイヤ電圧Vwとグリッド電圧Vgとの間の電圧差の変化(Vwb-Vgb-(Vwt-Vgt))である。上記(式1)を用いる以外にも、目標電圧Vwt’は、所望とするクリーニング確認処理の判定精度等に応じて予め定められた複数の定数を用いるものであってもよい。
【0079】
S72では、クリーニング確認処理における、K色のグリッド電圧Vgtの目標電圧Vgt’を決定する。
【0080】
S73では、S70,S71,S72で決定された各目標電圧Vwt’,Vgt’により、第1,第2帯電電圧出力回路30,35を駆動し、帯電器52を動作させる。
【0081】
S74では、帯電器52の異常を検出する直前での、ワイヤ電圧Vwbとグリッド電圧Vgbとの電圧差に応じた第1電圧予測値Vth1nを、YMCK各色で算出する。本実施形態では、第1電圧予測値Vth1nは、S51で取得された複数の値により、下記(式2)を用いて算出することができる。
Vwbn-Vgbn=Igbn×k+Vth1n … (式2)
ここで、比例係数kは、グリッド電流Igbnと、第1電圧予測値Vth1nとの間の係数である。上記(式2)において、第1電圧予測値Vth1nを左辺にまとめることで、YMC各色における第1電圧予測値Vth1nを算出するための関係式を決定することが可能となる。
【0082】
上記(式2)は、YMCK各色における帯電ワイヤ521とグリッド522との間の電圧差と、グリッド電流Igとの関係を線形に近似した関係式である。グリッド522には、ワイヤ電圧Vwとグリッド電圧Vgとの電圧差に応じたグリッド電流Igが流れるため、
図11に示されるように、第1電圧予測値Vth1と、グリッド電流Igbとの関係を、線形的な関係式により近似することができる。
図11において、帯電ワイヤ521に放電が生じる瞬間(即ち、グリッド電流Igb=0)での切片が、本実施形態での第1電圧予測値Vth1である。S74では、YMCKの全色において、第1電圧予測値Vth1nを取得する。
【0083】
S75では、クリーニング確認処理中における、ワイヤ電圧Vwtとグリッド電圧Vgtとの電圧差に応じた第2電圧予測値Vth2nを、YMCK各色で算出する。第2電圧予測値Vth2nは、上記した(式2)と同様、下記(式3)を用いて算出することができる。
Vwtn-Vgtn=Igtn×k+Vth2n … (式3)
上記式(式3)において、YMC各色における、「Vwtn」は、S70,S71で決定された目標電圧Vwt’,Vgt’で帯電器52を駆動させたときのワイヤ電圧Vwであり、「Vgtn」は、S70,S72で決定された目標電圧Vwt’、Vgt’で帯電器52を駆動させたときのグリッド電圧Vgである。K色における「Vwtn」は、S72で決定された目標電圧Vgt’で帯電器52を駆動させたときの、ワイヤ電圧Vwであり、「Vgtn」は、S72で決定された目標電圧Vgt’で帯電器52を駆動させたときのグリッド電圧Vgである。上記(式3)において、第2電圧予測値Vth2nを左辺にまとめることで、第2電圧予測値Vth2nを算出するための関係式を決定することが可能となる。
【0084】
図11に示される関係式において、帯電ワイヤ521に放電が生じる瞬間(即ち、グリッド電流Ig=0)での切片が、本実施形態での第2電圧予測値Vth2である。S75では、YMCK全色において、第2電圧予測値Vth2nを取得する。S74,S75での処理により、ワイヤ電圧Vwにばらつきが生じる場合でも、比較対象となるのは、関係式により算出された第1,第2電圧予測値Vth1n,Vth2nであるため、後述するS77,S78で用いられる比較対象を平準化することができる。
【0085】
S76では、S75で取得されたYMCK各色の第2電圧予測値Vth2nのうち、最大値Vthmaxと、最小値Vthminとを取得し、メモリに保存する。
【0086】
S77では、YMCK各色における第1電圧予測値Vth1nと第2電圧予測値Vth2nとの差のうち、電圧差閾値ΔVthよりも大きいものが存在するか否かを判断する。帯電器52の異常が検出された後に、クリーニングが行われることで、帯電ワイヤ521とグリッド522との間の電圧差が全体的に小さくなる。このため、帯電器52の異常を検出した前後で取得された少なくともいずれかの色の電圧予測値Vthの差が、所定の電圧差閾値ΔVthよりも大きければ、クリーニングが実行されたと判断することができる。
【0087】
S77を肯定判断すると、S79に進み、YMCK各色の第2電圧予測値Vth2nのうち、最大値Vthmaxと最小値Vthminとの差(Vthmax-Vthmin)が、予測値差判定値ΔVpよりも小さいか否かを判断する。即ち、YMCK各色の帯電ワイヤ521に対してクリーニングが行われることで、YMCK各色における帯電ワイヤ521の抵抗値の差も小さくなるため、YMCK各色の第2電圧予測値Vth2のバラツキも小さくなる。そのため、クリーニング確認処理において、YMCK各色の第2電圧予測値Vth2nのうち、最大値Vthmaxと最小値Vthminとの差は、予測値差判定値ΔVpの範囲に収まる。一方で、YMCK各色の帯電ワイヤ521のうち、一つでもクリーニングが行われていなければ、最大値Vthmaxと最小値Vthminとの差が予測値差判定値ΔVpの範囲に収まらない。
【0088】
S79を肯定判断すると(S79:YES)、
図9のS17に進む。S17では、状態フラグの値を「エラー状態」から「通常状態」に変更し、全ての帯電ワイヤ521に対してクリーニングが行われたとして、プリンタ100のエラー状態を解除する。そして、
図9の処理を終了する。
【0089】
一方、
図10のS77を否定判断した場合や、S79を否定判断した場合は、S78に進み、S77及びS78での判定回数の総数が3回目であるか否かを判断する。判定回数の総数が3回目でない場合、S80に進み、クリーニングの実行を再通知させる。そして、S81では、アッパーカバー91の開閉が検出されているか否かを判断する。アッパーカバー91の開閉が検出されることで、S70に戻り、S70~S76の一連の処理を実行する。
【0090】
S78において、判定回数の総数が3回目であれば、
図9のS17に進み、エラー状態を解除する。これは、ASIC20が、実測値とは異なる電圧予測値を用いてクリーニングの実行の有無を判断しているため、回数によりクリーニングが実行されたことを判断するためである。なお、S78での判定回数の総数を判断しなくともよい。この場合、S77及びS79のいずれかを否定判断した場合は、S80に進み、再通知を行う。言い換えれば、S79を肯定判断しない限り、
図9のS17に進まない。
【0091】
以上説明した本実施形態では、クリーニングが実行されたか否かの判断に用いる、電圧予測値を、決定された関係式により算出することができる。そのため、複数の帯電ワイヤ521の間で、ワイヤ電圧Vwにばらつきが生じる場合でも、平準化された比較対象である電圧予測値を用いて判断を行うため、全ての帯電ワイヤ521に対してクリーニングが実行されているか否かの判断精度を高めることができる。
【0092】
クリーニング確認処理では、少なくとも1つの帯電ワイヤ521において電圧予測値の差が閾値よりも大きいと判断すると、複数のグリッドそれぞれの第2電圧予測値のうち、最大値Vthmaxと、最小値Vthminとを取得し、最大値Vthmaxと、最小値Vthminとの差が所定範囲内であれば、複数の帯電ワイヤ521の全てに対してクリーニングされた状態であると判断する。これにより、全ての帯電ワイヤ521に対してクリーニングが実行されているか否かの判断精度を高めることができる。
【0093】
(第4実施形態の変形例)
上述の第4実施形態において、第1,第2電圧予測値Vth1n,Vth2nを取得することに代えて、第1,第2電流予測値を取得し、取得された第1,第2電流予測値により、S77の判断を行っても良い。この場合において、ASIC20は、S74において、上記(式2)から、特定の電圧差に対応するグリッド電流Igbを第1電流予測値として取得する。S75において、上記(式3)から、特定の電圧差に対応するグリッド電流Igtを第2電流予測値として取得する。そして、S77では、第1電流予測値と、第2電流予測値との差が所定の閾値よりも大きければ、S77を肯定判断して、S79に進めばよい。これにより、複色のグリッド522間でグリッド電流Igにばらつきが生じる場合でも、比較対象となる電流予測値を平準化することができるため、全ての帯電ワイヤ521に対してクリーニングが実行されているか否かの判断を、精度よく行うことができる。
【0094】
更に、S76において、複色のグリッド522それぞれの第2電流予測値のうち、最大値と、最小値とを取得し、S79で、取得された第2電流予測値の最大値と、第2電流予測値の最小値との差が所定範囲内であれば、全ての帯電ワイヤ521に対してクリーニングされた状態であると判断してもよい。これにより、全ての帯電ワイヤ521に対してクリーニングが実行されているか否かの判断精度を高めることができる。
【0095】
(その他の実施形態)
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上述の実施形態では、3色(Y,M,C)を共通の第1帯電電圧出力回路30に接続される構成であった。これに代えて、4色(YMCK)すべてを共通の帯電電圧出力回路に接続されていてもよい。
【0096】
上述の実施形態では、S15で、アッパーカバー91の開閉を検出した後にクリーニング確認処理を実行した。これに代えて、S15で、例えば、プロセスユニットの着脱が検出された場合や、不図示のユーザIFによる操作により、クリーニング確認処理の開始操作を受け付けたことを条件に、クリーニング確認処理を実行してもよい。
【0097】
上述の実施形態では、S14,S27において、表示装置80による通知を行ったが、これに代えて、例えば音声によって情報を通知してもよい。
【0098】
上述の実施形態では、カバーとしてアッパーカバー91を例示したが、これに限定されず、例えば、フロントカバーやサイドカバーなどであってもよい。感光体として感光体ドラム51を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えばベルト状の感光体であってもよい。帯電部材として帯電ワイヤ521を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えばワイヤ状でない部材であってもよい。
上述の実施形態では、画像形成装置は、プリンタ100であったが、これに限定されず、画像形成装置は、例えば複写機や複合機であってもよい。
【符号の説明】
【0099】
10…制御装置、20…ASIC、30…第1帯電電圧出力回路、32…ワイヤ電圧検出回路、35…第2帯電電圧出力回路、40…グリッド電圧調整回路、51…感光体ドラム、52…帯電器、100…プリンタ、402…グリッド電圧検出回路、403…グリッド電流検出回路、521…帯電ワイヤ、522…グリッド