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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176751
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/514 20060101AFI20231206BHJP
   A61F 13/515 20060101ALI20231206BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20231206BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20231206BHJP
   A61F 13/472 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61F13/514 220
A61F13/514 200
A61F13/515
A61F13/53 300
A61F13/539
A61F13/53 100
A61F13/472 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089194
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 悠太郎
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA13
3B200BA12
3B200BB11
3B200BB20
3B200CA14
3B200CA15
3B200DA01
3B200DA11
3B200DA15
3B200DA17
3B200DB01
3B200DD01
3B200DD02
3B200EA12
(57)【要約】
【課題】本開示は、着用感が向上した吸収性物品を提供することを目的とする。
【解決手段】長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った長さを有する吸収性物品であって、吸収体と、吸収体の肌面側に配置された肌面側シートと、吸収体の非肌面側に配置された非肌面側シートと、非肌面側シートに伸張状態で接着された収縮部材であって、少なくとも非肌面側シートを長手方向に収縮させる収縮部材と、を備え、収縮部材が非肌面側シートを収縮させることによって、幅方向の成分が主な第1襞および長手方向の成分が主な第2襞がそれぞれ複数形成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さを有する吸収性物品であって、
吸収体と、
前記吸収体の肌面側に配置された肌面側シートと、
前記吸収体の非肌面側に配置された非肌面側シートと、
前記非肌面側シートに伸張状態で接着された収縮部材であって、少なくとも前記非肌面側シートを前記長手方向に収縮させる収縮部材と、
を備え、
前記収縮部材が前記非肌面側シートを収縮させることによって、前記幅方向の成分が主な第1襞および前記長手方向の成分が主な第2襞がそれぞれ複数形成される、
吸収性物品。
【請求項2】
前記複数の第1襞同士の間隔が互いに異なる複数の前記第1襞の組み合わせと、
前記複数の第2襞同士の間隔が互いに異なる複数の前記第2襞の組み合わせと、
を備える、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記複数の第1襞同士が隣接する複数の前記第1襞の組み合わせと、
前記複数の第2襞同士が隣接する複数の前記第2襞の組み合わせと、
を備える、請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記非肌面側シートは、非透水性を有し、且つ、前記吸収性物品の外装面を形成し、
前記外装面の静摩擦係数は、0.63以下である、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記肌面側シートは、透水性を有し、
前記非肌面側シートは、非透水性を有し、
前記肌面側シートおよび前記非肌面側シートは、前記吸収体よりも前記幅方向に長く、且つ、前記吸収体の前記幅方向端部よりも外側に延在しており、
前記肌面側シートは、前記非肌面側シートよりも前記幅方向に長く、且つ、前記非肌面側シートの前記幅方向端部よりも外側に延在しており、
前記収縮部材は、前記吸収体の前記幅方向端部よりも外側に且つ前記幅方向端部の両側であって、前記肌面側シートと前記非肌面側シートの間に配置されており、
前記収縮部材の収縮領域は、前記吸収体の前記長手方向両端部の間に収まっており、
前記吸収体は、前記長手方向端部であって前記幅方向端部に設けられ、他の部位よりも剛性が高い高剛性部を有する、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記高剛性部は、前記収縮部材によっては収縮しない剛性を有している、
請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体は、液体を吸収する吸収コアと、前記吸収コアを被覆するコアラップシートとを有し、
前記高剛性部は、厚み方向において、積層されている前記コアラップシートの枚数が他の部位よりも多い、
請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記高剛性部は、厚み方向に積層された前記コアラップシートが互いに接着されることで形成されている、
請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記収縮部材と前記吸収体の前記幅方向端部との距離は、前記収縮部材の伸縮領域の端部と前記吸収体の前記長手方向端部との距離よりも短い、
請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記非肌面側シートと、前記吸収体の前記高剛性部とが接着されることによって、前記高剛性部と重なる前記非肌面側シートの部位に前記長手方向および前記幅方向の両方の成分を有する斜め方向の皺が形成される、
請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記肌面側シートの肌面側には、立体ギャザーを形成する非透水性の防漏シートが設けられておらず、
前記肌面側シートは、前記幅方向の全面において最も着用者側に配置されている、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用者から排出された尿などの排出液を吸収する吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1には、吸収性パッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/114209号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、着用感が向上した吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る吸収性物品は、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さを有する吸収性物品であって、吸収体と、前記吸収体の肌面側に配置された肌面側シートと、前記吸収体の非肌面側に配置された非肌面側シートと、前記非肌面側シートに伸張状態で接着された収縮部材であって、少なくとも前記非肌面側シートを前記長手方向に収縮させる収縮部材と、を備え、前記収縮部材が前記非肌面側シートを収縮させることによって、前記幅方向の成分が主な第1襞および前記長手方向の成分が主な第2襞がそれぞれ複数形成される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、吸収性物品の着用感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る吸収性パッドを肌面側から視た平面図である。
図2図2は、実施形態に係る吸収性パッドの分解斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る吸収性パッドを幅方向に沿って切断した断面図である。
図4図4は、実施形態に係る吸収性パッドを吊り下げた状態を示す図である。
図5図5は、バックシートの静摩擦係数と位置ずれとの関係を調べた実験結果に関する表である。
図6図6は、実施形態に係る吸収性パッドを幅方向に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0009】
<実施形態>
本実施形態では、交換式(使い捨て)の吸収性パッド(本願でいう「吸収性物品」の一例である)について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃
(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が連接して位置している。また、吸収性パッドが着用者に着用された状態(以下、「着用状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(着用された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(着用された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0010】
図1は、実施形態に係る吸収性パッドを肌面側から視た平面図である。吸収性パッド1は、着用状態において着用者の陰部を覆う股下に対応する股下領域1Bと、股下領域1Bの腹部側に位置し、着用者の前身頃と腰回りに対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの背部側に位置し、着用者の後身頃と腰回りに対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。前身頃領域1F、後身頃領域1R、股下領域1Bには、股下領域1Bを中心に、平面形状が長方形状の吸収体6が組み込まれている。なお、本実施形態に係る吸収性パッド1は、長手方向において対称な形状および構成を有しており、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rとで同じ形状および構成を有する。吸収性パッド1は、テープ型おむつやパンツ型おむつの肌面側に重ねて使用される。着用者が排出した尿などの排出液は、吸収性パッド1が吸収し保持するので、吸収性パッド1のみを交換し、おむつ自体は再利用することができる。なお、吸収性パッド1は、下衣肌着の肌面側に配置し、おむつと併用されることなく、単独で使用されてもよい。なお、本実施形態では、大人用(介護用)の吸収性パッドについて説明する。
【0011】
また、吸収性パッド1は、長手方向に延在し、幅方向の両側に配置された弾性体2L,2R(本願でいう「収縮部材」の一例)を備える。吸収性パッド1は、弾性体2L,2Rの収縮力により着用者の大腿部に沿うレグギャザーが形成される。レグギャザーが着用者の大腿部に沿うことにより、着用者から排出される排出液は、吸収性パッド1からほとんど漏出することなく吸収性パッド1の吸収体に吸収される。なお、弾性体2L,2Rを構成する弾性部材としては糸ゴムや帯状のゴム等を適宜選択できる。また、弾性体2L,2Rは、平行する複数本の糸ゴムであってもよい。本実施形態では、弾性体2L,2Rは、2本の糸ゴムによって構成されている。
【0012】
図2は、実施形態に係る吸収性パッドの分解斜視図である。吸収性パッド1は、トップシート7(本願でいう「肌面側シート」の一例)と、バックシート5(本願でいう「非肌面側シート」の一例)と、トップシート7とバックシート5の間に配置された吸収体6と、トップシート7とバックシート5の間であって、吸収体6の幅方向外側に配置された弾性体2L,2Rとを備える。吸収性パッド1は、肌面側からトップシート7、吸収体6、バックシート5の順で積層された層構造を備える。トップシート7、吸収体6およびバックシート5はいずれも長方形状を有し、それらの長手方向は、吸収性パッド1の長手方向と一致する。吸収性パッド1の前身頃端部、後身頃端部および幅方向端部では、吸収体6は存在せず、トップシート7とバックシート5が接着されている。このように、吸収性パッド1においては、吸収体6の配置領域外においてトップシート7とバックシート5が接着されており、この接着された部位で吸収体6が囲まれている。なお、吸収体6の平面形状は瓢箪型形状であってもよい。なお、トップシート7とバックシート5は、ホットメルト接着剤によって接着にされている。
【0013】
トップシート7は、吸収体6の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される。トップシート7は、熱可塑性樹脂の繊維を含んで形成されたスパンボンド不織布や、エアスルー不織布等からなる。このトップシート7は、その一部又は全部において透水性(液透過性)を有する。そのため、吸収性パッド1の着用状態において、着用者から排出された排出液は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通って吸収体6に進入し、そこで吸収される。また、トップシート7は親水性を有していてもよい。
【0014】
吸収体6は、液体を吸収する吸収コアと、吸収コアを包み込むコアラップシートとを有する。吸収コアは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維によって形成されている。コアラップシートには、透液性を有する不織布が用いられる。本実施形態では、コアラップシートにティッシュが用いられている。なお、吸収体6の詳細については後述する。
【0015】
バックシート5は、排出物の漏れを抑制するために非透液性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。バックシート5は、着用状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。
【0016】
バックシート5、吸収体6、トップシート7は、いずれも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、吸収性パッド1によって着用者の陰部を覆うと、バックシート5と吸収体6とトップシート7の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体6に覆われる状態となる。したがって、着用者が仰臥位を取っている場合でも、伏臥位を取っている場合でも、排出液はトップシート7を介して吸収体6に進入することになる。
【0017】
図3は、実施形態に係る吸収性パッドを幅方向に沿って切断した断面図である。具体的には、図3は、図1のA-A線に沿って切断した断面図である。本実施形態に係る吸収性パッド1の吸収体6は、吸収コア6Cと、吸収コア6Cを包み込むコアラップシート6Wを有する。吸収コア6Cは、複数の吸収マットが積層して形成されている。具体的には、吸収コア6Cは、着用者の肌面側に設けられた上層吸収マット6Aと、着用者の非肌面側に設けられた下層吸収マット6Bとを有する。また、吸収コア6Cは、上層吸収マット6Aと下層吸収マット6Bとの間にSAP層8L,8Rを有する。SAP層8L,8Rは、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)の粒状が複数集まることによって形成されている。SAP層8L,8Rは、吸収体6の幅方向中央部の外側に配置されており、吸収体6の長手方向に沿って延在している。SAP層8L,8Rは幅方向に互いに対称に設けられている。なお、トップシート7は、非肌面側、すなわち、バックシート5側に延在し、バックシート5に接着されている。
【0018】
本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。なお、上層吸収マット6Aおよび下層吸収マット6Bの短繊維間にSAPの粒子が配置されていてもよい。
【0019】
コアラップシート6Wは、薄い透液性のシートであり、吸収コア6Cをコアラップシート6Wで包むことにより、SAP層8L,8RのSAPの粒子が吸収体6の外部にこぼれるのを防いでいる。また、吸収コア6Cをコアラップシート6Wで包むことにより吸収コア6Cの型崩れが抑制される。コアラップシート6Wは、不織布またはパルプ繊維で形成することができ、パルプ繊維の一例としてはティッシュペーパーを用いることができる。なお、吸収体6はバックシート5とトップシート7に包まれており、これらのシートによっても型崩れを抑制できるため、コアラップシート6Wを設けない構成としてもよい。なお、図3に示す構成では、コアラップシート6Wは、吸収コア6Cの肌面側であるトップシート7側を覆う上層コアラップシート6WAと、吸収コア6Cの非肌面側であるバック
シート5側と、吸収コア6Cの側面側を覆う下層コアラップシート6WBの2枚のシートから構成されている。上層コアラップシート6WAと下層コアラップシート6WBは、吸収コア6Cの肌面側の幅方向両端部において積層され、互いに接着されている。このため、吸収体6の肌面側は上層コアラップシート6WAから構成され、吸収体6の側面側と非肌面側は、下層コアラップシート6WBから構成されている。
【0020】
一般的に、吸収性パッドは、上述の通り、おむつと組み合わせて使用される場合が多い。パンツ型のおむつやテープ型のおむつは、着用者のウエスト部分で固定される。しかしながら、吸収性パッドは、おむつの肌面側に配置されるものの、着用者に対して直接的に固定されないので、吸収性パッドがおむつ内で位置ずれを起こす虞がある。本実施形態に係る吸収性パッド1は、組み合わせて使用されるおむつに対しての固定力を向上させることを目的とする。この固定力の向上には、両面テープなどは使用されない。本実施形態に係る吸収性パッド1は、両面テープなどを用いることなく、すなわち、使用する材料を低減させつつ、おむつへの固定力を向上させることができる。よって、本実施形態に係る吸収性パッド1は、おむつに対しての位置ずれを抑制することができ、以って、着用感を向上させることができる。
【0021】
図4は、本実施形態に係る吸収性パッド1の長手方向端部(例えば、前身頃領域側の端部)を挟持して上から吊り下げた状態を示している。吸収性パッド1は、弾性体2L,2R(図1図3参照)の収縮力によって長手方向に収縮し、バックシート5側に膨らんで屈曲している。吸収性パッド1は、おむつと組み合わせて使用される場合においても、図4に示す状態と概ね同じ状態になる。弾性体2L,2Rは、バックシート5に伸張状態で接着されており、バックシート5を長手方向に収縮させている。図4に示されるように、弾性体2L,2Rがバックシート5を収縮させることによって、吸収性パッド1の幅方向の成分が主な第1襞10および吸収性パッド1の長手方向の成分が主な第2襞11がそれぞれ複数形成されている。
【0022】
図4では、6つの第1襞10を例に挙げて符号を付して説明しているが、第1襞はこの6つに限られない。第1襞は、吸収性パッド1の幅方向端部側に複数形成される。また、図4では、4つの第2襞11を例に挙げて符号を付して説明しているが、第2襞はこの4つに限られない。第2襞は、吸収性パッド1の長手方向端部側に複数形成される。なお、第1襞10は、斜め方向に延在し、吸収性パッド1の長手方向成分を含むこともあるが、吸収性パッド1の長手方向成分よりも吸収性パッド1の幅方向成分が大きい襞である。同様に、第2襞11は、斜め方向に延在し、吸収性パッド1の幅方向成分を含むこともあるが、吸収性パッド1の幅方向成分よりも吸収性パッド1の長手方向成分が大きい襞である。
【0023】
吸収性パッド1は、第1襞10および第2襞11がおむつの資材(例えば、おむつのトップシート)を挟むことで、おむつ内における位置ずれを抑制する。本実施形態に係る吸収性パッド1は、使用時に複数の第1襞10および第2襞11が形成されるので、様々な種類のおむつに使用してもいずれかの襞がおむつの資材を挟むことが可能になる。よって、吸収性パッド1は、様々なおむつと好適に組み合わせることが可能である。
【0024】
また、図4に示されるように、吸収性パッド1は、複数の第1襞10同士の間隔が互いに異なる複数の第1襞10の組み合わせ(例えば、第1襞10Aの組み合わせと、第1襞10Bの組み合わせ)と、複数の第2襞11同士の間隔が互いに異なる複数の第2襞11の組み合わせ(例えば、第2襞11Aの組み合わせと、第2襞11Bの組み合わせ)を備える。これによって、吸収性パッド1は、第1襞10Aの組み合わせと、または、第1襞10Bの組み合わせ、若しくは、第2襞11Aの組み合わせ、または、第2襞11Bの組み合わせのいずれかの組み合わせの襞でおむつの資材を挟む可能性が高くなる。よって、
吸収性パッド1は、様々なおむつと好適に組み合わせることが可能である。なお、図4に示す第1襞10A、第1襞10B、第2襞11A、および第2襞11Bの組み合わせは一例である。吸収性パッド1は、第1襞10A、第1襞10B、第2襞11A、および第2襞11Bの各組み合わせを複数有することで、様々なおむつと好適に組み合わせることが可能である。
【0025】
また、図4に示されるように、吸収性パッド1は、複数の第1襞10同士が隣接する複数の第1襞10の組み合わせ(例えば、第1襞10Cの組み合わせ)と、複数の第2襞11同士が隣接する複数の第2襞11の組み合わせ(例えば、第2襞11Cの組み合わせ)を備える。これによって、吸収性パッド1は、第1襞10Cの組み合わせと、または、第2襞11Cの組み合わせでおむつの資材をより強固に挟むことが可能になる。よって、吸収性パッド1は、位置ずれを抑制できる。なお、図4に示す第1襞10Cおよび第2襞11Cの組み合わせは一例である。吸収性パッド1は、第1襞10および第2襞11の各組み合わせを複数有することで、様々なおむつと好適に組み合わせることが可能である。
【0026】
ここで、本実施形態におけるバックシート5の静摩擦係数(静止摩擦係数)について説明する。吸収性パッド1の静摩擦係数は、以下の方法で測定可能である。静摩擦係数は、新東科学株式会社製の表面性測定機(トライボギアTYPE:14DR)を用いて、JIS P 8147:2010(紙及び板紙-静及び動摩擦係数の測定方法)に準拠して測定した。
【0027】
<実験例>
ここで、バックシートの静摩擦係数と位置ずれの関係を調べる実験を行った。本実験例では、バックシートにポリエチレンの樹脂フィルムを用いて、サンプルの吸収性パッドを作成した。図5は、本実験結果を示す表である。本実験例では、本実施形態の実施例および比較例の吸収性パッドを各15枚ずつ作成した。図5の表は、「目付け(g/m)(小数点以下で四捨五入)」、「静摩擦係数(小数点第2位で四捨五入)」、「実施例」、「比較例」の項目で構成されている。「目付け(g/m)(小数点以下で四捨五入)」の欄の各数値は、バックシートの目付の値である。「静摩擦係数(小数点第2位で四捨五入)」の欄の各数値は、バックシートの静摩擦係数の値である。「実施例」の欄は、弾性体2L,2Rを備えることによって、バックシート5の非肌面側(外装面)に図4に示す第1襞10および第2襞11が形成された実施例に係る吸収性パッドにおいて、位置ずれが生じたか否かを示している。「比較例」の欄は、バックシート5の非肌面側(外装面)に第1襞10および第2襞11が形成されない比較例に係る吸収性パッドにおいて、位置ずれが生じたか否かを示している。「実施例」および「比較例」の欄において、「〇」の表記は位置ずれが生じなかった結果を示し、「×」の表記は位置ずれが生じた結果を示している。
【0028】
本実験例では、実施例および比較例に係る吸収性パッドを、65歳~80歳の成人(着用者)に対して、おむつと組み合わせて使用した場合に吸収性パッドに位置ずれが生じる否かを調査した。各着用者に対して、介護士20名が実際におむつと実施例および比較例に係る吸収性パッドを着用させて、位置ずれについて調査した。なお、吸収性パッドの着用枚数は、介護士1名につき3枚とした。そして、6名以下の介護士が着用動作や着用後の吸収性パッドの位置ずれが気になったと回答した場合を位置ずれが生じなかった(図5中の「〇」)とし、7名以上の介護士が着用動作や着用後の吸収性パッドの位置ずれが気になったと回答した場合を位置ずれが生じた(図5中の「×」)とした。
【0029】
なお、実施例および比較例に係る吸収性パッドのサイズは以下の通りある。外寸は、幅が22cmであり、長さが49cmである。なお、トップシートの幅が22cmであり、吸収体の幅が15cmであり、バックシートの幅が21cmである。吸収体の吸収コアのパルプ量は、21gであり、吸収コアのパルプの目付は330g/mである。SAP層
のSAP量は4gであり、SAP層のSAP目付は80g/mである。
【0030】
図5の表に示すように、バックシートの静摩擦係数が0.68以上であれば、実施例および比較例に係る吸収性パッドにおいて、位置ずれが生じない結果となった。しかしながら、バックシートの静摩擦係数が0.63以下である場合は、実施例に係る吸収性パッドでは位置ずれが生じない結果となり、比較例に係る吸収性パッドでは位置ずれが生じる結果となった。なお、図5の表から分かるように、バックシートの目付は、位置ずれの結果には影響していないと言える。
【0031】
本実験果より、吸収性パッド1は、バックシート5の静摩擦係数が0.63以下である場合であっても、バックシート5に図4に示す第1襞10および第2襞11が形成されていることによって、位置ずれを抑制できることが分かった。本実施形態に係る吸収性パッド1は、バックシート5の静摩擦係数が0.63以下であっても、位置ずれを抑制し、以って、着用感を向上させることができる。なお、バックシート5の静摩擦係数は、好ましくは0.50以上であるが、0.50より小さくてもよい。
【0032】
一般的に、外装面が滑りやすい資材で構成された吸収性パッドは、組み合わせて用いられるおむつやホルダーパンツ内において位置ずれを起こさないようにするため、おむつなどと接着する接着部を設けたり、静摩擦係数を高めるために不織布などを積層したりするなどの必要がある。市販されている吸収性パッドにおいては、不織布が用いられるカバーシートが外装面を形成していることが多い。一方、本実施形態に係る吸収性パッド1は、カバーシートを備えておらず、バックシート5が外装面を形成している。バックシート5は、非透液性を有するシート材(例えば、フィルム)が用いられてる。このようなバックシート5は、不織布のカバーシートよりも静摩擦係数が小さく、カバーシートよりも滑りやすい。しかしながら、本実施形態に係る吸収性パッド1は、第1襞10および第2襞11によって組み合わせるおむつ内での位置ずれを防止することができる。
【0033】
また、図1図3および図4に示されるように、トップシート7およびバックシート5は、吸収体6よりも幅方向に長く、且つ、吸収体6の幅方向端部よりも外側に延在している。ここで、トップシート7は、バックシート5よりも幅方向に長く、且つ、バックシート5の幅方向端部よりも外側に延在している。このため、トップシート7は、吸収性パッド1内で最も幅方向外側に出ており、組み合わせて使用されるおむつなどの資材に接する。トップシート7は、着用者が排出した尿などで濡れて、おむつなどの資材に密着する。本実施形態に係るおむつ1は、このトップシート7による密着力によっても位置ずれを抑制できる。
【0034】
また、おむつの交換頻度は、吸収性パッド1よりも低く、おむつのトップシートが濡れた状態で新しい吸収性パッド1がおむつ内に配置される場合もある。この場合、吸収性パッド1のトップシート7は、幅方向の外側に延在する部分がおむつのトップシートに接して濡れた状態となる。トップシート7は、濡れることで、おむつのトップシートに密着するため、吸収性パッド1は、位置ずれを抑制できる。
【0035】
また、本実施形態に係る吸収性パッド1において、トップシート7の肌面側には、立体ギャザーを形成する非透水性の防漏シートが設けられておらず、トップシート7は、幅方向の全面において最も着用者側に配置されている。通常、吸収性パッド1は、組み合わせて使用されるおむつの一対の立体ギャザーの間に配置される。吸収性パッド1は、防漏シートを有さないことによって、トップシート7がおむつの立体ギャザーに接触する。このような状態で着用者が排出した液体がトップシート7の幅方向全域に伝わることで、トップシート7とおむつの立体ギャザーとの間に水分が存在するようになり、両者間の表面張力によってトップシート7とおむつの立体ギャザーとが密着し、吸収性パッド1の位置ず
れを抑制できる。また、吸収性パッド1から排出液が漏れておむつとバックシート5の間に排出液が進入する場合も想定される。バックシート5とおむつのトップシートの間に水分が存在することで、両者間の表面張力によってバックシート5とおむつのトップシートとが密着し、吸収性パッド1の位置ずれを抑制できる。
【0036】
また、弾性体2L,2Rは、吸収体6の幅方向端部よりも外側に且つ幅方向端部の両側であって、トップシート7とバックシート5の間に配置されている。ここで、弾性体2L,2Rの収縮領域は、吸収体6の長手方向両端部の間に収まっている。弾性体2L,2Rは、バックシート5に接着されており、弾性体2L,2Rの収縮領域は、収縮方向におけるバックシート5への接着端部によって決定される。図1では、接着端部2Eは、弾性体2L,2Rのうち、点線で示す楕円で囲まれた部分である。図1に示されるように、本実施形態では、弾性体2L,2R自体が吸収体6の長手方向両端部の間に収まっており、接着端部2Eも吸収体6の長手方向両端部の間に収まっている。なお、弾性体2L,2R自体は、吸収体6の長手方向両端部の間からはみ出していてもよい。なお、弾性体2L,2Rは、トップシート7にも接着されている。
【0037】
ここで、図1に示されるように、吸収体6は、長手方向端部であって幅方向端部に設けられ、他の部位よりも剛性が高い高剛性部6Hを有する。この長手方向端部であって幅方向端部とは、長方形状の吸収体6における四隅のことである。この四隅の剛性は、吸収体の他の部位よりも高くなっている。
【0038】
図6は、実施形態に係る吸収性パッドを幅方向に沿って切断した断面図である。具体的には、図6は、図1のB-B線に沿って切断した断面図である。図6に示されるように、高剛性部6Hは、厚み方向において、積層されているコアラップシート6Wの枚数が他の部位よりも多い。具体的には、吸収体6の肌面側において、上層コアラップシート6WAと下層コアラップシート6WBとが積層され、両者が多量のホットメルト接着剤によって接着されている。なお、上層コアラップシート6WAと下層コアラップシート6WBの接着工程において吸収体6がプレスされる。厚み方向に積層された上層コアラップシート6WAと下層コアラップシート6WBが互いに接着されることで高剛性部6Hが形成されている。なお、複数枚のコアラップシートを積層することによっても高剛性部6Hを形成してもよい。
【0039】
高剛性部6Hを設けたことによる効果について、図4を参照しつつ説明する。高剛性部6Hは、弾性体2L,2Rの収縮力によって収縮しない、または、吸収体6の他の部位やトップシート7およびバックシート5と比較して僅かにしか収縮しない程度の剛性を有している。高剛性部6Hが、弾性体2L,2Rの収縮力によって収縮しない、または、僅かにしか収縮しないことで、高剛性部6Hの近傍であって外装面側に第3襞12が形成される。第3襞12は、高剛性部6Hと弾性体2L,2Rの間に形成される。高剛性部6Hが収縮しないために、第3襞12は、弾性体2L,2Rの収縮方向、すなわち、吸収性パッド1の長手方向の成分を含む襞となる。第3襞11は、斜め方向に延在し、吸収性パッド1の幅方向成分を含むこともあるが、吸収性パッド1の幅方向成分よりも吸収性パッド1の長手方向成分が大きい襞である。本実施形態に係る吸収性パッド1は、使用時に複数の第3襞12が形成されるので、様々な種類のおむつに使用してもいずれかの襞がおむつの資材を挟むことが可能になる。なお、第3襞12は、吸収体6の四隅の高剛性部6H近傍に形成される。よって、吸収性パッド1は、様々なおむつと好適に組み合わせることが可能である。
【0040】
また、図1に示されるように、弾性体2L,2Rと吸収体6の幅方向端部との距離D1は、弾性体2L,2Rの接着端部2E(本願でいう「伸縮領域の端部」の一例)と吸収体6の長手方向端部との距離D2よりも短い。これにより、図4に示されるように、吸収性
パッド1の長手方向成分が吸収性パッド1の幅方向成分よりも大きい第3襞12を形成できる。
【0041】
また、図2および図3に示されるように、バックシート5の肌面側に吸収体6が積層されており、バックシート5と吸収体6が接着されている。ここで、図4に示されるように、バックシート5と吸収体6の高剛性部6Hとが接着されていることによって、高剛性部6Hと重なるバックシート5の部位に斜め方向の皺13が形成される。斜め方向は、吸収性パッド1の長手方向および幅方向の両方の成分を有する。なお、皺13は、高剛性部6Hと吸収体6の他の部位との境界部分に形成されやすくなる。高剛性部6Hは、収縮しないので平面形状を維持でき、組み合わせて使用されるおむつと概ね平行な状態で対向するが、吸収性パッド1は、高剛性部6Hの非肌面側(外装側)においても皺13によっておむつの資材と係合可能となる。これにより、吸収性パッド1は、おむつ内での位置ずれを抑制できる。
【0042】
以上、本実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施の形態に限られるものではない。上記実施形態に係る吸収性パッド1では、外装面を形成するシートがバックシート5であったが、これに限られない。吸収性パッド1において、外装面を形成するシートは不織布が用いられるカバーシートであってもよい。
【0043】
以上で開示した各実施形態やその変形例に含まれる特徴は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0044】
1・・吸収性パッド
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2L,2R・・弾性体
2E・・接着端部
5・・バックシート
6・・吸収体
6C・・吸収コア
6A・・上層吸収マット
6B・・下層吸収マット
6W・・コアラップシート
6WA・・上層コアラップシート
6WB・・下層コアラップシート
6H・・高剛性部
7・・トップシート
8L,8R・・SAP層
10・・第1襞
11・・第2襞
12・・第3襞
13・・皺
図1
図2
図3
図4
図5
図6