(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176771
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】支援装置
(51)【国際特許分類】
A47K 17/02 20060101AFI20231206BHJP
E03D 9/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A47K17/02 A
E03D9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089234
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】390002129
【氏名又は名称】デュプロ精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138014
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 香織
(72)【発明者】
【氏名】山下 明浦
(72)【発明者】
【氏名】東本 佳久
(72)【発明者】
【氏名】和田 晃
(72)【発明者】
【氏名】長田 優輔
【テーマコード(参考)】
2D037
2D038
【Fターム(参考)】
2D037AA02
2D037AD16
2D037BA12
2D038KA27
(57)【要約】
【課題】トイレの使用者が便座から離れようとしていることを、より確実にトイレの使用の支援者に報知することの可能なトイレ使用時の支援装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明にかかるトイレ使用時の支援装置10は、トイレの使用時、便座に座した使用者の前方位置で、前記使用者の左側方及び右側方に設けられた一対の取付部16の間に掛け渡される掛渡部材3と、前記掛渡部材3が、前記一対の取付部16の間に掛け渡されているかどうかを検出する検出部6と、前記検出部6の検出結果に基づいて、報知機9によりトイレの使用の支援者に報知するよう制御する制御部7とを備えた。また、前記構成において、前記掛渡部材3を自動で巻き取る巻取部33を備えた。そして、前記各構成において、前記掛渡部材3の端部を係止する係止部36を、前記一対の取付部16のうち少なくともいずれかに設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレの使用時、便座に座した使用者の前方位置で、前記使用者の左側方及び右側方に設けられた一対の取付部の間に掛け渡される掛渡部材と、
前記掛渡部材が、前記一対の取付部の間に掛け渡されているかどうかを検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、報知機によりトイレの使用の支援者に報知するよう制御する制御部とを備えたトイレ使用時の支援装置。
【請求項2】
前記掛渡部材を自動で巻き取る巻取部を備えた請求項1に記載の支援装置。
【請求項3】
前記掛渡部材の端部を係止する係止部を、前記一対の取付部のうち少なくともいずれかに設けた請求項1または請求項2に記載の支援装置。
【請求項4】
前記取付部は、便座の近傍に設置された手摺に設けられる請求項1または請求項2に記載の支援装置。
【請求項5】
前記報知機を着脱自在に保持する保持部が設けられ、
前記制御部は、前記保持部に前記報知機が保持されているとき、前記報知機による報知を行わないよう制御する請求項1または請求項2に記載の支援装置。
【請求項6】
前記報知機を着脱自在に保持する保持部が設けられ、
前記制御部は、前記保持部に前記報知機が保持されていないとき、トイレが使用中であることを出力する請求項1または請求項2に記載の支援装置。
【請求項7】
前記保持部は、報知機に設置された二次電池を充電する充電器を備える請求項5に記載の支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トイレを使用する際に転倒の危険がある者がトイレを使用するとき、該トイレの使用者が便座から立ち上がる前であることを検出可能な装置が、下記特許文献1に記載されている。この装置は、便座の前に倒立自在に設けた身体補助具が起立したことを検出する離座検出手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の装置では、身体補助具が、水平姿勢から約90度回動され、倒立姿勢となるまでの間であって、身体補助具が傾斜姿勢のままであっても、身体補助具の間を通ってトイレの使用者が便座から離れ、移動できる場合がある。このように、身体補助具が傾斜姿勢では、必要な報知が行われない危険性があり、支援の必要な者が、支援者の介助なしに、自分で便座から立ち上がってしまう恐れがある。
【0005】
本発明は上記した課題を解決するものであり、トイレの使用者が便座から離れようとしていることを、より確実にトイレの使用の支援者に報知することの可能なトイレ使用時の支援装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にかかるトイレ使用時の支援装置は、トイレの使用時、便座に座した使用者の前方位置で、前記使用者の左側方及び右側方に設けられた一対の取付部の間に掛け渡される掛渡部材と、前記掛渡部材が、前記一対の取付部の間に掛け渡されているかどうかを検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて、報知機によりトイレの使用の支援者に報知するよう制御する制御部とを備えた。
【0007】
また、前記構成において、前記掛渡部材を自動で巻き取る巻取部を備えた。
【0008】
そして、前記各構成において、前記掛渡部材の端部を係止する係止部を、前記一対の取付部のうち少なくともいずれかに設けた。
【0009】
更に、前記各構成において、前記取付部は、便座の近傍に設置された手摺に設けられる。
【0010】
更に、前記各構成において、前記報知機を着脱自在に保持する保持部が設けられ、前記制御部は、前記保持部に前記報知機が保持されているとき、前記報知機による報知を行わないよう制御する。
【0011】
更に、前記報知機を着脱自在に保持する保持部が設けられ、前記制御部は、前記保持部に前記報知機が保持されていないとき、トイレが使用中であることを出力する。
【0012】
更に、前記構成において、前記保持部は、報知機に設置された二次電池を充電する充電器を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トイレの使用時、便座に座した使用者の前方位置で、前記使用者の左側方及び右側方に設けられた一対の取付部の間に掛け渡される掛渡部材と、前記掛渡部材が、前記一対の取付部の間に掛け渡されているかどうかを検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて、報知機によりトイレの使用の支援者に報知するよう制御する制御部とを備えたので、掛渡部材が一対の取付部に掛け渡されなくなったことを検出部が検出したことに基づき、制御部は報知機によりトイレの使用の支援者に報知することができる。トイレの使用者が便座から離れようとしていることを、より確実にかつ早期にトイレの使用の支援者に報知することが可能である。
【0014】
また、前記掛渡部材を自動で巻き取る巻取部を備えた場合は、掛渡部材が取付部から取り外しされたときに、掛渡部材が巻取部によって自動で巻き取られる。この場合、検出部は掛渡部材が、一対の取付部の間に掛け渡されているかどうかをより正確に検出することができる。
【0015】
また、前記掛渡部材の端部を係止する係止部を、前記一対の取付部のうち少なくともいずれかに設けた場合は、使用者が便座から離れようとするとき、係止部から掛渡部材の端部を容易に取り外すことができる。
【0016】
そして、前記取付部は、便座の近傍に設置された手摺に設けられる場合は、掛渡部材を容易に、手摺に取り付けることができる。
【0017】
更に、前記報知機を着脱自在に保持する保持部が設けられ、前記制御部は、前記保持部に前記報知機が保持されているとき、前記報知機による報知を行わないよう制御する場合は、報知機が保持部に保持されているときには報知機による報知をさせないよう制御することができ、利便性が高まる。
【0018】
更に、前記報知機を着脱自在に保持する保持部が設けられ、前記制御部は、前記保持部に前記報知機が保持されていないとき、トイレが使用中であることを出力する場合は、トイレが使用中であることを他の人が容易に把握することができる。
【0019】
更に、前記保持部は、報知機に設置された二次電池を充電する充電器を備える場合は、報知機を保持部に保持させることにより二次電池の充電が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る便座及びトイレ使用時の支援装置の斜視図である。
【
図6】前記支援装置の掛渡部材の一部及び係止部の正面図である。
【
図10】前記支援装置の動作を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る支援装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、トイレ使用時の支援装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第一の実施形態にかかる便座5及びトイレ使用時の支援装置10を示す斜視図である。
図2は、
図1の正面図である。
図3は、
図1の平面図ある。
図4は
図1の左側面図である。
図5は右側面図である。
【0022】
支援装置10は、洋式の便座5の周辺に設置される。支援装置10は、手摺1、掛渡部材3、検出部6、制御部7及び報知機9を備える。
手摺1は、便座5の近傍に設置される。手摺1は、肘掛11、前部材12、及び支持部13を備える。肘掛11は、トイレの使用時、便座5に座した使用者の左側方及び右側方に設置される。肘掛11は、所定長さを有する平面視略矩形状に形成される。肘掛11は、平面視例えば3cm-8cmといった所定幅を有する。肘掛11の長手方向は、便座5の前後方向に沿って延在する。
【0023】
肘掛11は便座5の使用者が便座5に腰かけたときに肘を置くことのできる高さとなるよう支持部13によって支持される。肘掛11の前部には左右の肘掛に掛け渡される掛渡部材3の後述する取付部16が設けられる。肘掛11の前端部には、前部材12の左右の側方端部を回動自在に軸支する連結部14が設けられる。
【0024】
支持部13は、台部19、縦部材18、及び横部材17を備える。台部19は、床上に設置される。縦部材18は、台部19に複数立設される。縦部材18は、肘掛11を床上で下方より支持する。縦部材18は、前後に所定量離間して設置される。横部材17は、便座5の左右側方に設置された縦部材18を連結する。
【0025】
前部材12は、トイレの使用時、便座5に座した使用者の前方位置に左右一対設置される。前部材12は、左前部材21及び右前部材22を備える。
図1-3において、左前部材21の左端部、右前部材22の右端部は、それぞれ左側及び右側の肘掛11の前端部に連結部14によって回動自在に連結されている。トイレの使用前に、使用者が便座5に座するとき、及び使用後に便座5から離れるときに、前部材12が連結部14を軸心に
図2に破線で示す位置まで回動される。これより手摺1は便座5の前方に位置する水平姿勢から側方へ退避された起立姿勢へ移動される。そして、便座5の前方は開放される。
【0026】
掛渡部材3は、トイレの使用時、便座5に座した使用者の前方位置で、使用者の左側方及び右側方に設けられた一対の取付部16の間に掛け渡される。取付部16は、手摺1に設けられる。取付部16は特に、左右の肘掛11の前部であって、連結部14より後方に設けられる。
【0027】
本第1の実施形態では、掛渡部材3は、可撓性を有し、巻取り可能な所定幅を有するベルト31により構成される場合を示す。掛渡部材3は、
図1―3で左側に示す一方の端部が巻取部33に接続される。巻取部33の内部には、図示しないゼンマイばね等の弾性部材が設置されている。弾性部材の作用により巻取部33は掛渡部材3を自動で巻き取ることができる。
【0028】
掛渡部材3の他方の端部には、被係止部35が設けられる。被係止部35は、
図1ー3で右側の取付部16に設けられた係止部36に係止される。
図6は、本第1の実施形態にかかる掛渡部材3の一部及び係止部36の部分拡大正面図である。
図7は
図6の平面図、
図8は
図6の右側面図である。
図6-8に示す被係止部35は、円柱の棒状部材37により構成される。棒状部材37は、前後方向に沿って延在する。
図7に示すように、被係止部35は、ベルト31の幅より所定量長く設定される。被係止部35の前部及び後部は、ベルト31の幅方向から前方及び後方に突出して形成される。
【0029】
係止部36は、係止本体41、係止支持部42及び突出部43を備える。係止本体41は直方体状に形成される。係止本体41の内部には、検出部6が収容されている。検出部6は、掛渡部材3が、一対の取付部16の間に掛け渡されているかどうかを検出する。検出部6は、例えば、光学式または透過式のセンサにより構成することができる。検出部6の検出結果は、無線または有線の通信により制御部7へ送られる。
【0030】
係止支持部42は、手摺1の下方で、係止本体41を支持部13に固定する。突出部43は、前後一対設けられる。突出部43は、係止本体41の上端部から右側方へ向けて突出している。被係止部35が係止部36に係止されるとき、前後一対の突出部43の間にベルト31が位置される。双方の板状の突出部43の下面に、棒状部材37の前後端部がそれぞれ接触されることで、被係止部35が係止部36に係止される。突出部43は、巻取部33の弾性部材の付勢力に抗して、被係止部35を係止部36に保持する。
【0031】
便座5の使用者が便座5から離れようとするときには、使用者の前方位置で、使用者の左側方及び右側方の間に掛け渡された掛渡部材3を取り除く必要がある。このため、掛渡部材3が左右一対の取付部16の間に掛け渡されているかどうかを検出部6が検出することによって、使用者が便座5から離れようとしていることを容易に把握することができる。
【0032】
制御部7は、トイレが使用される空間であって、便座5の近くに設置される。
図9は、制御部7の構成を示すブロック図である。制御部7は、受信部76、送信部71、記憶部72、判断部73、入力部74及び出力部75を備える。受信部76は、検出部6、呼出部30、報知機7及び保持部8を含む各種通信可能な機器と無線または有線により通信を行って各種情報を受信する。送信部71は、これらの各種通信可能な機器へ無線または有線により各種情報を送信する。
【0033】
記憶部72は、トイレ使用の支援装置10を動作するためのプログラムが記憶されるともに、必要な情報が記憶される。判断部73は、各種機器からの情報に基づき必要な判断を行う。入力部74は、トイレ使用の支援者、または便座5の使用者等から入力された情報を受ける。出力部75は、各種機器によって情報の出力を行う。
【0034】
そして、制御部7は、検出部6の検出結果に基づいて、報知機9によりトイレの使用の支援者に報知するよう制御する。すなわち、制御部7は、受信部75が受信し、入力部74が受け付けた検出部6の検出結果に基づいて、判断部73が判断を行い、その結果を出力部75が出力し、送信部71によって、報知機9へ送信する。
【0035】
図1に示すように、報知機9は、保持部8によって、着脱自在に保持される。保持部8は、制御部7の近傍に設置される。保持部8は、報知機9が有する二次電池91を充電するための充電器81を備える。
【0036】
報知機9は、制御部7の送信部71から送信された検出部6の検出結果を受信し、報知機9を所持するトイレの使用の支援者に対して報知する。報知方法は、例えば音と光とすることができる。トイレの使用の支援者は、例えば、看護師、介護者、介助者、補助者等である。
【0037】
制御部7は、報知機9の保持部8に、該報知機9が保持されているかどうかに基づき、報知機9による報知動作を実行するかどうかを判断部73によって判断することができる。そして、制御部7は、保持部8に報知機9が保持されているとき、報知機9による報知を行わないよう判断部73によって判断し、制御することができる。
【0038】
便座5を使用する者が支援の不必要な者であるときには、支援者は便座5の近くにおらず、支援者が報知機9を所持することはない。そして、報知機9は便座5の使用空間の保持部8に保持されたままとなる。このように、報知機9を保持部8に保持したままの状態では、報知機9による報知を行わないよう制御することで、便座5を、支援の不必要な者が使用する際には、報知機9による報知が行われないよう制御することができる。
【0039】
これに対し、支援を必要とする者が便座5を使用するときには、支援者が、報知機9を保持部8から取り外すことで、報知機9は制御部7から送られる検出部8に基づき、支援者に報知するほう制御することができる。
【0040】
また、制御部7は、保持部8に報知機9が保持されていないとき、トイレが使用中であることを出力するよう制御することができる。これより、支援が必要な使用者がトイレを使用中であるとき、便座5の設置空間に鍵をかけない場合であっても、使用者以外の人がトイレを使用中であることを把握することができる。トイレが使用中であるにもかかわらず、他の人が誤って便座5の設置空間に入ってしまうのを防止することができる。トイレを使用中であることの出力方法としては、便座5の設置空間の外に、使用中の文字の記載されたディスプレイやモニターを設置し、点灯させたり、点滅させたりすることができる。また、使用中の文字が記載された掲示物の近傍にランプを点灯させる等といった方法が挙げられる。
【0041】
更に、トイレの設置空間には、便座5の近傍で、使用者の手が届く範囲に、支援者の呼出部30が設置されている。呼出部30は、使用者が支援者に、便座5の近くに来てもらいたいときに操作することで、報知機7によって呼出部30が操作されたことが報知され、支援者を呼び出すことができる。呼出部30は、押圧ボタンや、手をかざす非接触センサなどで構成される。制御部7は、使用者が呼出部30を操作したことを受信することができ、これに基づき必要な制御を行う。
【0042】
以下、本第1の実施形態における動作を説明する。 便座5の使用者は、支援者とともに便座5の設置場所へいき、便座5に腰かける。支援者は、掛渡部材3を巻取部33から引き出し、弾性部材の付勢力に抗して、被係止部35を係止部36に係止させる。その後、支援者は保持部8から報知機9を外して所持し、トイレ設置場所から一旦離れる。
【0043】
図10は、第1の実施形態に係る動作を示すフローチャートである。制御部7は、ステップ1からステップ5までのループ処理を開始する。
図10のステップ1において、支援装置10の終了要求が出るまでループ処理を繰り返し行う。ステップ2に進み、保持部8から報知機9が取り外されたかどうかを判断する。支援者が報知機9を保持部8から取り外し、保持しているときは、報知機9が保持部8から取り外されているのでステップ2を満たし、ステップ3に進む。一方、報知機9が保持部8に保持されたままであるときは、ステップ2を満たさずステップ5に進み、ループとなる。そして、ステップ1に戻る。
【0044】
制御部7は、保持部8に報知機9が保持されていないとき、トイレが使用中であることを出力するよう制御する場合は、便座5の設置空間の外の廊下の壁等に、設置されたディスプレイ等にトイレが使用中であることが出力される。
【0045】
ステップ3では、検出部6が、掛渡部材3が、一対の取付部16の間に掛け渡されているかどうかを判断する。支援者が掛渡部材3を巻取部33から引き出し、被係止部35を係止部36に係止させているときは、ステップ3を満たさない。このとき、ステップ3を満たさず、ステップ5に進む。ステップ5でループとなり、ステップ1に戻る。
【0046】
使用者の用便後、使用者は呼出部30を操作し、支援者に便座5の近くに来るよう連絡することができる。尚、本第1の実施形態では、呼出部30の操作は、
図10に示すフローには含まれない。便座5の設置場所に支援者が到着すると、支援者は報知機9を保持部8に戻す。このとき、ステップ1のループから進んだステップ2を満たさなくなる。ステップ2からステップ5に進み、ループとなり、ステップ1に戻る。
【0047】
制御部7は、保持部8に報知機9が保持されたことに基づき、トイレが使用中であることの出力が停止される。
【0048】
便座5の設置場所において、支援者は、掛渡部材3の左右の取付部16への掛渡しを解除するために、棒状部材37を突出部43から取り外す。支援者が棒状部材37から手を放すと、掛渡部材3は巻取部33によって自動で巻き取られる。
【0049】
使用者は、支援者の支援を受けつつ安全に便座5から立ち上がることができる。この場合、呼出部30があることで、使用者は安全に便座5から離れることができ、転倒するのを防止することができる。
図10のステップ1で支援者からの終了要求が出るまでループが繰り返され、終了要求が出されたとき終了となる。
【0050】
ところが、使用者によっては支援者を呼び出すことなく、自分自身で便座5から立ち上がり、便座5から離れようとすることがある。このとき、もし支援者が便座5から離れた場所にいると、支援者は使用者を支援することができなくなり、転倒や怪我の危険性が高まる。そこで、本実施形態では、使用者が、便座5から離れようとしていることを、報知機9によって支援者に報知する。このため、検出部6が、掛渡部材3が左右一対の取付部16の間に掛け渡されなくなったことを検出すると、制御部7は、検出部6の検出結果を、報知機9によりトイレの使用の支援者に報知するよう制御する。
【0051】
図10では、ステップ2で、支援者が報知機9を取り外し、便座5から離れると、ステップ1を満たし、ステップ3に進む。ステップ3で、支援者が掛渡部材3を取付部16の間に掛け渡し、その状態が維持されている間は、ステップ3を満たさない。使用者の用便後、使用者が自分で棒状部材37を突出部43から取り外すと、掛渡部材3の掛渡しが解除され、ステップ3を満たし、ステップ4に進む。
【0052】
ステップ4で、制御部7は、報知機9によりトイレの使用の支援者に報知する。報知機9の報知によって、支援者は、使用者が自分で掛渡部材3を、一対の取付部16の間に掛け渡された状態を解除し、便座5から離れようとしていることを知ることができ、危険防止のため便座5の近くに駆けつけて、使用者を支援することができる。その後、ステップ5に進み、ループとなる。
【0053】
本第1の実施形態では、トイレの使用時、便座5に座した使用者の前方位置で、使用者の左側方及び右側方に設けられた一対の取付部16の間に掛け渡される掛渡部材3と、掛渡部材3が、一対の取付部16の間に掛け渡されているかどうかを検出する検出部6と、検出部6の検出結果に基づいて、報知機9によりトイレの使用の支援者に報知するよう制御する制御部7とを備えたので、掛渡部材3が一対の取付部16に掛け渡されなくなったことを検出部6が検出すると、これに基づき、制御部7は報知機9によりトイレの使用の支援者に報知することができる。
【0054】
使用者の前方位置に掛渡部材3が掛け渡されたままの状態では、掛渡部材3があることによって使用者が自分で便座5から立ち上がる際に、邪魔になる。そこで、使用者はまだ便座5に座した状態のままで、掛渡部材3が掛け渡された状態を解除し、掛渡部材3が使用者の前方位置から取り除こうとする。そして、掛渡部材3を使用者の前方から取り除いた後、使用者は次の動作として、便座5から立ちが上がろうとすると考えられる。このように、使用者が便座5から離れるための一連の動作のうち、使用者がまだ便座5に座したままという比較的早いタイミングで支援者に報知することができる。よって、使用者に一人で便座5から離れようとする危険な動作をさせる前の早い段階で、支援者が便座5の近くに到着することができる。これより、使用者の用便終了後に呼出部30による支援者を呼び出す操作がされなくても、便座5から離れようとする以前に、報知機9に報知することができる。
【0055】
従来のように、使用者が便座5から離れるとき、身体補助具が傾斜姿勢であるために必要な報知が行われず、使用者は身体補助具の間を通って便座から離れ、移動するという危険な状態を回避可能である。
【0056】
また、掛渡部材3を自動で巻き取る巻取部33を備えているので、使用者が掛渡部材3を取付部16から取り外したときに、掛渡部材3が巻取部33によって自動で巻き取られる。この場合、掛渡部材3が、一対の取付部16の間に掛け渡されなくなったことを検出部6がより正確に検出することができる。これより、検出部6の検出結果に基づく報知が報知機9により行われることで、支援者の支援なしに、自分で便座5から離れてしまうという事態を回避可能である。
【0057】
また、掛渡部材3の端部を係止する係止部36を、一対の取付部16のうち少なくともいずれかに設けたので、使用者が便座5から離れようとするとき、係止部36から掛渡部材3の端部を容易に係止されないよう操作することができる。また、掛渡部材3が、取付部16の間に掛け渡されなくなったことを検出部6が容易に検出することができる。
【0058】
そして、取付部16は、便座5の近傍に設置された手摺1に設けられるので、掛渡部材3を容易に、手摺1に取り付けることができる。よって、トイレ使用時の支援装置10を簡単な構成とすることができ、別途、便座5を設置する空間の壁に、掛渡部材3を設置するための大がかりな工事を必要としない。トイレ使用時の支援装置10を安価かつ容易に製造でき、便座5の使用空間に設置できる。
【0059】
更に、報知機9を着脱自在に保持する保持部8が設けられ、制御部7は、保持部8に報知機9が保持されているとき、報知機9による報知を行わないよう制御する場合は、支援者が便座5の近くにいるために、報知機9による支援者への報知が必要ではないときに、報知機9を保持部8に保持されるだけで、自動的に報知機9による報知をさせないよう制御することができる。報知が不必要な状況で報知機9による報知が実施されることはなく、支援者への利便性が高まる。
【0060】
報知機9による報知を行うかどうかの設定を、報知機9の保持部8への保持により非常に簡単に行うことができる。また、支援者が報知機9を保持部8から取り外して所持し、便座5から離れた状況では、検出部6の検出結果に基づく報知が実施されるよう自動で設定される。便座5の使用者が報知機9による報知が行われないよう設定解除することができない。よって、使用者が便座から離れようとする際には、報知機9による報知が行われ、支援者が支援に駆けつけることができるので、より高い安全性を確保できる。
【0061】
尚、必要により、報知機9が保持部8から取り外された後、例えば30分といった所定時間経過後に、報知機9によって所定時間が経過したことを報知することとしてもよい。これより、排便が完了した後に、使用者が呼出部30を操作することも、自分で掛渡部材3を外すこともいずれも行わない場合であっても、報知機9によって報知することができ、支援者が使用者の近くに戻って支援することができる。また、他の検出、例えば、トイレットペーパーの使用状況を検出し、これと掛渡部材3の状態と組み合わせることとしてもよい。これより、より確実に使用者の排便終了を把握することができる。
【0062】
(第2の実施形態)
本第2の実施形態に係る支援装置10は、報知機9が保持部8に保持されていない。報知機9は、便座5の近くに設置されず、例えば各支援者が常に携帯している通信機器や、ナースステーションに設置されるナースコールの受信器によって構成することができる。尚、ナ―スコールの受信器は、別途呼出部30から送信された情報を受信し、報知機9を兼ねて構成することができる。
【0063】
本第2の実施形態では、第1の実施形態とは制御部7の制御が異なる。
図11は、第2の実施形態に係る支援装置10の動作を示すフローチャートである。
図11のステップ11で、支援装置10の終了要求が出るまでループ処理を繰り返し行う。ステップ12に進み、検出部6が,掛渡部材3が一対の取付部16の間に掛け渡されているかどうかを検出する。便座5が使用されておらず、掛渡部材3が、一対の取付部16の間に掛け渡されていない間は、ステップ12を満たす。この時ステップ22に進み、ループとなりステップ11に戻る。
【0064】
ステップ13で、便座5の使用者が支援の必要な者であり、便座5に座したのち、支援者が掛渡部材3を取付部16の間に掛渡すとステップ12を満たさなくなり、ステップ13に進む。
【0065】
ステップ13で、使用者の用便後、使用者は呼出部30を操作し、支援者に便座5の近くに来るよう連絡すると、ステップ13を満たしステップ14に進む。ステップ14で報知機9または支援者が携帯する通信機器により報知する。ステップ15に進み、支援者が、報知を停止する動作を行ったかどうかを判断する。報知を停止する操作が行われるまでの間、ステップ15からステップ14に戻り、報知が継続される。ステップ15で報知が停止されると、ステップ16に進む。
【0066】
呼出部30の操作に応じて支援者が便座5の設置場所に到着すると、支援者は、掛渡部材3の左右の取付部16への掛渡しを解除し、便座5の使用者が便座5から離れるのを支援する。このときステップ15で掛渡部材3が一対の取付部16の間に掛け渡られなくなり、ステップ15を満たす。そしてステップ22に進みループとなり、ステップ11に戻る。
【0067】
一方、使用者の用便後、使用者が呼出部30を操作しないで、自分で便座5から離れようとする場合、ステップ13で呼出部12を操作しないとなり、ステップ13を満たさず、ステップ17へ進む。ステップ17で、掛渡部材3が一対の取付部16に掛け渡されているかどうか判断する。使用者が、掛渡部材3の被係止部35を係止部36から取り外すと、検出部6が、掛渡部材3が取付部16の間に掛け渡されなくなったことを検出し、ステップ17を満たし、ステップ18に進む。ステップ18で、使用者が便座5から離れようとしていることを報知機9によって報知する。
【0068】
ステップ17で、使用者が、掛渡部材3の被係止部35を係止部36から取り外していないときには、ステップ17を満さず、ステップ18での報知は行われない。ステップ19で、用便に必要な予め設定された時間である所定時間経過したかどうか判断する。所定時間経過するまではステップ19を満たさずステップ21に進む。
【0069】
ステップ18の報知機9による報知に対し、ステップ21において、支援者が報知を停止する操作を行ったかどうかを判断する。報知の停止操作が行われない間は、ステップ21を満たさない。この場合、ステップ13に戻り、上記した動作を繰り返す。支援者が報知の停止操作を行うと、ステップ21を満たし、ステップ22に進む。ステップ22で、ループによりステップ11に戻る。
【0070】
支援者は、報知機9の報知に応じて便座5の近くに駆けつけ、便座5の使用者が便座5から立ち上がろうとするのを支援することができる。これより便座5の使用者は、支援者の支援を受けつつ無事に便座5から車椅子やベッドに移動することができる。尚、ステップ21での支援者による報知機9の報知を停止操作は、支援者が便座5の使用者のもとに駆けつけ、安全が確保されたのちに実施されてもよい。
【0071】
使用者が便座5使用開始したのち、呼出部30による呼出操作もなく、掛渡部材3が取付部16に掛け渡された状態のままで所定時間経過すると、ステップ19を満たし、ステップ20に進む。ステップ20で、所定時間経過したことを報知機9により報知する。制御部7は、このステップ20での報知を、ステップ18の掛渡部材3が取付部16の間に掛け渡られなくなったときの報知とは異なる種類の音と光によって行うよう制御してもよい。使用者が便座5に座したまま所定時間経過したときにも、支援者は報知機9によって報知を受けることができ、便座5の使用者に何か問題が生じていないか確認することができる。
【0072】
本第2の実施形態では、第1の実施形態のように報知機9が保持部8に保持されているかどうかを判断しない。ポータブルトイレのように、便座5の設置場所が使用者のベッドの近くにある場合には、支援の不必要な者が便座5を使うといったことが想定されない。よって、掛渡部材3が一対の取付部16の間に掛け渡されなくなったときにはいつでも支援者に報知することとしても誤報の問題は生じない。この場合、支援者が報知機9をわざわざ保持部8から取り外す動作を行わなくても、報知機9によって報知することができる。支援者は報知機9を保持部8から外す必要がないので、手間が省ける。
【0073】
なお、本発明は、上述した第1,2の実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。掛渡部材3が所定幅を有する可撓性のベルト31により構成されたが、チェーン、紐、ロープ、リボン、ゴム等の弾性部材、蛇腹状の部材、角材、丸材、筒体等、左右の取付部に掛け渡すことが可能な他の構成としてもよい。また、掛渡部材3を自動で巻き取る巻取部33を備えたが、巻取部33を備えず、これに替えて、支援者が掛渡部材を手動で取付部に巻きつけることとしてもよく、取付部の近傍に設置したフック等に係止させてもよく、伸縮性の掛渡部材を用いてもよい。
【0074】
また、掛渡部材3の端部を係止する係止部36を、
図1-3において右側の取付部16に設けたが、掛渡部材の左側の端部が取付部に取り付けられてもよく、左右双方の端部が、双方とも左右一対設置された係止部に係止されてもよい。また、使用者の左側方及び右側方の取付部からそれぞれ延びる掛渡部材が使用者の前方中央、右側、左側で連結されてもよい。
【0075】
また、第1の実施形態では、報知機7を着脱自在に保持する保持部8が便座5の近傍に設置されたが、保持部は便座から離れた場所に設置されてもよい。また、制御部7は、保持部8に報知機7が保持されているとき、報知機7による報知を行わないよう制御したが、保持部8に保持されていても、確認のため、報知機による報知を行うこととしてもよい。
【0076】
保持部8は、報知機7に設置された二次電池71を充電する充電器81を備えたが、報知機は、乾電池等他の電源により動作する構成としてもよく、その場合、保持部は充電器を備えない構成としてもよい。
【0077】
また、取付部16は、便座5の近傍に設置された手摺1の肘掛11に設けられたが、トイレの設置空間の壁面や床に設けてもよい。また、手摺1は床上に設置されたが、手摺は便座側方の壁面に固定されたものを利用してもよく、便座自体に固定されてもよい。
【0078】
また、呼出部30の操作に基づき、報知機7によって報知が行われたが、ナースステーション等報知機を所持しない他の支援者を呼び出してもよい。報知機9は、制御部7から送信された検出結果を直接受信し、報知を行ったが、ナースステーション等報知機の所持者以外の他の支援者のいる場所に、一端情報が送られ、その経由地点でも報知を行い、その後、報知機に検出結果が転送され、報知機による報知が行われることとしてもよい。第1の実施形態では報知機9は、制御部7の近傍に設置したが、トイレ内の制御部から離れた場所でもよく、トイレの外でもよい。報知機がトイレの外に設置されることで、トイレの使用者に、報知機の存在を気づかせないようにすることができ、好ましい。
【0079】
また、制御部7はトイレが使用される空間であって、便座5の近くに設置されたが、便座から離れた場所に設置してもよい。報知機7による報知方法は、一度だけだったが、2回以上行ってもよく、報知する回数を予め設定可能に構成してもよい。また、掛渡部材3の検出部6による検出結果に加え、トイレットペーパーの使用状況等、他の検出機器を用いた検出結果を組み合わせて、報知機によりトイレの使用の支援者に報知することとしてもよい。また、トイレには、殺菌成分を発生させる殺菌成分発生器を備えてもよい。
【0080】
また、前部材12は、左右一対設置されたが、左右一対でなくても構わない。前部材は、使用者の前方に1個のみ設置されてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 手摺、3 掛渡部材、5 便座、6検出部、7 制御部、8 保持部、9 報知機、10 支援装置、16 取付部、33 巻取部、36 係止部、81 充電器、91 二次電池。