(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176766
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】印刷用塗工紙及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 19/40 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
D21H19/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089227
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健夫
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AC06
4L055AG10
4L055AG27
4L055AG47
4L055AG50
4L055AG97
4L055AH02
4L055AH03
4L055AH11
4L055AH37
4L055AJ04
4L055EA04
4L055EA08
4L055EA11
4L055EA14
4L055EA16
4L055EA32
4L055FA12
4L055GA19
(57)【要約】
【課題】低坪量にも係わらず、白色度が高く、印刷インクの裏抜け抑制効果及び断紙抑制効果に優れる印刷用塗工紙を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る印刷用塗工紙は、クラフトパルプを含有する基紙と、基紙の少なくとも片面に積層される塗工層とを備える。基紙における全パルプに対する広葉樹晒クラフトパルプの含有量が80質量%以上90質量%以下であり、パルプに対する針葉樹晒クラフトパルプの含有量が10質量%以上20質量%以下であり、基紙におけるサイズ剤の含有量が固形分換算で0.20質量%以上0.80質量%以下である。塗工層が白色顔料及び蛍光染料を含有し、蛍光染料の塗工量が40mg/m2以上180mg/m2以下である。白色顔料におけるカオリンの含有量が20質量%以上28質量%以下であり、白色顔料における上記炭酸カルシウムの含有量が72質量%以上80質量%以下であり、坪量が60.0g/m2以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラフトパルプを含有する基紙と、
上記基紙の少なくとも片面に積層される塗工層と
を備えており、
上記基紙における全パルプに対する広葉樹晒クラフトパルプの含有量が80質量%以上90質量%以下であり、
上記基紙における全パルプに対する針葉樹晒クラフトパルプの含有量が10質量%以上20質量%以下であり、
上記基紙におけるサイズ剤の含有量が固形分換算で0.20質量%以上0.80質量%以下であり、
上記塗工層が白色顔料及び蛍光染料を含有し、
上記蛍光染料の塗工量が40mg/m2以上180mg/m2以下であり、
上記白色顔料が、カオリンと、炭酸カルシウムとを含み、
上記カオリンのアスペクト比が15以上25以下であり、
上記白色顔料における上記カオリンの含有量が20質量%以上28質量%以下であり、
上記白色顔料における上記炭酸カルシウムの含有量が72質量%以上80質量%以下であり、
坪量が60.0g/m2以下である印刷用塗工紙。
【請求項2】
白色度が85.0%以上であり、
不透明度が85.0%以上である請求項1に記載の印刷用塗工紙。
【請求項3】
上記塗工層が青色顔料及び紫色顔料を含有し、
上記青色顔料の塗工量が4.0mg/m2以上7.0mg/m2以下であり、
上記紫色顔料の塗工量が5.0mg/m2以上9.0mg/m2以下である請求項1又は請求項2に記載の印刷用塗工紙。
【請求項4】
クラフトパルプを含有する基紙と、上記基紙の少なくとも片面に積層される塗工層とを備える印刷用塗工紙の製造方法であって、
ブレードコータにより上記塗工層を積層する工程を有し、
上記基紙における全パルプに対する広葉樹晒クラフトパルプの含有量が80質量%以上90質量%以下であり、
上記基紙における全パルプに対する針葉樹晒クラフトパルプの含有量が10質量%以上20質量%以下であり、
上記基紙におけるサイズ剤の含有量が固形分換算で0.20質量%以上0.80質量%以下であり、
上記塗工層が白色顔料及び蛍光染料を含有し、
上記蛍光染料の塗工量が40mg/m2以上180mg/m2以下であり、
上記白色顔料が、カオリンと、炭酸カルシウムとを含み、
上記カオリンのアスペクト比が15以上25以下であり、
上記白色顔料における上記カオリンの含有量が20質量%以上28質量%以下であり、
上記白色顔料における上記炭酸カルシウムの含有量が72質量%以上80質量%以下であり、
坪量が60.0g/m2以下である印刷用塗工紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用塗工紙及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用塗工紙は、省資源化、輸送コストの低減等の面から、軽量化が進んでいる。軽量化の手段としては、例えば原紙米坪の低減が挙げられるが、原紙紙厚が薄くなると、昨今のフルカラー化された印刷物における印刷インクの裏抜けが生じやすいという課題がある。これに対し、坪量が30g/m2以上50g/m2未満、基紙坪量が20g/m2以上40g/m2未満の塗工紙において印刷インクの裏抜けを防止するために、基紙に使用するパルプとして、不透明度が高い機械パルプを含有させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のようなピッチ分が多い機械パルプを配合すると、ピッチ部分において強度低下が発生し、このピッチ周辺の強度低下部分において破れが生じて抄紙時又は印刷時に断紙する場合がある。このような印刷用塗工紙分野においては、軽量化を行っても、印刷後の印刷物において印刷インクの裏抜けが生じにくく、抄紙時又は印刷時に断紙しにくいレベルの強度を有することが求められている。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、低坪量にも係わらず、白色度が高く、印刷インクの裏抜け抑制効果及び断紙抑制効果に優れる印刷用塗工紙の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る印刷用塗工紙は、クラフトパルプを含有する基紙と、上記基紙の少なくとも片面に積層される塗工層とを備えており、上記基紙における全パルプに対する広葉樹晒クラフトパルプの含有量が80質量%以上90質量%以下であり、上記基紙における全パルプに対する針葉樹晒クラフトパルプの含有量が10質量%以上20質量%以下であり、上記基紙におけるサイズ剤の含有量が固形分換算で0.20質量%以上0.80質量%以下であり、上記塗工層が白色顔料及び蛍光染料を含有し、上記蛍光染料の塗工量が40mg/m2以上180mg/m2以下であり、上記白色顔料が、カオリンと、炭酸カルシウムとを含み、上記カオリンのアスペクト比が15以上25以下であり、上記白色顔料における上記カオリンの含有量が20質量%以上28質量%以下であり、上記白色顔料における上記炭酸カルシウムの含有量が72質量%以上80質量%以下であり、坪量が60.0g/m2以下である。
【0007】
本発明の他の態様に係る印刷用塗工紙の製造方法は、クラフトパルプを含有する基紙と、上記基紙の少なくとも片面に積層される塗工層とを備える印刷用塗工紙の製造方法であって、ブレードコータにより上記塗工層を積層する工程を有し、上記基紙における全パルプに対する広葉樹晒クラフトパルプの含有量が80質量%以上90質量%以下であり、上記基紙における全パルプに対する針葉樹晒クラフトパルプの含有量が10質量%以上20質量%以下であり、上記基紙におけるサイズ剤の含有量が固形分換算で0.20質量%以上0.80質量%以下であり、上記塗工層が白色顔料及び蛍光染料を含有し、上記蛍光染料の塗工量が40mg/m2以上180mg/m2以下であり、上記白色顔料が、カオリンと、炭酸カルシウムとを含み、上記カオリンのアスペクト比が15以上25以下であり、上記白色顔料における上記カオリンの含有量が20質量%以上28質量%以下であり、上記白色顔料における上記炭酸カルシウムの含有量が72質量%以上80質量%以下であり、坪量が60.0g/m2以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低坪量にも係わらず、白色度が高く、印刷インクの裏抜け抑制効果及び断紙抑制効果に優れる印刷用塗工紙を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係る印刷用塗工紙は、クラフトパルプを含有する基紙と、上記基紙の少なくとも片面に積層される塗工層とを備えており、上記基紙における全パルプに対する広葉樹晒クラフトパルプの含有量が80質量%以上90質量%以下であり、上記基紙における全パルプに対する針葉樹晒クラフトパルプの含有量が10質量%以上20質量%以下であり、上記基紙におけるサイズ剤の含有量が固形分換算で0.20質量%以上0.80質量%以下であり、上記塗工層が白色顔料及び蛍光染料を含有し、上記蛍光染料の塗工量が40mg/m2以上180mg/m2以下であり、上記白色顔料が、カオリンと、炭酸カルシウムとを含み、上記カオリンのアスペクト比が15以上25以下であり、上記白色顔料における上記カオリンの含有量が20質量%以上28質量%以下であり、上記白色顔料における上記炭酸カルシウムの含有量が72質量%以上80質量%以下であり、坪量が60.0g/m2以下である。
【0010】
当該印刷用塗工紙は、上記基紙における全パルプに対する広葉樹晒クラフトパルプの含有量が80質量%以上90質量%以下であり、かつ針葉樹晒クラフトパルプの含有量が10質量%以上20質量%以下であることで、上記基紙が広葉樹クラフトパルプ(LKP)及び針葉樹クラフトパルプ(NKP)を上記割合で含有することによって、基紙の強度が向上し、当該印刷用塗工紙の抄紙時又は印刷時の断紙の抑制効果に優れるとともに、白色度を良好にできる。また、上記基紙における上記サイズ剤の含有量が、固形分換算で0.20質量%以上0.80質量%以下であることで、塗工層形成時や印刷時に基紙に過度な吸液を効果的に抑制することができ、抄紙時又は印刷時の断紙抑制効果が高い。また、上記塗工層が白色顔料及び蛍光染料を含有することで、当該印刷用塗工紙が良好な白色度を有するとともに、インクの塗工層への浸透性を有しつつ、印刷インクの裏抜け抑制効果が向上し、好適な印刷適性を有する。さらに、蛍光染料の塗工量が上記範囲であることで、当該印刷用塗工紙の白色度及び印刷ムラ抑制効果を向上できる。また、アスペクト比が15以上25以下であるカオリンの含有割合及び炭酸カルシウムの含有割合が白色顔料に対して上記範囲であることで、白色度及び印刷インクの裏抜け抑制効果を高めることができる。従って、当該印刷用塗工紙は坪量が60.0g/m2以下という低坪量にも係わらず、白色度が高く、印刷インクの裏抜け抑制効果及び断紙抑制効果に優れる印刷用塗工紙を提供する。
【0011】
当該印刷用塗工紙は、白色度が85.0%以上であり、不透明度が85.0%以上であることが好ましい。上記不透明度及び上記白色度は相反する効果であるが、当該印刷用塗工紙のコブサイズ度が上記範囲であることで、良好な白色度及び印刷インクの裏抜け抑制効果を達成できる。
【0012】
上記塗工層が青色顔料及び紫色顔料を含有し、上記青色顔料の塗工量が4.0mg/m2以上7.0mg/m2以下であり、上記紫色顔料の塗工量が5.0mg/m2以上9.0mg/m2以下であることが好ましい。上記塗工層における上記青色顔料の塗工量が4.0mg/m2以上7.0mg/m2以下であり、上記紫色顔料の塗工量が5.0mg/m2以上9.0mg/m2以下であることで、不透明度が向上して印刷時の裏抜け抑制効果を高めるとともに、印刷ムラをより抑制できる。
【0013】
本発明の他の態様に係る印刷用塗工紙の製造方法は、クラフトパルプを含有する基紙と、上記基紙の少なくとも片面に積層される塗工層とを備える印刷用塗工紙の製造方法であって、ブレードコータにより上記塗工層を積層する工程を有し、上記基紙における全パルプに対する広葉樹晒クラフトパルプの含有量が80質量%以上90質量%以下であり、上記基紙における全パルプに対する針葉樹晒クラフトパルプの含有量が10質量%以上20質量%以下であり、上記基紙におけるサイズ剤の含有量が固形分換算で0.20質量%以上0.80質量%以下であり、上記塗工層が白色顔料及び蛍光染料を含有し、上記蛍光染料の塗工量が40mg/m2以上180mg/m2以下であり、上記白色顔料が、カオリンと、炭酸カルシウムとを含み、上記カオリンのアスペクト比が15以上25以下であり、上記白色顔料における上記カオリンの含有量が20質量%以上28質量%以下であり、上記白色顔料における上記炭酸カルシウムの含有量が72質量%以上80質量%以下であり、坪量が60.0g/m2以下である。
【0014】
当該印刷用塗工紙の製造方法は、ブレードコータにより上記塗工層を積層する工程を有し、上記基紙における全パルプに対する広葉樹晒クラフトパルプ及び針葉樹晒クラフトパルプの含有量、上記基紙におけるサイズ剤の含有量、上記塗工層における蛍光染料の塗工量、並びに上記カオリン及び上記炭酸カルシウムの含有量が上記範囲であることで、坪量が60.0g/m2以下という低坪量にも係わらず、白色度が高く、印刷インクの裏抜け抑制効果及び断紙抑制効果に優れる印刷用塗工紙を確実に製造できる。
【0015】
[本発明の実施形態の詳細]
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<印刷用塗工紙>
当該印刷用塗工紙は、基紙と、上記基紙の少なくとも片面に積層される塗工層を備える。
【0017】
[基紙]
基紙は、原料パルプを主成分とする。基紙は、単層であっても、複数層であってもよい。上記基紙はサイズ剤を含有することが好ましい。上記基紙は、サイズ剤を含有することで、当該印刷用塗工紙の抄紙時又は印刷時の断紙が効果的に抑制することができる。
【0018】
(原料パルプ)
原料パルプは、クラフトパルプを含有する。クラフトパルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)の公知のクラフトパルプを使用することができる。上記クラフトパルプとしては、これらの中でも、広葉樹クラフトパルプ(LKP)と針葉樹クラフトパルプ(NKP)とを組み合わせたものが好ましく、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)とを組み合わせたものが特に好ましい。当該印刷用塗工紙は、これら2種のパルプを用いることで基紙の強度を良好にできる。
【0019】
上記パルプ繊維として広葉樹クラフトパルプ(LKP)及び針葉樹クラフトパルプ(NKP)を併用する場合における全パルプ成分に対する広葉樹クラフトパルプ(LKP)の含有量の下限としては、80質量%であり、82質量%が好ましく、84質量%がより好ましい。一方、全パルプ成分に対する広葉樹クラフトパルプ(LKP)の含有量の上限としては、90質量%であり、88質量%が好ましく、86質量%がより好ましい。また、全パルプ成分に対する針葉樹クラフトパルプ(NKP)の含有量の下限としては、10質量%であり、12質量%が好ましい。一方、全パルプ成分に対する針葉樹クラフトパルプ(NKP)の含有量の上限としては、20質量%であり、18質量%が好ましい。広葉樹クラフトパルプ(LKP)は、繊維長が短いため、得られる基紙の繊維間の空隙を比較的少なくすることができる。これに対し、針葉樹クラフトパルプ(NKP)は、繊維長が長いため、得られる基紙の繊維間の結合を強化することができる。従って、上記基紙が広葉樹クラフトパルプ(LKP)及び針葉樹クラフトパルプ(NKP)を上記割合で含有することによって、白色度が良好になるとともに、基紙の強度が向上し、当該印刷用塗工紙の断紙の抑制効果に優れる。
【0020】
上記広葉樹クラフトパルプ(LKP)のフリーネスの下限としては、300mlが好ましく、350mlがより好ましい。また、上記広葉樹クラフトパルプ(LKP)のフリーネスの上限としては、500mlが好ましく、450mlがより好ましい。一方、上記針葉樹クラフトパルプ(NKP)のフリーネスの下限としては、400mlが好ましく、450mlがより好ましい。また、上記針葉樹クラフトパルプ(NKP)のフリーネスの上限としては、600mlが好ましく、550mlがより好ましい。上記広葉樹クラフトパルプ(LKP)及び針葉樹クラフトパルプ(NKP)のフリーネスが上記範囲であることによって、基紙の強度を高めることができる。なお、「フリーネス」とは、JIS-P-8121(2012)に準拠して測定される値である。
【0021】
(サイズ剤)
上記基紙はサイズ剤を含有するので、塗工時の塗料の沈み込みを抑え、抄紙時の断紙や印刷時の湿し水の影響による断紙を効果的に抑制することができる。サイズ剤としては、スチレン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水琥珀酸、ロジンサイズ剤、ワックスサイズ剤又はこれらの組み合わせが好ましい。特に、サイズ性をエージング期間が短く得られる観点から、ロジンサイズ剤が好ましい。
【0022】
サイズ剤の添加量は、固形分換算で0.20質量%以上0.80質量%以下である。基紙におけるサイズ剤の含有量が上記範囲であることで、印刷時における基紙へのインクの含浸量を適切に調整できるので、当該印刷用塗工紙における印刷インクの裏抜け抑制効果を良好にできる。さらに、当該印刷用塗工紙における抄紙時又は印刷時の断紙を効果的に抑制することができる。
【0023】
(その他の添加剤)
上記基紙の成分としては、上記パルプ及びサイズ剤の他に、例えば、必要により、その他の添加剤を使用することができる。その他の添加剤としては、例えば紙力増強剤、填料、凝結剤、凝集剤、消泡剤、蛍光染料、硫酸バンド、歩留り向上剤、濾水性向上剤、湿潤紙力増強剤、着色染料、染料定着剤、着色顔料、耐水化剤等を使用することができる。これらの添加剤は、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0024】
[塗工層]
塗工層は、上記基紙の少なくとも片面に積層される。上記塗工層は、白色顔料及び蛍光染料を含有する。上記塗工層が白色顔料及び蛍光染料を含有することで、当該印刷用塗工紙が良好な白色度を有するとともに、インクの塗工層への浸透性を有しつつ、印刷インクの裏抜け抑制効果が向上し、好適な印刷適性を有する。また、上記塗工層は、青色顔料及び紫色顔料をさらに含有することが好ましい。
【0025】
(白色顔料)
上記塗工層は、白色顔料としてアスペクト比が15以上25以下であるカオリン及び炭酸カルシウムを含む。アスペクト比が15以上25以下であるカオリンとしては、高白色度及び高アスペクト比の観点から、デラミネートカオリン(扁平カオリン)が好ましい。
上記塗工層が白色顔料としてアスペクト比が15以上25以下であるカオリン及び炭酸カルシウムを含むことで、印刷インクの塗工層への浸透が効果的に抑えられ、印刷インクの裏抜けを効果的に抑制することができる。
【0026】
〈カオリン〉
カオリンは、表面塗工用に使用される粘土鉱物である。当該印刷用塗工紙の塗工層においては、アスペクト比が15以上25以下であり、アスペクト比が大きく扁平率が高いカオリンを含む。アスペクト比が15以上25以下のカオリンを含むことで、ブレードコータでの高速塗工適性に優れる。また、アスペクト比が15以上25以下のカオリンを含むことで、印刷時のインキが塗工層表面に留まるため、印刷濃度と印刷光沢が向上し、かつ印刷インクの裏抜け抑制効果も向上できる。
【0027】
カオリンのアスペクト比の下限としては、15である。カオリンのアスペクト比が15未満であると、十分な印刷インクの裏抜け抑制効果が得られないおそれがある。一方、上記カオリンのアスペクト比の上限としては、25である。カオリンのアスペクト比が25を超えると、浸透性が損なわれるため、印刷時のインキ乾燥性が悪くなり、ブロッキングが発生するおそれがある。ここで、「アスペクト比」とは、無機粒子の形状で、その長径(最長径)と厚さ(最短径)との比をいう。上記アスペクト比は、粒子毎に長径(最長径)と厚さ(最短径)を計測し、粒子毎に長径を厚さで除し、それらの平均を算出したものである。アスペクト比は、例えば、レーザー回折・散乱式の粒子分布測定装置堀場製作所製、Horiba LA 950)による粒子画像解析や粉体粒子を電子顕微鏡で撮影し、ランダムに抽出した500個について、長径を厚さで割って平均値を求めることで得ることができる。
【0028】
塗工層における白色顔料に対する上記カオリンの含有量の下限としては、20質量%であり、22質量%が好ましい。一方、上記白色顔料に対する上記カオリンの含有量の上限としては、28質量%であり、26質量%が好ましい。上記白色顔料に対する上記カオリンの含有量が上記下限未満の場合、インクの乾燥性は向上するが、印刷光沢と印刷インクの裏抜け抑制効果が低下するおそれがある。一方、上記白色顔料に対する上記カオリンの含有量が上記上限を超える場合、印刷時にインクの乾燥性が悪化し、ブロッキングが発生して印刷品質が低下するおそれがある。
【0029】
〈炭酸カルシウム〉
上記塗工層は炭酸カルシウムを含むことで、インク乾燥性に優れるとともに、印字のにじみやムラが抑制され、印字品質を良好にできる。
【0030】
上記塗工層の白色顔料に対する上記炭酸カルシウムの含有量の下限としては、72質量%であり、74質量%が好ましい。一方、上記白色顔料に対する上記炭酸カルシウムの含有量の上限としては、80質量%であり、78質量%が好ましい。上記白色顔料に対する上記炭酸カルシウムの含有量が上記下限未満の場合、印刷インクの裏抜け抑制効果が低下するおそれがある。一方、上記白色顔料に対する上記炭酸カルシウムの含有量が上記上限を超える場合、印刷インクの吸収性が低下して印字濃度が低くなるおそれがある。
【0031】
上記塗工層は、炭酸カルシウム及びカオリン以外のその他の白色顔料を含んでいてもよい。上記その他の顔料としては、特に限定されず、例えば二酸化チタン、アスペクト比が15未満のカオリン(微粒カオリン、1級カオリン、2級カオリン等)などの白色顔料が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その他の顔料の含有量は、白色顔料100質量%に対して5質量%以下とすることが好ましい。
【0032】
(蛍光染料)
蛍光染料は、上記塗工層を着色させ、かつ白色度を向上させることができる。蛍光染料としては、例えば、スチルベンゼン系、ベンズイミダゾール系、イミダゾール系、イミダゾロン系、ビラゾリン系、クマリン系、ナフタルイミド系を使用することができる。市販化されている蛍光染料としては、例えば、カヤホールSIM(L)(日本化薬社製)等を使用することができる。
【0033】
蛍光染料の塗工量は、40mg/m2以上180mg/m2以下であり、120mg/m2以上150mg/m2以下が好ましい。蛍光染料の塗工量が上記範囲であることで、当該印刷用塗工紙の白色度及び印刷ムラ抑制効果を向上できる。
【0034】
上記塗工層における蛍光染料の含有量は、白色顔料100質量部に対して、0.25質量部以上1.0質量部以下が好ましく、0.60質量部以上0.80質量部以下がより好ましい。上記蛍光染料の含有量が上記範囲であることで、当該印刷用塗工紙の白色度及び印刷ムラ抑制効果を向上できる。
蛍光染料の合計含有量(mg/m2)=(全塗工量[g/m2]×蛍光染料の合計質量部[質量部]/塗工液中の全固形分質量部[質量部])×1000
なお、上記質量部は、固形分換算した場合の数値である。
【0035】
(紫色顔料及び青色顔料)
上記塗工層は、青色顔料及び紫色顔料を含有することが好ましい。上記塗工層が青色顔料及び紫色顔料を含有することで、印刷時の裏抜け抑制効果及び印刷ムラ抑制効果を高めることができる。青色顔料及び紫色顔料は、無機、有機いずれのものでも良い。紫色顔料及び青色顔料は、染料に比べて耐光性に優れ、紙の経時による変色・着色の抑制効果が高い。
【0036】
青色顔料及び紫色顔料としては、無機顔料および有機顔料のいずれも使用できる。青色顔料の具体例としては、例えば、ウルトラマリン、アズライト、プロシアブルー(紺青)、群青、スマルト、コバルトブルー(アルミン酸コバルト)、セルリアンブルー(錫酸コバルト)、コバルトクロムブルー、コバルト・アルミ・珪素酸化物、コバルト・亜鉛・珪素酸化物、マンガンブルー、フタロシアニンが挙げられる。また、紫色顔料の具体例としては、例えば、コバルトバイオレット(砒酸コバルト、燐酸コバルト、コバルト・リチウム・燐酸化物、含水燐酸アンモニウムコバルト、ホウ酸コバルトなど)、紫群青、酸化鉄紫、マンガンバイオレット、ミネラルバイオレットなどの無機顔料、インジゴイド系、キナクリドン系、オキサジン系、アントラキノン系、カルボニウム系、キサンテン系の有機顔料が挙げられる。
【0037】
上記塗工層における上記青色顔料の塗工量としては、4.0mg/m2以上7.0mg/m2以下が好ましく、4.2mg/m2以上5.0mg/m2以下がより好ましい。また、上記紫色顔料の塗工量としては、5.0mg/m2以上9.0mg/m2以下が好ましく、5.5mg/m2以上7.0mg/m2以下がより好ましい。上記塗工層における上記青色顔料の塗工量が4.0mg/m2以上7.0mg/m2以下であり、上記紫色顔料の塗工量が5.0mg/m2以上9.0mg/m2以下であることで、不透明度を向上して印刷時の裏抜け抑制効果を高めるとともに、印刷ムラをより抑制できる。
なお、上記含有量は、以下の計算式で数値化した。
青色顔料又は紫色顔料の合計含有量(mg/m2)=(全塗工量(g/m2)×青色顔料又は紫色顔料の合計質量部(質量部)/塗工液中の全固形分質量部(質量部))×1000
なお、上記質量部は、固形分換算した場合の数値である。
【0038】
(バインダー)
塗工層は、バインダーを含有することが好ましい。塗工層のバインダーとしては、特に限定されず、例えばカチオン化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、カルバミン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコール又はその誘導体;ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス;エチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス;これら各種重合体にカチオン性基を用いてカチオン化したラテックス、カチオン性界面活性剤によって重合体表面をカチオン化したラテックス、カチオン性ポリビニルアルコール下で重合し、重合体表面にこのカチオン性ビニルアルコールを分布させたラテックス、カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で重合を行い、重合体表面にこのカチオン性コロイド粒子を分布させたラテックス;メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂等の水性接着剤;ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体;ポリウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系接着剤等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、費用対効果の点から、汎用性の高いスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスと(SBR)澱粉誘導体との併用が好適に用いられる。また、上記スチレン-ブタジエン共重合体のガラス転移温度としては、優れた柔軟性を有することができるよう低い方が好ましく、例えば0℃未満とすることができる。
【0039】
上記塗工層における上記バインダーの含有量(固形分換算)の下限としては、上記白色顔料100質量部に対して5質量部が好ましく、6質量部がより好ましい。一方、上記塗工層における上記バインダーの含有量の上限としては、上記白色顔料100質量部に対して20質量部が好ましく、15質量部がより好ましい。上記塗工層における上記バインダーの含有量が上記下限未満の場合、塗工層の強度が十分に得られないおそれがある。一方、上記塗工層における上記バインダーの含有量が上記上限を超える場合、塗工層内の密着性が高くなり、製造工程におけるブロッキング、貼り付き等が生じるおそれがある。これに対し、上記バインダーの含有量が上記範囲である場合、塗工層の強度、粘着性等の物性を好適に調整することができる。
【0040】
上記塗工層(塗工液)には、白色顔料、紫顔料、青色顔料、蛍光染料及びバインダーの他、例えば顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、滑剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料、定着剤等の添加剤を必要に応じて適宜配合することができる。
【0041】
上記塗工層の両面塗工量(固形分換算)の下限としては、17.0g/m2が好ましく、18.0がより好ましい。一方、上記塗工層の塗工量(固形分換算)の上限としては、23.0g/m2が好ましく、22.0g/m2がより好ましい。上記塗工層の塗工量が上記下限未満の場合、十分な印刷適性が得られないおそれがある。一方、上記塗工層の塗工量が上記上限を超える場合、上記塗工層の硬化に起因して柔軟性が低下し、当該印刷用塗工紙の加工適性が低下するおそれがある。
【0042】
[印刷用塗工紙の物性値]
(坪量)
「坪量」は、JIS-P-8124(2011)に準拠して測定される値である。当該印刷用塗工紙の坪量の上限としては、60.0g/m2である。当該印刷用塗工紙の坪量の下限が60.0g/m2であることで、当該印刷用塗工紙の軽量化を図ることができる。当該印刷用塗工紙の坪量の下限としては、45.0g/m2が好ましい。当該印刷用塗工紙の坪量の下限が45.0g/m2であることで、印刷インクの裏抜け抑制効果及び断紙抑制効果を両立することができる。
【0043】
(コブサイズ度)
本発明におけるコブサイズ度は、JIS-P8140(1998)に準拠して基紙の表面に水を60秒間接触させて測定される値である。コブサイズ度は、基紙におけるサイズ剤の含有量により調整できる。当該印刷用塗工紙のコブサイズ度の下限としては、10g/m2が好ましく、15g/m2秒がより好ましく、20g/m2がさらに好ましい。一方、当該印刷用塗工紙のコブサイズ度の上限としては、65g/m2が好ましく、60g/m2秒がより好ましくい。コブサイズ度が10g/m2以上であることで、印刷インクの過度な浸透を抑制し、印刷インクの裏抜け抑制効果を向上できる。一方、当該印刷用塗工紙のコブサイズ度が65g/m2以下であることで、抄紙時の断紙や印刷ムラの抑制効果を向上できる。
【0044】
当該印刷用塗工紙によれば、低坪量にも係わらず、白色度が高く、印刷インクの裏抜け抑制効果及び断紙抑制効果に優れる。
【0045】
[印刷用塗工紙の製造方法]
当該印刷用塗工紙の製造方法は、クラフトパルプを含有する基紙と、上記基紙の少なくとも片面に積層される塗工層とを備える印刷用塗工紙の製造方法である。当該印刷用塗工紙の製造方法は、ブレードコータにより上記塗工層を積層する工程を備える。また、その他の工程として、例えば原料パルプスラリーを抄紙し、プレスパート及びプレドライヤーパートに供して基紙を製造する工程と、カレンダー処理を施す工程とを有することが好ましい。さらに、基紙表面に表面処理を施した後に乾燥及び平坦化処理を行う工程を有していてもよい。
【0046】
上記塗工層を積層する工程では、高塗工量を塗工できる観点から、塗工液を塗工する際の塗工装置としてブレードコータを用いる。
【0047】
また、カレンダー処理を施す工程におけるカレンダー装置としては、例えばスーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトコンパクトカレンダ等の金属又はドラムと弾性ロールとの組み合わせによる各種カレンダーをオンマシン又はオフマシン仕様で適宜使用することができる。
【0048】
当該印刷用塗工紙の製造方法においては、上記基紙における全パルプに対する広葉樹晒クラフトパルプの含有量が80質量%以上90質量%以下であり、上記基紙における全パルプに対する針葉樹晒クラフトパルプの含有量が10質量%以上20質量%以下であり、上記基紙におけるサイズ剤の含有量が固形分換算で0.20質量%以上0.80質量%以下であり、上記塗工層が白色顔料及び蛍光染料を含有し、上記蛍光染料の塗工量が40mg/m2以上180mg/m2以下であり、上記白色顔料が、カオリンと、炭酸カルシウムとを含み、上記カオリンのアスペクト比が15以上25以下であり、上記白色顔料における上記カオリンの含有量が20質量%以上28質量%以下であり、上記白色顔料における上記炭酸カルシウムの含有量が72質量%以上80質量%以下であり、坪量が60.0g/m2以下である。このように、当該印刷用塗工紙の製造方法は、ブレードコータにより上記塗工層を積層する工程を有し、上記基紙における全パルプに対する広葉樹晒クラフトパルプ及び針葉樹晒クラフトパルプの含有量、上記基紙におけるサイズ剤の含有量、上記塗工層における蛍光染料の塗工量、並びに上記カオリン及び上記炭酸カルシウムの含有量が上記範囲であることで、坪量が60.0g/m2以下という低坪量にも係わらず、白色度が高く、印刷インクの裏抜け抑制効果及び断紙抑制効果に優れる印刷用塗工紙を確実に製造できる。
【0049】
<その他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【実施例0050】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
[実施例1]
(基紙)
表1に記載の含有量のフリーネス420mlの広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)及びフリーネス500mlの針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を含有するパルプスラリーに、表1に記載の含有量の内添サイズ剤(ハリマ化成社製の「NS75P」:ロジンサイズ剤)を添加した紙料スラリーを用いて抄紙して基紙を得た。
【0052】
(塗工層)
基紙の表面に、表2に記載の含有量の白色顔料としてのアスペクト比が15以上25以下のカオリン(PPSA社製の「HCクレー」)及び重質炭酸カルシウム(自社製)25質量部、有色顔料としての青色顔料(御国色素社製の「SAブルー12422)、紫色顔料(御国色素社製の「SAバイオレットBOX」)、蛍光染料(日本化薬社製の「カヤホールSIM(L)」)、並びにバインダーとしてのラテックス(日本エイアンドエル社製の「PB-8900」)及び澱粉(日本食品化工社製の「RC#20」)を含有する塗工液を両面で21.0g/m2(固形分換算)をブレード塗工方式で塗工して坪量58.5g/m2の印刷用塗工紙を得た。なお、表2に記載の白色顔料の平均粒子径[μm]は、レーザー回折・散乱式の粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、製品名MT3300)を用いて、100個の平均値を求めることによって得た。
【0053】
上記記載の添加量は、絶乾パルプ量に対する固形分換算した量で記載した。また、塗工層の片面あたりの塗工量は、両面の塗工量の略1/2となるように塗工した。
【0054】
[実施例2~実施例8及び比較例1~比較例6]
基紙のサイズ剤の含有量と、塗工層における白色顔料、青色顔料、紫色顔料、蛍光染料及びバインダーの種類、含有割合、並びに塗工量とを表1及び表2の通りとした。また、印刷用塗工紙の坪量及び塗工量を表3の通りとし、実施例2~実施例8及び比較例1~比較例6の印刷用塗工紙を得た。なお、2級カオリンとして(KaMin社製の「ハイドロスパース(Hydresperse)」)、微粒カオリンとして(シール社製の「カオファイン」)を用いた。また、塗工液の塗工方式を表3の記載の通りとした。上記塗工方式の「ロール」とは、ロットメタリングサイズプレス方式、「ブレード」とはブレードコータ方式を意味する。
【0055】
実施例1~実施例8及び比較例1~比較例6の印刷用塗工紙の構成を下記表1及び表2に示す。
【0056】
【0057】
【0058】
[評価]
得られた印刷用塗工紙について下記の方法にて評価した。
【0059】
(坪量)
坪量(g/m2)は、JIS-P-8124(2011)「紙及び板紙-坪量の測定方法」に準拠して測定した。
【0060】
(不透明度)
不透明度[%]は、JIS-P8148(2001)「紙、板紙及びパルプ-ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。不透明度としては、85.0%以上であれば良好である。
【0061】
(印刷不透明度)
次の条件で印刷用塗工紙に印刷を行って印刷試験品を作製し、印刷不透明度を測定した。
(1)印刷機
明製作所社製「RI-3型」
(2)インキ
大日精化社製「WebRexIMPACTBLACK」
(3)インキ量
上段ロールに0.5ml
(4)試験方法
上段ロール及び下段ロールでそれぞれインキを各3分間練り(2分間練った後、ロールを反転させてさらに1分間練る)、圧胴回転速度30rpmで1回目の印刷を行った。さらに、そのままインキを30秒間練り、圧胴回転速度30rpmで2回目の印刷を行った。さらに、そのままインキを30秒間練り、圧胴回転速度30rpmで3回目の印刷を行った。印刷15秒後に、5秒間乾燥機に入れて取り出し、その後、半日以上経過後に、色差計にてXYZ表色系のY値を測定、上記Y値の数値を基にグラフ化し、印刷面反射率6.5%の数値を読み取り、印刷不透明度の数値とした(参考規格:J.TAPPINo.45:2000「新聞用紙-印刷後不透明度試験方法」)。
印刷不透明度[%]=(印刷後の裏面反射率/印刷前の裏面反射率)×100(%)
なお、印刷後の裏面反射率及び印刷前の裏面反射率の測定には、分光白色度測色機(スガ試験機(株)製)を用いた。印刷不透明度としては80.0%以上であれば、印刷インクの裏抜け抑制効果が高いため良好である。
【0062】
(光沢度)
光沢度[%]は、JIS-P8142(2005)「紙及び板紙-75度鏡面光沢度の測定方法」に準拠して測定した。光沢度としては、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましい。
【0063】
(印刷光沢度)
以下の条件で印刷用塗工紙に印刷を行って印刷試験品を作製し、印刷光沢度を測定した。
(1)印刷機
明製作所社製「RI-3型」
(2)インキ
大日精化社製「WebRexIMPACTCyan」
(3)インキ量
上段ロール:0.3ml
下段ロール:0.2ml
(4)試験方法
上段ロール及び下段ロールでそれぞれインキを各2分間練り、その後、ロールを反転させてさらに1分間練り、圧胴回転速度30rpmで下段ロール及び上段ロールの順に続けて印刷した。印刷開始から15秒後に、5秒間乾燥機に入れて取り出した後、1.5H後に、75°光沢度計色差計にて印刷部の印刷光沢を測定した。印刷光沢度[%]は、JIS-P8142(2005)「紙及び板紙-75度鏡面光沢度の測定方法」に準拠して測定した。
印刷光沢度としては、50%以上が好ましく、75%以上がより好ましい。
【0064】
(コブサイズ度)
実施例1~実施例8及び比較例1~比較例6の印刷用塗工紙について、JIS-P8140(1998)に準拠して基紙の表面に水を60秒間接触させてコブサイズ度[g/m2]を測定した。
【0065】
(白色度)
白色度[%]は、JIS-P8148(2001)「紙、板紙及びパルプ-ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。白色度としては、85.0%以上であれば良好である。
【0066】
(b*値)
JIS-P8150(2004)に記載の紙及び板紙-色(C/2°)の測定方法-拡散照明法に準拠して、村上色彩(株)社製色差計CMS-35SPXにて、紫外光を含む光源にて測定した。b*値としては、-8以上-3未満が好ましく、-6以上-4未満がより好ましい。このようにb*値を低くすることによって、印刷用紙の見た目の白さを増強できるとともに、不透明度を向上させ、印刷時の裏抜けを防止することができる。
【0067】
(印刷インクの裏抜け抑制効果)
室内蛍光灯下で実施例1~実施例8及び比較例1~比較例6の印刷用塗工紙を印刷面の裏側から透かして観察し、以下の3段階の評価基準で評価した。下記評価基準のうち、A及びBの場合を実使用可能と判断する。
A:裏抜けが全くない。
B:裏抜けが僅かに認められるが、ほとんど目立たず実用上差し支えがない。
C:裏抜けが認められ、実用に供することができない。
【0068】
(断紙抑制効果)
印刷用塗工紙の抄造時及び輪転機での印刷時の操業性を以下の2段階の評価基準で評価した。下記評価基準のうち、Aの場合を実使用可能と判断する。
A:印刷用塗工紙の抄造時及び輪転機での印刷時に操業性が良好で断紙によるトラブルが少なく、印刷用塗工紙として優れている。
B:印刷用塗工紙の抄造時及び輪転機での印刷時に操業性が悪く断紙によるトラブルがあり、印刷用塗工紙として難がある。
【0069】
(印刷ムラ抑制効果)
オフセット印刷機(型番:小森SYSTEMC-20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、新聞用カラーインキ(商品名:ニュースウェブマスター エコピュア、サカタインクス(株)製)にてカラー4色印刷を行った。得られた印刷物について、藍/赤重色部分のインキ濃度ムラを目視にて観察し、以下の3段階評価基準に基づいて評価した。下記評価基準のうち、A及びBの場合を実使用可能と判断する。
A:インキ濃度ムラが全くなく、均一で鮮明な画像である。
B:インキ濃度ムラが殆どなく、均一な画像である。
C:全体的に、インキ濃度ムラが著しく、不鮮明な画像である。
【0070】
上記測定結果及び評価結果について、表3に示す。
【0071】
【0072】
表3に示すように、上記基紙における全パルプに対する広葉樹晒クラフトパルプの含有量が80質量%以上90質量%以下であり、針葉樹晒クラフトパルプの含有量が10質量%以上20質量%以下であり、基紙におけるサイズ剤の含有量が固形分換算で0.20質量%以上0.80質量%以下であり、塗工層が白色顔料及び蛍光染料を含有し、塗工層における上記蛍光染料の塗工量が40mg/m2以上180mg/m2以下であり、アスペクト比が15以上25以下のカオリンの含有量が白色顔料に対して20質量%以上28質量%以下であり、炭酸カルシウムの含有量が白色顔料に対して72質量%以上80質量%以下である実施例1~実施例8は、低坪量にも係わらず、白色度、印刷インクの裏抜け抑制効果、断紙抑制効果及び印刷ムラ抑制効果が良好であった。特に、塗工層における青色顔料の塗工量が4.0mg/m2以上7.0mg/m2以下であり、紫色顔料の塗工量が5.0mg/m2以上9.0mg/m2以下である実施例1~実施例6は、印刷ムラ抑制効果が優れていた。
【0073】
一方、上記広葉樹晒クラフトパルプの含有量が80質量%未満であり、上記蛍光染料の塗工量が40mg/m2未満であり、サイズ剤及びカオリンを含有しない比較例1は、上記坪量が60g/m2超と高いにもかかわらず、白色度が低く、断紙抑制効果及び印刷ムラ抑制効果が劣っていた。
ロットメタリングサイズプレス方式により塗工層を積層し、上記白色顔料におけるカオリンの含有量が20質量%未満であり、上記炭酸カルシウムの含有量が72質量%未満であり、上記蛍光染料の塗工量が40mg/m2未満であり、サイズ剤を含有しない比較例2は、塗工量が少なく、白色度が低くなるとともに、印刷インクの裏抜け抑制効果及び断紙抑制効果が劣っていた。
上記広葉樹晒クラフトパルプの含有量が90質量%を超え、上記針葉樹晒クラフトパルプの含有量が10質量%未満である比較例3は、断紙抑制効果が劣っていた。
上記カオリンの含有量が20質量%未満であり、上記炭酸カルシウムの含有量が80質量%を超える比較例4は、印刷インクの裏抜け抑制効果が劣っていた。
上記カオリンの含有量が28質量%を超え、上記炭酸カルシウムの含有量が72質量%未満である比較例5は、断紙抑制効果が劣っていた。
サイズ剤を含有しない比較例6は、断紙抑制効果が劣っていた。
【0074】
以上の結果、当該印刷用塗工紙は、低坪量にも係わらず、白色度が高く、印刷インクの裏抜け抑制効果及び断紙抑制効果に優れることが示された。従って、当該印刷用塗工紙は、例えばオフセット印刷に用いられる印刷用塗工紙として好適に用いられる。