(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176731
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】放電電流制御装置および放電電流制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20231206BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20231206BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20231206BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20231206BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20231206BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/35 K
H02J3/38 110
H02J3/38 130
H02J3/46
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089166
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆
(72)【発明者】
【氏名】長井 友樹
(72)【発明者】
【氏名】内田 義宏
(72)【発明者】
【氏名】石原 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】▲葛▼葉 光洋
(72)【発明者】
【氏名】久保 和樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 信行
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G066AA04
5G066AA06
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB07
5G066HB09
5G066JB03
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503DA04
5G503EA05
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
5H030AS01
5H030BB21
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】電池容量を給電に最大限活用することの可能な放電電流制御装置を提供する。
【解決手段】放電電流制御装置には、過放電判定に用いる過放電判定閾値V_odと、過放電判定閾値より大きい値に設定された電圧閾値V_ctrと、放電可能電流通常値より小さく且つ0より大きい値に設定された放電可能電流下限値とが記憶されている。放電電流制御装置は、蓄電池4の放電中に蓄電池4の電圧が電圧閾値より小さくなると、蓄電池4の放電可能電流値Ioutを放電可能電流通常値から放電可能電流下限値に切り替える制御を行うように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池(4)の放電電流を制御する放電電流制御装置において、
過放電判定に用いる過放電判定閾値(V_od)と、前記過放電判定閾値より大きい値に設定された電圧閾値(V_ctr)と、通常時の放電可能電流値より小さく且つ0より大きい値に設定された放電可能電流下限値とが記憶されており、
前記蓄電池の放電中に前記蓄電池の電圧が前記電圧閾値より小さくなると、前記蓄電池から放電可能な電流値(Iout)を前記通常時の放電可能電流値から前記放電可能電流下限値に切り替える制御を行うように構成されている放電電流制御装置。
【請求項2】
前記放電可能電流下限値は、第1放電可能電流下限値と、前記第1放電可能電流下限値より小さい第2放電可能電流下限値とを含んでおり、
前記蓄電池の放電中に前記蓄電池の電圧が前記電圧閾値より小さくなると、前記蓄電池から放電可能な電流値を前記通常時の放電可能電流値から前記第1放電可能電流下限値に切り替える制御を行い、その制御の実行から所定時間経過後に前記第1放電可能電流下限値から前記第2放電可能電流下限値に切り替える制御を行うように構成されている、請求項1に記載の放電電流制御装置。
【請求項3】
前記放電可能電流下限値は、第1放電可能電流下限値と、前記第1放電可能電流下限値より小さい第2放電可能電流下限値とを含んでおり、
前記蓄電池の放電中に前記蓄電池の電圧が前記電圧閾値より小さくなると、前記蓄電池から放電可能な電流値を前記通常時の放電可能電流値から前記第1放電可能電流下限値に切り替える制御を行い、その制御の実行から所定時間経過後に時間当たりの電池電圧の変化量が一定または低下していると前記第1放電可能電流下限値から前記第2放電可能電流下限値に切り替える制御を行うように構成されている、請求項1に記載の放電電流制御装置。
【請求項4】
前記放電可能電流下限値は、第1放電可能電流下限値と、前記第1放電可能電流下限値より小さい第2放電可能電流下限値とを含んでおり、
前記蓄電池の放電中に前記蓄電池の電圧が前記電圧閾値より小さくなると、前記蓄電池から放電可能な電流値を前記通常時の放電可能電流値から前記第1放電可能電流下限値に切り替える制御を行い、その制御の実行から所定時間経過後に再び前記蓄電池の電圧が前記電圧閾値より小さくなると前記第1放電可能電流下限値から前記第2放電可能電流下限値に切り替える制御を行うように構成されている、請求項1に記載の放電電流制御装置。
【請求項5】
前記放電可能電流下限値は、第1放電可能電流下限値と、前記第1放電可能電流下限値より小さい第2放電可能電流下限値とを含んでおり、
前記電圧閾値は前記通常時の放電可能電流値から前記第1放電可能電流下限値に切り替えるための第1電圧閾値(V_ctr1)と、前記第1放電可能電流下限値から前記第2放電可能電流下限値に切り替えるための第2電圧閾値(V_ctr2)とを含んでおり、
前記蓄電池の放電中に前記蓄電池の電圧が前記第1電圧閾値または前記第2電圧閾値より小さくなると、前記蓄電池から放電可能な電流値を前記通常時の放電可能電流値から前記第1放電可能電流下限値に切り替える制御を行い、その制御の実行から所定時間経過後に前記蓄電池の電圧が前記第2電圧閾値より小さくなると前記第1放電可能電流下限値から前記第2放電可能電流下限値に切り替える制御を行うように構成されている、請求項1に記載の放電電流制御装置。
【請求項6】
前記蓄電池から放電可能な電流値を前記放電可能電流下限値に切り替えた制御を解除するための絞り解除電圧閾値(V_rel)が記憶されており、
前記蓄電池の電圧が前記絞り解除電圧閾値より大きくなると、前記蓄電池から放電可能な電流値を前記放電可能電流下限値から前記通常時の放電可能電流値に切り替える制御を行うように構成されている、請求項1に記載の放電電流制御装置。
【請求項7】
蓄電池(4)の放電電流を制御する放電電流制御装置において、
電池残容量(SOC)および電池温度をパラメータとした放電可能電流値が記憶されており、
前記蓄電池の放電中に前記蓄電池から放電可能な電流値(Iout)を電池残容量および電池温度に基づいた電流値とする制御を行うように構成されている放電電流制御装置。
【請求項8】
前記蓄電池が用いられる蓄電システムには、前記蓄電池と共に負荷(2)に電力を供給可能な発電装置(4)、電力貯蔵装置(5)および商用電力系統(1)が接続されており、
前記蓄電池から前記負荷に供給する放電電力が不足する場合、前記発電装置、前記電力貯蔵装置および前記商用電力系統の少なくとも1つから前記負荷に対して電力を供給する制御を行うように構成されている、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の放電電流制御装置。
【請求項9】
蓄電池(4)の放電電流を制御する放電電流制御方法において、
通常時の放電可能電流値と、前記通常時の放電可能電流値より小さく且つ0より大きい放電可能電流下限値と、過放電判定に用いる過放電判定閾値(V_od)と、前記過放電判定閾値より大きい電圧閾値(V_ctr)を設定し、
前記蓄電池の放電中に前記蓄電池の電圧が前記電圧閾値より小さくなると、前記蓄電池から放電可能な電流値(Iout)を前記通常時の放電可能電流値から前記放電可能電流下限値に切り替える制御を行う放電電流制御方法。
【請求項10】
前記放電可能電流下限値は、第1放電可能電流下限値と、前記第1放電可能電流下限値より小さい第2放電可能電流下限値とを含んでおり、
前記蓄電池の放電中に前記蓄電池の電圧が前記電圧閾値より小さくなると、前記蓄電池から放電可能な電流値を前記通常時の放電可能電流値から前記第1放電可能電流下限値に切り替える制御を行い、その制御の実行から所定時間経過後に前記第1放電可能電流下限値から前記第2放電可能電流下限値に切り替える制御を行う、請求項9に記載の放電電流制御方法。
【請求項11】
前記放電可能電流下限値は、第1放電可能電流下限値と、前記第1放電可能電流下限値より小さい第2放電可能電流下限値とを含んでおり、
前記蓄電池の放電中に前記蓄電池の電圧が前記電圧閾値より小さくなると、前記蓄電池から放電可能な電流値を前記通常時の放電可能電流値から前記第1放電可能電流下限値に切り替える制御を行い、その制御の実行から所定時間経過後に電池電圧の時間当たりの変化量が一定または低下していると前記第1放電可能電流下限値から前記第2放電可能電流下限値に切り替える制御を行う、請求項9に記載の放電電流制御方法。
【請求項12】
前記放電可能電流下限値は、第1放電可能電流下限値と、前記第1放電可能電流下限値より小さい第2放電可能電流下限値とを含んでおり、
前記蓄電池の放電中に前記蓄電池の電圧が前記電圧閾値より小さくなると、前記蓄電池から放電可能な電流値を前記通常時の放電可能電流値から前記第1放電可能電流下限値に切り替える制御を行い、その制御の実行から所定時間経過後に再び前記蓄電池の電圧が前記電圧閾値より小さくなると前記第1放電可能電流下限値から前記第2放電可能電流下限値に切り替える制御を行う、請求項9に記載の放電電流制御方法。
【請求項13】
前記放電可能電流下限値は、第1放電可能電流下限値と、前記第1放電可能電流下限値より小さい第2放電可能電流下限値とを含んでおり、
前記電圧閾値は前記通常時の放電可能電流値から前記第1放電可能電流下限値に切り替えるための第1電圧閾値(V_ctr1)と、前記第1放電可能電流下限値から前記第2放電可能電流下限値に切り替えるための第2電圧閾値(V_ctr2)とを含んでおり、
前記蓄電池の放電中に前記蓄電池の電圧が前記第1電圧閾値または前記第2電圧閾値より小さくなると、前記蓄電池から放電可能な電流値を前記通常時の放電可能電流値から前記第1放電可能電流下限値に切り替える制御を行い、その制御の実行から所定時間経過後に前記蓄電池の電圧が前記第2電圧閾値より小さくなると前記第1放電可能電流下限値から前記第2放電可能電流下限値に切り替える制御を行う、請求項9に記載の放電電流制御方法。
【請求項14】
前記蓄電池から放電可能な電流値を前記放電可能電流下限値に切り替えた制御を解除するための絞り解除電圧閾値(V_rel)を設定し、
前記蓄電池の電圧が前記絞り解除電圧閾値より大きくなると、前記蓄電池から放電可能な電流値を前記放電可能電流下限値から前記通常時の放電可能電流値に切り替える制御を行う、請求項9に記載の放電電流制御方法。
【請求項15】
蓄電池(4)の放電電流を制御する放電電流制御方法において、
電池残容量および電池温度をパラメータとした放電可能電流値を設定し、
前記蓄電池の放電中に前記蓄電池から放電可能な電流値(Iout)を電池残容量および電池温度に基づいた電流値とする制御を行う放電電流制御方法。
【請求項16】
前記蓄電池が用いられる蓄電システムには、前記蓄電池と共に負荷(2)に電力を供給可能な発電装置(4)、電力貯蔵装置(5)および商用電力系統(1)が接続されており、
前記蓄電池から前記負荷に供給する放電電力が不足する場合、前記発電装置、前記電力貯蔵装置および前記商用電力系統の少なくとも1つから前記負荷に対して電力を供給する制御を行う、請求項9ないし15のいずれか1つに記載の放電電流制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電システムにおいて蓄電池の放電電流を制御する放電電流制御装置および放電電流制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の蓄電システムは、蓄電池の放電中の電圧を監視し、その電圧が過放電判定閾値より小さくなると、蓄電池からの放電を停止し、蓄電池を過放電から保護する機能(即ち、過放電保護機能)を有している。なお、特許文献1において「過放電判定閾値」は「第2の電圧値Vu」と呼ばれ、蓄電池が過放電状態に至る残容量の数%手前に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、一般に、蓄電池は放電電流が大きいと、電圧降下が大きくなる特性を有している。そのため、特許文献1に記載の技術では、蓄電池の放電電流が大きい場合、電池電圧が急激に低下して過放電判定閾値より低くなると、本来の電池残容量に余力があっても保護機能の観点で放電を停止し、そのときにユーザに表示する残容量(以下、「SOC」という)を0%とする。なお、SOCは、state of chargeの略である。
【0005】
例えば、電池残容量が10%の状態で蓄電池の放電電流が大きい場合、電池電圧が急激に下がり過放電判定閾値より低くなると、本来は残り10%相当放電する余力があるにも関わらず、過放電保護機能によりそれ以上の放電ができなくなり、SOCを0%と表示する。そのため、見かけ上の電池容量が10%程度小さく見えてしまう。
特に、低温環境下において、蓄電池は放電電流が大きいと電圧降下がより大きくなるので、実質使える電池容量が定格の10%以上小さくなることもある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、電池容量を給電に最大限活用することの可能な放電電流制御装置および放電電流制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
蓄電池(4)の放電電流を制御する放電電流制御装置において、
過放電判定に用いる過放電判定閾値(V_od)と、過放電判定閾値より大きい値に設定された電圧閾値(V_ctr)と、通常時の放電可能電流値より小さく且つ0より大きい値に設定された放電可能電流下限値とが記憶されており、
蓄電池の放電中に蓄電池の電圧が電圧閾値より小さくなると、蓄電池から放電可能な電流値(Iout)を通常時の放電可能電流値から放電可能電流下限値に切り替える制御を行うように構成されている。
【0008】
これによれば、蓄電池の放電電流が大きく電池電圧が急激に低下する場合でも、電池電圧が電圧閾値より低くなると、蓄電池から放電可能な電流値が通常時の放電可能電流値から放電可能電流下限値に切り替わる。これにより、蓄電池から放電される電流値が絞られるので、電池電圧の急激な低下が抑制される。具体的には、蓄電池から放電可能な電流値が放電可能電流下限値に切り替わると、電池電圧は一旦上昇し、その後、緩やかに低下する。したがって、蓄電池の放電電流が大きい場合でも電池電圧の急激な低下が途中で抑制されるので、本来の電池残容量に余力があるにも関わらず電池電圧が過放電判定閾値より低下してしまうことが防がれ、本来の電池容量を給電に最大限活用することができる。
【0009】
また、請求項7に係る発明は、
蓄電池(4)の放電電流を制御する放電電流制御装置において、
電池残容量および電池温度をパラメータとした放電可能電流値が記憶されており、
前記蓄電池の放電中に前記蓄電池から放電可能な電流値(Iout)を電池残容量および電池温度に基づいた電流値とする制御を行うように構成されている。
【0010】
これによれば、請求項7に係る発明も、請求項1に係る発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0011】
また、請求項9に係る発明は、蓄電池(4)の放電電流を制御する放電電流制御方法において、
通常時の放電可能電流値と、通常時の放電可能電流値より小さく且つ0より大きい放電可能電流下限値と、過放電判定に用いる過放電判定閾値(V_od)と、過放電判定閾値より大きい電圧閾値(V_ctr)を設定し、
蓄電池の放電中に蓄電池の電圧が電圧閾値より小さくなると、蓄電池から放電可能な電流値(Iout)を通常時の放電可能電流値から放電可能電流下限値に切り替える制御を行うものである。
【0012】
これによれば、請求項9に係る発明も、請求項1に係る発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0013】
また、請求項15に係る発明は、蓄電池(4)の放電電流を制御する放電電流制御方法において、
電池残容量および電池温度をパラメータとした放電可能電流値を設定し、
前記蓄電池の放電中に前記蓄電池から放電可能な電流値(Iout)を電池残容量および電池温度に基づいた電流値とする制御を行うものである。
【0014】
これによれば、請求項15に係る発明も、請求項1に係る発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0015】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る放電電流制御装置および放電電流制御方法が用いられる蓄電システムの一つの構成例を示す概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る放電電流制御装置および放電電流制御方法が用いられる蓄電システムの別の構成例を示す概略構成図である。
【
図3】第1実施形態による放電電流制御の一例を示すグラフである。
【
図4】第1実施形態に係る放電電流制御装置が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【
図5】従来の放電電流制御の一例を示すグラフである。
【
図6】第2実施形態による放電電流制御の一例を示すグラフである。
【
図7A】第2実施形態に係る放電電流制御装置が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【
図7B】第2実施形態に係る放電電流制御装置が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【
図8A】第2実施形態の第1変形例に係る放電電流制御装置が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【
図8B】第2実施形態の第1変形例に係る放電電流制御装置が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【
図9】第2実施形態の第2変形例による放電電流制御の一例を示すグラフである。
【
図10】第3実施形態による放電電流制御の一例を示すグラフである。
【
図11】第4実施形態による放電電流制御の一例を示すグラフである。
【
図12】第5実施形態に係る放電電流制御装置が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。第1実施形態では、放電電流制御装置および放電電流制御方法が用いられる蓄電システムについて説明する。
【0019】
図1は、蓄電システムの一つの構成例(以下、「第1構成例」という)を示している。
図1に示すように、蓄電システムは、商用電力系統1(以下、単に「系統1」という)から家電機器などの負荷2に電力を供給する電力線3に対し、蓄電池4、発電装置5、電力貯蔵装置6などが電気的に接続されている。
【0020】
蓄電池4は、複数の電池セルが直列接続または直並列接続された不図示の電池モジュールと、その電池モジュールを制御する制御部7を有している。制御部7は、プロセッサと、ROM、RAM等のメモリーとを含むマイクロコンピュータ、および、その周辺回路を含んで構成されている。制御部7は、プロセッサがメモリーに格納されたプログラムを実行することで、電池モジュールの充放電などを制御する。したがって、蓄電システムの第1構成例において、蓄電池4の有する制御部7は、蓄電池4の放電電流を制御する放電電流制御装置の一例に相当するものである。
【0021】
蓄電池4の有する制御部7のメモリーには、電池モジュールの充放電を制御するため、過放電判定閾値V_od、電圧閾値V_ctr、放電可能電流下限値、絞り解除電圧閾値V_relなどが記憶されている。
【0022】
過放電判定閾値V_odは、蓄電池4の過放電判定に用いる閾値である。過放電判定閾値V_odは、蓄電池4が過放電状態に至る残容量の数%手前に設定されている。
【0023】
電圧閾値V_ctrは、過放電判定閾値V_odより大きい値に設定された閾値であり、蓄電池4から放電可能な電流値(以下、「放電可能電流値Iout」という)の切り替えに用いるための閾値である。電圧閾値V_ctrは、固定値とすることができる。
【0024】
放電可能電流下限値は、通常時の放電可能電流値(以下「放電可能電流通常値」という)より小さく、且つ、0より大きい値に設定された電流値である。放電可能電流下限値は、予め設定した固定値としてもよく、或いは、ユーザに表示する蓄電池4の残容量(以下、「SOC」という)および電池温度などをパラメータとして最適な値をマップ化して決めてもよい。
【0025】
絞り解除電圧閾値V_relは、放電可能電流値Ioutを放電可能電流通常値から放電可能電流下限値に切り替えた制御を解除して再び放電可能電流通常値に戻すときに用いる閾値である。絞り解除電圧閾値V_relは、電圧閾値V_ctrより大きい値に設定される。また、絞り解除電圧閾値V_relは、電池温度に応じて決まる値としてもよく、或いは、簡易化のために一意の値にしてもよい。
【0026】
発電装置5は、例えば太陽光発電装置(PV)および燃料電池装置などで構成されている。なお、PVは、photovoltaicsの略である。電力貯蔵装置6は、例えば車載蓄電池(V2X)などで構成されている。V2Xは、Vehicle to Xの略である。なお、発電装置5と電力貯蔵装置6もそれぞれ、自身の充放電などを制御する制御部8、9を有している。
【0027】
蓄電池4と発電装置5と電力貯蔵装置6は、システムコントローラ10により制御される。システムコントローラ10は、例えば、エネルギーマネジメントシステム(EMS)端末により構成される。EMSは、HEMS、BEMS、FEMS、CEMSなどを含んでいる。HEMSは、Home Energy Management Serviceの略である。BEMSは、Building and Energy Management Systemの略である。FEMSは、Factory Energy Management Systemの略である。CEMSは、Community Energy Management Systemの略である。なお、住宅のエネルギーを管理するシステムのシステムコントローラ10には、例えばHEMSが用いられる。システムコントローラ10は、蓄電池4と発電装置5と電力貯蔵装置6のパフォーマンスを監視および最適化する制御を実行する。なお、
図1では、蓄電池4、発電装置5、電力貯蔵装置6それぞれの制御部7~9と、システムコントローラ10との通信線を破線で示している。
【0028】
また、
図2は、蓄電システムの別の構成例(以下、「第2構成例」という)を示している。
図2に示すように、蓄電システムは、系統1から負荷2に電力を供給する電力線3に対し、パワーコンディショナ11を経由して、蓄電池4、発電装置5、電力貯蔵装置6などが電気的に接続されている。なお、本明細書では、2つの機器と接続できるハイブリッドパワーコンディショナ、3つの機器と接続できるトライブリッドコンディショナなど、複数の機器と接続できるパワーコンディショナを総称して「パワーコンディショナ」という。パワーコンディショナ11は、不図示の電力変換器と制御部12を有している。電力変換器は、インバータおよびコンバータなどを含んで構成されている。制御部12は、プロセッサと、ROMおよびRAM等のメモリーとを含むマイクロコンピュータ、および、その周辺回路を含んで構成されている。制御部12は、プロセッサが、メモリーに格納されたプログラムを実行することで、蓄電池4、発電装置5、電力貯蔵装置6それぞれの充放電などを制御する。したがって、蓄電システムの第2構成例において、パワーコンディショナ11の有する制御部12は、蓄電池4の放電電流を制御する放電電流制御装置の一例に相当するものである。パワーコンディショナ11の有する制御部12のメモリーにも、蓄電池4の有する電池モジュールの充放電を制御するための過放電判定閾値V_od、電圧閾値V_ctr、放電可能電流下限値、絞り解除電圧閾値V_relなどが記憶されている。
【0029】
上述したように、パワーコンディショナ11は、蓄電池4、発電装置5、電力貯蔵装置6それぞれの充放電などを制御する。そのため、パワーコンディショナ11は、蓄電池4から負荷2に供給する放電電力が不足する場合、蓄電池4以外の発電装置5、電力貯蔵装置6および系統1の少なくとも1つから負荷2に対して電力を供給する制御を実行することが可能である。これにより、蓄電池4から負荷2に供給する放電電力が不足する場合でも、他の電源から負荷2に対して電力供給を継続できるので、負荷2の作動停止を防ぐことができる。特に、系統1が停電した際の自立運転時には系統1からの電力供給を頼ることができないので、この制御が有効となる。
【0030】
以下の説明では、上記第1構成例における蓄電池4の有する制御部7と、上記第2構成例におけるパワーコンディショナ11の有する制御部12において蓄電池4の放電電流を制御するものを「放電電流制御装置」をいう。
【0031】
次に、第1実施形態に係る放電電流制御装置による蓄電池4の放電電流制御について説明する。
【0032】
図3は、蓄電池4の放電電流が大きく電池電圧が急激に低下する場合に放電電流制御装置が実行する放電電流制御の一例を示したものである。
【0033】
図3(A)の縦軸は、蓄電池4の電圧(即ち、電池電圧)[V]、および、SOCの百分率[%]を示している。
図3(A)の横軸は、時間[ms]を示している。
図3(A)の実線Aは、蓄電池4の放電電流が大きい場合における電池電圧の推移を示している。また、
図3(A)の実線Bは、SOCを示している。
【0034】
一方、
図3(B)の縦軸は、電流[A]を示している。
図3(B)の横軸は、時間[ms]を示している。
図3(B)の実線Cは、放電可能電流値Ioutを示している。なお、これらのことは、後述の説明で参照する
図5、6、9~11においても、実線に付した符号を除いて同じである。
【0035】
図3(A)の実線Aに示すように、時刻t1以降、蓄電池4の放電電流が大きいことから、電池電圧は急激に低下している。
図3(B)の実線Cに示すように、時刻t1以前から時刻t2の間では、放電可能電流値Ioutは、放電可能電流通常値に設定されている。そのため、時刻t1以前から時刻t2の間では、蓄電池4は、放電可能電流通常値以下の範囲で放電することができる。
【0036】
図3(A)の実線Aに示すように、時刻t2で電池電圧は、電圧閾値V_ctrより小さくなる。これにより、放電電流制御装置は、放電可能電流値Ioutを、放電可能電流通常値から放電可能電流下限値に切り替える制御を実行する。したがって、
図3(B)の実線Cに示すように、時刻t2で放電可能電流値Ioutは、放電可能電流通常値から放電可能電流下限値に切り替えられる。そのため、時刻t2から時刻t4の間では、蓄電池4は、放電可能電流下限値の範囲で放電することができる。すなわち、蓄電池4の放電電流は、時刻t1以前から時刻t2の間で放電可能電流通常値以下の範囲であったものが、時刻t2以降、放電可能電流下限値以下の範囲に絞られる。
【0037】
時刻t2以降、放電電流が絞られると、電池電圧の急激な低下が抑制される。具体的には、
図3(A)の実線Aに示すように、時刻t2以降、電池電圧は一旦上昇し、その後時刻t3以降、緩やかに低下するようになる。したがって、電池電圧の急激な低下が抑制され、電池電圧が過放電判定閾値V_odに低下するまでの時間が長くなる。そして、時刻t4で電池電圧は過放電判定閾値V_odより小さくなる。そのため、放電電流制御装置は、時刻t4で放電可能電流値Ioutを0として、放電を停止する。
【0038】
図3(A)の実線Bに示すように、SOCは、時刻t2以降、ほぼ一定の低下率を示し、時刻t4で0%となる。したがって、第1実施形態に係る放電電流制御装置は、蓄電池4の放電電流が大きい場合でも、上記で説明した放電電流制御を実行することで、電池容量を定格容量の下限まで使うことが可能である。
【0039】
続いて、第1実施形態の放電電流制御装置が実行する放電電流制御を、
図4のフローチャートを参照して説明する。この制御処理は、所定の制御時間間隔で繰り返し実行するものである。
【0040】
まずステップS10で、蓄電池4の放電可能電力値Wout(t)と電池電圧V(t)を取得する。放電電流制御装置は、不図示の電池制御ECUから放電可能電力値Wout(t)と電池電圧V(t)に関する情報を取得してもよく、或いは、それらの情報を自ら取得してもよい。なお、ECUはElectronic Control Unitの略である。そして、放電電流制御装置は、放電可能電力値Wout(t)を電池電圧V(t)で除算することで、蓄電池4の放電電流のベース値となる放電可能電流ベース値Iout_b(t)を算出する。なお、これらの値は、いずれも制御処理を実行する制御時刻における値であるので、符号の末尾に(t)を付している。
【0041】
次に、ステップS20で、SOCが0%か否かを判定する。なお、SOCが0%か否かの判定は、電池電圧が過放電判定閾値V_odより低いか否かで判定する。具体的には、電池電圧が過放電判定閾値V_odより低い場合、SOCが0%であると判定する。一方、電池電圧が過放電判定閾値V_od以上の場合、SOCが0%ではないと判定する。
【0042】
SOCが0%である場合、処理をステップS30に進める。ステップS30で、放電可能電流絞り値Iout_c(t)を0とする。
【0043】
一方、ステップS20でSOCが0%でない場合、処理をステップS40に進める。
ステップS40で、絞り解除電圧閾値V_rel(T)より電池電圧V(t)が大きいか否かを判定する。なお、本実施形態では、絞り解除電圧閾値V_rel(T)は、電池温度に応じて決まる値としているので、符号の末尾を(T)としている。
ステップS40で、絞り解除電圧閾値V_rel(T)より電池電圧V(t)が大きい場合、処理をステップS50に進める。ステップS50で、state=0(即ち、状態フラグ「0」)とする。これにより、後述のステップS70でstate=1(即ち、状態フラグ「1」)とした制御が解除される。ステップS50の後、処理をステップS60に進める。
【0044】
一方、ステップS40で、電池電圧V(t)が絞り解除電圧閾値V_rel(T)以下の場合、ステップS50を経由することなく、処理をステップS60に進める。ステップS60で、電池電圧V(t)が電圧閾値V_ctrより小さいか否かを判定する。電池電圧V(t)が電圧閾値V_ctrより小さい場合、処理をステップS70に進める。ステップS70で、state=1(即ち、状態フラグ「1」)とした後、処理をステップS80に進める。ステップS80で、放電可能電流絞り値Iout_c(t)を、放電可能電流下限値とする。
【0045】
一方、ステップS60で、電池電圧V(t)が電圧閾値V_ctr以上の場合、処理をステップS90に進める。ステップS90で、stateが「1」か否かを判定する。stateが「1」でない場合(すなわち、state=0の場合)、処理をステップS100に進める。ステップS100で、放電可能電流絞り値Iout_c(t)を、放電可能電流ベース値Iout_b(t)とする。
【0046】
一方、ステップS70で、stateが「1」の場合、処理をステップS110に進める。ステップS110で、放電可能電流絞り値Iout_c(t)を、放電可能電流下限値とする。
【0047】
上記ステップS30、S80、S100、S110の後、処理をステップS120に進める。ステップS120において、放電可能電流値Iout(t)を、放電可能電流ベース値Iout_b(t)または放電可能電流絞り値Iout_c(t)のうち、いずれか小さい方の値とする。
【0048】
ステップS120の後、上述した制御処理を再びS10から繰り返し実行する。
【0049】
ここで、上述した第1実施形態の放電電流制御装置が実行する放電電流制御と比較するため、比較例の放電電流制御装置が実行する放電流制御について説明する。比較例の放電電流制御装置は、そのメモリーに過放電判定閾値V_od、絞り解除電圧閾値V_rel、放電可能電流通常値が記憶されているが、電圧閾値V_ctr、放電可能電流下限値は記憶されていないものである。
【0050】
図5は、蓄電池4の放電電流が大きく電池電圧が急激に低下する場合に、比較例の放電電流制御装置が実行する放電電流制御を示したものである。
【0051】
図5(A)の実線Dに示すように、時刻t11以降、蓄電池4の放電電流が大きいことから、電池電圧は急激に低下している。
図5(B)の実線Fに示すように、時刻t11以前から時刻t12の間では、放電可能電流値Ioutは、放電可能電流通常値に設定されている。そのため、時刻t11以前から時刻t12の間では、蓄電池4は、放電可能電流通常値以下の範囲で放電することができる。
【0052】
図5(A)の実線Dに示すように、時刻t12で電池電圧は、過放電判定閾値V_odより小さくなる。これにより、放電電流制御装置は、放電可能電流値Ioutを0として、放電を停止する。このとき、実線Eに示すように、SOCは、時刻t12で本来の電池残容量に余力があるにも関わらず急激に低下して0%となる。
【0053】
図5(A)の破線Gは、仮に、本来の電池残容量を定格容量の下限まで放電した場合を示している。この破線Gに示すように、仮に、時刻t12以降も一定の低下率でSOCが低下した場合、時刻t13でSOCは0%となる。したがって、比較例では、
図5(B)にハッチングで示した領域Hの分、本来の電池容量を放電できないことが見て取れる。
【0054】
このような比較例の放電電流制御装置に対し、第1実施形態の放電電流制御装置および放電電流制御方法は、次の構成、および、それによる作用効果を奏するものである。
【0055】
(1)本実施形態の放電電流制御装置は、蓄電池4の放電中に蓄電池4の電圧が電圧閾値V_ctrより小さくなると、蓄電池4の放電可能電流値Ioutを、放電可能電流通常値から放電可能電流下限値に切り替える制御を行うように構成されている。
これによれば、蓄電池4の放電電流が大きく電池電圧が急激に低下する場合でも、電池電圧が過放電判定閾値V_odとなる前に電圧閾値V_ctrより低くなると、蓄電池4の放電可能電流値Ioutが放電可能電流通常値から放電可能電流下限値に切り替わる。これにより、蓄電池4の放電可能電流値Ioutが絞られることで、電池電圧の急激な低下が抑制される。具体的には、蓄電池4の放電可能電流値Ioutが放電可能電流下限値に切り替わると、
図3の実線Aに示したように、電池電圧は一旦上昇し、その後、緩やかに低下する。したがって、電池電圧の急激な低下が抑制されることにより、本来の電池残容量に余力があるにも関わらず電池電圧が過放電判定閾値V_odを下回り放電が停止されることが防がれるので、本来の電池容量を給電に最大限活用することができる。
【0056】
(2)本実施形態では、放電電流制御装置は、蓄電池4から負荷2に供給する放電電力が不足する場合、蓄電池4以外の発電装置5、電力貯蔵装置6および系統1の少なくとも1つから負荷2に対して電力を供給するように構成されている。
これによれば、放電電流制御装置は、蓄電池4から負荷2に供給する放電電力が不足する場合でも、他の電源から負荷2に対して電力を供給することで、負荷2への給電を継続でき、負荷2の作動停止を防ぐことができる。特に、系統1が停電した際の自立運転時には系統1からの電力供給を頼ることができないので、この制御が有効となる。
【0057】
(3)本実施形態では、放電電流制御装置は、蓄電池4の電圧が絞り解除電圧閾値V_relより大きくなると、蓄電池4の放電可能電流値Ioutを、放電可能電流下限値から放電可能電流通常値に切り替える制御を行うように構成されている。
これによれば、蓄電池4が充電されて電池電圧が絞り解除電圧閾値V_relより大きくなると、蓄電池4の放電可能電流値Ioutは、放電可能電流下限値から再び、放電可能電流通常値に切り替わる。
【0058】
(4)本実施形態の放電電流制御方法は、蓄電池4の放電中に蓄電池4の電圧が電圧閾値V_ctrより小さくなると、蓄電池4の放電可能電流値Ioutを、放電可能電流通常値から放電可能電流下限値に切り替える制御を行うものである。
この制御方法によれば、蓄電池4の放電電流が大きく電池電圧が急激に低下する場合でも、その電圧降下の途中で電池電圧の急激な低下を抑制する制御が実行されるので、本来の電池容量を給電に最大限活用することができる。
【0059】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して、放電電流制御装置が実行する放電電流制御の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0060】
第2実施形態の放電電流制御装置は、放電可能電流下限値を多段階に切り替える構成である。第2実施形態の放電電流制御装置のメモリーには、放電可能電流下限値として、少なくとも第1放電可能電流下限値と第2放電可能電流下限値が記憶されている。第2放電可能電流下限値は、第1放電可能電流下限値より小さい値である。なお、放電可能電流下限値として、第1、第2放電可能電流下限値に加えて、3つ以上の放電可能電流下限値が記憶されていてもよい。
【0061】
なお、第1、第2放電可能電流下限値は、第1実施形態と同様に、予め設定した固定値としてもよく、或いは、SOCおよび電池温度などをパラメータとして最適な値をマップ化して決めてもよい。
【0062】
第2実施形態に係る放電電流制御装置による蓄電池4の放電電流制御について説明する。
【0063】
図6は、蓄電池4の放電電流が大きく電池電圧が急激に低下する場合に放電電流制御装置が実行する放電電流制御の一例を示したものである。
【0064】
図6(A)の実線Iに示すように、時刻t21以降、蓄電池4の放電電流が大きいことから、電池電圧は急激に低下している。
図6(B)の実線Jに示すように、時刻t21以前から時刻t22の間では、放電可能電流値Ioutは、放電可能電流通常値に設定されている。そのため、時刻t21以前から時刻t22の間では、蓄電池4は、放電可能電流通常値以下の範囲で放電することができる。
【0065】
図6(A)の実線Iに示すように、時刻t22で電池電圧は、電圧閾値V_ctrより小さくなる。これにより、放電電流制御装置は、放電可能電流値Ioutを、放電可能電流通常値から第1放電可能電流下限値に切り替える制御を実行する。したがって、
図6(B)の実線Jに示すように、時刻t22で放電可能電流値Ioutは、放電可能電流通常値から第1放電可能電流下限値に切り替えられる。そのため、時刻t22から時刻t24の間では、蓄電池4は、放電可能電流下限値の範囲で放電することができる。すなわち、蓄電池4の放電電流は、時刻t21以前から時刻t22の間で放電可能電流通常値以下の範囲であったものが、時刻t22以降、第1放電可能電流下限値以下の範囲に絞られる。
【0066】
時刻t22以降、放電電流が絞られると、電池電圧の急激な低下が抑制される。具体的には、
図6(A)の実線Iに示すように、時刻t22以降、電池電圧は一旦上昇し、その後時刻t23以降、緩やかに低下するようになる。そして、
図6(B)の実線Jに示すように、放電電流制御装置は、時刻t22から所定時間T[ms]が経過した時刻t24で、放電可能電流値Ioutを、第1放電可能電流下限値から第2放電可能電流下限値に切り替える。そのため、時刻t24から時刻t26の間では、蓄電池4は、第2放電可能電流下限値の範囲で放電することができる。すなわち、蓄電池4の放電電流は、時刻t22から時刻t24の間で第1放電可能電流通常値以下の範囲であったものが、時刻t24以降、第2放電可能電流下限値以下の範囲に絞られる。
【0067】
図6(A)の実線Iに示すように、時刻t24以降、電池電圧は一旦上昇し、その後、緩やかに低下するようになる。そして、時刻t25で電池電圧は過放電判定閾値V_odより小さくなる。そのため、放電電流制御装置は、放電可能電流値Ioutを0として、放電を停止する。したがって、第2実施形態に係る放電電流制御装置は、蓄電池4の放電電流が大きい場合でも、上記で説明した放電電流制御により放電可能電流値を段階的に下げる制御を実行することで、電池容量を定格容量の下限まで使うことが可能である。
【0068】
続いて、第2実施形態の放電電流制御装置が実行する放電電流制御について、
図7Aと
図7Bのフローチャートを参照して説明する。この制御処理は、所定の制御時間間隔で繰り返し実行するものである。
【0069】
まずステップS210で、蓄電池4の放電可能電力値Wout(t)と電池電圧V(t)を取得する。そして、放電可能電力値Wout(t)を電池電圧V(t)で除算することで、蓄電池4の放電電流のベース値となる放電可能電流ベース値Iout_b(t)を算出する。
【0070】
次に、ステップS220で、SOCが0%か否かを判定する。なお、SOCが0%か否かの判定は、電池電圧が過放電判定閾値V_odより低いか否かで判定する。具体的には、電池電圧が過放電判定閾値V_odより低い場合、SOCが0%であると判定する。一方、電池電圧が過放電判定閾値V_od以上の場合、SOCが0%ではないと判定する。
【0071】
SOCが0%である場合、処理をステップS230に進める。ステップS230で、放電可能電流絞り値Iout_c(t)を0とする。
【0072】
一方、ステップS220でSOCが0%でない場合、処理をステップS240に進める。
ステップS240で、絞り解除電圧閾値V_rel(T)より電池電圧V(t)が大きいか否かを判定する。絞り解除電圧閾値V_rel(T)より電池電圧V(t)が大きい場合、処理をステップS250に進める。ステップS250で、state=0(即ち、状態フラグ「0」)とする。これにより、後述のステップS280でstate=1(即ち、状態フラグ「1」)とした制御、またはステップS310でstate=2(即ち、状態フラグ「2」)とした制御が解除される。ステップS250の後、処理をステップS260に進める。
【0073】
一方、ステップS240で、電池電圧V(t)が絞り解除電圧閾値V_rel(T)以下の場合、ステップS250を経由することなく、処理をステップS260に進める。ステップS260で、電池電圧V(t)が電圧閾値V_ctrより小さいか否かを判定する。電池電圧V(t)が電圧閾値V_ctrより小さい場合、処理をステップS270に進める。
【0074】
ステップS270で、現在の状態フラグがstate=0か否かを判定する。ステップS270で、state=0(即ち、現在の状態フラグが「0」)の場合、処理をステップS280に進める。そして、ステップS280でstate=1(即ち、状態フラグを「1」)に切り替えた後、処理をステップS290に進める。ステップS290で、放電可能電流絞り値Iout_c(t)を、第1放電可能電流下限値とする。
【0075】
一方、ステップS270で、state=0(即ち、現在の状態フラグが「0」)ではない場合、処理をステップS300に進める。そして、ステップS300でstate=1(即ち、状態フラグが「1」)になってから所定時間T[ms]以上経過したか否かを判定する。この判定処理により、状態フラグが「0」から「1」に遷移した後、制御回路の応答速度、センサ読み取り速度を考慮した電圧読み取り待機時間を設けることが可能となる。電圧読み取り待機時間を設けるのは次の理由による。即ち、放電電流を絞った後、電池電圧は一時的に増加する。仮に、その間も電池電圧を監視すれば、本制御が、電池電圧が短時間で増減を繰り返すチャタリングによる影響を受けてしまう。そのため、電池電圧を一時的に監視しないようにすることで、チャタリングによる影響を防ぐことができる。
【0076】
ステップS300でstate=1(即ち、状態フラグが「1」)になってから所定時間T[ms]以上経過していない場合、処理をステップS290に進める。ステップS290で、放電可能電流絞り値Iout_c(t)を、第1放電可能電流下限値とする。
【0077】
一方、ステップS300でstate=1(即ち、状態フラグが「1」)になってから所定時間T[ms]以上経過している場合、処理をステップS310に進める。ステップS310で、state=2(即ち、状態フラグ「2」)とした後、処理をステップS320に進める。ステップS320で、放電可能電流絞り値Iout_c(t)を、第2放電可能電流下限値とする。
【0078】
一方、上記ステップS260で、電池電圧V(t)が電圧閾値V_ctr以上の場合、処理をステップS330に進める。ステップS330で、stateが「0」より大きいか否かを判定する。stateが「0」以下の場合(すなわち、state=0の場合)、処理をステップS340に進める。ステップS340で、放電可能電流絞り値Iout_c(t)を、放電可能電流ベース値Iout_b(t)とする。
【0079】
一方、ステップS330で、stateが「0」より大きい場合(すなわち、state=1または2の場合)、処理をステップS350に進める。ステップS350で、放電可能電流絞り値Iout_c(t)を、前回の放電可能電流下限値(即ち、第1放電可能電流下限値または第2放電可能電流下限値)とする。
【0080】
上記ステップS230、S290、S320、S340、S350の後、処理をステップS360に進める。ステップS360において、放電可能電流値Iout(t)を、放電可能電流ベース値Iout_b(t)または放電可能電流絞り値Iout_c(t)のうち、いずれか小さい方の値とする。
【0081】
ステップS360の後、上述した制御処理を再びS210から繰り返し実行する。
【0082】
以上説明した第2実施形態の放電電流制御装置および放電電流制御方法は、次の構成、および、それによる作用効果を奏するものである。
【0083】
第2実施形態では、蓄電池4の放電中に蓄電池4の電圧が電圧閾値V_ctrより小さくなると、蓄電池4の放電可能電流値Ioutを放電可能電流通常値から第1放電可能電流下限値に切り替える制御を行う。さらに、その制御の実行から所定時間T[ms]経過後に、放電可能電流値Ioutを第1放電可能電流下限値から第2放電可能電流下限値に切り替える制御を行うものである。
これによれば、蓄電池4の放電可能電流値Ioutを多段階で絞ることで、放電電流の急激な低下を抑制し、電池電圧を緩やかに低下させ、本来の電池容量を給電に最大限活用することができる。
【0084】
(第2実施形態の第1変形例)
第2実施形態の第1変形例について、
図8Aと
図8Bのフローチャートを参照して説明する。
図8Bに示すように、第2実施形態の第1変形例は、上述した第2実施形態の説明においてステップS300で説明した処理を、ステップS301に変更したものである。
【0085】
上述した第2実施形態の説明においてステップS300は、state=1(即ち、状態フラグが「1」)になってから所定時間T[ms]以上経過したか否かを判定するものであった。それに対し、第2実施形態の第1変形例においてステップS301は、電池電圧の変化分で判定するものである。具体的に、電池電圧の時間当たりの変化量が0より大きい場合(即ち、増加している場合)、処理をステップS290に進める(即ち、state=1を継続する)。一方、電池電圧の時間当たりの変化量が0以下の場合(即ち、一定または減少している場合)、処理をステップS310に進める(即ち、state=2に切り替える)。
【0086】
以上説明した第2実施形態の第1変形例の放電電流制御装置および放電電流制御方法は、次の構成、および、それによる作用効果を奏するものである。
【0087】
第2実施形態の第1変形例では、蓄電池4の放電中に蓄電池4の電圧が電圧閾値V_ctrより小さくなると、蓄電池4の放電可能電流値Ioutを放電可能電流通常値から第1放電可能電流下限値に切り替える制御を行う。さらに、その制御の実行から所定時間経過後に電池電圧が一定または低下していると、放電可能電流値Ioutを第1放電可能電流下限値から第2放電可能電流下限値に切り替える制御を行うものである。これによれば、第2実施形態の第1変形例も、第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0088】
(第2実施形態の第2変形例)
第2実施形態の第2変形例について、
図9のグラフを参照して説明する。
図9は、蓄電池4の放電電流が大きく電池電圧が急激に低下する場合に、第2実施形態の第2変形例の放電電流制御装置が実行する放電電流制御の一例を示したものである。
【0089】
上記第1実施形態では、放電可能電流値Ioutを2段階で低下させる制御について説明し、上記第2実施形態およびその第1変形例では、放電可能電流値Ioutを3段階で低下させる制御について説明した。それに対し、第2実施形態の第2変形例は、放電可能電流値Ioutを多数の段階で低下させる制御とするものである。
【0090】
図9は、蓄電池4の放電電流が大きく電池電圧が急激に低下する場合に放電電流制御装置が実行する放電電流制御の一例を示したものである。
【0091】
図9(A)の実線Kに示すように、時刻t31以降、蓄電池4の放電電流が大きいことから、電池電圧は急激に低下している。
図9(B)の実線Lに示すように、時刻t31から時刻t32の間では、放電可能電流値Ioutは、放電可能電流通常値に設定されている。
【0092】
図9(A)の実線Kに示すように、時刻t32で電池電圧は、電圧閾値V_ctrより小さくなる。これにより、放電電流制御装置は、放電可能電流値Ioutを、放電可能電流通常値から放電可能電流下限値に切り替える制御を実行する。ここで、第2実施形態の第2変形例では、放電可能電流下限値を時間の経過に伴って多数の段階で低くする制御を実行する。そのため、
図9(B)の実線Lに示すように、時刻t32以降で放電可能電流値Ioutは、時間の経過に伴って連続的に低下する。
【0093】
そして、時刻t33で放電電流制御装置は、放電可能電流値Ioutを0として、放電を停止する。したがって、第2実施形態の第2変形例の放電電流制御装置は、蓄電池4の放電電流が大きい場合でも、放電電流制御により放電可能電流値を時間の経過に伴って連続的に下げる制御を実行することで、電池容量を定格容量の下限まで使うことが可能である。
【0094】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態も、第1実施形態等に対して、放電電流制御装置が実行する放電電流制御の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。
【0095】
第3実施形態の放電電流制御装置も、放電可能電流下限値を多段階に切り替える構成である。第3実施形態の放電電流制御装置のメモリーには、放電可能電流下限値として、少なくとも第1放電可能電流下限値と第2放電可能電流下限値が記憶されている。第2放電可能電流下限値は、第1放電可能電流下限値より小さい値である。なお、放電可能電流下限値として、第1、第2放電可能電流下限値に加えて、3つ以上の放電可能電流下限値が記憶されていてもよい。
【0096】
第3実施形態の放電電流制御装置による蓄電池4の放電電流制御について、
図10を参照して説明する。
図10は、蓄電池4の放電電流が大きく電池電圧が急激に低下する場合に、第3実施形態の放電電流制御装置が実行する放電電流制御の一例を示したものである。
【0097】
図10(A)の実線Mに示すように、時刻t41以降、蓄電池4の放電電流が大きいことから、電池電圧は急激に低下している。
図10(B)の実線Oに示すように、時刻t41以前から時刻t42の間では、放電可能電流値Ioutは、放電可能電流通常値に設定されている。そのため、時刻t41以前から時刻t42の間では、蓄電池4は、放電可能電流通常値以下の範囲で放電することができる。
【0098】
図10(A)の実線Mに示すように、時刻t42で電池電圧は、電圧閾値V_ctrより小さくなる。これにより、
図10(B)の実線Oに示すように、放電電流制御装置は、放電可能電流値Ioutを、放電可能電流通常値から第1放電可能電流下限値に切り替える。そのため、時刻t42から時刻t44の間では、蓄電池4は、第1放電可能電流下限値の範囲で放電することができる。すなわち、蓄電池4の放電電流は、時刻t41以前から時刻t42の間で放電可能電流通常値以下の範囲であったものが、時刻t42以降、第1放電可能電流下限値以下の範囲に絞られる。
【0099】
時刻t42以降、放電電流が絞られると、電池電圧の急激な低下が抑制される。具体的には、
図10(A)の実線Mに示すように、時刻t42以降、電池電圧は一旦上昇し、その後時刻t43以降、緩やかに低下するようになる。そして、時刻t44で電池電圧は再び電圧閾値V_ctrより小さくなる。これにより、
図10(B)の実線Oに示すように、放電電流制御装置は、放電可能電流値Ioutを、第1放電可能電流下限値から第2放電可能電流下限値に切り替える。そのため、時刻t44から時刻t46の間では、蓄電池4は、第2放電可能電流下限値の範囲で放電することができる。すなわち、蓄電池4の放電電流は、時刻t42から時刻t44の間で第1放電可能電流通常値以下の範囲であったものが、時刻t44以降、第2放電可能電流下限値以下の範囲に絞られる。
【0100】
図10(A)の実線Mに示すように、時刻t44以降、電池電圧は一旦上昇し、その後時刻t45以降、緩やかに低下するようになる。そして、時刻t46で電池電圧は過放電判定閾値V_odより小さくなる。そのため、放電電流制御装置は、放電可能電流値Ioutを0として、放電を停止する。
【0101】
図10(A)の実線Nに示すように、SOCは、ほぼ一定の低下率を示し、時刻t46で0%となる。したがって、第3実施形態に係る放電電流制御装置は、蓄電池4の放電電流が大きい場合でも、上記で説明した放電電流制御を実行することで、電池容量を定格容量の下限まで使うことが可能である。
【0102】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態も、第1実施形態等に対して、放電電流制御装置が実行する放電電流制御の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。
【0103】
第4実施形態の放電電流制御装置も、放電可能電流下限値を多段階に切り替える構成である。第4実施形態の放電電流制御装置のメモリーには、電圧閾値V_ctrとして、少なくとも第1電圧閾値V_ctr1と第2電圧閾値V_ctr2とが記憶されている。第1電圧閾値V_ctr1は、放電可能電流通常値から第1放電可能電流下限値に切り替えるための電圧閾値である。第2電圧閾値V_ctr2は、第1放電可能電流下限値から第2放電可能電流下限値に切り替えるための電圧閾値である。なお、電圧閾値V_ctrとして、第1、第2電圧閾値に加えて、3つ以上の電圧閾値が記憶されていてもよい。
【0104】
また、第4実施形態の放電電流制御装置のメモリーには、第2、第3実施形態と同じく、放電可能電流下限値として、少なくとも第1放電可能電流下限値と第2放電可能電流下限値が記憶されている。第2放電可能電流下限値は、第1放電可能電流下限値より小さい値である。なお、放電可能電流下限値として、第1、第2放電可能電流下限値に加えて、3つ以上の放電可能電流下限値が記憶されていてもよい。
【0105】
第4実施形態の放電電流制御装置による蓄電池4の放電電流制御について、
図11を参照して説明する。
図11は、蓄電池4の放電電流が大きく電池電圧が急激に低下する場合に、第4実施形態の放電電流制御装置が実行する放電電流制御の一例を示したものである。
【0106】
図11(A)の実線Pに示すように、時刻t51以降、蓄電池4の放電電流が大きいことから、電池電圧は急激に低下している。
図11(B)の実線Rに示すように、時刻t51以前から時刻t52の間では、放電可能電流値Ioutは、放電可能電流通常値に設定されている。そのため、時刻t51以前から時刻t52の間では、蓄電池4は、放電可能電流通常値以下の範囲で放電することができる。
【0107】
図11(A)の実線Pに示すように、時刻t52で電池電圧は、第1電圧閾値V_ctr1より小さくなる。これにより、
図11(B)の実線Rに示すように、放電電流制御装置は、放電可能電流値Ioutを、時刻t52で放電可能電流通常値から第1放電可能電流下限値に切り替える。そのため、時刻t52から時刻t54の間では、蓄電池4は、第1放電可能電流下限値の範囲で放電することができる。すなわち、蓄電池4の放電電流は、時刻t51以前から時刻t52の間で放電可能電流通常値以下の範囲であったものが、時刻t52以降、第1放電可能電流下限値以下の範囲に絞られる。
【0108】
時刻t52以降、放電電流が絞られると、電池電圧の急激な低下が抑制される。具体的には、
図11(A)の実線Pに示すように、時刻t52以降、電池電圧は一旦上昇し、その後時刻t53以降、緩やかに低下するようになる。そして、時刻t54で電池電圧は第2電圧閾値V_ctr2より小さくなる。これにより、
図11(B)の実線Rに示すように、放電電流制御装置は、放電可能電流値Ioutを、時刻t54で第1放電可能電流下限値から第2放電可能電流下限値に切り替える。そのため、時刻t54から時刻t56の間では、蓄電池4は、第2放電可能電流下限値の範囲で放電することができる。すなわち、蓄電池4の放電電流は、時刻t52から時刻t54の間で第1放電可能電流通常値以下の範囲であったものが、時刻t54以降、第2放電可能電流下限値以下の範囲に絞られる。
【0109】
図11(A)の実線Pに示すように、時刻t54以降、電池電圧は一旦上昇し、その後時刻t55以降、緩やかに低下するようになる。そして、時刻t56で電池電圧は過放電判定閾値V_odより小さくなる。そのため、放電電流制御装置は、放電可能電流値Ioutを0として、放電を停止する。
【0110】
図11(A)の実線Qに示すように、SOCは、ほぼ一定の低下率を示し、時刻t56で0%となる。したがって、第4実施形態に係る放電電流制御装置は、蓄電池4の放電電流が大きい場合でも、上記で説明した放電電流制御を実行することで、電池容量を定格容量の下限まで使うことが可能である。
【0111】
なお、上記第4実施形態の制御において、蓄電池4の放電電流が大きい場合、制御回路の応答速度、センサ読み取り速度よりも電池電圧の低下速度が速いと、電池電圧が第1電圧閾値V_ctr1を経由せずに第2電圧閾値V_ctr2より小さくなることがある。その場合でも、放電電流制御装置は、放電可能電流値Ioutを放電可能電流通常値から第2放電可能電流下限値に直接切り替えることはせずに、第1放電可能電流下限値に切り替える制御を行う。そして、その制御の実行から所定時間経過後に蓄電池4の電圧が第2電圧閾値V_ctr2より小さくなると、放電可能電流値Ioutを第1放電可能電流下限値から第2放電可能電流下限値に切り替える制御を行う。これにより、放電可能電流値Ioutが急激に低下することを防ぐことができる。
【0112】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。第5実施形態は、第1実施形態等に対して、放電電流制御装置が実行する放電電流制御を変更したものである。
【0113】
第5実施形態の放電電流制御装置は、放電可能電流絞り値Iout_c(t)を、SOCおよび電池温度をパラメータとして最適な値をマップ化したものを記憶している。そして、放電電流制御装置は、そのマップを参照し、制御時刻におけるSOCおよび電池温度から最適な放電電流値を決定する制御を実行する。なお、放電電流制御装置は、マップテーブルを、SOCが0~100%まで持っておくことが好ましい。
【0114】
第5実施形態の放電電流制御装置が実行する放電電流制御について、
図12のフローチャートを参照して説明する。この制御処理は、所定の制御時間間隔で繰り返し実行するものである。
【0115】
まずステップS410で、蓄電池4の放電可能電力値Wout(t)と電池電圧V(t)を取得する。そして、放電可能電力値Wout(t)を電池電圧V(t)で除算することで、蓄電池4の放電電流のベース値となる放電可能電流ベース値Iout_b(t)を算出する。
【0116】
次に、ステップS420で、SOCが0%か否かを判定する。なお、SOCが0%か否かの判定は、電池電圧が過放電判定閾値V_odより低いか否かで判定する。具体的には、電池電圧が過放電判定閾値V_odより低い場合、SOCが0%であると判定する。一方、電池電圧が過放電判定閾値V_od以上の場合、SOCが0%ではないと判定する。
【0117】
SOCが0%である場合、処理をステップS430に進める。ステップS430で、放電可能電流絞り値Iout_c(t)を0とする。
【0118】
一方、ステップS420でSOCが0%でない場合、処理をステップS440に進める。
ステップS440で放電電流制御装置は、上述のマップを参照しつつ、放電可能電流絞り値Iout_c(t)を、制御時刻におけるSOCおよび電池温度に応じた最適な放電電流値を決定する。
【0119】
上記ステップS430、S440の後、処理をステップS450に進める。ステップS450において、放電可能電流値Iout(t)を、放電可能電流ベース値Iout_b(t)または放電可能電流絞り値Iout_c(t)のうち、いずれか小さい方の値とする。
【0120】
ステップS450の後、上述した制御処理を再びS410から繰り返し実行する。
【0121】
以上説明した第5実施形態の放電電流制御装置および放電電流制御方法においても、放電可能電流値Ioutを多段階で絞ることで電池電圧を緩やかに低下させ、本来の電池容量を給電に最大限活用することができる。
【0122】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、放電電流制御装置および放電電流制御方法が用いられる蓄電システムとして、家電機器などの負荷2に電力を供給する住宅のエネルギーを管理するシステムを例にして説明したが、これに限らず、例えば、ビル、工場または地域全体のエネルギーを管理するシステムとしてもよい。
【0123】
(2)上記各実施形態では、計測電圧と電圧閾値の比較に用いるそれぞれの電圧を、電池電圧で統一したが、それに限らず、計測電圧と電圧閾値の比較に用いるそれぞれの電圧は、電池セル電圧としてみても構わない。
例えば、第1実施形態で説明した
図4のフローチャートのステップS40で、セル電圧_rel(T)<電池セル電圧V(t) を判定する。また、ステップS60で、電池セル電圧V(t)<Vセル_ctr(t) を判定する。
このとき、フローチャートのステップS10は、Iout(t)=Wout(t)/Vtotal(t)で、Vtotal(t)はセルを直列で接続した総電圧値となる。
【0124】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態およびその一部は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0125】
4 :蓄電池、
7 :制御部(放電電流制御装置)、
12 :制御部(放電電流制御装置)、
V_od :過放電判定閾値、
V_ctr:電圧閾値、
Iout :放電可能電流値