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特開2023-176739炭化水素合成触媒及びその製造方法、並びに炭化水素の合成方法
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  • 特開-炭化水素合成触媒及びその製造方法、並びに炭化水素の合成方法 図1A
  • 特開-炭化水素合成触媒及びその製造方法、並びに炭化水素の合成方法 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176739
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】炭化水素合成触媒及びその製造方法、並びに炭化水素の合成方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/889 20060101AFI20231206BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20231206BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20231206BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231206BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20231206BHJP
   B01J 37/06 20060101ALI20231206BHJP
   C07C 1/12 20060101ALI20231206BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20231206BHJP
   C07C 9/18 20060101ALI20231206BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231206BHJP
【FI】
B01J23/889 M
B01J35/10 301J
B01J37/00 A ZAB
B01J37/08
B01J35/02 A
B01J37/06
C07C1/12
C07C9/04
C07C9/18
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089175
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】水林 舞
(72)【発明者】
【氏名】友納 直記
(72)【発明者】
【氏名】片山 裕加
(72)【発明者】
【氏名】曹 ジンヂ
(72)【発明者】
【氏名】椿 範立
(72)【発明者】
【氏名】楊 国輝
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04B
4G169BC02A
4G169BC02B
4G169BC16B
4G169BC31B
4G169BC55B
4G169BC58A
4G169BC58B
4G169BC59B
4G169BC62B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BD05B
4G169CC23
4G169CC40
4G169DA05
4G169DA06
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EA06
4G169EB18Y
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169FA01
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB66
4G169FB79
4G169FB80
4G169FC07
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC29
4H006BA02
4H006BA05
4H006BA09
4H006BA12
4H006BA14
4H006BA16
4H006BA19
4H006BA21
4H006BA30
4H006BB61
4H006BE20
4H006BE41
4H039CA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】CO2及びH2を原料として、炭素数が5以上の炭化水素を高い選択率で合成可能な炭化水素合成触媒を提供する。
【解決手段】水素及び二酸化炭素を含む原料ガスを反応させて炭化水素に変換するための炭化水素合成触媒であって、前記炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面をエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)で元素分析すると、Feが15~65質量%、Oが10~40質量%、Naが0.04~30質量%、Niが0~15質量%、Crが5~30質量%検出される炭化水素合成触媒。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素及び二酸化炭素を含む原料ガスを反応させて炭化水素に変換するための炭化水素合成触媒であって、前記炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面をエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)で元素分析すると、Feが15~65質量%、Oが10~40質量%、Naが0.04~30質量%、Niが0~15質量%、Crが5~30質量%検出される炭化水素合成触媒。
【請求項2】
前記炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面をX線回折法により分析すると、Feの価数が+2及び/又は+3の酸化物が検出される請求項1に記載の炭化水素合成触媒。
【請求項3】
前記炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面をX線回折法により分析すると、Fe-Cr合金を表す2θ=44°~45°の範囲におけるピーク面積(I1)に対するFe23を表す2θ=35°~36°の範囲におけるピーク面積(I2)の比(I2/I1)が、0.02~3.0の範囲にある請求項1又は2に記載の炭化水素合成触媒。
【請求項4】
前記炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面をX線回折法により分析すると、Fe-Cr合金を表す2θ=44°~45°の範囲におけるピーク面積(I1)に対するFeCr24を表す2θ=30°~31°の範囲におけるピーク面積(I2)の比(I3/I1)が、0.02~0.5の範囲にある請求項1又は2に記載の炭化水素合成触媒。
【請求項5】
前記炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面をエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)で元素分析すると、Naが0.05~4質量%が検出される請求項1又は2に記載の炭化水素合成触媒。
【請求項6】
前記炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面をエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)で元素分析すると、Niが2~9質量%が検出される請求項1又は2に記載の炭化水素合成触媒。
【請求項7】
粉末状である請求項1又は2に記載の炭化水素合成触媒。
【請求項8】
BET比表面積が10~20m2/gである請求項7に記載の炭化水素合成触媒。
【請求項9】
一方の端面から他方の端面まで貫通する一つ又は複数の流路を有し、前記一つ又は複数の流路の表面が前記炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面を構成する造形物の形態で提供される請求項1又は2に記載の炭化水素合成触媒。
【請求項10】
前記一つ又は複数の流路の表面におけるBET比表面積が5~15m2/gである請求項9に記載の炭化水素合成触媒。
【請求項11】
Feを50~90質量%、Crを10~20質量%、Niを0~20質量%含有するFe-Cr合金の粉末を用意する工程A1と、
前記粉末にNaを含浸することにより、Na含浸粉末を得る工程A2と、
前記Na含浸粉末を380~880℃の酸素含有雰囲気で焼成する工程A3と、
を含む請求項7に記載の炭化水素合成触媒の製造方法。
【請求項12】
前記Fe-Cr合金がNiを3~5質量%含有する請求項11に記載の炭化水素合成触媒の製造方法。
【請求項13】
前記Fe-Cr合金がSUS630である請求項11に記載の炭化水素合成触媒の製造方法。
【請求項14】
工程1と工程2の間に、前記粉末を酸洗する工程A4を含む請求項11に記載の炭化水素合成触媒の製造方法。
【請求項15】
Feを50~90質量%、Crを10~20質量%、Niを0~20質量%含有するFe-Cr合金の粉末を用意する工程B1と、
付加製造方法を用いて前記粉末を造形することにより、一方の端面から他方の端面まで貫通する一つ又は複数の流路を有する造形物を得る工程B2と、
前記造形物の前記一つ又は複数の流路の表面にNaを含浸し、Na含浸造形物を得る工程B3と、
前記Na含浸造形物を380~880℃の酸素含有雰囲気で焼成する工程B4と、
を含む請求項9に記載の炭化水素合成触媒の製造方法。
【請求項16】
前記Fe-Cr合金がNiを3~5質量%含有する請求項15に記載の炭化水素合成触媒の製造方法。
【請求項17】
前記Fe-Cr合金がSUS630である請求項15に記載の炭化水素合成触媒の製造方法。
【請求項18】
工程B2と工程B3の間に、前記造形物の前記一つ又は複数の流路の表面を酸洗する工程B5を含む請求項15に記載の炭化水素合成触媒の製造方法。
【請求項19】
水素及び二酸化炭素を含む原料ガスを、請求項1又は2に記載の炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面に接触させて、前記原料ガスを反応させることを含む炭化水素の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭化水素合成触媒及びその製造方法に関する。また、本発明は炭化水素合成触媒を用いた炭化水素の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、脱炭素化・炭素の資源循環の世界の構築を目指し、二酸化炭素の再資源化、廃プラスチックの化学的リサイクル、天然ガスの有効利用、石油代替エネルギー等の開発が様々な業界で盛んに行われている。海運業界においては、船舶用燃料として安価なC重油が使用されているのが現状であり、二酸化炭素(CO2)を多く排出している。このため、国際海事機関(IMO)主導で設定された温室効果ガス(GHG)削減目標のもと、ゼロエミッション船に代表される環境対応船への転換が求められており、LNG、メタン、アンモニア、水素といったCO2排出量が少ない又は0(ゼロ)の燃料を使用する方法、風力又はバッテリーを利用する方法、船上でCO2を回収する方法などが検討されている。上記方法のうち、LNG燃料は実用化がなされているが、その他の方法については技術開発及び燃料共有インフラ整備といった課題が残存しており、技術開発の余地が大きい。
【0003】
一方、一酸化炭素又は二酸化炭素の炭素源及び水素を原料とし、触媒を用いて炭化水素やアルコールを合成する技術が知られている。
【0004】
特開2009-214077号公報(特許文献1)には、アルコール溶媒の存在下で、一酸化炭素、又は、一酸化炭素及び二酸化炭素と、水素とを含む原料ガスから、ギ酸エステルを経由してメタノールを合成する際に用いられるCuを含むメタノール合成用触媒が記載されている。特許文献1には、Cuと組み合わせる触媒成分として、Cu/ZnO、Cu/MgO、Cu/CeO、Cu/MnO、Cu/ReOが記載されている。
【0005】
特開2009-106863号公報(特許文献2)には、一酸化炭素と水素を含有するガスを触媒に接触させてイソパラフィンを合成するFT合成方法において、粉末状の担体の表面に複数のナノ粒子が分散担持又は被覆されてなるFT合成用触媒を用いることが記載されている。当該粉末状の担体としては、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも一の材料が記載されている。前記ナノ粒子としては、Co及びRuの少なくとも一種の金属粒子又は該金属粒子を含む粒子が記載されている。
【0006】
特開2007-196187号公報(特許文献3)には、合成ガスから1段で、メタン選択性とCO2選択性をより低くし、かつイソパラフィン収率をより高くした液体燃料を製造することができる、粒子状固体の表面をベータゼオライトからなる膜でコーティングしてなる触媒が記載されている。
【0007】
特開2021-186724号公報(特許文献4)には、触媒原料を主成分とし、合成原料の流通路を有する三次元造形法により製造された触媒造形物が記載されている。特許文献4の実施例には、Fe-65.6質量%、Ni-17.8質量%、Co-10.1質量%、Mo-5.4質量%、Ti-1.1質量%の組成をもつFe触媒造形物を用いて、CO2及びH2から炭化水素を合成したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-214077号公報
【特許文献2】特開2009-106863号公報
【特許文献3】特開2007-196187号公報
【特許文献4】特開2021-186724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
環境対応船の実用化のためには、船上で回収したCO2から燃料として使用可能な炭化水素を製造する技術が開発されることが望ましいと考えらえる。そのためには、CO2を原料として使用し、燃料としての取り扱いが容易である炭素数が5以上の炭化水素を合成する技術が必要である。しかしながら、上記特許文献に記載の触媒では、レアメタルが多く含まれるため高価であるという問題や、液体炭化水素への選択率が低いという問題があるため、未だ改善の余地が残されている。
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は一実施形態において、CO2及びH2を原料として、炭素数が5以上の炭化水素を高い選択率で合成可能であり、安価な材料で製造できる炭化水素合成触媒を提供することを課題とする。本発明は別の一実施形態において、そのような炭化水素合成触媒の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は更に別の一実施形態において、そのような炭化水素合成触媒を用いた炭化水素の合成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、適度にNaを含浸させたFe-Cr合金を酸化させたものを触媒として使用することで、CO2及びH2を原料として炭化水素を合成したときの、炭素数が5以上の炭化水素への選択率が有意に向上することを見出した。本発明は上記知見に基づき完成したものであり、以下のように例示される。
【0012】
[1]
水素及び二酸化炭素を含む原料ガスを反応させて炭化水素に変換するための炭化水素合成触媒であって、前記炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面をエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)で元素分析すると、Feが15~65質量%、Oが10~40質量%、Naが0.04~30質量%、Niが0~15質量%、Crが5~30質量%検出される炭化水素合成触媒。
[2]
前記炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面をX線回折法により分析すると、Feの価数が+2及び/又は+3の酸化物が検出される[1]に記載の炭化水素合成触媒。
[3]
前記炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面をX線回折法により分析すると、Fe-Cr合金を表す2θ=44°~45°の範囲におけるピーク面積(I1)に対するFe23を表す2θ=35°~36°の範囲におけるピーク面積(I2)の比(I2/I1)が、0.02~3.0の範囲にある[1]又は[2]に記載の炭化水素合成触媒。
[4]
前記炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面をX線回折法により分析すると、Fe-Cr合金を表す2θ=44°~45°の範囲におけるピーク面積(I1)に対するFeCr24を表す2θ=30°~31°の範囲におけるピーク面積(I2)の比(I3/I1)が、0.02~0.5の範囲にある[1]~[3]の何れか一項に記載の炭化水素合成触媒。
[5]
前記炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面をエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)で元素分析すると、Naが0.05~4質量%が検出される[1]~[4]の何れか一項に記載の炭化水素合成触媒。
[6]
前記炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面をエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)で元素分析すると、Niが2~9質量%が検出される[1]~[5]の何れか一項に記載の炭化水素合成触媒。
[7]
粉末状である[1]~[6]の何れか一項に記載の炭化水素合成触媒。
[8]
BET比表面積が10~20m2/gである[7]に記載の炭化水素合成触媒。
[9]
一方の端面から他方の端面まで貫通する一つ又は複数の流路を有し、前記一つ又は複数の流路の表面が前記炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面を構成する造形物の形態で提供される[1]~[8]の何れか一項に記載の炭化水素合成触媒。
[10]
前記一つ又は複数の流路の表面におけるBET比表面積が5~15m2/gである[9]に記載の炭化水素合成触媒。
[11]
Feを50~90質量%、Crを10~20質量%、Niを0~20質量%含有するFe-Cr合金の粉末を用意する工程A1と、
前記粉末にNaを含浸することにより、Na含浸粉末を得る工程A2と、
前記Na含浸粉末を380~880℃の酸素含有雰囲気で焼成する工程A3と、
を含む[7]又は[8]に記載の炭化水素合成触媒の製造方法。
[12]
前記Fe-Cr合金がNiを3~5質量%含有する[11]に記載の炭化水素合成触媒の製造方法。
[13]
前記Fe-Cr合金がSUS630である[11]に記載の炭化水素合成触媒の製造方法。
[14]
工程1と工程2の間に、前記粉末を酸洗する工程A4を含む[11]~[13]の何れか一項に記載の炭化水素合成触媒の製造方法。
[15]
Feを50~90質量%、Crを10~20質量%、Niを0~20質量%含有するFe-Cr合金の粉末を用意する工程B1と、
付加製造方法を用いて前記粉末を造形することにより、一方の端面から他方の端面まで貫通する一つ又は複数の流路を有する造形物を得る工程B2と、
前記造形物の前記一つ又は複数の流路の表面にNaを含浸し、Na含浸造形物を得る工程B3と、
前記Na含浸造形物を380~880℃の酸素含有雰囲気で焼成する工程B4と、
を含む[9]又は[10]に記載の炭化水素合成触媒の製造方法。
[16]
前記Fe-Cr合金がNiを3~5質量%含有する[15]に記載の炭化水素合成触媒の製造方法。
[17]
前記Fe-Cr合金がSUS630である[15]に記載の炭化水素合成触媒の製造方法。
[18]
工程B2と工程B3の間に、前記造形物の前記一つ又は複数の流路の表面を酸洗する工程B5を含む[15]~[17]の何れか一項に記載の炭化水素合成触媒の製造方法。
[19]
水素及び二酸化炭素を含む原料ガスを、[1]~[10]の何れか一項に記載の炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面に接触させて、前記原料ガスを反応させることを含む炭化水素の合成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、CO2及びH2を原料として、炭素数が5以上の炭化水素を高い選択率で合成可能な炭化水素合成触媒が提供となる。また、この炭化水素合成触媒は多くのレアメタルを必要としないので安価な材料で製造できる。このため、当該触媒は、脱炭素化・炭素の資源循環の世界を構築するのに重要な役割を果たすと考えられる。また、付加製造技術を用いて当該炭化水素合成触媒を原料として三次元形状の造形物を製造することで、高い製造技術が必要であり人為的誤差の大きな触媒造形物を高い精度で量産することができる。更に、触媒造形物自体を反応器として使用することも可能であり、反応器の小型化にも寄与する。反応器が小型化することで、船上に反応器を設置することも容易となるため、船上で回収されたCO2を船上で燃料化するゼロエミッション船の実現にも貢献すると考えらえる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】本発明の炭化水素合成触媒の一例の模式的な斜視図である。
図1B図1Aに示す炭化水素合成触媒を、中心軸を通り流路の延びる方向に平行な面で切断したときの模式的な断面斜視図である。
図2A】本発明の炭化水素合成触媒の一例について、一方の端面から観察したときの模式図である。一点鎖線で囲まれた部分については拡大図が合わせて示されている。
図2B図2Aに示す炭化水素合成触媒を、中心軸を通り流路の延びる方向に平行な面で切断したときの模式的な断面斜視図である。一点鎖線で囲まれた部分については拡大図が合わせて示されている。
図3】実施例で使用した炭化水素合成装置の構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1.炭化水素合成触媒)
本発明の一実施形態に係る炭化水素合成触媒における原料ガスに接触させる予定の表面をエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)で元素分析すると、Feが15~65質量%、Oが10~40質量%、Naが0.04~30質量%、Niが0~15質量%、Crが5~30質量%が検出される。
上記元素分析において、Feは15~65質量%検出されることが好ましく、25~65質量%検出されることがより好ましく、35~65質量%検出されることが更により好ましく、45~65質量%検出されることが更により好ましい。
上記元素分析において、Oは10~40質量%検出されることが好ましく、10~30質量%検出されることがより好ましく、10~20質量%検出されることが更により好ましい。
上記元素分析において、Naは0.04~30質量%検出されることが好ましく、0.05~15質量%検出されることがより好ましく、0.05~10質量%検出されることが更により好ましく、0.05~8質量%検出されることが更により好ましく、0.05~6質量%検出されることが更により好ましく、0.05~4質量%検出されることが更により好ましい。
上記元素分析において、Niは0~15質量%検出されることが好ましく、0~10質量%検出されることがより好ましく、1~9質量%検出されることが更により好ましく、2~9質量%検出されることが更により好ましい。
上記元素分析において、Crは5~30質量%検出されることが好ましく、5~25質量%検出されることがより好ましく、5~20質量%検出されることが更により好ましく、10~20質量%検出されることが更により好ましい。
【0016】
上記元素分析において、Fe、O、Na、Ni、及びCrの合計濃度は、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。Fe、O、Na、Ni、及びCrの合計濃度に特に上限は設定されなく、100質量%でもよいが、不純物元素及び添加元素を含み得るため、当該合計濃度は95質量%以下であるのが通常であり、93質量%以下であるのが典型的である。
【0017】
また、本発明の一実施形態に係る炭化水素合成触媒における原料ガスに接触させる予定の表面をSEM-EDXで元素分析すると、Siが0~5.0質量%、例えば0.2~4.5質量%検出されてもよく、Alが0~2.0質量%、例えば0.2~1.8質量%検出されてもよく、Mnが0~2.5質量%、例えば0.2~2.0質量%検出されてもよく、Cuが0~5質量%、例えば0~3.0質量%検出されてもよく、Nbが0~1.0質量%、例えば0~0.9質量%検出されてもよく、Moが0~3.0質量%、例えば0.1~2.0質量%検出されてもよい。
【0018】
上記のSEM-EDXによる元素分析は、実施例では以下の条件で実施した。
装置:日本電子株式会社製JSM-IT500HR/LA型走査電子顕微鏡
観察モデル:二次電子像
測定電圧:15kV
測定電流:65mA
真空度:9.99E-07Pa
試料準備:
(1)粉末(ペレット状を含む)においては、カーボンテープでホルダーに固定する。
(2)造形物においては、流路の長さ3mmとなるようにファインカッターで切断する。次いで、少なくとも一本以上の流路が露出するように、造形物の流路の長さ方向に垂直な断面を横切る切断線で更にファインカッターで二分割して試験片を得る(造形物が円柱状の場合は、半円状の試験片が得られる)。そして、切断時に有機油剤を使用するため、汚れとして有機成分が表面に付着したことで正しい元素分析ができなくなる可能性を考慮し、SEM-EDXを測定する前に真空中にて250℃で、2~4時間を乾燥する。最後に、有機成分が除去された試験片をホルダーに固定する。
EDX範囲設定:粉末においては粉末表面、造形物においては流路表面を、70倍率又は120倍率まで拡大し、視野の中からランダムに面積が0.100mm2のエリアを三つ以上囲み、エリアごとに元素定量分析を行う。測定元素はFe、O、Na、Ni、Cr、Si、Al、Mn、Cu、Nb及びMoの十一種に限り、Cのゼロ補正を行う。元素質量パーセンテージは三点の平均値から出す。
【0019】
本発明の一実施形態に係る炭化水素合成触媒における原料ガスに接触させる予定の表面をX線回折法(XRD)により分析すると、Feの価数が+2及び/又は+3の酸化物が検出される。より詳細には、Fe-Cr合金を表す2θ=44°~45°の範囲におけるピーク面積(I1)に対するFe23を表す2θ=35°~36°の範囲におけるピーク面積(I2)の比(I2/I1)が、0.02~3.0の範囲にあることが好ましい。I2/I1は0.04~2.5の範囲にあることがより好ましく、0.05~2.5の範囲にあることが更により好ましい。また、Fe-Cr合金を表す2θ=44°~45°の範囲におけるピーク面積(I1)に対するFeCr24を表す2θ=30°~31°の範囲におけるピーク面積(I3)の比(I3/I1)が、0.02~0.5の範囲にあることが好ましい。I3/I1は0.02~0.2の範囲にあることがより好ましく、0.05~0.2の範囲にあることが更により好ましい。
【0020】
上記のX線回折法による分析は、実施例では以下の条件で実施した。
装置:株式会社リガク製3kW エックス線発生装置 UltimaIV
X線発生源:CuKα特性X(40kV、20mA)
走査範囲:5~90°
走査ステップ:0.02°
積分時間:0.6s/ステップ
試料準備:先述したSEM-EDXによる元素分析のための試料準備と同じ方法で準備する。
【0021】
理論によって本発明が限定されることを意図するものではないが、本発明の目的に照らすと、触媒活性サイトとしてFeOx/FeCx/Feが必要である。触媒表面に存在するFe23及びFeCr24等の鉄酸化物は、CO2がCOに変換される反応を促進する効果があると推察される。また、触媒表面に存在するNaが助触媒の働きをすることで鉄酸化物が鉄炭化物に変換されやすいところ、鉄炭化物はCO及びHを反応させて炭素数が5以上の炭化水素を生成する反応を促進する効果があると推察される。また、触媒表面にNaが適量存在することで、CO2とH2分子が触媒表面に吸着されやすくなり、反応が促進されると推察される。なお、鉄炭化物は、余剰のCO2や副生成物H2Oによって酸化されて酸化鉄に戻ると考えられる。
【0022】
本発明の一実施形態に係る炭化水素合成触媒は、粉末状(粉末状にはペレット状を含む)の形態で提供可能である。その場合、炭化水素合成触媒の粒度分布をレーザー回折・散乱法で分析すると、体積基準のメジアン径(D50)は200~900μmであることが好ましく、300~900μmであることがより好ましく、355~850μmであることが更により好ましい。
【0023】
本発明の一実施形態に係る炭化水素合成触媒が粉末状の形態で提供される場合、反応を促進するため、BET比表面積が10~20m2/gであることが好ましく、15~17m2/gであることがより好ましい。粉末状の炭化水素合成触媒におけるBET比表面積は、実施例では以下の条件で測定した。
装置:多検体高性能比表面積/細孔分布測定装置(米国マイクロメリティック社製 3Flex-2MP)
測定方式:定容法によるガス吸着法
使用ガス:窒素
前処理:試料を真空下250℃、10時間の条件で脱気処理
試料測定量:約0.1g
【0024】
本発明の一実施形態に係る炭化水素合成触媒は、造形物の形態で提供可能である。図1Aには本発明の炭化水素合成触媒の一例について、一方の端面から観察したときの模式図が示されている。図1Bには、図1Aに示す炭化水素合成触媒を、長手方向に延びる中心軸を通り流路に平行な面で切断したときの模式的な断面斜視図が示されている。図示の炭化水素合成触媒10は、一方の端面11から他方の端面12まで貫通する一つ又は複数の流路13を有し、流路13の表面14が炭化水素合成触媒における原料ガスに接触させる予定の表面を構成する。流路13の数は特に制限はなく、原料ガスの処理量に応じて適宜設定すればよいが、例えば1~11本(図1Aでは、9本)とすることができる。炭化水素合成触媒10の外形は、例えば円柱、多角角柱(四角柱、六角柱、十二角柱、二十角柱)等の柱体とすることができる。
【0025】
流路13の途中に一つ又は複数の突起15が設けられていてもよい。図2A及び図2Bを参照すると、突起15の形状は特段の制約はないが、略半球状、断面略台形状、略V字羽根状、断面略三角形状等が挙げられる。突起の具体的な実施形態は特開2021-186724号公報に記載されている通りであり、その全内容を参照により本明細書に組み込む。図示の炭化水素合成触媒は、一方の端面から観察すると、中心部に一つの流路13と、中心部の流路13の周囲に等間隔で複数の流路13とを有している。流路13の数は特に制限はなく、原料ガスの処理量に応じて適宜設定すればよいが、例えば1~11本(図2Aでは、9本)とすることができる。そして、流路13の表面14には、略半球状の突起15が複数設けられている。複数の突起15は、間隔を空けて、流路13の周方向及び流路13の延びる方向に規則的に配列されている。図示の炭化水素合成触媒においては、流路13の周方向に等間隔で3個の突起15が設けられている。
【0026】
限定的ではないが、各流路は、当該流路の延びる方向に垂直な断面における開口面積(突起がある場合は突起を除く。)を0.5~3.5mm2とすることができ、好ましくは1.0~2.5mm2とすることができ、より好ましくは1.5~2.0mm2とすることができ。当該流路の延びる方向に垂直な断面における開口形状には特段の制約はなく、円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。
【0027】
前記一つ又は複数の流路の表面におけるBET比表面積は5~15m2/gであることが好ましく、5~10m2/gであることがより好ましく、5~7m2/gであることが更により好ましい。造形物の炭化水素合成触媒において、一つ又は複数の流路の表面におけるBET比表面積は、実施例では以下の条件で測定した。
装置:多検体高性能比表面積/細孔分布測定装置(米国マイクロメリティック社製 3Flex-2MP)
測定方式:定容法によるガス吸着法
使用ガス:窒素
前処理:試料を真空下250℃、10時間の条件で脱気処理
試料調製:造形物を流路の長さ3mmとなるようにファインカッターで切断する。次いで、少なくとも一本以上の流路が含まれるように、更に造形物の流路の長さ方向に垂直な断面の重心で交差する互いに垂直な二本の切断線で4分割された試料を得る(造形物が円柱状の場合は、四分円状の試料が得られる。)。
当該試料のBET比表面積を求めた後、これに、当該試料の幾何学的な全表面積(底面、側面、流路表面の面積の合計)に対する流路表面の面積の比を乗じて、当該試料の流路の表面におけるBET比表面積の測定値とする。残りの三つの試料についても同様に流路の表面におけるBET比表面積を測定する。そして、4つの試料における測定値の平均値を造形物の一つ又は複数の流路の表面におけるBET比表面積とする。
なお、流路の本数が少ない場合は、各試料に必ずしも一本以上の流路が含まれなくてもよい。
【0028】
(2.炭化水素合成触媒の製造方法)
本発明の一実施形態によれば、炭化水素合成触媒の製造方法が提供される。例えば炭化水素合成触媒が粉末状の形態で提供される場合、炭化水素合成触媒の製造方法は一実施形態において、Feを50~90質量%、Crを10~20質量%、Niを0~20質量%含有するFe-Cr合金の粉末を用意する工程A1と、前記粉末にNaを含浸することにより、Na含浸粉末を得る工程A2と、前記Na含浸粉末を380~880℃の酸素含有雰囲気で焼成する工程A3とを含む。
【0029】
(工程A1)
工程A1では、Feを50~90質量%、Crを10~20質量%、Niを0~20質量%含有するFe-Cr合金の粉末を用意する。Fe-Cr合金中のFe濃度は50~90質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましく、55~75質量%であることが更により好ましい。Fe-Cr合金中のCr濃度は10~20質量%であることが好ましく、12~18質量%であることがより好ましく、14~18質量%であることが更により好ましい。Fe-Cr合金中のNi濃度は0~20質量%であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましく、3~15質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることが更により好ましく、3~5質量%であることが更により好ましい。
【0030】
Fe-Cr合金にけるFe、Cr及びNiの合計濃度は、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更により好ましい。Fe、Cr及びNiの合計濃度に特に上限は設定されなく、100質量%でもよいが、不純物元素及び添加元素を含み得るため、当該合計濃度は98質量%以下であるのが通常である。
【0031】
上記元素の中で、Niはメタンを生成しやすい水素化触媒であり、炭素数5以上の炭化水素への選択率を左右するため、制御することが重要である。すなわち、Fe-Cr合金中のNi濃度は低い方が、炭素数5以上の炭化水素への選択率が高くなる傾向にあるので望ましい。Niは含有しなくてもよいが、触媒の機械的強度の観点からはNiを少量含有することが望ましい。
【0032】
Fe-Cr合金は、Fe、Cr及びNi以外の元素を含有してもよい。一実施形態において、Fe-Cr合金はSiを0~5.0質量%、例えば0.5~3.0質量%含有してもよく、Alを0~1.0質量%、例えば0~0.5質量%含有してもよく、Mnを0~2.0質量%、例えば0.5~1.5質量%含有してもよく、Cuを0~5.0質量%、例えば3.0~5.0質量%含有してもよく、Nbを0~1.0質量%、例えば0・1~0.3質量%含有してもよく、Moを0~3質量%、例えば0.2~2.0質量%含有してもよい。Fe-Cr合金は、Fe、Cr、Ni、Si、Al、Mn、Cu、Nb及びMo以外の元素を添加元素として含有してもよいが、通常はそれらの元素の合計は5質量%以下であり、典型的には2質量%以下であり、より典型的には1質量%以下である。なお、Fe-Cr合金は不可避的不純物を含有し得る。
【0033】
Fe-Cr合金の好適な具体例としては、SUS630(JIS G4304-2012)、SUS420J2(JIS G4303:2021)等のステンレスが挙げられる。
【0034】
Fe-Cr合金の粉末の粒度分布をレーザー回折・散乱法で分析すると、体積基準のメジアン径(D50)は5~20μmであることが好ましく、10~20μmであることがより好まし、10~17μmであることが更により好ましい。また、Fe-Cr合金の粉末の粒度分布をレーザー回折・散乱法で分析すると、体積基準の累積90%粒子径(D90)は5~40μmであることが好ましく、10~35μmであることがより好まし、15~30μmであることが更により好ましい。
Fe-Cr合金の粉末のBET比表面積は、10~20m2/gであることが好ましく、15~17m2/gであることが好ましい。Fe-Cr合金の粉末のBET比表面積は、実施例では以下の条件で測定した。
装置:多検体高性能比表面積/細孔分布測定装置(米国マイクロメリティック社製 3Flex-2MP)
測定方式:定容法によるガス吸着法
使用ガス:窒素
前処理:試料を真空下250℃、10時間の条件で脱気処理
試料測定量:約0.1g
【0035】
(工程A2)
工程A2では、Fe-Cr合金の粉末にNaを含浸することにより、Na含浸粉末を得る。当該粉末にNaを含浸する方法としては、限定的ではないが、例えば硝酸ナトリウム(NaNO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、有機ナトリウム(例:フェノキシナトリウム、ナトリウムメトキシド、メタクリル酸ナトリウム)等のナトリウム塩の水溶液と前記粉末を接触させる方法が挙げられる。使用するナトリウム塩としては焼成時に分解してアニオンが除去されるものが好ましい。ナトリウム塩の水溶液と当該粉末を接触させる方法としては、例えば、ナトリウム塩の水溶液中に当該粉末を浸漬する方法、ナトリウム塩の水溶液を当該粉末に噴霧及び/又は散布する方法、ナトリウム塩の水溶液を当該粉末に掛け流す方法などが挙げられる。これらの中でも操作性・利便性が良く、湿った粉末が回収しやすく、必要な量しか吸着しないため後工程で異物アニオンを除去しやすいという理由により、粉末にナトリウム塩の水溶液を掛け流す方法が好ましい。掛け流す方法の具体例としては、粉末を網付きロートに載せて、ナトリウム塩の水溶液を上から掛け流す方法が挙げられる。濾液を繰り返し掛け流してもよい。また、ナトリウム塩の水溶液と前記粉末を接触させる際は、当該粉末を撹拌してもよい。
【0036】
ナトリウム塩の水溶液中のNa濃度は、限定的ではないが、0.0004~0.01mmol/Lであるのが好ましく、0.0004~0.008mol/Lであるのがより好ましく、0.0004~0.004mol/Lであるのが更により好ましい。ナトリウム塩の水溶液の温度は、限定的ではないが、例えば5~40℃、典型的には10~30℃とすることができる。
【0037】
Na含浸後は、空気中で熱風乾燥することが好ましい。熱風乾燥時の温度は例えば50~100℃、典型的には50~70℃とすることができる。
【0038】
(工程A3)
工程A3では、工程A2で得られたNa含浸粉末を380~880℃の酸素含有雰囲気で焼成する。焼成時の酸素雰囲気温度が過度に高くなると、Naが気化して脱離するおそれがあるが、後述する酸洗処理を行っておくと、表面の安定な酸化被膜が除去されるため、低温焼成が可能である。焼成時の酸素含有雰囲気温度の下限は、鉄酸化物の生成を促進し、また、ナトリウム塩の分解を促進する観点から、380℃以上であることが好ましく、400℃以上℃であることがより好ましく、500℃以上であることが更により好ましい。焼成時の酸素含有雰囲気温度の上限は、Naが気化して離脱するのを抑制するため、880℃以下であることが好ましく、800℃以下であることがより好ましく、700℃以下であることが更により好ましい。酸素含有雰囲気としては、鉄酸化物が生成できれば特に制限はないが、酸素雰囲気、空気雰囲気、酸素と不活性ガス(Ar、He等)の混合ガス雰囲気が挙げられる。上記の酸素含有雰囲気温度における焼成時間は、鉄酸化物の生成を促進する観点から、10~40時間が好ましく、15~30時間がより好ましく、20~30時間が更により好ましい。
【0039】
また、昇温速度は、例えば1~10℃/min、典型的には2~5℃/minとすることができる。冷却速度は、特段の制約はないが、例えば放冷すればよい。
【0040】
(工程A4)
工程1と工程2の間には、Fe-Cr合金の粉末を酸洗する工程A4を実施することが好ましい。工程A4を実施することで、粉末の表面積を増加させることができる。これにより、より多くのFe原子が露出し、焼成時に酸素分子との接触が強まり、比較的に低い温度でも十分に鉄酸化物を生成することができる。酸洗に使用する酸としては、限定的ではないが、pHが0.1以下の酸性水溶液が好ましい。酸性水溶液としては、塩酸、硝酸又はこれらの二種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、金属に対する腐食性が高く酸化被膜が簡単に除去でき、反応性に乏しい金属原子をイオン化することも可能のため焼成工程の温度条件を緩和できるという理由により、塩酸と硝酸の混合物が好ましく、濃塩酸(6~12mol/L)と濃硝酸(7~13mol/L)の混合物がより好ましく、濃塩酸(10~12mol/L)と濃硝酸(11~13mol/L)の体積比が2.5:1~3.5:1の混合物が更により好ましく、王水がより好ましい。
【0041】
Fe-Cr合金の粉末を酸洗する方法としては、例えば、酸性水溶液中に当該粉末を浸漬する方法、酸性水溶液を当該粉末に噴霧及び/又は散布する方法、酸性水溶液を当該粉末に掛け流す方法などが挙げられる。これらの中でも湿った粉末が回収しやすく、酸液用量を少量に抑えられるという理由により、掛け流す方法が好ましい。掛け流す方法の具体例としては、粉末を網付きロートに載せて、酸性水溶液を上から掛け流す方法が挙げられる。濾液を繰り返し掛け流してもよい。また、酸性水溶液とFe-Cr合金の粉末を接触させる際は、当該粉末を撹拌してもよい。
【0042】
酸性水溶液の温度は、限定的ではないが、例えば5~40℃、典型的には10~30℃とすることができる。酸洗後は、空気中で熱風乾燥することが好ましい。熱風乾燥時の温度は例えば50~100℃、典型的には50~70℃とすることができる。
【0043】
また、炭化水素合成触媒が一方の端面から他方の端面まで貫通する一つ又は複数の流路を有し、前記流路の表面が炭化水素合成触媒における前記原料ガスに接触させる予定の表面を構成する造形物の形態で提供される場合、炭化水素合成触媒の製造方法は一実施形態において、Feを50~90質量%、Crを10~20質量%、Niを0~20質量%含有するFe-Cr合金の粉末を用意する工程B1と、付加製造方法を用いて前記粉末を造形することにより、一方の端面から他方の端面まで貫通する一つ又は複数の流路を有する造形物を得る工程B2と、前記造形物の前記一つ又は複数の流路の表面に含浸法を用いてNaを含浸し、Na含浸造形物を得る工程B3と、前記Na含浸造形物を380~880℃の酸素含有雰囲気で焼成する工程B4とを含む。
【0044】
(工程B1)
工程B1は先述した工程A1と同じであるので、説明を省略する。
【0045】
(工程B2)
工程B2では、付加製造方法を用いてFe-Cr合金の粉末を造形することにより、一方の端面から他方の端面まで貫通する一つ又は複数の流路を有する造形物を得る。当該造形物の具体的な構造例は先述した通りである。付加製造方法を用いたFe-Cr合金の粉末の造形方法としては、特に制限はないが、例えば、粉末床溶融結合法(パウダーベッド方式)及び指向性エネルギー堆積法(パウダーデポジション方式)が挙げられる。
【0046】
粉末床溶融結合法による造形手順の一例を以下に示す。
(1)Fe-Cr合金の粉末が収容された原料供給パレットから、造形ステージ上に当該粉末を供給し、敷き詰める。このとき、造形ステージ上に敷き詰める当該粉末は、造形する一層分とする。
(2)次に、3次元CAD又はCGデータを基に、電子ビーム又はレーザビームを照射し、造形ステージ上に敷き詰められた当該粉末を溶融・凝固、又は焼結させて、一層分の造形層を形成する。
(3)次に、造形ステージを降下させる。このとき、造形ステージの降下は、造形ステージ上に敷き詰める当該粉末が、造形する一層分となるように行う。
(4)上記(1)~(3)の操作を繰り返すことで、目的とする形状の造形物を得る。
【0047】
工程B2で得られた造形物の一つ又は複数の流路の表面におけるBET比表面積は、5~10m2/gであることが好ましく、6~8m2/gであることが好ましい。造形物の一つ又は複数の流路の表面におけるBET比表面積は、実施例では以下の条件で測定した。
装置:多検体高性能比表面積/細孔分布測定装置(米国マイクロメリティック社製 3Flex-2MP)
測定方式:定容法によるガス吸着法
使用ガス:窒素
前処理:試料を真空下250℃、10時間の条件で脱気処理
試料調製:造形物を流路の長さ3mmとなるようにファインカッターで切断する。次いで、少なくとも一本以上の流路が含まれるように、更に造形物の流路の長さ方向に垂直な断面の重心で交差する互いに垂直な二本の切断線で4分割された試料を得る(造形物が円柱状の場合は、四分円状の試料が得られる。)。
当該試料のBET比表面積を求めた後、これに、当該試料の幾何学的な全表面積(底面、側面、流路表面の面積の合計)に対する流路表面の面積の比を乗じて、当該試料の流路の表面におけるBET比表面積の測定値とする。残りの三つの試料についても同様に流路の表面におけるBET比表面積を測定する。そして、4つの試料における測定値の平均値を造形物の一つ又は複数の流路の表面におけるBET比表面積とする。
なお、流路の本数が少ない場合は、各試料に必ずしも一本以上の流路が含まれなくてもよい。
【0048】
(工程B3)
工程B3では、工程B2で得られた造形物の前記一つ又は複数の流路の表面にNaを含浸し、Na含浸造形物を得る。前記一つ又は複数の流路の表面にNaを含浸する方法としては、限定的ではないが、例えば硝酸ナトリウム(NaNO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、有機ナトリウム(例:フェノキシナトリウム、ナトリウムメトキシド、メタクリル酸ナトリウム)等のナトリウム塩の水溶液と前記一つ又は複数の流路の表面を接触させる方法が挙げられる。ナトリウム塩の水溶液と前記一つ又は複数の流路の表面を接触させる方法としては、例えば、ナトリウム塩の水溶液中に前記造形物を浸漬する方法、ナトリウム塩の水溶液を前記一つ又は複数の流路に流し込む方法などが挙げられる。これらの中でも操作性・利便性が良く、必要な量しか吸着しないため後工程で異物アニオンを除去しやすいという理由により、ナトリウム塩の水溶液を造形物の一つ又は複数の流路に流し込む方法が好ましい。造形物から流出したナトリウム塩の水溶液は繰り返し流し込んでもよい。
【0049】
ナトリウム塩の水溶液中のNa濃度は、限定的ではないが、0.1~3.0mol/Lであるのが好ましく、0.1~1.0mol/Lであるのがより好ましく、0.1~0.5mol/Lであるのが更により好ましい。ナトリウム塩の水溶液の温度は、限定的ではないが、例えば5~40℃、典型的には10~30℃とすることができる。
【0050】
また、Na含浸後は、空気中で熱風乾燥することが好ましい。熱風乾燥時の温度は例えば50~100℃、典型的には50~70℃とすることができる。
【0051】
(工程B4)
工程B4では、工程B3で得られたNa含浸造形物を380~880℃の酸素含有雰囲気で焼成する。焼成時の酸素雰囲気温度が過度に高くなると、Naが気化して脱離するおそれがあるが、後述する酸洗処理を行っておくと、表面の酸化被膜が除去されるため、低温焼成が可能である。焼成時の酸素含有雰囲気温度の下限は、鉄酸化物の生成を促進し、また、ナトリウム塩の分解を促進する観点から、380℃以上であることが好ましく、400℃以上であることがより好ましく、500℃以上であることが更により好ましい。焼成時の酸素含有雰囲気温度の上限は、Naが気化して離脱するのを抑制するため、880℃以下であることが好ましく、800℃以下であることがより好ましく、700℃以下であることが更により好ましい。酸素含有雰囲気としては、鉄酸化物が生成できれば特に制限はないが、酸素雰囲気、空気雰囲気、酸素と不活性ガス(Ar、He等)の混合ガス雰囲気が挙げられる。上記の酸素含有雰囲気温度における焼成時間は、鉄酸化物の生成を促進する観点から、10~40時間が好ましく、15~30時間がより好ましく、20~30時間が更により好ましい。
【0052】
また、昇温速度は、例えば1~10℃/min、典型的には2~5℃/minとすることができる。冷却速度は、特段の制約はないが、例えば放冷すればよい。
【0053】
(工程B5)
工程B2と工程B3の間には、前記造形物の前記一つ又は複数の流路の表面を酸洗する工程B5を実施することが好ましい。工程B5を実施することで、前記一つ又は複数の流路の表面積を増加させることができる。酸洗に使用する酸としては、限定的ではないが、pHが0.1以下の酸性水溶液が好ましい。酸性水溶液としては、塩酸、硝酸、又はこれらの二種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、金属に対する腐食性が高く酸化被膜が簡単に除去でき、反応性に乏しい金属原子をイオン化することも可能のため焼成工程の温度条件を緩和できるという理由により、塩酸と硝酸の混合物が好ましく、濃塩酸(6~12mol/L)と濃硝酸(7~13mol/L)の混合物がより好ましく、濃塩酸(10~12mol/L)と濃硝酸(11~13mol/L)の体積比が2.5:1~3.5:1の混合物が更により好ましく、王水がより好ましい。
【0054】
前記造形物の前記一つ又は複数の流路の表面を酸洗する方法としては、例えば、酸性水溶液中に前記造形物を浸漬する方法、酸性水溶液を前記一つ又は複数の流路に流し込む方法などが挙げられる。これらの中でも操作性・利便性が良く、廃液が回収しやすいという理由により、造形物の一つ又は複数の流路に酸性水溶液を流し込む方法が好ましい。造形物から流出した酸性水溶液は繰り返し流し込んでもよい。
【0055】
また、酸性水溶液の温度は、限定的ではないが、例えば5~40℃、典型的には10~30℃とすることができる。酸洗後は、空気中で熱風乾燥することが好ましい。熱風乾燥時の温度は例えば50~100℃、典型的には50~70℃とすることができる。
【0056】
(3.炭化水素の合成方法)
本発明の一実施形態によれば、水素及び二酸化炭素を含む原料ガスを、上述した炭化水素合成触媒における原料ガスに接触させる予定の表面に接触させて、原料ガスを反応させることを含む炭化水素の合成方法が提供される。上述した炭化水素合成触媒を用いることで、炭素数が5以上の炭化水素を高い選択率で合成可能となる。
【0057】
炭素数が5以上の炭化水素への選択率は、例えば20体積%以上とすることができ、好ましくは25体積%以上とすることがで、より好ましくは30体積%以上とすることができ、更により好ましくは35体積%以上とすることができ、更により好ましくは40体積%以上とすることができ、更により好ましくは45体積%以上とすることができ、典型的には20~60体積%の範囲とすることができる。炭素数が5以上の炭化水素への選択率の計算方法は後述の実施例において説明する。
【0058】
理論によって本発明が限定されることを意図するものではないが、水素及び二酸化炭素を含む原料ガスは以下の二段階反応によって炭化水素に変換されると推察される。本発明の一実施形態に係る炭化水素合成触媒は、下記の二段階反応を促進することができる。
(1)逆水性ガスシフト反応:CO2+H2→CO+H2
(2)FT(Fischer-Tropsch)反応:nCO+2nH2→-(CH2n-+nH2
【0059】
原料ガスに含まれる水素(H2)及び二酸化炭素(CO2)のモル比は、限定的ではないが、CO2をCOに還元する際にH2が必要で炭化水素合成(FT反応)に用いられるモル比よりH2が多めに使われる、かつ可逆反応のため反応物H2を多くすることで炭化水素生成の方向に向いて反応がシフトしやすくなるという理由により、H2:CO2=2:1~4:1とすることが好ましく、2.5:1~4:1とすることがより好ましく、3:1~4:1とすることが更により好ましい。
【0060】
原料ガス中には、水素及び二酸化炭素以外のガス成分が含まれていてもよい。例えば、一酸化炭素、水蒸気、メタン、アルゴン、ヘリウム等のガス成分が、合計で1~10モル%含まれていてもよく、1~5モル%含まれていてもよい。しかしながら、原料ガス中には、水素及び二酸化炭素以外のガス成分は不要であり、原料ガスに含まれる水素及び二酸化炭素以外のガス成分は合計で10モル%以下とすることができ、7モル%以下とすることが好ましく、5モル%以下とすることがより好ましい。
【0061】
原料ガスを、炭化水素合成触媒における原料ガスに接触させる予定の表面に接触させる方法としては、特に制限はない。例えば、炭化水素合成触媒が粉末状の場合は、原料ガスの経路の途中に炭化水素合成触媒を充填した固定式又は流動式の触媒層を設け、原料ガスに触媒層を通過させる方法が挙げられる。また、炭化水素合成触媒が、一方の端面から他方の端面まで貫通する一つ又は複数の流路を有する造形物である場合は、原料ガスの経路の途中に炭化水素合成触媒を設置し、原料ガスに当該一つ又は複数の流路を通過させる方法が挙げられる。原料ガスの流量に応じて複数の炭化水素合成触媒の造形物を並列及び/又は直列に配列してもよい。
【0062】
原料ガスを反応させる際、反応率を高めるため、触媒を300~500℃に加熱することが好ましく、320~450℃に加熱することがより好ましく、360~400℃に加熱することが更により好ましい。
【0063】
原料ガスを反応させる際、反応率を高めるため、原料ガスを1~5MPa(ゲージ圧)に加圧することが好ましく、2~4MPa(ゲージ圧)に加圧することがより好ましい。
【0064】
原料ガスの触媒通過時間は、反応率を高めるため、1.0~15.0sが好ましく、1.5~12.0sがより好ましく、2.0~10.0sが更により好ましい。例えば、炭化水素合成触媒が粉末状であり、原料ガスの経路の途中に炭化水素合成触媒を充填した固定式又は流動式の触媒層を設け、原料ガスに触媒層を通過させる方法を採用する場合、原料ガスの触媒通過時間は、原料ガスが触媒層に流入してから反応生成物が触媒層から流出するまでの時間であり、次式で表される。
【数1】
【0065】
また、炭化水素合成触媒が、一方の端面から他方の端面まで貫通する一つ又は複数の流路を有する造形物であり、原料ガスの経路の途中に炭化水素合成触媒を設置し、原料ガスに当該一つ又は複数の流路を通過させる方法を採用する場合、原料ガスの触媒通過時間は、原料ガスが一方の端面から前記流路に流入してから反応生成物が他方の端面から流出するまでの時間であり、次式で表される。
【数2】
二つ以上の造形物を直列に並べるときは、触媒通過時間は二つ以上の造形物に対する各触媒通過時間の合計値で表される。
【0066】
原料ガスを反応させる前に、水素ガスを、炭化水素合成触媒における原料ガスに接触させる予定の表面に接触させて、当該表面を還元する予備処理を行うことが好ましい。予備処理を行うことで、当該表面に存在する鉄酸化物が部分的に還元されて当該表面に酸素欠陥が導入される。酸素欠陥が導入されることは、酸素の格子空位に存在する余剰電子がCO2中の酸素を奪おうとする勢いが強くなるがゆえに、触媒表面とCO2分子の間の結合力が強まる一方で、CO2分子が触媒表面と接触する確率が増すため、反応が起こりやすくなるという理由により望ましい。
【0067】
水素ガスを、炭化水素合成触媒における原料ガスに接触させる予定の表面に接触させる方法としては、特に制限はない。例えば、炭化水素合成触媒が粉末状の場合は、水素ガスの経路の途中に炭化水素合成触媒を充填した固定式又は流動式の触媒層を設け、水素ガスに触媒層を通過させる方法が挙げられる。また、炭化水素合成触媒が、一方の端面から他方の端面まで貫通する一つ又は複数の流路を有する場合は、水素ガスの経路の途中に炭化水素合成触媒を設置し、水素ガスに当該一つ又は複数の流路を通過させる方法が挙げられる。
【0068】
予備処理を行う際、反応率を高めるため、水素ガスを300~700℃に加熱することが好ましく、300~600℃に加熱することがより好ましく、300~500℃に加熱することが更により好ましい。
【0069】
予備処理時間のために水素ガスを流す時間は、充分な酸素欠陥を導入するために、4~12hrが好ましく、6~12hrがより好ましく、8~12hrが更により好ましい。
【実施例0070】
以下、本発明の実施例を示すが、これらは本発明及びその利点をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図しない。
【0071】
[I.Ni含有量及び触媒形態が触媒性能に与える影響について]
<A.粉末状触媒の製造>
(実施例1)
触媒原料として、市販されているSUS630(Fe:73.97質量%、Cr:16.39質量%、Ni:4.8質量%、Cu:3.57質量%、Nb:0.22質量%、C:0.028質量%、Si:0.45質量%、Mn:0.56質量%、及び不可避的不純物を含有する。)の粉末を準備した。
・当該粉末のサンプルについて、体積基準のメジアン径(D50)及びD90をレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック社製MT3200)を用いて測定した。
・当該粉末のサンプルについて、BET比表面積を先述した測定条件で測定した。
・当該粉末のサンプルについて、表面を先述した測定条件でX線回折法(XRD)により分析し、Fe-Cr合金を表す2θ=44~45°の範囲におけるピーク面積(I1)に対するFe23を表す2θ=35~36°の範囲におけるピーク面積(I2)の比(I2/I1)と、Fe-Cr合金を表す2θ=44~45°の範囲におけるピーク面積(I1)に対するFeCr24を表す2θ=30~31°の範囲におけるピーク面積(I3)の比(I3/I1)を算出した。
結果を表1に示す。
【0072】
塩酸(8.7mol/L)及び硝酸(3.3mol/L)を、塩酸:硝酸=3:1の体積比で混合して酸洗液(pH=0.1以下)を調製した。この酸洗液(20℃)200mLを、網付きロートに載せた上記粉末7~8gにピペットで上から掛け流した。濾液は粉末に数回掛け流した。酸洗後の粉末を大気と連通した60℃の乾燥炉内で24時間をかけて熱風乾燥した。
【0073】
次いで、熱風乾燥後の粉末を網付きロートに載せ、0.004mol/Lの硝酸ナトリウム水溶液(20℃)200mLをピペットで上から掛け流すことでNa含浸を行った。濾液は粉末に数回掛け流した。Na含浸後の粉末を大気と連通した60℃の乾燥炉内で24時間をかけて熱風乾燥した。
【0074】
得られたNa含浸後の粉末をアルミナ坩堝に入れ、マッフル炉内で昇温速度2℃/minで昇温後、550℃の空気中で24時間焼成し、その後、放冷した。アルミナ坩堝から取り出した焼結体をプレッシャーで解砕し、更に篩別することでメジアン径が表1に記載の程度の粒度分布をもつ粉末状の触媒を製造した。
・粉末状の触媒のサンプルについて、体積基準のメジアン径(D50)をレーザー回折・散乱法により先述した測定条件で測定した。
・粉末状の触媒のサンプルについて、BET比表面積を先述した測定条件で測定した。
・粉末状の触媒のサンプルについて、表面を先述した測定条件でX線回折法(XRD)により分析し、I2/I1と、I3/I1を算出した。
・粉末状の触媒のサンプルについて、表面を先述した測定条件でエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)により元素分析した。
結果を表1に示す。
【0075】
(実施例2)
触媒原料として、市販されているSUS316L(Fe:66.74質量%、Cr:17.11質量%、Ni:12.54質量%、C:0.018質量%、Si:0.81質量%、Mn:0.73質量%、Mo:2.04質量%、及び不可避的不純物を含有する。)の粉末を準備した。
・当該粉末のサンプルについて、体積基準のメジアン径(D50)及びD90をレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック社製MT3200)を用いて測定した。
結果を表1に示す。
【0076】
塩酸(8.7mol/L)及び硝酸(3.3mol/L)を、塩酸:硝酸=3:1の体積比で混合して酸洗液(pH=0.1以下)を調製した。この酸洗液(20℃)200mLを、網付きロートに載せた上記粉末7~8gにピペットで上から掛け流した。濾液は粉末に数回掛け流した。酸洗後の粉末を大気と連通した60℃の電気炉内で24時間をかけて熱風乾燥した。
【0077】
次いで、熱風乾燥後の粉末を網付きロートに載せ、0.004mol/Lの硝酸ナトリウム水溶液(20℃)200mLをピペットで上から掛け流すことで、Na含浸を行った。濾液は粉末に数回掛け流した。Na含浸後の粉末を大気と連通した60℃の電気炉内で24時間をかけて熱風乾燥した。
【0078】
得られたNa含浸後の粉末をアルミナ坩堝に入れ、マッフル炉内で2℃/minで昇温後、550℃の空気中で24時間焼成し、その後、放冷した。アルミナ坩堝から取り出した焼結体をプレッシャーで解砕し、更に篩別することでメジアン径が表1に記載の程度の粒度分布をもつ粉末状の触媒を製造した。
・粉末状の触媒のサンプルについて、体積基準のメジアン径(D50)をレーザー回折・散乱法により先述した測定条件で測定した。
・粉末状の触媒のサンプルについて、表面を先述した測定条件でエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)により元素分析した。
結果を表1に示す。
【0079】
<B.造形された触媒の製造>
(実施例3)
実施例1と同じ触媒原料(SUS630の粉末)を用意した。次いで、レーザビームを利用した金属3Dプリンター(日星電気製金属3Dプリンター試験機)を用いた粉末床溶融結合法により、窒素雰囲気下、触媒原料の溶融及び凝固を繰り返すことで三次元造形し、一方の端面から他方の端面まで貫通する複数の流路を有する円柱状の造形物を得た。得られた造形物のサンプルについて、流路のBET比表面積を先述した測定条件で測定した。また、造形物のサンプルについて、流路の表面を先述した測定条件でX線回折法(XRD)により分析し、I2/I1と、I3/I1を算出した。結果を表1に示す。
【0080】
塩酸(12.0mol/L)及び硝酸(13.0mol/L)を、塩酸:硝酸=3:1の体積比で混合して酸洗液(pH=0.1以下)を調製した。この酸洗液(20℃)200mLを上記で得られた造形物の各流路にピペットを用いて流し込み、酸洗した。造形物から流出した酸性水溶液は数回繰り返し流し込んだ。酸洗後の造形物を大気と連通した60℃の電気炉内で24時間をかけて熱風乾燥した。
【0081】
次いで、0.1mol/Lの硝酸ナトリウム水溶液(20℃)200mLを熱風乾燥後の造形物の各流路にピペットを用いて流し込むことで、Na含浸を行った。造形物から流出した硝酸ナトリウム水溶液は数回繰り返し流し込んだ。Na含浸後の造形物を大気と連通した60℃の電気炉内で24時間をかけて熱風乾燥した。
【0082】
得られたNa含浸後の造形物をアルミナ坩堝に入れ、マッフル炉内で2℃/minで昇温後、550℃の空気中で24時間焼成し、その後、放冷することで、造形された触媒を製造した。当該触媒は、外径=8mm、高さ=50mmの円柱状で、一方の端面から他方の端面まで高さ方向に貫通する9本の流路を有する。各流路に突起は設けなかった。各流路について、流路の延びる方向に垂直な断面における開口形状は円形であり、開口面積は1.76mm2であった。
・造形された触媒のサンプルについて、流路のBET比表面積を先述した測定条件で測定した。
・造形された触媒のサンプルについて、流路の表面を先述した測定条件でX線回折法()により分析し、I2/I1と、I3/I1を算出した。
・造形された触媒のサンプルについて、流路の表面を先述した測定条件でSEM-EDXにより元素分析した。
結果を表1に示す。
【0083】
(実施例4)
実施例2と同じ触媒原料(SUS316Lの粉末)を用意した。次いで、レーザビームを利用した金属3Dプリンター(日星電気製金属3Dプリンター試験機)を用いた粉末床溶融結合法により、窒素雰囲気下、触媒原料の溶融及び凝固を繰り返すことで三次元造形し、一方の端面から他方の端面まで貫通する複数の流路を有する円柱状の造形物を得た。結果を表1に示す。
【0084】
塩酸(8.7mol/L)及び硝酸(3.3mol/L)を、塩酸:硝酸=3:1の体積比で混合して酸洗液(pH=0.1以下)を調製した。この酸洗液(20℃)200mLを上記で得られた造形物の各流路にピペットを用いて流し込み、酸洗した。造形物から流出した酸性水溶液は数回繰り返し流し込んだ。酸洗後の造形物を大気と連通した60℃の電気炉内で24時間をかけて熱風乾燥した。
【0085】
次いで、1.0mol/Lの硝酸ナトリウム水溶液(20℃)を熱風乾燥後の造形物の各流路にピペットを用いて流し込むことで、Na含浸を行った。造形物から流出した硝酸ナトリウム水溶液は数回繰り返し流し込んだ。Na含浸後の造形物を大気と連通した60℃の電気炉内で24時間をかけて熱風乾燥した。
【0086】
得られたNa含浸後の造形物をアルミナ坩堝に入れ、マッフル炉内で2℃/minで昇温後、550℃の空気中で24時間焼成し、その後、放冷することで、造形された触媒を製造した。当該触媒は、外径=8mm、高さ=50mmの円柱状で、一方の端面から他方の端面まで高さ方向に貫通する9本の流路を有する。各流路に突起は設けなかった。各流路について、流路の延びる方向に垂直な断面における開口形状は円形であり、開口面積は1.76mm2であった。
・造形された触媒のサンプルについて、流路の表面を先述した測定条件でエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)により元素分析した。
結果を表1に示す。
【0087】
<C.炭化水素合成>
実施例1及び2の粉末状の触媒については、内径8mm、長さ60mmのステンレスパイプ内に0.25gの触媒を石英ウールで上下から挟むことにより固定充填した触媒層を設けたものを反応器とした。次いで、当該ステンレスパイプの上流側にガス供給用パイプ(ステンレス製)、下流側にガス流出用パイプ(ステンレス製)を繋ぎ、図3に示す構成の炭化水素合成装置を構成した。尚、熱電対は、反応器内に充填されている触媒の中央位置に挿入した。
【0088】
また、実施例3及び4の円柱状に造形された触媒については、触媒自体が反応器を構成する。そのため、当該触媒の上流側にガス供給用パイプ(ステンレス製)、下流側にガス流出用パイプ(ステンレス製)を繋ぎ、図3に示す構成の炭化水素合成装置を組み立てた。尚、熱電対は、触媒反応器の中央位置に挿入した。
【0089】
図3に示す炭化水素合成装置100の構成について説明する。炭化水素合成装置100は、炭化水素合成を行う前に供給するH2及びN2用のパイプ101a、マスフローコントローラ102a、原料ガス用のパイプ101b、マスフローコントローラ102b、ガス供給用パイプ103、反応器108、ヒーター106、ガス流出用パイプ105、第一冷却容器110、バルブ113、背圧弁114、分岐流出用パイプ109、第二冷却容器116、バルブ118、六方弁120、GC-FID122、GC-TCD124、六方弁126、及び石鹸膜流量計128を備える。
【0090】
炭化水素合成を行う前に供給するH2及びN2用のパイプ101aには、マスフローコントローラ102aが設置されており、H2及びN2の流量を制御することが可能である。原料ガス用のパイプ101bには、マスフローコントローラ102bが設置されており、原料ガスの流量を制御することが可能である。パイプ101a及びパイプ101bは、ガス供給用パイプ103に連結されている。原料ガスはパイプ101bを通過した後、ガス供給用パイプ103を通って反応器108を通過する。原料ガスに代えて、パイプ101aからH2又はN2を反応器108内に流すことも可能である。原料ガスが反応器108を通過する際に反応器108内の触媒と接触することで炭化水素合成反応が起き、炭化水素等の反応生成物が生成する。反応器108を通過する原料ガスの圧力は、バルブ102a、102b、バルブ118及びバルブ113によって調整可能である。反応器108の外周を覆うようにヒーター106が設置されており、反応器108内の温度を制御可能である。反応器108から流出する反応生成物は、ガス流出用パイプ105を通って外周側を氷冷した耐圧ステンレス製の冷却容器110に流入し、気液分離により液体成分(炭素数の多い有機成分)が回収される。冷却容器110から流出する気体成分のうち残留有機成分は、下流に設置されたGC-FID122によってリアルタイムで定量分析を受けることが可能である。また、冷却容器110から流出する気体成分のうち低分子成分(CO2、CO、CH4、キャリアガスHe)は、ウォータートラップ116で残留有機成分が除去された後、GC-TCD124によってリアルタイムで定量分析を受けることが可能である。その後、気体成分は装置外へ排出される。試験終了後は、バルブ113を閉じ、バルブ118を開き、分岐流出用パイプ109及び118を通じて反応器内部圧力を開放する。
【0091】
炭化水素の合成を始める前に、反応器に水素ガスを40mL/minで流しながらヒーターで触媒温度を400℃まで1時間かけて昇温し、その後、常圧で8時間還元処理を行った。その後、原料ガス(モル比でH2:CO2=3:1)(キャリアガスとしてのHeを4体積%含有する)に切り替えて、触媒温度を380℃に設定して、20mL/minで原料ガスを連続的に反応器に流しながら3.0MPa(ゲージ圧)で炭化水素の合成を8時間行った。圧力は冷却容器110と背圧弁114の間のガス流出用パイプ105中に設置した圧力計の値である。この際、原料ガスの触媒通過時間は、実施例1及び2については9.69sであり、実施例3及び4については2.38sであった。
【0092】
反応器から流出する反応生成物については以下の手順に従ってリアルタイムで成分分析した。まず、図3に示すように、反応生成物を0℃に保持した冷却容器110により気液分離した。冷却容器110から流出した気体成分(炭素数の少ない有機成分)をGC-FID122(Flame Ion Detector)((株)島津製作所 GC-2014AF)に送り込んで定量分析した。また、図3に示すように、冷却容器110から流出した気体成分から残留有機成分をウォータートラップ116により除去した後、気体成分(低分子成分)をGC-TCD124(Thermal Conductivity Detector)((株)島津製作所 GC-2014AT)に送り込んで定量分析した。冷却容器110に回収された液体成分(炭素数の多い有機成分)は、オフラインのGC-FID(Flame Ion Detector)((株)島津製作所 GC-2014AF)で定量分析した。二つの測定結果を加算することで最終的に以下の計算式によってCO2転化率、CO選択率、及び炭化水素の選択率を算出した。結果を表1に示す。
【0093】
-CO2転化率-
・CO2転化率(%)=(1-(反応器から流出したCO2の体積量)/(反応器に供給されたCO2の体積量))×100
【0094】
-CO選択率-
・CO選択率(%)=(反応器から流出したCOの体積量)/(減少したCO2の体積量)×100
【0095】
-炭化水素選択率-
・CH4選択率(%)=(反応器から流出したCH4の体積量)/(減少したCO2の体積量-反応器から流出したCO体積量)×100
・O2-4選択率(%)=(反応器から流出した炭素数2~4の不飽和炭化水素の体積量)/(減少したCO2の体積量-反応器から流出したCO体積量)×100
・C2-4選択率(%)=(反応器から流出した炭素数2~4の飽和炭化水素の体積量)/(減少したCO2の体積量-反応器から流出したCO体積量)×100
・C5 +選択率(%)=(反応器から流出した炭素数5以上の炭化水素(飽和及び不飽和の総計)の体積量)/(減少したCO2の体積量-反応器から流出したCO体積量)×100
【0096】
【表1】
【0097】
粉末状である触媒を用いた実施例1と実施例2を比較すると、Ni濃度の低いSUS630の方が、CH4の選択率が低下し、C5 +の選択率が増加したことが分かる。また、造形物である触媒を用いた実施例3と実施例4を比較しても、同様に、Ni濃度の低いSUS630の方が、CH4の選択率が低下し、C5 +の選択率が増加したことが分かる。この結果から、Ni濃度の低減はCH4を抑える同時に長鎖炭化水素化合物の生成を促す効果があることが確かめられた。
【0098】
触媒原料としてSUS630を用いた実施例1と実施例3を比較すると、触媒性能は粉末状の触媒を用いた実施例1の方が優れていた。また、触媒原料としてSUS316Lを用いた実施例2と実施例4を比較しても、同様に、触媒性能は粉末状の触媒を用いた実施例2の方が優れていた。この結果から、触媒性能は粉末状の触媒の方が造形物の形態にある触媒よりも優れていると言える。しかしながら、造形物の形態にある触媒は反応器の小型化の観点、品質安定性の観点、回収再生の利便性の点で有利であるため、実用性は粉末状の触媒よりもむしろ造形物の形態にある触媒の方が高い。
【0099】
[II.Na含浸が触媒性能に与える影響について]
<A.造形された触媒の製造>
(比較例1)
実施例4と同じ触媒原料(SUS316Lの粉末)を用意した。次いで、レーザビームを利用した金属3Dプリンター(日星電気製金属3Dプリンター試験機)を用いた粉末床溶融結合法により、窒素雰囲気下、触媒原料の溶融及び凝固を繰り返すことで三次元造形し、一方の端面から他方の端面まで貫通する複数の流路を有する円柱状の造形物を得た。当該造形物は、外径=8mm、高さ=50mmの円柱状で、一方の端面から他方の端面まで高さ方向に貫通する9本の流路を有する。各流路に突起は設けなかった。各流路について、流路の延びる方向に垂直な断面における突起を除く開口形状は円形であり、開口面積は1.76mm2であった。比較例1では当該造形物自体(酸洗、Na含浸なし)を触媒とした。
【0100】
(比較例2)
実施例3と同じ触媒原料(SUS630の粉末)を用意した。その後、比較例1と同じ手順で造形された触媒(酸洗、Na含浸なし)を製造した。
【0101】
(実施例5)
Na含浸に使用する硝酸ナトリウム水溶液中の硝酸ナトリウムの濃度を0.1mol/Lに変更した他は、実施例4と同じ手順で造形された触媒を製造した。
【0102】
(実施例6)
Na含浸に使用する硝酸ナトリウム水溶液中の硝酸ナトリウムの濃度を0.3mol/Lに変更した他は、実施例4と同じ手順で造形された触媒を製造した。
【0103】
(実施例7)
Na含浸に使用する硝酸ナトリウム水溶液中の硝酸ナトリウムの濃度を0.5mol/Lに変更した他は、実施例4と同じ手順で造形された触媒を製造した。
【0104】
<B.炭化水素合成>
各触媒を用いて実施例4と同様の方法で図3に示す構成の炭化水素合成装置を組み立てた。
【0105】
炭化水素の合成を始める前に、反応器に水素を40mL/minで流しながらヒーターで触媒温度を400℃まで1時間かけて昇温し、その後、常圧で8時間還元処理を行った。その後、原料ガス(モル比でH2:CO2=3:1)(キャリアガスとしてのHeを4体積%含有する)に切り替えて、触媒温度を380℃に設定して、20mL/min原料ガスを連続的に反応器に流しながら3.0MPa(ゲージ圧)で炭化水素の合成を8時間行った。圧力は冷却容器110と背圧弁114の間のガス流出用パイプ105中に設置した圧力計の値である。この際、原料ガスの触媒通過時間は、何れの実施例及び比較例についても2.38sであった。
【0106】
反応器から流出する反応生成物については実施例4と同じ方法で定量分析し、CO2転化率、CO選択率、及び炭化水素の選択率を算出した。結果を表2に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
表2の結果から、触媒原料に対してNa含浸を行うことで、CO2転化率及びC5 +の選択率が高くなることが分かる。また、Na含浸の際には、C5 +の選択率を高めるのに最適なナトリウム化合物の濃度範囲が存在することも分かる。
【符号の説明】
【0109】
10 :炭化水素合成触媒
11 :一方の端面
12 :他方の端面
13 :流路
14 :流路の表面
15 :突起
100 :炭化水素合成装置
101a :H2及びN2用のパイプ
101b :原料ガス用のパイプ
102a :マスフローコントローラ
102b :マスフローコントローラ
103 :ガス供給用パイプ
105 :ガス流出用パイプ
106 :ヒーター
107 :バイパスパイプ
108 :反応器
109 :分岐流出用パイプ
110 :冷却容器
112 :バルブ
114 :背圧レギュレータ
116 :ウォータートラップ
118 :バルブ
120 :六方弁
126 :六方弁
128 :膜流量計
図1A
図1B
図2A
図2B
図3