(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176745
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】車両用シートの操作装置及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20231206BHJP
B60N 2/20 20060101ALI20231206BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20231206BHJP
B60N 2/30 20060101ALI20231206BHJP
A47C 1/024 20060101ALI20231206BHJP
B60N 2/16 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/20
B60N2/22
B60N2/30
A47C1/024
B60N2/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089184
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 東鉉
(72)【発明者】
【氏名】高月 涼太
(72)【発明者】
【氏名】今成 勝利
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087BA15
3B087BD01
3B087BD02
3B099BA04
(57)【要約】
【課題】操作力を低減する。
【解決手段】車両用シートの操作装置18は、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッション及び着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックを有するシート本体16に回動可能に支持されるレバー本体28を備えている。レバー本体28をシート本体16に対して回動させることでシート本体16の少なくとも一部の変位が許容される。また、車両用シートの操作装置18は、着座乗員に操作される操作部30を備えている。操作部30は、レバー本体28に支持されかつレバー本体28に沿ってレバー本体28の回動中心Z1とは反対側に移動可能とされている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッション及び着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックを有するシート本体に回動可能に支持され、前記シート本体に対して回動させることで前記シート本体の少なくとも一部の変位が許容されるレバー本体と、
前記レバー本体に支持されかつ、前記レバー本体に沿って前記レバー本体の回動中心とは反対側に移動可能とされ、着座乗員に操作される操作部と、
を備えた車両用シートの操作装置。
【請求項2】
前記シート本体に前記レバー本体とは異なる軸まわりに回動可能に支持されていると共に前記操作部に連結された位置調整用リンクをさらに備え、
前記レバー本体の前記シート本体に対する回動角度が大きくなるにつれて前記レバー本体の回動中心から前記操作部までの距離が長くなる請求項1に記載の車両用シートの操作装置。
【請求項3】
前記シート本体には、着座乗員に操作される第2操作部が設けられていると共に、前記第2操作部と前記操作部とは隣合って配置され、
前記レバー本体を回動させる際に、前記操作部が前記第2操作部を避ける軌跡で移動するように、前記位置調整用リンクの回動中心の位置及び前記位置調整用リンクの回動中心から前記操作部までの距離が設定されている請求項2に記載の車両用シートの操作装置。
【請求項4】
着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッション及び着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックを有するシート本体と、
前記シート本体に回動可能に支持され、前記シート本体に対して回動させることで前記シート本体の少なくとも一部の変位が許容されるレバー本体と、
前記レバー本体に支持されかつ、前記レバー本体に沿って前記レバー本体の回動中心とは反対側に移動可能とされ、着座乗員に操作される操作部と、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの操作装置及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションのシート上下方向への高さを調節する機構を備えた車両用シートが開示されている。この文献に記載された車両用シートは、当該車両用シートに着座した乗員によって操作されるレバーを備えている。そして、このレバーを操作することで、シートクッションのシート上下方向への位置を調節することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レバーを操作することでシートクッション等の調節を行う構成では、レバーの操作力を低減できることが望ましいが、上記特許文献1に記載された構成には、この点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、操作力を低減することができる車両用シートの操作装置及び車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の車両用シートの操作装置は、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッション及び着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックを有するシート本体に回動可能に支持され、前記シート本体に対して回動させることで前記シート本体の少なくとも一部の変位が許容されるレバー本体と、前記レバー本体に支持されかつ、前記レバー本体に沿って前記レバー本体の回動中心とは反対側に移動可能とされ、着座乗員に操作される操作部と、を備えている。
【0007】
第1の態様の車両用シートの操作装置によれば、着座乗員が操作部を操作してレバー本体を回動させると、シート本体の少なくとも一部の変位が許容される。ここで、操作部は、レバー本体に沿って当該レバー本体の回動中心とは反対側に移動可能とされている。これにより、レバー本体の回動中心から操作部までの距離を長くすることができる。その結果、操作部に入力される操作力を低減することができる。
【0008】
第2の態様の車両用シートの操作装置は、第1の態様の車両用シートの操作装置において、前記シート本体に前記レバー本体とは異なる軸まわりに回動可能に支持されていると共に前記操作部に連結された位置調整用リンクをさらに備え、前記レバー本体の前記シート本体に対する回動角度が大きくなるにつれて前記レバー本体の回動中心から前記操作部までの距離が長くなる。
【0009】
第2の態様の車両用シートの操作装置によれば、上記の位置調整用リンクを備えている。これにより、レバー本体のシート本体に対する回動角度が大きくなるにつれて操作レバーの回動中心から操作部までの距離が長くなるという当該操作部の移動軌跡を実現することができる。
【0010】
第3の態様の車両用シートの操作装置は、第2の態様の車両用シートの操作装置において、前記シート本体には、着座乗員に操作される第2操作部が設けられていると共に、前記第2操作部と前記操作部とは隣合って配置され、前記レバー本体を回動させる際に、前記操作部が前記第2操作部を避ける軌跡で移動するように、前記位置調整用リンクの回動中心の位置及び前記位置調整用リンクの回動中心から前記操作部までの距離が設定されている。
【0011】
第3の態様の車両用シートの操作装置によれば、操作部を操作してレバー本体を回動させる際に、操作部が第2操作部を避ける軌跡で移動する。このように、第3の態様の車両用シートの操作装置では、操作部を操作する際に、当該操作部が第2操作部に干渉することを防止することができる。
【0012】
第4の態様の車両用シートは、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッション及び着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックを有するシート本体と、前記シート本体に回動可能に支持され、前記シート本体に対して回動させることで前記シート本体の少なくとも一部の変位が許容されるレバー本体と、前記レバー本体に支持されかつ、前記レバー本体に沿って前記レバー本体の回動中心とは反対側に移動可能とされ、着座乗員に操作される操作部と、を備えている。
【0013】
第4の態様の車両用シートによれば、着座乗員が操作部を操作してレバー本体を回動させると、シート本体の少なくとも一部の変位が許容される。ここで、操作部は、レバー本体に沿って当該レバー本体の回動中心とは反対側に移動可能とされている。これにより、レバー本体の回動中心から操作部までの距離を長くすることができる。その結果、操作部に入力される操作力を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両用シートの操作装置及び車両用シートは、レバーの操作力を低減することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】車両用シートを示す側面図であり、操作部が操作されていない状態を示している。
【
図2】車両用シートを示す側面図であり、操作部が上方側へ向けて引かれた状態を示している。
【
図3】車両用シートを示す側面図であり、操作部が
図2に示された状態よりもさらに上方側へ向けて引かれた状態を示している。
【
図4】操作部、レバー本体及び位置調整用リンク等を示す側面図であり、操作部が操作されていない状態を示している。
【
図5】操作部、レバー本体及び位置調整用リンク等を示す側面図であり、操作部が上方側へ向けて引かれた状態を示している。
【
図6】操作部、レバー本体及び位置調整用リンク等を示す側面図であり、操作部が
図5に示された状態よりもさらに上方側へ向けて引かれた状態を示している。
【
図7】操作部、レバー本体及び位置調整用リンク等を示す側面図であり、本実施形態の構成の操作部及び比較例に係る構成の操作部の両方を重ねて図示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~
図6を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、図中に示す矢印FR及び矢印UPは、車両用シート10に着座した乗員から見たシート前方側及び上方側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。また、シート左右方向は、シート幅方向と一致している。
【0017】
図1に示されるように、本実施形態の車両用シート10は、着座乗員の臀部を下方側から支持するシートクッション12と、着座乗員の背部を後方側から支持するシートバック14と、を備えている。ここで、シートクッション12及びシートバック14は、シート本体16を構成している。
【0018】
シートバック14の下端部は、シートクッション12の後端部に連結されている。また、シートバック14の下端部とシートクッション12の後端部との間には、図示しないリクライニング機構が設けられている。このリクライニング機構が後述するリクライニング操作部20を介して操作されることで、シートバック14のシートクッション12に対する前後方向への傾動(変位)が許容されるようになっている。また、シートクッション12の下方側には、図示しない昇降機構が設けられている。この昇降機構が後述する昇降操作部22を介して操作されることで、シート本体16の図示しない車体のフロアに対する上下方向への移動(変位)が許容されるようになっている。
【0019】
シートクッション12の左側には、シートバック14のシートクッション12に対する姿勢やシート本体16の上下方向の位置を調節するための車両用シートの操作装置18(以下単に「操作装置18と呼ぶ」)が設けられている。この操作装置18は、リクライニング操作部20と、昇降操作部22と、を含んで構成されている。
【0020】
リクライニング操作部20は、着座乗員によって操作されるリクライニング操作レバー24と、後述する位置調整用リンク26(
図4参照)と、を備えている。
図1~
図3に示されるように、リクライニング操作レバー24を
図1に示された初期位置Pから上方側へ向けて傾動(回動)させることで、シートバック14のシートクッション12に対する傾動が許容されるようになっている。なお、リクライニング操作レバー24が操作されていない状態かつ当該リクライニング操作レバー24が初期位置Pに配置されている状態では、シートバック14のシートクッション12に対する傾動が制限されるようになっている。
【0021】
図4に示されるように、リクライニング操作レバー24は、シートクッション12の骨格の一部を構成するサイドフレーム12Aに回動可能に支持されたレバー本体28と、レバー本体28に支持された操作部30と、を備えている。
【0022】
レバー本体28は、一例として所定の形状に切断された金属板にプレス加工等が施されることによって形成されている。このレバー本体28は、リクライニング操作レバー24が初期位置Pに配置された状態において、前方側へ向かうにつれて下方側に傾斜している基板部28Aを備えている。この基板部28Aの上端部は、サイドフレーム12Aに左右方向を軸方向として回動可能に連結されている。また、レバー本体28は、リクライニング操作レバー24が初期位置Pに配置された状態において、基板部28Aの下端部から前方側へ向けて延出する延出板部28Bを備えている。この延出板部28Bの前端側は、操作部30に挿入されるスライド支持部28Cとなっている。
【0023】
操作部30は、一例として樹脂材料を用いて所定の形状に形成されている。この操作部30は、左側から見て略三角形状に形成された操作力入力部30Aを備えている。この操作力入力部30Aは、着座乗員の手が掛けられる部分となっている。また、操作力入力部30Aには、レバー本体28のスライド支持部28Cが後方側から挿入されるスライド孔30Bが形成されている。そして、レバー本体28のスライド支持部28Cがスライド孔30Bに挿入されることで、操作部30がレバー本体28に支持されるようになっている。また、操作部30がレバー本体28に支持された状態では、操作部30をレバー本体28のスライド支持部28Cに沿ってスライド(移動)させることが可能となっている。これにより、
図4~
図6に示されるように、操作部30を操作する際に、レバー本体28の回動中心Z1から操作部30までの距離を長くすることが可能となっている。
【0024】
図4に示されるように、位置調整用リンク26は、一例として所定の形状に切断された金属板にプレス加工等が施されることによって形成されている。この位置調整用リンク26は、リクライニング操作レバー24が初期位置Pに配置された状態において、上下方向に延在している。この位置調整用リンク26の上端部は、サイドフレーム12Aに左右方向を軸方向として回動可能に連結されている。ここで、本実施形態では、位置調整用リンク26の回動中心Z2が、レバー本体28の回動中心Z1に対して前方側に位置している。また、位置調整用リンク26の下端部は、操作部30の操作力入力部30Aの後端部に左右方向を軸方向として回動可能に連結されている。
図4~
図6に示されるように、この位置調整用リンク26を有することにより、レバー本体28の初期位置Pからの上方側への回動角度が大きくなるにつれて、レバー本体28の回動中心Z1から操作部30までの距離が長くなるようになっている。
【0025】
図1に示されるように、昇降操作部22は、着座乗員によって操作される第2操作部としての昇降操作レバー32を備えている。この昇降操作レバー32を
図1に示された初期位置から上方側へ向けて傾動(回動)させることで、シート本体16が上昇するようになっている。また、昇降操作レバー32を
図1に示された初期位置から下方側へ向けて傾動(回動)させることで、シート本体16が下降するようになっている。本実施形態では、昇降操作レバー32がリクライニング操作レバー24の操作部30に対して前方側に配置されている。また、昇降操作レバー32とリクライニング操作レバー24の操作部30とは、前後方向に隣合って配置されている。
【0026】
ここで、本実施形態では、
図1~
図6に示されるように、レバー本体28を回動させる際に、操作部30が昇降操作レバー32を避ける軌跡で移動するように、
図4~
図6に示された位置調整用リンク26の回動中心Z2の位置及び位置調整用リンク26の回動中心Z2から操作部30との連結軸Z3までの距離等が設定されている。
【0027】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0028】
図1に示されるように、以上説明した本実施形態の車両用シート10では、着座乗員が操作装置18を操作することにより、シートバック14のシートクッション12に対する姿勢やシート本体16の上下方向の位置を調節することができる。
【0029】
ここで、シートバック14のシートクッション12に対する姿勢を調節する際においては、
図1~
図3に示されるように、着座乗員はリクライニング操作レバー24を初期位置Pから上方側へ向けて傾動させる。すなわち、
図4~
図6に示されるように、リクライニング操作レバー24の操作部30(操作力入力部30A)を上方側へ向けて押圧することにより、レバー本体28を上方側へ回動させる。これにより、シートバック14のシートクッション12に対する傾動が許容されて、シートバック14のシートクッション12に対する姿勢を調節することができる。
【0030】
ここで、操作部30は、レバー本体28のスライド支持部28Cに沿ってスライド可能となっている。すなわち、操作部30は、レバー本体28に沿って当該レバー本体28の回動中心Z1とは反対側に移動可能となっている。これに加えて、レバー本体28の初期位置Pからの上方側への回動角度が大きくなるにつれて、レバー本体28の回動中心Z1から操作部30までの距離が長くなるようになっている。これにより、レバー本体28の初期位置Pからの上方側への回動角度が大きくなるにつれて、レバー本体28の回動中心Z1から操作部30までの距離を長くすることができる。その結果、
図7に示された比較例に係る操作部34のように、レバー本体28の回動中心Z1から操作部34までの距離が定められた寸法から変化しない構成と比べて、操作部30に入力される操作力を低減することができる。
【0031】
また、本実施形態では、
図1~
図6に示されるように、レバー本体28を回動させる際に、操作部30が昇降操作レバー32を避ける軌跡で移動するようになっている。これにより、操作部30を操作する際に、当該操作部30が昇降操作レバー32に干渉することを防止することができる。
【0032】
なお、以上説明した例では、レバー本体28を回動させる際に、操作部30が昇降操作レバー32を避ける軌跡で移動するようにした例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、昇降操作レバー32が設けられていない場合においては、操作部30を上記とは異なる軌跡で移動させてもよい。
【0033】
また、本実施形態では、レバー本体28の初期位置Pからの上方側への回動角度が大きくなるにつれて、レバー本体28の回動中心Z1から操作部30までの距離が長くなるようにした例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、位置調整用リンク26を設けない構成とし、レバー本体28の初期位置Pからの上方側への回動角度に関わらず、レバー本体28の回動中心Z1から操作部30までの距離を任意の距離に設定できるようにしてもよい。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
16 シート本体
18 車両用シートの操作装置
26 位置調整用リンク
28 レバー本体
30 操作部
32 昇降操作レバー(第2操作部)
Z1 レバー本体の回動中心